説明

容器用ブランク及び密封容器

【課題】フランジ付容器を形成する容器用ブランクにおいて、組み立てたフランジ付容器のフランジ部に蓋体を融着することで、液体成分の多い内容物を収容するに十分な高い密封性が得られるようにする。
【解決手段】コーナー部に設けられ、外方へ折り重ねて接合される第一及び第二折り重ね片5a,5bと、第一及び第二側面板3a,3bとの連接部にそれぞれ形成された隅部山折りライン4,4を、それぞれ第一及び第二側面板3a,3bの側縁の内縁部から中間部に亘って形成し、外縁部には形成しないでおく。フランジ付容器の内側コーナー部は、隅部山折りライン4,4に沿った屈曲部同士の接合部で構成される。隅部山折りライン4,4が形成されていない箇所は、フランジ付容器の上部に相当し、第一及び第二折り重ね片5a,5bの折り重ね接合時の初期段階においては、完全には屈曲されていない湾曲した状態で押し付け合わせられ、接合不良を生じにくい面接着が得やすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部周縁に張り出したフランジ部を有し、開口部に蓋材を被せ、この蓋材の周縁部をフランジ部に融着することで封止可能なフランジ付容器を構成する容器用ブランク及びこの容器用ブランクから組み立てたフランジ付容器を用いた密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアイスクリームの容器として、合成樹脂フィルムをラミネートした紙製で、開口部周縁に張り出したフランジ部を有し、開口部上に被せた蓋材の周縁部をフランジ部に融着して封止することができるフランジ付容器が知られている。また、このようなフランジ付容器を構成する容器用ブランクとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
上記特許文献1に示される容器用ブランクは、外縁が四角形をなす底面板と、底面板の相対向する二辺及び他の二辺にそれぞれ底部谷折りラインを介して連接された第一及び第二側面板と、相隣接する第一及び第二側面板の各側縁に隅部山折りラインを介してそれぞれ連接され、中央の重合谷折りラインを介して連なる第一及び第二折り重ね片とを有している。また、第一及び第二側面板の外縁に開口部山折りラインを介してそれぞれ連接され、両端が、隣接する第一又は第二折り重ね片の外側へそれぞれ延出した延出端部となった第一及び第二フランジ片と、第一折り重ね片の外縁の重合谷折りライン側に、接合片用山折りラインを介して連接された接合片とを備えている。
【0004】
更に特許文献1に記載の容器用ブランクについて説明すると、第一及び第二側面板は、底部谷折りラインを介して立ち上げられて容器の側面部を構成し、第一及び第二折り重ね片は、隅部山折りライン及び重合谷折りラインを介して外方へ折り重ねて接合されて側面部に沿って屈曲されるものとなっている。また、第一及び第二フランジ片は、開口部山折りラインを介して水平に屈曲され、相隣接する第一及び第二フランジ片の延出端部が、第二フランジ片の延出端部を上にして上下に重ね合わせて接合されて容器のフランジ部を構成し、各接合片は、接合片用山折りラインを介して水平に屈曲され、フランジ部の下面に接合されるものとなっている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−255546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の容器用ブランクにおいては、隣接する第二折り重ね片の外側へ延出した第二フランジ片の延出端部の基部に、内側に突出する小突起を形成している。この小突起は、フランジ付容器とした時のコーナー部の内側上端部に宛われるもので、フランジ付容器の密封性を低下させる最大の原因である、フランジ付容器コーナー部内側上部での小孔の発生を防止して、蓋体による密封性を向上させようとするものである。
【0007】
