容器用紙蓋およびその製造方法
【課題】 蓋自体もしくは前記蓋を用いて包装した商品を、安定して積み重ねて保管や運搬が可能なスタッキング性を有し、アルミ製やプラスチック製のメンブレンを用いることなく単独の部材によって容器を密閉可能であり、温度変化による容器内部の空気の膨張や収縮によっても形状が安定しており、さらに生産性やコスト面に優れた紙蓋を提供する。
【解決手段】一枚の紙基材からなる一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形して基材表面に凹凸形状を形成した容器用紙蓋において、少なくとも紙蓋の内面に、ホットメルト接着剤層又はシーラント層を設けることにより、容器開口のフランジ部とシール接着させる。
【解決手段】一枚の紙基材からなる一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形して基材表面に凹凸形状を形成した容器用紙蓋において、少なくとも紙蓋の内面に、ホットメルト接着剤層又はシーラント層を設けることにより、容器開口のフランジ部とシール接着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリームやジャム、ヨーグルト等の紙カップ、その他の容器に使用する紙蓋であり、特に、1枚の紙基材からなるブランクシートから得られる容器用紙蓋、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイスクリームやジャム、ヨーグルト等の紙カップ、その他の容器に使用する蓋として、プラスチック製の蓋や紙製の蓋が用いられていた。プラスチック製の蓋は耐水性があり、成形自由度が高いという利点があるが、使用済みのプラスチック蓋は廃棄時のコストや環境負荷が大きいので、リサイクルが可能で、廃棄時の燃焼カロリーも低く、生分解性能を有し、環境負荷の低い紙蓋が好んで用いられている。
【0003】
上記、紙製の蓋材としては、カップ状容器の開口部に落とし込む一枚構成のいわゆる面子蓋(落とし蓋とも言われる)は、従来から存在した。この方式の蓋は、紙の表面や端面が食品に直に触れるおそれがあることや、密封可能な方式でないことから、消費者の清潔志向や高級志向に合わないため、近年その使用事例が減ってきている。
別の形態の紙製の蓋材としては、天板部と周側部の2ピースを組み合わせてなり、容器に被せて使用する蓋材がある。このような蓋材(被せ蓋)は、2種の部材を組み合わせて製造するため、前述の面子蓋より生産性が劣り、価格も上昇するという問題があるが、立体的な構造であり、前述の面子蓋よりも、内容物が蓋材に触れにくく、また紙の端面が内容物に触れる恐れがないという利点から、広く用いられるようになってきた。
しかし、このように単に容器に被せて使用する蓋材では、内容物を完全に密封することができず、より高度な品質保持機能を求められる場合には不十分であった。
さらに、被せ蓋は、一度開封しても再封鎖が可能であり、一旦開封されたかどうかが見分けにくく、不正に開封して容器内に異物を混入するなどの行為を防止することが困難であった。
このような問題を解決するため、近年、容器本体開口部に、アルミ製またはプラスチック製メンブレンを貼設したのち、更に前述した被せ蓋により容器を封鎖するという方式も広く実施されている。
しかし、この方式は、より多くの部材を必要とするので、必要な材料や工程数が増加し、その結果、コストが著しく増大するという問題がある。
【0004】
コストを増大させずに容器を密封可能な蓋としては、一枚のシート状の蓋材を、容器の開口フランジ部にホットメルト接着剤等でシールする方式の紙蓋がある。この方式では、紙蓋の端部は食品に触れず衛生的であり、接着による封鎖のため開封した痕跡が容易に分かるため、不正開封や異物混入の可能性が低く、安全への信頼性がある。また、一枚構成のシート状の蓋材であるため、生産性もよく、価格的にも安くできるなどのメリットがある。
しかし、このような方式の蓋は、蓋天面が平坦なために、商品や蓋そのものを積み重ねたときに係止するところがなく、安定して積み重ねることができない、即ち、スタッキング性がないという問題があった。
【0005】
さらに、一枚のシート状の蓋材であるため形状安定性が劣るという問題がある。この方式の場合、蓋が容器本体に接着され密封されているので、容器の中の上部空間部の空気が温度変化によって膨張、収縮した場合、それによって蓋が凹んだり、膨らんだりして変形する場合があり、商品の外観を損なったり、著しくは蓋材が容器本体から剥れる原因にもなっていた。このような問題は、特に冷菓等の冷蔵・冷凍して保存・流通する製品において特に問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明の目的は、蓋自体もしくは前記蓋を用いて包装した商品を、安定して積み重ねて保管や運搬が可能なスタッキング性を有し、アルミ製やプラスチック製のメンブレンを用いることなく単独の部材によって容器を密閉可能であり、温度変化による容器内部の空気の膨張や収縮によっても形状が安定しており、さらに生産性やコスト面に優れた紙蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、以下の手段により、上記本発明の課題を解決した。
本発明の第1は、一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形して基材表面に凹凸形状を形成した容器用紙蓋において、少なくとも紙蓋の内面に、ホットメルト接着剤層又はシーラント層を設けることにより、容器開口のフランジ部とシール接着させることを特徴とする容器用紙蓋である。
【0008】
本発明の第2は、前記凹凸部の高低差が0.5〜20mmである本発明の第1に記載の容器用紙蓋である。
【0009】
本発明の第3は、前記紙蓋に使用する紙基材は、米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、紙厚さが140μm〜1250μm、破断伸びが1.5%以上である本発明の第1〜2のいずれかに記載の容器用紙蓋である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓋自体もしくは前記蓋を用いて包装した商品を、安定して積み重ねて保管や運搬が可能なスタッキング性を有し、アルミ製やプラスチック製のメンブレンを用いることなく単独の部材によって容器を密閉可能であり、温度変化による容器内部の空気の膨張や収縮によっても形状が安定しており、さらに生産性やコスト面に優れた紙蓋を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明における紙蓋は、一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形(絞り成形)することにより得たものである。一枚の部材から構成される紙蓋であるため材料的にも工程的にも簡便であってコスト的に有利である。
