説明

容器詰め果汁飲料

【課題】褐変が抑制され、果汁飲料本来の香味が維持された容器詰め果汁飲料、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合し、果汁飲料のpHを3.0以上4.6未満に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐変が抑制され、果汁飲料本来の香味が維持された容器詰め果汁飲料、及びその製造方法、特に、アスコルビン酸カルシウムを用いることで、褐変が抑制され、果汁飲料本来の香味が維持された容器詰め果汁飲料、及びその製造方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に果汁飲料は、製造時(殺菌時)や流通時において褐変が進行することで商品価値が低下してしまうといった問題がある。その中でも流通時の経時的な褐変は問題であり、また、混濁果汁、特に混濁りんご果汁や混濁ホワイトグレープフルーツ果汁など乳白色系の混濁果汁を使用した場合は、褐変が目立ちやすく、商品価値が著しく低下してしまう。
【0003】
食品の褐変には、酵素的褐変と非酵素的褐変があるといわれている。酵素的褐変の例としては、ポリフェノールオキシダーゼの作用による褐変が、非酵素的褐変の例としては、メイラード反応による褐変が挙げられる。容器詰め果汁飲料は、一般的に、加熱殺菌により予め酵素を失活させた原料果汁を用いて製造されることから、酵素的褐変が起こる可能性は低い。したがって、容器詰め果汁飲料の褐変については、多くの場合、後者の非酵素的褐変が問題となる。
【0004】
酵素的褐変の抑制方法としては、混濁りんご果汁の搾汁時(製造時)にアスコルビン酸などの酸化防止剤を添加する方法が一般的に知られているが、非酵素的褐変の抑制方法としても、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムといった酸化防止剤を添加する方法が知られている(「最新ソフトドリンクス」(社)全国清涼飲料工業会/(財)日本炭酸飲料検査協会 監修 P196-198)。しかしながら、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムの添加量が少ない場合、期待する効果が得られず、また、効果を上げるために、添加量を増やすとその量に比例して酸味や塩味が生じてしまい、香味への悪影響が避けられないといった問題がある。
【0005】
一方で、使用条件によっては、添加したアスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムが酸化されることで逆に褐変が進行することが指摘されている(「最新果汁・果実飲料事典」(社)日本果汁協会 監修 P61-63)。これは、果汁飲料中でアスコルビン酸が酸化されてデヒドロアスコルビン酸となり、更に、これが果汁飲料中のアミノ酸と反応して褐変物質に変化することによるものと考えられている。
【0006】
アスコルビン酸の上記反応による褐変を抑制するために、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムのようなアスコルビン酸類を含む果汁飲料にアスコルビン酸類以外の特定の物質を添加する方法が提案されている。例えば、特開平5−103647号公報では、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムのようなアスコルビン酸類と、こうじ酸を添加し、果汁飲料の経時的な褐変を抑制する方法が開示されている。しかしながら、果汁飲料にとって通常馴染みのないこうじ酸のような添加物を使用することは、近年、高まりつつある消費者の自然志向に反するものであり、消費者の印象として好ましいものとはいえないという問題がある。
【0007】
ところで、近年、健康志向の高まりから、果汁飲料においてもカルシウムを強化した果汁飲料が提供されている。例えば、特表2004−530424号公報には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、グルコン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウムのようなカルシウムを含有する塩基を、約1〜20重量/重量%、好ましくは約5〜15重量/重量%添加したカルシウム強化果汁飲料の沈殿を防止するために、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸等の酸を添加して、pHを3.5〜5.3に調整する方法が開示されている。
【0008】
カルシウム強化果汁飲料においては、更に、アスコルビン酸や、アスコルビン酸ナトリウムのようなアスコルビン酸塩を添加、含有するものも提供されているが、添加したカルシウムが褐変の進行を促進することが指摘されている。そこで、該カルシウム強化果汁飲料においては、特定の物質を添加する或いは特定の物質の添加によりpHを調整することで褐変を抑制する方法が提案されている。