しかしながら、上記小突起の形成では密封性の向上が不十分で、液体成分が多い内容物の場合、例えば組み立てたフランジ付容器に液体成分の多い内容物を入れ、フランジ部に蓋体を融着した密封容器を逆さまに置いておくと、コーナー部から液体が滲み出てきてしまう問題がある。このため、特許文献1に示されるような容器用ブランクから形成したフランジ付容器は、通常は冷凍されて固形化しているアイスクリームやその他の固形内容物にしか利用しにくく、適用範囲が制限されている。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、フランジ付容器を形成する容器用ブランクにおいて、組み立てたフランジ付容器のフランジ部に蓋体を融着することで、液体成分の多い内容物を収容するに十分な高い密封性が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外縁が四角形をなす底面板と、底面板の相対向する二辺及び他の二辺にそれぞれ底部谷折りラインを介して連接された第一及び第二側面板と、相隣接する第一及び第二側面板の各側縁に隅部山折りラインを介してそれぞれ連接され、中央の重合谷折りラインを介して連なる第一及び第二折り重ね片と、第一及び第二側面板の外縁に開口部山折りラインを介してそれぞれ連接され、両端が、隣接する第一又は第二折り重ね片の外側へそれぞれ延出した延出端部となった第一及び第二フランジ片と、第一折り重ね片の外縁の重合谷折りライン側に、接合片用山折りラインを介して連接された接合片とを備え、
第一及び第二側面板は、底部谷折りラインを介して立ち上げられて容器の側面部を構成し、第一及び第二折り重ね片は、隅部山折りライン及び重合谷折りラインを介して外方へ折り重ねて接合されて側面部に沿って屈曲され、第一及び第二フランジ片は、開口部山折りラインを介して水平に屈曲され、相隣接する第一及び第二フランジ片の延出端部が、第二フランジ片の延出端部を上にして上下に重ね合わせて接合されて容器のフランジ部を構成し、各接合片は、接合片用山折りラインを介して水平に屈曲され、フランジ部の下面に接合される容器用ブランクにおいて、
各隅部山折りラインが、それぞれ第一及び第二側面板の側縁の内縁部から中間部に亘って形成され、外縁部には形成されていないことを特徴とする容器用ブランクを提供するものである。
【0010】
また、上記本発明は、第二フランジ片の延出端部の内縁が曲線となっていること、
第二折り重ね片の外縁が、隣接する第一折り重ね片に設けられた接合片用山折りラインより内側かつ該第一折り重ね片側に位置する低縁部と、内外方向に前記接合片用山折りラインと同等の位置でかつ隣接する第二側面板側に位置する高縁部との二段形状となっており、高縁部の幅が、前記第一折り重ね片の外側に延出した第一フランジ片の延出端部の延出長さより長いこと、
相隣接する第一折り重ね片側の外側へ延出した第一フランジ片の各延出端部の基部が、当該第一折り重ね片の外縁と連接されていることを、
をその好ましい態様として含むものである。
【0011】
更に本発明は、上記いずれかの容器用ブランクを組み立てたフランジ付容器のフランジ部に蓋体がシールされていることを特徴とする密封容器を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0012】
第一及び第二折り重ね片は、隅部山折りライン及び重合谷折りラインを介して外方へ折り重ねられて接合される。つまり、フランジ付容器の内側コーナー部は、隅部山折りラインに沿った屈曲部同士の接合部で構成されることになる。
【0013】
ところで、本発明における隅部山折りラインは、内縁部から中間部までで止められ、外縁部には形成されていない。つまり、フランジ付容器とした時の底面部から上下方向中間部までは隅部山折りラインが形成されているが、フランジ付容器の上部では隅部山折りラインが形成されていない。このため、フランジ付容器の底面部から中間部までは、隅部山折りラインによって屈曲が促され、屈曲した状態で押し付け合わされて接合される。これに対して隅部山折りラインが形成されていないフランジ付容器の上部では、屈曲を促す隅部山折りラインがないので、初期段階においては完全に屈曲した状態にはなりにくく、湾曲した状態となる。湾曲した状態で完全には屈曲されていない部分同士を押し付け合わせて接合する場合、押し付け合いによって湾曲面が徐々に押し潰されて折れ目を形成しながら接合が進行するので、面接着が得やすくなる。このため、液漏れの原因となる、フランジ付容器コーナー部内側上部での接合不良を生じにくくなり、密封性が大きく向上する。その一方、隅部山折りラインが形成されていない、フランジ付容器の上部での屈曲は、その下方の隅部山折りラインによる屈曲に誘導されるので、屈曲方向が逸れたりする不都合も防止することができる。