なお、本発明の紙蓋は、必要十分な程度の剛性を有し、形状安定性があるものが望ましい。また、外観は、シワが目立たずに滑らかであることが望ましい。特に外観の滑らかさは、美観のみならず、容器開口のフランジ部との接着時に優れた密封性を得るために重要である。
【0012】
本発明でプレス成形は一対のプレス用金型により行う。一対のプレス用金型とは、凸状で成形品の内容積部に対応する形状の凸型と、凹状で成形品の外形に対応する形状の凹型である。前記一対のプレス用金型が、紙基材等を挟んでプレスすることによって、紙基材等を任意の形状に成形加工するものである。
一般的に、紙基材をプレス成形する場合は、成形性を高めるため、同時に加熱することが必要である。即ち、ある程度の高温、通常は100℃以上に加熱した上下一対の金型に挟んでプレスすることで、任意の形状に成形するものである。
プレス成形時には、通常は一対の金型を両方100℃以上に加熱して行うが、本発明の場合、必要に応じていずれか片方を加熱し、片方を非加熱の条件でプレス成形することが可能である。
たとえば、後述する紙基材の片面にホットメルト接着剤層等の、溶融温度は160〜180℃であるが、それよりも低温条件から粘着性が発揮される層が設けられている場合、その面に接する側の金型を非加熱、その反対面に接する側を加熱してプレス成形することで、前記接着剤等の溶融による金型への付着等が回避することが可能である。
【0013】
なお、特にプレス成形に適した紙基材を用いた場合においては、紙蓋の凹凸部の高低差が小さい場合、好適には20mm以下である場合には、非加熱条件でプレス成形することも可能である。
【0014】
紙蓋となる紙基材としては、プレス成形に適したものを使用するのが望ましい。具体的に述べると、プレス成形時の紙切れを防ぐため、またより形状の自由度を高めるために、伸張性能のよい紙基材を使用するのがよい。具体的には破断伸びが1.5%以上のものが好適に用いられる。このような伸長性能の良い紙基材としては、カップ原紙(コップ原紙)等が挙げられる。カップ原紙とは、晒化学パルプを原料として、強サイズが施されて円網あるいは長網抄紙機により抄造されたものをいい、上質紙、晒クラフト紙に近い紙質のものである。
【0015】
また、上記紙基材の坪量は、特には限定しないが、好適範囲は100〜500g/m2、さらに望ましい坪量は250〜420g/m2である。500g/m2を越える場合は、プレス成形が困難となり、また成形した紙蓋の外観がシワの目立つものになり、外観が劣るだけでなく、容器開口のフランジ部とのシール接着部分となる紙蓋の天面周縁部にシワによる段差が生じることによって、密閉性の劣るものになるおそれがある。100g/m2未満の低米坪の場合は、コシがないためにプレス成形が困難となる。また、成形後の紙蓋の形状が安定しない恐れがある。
上記紙基材の紙厚さは140〜1250μmの範囲が好適である。紙厚さが140μm以下の場合は、成形後の紙蓋の剛性が十分でない恐れがあり、1250μm以上では、プレス成形が困難になる。
【0016】
上記紙基材の密度は0.4〜0.7g/cm3が好適である。紙密度が0.4g/cm3未満のときは、嵩高すぎて紙層間強度が十分でなく、紙蓋を容器開口のフランジ部とシール接着した後、開封する時に紙層間剥離を起こす可能性がある。また、0.7g/cm3を越えた場合は、密度が高いためにプレス成形時に発生するシワによる段差が十分に吸収されず、容器開口のフランジ部とのシール接着部分となる紙蓋の天面周縁部にシワによる段差が生じることによって、密閉性の劣るものになる。また熱伝導性が高くなるため、後述のように、紙基材のシール面として、160℃〜180℃の比較的低温で溶融する、もしくは溶融点よりも低温から粘着性が生じるホットメルト接着剤層等を設けたブランクシートを使用した場合、プレス成形時に該接着剤層と反対面に接する金型のみを加熱した場合であっても、熱がブランクシートを介して反対面に伝わり、接着剤層が溶融して金型に付着する場合がある。
【0017】
本発明で用いる紙基材としては、紙層の少なくとも片面が、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂が積層されたラミネート紙が好適である。このようなラミネート紙を用いる事によって、熱可塑性樹脂層がシーラント層となるため、得られた紙蓋を容器本体に熱接着して密封封鎖することが可能となる。なお、前記熱可塑性樹脂層と紙層の間には、ガスバリアその他の目的のため、一層以上の別の層を任意に設けることが可能である。
本発明のブランクシート素材としては、印刷済の原紙巻取に対し、タンデム押出機を用いてPP等の合成樹脂によってラミネートした両面ラミネート紙が好適に使用される。合成樹脂層の厚さは、一例として20μmである。原紙の厚さは、合成樹脂層が20〜50μmである場合、0.16〜0.50mm程度、好ましくは0.20〜0.40mm程度である。
【0018】
本発明においては、紙層表面上、もしくは前記熱可塑性樹脂層を介して、さらにホットメルト接着剤層を設けることが望ましい。ホットメルト接着剤としては公知のものが必要に応じて適宜選択可能であるが、例えばEVA系ホットメルト接着剤等が特に好適に用いられる。
このようなホットメルト接着剤層を設けることによって、紙蓋と容器本体を熱接着して封鎖した場合に、開封時にイージーピール性を付与することが可能となる。
なお、前述のホットメルト接着剤層は、作業性の面よりブランクシート全面に設けることが好ましいが、状況に応じてフランジとの接着箇所となる部分のみにパターン塗工することも可能である。
【0019】
本発明で用いる紙基材には、必要に応じてその片面、あるいは両面に顔料と接着剤からなる塗工層を設けることができる。