【0014】
液体成分の漏出ルートの一つとして、上側に重ねられている第二フランジ片の延出端部の縁部に沿って、フランジ部と蓋材の界面を通るルートがある。第二フランジ片の延出端部の内縁を曲線としておくと、これを直線とした場合より、漏出ルートの長さを長くすることができ、その分漏れを防止しやすくなる。
【0015】
前記特許文献1に示される第二折り重ね片の外縁は、隣接する第一折り重ね片に設けられた接合片用山折りラインより内側に位置している。つまり、フランジ付容器とした時のフランジ部の下面よりも低い位置に宛われるものとなっている。このため、下側に重ねられている第一フランジ片の延出端部の基部に小孔や隙間を生じた時に、ここから漏洩する液体成分がフランジ部の下面に広がりやすくなっている。
【0016】
これに対して、第二折り重ね片の外縁を低縁部と高縁部の二段形状としておくと、第一フランジ片の延出端部の基部から液体が漏れ出ようとしても、この基部側に長い高縁部が宛われ、しかもこの高縁部はフランジ部の下面に当接されるので、下側に重ねられている第一フランジ片の延出端部の基部に小孔や隙間を生じたとしても、ここから漏洩する液体成分がフランジ部の下面に広がるのを防止しやすくなる。また、低縁部を設けておくことにより、隣接する第一折り重ね片に設けられた接合片用山折りライン部分との接合を一部又は全部逃がして、この接合片用山折りラインに沿った接合片の屈曲を行いやすくすることができる。
【0017】
更に、相隣接する第一折り重ね片の外側へ延出した第一フランジ片の各延出端部の基部を、当該第一折り重ね片の外縁と連接させておくと、第一フランジ片の延出端部の基部に小孔や隙間を生じにくくなり、フランジ部下面への漏洩を防止しやすくなる。
【0018】
以上のことから、本発明の容器用ブランクから組み立てたフランジ付容器のフランジ部に蓋体を融着した密封容器は、液体成分の多い内容物を収容した場合においても、液漏れを防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明を更に説明する。
【0020】
図1は本発明に係る容器用ブランクの一例を示す展開平面図、図2は図1に示されるブランクの左上コーナー部付近の拡大平面図、図3は第一及び第二側面板を立ち上げると共に、第一及び第二折り重ね片を外方へ折り重ねる途中段階の部分平面図、図4は第一及び第二側面板の立ち上げと、第一及び第二折り重ね片の外方へ折り重ねとを完了した状態の部分平面図、図5は図4におけるA−A視図、図6は組み立てを完了した状態の部分平面図、図7は組み立てを完了した状態の部分背面図、図8は組み立てられたフランジ付容器の斜視図である。
【0021】
なお、本明細書において、平面図はフランジ付容器の内面を構成する側の面から見た図をいう。山折りラインと谷折りラインは、容器用ブランクを構成するシート材料を折り曲げやすくする、例えばエンボス加工などによる加工ラインで、山折りと谷折りは、この平面図における折り曲げ方向を意味する。また、図1〜7において、折り曲げ前の山折りラインと谷折りラインは破線で示し、折り曲げた状態の山折りラインと谷折りラインは実線で示す。
【0022】
図1及び図2に示されるように、外縁が四角形をなす底面板1の四方には、底面板1の四辺に形成された底部谷折りライン2,2を介して第一及び第二側面板3a,3bが連接されている。第一側面板3aは、底面板1の相対向する二辺に連接されており、第二側面板3bは、底面板1の他の二辺に連接されている。第一及び第二側面板3a,3bは、底部谷折りライン2,2を介して立ち上げられて、フランジ付容器の側面部103(図8参照)を構成するものである。本例における底面板1は、長方形をなし、長辺側に第一側面板3aが連接され、短辺側に第二側面板3bが連接されているが、第一及び第二側面板3a,3bの連接位置は逆にすることもできる。また、底面板1は正方形などとすることもできる。
【0023】
上記第一及び第二側面板3a,3bの各側縁にはそれぞれ隅部山折りライン4,4が形成されており、この隅部山折りライン4,4を介して第一及び第二折り重ね片5a,5bがそれぞれ連接されている。相隣接する第一及び第二側面板3a,3bの各側縁に隅部山折りライン4,4を介して連接された第一及び第二折り重ね片5a,5bは、中央の重合谷折りライン6を介して一体に連なっている。第一及び第二折り重ね片5a,5bは、隅部山折りライン4,4及び重合谷折りライン6を介して折り重ねて接合され、立ち上げられた第一及び第二側面板3a,3bを連結すると共に立ち上げ状態で固定するものである。
【0024】
第一側面板3aの側縁に形成された隅部山折りライン4は、第一側面板3aの側縁の内縁部(底面板1側の部分)から中間部に亘って形成されており、第一側面板3aの側縁の外縁部(後述するフランジ片8a側の部分)は、隅部山折りライン4が形成されていない状態となっている。また、第二側面板3bの側縁に形成された隅部山折りライン4も同様に、第二側面板3bの側縁の内縁部から中間部に亘って形成され、外縁部までは形成されていないものとなっている。この隅部山折りライン4,4が形成されていない領域である、第一及び第二側面板3a,3bの側縁の外縁部長さHa,Hbは、第一及び第二側面板3a,3bの側縁長さをHとした時、いずれも(1/3)H〜(1/5)H程度であることが好ましい(図2参照)。Ha,Hbが短すぎると、後述する第一及び第二折り重ね片5a,5bの折り重ね接合時の面接着が得にくくなり、Ha,Hbが長すぎると第一及び第二側面板3a,3bの側縁での折り曲げ位置ずれなどを生じやすくなる。通常Ha=Hbである。この隅部山折りライン4,4が形成されていない領域を設けることによる利益については後で更に説明する。
【0025】
第一及び第二折り重ね片5a,5bの連接部に位置する各重合谷折りライン6は、第一及び第二折り重ね片5a,5bを折り重ねやすくするために、図示されるように底面板1のコーナー部分から第一及び第二折り重ね片5a,5b間の外縁端まで伸びていることが好ましい。また、隅部山折りライン4,4の内縁側端部も、組み立てられるフランジ付容器の底面形状を安定させるために、図示されるように底面板1のコーナー部分に位置していることが好ましい。
【0026】
第一及び第二側面板3a,3bの外縁には、それぞれ開口部山折りライン7,7が形成されており、この開口部山折りライン7,7を介して、第一及び第二フランジ片8a,8bが連接されている。第一フランジ片8aの両端部は、第一側面板3aの両側縁に形成された隅部山折りライン4の延長線を越えて、それぞれ相隣接する第一折り重ね片5aの外側に延出した延出端部となっている。また、第二フランジ片8bの両端部は、第二側面板3bの側縁に形成された隅部山折りライン4の延長線を越えて、それぞれ相隣接する第二折り重ね片5bの外側に延出し、やはり延出端部となっている。第一及び第二フランジ片8a,8bは、開口部山折りライン7,7を介して屈曲され、延出端部同士が接合されてフランジ付容器のフランジ部108(図8参照)を構成するものである。
【0027】
第一折り重ね片5aの外側に延出した第一フランジ片8aの延出端部と、第一折り重ね片5aの外縁との間は、直線状のスリット9で区分されている。第二折り重ね片5bの外側に延出した第二フランジ片8bの延出端部と、第二折り重ね片5bの外縁との間は、切り欠き10で間隔をあけて区分され、第二フランジ片8bの延出端部内縁は外方に凸の曲線形状となっている。
【0028】
第一フランジ片8aの延出端部と、これと相隣接する第二フランジ片8bの延出端部とは、後述するように、フランジ付容器への組み立て時に、第一フランジ片8aの延出端部を下にし、第二フランジ片8bの延出端部を上にして重ね合わされる。第二フランジ片8bの延出端部と、第二折り重ね片5bの外縁との間が切り欠き10で間隔をあけて区分されているのは、第一フランジ片8aの延出端部の上に第二フランジ片8bの延出端部を重ねやすくするためのものである。また、第二フランジ片8bの延出端部内縁が外方に凸の曲線となっているのは、上側になって重ねられる第二フランジ片8bの延出端部の内縁を伝って漏れ出ようとする液体の漏出ルートを長くするものである。
【0029】