前記塗工層に用いられる顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメント等既知のものが任意に使用できる。前記塗工層に用いられる接着剤としては、澱粉、カゼイン、SBRラテックス、ポリビニルアルコールなど既知のものが任意に使用できる。これらの塗工層は単層、あるいは多層に形成することができる。
またその塗工量は全体で20〜30g/m2程度が望ましい。このような塗工層を設ける場合は、塗工層直下の層は、叩解度を高め、表面をより平滑にしておくことがさらに好ましい。このような塗工層は、公知である各種の塗工装置を適宜用いて塗工することができる。
【0020】
また、本発明で用いる紙基材としては、紙層表面に直接、もしくは、前述の塗工層上に、さらに印刷層を設けることが可能である。
なお本発明においては、プレス成形時に、ブランクシートの表面が金型と接触して強くしごかれるため、印刷層上には、さらに合成樹脂による保護層を有することが望ましい。
【0021】
本発明においては、上記紙基材を打ち抜いて得られたブランクシートを、プレス成形して紙蓋とする。この紙蓋は、紙蓋のホットメルト接着剤層もしくはシーラント層によって、内容物を包装したカップ状の容器本体の開口に被せた後、さらに加熱することによって、その開口のフランジ部分にシール接着し、容器を密封閉鎖することが可能である(図15参照)。
なお、容器本体のフランジ部については、実質的に、紙蓋が接着可能な幅と構造を有していれば、その形状は問わないものとする。
【0022】
図1〜図3は本発明の紙蓋の一実施形態を示すものであって、図1は紙蓋の斜視図、図2はその断面図、図3は容器の開口周縁部に、本発明の紙蓋Aの周側部が接着および嵌合された状態を示す部分断面図である。図4は成形前の紙蓋のブランクシートを示し、略円板形状に形成されている。ブランクシート形状は円状に限られず、楕円形、角形、そのほか多角形であってもよく、容器の形状に応じて種々の形に設計できる。
なお、図中、1は中央の天板、2は天板1に連続して周側部2がある高さを持って外側垂直方向に形成されているか、後記のように周側部がない平板形状でも構わない。ここで紙蓋Aの天板1は中央がドーム状に盛り上がった形状になっている。ドーム状突出部3の形は、蓋成形用金型により様々の形状に成形することが可能であって、図3のように外輪に平坦部4aを有するもの、後述する図5に示すように、外輪に溝部4bを有するものを例示したが、これに限るものではない。
【0023】
なお、天板の中央にドーム状突出部3を設けた場合には、蓋の形状安定性が向上する。同時に、特にアイスクリーム等の氷菓に使用する際には、通常、前記氷菓は、流動体として容器の中心部中央から充填されるが、粘性のある流動体であること、また、冷凍により体積が膨張することによって、中央部が盛り上がった形になりやすい。従って、蓋の中央部にドーム状の突出部を設けることによって、氷菓の表面が盛り上がった状態になったとしても、蓋をかぶせる際に、盛り上がりによって蓋が浮くことがない。また、内容物が蓋に付着することもなく、製品の外観を損なうことがない、という効果がある。また、図のような外輪に設けた平坦部や溝部を利用して、本発明の紙蓋Aを被せた容器を上下方向に複数個積み重ねた時に、平坦部や溝部の上に、上方の容器の底が安定よく載置できるので、容器運搬時の取扱いに便利となる。
符号Bは容器を示ス。容器Bの材質は紙、プラスチック等何でもよいが、紙蓋Aの材質は、紙の両面または片面に、熱可塑性樹脂をラミネートした紙基材から構成されているか、さらにホットメルト接着剤が塗布されている。
【0024】
本発明の紙蓋Aは、上記の紙基材を原材料として、先ず平判に断裁しその後、後記実施例示すように、所定形状(円形あるいは角形等)に打ち抜くと同時に、押罫線5を中央天板1の周囲の周側部2に定間隔、かつブランクシートの中心から放射状に付与するように構成されている。この押罫線5は成形時に、紙蓋に生ずるシワをコントロールするものである、すなわち、プレス成形体が歪の大きい曲面部を有する場合、プレス成形時に曲面部分に折りシワを形成させて歪を吸収させる必要がある。このとき折りシワ部分は平面方向にアコーディオンのように折りこまれて凹凸を形成し、その後、プレスによりその凹凸部がブランクシートの厚さ方向に圧縮される。丸形状の紙蓋のブランクシートの一例を図4に示す。同図のブランクシートは、直径94mmに形成された円形ブランクシートの周側部2に相当する位置に44本の罫線5を、所定間隔(約5mm間隔)で放射状に付与したものである。因みに上記紙基材としては、280g/m2+PPラミ30g/m2、原紙密度は0.60(ラミネート前の原紙)破断は伸び3.2%である成形加工原紙を使用した。
【0025】
このような押罫線5を付与した紙基材からなるブランクシートに対してプレス成形を施し、図1、図2に示すように本発明の紙蓋を成形する。なお、図中符号6は周側部に設けた嵌合用突起である。
【0026】
図5〜図7は本発明の紙蓋の別例を示すものであって、図5は斜視図、図6は右側面図、図7は断面図であり、図1〜3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0027】
更に、図8〜図10に本発明の紙蓋の別例として、紙蓋が周側部を持たない形状で、天板部に凹部を有するものを示す。
図8は斜視図、図9は右側面図、図10は断面図を表している。このような凹部により、紙蓋同士のスタッキング性が確保される(図11参照)。また該紙蓋によって紙カップ状容器本体を封緘した場合、容器本体とのスタッキング性を確保可能である(図12参照)。
なお、このように簡易な形状であって、特に中央凹部と周縁部の凸部12の高低差が0.5〜20mmの範囲であれば、プレス成形時に加熱する必要がなく、特に本発明に用いるのに最適な成形加工原紙(後述)を用いた場合、加熱しなくても形状安定性等が良好な紙蓋を得ることが可能である。従って、通常のブランクシートの打ち抜き工程と同時にプレス成形加工が可能であり、あえて別にプレス成形工程を設ける必要がなく工程の省略が可能であって、生産性、コスト的な面から特に優れている。また資材を節約可能であるという点においても優れている。
また、本発明においては、図8〜図10とは逆に、紙蓋が凸部を有する形状であっても良い。図13が斜視図、図14が右側面図である。このような形状でも前述の凹部を有するものと同様の効果が得られる。
【0028】
<本発明に最適な紙蓋用成形加工原紙>
本発明の紙蓋において、紙基材として最適に用いられる成形加工原紙の構成を以下に述べる。
本発明で得られる紙蓋に対して実用的に必要な剛性を付与し、プレス成形後の曲面部での破断を抑止するためには、紙蓋を構成する素材として低密度で強度の高い成形加工原紙を使用することが好適である。
このような成形加工原紙を得るためには、紙に使用するパルプとしてリグニンを多量に残留させた機械パルプを含有することが好ましい。なお、機械パルプ使用の有無を判定する手段としては、例えばTAPPI T401−os−74記載の方法で機械パルプを検出することが可能である。また、成形加工原紙に使用する紙中の機械パルプ使用量としては5〜100質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは20〜80質量%での範囲で、最も好ましくは40〜70質量%の範囲である。機械パルプが5質量%以上の場合、成形加工原紙が低密度化させることができるので好ましい。また成形加工原紙に特に伸長性を持たせたい場合には機械パルプ使用量を80質量%以下、好ましくは70質量%以下とすることが好ましい。なお、紙中の機械パルプ使用量は、TAPPI T−401−os−74に記載された手段を用いて規定することができ、具体的には以下の方法をとる。まず、成形加工原紙を水または熱水で再離解する。次に、この再離解したパルプ繊維をスライドグラス上に分散させ、C染色液、Herzberg染色液、Sellegen染色液等のパルプ染色液を滴下してパルプ繊維を染色する。その後、上記スライドを顕微鏡で観察してパルプ繊維の染色性、形態的特徴に基づいて繊維組成を判別する。この時、同時にスライドを規則的に走査しながら、一定面積当たりに存在するパルプ繊維を種別ごとに計数し、重み係数によって質量百分率に換算する。
【0029】
プレス成形して得た紙蓋の物性を実現するためには、成形加工原紙に使用する紙の米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、破断伸びが1.5%以上であることが好ましい。
さらに、密度0.7〜0.9g/cm3である高密度層を少なくとも一層、及び、密度が0.2〜0.6g/cm3の少なくとも一層の低密度層を有することが好ましい。低密度層の密度は、さらに好ましくは0.3〜0.5g/cm3である。
【0030】
以上の構成にすることにより、米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、破断伸びが1.5%以上である紙が得られる。
伸びを1.5%以上にするために、必要であれば、外層に繊維長が長いNBKPを配合し、適切な叩解度まで叩解して使用することが可能である。
【0031】
成形加工原紙に使用する紙としては、紙蓋の外側となる側の外層を構成する原料パルプとして、該原料パルプを単層で抄紙した場合の破断伸びが3%以上となる原料を使用することがさらに望ましい。(この単層抄紙条件はTAPPI標準法による。)紙蓋の外側となる側の紙層は、プレス成形時に内側よりも多く延伸されるため、内側よりもさらに強い破断伸びが必要とされるが、このように外側に延伸しやすいパルプ原料を使用することによって、プレス成形における外側の紙層表面のひび割れ、破れを防止し、より深いプレス成形を可能とするものである。なお、成形加工原紙に使用する紙の破断伸びの調整は、前記と同様、繊維長の長いNBKPを配合し、叩解の程度を調節するなどの公知の方法で可能である。
【0032】
<プレス成形加工条件>
本発明の紙蓋の製造方法であるプレス成形加工条件について以下に詳述する。
本発明においては、紙基材をブランクシートに打ち抜き、必要箇所に罫線5を入れ、凸型と凹型よりなる一対のプレス型に該ブランクシートを挟み、加熱、加圧して成形する、いわゆるプレス成形という製造方法をとる。
この時、紙基材においては、予め調湿し、原紙水分を調節することが必要である。原紙水分は10〜20%の範囲にする必要があり、好ましくは11〜17%、最も好ましくは12〜15%である。ここでいう原紙水分とは、紙基材中の全パルプ分の絶乾質量に対する水分の質量%をいう。原紙水分をこの好適範囲とすると、紙基材の可塑化が起こって成形性が向上し、また、成形時の紙層の破壊を低減することができる。この結果、より深さがあり、外観が滑らかで美しく、しかも高い剛性を有したプレス成形紙蓋を得ることができる。原紙水分が10%未満であると紙蓋に十分な剛性が得られず、また20%を越えると、成形加工原紙にブリスターが発生して紙層が剥離が発生する、また水分量が多くなるため乾燥に時間がかかり生産性が落ちる等の問題が発生し好ましくない。なお、原紙水分の調製方法として、プレス成形直前に紙基材に水分を供与する方法や、紙の抄造時において、ドライヤーを出た後に加湿し、水分が維持される状態で輸送・保存する方法などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の紙蓋の一例を示す斜視図である。
【図2】同上断面図である。
【図3】容器の縁部に本発明の紙蓋が接着・嵌合した状態を示す部分断面図である。
【図4】紙蓋のブランクシートの一例を示す平面図である。
【図5】本発明の紙蓋の別例を示す斜視図である。
【図6】同上側面図である。
【図7】同上断面図である。
【図8】本発明の紙蓋の別例を示す斜視図である。
【図9】同上側面図である。
【図10】同上断面図である。
【図11】本発明の紙蓋をスタッキングした断面図である。
【図12】本発明の紙蓋を用いた容器をスタッキングした断面図である。
【図13】本発明の紙蓋の別例を示す斜視図である。
【図14】同上側面図である。
【図15】本発明の紙蓋と容器の接着状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
A A2 紙蓋、B 容器
1 中央の天板
2 周側部
3 ドーム状突出部
4a 平坦部
4b 溝部
5 押罫線
6 筋状突出部
7 波形フリル
11 凹部
12 13 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリームやジャム、ヨーグルト等の紙カップ、その他の容器に使用する紙蓋であり、特に、1枚の紙基材からなるブランクシートから得られる容器用紙蓋、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイスクリームやジャム、ヨーグルト等の紙カップ、その他の容器に使用する蓋として、プラスチック製の蓋や紙製の蓋が用いられていた。プラスチック製の蓋は耐水性があり、成形自由度が高いという利点があるが、使用済みのプラスチック蓋は廃棄時のコストや環境負荷が大きいので、リサイクルが可能で、廃棄時の燃焼カロリーも低く、生分解性能を有し、環境負荷の低い紙蓋が好んで用いられている。