特に図2に明示されるように、第一フランジ片8aの延出端部と、第一折り重ね片5aの外縁との間を区分するスリット9の内端は、第一側面板3a側の隅部山折りライン4の延長線とは接触又は交差しておらず、相隣接する第一折り重ね片5aの外側へ延出した第一フランジ片8aの各延出端部の基部は、当該第一折り重ね片8aの外縁と連接幅Wで連接されている。第一フランジ片8aの延出端部の基部と、第一折り重ね片8aの外縁との連接は、組み立てられたフランジ付容器の内部にスリット9の内端が露出して液漏れの原因となるのを防止するもので、連接幅Wは0.5〜2mm程度とすることが好ましい。連接幅Wが小さすぎると液漏れを防止しにくく、連接幅Wが大きすぎると、第一フランジ片8aを開口部山折りライン7を介して屈曲させる時に、当該第一フランジ片8aの両延出端部を屈曲させにくくなる。
【0030】
第二フランジ部8bの延出端部と、第二折り重ね片5bの外縁との間を区分する切り欠き10の内端は、図2に示されるように、隅部山折りライン4の延長線と接触していることが好ましいが、第二側面板3b側の隅部山折りライン4の延長線との間に若干の隙間を残しておくこともできる。
【0031】
第一折り重ね片5aの外縁の重合谷折りライン6側には、第一折り重ね片5aの外側に延出している第一フランジ片8aの延出端部を避けて、接合片用山折りライン11を介して接合片12が連接されている。この接合片12は、第一及び第二フランジ片8a,8bで構成されるフランジ付容器のフランジ部108(図8参照)の下面に接合されて、折り重ねて接合された第一及び第二折り重ね片5a,5bをフランジ付容器の側面部103(図8参照)に沿った位置に固定するものである。
【0032】
第二折り重ね片の5bの外縁は、低縁部13と高縁部14の二段形状となっている。低縁部13は、隣接する第一折り重ね片5aに設けられた接合片用山折りライン11より内側で、しかも隣接する第一折り重ね片5a側に位置している。この低縁部13は、第一及び第二折り重ね片5a,5bを折り重ねた時に、第一折り重ね片5a側の接合片用山折りライン11上に第二折り重ね片5bの外縁が被さるのを逃がし、接合片用山折りライン11に沿った接合片12の屈曲を行いやすくするためのものである。また、高縁部14は、隣接する第一折り重ね片5aに設けられた接合片用山折りライン11と内外方向に同等の位置で、しかも隣接する第二側面板3b側に位置している。高縁部14の幅Lbは、第一折り重ね片5aの外側に延出した第一フランジ片8aの延出端部の延出長さLaより長くなっている。この高縁部14は、第一及び第二折り重ね片5a,5bを折り重ねた時に、スリット9と位置がほぼ揃い、第一折り重ね片5aの外側に延出した第一フランジ片8aの延出端部の基部からの液体漏れを抑制するものである。
【0033】
本発明に係る容器用ブランクを構成するシート材料としては、コートボール、コートマニラ、アイボリーなどの厚紙や、これらの厚紙に合成樹脂をラミネートしたラミネート紙を用いることができるが、少なくとも容器用ブランクの表面(フランジ付容器の内面を構成する側の面)に、熱融着させやすいポリエチレンなどのシーラント層を積層したラミネート紙が好ましい。また、耐水性を高めるために、裏面(フランジ付容器の外面を構成する側の面)にも合成樹脂層を積層したラミネート紙も好ましい。
【0034】
次に、図3〜図8に基づき、上述した容器用ブランクの組み立て手順の一例と共に本発明について更に説明する。なお、以下の説明においては、容器用ブランクの表面に熱融着用のシーラント層(図示されていない)が積層されているものとする。
【0035】
まず、図3〜図5に示されるように、第一及び第二側面板3a,3bを底部谷折りライン2,2を介して立ち上げて、フランジ付容器の側面部103(図8参照)を構成する。これと共に、第一及び第二折り重ね片5a,5bを、隅部山折りライン4,4及び重合谷折りライン6を介して外方へ折り重ねて熱融着により接合し、第一及び第二側面板3a,3bを立ち上げ状態で固定する。
【0036】
この時、隅部山折りライン4,4は、第一及び第二側面板3a,3bの側縁の外縁部には形成されていないので、初期段階において当該外縁部は完全に屈曲した状態にはなりにくく、図3において領域Xa,Xbとして示されるように湾曲した状態となる。湾曲した状態で完全には屈曲されていない部分同士を押し付け合わせて接合する場合、押し付け合いによって湾曲面が徐々に押し潰されて折れ目を形成しながら接合が進行するので、面接着が得やすくなる。このため、液漏れの原因となる、フランジ付容器のコーナー部内側上部での接合不良を生じにくくなり、密封性が大きく向上する。また、隅部山折りライン4,4が形成されていない、第一及び第二側面板3a,3bの側縁の外縁部における屈曲は、その内縁側に形成されている隅部山折りライン4,4により誘導されるので、屈曲方向が逸れたりする不都合も防止することができる。