【0003】
上記、紙製の蓋材としては、カップ状容器の開口部に落とし込む一枚構成のいわゆる面子蓋(落とし蓋とも言われる)は、従来から存在した。この方式の蓋は、紙の表面や端面が食品に直に触れるおそれがあることや、密封可能な方式でないことから、消費者の清潔志向や高級志向に合わないため、近年その使用事例が減ってきている。
別の形態の紙製の蓋材としては、天板部と周側部の2ピースを組み合わせてなり、容器に被せて使用する蓋材がある。このような蓋材(被せ蓋)は、2種の部材を組み合わせて製造するため、前述の面子蓋より生産性が劣り、価格も上昇するという問題があるが、立体的な構造であり、前述の面子蓋よりも、内容物が蓋材に触れにくく、また紙の端面が内容物に触れる恐れがないという利点から、広く用いられるようになってきた。
しかし、このように単に容器に被せて使用する蓋材では、内容物を完全に密封することができず、より高度な品質保持機能を求められる場合には不十分であった。
さらに、被せ蓋は、一度開封しても再封鎖が可能であり、一旦開封されたかどうかが見分けにくく、不正に開封して容器内に異物を混入するなどの行為を防止することが困難であった。
このような問題を解決するため、近年、容器本体開口部に、アルミ製またはプラスチック製メンブレンを貼設したのち、更に前述した被せ蓋により容器を封鎖するという方式も広く実施されている。
しかし、この方式は、より多くの部材を必要とするので、必要な材料や工程数が増加し、その結果、コストが著しく増大するという問題がある。
【0004】
コストを増大させずに容器を密封可能な蓋としては、一枚のシート状の蓋材を、容器の開口フランジ部にホットメルト接着剤等でシールする方式の紙蓋がある。この方式では、紙蓋の端部は食品に触れず衛生的であり、接着による封鎖のため開封した痕跡が容易に分かるため、不正開封や異物混入の可能性が低く、安全への信頼性がある。また、一枚構成のシート状の蓋材であるため、生産性もよく、価格的にも安くできるなどのメリットがある。
しかし、このような方式の蓋は、蓋天面が平坦なために、商品や蓋そのものを積み重ねたときに係止するところがなく、安定して積み重ねることができない、即ち、スタッキング性がないという問題があった。
【0005】
さらに、一枚のシート状の蓋材であるため形状安定性が劣るという問題がある。この方式の場合、蓋が容器本体に接着され密封されているので、容器の中の上部空間部の空気が温度変化によって膨張、収縮した場合、それによって蓋が凹んだり、膨らんだりして変形する場合があり、商品の外観を損なったり、著しくは蓋材が容器本体から剥れる原因にもなっていた。このような問題は、特に冷菓等の冷蔵・冷凍して保存・流通する製品において特に問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明の目的は、蓋自体もしくは前記蓋を用いて包装した商品を、安定して積み重ねて保管や運搬が可能なスタッキング性を有し、アルミ製やプラスチック製のメンブレンを用いることなく単独の部材によって容器を密閉可能であり、温度変化による容器内部の空気の膨張や収縮によっても形状が安定しており、さらに生産性やコスト面に優れた紙蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、以下の手段により、上記本発明の課題を解決した。
本発明の第1は、一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形して基材表面に凹凸形状を形成した容器用紙蓋において、少なくとも紙蓋の内面に、ホットメルト接着剤層又はシーラント層を設けることにより、容器開口のフランジ部とシール接着させることを特徴とする容器用紙蓋である。
【0008】
本発明の第2は、前記凹凸部の高低差が0.5〜20mmである本発明の第1に記載の容器用紙蓋である。
【0009】
本発明の第3は、前記紙蓋に使用する紙基材は、米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、紙厚さが140μm〜1250μm、破断伸びが1.5%以上である本発明の第1〜2のいずれかに記載の容器用紙蓋である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓋自体もしくは前記蓋を用いて包装した商品を、安定して積み重ねて保管や運搬が可能なスタッキング性を有し、アルミ製やプラスチック製のメンブレンを用いることなく単独の部材によって容器を密閉可能であり、温度変化による容器内部の空気の膨張や収縮によっても形状が安定しており、さらに生産性やコスト面に優れた紙蓋を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明における紙蓋は、一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形(絞り成形)することにより得たものである。一枚の部材から構成される紙蓋であるため材料的にも工程的にも簡便であってコスト的に有利である。
なお、本発明の紙蓋は、必要十分な程度の剛性を有し、形状安定性があるものが望ましい。また、外観は、シワが目立たずに滑らかであることが望ましい。特に外観の滑らかさは、美観のみならず、容器開口のフランジ部との接着時に優れた密封性を得るために重要である。
【0012】
本発明でプレス成形は一対のプレス用金型により行う。一対のプレス用金型とは、凸状で成形品の内容積部に対応する形状の凸型と、凹状で成形品の外形に対応する形状の凹型である。前記一対のプレス用金型が、紙基材等を挟んでプレスすることによって、紙基材等を任意の形状に成形加工するものである。
一般的に、紙基材をプレス成形する場合は、成形性を高めるため、同時に加熱することが必要である。即ち、ある程度の高温、通常は100℃以上に加熱した上下一対の金型に挟んでプレスすることで、任意の形状に成形するものである。
プレス成形時には、通常は一対の金型を両方100℃以上に加熱して行うが、本発明の場合、必要に応じていずれか片方を加熱し、片方を非加熱の条件でプレス成形することが可能である。