【0037】
また、前述したように、第一フランジ片8aの延出端部と、第一折り重ね片5aの外縁との間を区分するスリット9(図2参照)の内端は、隅部山折りライン4の延長線とは接触又は交差しておらず、相隣接する第一折り重ね片5aの外側へ延出した第一フランジ片8aの各延出端部の基部は、当該第一折り重ね片8aの外縁と連接幅W(図2参照)で連接されている。このため、フランジ付容器の内部にスリット9(図2参照)の内端が露出してしまうことを防止することができる。
【0038】
更には、第二折り重ね片5bの高縁部14が、第一折り重ね片5aと、第一折り重ね片5aの外側に延出した第一フランジ片8aの延出端部の基部からスリット9(図2参照)の全長に亘って宛われることになり、スリット9部分からの液漏れを抑制することができる。
【0039】
上記第一及び第二側面板3a,3bの立ち上げと、第一及び第二折り重ね片5a,5bの外方へ折り重ね接合とを行った後、折り重ねて接合した第一及び第二折り重ね片5a,5bをフランジ付容器の側面部103(図8参照)に沿わせて屈曲させ、接合片12を第二フランジ片8bの裏面に接合する。なお、外方へ折り重ねて接合された第一及び第二折り重ね片5a,5bをフランジ付容器の側面部103に沿わせて屈曲させるとき、第一側面板3aと第一折り重ね片5a間の隅部山折りライン4は谷折りされることになる。隅部山折りライン4の「山折り」は、この谷折りに先立って行われる、第一及び第二折り重ね片5a,5bの外方への折り重ね接合時の折り曲げ方向を意味する。
【0040】
接合片12の接合後、図4〜図7に示されるように、第一及び第二フランジ片8a,8bを、開口部山折りライン7,7及び接合片用山折りライン11を介して水平に屈曲し、相隣接する第一及び第二フランジ片8a,8bの延出端部同士を接合してフランジ付容器のフランジ部108(図8参照)を構成する。第一及び第二フランジ片8a,8bの延出端部同士の接合は、第一フランジ片8aの延出端部を下にし、第二フランジ片8bの延出端部を上にして、両者を上下に重ね合わせて熱融着することで行う。本発明においては、図6に示されるように、上側になる第二フランジ片8bの延出端部の内縁が曲線となっているので、フランジ部108(図8参照)上に蓋体(図示されていない)を被せてシールした後、第二フランジ片8bの延出端部の内縁に沿って漏れ出ようとする液体の漏出ルートが長くなり、漏れを防止しやすくなる。
【0041】
接合片12は、本例のように、上側に重ねられる第二フランジ片8bの裏面に接合することが好ましい。しかし、例えば容器用ブランクの裏面にもポリエチレンなどの熱融着させやすい合成樹脂をラミネートした場合には、接合片12を第一フランジ片8aの裏面に接合することもできる。
【0042】
以上により、図8に示されるフランジ付容器を得ることができる。図8において、101は容器の底面部、103は側面部、108はフランジ部である。また、図1〜図8において、同じ符号は同じ部材又は部位を示す。
【0043】
図9は図8に示されるフランジ付容器のフランジ部に蓋体を融着した本発明に係る密封容器の一例を示す斜視図である。なお、図9において図8と同じ符号は同じ部材又は部位を示す。
【0044】
図中201は蓋体で、フランジ付容器の開口部を覆い、周縁部がフランジ部108に熱融着されてシールされている。蓋体201としては、少なくともフランジ部108との熱融着側の表面にシーラント層を有する、容器用ブランクと同様の材質のものや合成樹脂シートを用いることができる。本発明に係る密封容器によれば、既に説明した構成に基づいて、高い密封性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る容器用ブランクの一例を示す展開平面図である。
【図2】図1に示されるブランクの左上コーナー部付近の拡大平面図である。
【図3】第一及び第二側面板を立ち上げると共に、第一及び第二折り重ね片を外方へ折り重ねる途中段階の部分平面図である。
【図4】第一及び第二側面板の立ち上げと、第一及び第二折り重ね片の外方へ折り重ねとを完了した状態の部分平面図である。
【図5】図4におけるA−A視図である。
【図6】組み立てを完了した状態の部分平面図である。
【図7】組み立てを完了した状態の部分背面図である。
【図8】組み立てられたフランジ付容器の斜視図である。
【図9】図8に示されるフランジ付容器のフランジ部に蓋体を融着した本発明に係る密封容器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 底面板
2 底部谷折りライン
3a 第一側面板
3b 第二側面板
4 隅部山折りライン
5a 第一折り重ね片
5b 第二折り重ね片
6 重合谷折りライン
7 開口部山折りライン
8a 第一フランジ片
8b 第二フランジ片
9 スリット
10 切り欠き部
11 接合片用山折りライン
12 接合片
13 低縁部
14 高縁部
101 底面部
103 側面部
108 フランジ部
201 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁が四角形をなす底面板と、底面板の相対向する二辺及び他の二辺にそれぞれ底部谷折りラインを介して連接された第一及び第二側面板と、相隣接する第一及び第二側面板の各側縁に隅部山折りラインを介してそれぞれ連接され、中央の重合谷折りラインを介して連なる第一及び第二折り重ね片と、第一及び第二側面板の外縁に開口部山折りラインを介してそれぞれ連接され、両端が、隣接する第一又は第二折り重ね片の外側へそれぞれ延出した延出端部となった第一及び第二フランジ片と、第一折り重ね片の外縁の重合谷折りライン側に、接合片用山折りラインを介して連接された接合片とを備え、
第一及び第二側面板は、底部谷折りラインを介して立ち上げられて容器の側面部を構成し、第一及び第二折り重ね片は、隅部山折りライン及び重合谷折りラインを介して外方へ折り重ねて接合されて側面部に沿って屈曲され、第一及び第二フランジ片は、開口部山折りラインを介して水平に屈曲され、相隣接する第一及び第二フランジ片の延出端部が、第二フランジ片の延出端部を上にして上下に重ね合わせて接合されて容器のフランジ部を構成し、各接合片は、接合片用山折りラインを介して水平に屈曲され、フランジ部の下面に接合される容器用ブランクにおいて、
各隅部山折りラインが、それぞれ第一及び第二側面板の側縁の内縁部から中間部に亘って形成され、外縁部には形成されていないことを特徴とする容器用ブランク。
【請求項2】
第二フランジ片の延出端部の内縁が曲線となっていることを特徴とする請求項1に記載の容器用ブランク。
【請求項3】
第二折り重ね片の外縁が、隣接する第一折り重ね片に設けられた接合片用山折りラインより内側かつ該第一折り重ね片側に位置する低縁部と、内外方向に前記接合片用山折りラインと同等の位置でかつ隣接する第二側面板側に位置する高縁部との二段形状となっており、高縁部の幅が、前記第一折り重ね片の外側に延出した第一フランジ片の延出端部の延出長さより長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の容器用ブランク。
【請求項4】
相隣接する第一折り重ね片側の外側へ延出した第一フランジ片の各延出端部の基部が、当該第一折り重ね片の外縁と連接されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器用ブランク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器用ブランクを組み立てたフランジ付容器のフランジ部に蓋体がシールされていることを特徴とする密封容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−29430(P2009−29430A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192219(P2007−192219)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】