たとえば、後述する紙基材の片面にホットメルト接着剤層等の、溶融温度は160〜180℃であるが、それよりも低温条件から粘着性が発揮される層が設けられている場合、その面に接する側の金型を非加熱、その反対面に接する側を加熱してプレス成形することで、前記接着剤等の溶融による金型への付着等が回避することが可能である。
【0013】
なお、特にプレス成形に適した紙基材を用いた場合においては、紙蓋の凹凸部の高低差が小さい場合、好適には20mm以下である場合には、非加熱条件でプレス成形することも可能である。
【0014】
紙蓋となる紙基材としては、プレス成形に適したものを使用するのが望ましい。具体的に述べると、プレス成形時の紙切れを防ぐため、またより形状の自由度を高めるために、伸張性能のよい紙基材を使用するのがよい。具体的には破断伸びが1.5%以上のものが好適に用いられる。このような伸長性能の良い紙基材としては、カップ原紙(コップ原紙)等が挙げられる。カップ原紙とは、晒化学パルプを原料として、強サイズが施されて円網あるいは長網抄紙機により抄造されたものをいい、上質紙、晒クラフト紙に近い紙質のものである。
【0015】
また、上記紙基材の坪量は、特には限定しないが、好適範囲は100〜500g/m2、さらに望ましい坪量は250〜420g/m2である。500g/m2を越える場合は、プレス成形が困難となり、また成形した紙蓋の外観がシワの目立つものになり、外観が劣るだけでなく、容器開口のフランジ部とのシール接着部分となる紙蓋の天面周縁部にシワによる段差が生じることによって、密閉性の劣るものになるおそれがある。100g/m2未満の低米坪の場合は、コシがないためにプレス成形が困難となる。また、成形後の紙蓋の形状が安定しない恐れがある。
上記紙基材の紙厚さは140〜1250μmの範囲が好適である。紙厚さが140μm以下の場合は、成形後の紙蓋の剛性が十分でない恐れがあり、1250μm以上では、プレス成形が困難になる。
【0016】
上記紙基材の密度は0.4〜0.7g/cm3が好適である。紙密度が0.4g/cm3未満のときは、嵩高すぎて紙層間強度が十分でなく、紙蓋を容器開口のフランジ部とシール接着した後、開封する時に紙層間剥離を起こす可能性がある。また、0.7g/cm3を越えた場合は、密度が高いためにプレス成形時に発生するシワによる段差が十分に吸収されず、容器開口のフランジ部とのシール接着部分となる紙蓋の天面周縁部にシワによる段差が生じることによって、密閉性の劣るものになる。また熱伝導性が高くなるため、後述のように、紙基材のシール面として、160℃〜180℃の比較的低温で溶融する、もしくは溶融点よりも低温から粘着性が生じるホットメルト接着剤層等を設けたブランクシートを使用した場合、プレス成形時に該接着剤層と反対面に接する金型のみを加熱した場合であっても、熱がブランクシートを介して反対面に伝わり、接着剤層が溶融して金型に付着する場合がある。
【0017】
本発明で用いる紙基材としては、紙層の少なくとも片面が、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂が積層されたラミネート紙が好適である。このようなラミネート紙を用いる事によって、熱可塑性樹脂層がシーラント層となるため、得られた紙蓋を容器本体に熱接着して密封封鎖することが可能となる。なお、前記熱可塑性樹脂層と紙層の間には、ガスバリアその他の目的のため、一層以上の別の層を任意に設けることが可能である。
本発明のブランクシート素材としては、印刷済の原紙巻取に対し、タンデム押出機を用いてPP等の合成樹脂によってラミネートした両面ラミネート紙が好適に使用される。合成樹脂層の厚さは、一例として20μmである。原紙の厚さは、合成樹脂層が20〜50μmである場合、0.16〜0.50mm程度、好ましくは0.20〜0.40mm程度である。
【0018】
本発明においては、紙層表面上、もしくは前記熱可塑性樹脂層を介して、さらにホットメルト接着剤層を設けることが望ましい。ホットメルト接着剤としては公知のものが必要に応じて適宜選択可能であるが、例えばEVA系ホットメルト接着剤等が特に好適に用いられる。
このようなホットメルト接着剤層を設けることによって、紙蓋と容器本体を熱接着して封鎖した場合に、開封時にイージーピール性を付与することが可能となる。
なお、前述のホットメルト接着剤層は、作業性の面よりブランクシート全面に設けることが好ましいが、状況に応じてフランジとの接着箇所となる部分のみにパターン塗工することも可能である。
【0019】
本発明で用いる紙基材には、必要に応じてその片面、あるいは両面に顔料と接着剤からなる塗工層を設けることができる。
前記塗工層に用いられる顔料としては、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン、プラスチックピグメント等既知のものが任意に使用できる。前記塗工層に用いられる接着剤としては、澱粉、カゼイン、SBRラテックス、ポリビニルアルコールなど既知のものが任意に使用できる。これらの塗工層は単層、あるいは多層に形成することができる。
またその塗工量は全体で20〜30g/m2程度が望ましい。このような塗工層を設ける場合は、塗工層直下の層は、叩解度を高め、表面をより平滑にしておくことがさらに好ましい。このような塗工層は、公知である各種の塗工装置を適宜用いて塗工することができる。
【0020】
また、本発明で用いる紙基材としては、紙層表面に直接、もしくは、前述の塗工層上に、さらに印刷層を設けることが可能である。
なお本発明においては、プレス成形時に、ブランクシートの表面が金型と接触して強くしごかれるため、印刷層上には、さらに合成樹脂による保護層を有することが望ましい。
【0021】
本発明においては、上記紙基材を打ち抜いて得られたブランクシートを、プレス成形して紙蓋とする。この紙蓋は、紙蓋のホットメルト接着剤層もしくはシーラント層によって、内容物を包装したカップ状の容器本体の開口に被せた後、さらに加熱することによって、その開口のフランジ部分にシール接着し、容器を密封閉鎖することが可能である(図15参照)。
なお、容器本体のフランジ部については、実質的に、紙蓋が接着可能な幅と構造を有していれば、その形状は問わないものとする。
【0022】
図1〜図3は本発明の紙蓋の一実施形態を示すものであって、図1は紙蓋の斜視図、図2はその断面図、図3は容器の開口周縁部に、本発明の紙蓋Aの周側部が接着および嵌合された状態を示す部分断面図である。図4は成形前の紙蓋のブランクシートを示し、略円板形状に形成されている。ブランクシート形状は円状に限られず、楕円形、角形、そのほか多角形であってもよく、容器の形状に応じて種々の形に設計できる。
なお、図中、1は中央の天板、2は天板1に連続して周側部2がある高さを持って外側垂直方向に形成されているか、後記のように周側部がない平板形状でも構わない。ここで紙蓋Aの天板1は中央がドーム状に盛り上がった形状になっている。ドーム状突出部3の形は、蓋成形用金型により様々の形状に成形することが可能であって、図3のように外輪に平坦部4aを有するもの、後述する図5に示すように、外輪に溝部4bを有するものを例示したが、これに限るものではない。
【0023】
なお、天板の中央にドーム状突出部3を設けた場合には、蓋の形状安定性が向上する。同時に、特にアイスクリーム等の氷菓に使用する際には、通常、前記氷菓は、流動体として容器の中心部中央から充填されるが、粘性のある流動体であること、また、冷凍により体積が膨張することによって、中央部が盛り上がった形になりやすい。従って、蓋の中央部にドーム状の突出部を設けることによって、氷菓の表面が盛り上がった状態になったとしても、蓋をかぶせる際に、盛り上がりによって蓋が浮くことがない。また、内容物が蓋に付着することもなく、製品の外観を損なうことがない、という効果がある。また、図のような外輪に設けた平坦部や溝部を利用して、本発明の紙蓋Aを被せた容器を上下方向に複数個積み重ねた時に、平坦部や溝部の上に、上方の容器の底が安定よく載置できるので、容器運搬時の取扱いに便利となる。
符号Bは容器を示ス。容器Bの材質は紙、プラスチック等何でもよいが、紙蓋Aの材質は、紙の両面または片面に、熱可塑性樹脂をラミネートした紙基材から構成されているか、さらにホットメルト接着剤が塗布されている。
【0024】
本発明の紙蓋Aは、上記の紙基材を原材料として、先ず平判に断裁しその後、後記実施例示すように、所定形状(円形あるいは角形等)に打ち抜くと同時に、押罫線5を中央天板1の周囲の周側部2に定間隔、かつブランクシートの中心から放射状に付与するように構成されている。この押罫線5は成形時に、紙蓋に生ずるシワをコントロールするものである、すなわち、プレス成形体が歪の大きい曲面部を有する場合、プレス成形時に曲面部分に折りシワを形成させて歪を吸収させる必要がある。このとき折りシワ部分は平面方向にアコーディオンのように折りこまれて凹凸を形成し、その後、プレスによりその凹凸部がブランクシートの厚さ方向に圧縮される。丸形状の紙蓋のブランクシートの一例を図4に示す。同図のブランクシートは、直径94mmに形成された円形ブランクシートの周側部2に相当する位置に44本の罫線5を、所定間隔(約5mm間隔)で放射状に付与したものである。因みに上記紙基材としては、280g/m2+PPラミ30g/m2、原紙密度は0.60(ラミネート前の原紙)破断は伸び3.2%である成形加工原紙を使用した。
【0025】
このような押罫線5を付与した紙基材からなるブランクシートに対してプレス成形を施し、図1、図2に示すように本発明の紙蓋を成形する。なお、図中符号6は周側部に設けた嵌合用突起である。
【0026】
図5〜図7は本発明の紙蓋の別例を示すものであって、図5は斜視図、図6は右側面図、図7は断面図であり、図1〜3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0027】
更に、図8〜図10に本発明の紙蓋の別例として、紙蓋が周側部を持たない形状で、天板部に凹部を有するものを示す。
図8は斜視図、図9は右側面図、図10は断面図を表している。このような凹部により、紙蓋同士のスタッキング性が確保される(図11参照)。また該紙蓋によって紙カップ状容器本体を封緘した場合、容器本体とのスタッキング性を確保可能である(図12参照)。
なお、このように簡易な形状であって、特に中央凹部と周縁部の凸部12の高低差が0.5〜20mmの範囲であれば、プレス成形時に加熱する必要がなく、特に本発明に用いるのに最適な成形加工原紙(後述)を用いた場合、加熱しなくても形状安定性等が良好な紙蓋を得ることが可能である。従って、通常のブランクシートの打ち抜き工程と同時にプレス成形加工が可能であり、あえて別にプレス成形工程を設ける必要がなく工程の省略が可能であって、生産性、コスト的な面から特に優れている。また資材を節約可能であるという点においても優れている。
また、本発明においては、図8〜図10とは逆に、紙蓋が凸部を有する形状であっても良い。図13が斜視図、図14が右側面図である。このような形状でも前述の凹部を有するものと同様の効果が得られる。
【0028】
<本発明に最適な紙蓋用成形加工原紙>
本発明の紙蓋において、紙基材として最適に用いられる成形加工原紙の構成を以下に述べる。
本発明で得られる紙蓋に対して実用的に必要な剛性を付与し、プレス成形後の曲面部での破断を抑止するためには、紙蓋を構成する素材として低密度で強度の高い成形加工原紙を使用することが好適である。
このような成形加工原紙を得るためには、紙に使用するパルプとしてリグニンを多量に残留させた機械パルプを含有することが好ましい。なお、機械パルプ使用の有無を判定する手段としては、例えばTAPPI T401−os−74記載の方法で機械パルプを検出することが可能である。また、成形加工原紙に使用する紙中の機械パルプ使用量としては5〜100質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは20〜80質量%での範囲で、最も好ましくは40〜70質量%の範囲である。機械パルプが5質量%以上の場合、成形加工原紙が低密度化させることができるので好ましい。また成形加工原紙に特に伸長性を持たせたい場合には機械パルプ使用量を80質量%以下、好ましくは70質量%以下とすることが好ましい。なお、紙中の機械パルプ使用量は、TAPPI T−401−os−74に記載された手段を用いて規定することができ、具体的には以下の方法をとる。まず、成形加工原紙を水または熱水で再離解する。次に、この再離解したパルプ繊維をスライドグラス上に分散させ、C染色液、Herzberg染色液、Sellegen染色液等のパルプ染色液を滴下してパルプ繊維を染色する。その後、上記スライドを顕微鏡で観察してパルプ繊維の染色性、形態的特徴に基づいて繊維組成を判別する。この時、同時にスライドを規則的に走査しながら、一定面積当たりに存在するパルプ繊維を種別ごとに計数し、重み係数によって質量百分率に換算する。
【0029】
プレス成形して得た紙蓋の物性を実現するためには、成形加工原紙に使用する紙の米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、破断伸びが1.5%以上であることが好ましい。
さらに、密度0.7〜0.9g/cm3である高密度層を少なくとも一層、及び、密度が0.2〜0.6g/cm3の少なくとも一層の低密度層を有することが好ましい。低密度層の密度は、さらに好ましくは0.3〜0.5g/cm3である。
【0030】
以上の構成にすることにより、米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、破断伸びが1.5%以上である紙が得られる。
伸びを1.5%以上にするために、必要であれば、外層に繊維長が長いNBKPを配合し、適切な叩解度まで叩解して使用することが可能である。
【0031】
成形加工原紙に使用する紙としては、紙蓋の外側となる側の外層を構成する原料パルプとして、該原料パルプを単層で抄紙した場合の破断伸びが3%以上となる原料を使用することがさらに望ましい。(この単層抄紙条件はTAPPI標準法による。)紙蓋の外側となる側の紙層は、プレス成形時に内側よりも多く延伸されるため、内側よりもさらに強い破断伸びが必要とされるが、このように外側に延伸しやすいパルプ原料を使用することによって、プレス成形における外側の紙層表面のひび割れ、破れを防止し、より深いプレス成形を可能とするものである。なお、成形加工原紙に使用する紙の破断伸びの調整は、前記と同様、繊維長の長いNBKPを配合し、叩解の程度を調節するなどの公知の方法で可能である。
【0032】
<プレス成形加工条件>
本発明の紙蓋の製造方法であるプレス成形加工条件について以下に詳述する。
本発明においては、紙基材をブランクシートに打ち抜き、必要箇所に罫線5を入れ、凸型と凹型よりなる一対のプレス型に該ブランクシートを挟み、加熱、加圧して成形する、いわゆるプレス成形という製造方法をとる。
この時、紙基材においては、予め調湿し、原紙水分を調節することが必要である。原紙水分は10〜20%の範囲にする必要があり、好ましくは11〜17%、最も好ましくは12〜15%である。ここでいう原紙水分とは、紙基材中の全パルプ分の絶乾質量に対する水分の質量%をいう。原紙水分をこの好適範囲とすると、紙基材の可塑化が起こって成形性が向上し、また、成形時の紙層の破壊を低減することができる。この結果、より深さがあり、外観が滑らかで美しく、しかも高い剛性を有したプレス成形紙蓋を得ることができる。原紙水分が10%未満であると紙蓋に十分な剛性が得られず、また20%を越えると、成形加工原紙にブリスターが発生して紙層が剥離が発生する、また水分量が多くなるため乾燥に時間がかかり生産性が落ちる等の問題が発生し好ましくない。なお、原紙水分の調製方法として、プレス成形直前に紙基材に水分を供与する方法や、紙の抄造時において、ドライヤーを出た後に加湿し、水分が維持される状態で輸送・保存する方法などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の紙蓋の一例を示す斜視図である。
【図2】同上断面図である。
【図3】容器の縁部に本発明の紙蓋が接着・嵌合した状態を示す部分断面図である。
【図4】紙蓋のブランクシートの一例を示す平面図である。
【図5】本発明の紙蓋の別例を示す斜視図である。
【図6】同上側面図である。
【図7】同上断面図である。
【図8】本発明の紙蓋の別例を示す斜視図である。
【図9】同上側面図である。
【図10】同上断面図である。
【図11】本発明の紙蓋をスタッキングした断面図である。
【図12】本発明の紙蓋を用いた容器をスタッキングした断面図である。
【図13】本発明の紙蓋の別例を示す斜視図である。
【図14】同上側面図である。
【図15】本発明の紙蓋と容器の接着状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0034】
A A2 紙蓋、B 容器
1 中央の天板
2 周側部
3 ドーム状突出部
4a 平坦部
4b 溝部
5 押罫線
6 筋状突出部
7 波形フリル
11 凹部
12 13 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形して基材表面に凹凸形状を形成した容器用紙蓋において、少なくとも紙蓋の内面に、ホットメルト接着剤層又はシーラント層を設けることにより、容器開口のフランジ部とシール接着させることを特徴とする容器用紙蓋。
【請求項2】
前記凹凸部の高低差が0.5〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の容器用紙蓋。
【請求項3】
前記紙蓋に使用する紙基材は、米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、紙厚さが140μm〜1250μm、破断伸びが1.5%以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の容器用紙蓋。
【請求項1】
一枚の紙基材からなるブランクシートをプレス成形して基材表面に凹凸形状を形成した容器用紙蓋において、少なくとも紙蓋の内面に、ホットメルト接着剤層又はシーラント層を設けることにより、容器開口のフランジ部とシール接着させることを特徴とする容器用紙蓋。
【請求項2】
前記凹凸部の高低差が0.5〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載の容器用紙蓋。
【請求項3】
前記紙蓋に使用する紙基材は、米坪が100〜500g/m2、密度が0.4〜0.7g/cm3、紙厚さが140μm〜1250μm、破断伸びが1.5%以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の容器用紙蓋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−204148(P2007−204148A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84138(P2006−84138)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】
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