【0009】
例えば、特開平7−327648号公報には、カルシウム及びアスコルビン酸含有果汁飲料において、エリソルビン酸の添加が褐変を遅らせることを見出し、カルシウム、アスコルビン酸及びエリソルビン酸を特定濃度となるよう添加することにより、褐変を抑制したカルシウム及びアスコルビン酸含有果汁飲料が開示されている。また、特開平6−133743号公報には、乳酸カルシウムやグルコン酸カルシウムのようなカルシウム塩を添加したカルシウム強化りんご果汁飲料の褐変を防止するために、アスコルビン酸ナトリウム又はエリソルビン酸ナトリウム等を添加して、該カルシウム強化りんご果汁飲料のpHを4.0〜4.3に調整する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法については、添加物による香味への悪影響が懸念される他、前述のこうじ酸同様、果汁飲料にとって通常馴染みのないエリソルビン酸の使用が、消費者の印象として好ましいものとはいえないという問題がある。
【0010】
以上のとおり、果汁飲料の褐変の抑制方法としては、これまでに各種の方法が開示されているが、褐変を抑制しつつ、果汁飲料にとって重要な要素である果汁飲料本来の香味を維持し、更には消費者の自然志向にも応えるという観点からは、検討の余地があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−103647号公報。
【特許文献2】特開平6―133743号公報。
【特許文献3】特開平7―327648号公報。
【特許文献4】特表2004−530424号公報。
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「最新ソフトドリンクス」(社)全国清涼飲料工業会/(財)日本炭酸飲料検査協会 監修 P196-198。
【非特許文献2】「最新果汁・果実飲料事典」(社)日本果汁協会 監修 P61-63。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、褐変が抑制され、果汁飲料本来の香味が維持された容器詰め果汁飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討する中で、容器詰め果汁飲料の製造において、アスコルビン酸カルシウムを果汁飲料全量に対して特定の割合となるように配合させることにより、容器詰め飲料の褐変を抑制することができ、また、香味への影響を極力抑えて、果汁飲料本来の香味を維持することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合させることにより、褐変が抑制され、果汁飲料本来の香味が維持された容器詰め果汁飲料からなる。本発明の容器詰め果汁飲料は、特に容器詰め果汁飲料の流通時における経時的な褐変を効果的に抑制することができる。
【0016】
本発明を検討するにあたり、(1)従来、果汁飲料の褐変を抑制するためには、アスコルビン酸や、アスコルビン酸ナトリウムのようなアスコルビン酸塩を添加する方法が知られていたが、褐変を効果的に抑制するためには、酸味や塩味等、香味への悪影響が避けられないこと(2)果汁飲料へのアスコルビン酸や、アスコルビン酸ナトリウムのようなアスコルビン酸塩の添加は、使用条件によっては、アスコルビン酸自身の酸化によって褐変物質が生成され、逆に褐変を進行させること(3)果汁飲料にカルシウムを添加したカルシウム強化果汁飲料においては、カルシウムが褐変の進行を促進してしまうこと(4)一般的にカルシウム塩は独特の香味を有するため、飲料においては、カルシウム強化などの目的以外には使用されることが少ないこと、等を踏まえると、果汁飲料へのアスコルビン酸やカルシウムの添加は、褐変の進行や香味へ悪影響を及ぼす可能性が考えられたが、検討を重ねる中で、果汁飲料にアスコルビン酸カルシウムとして、果汁飲料全量に対して特定の割合となるように配合させることにより、果汁飲料の褐変を効果的に抑制することができること、及び、アスコルビン酸カルシウムの該配合濃度では、果汁飲料の香味への影響を極力抑えて、果汁飲料本来の香味を維持することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
本発明の容器詰め果汁飲料におけるpHは3.0以上4.6未満に調整することが好ましい。本発明の容器詰め果汁飲料は、各種果汁飲料に適用して、褐変の抑制と果汁飲料本来の香味を維持した容器詰め果汁飲料として提供することができるが、経時的な褐変が進行することで商品価値を低下させてしまうといった問題が特に顕著な混濁りんご果汁や混濁ホワイトグレープフルーツ果汁など乳白色系の混濁果汁を使用した場合に適用して、その顕著な改善効果を得た商品として提供することができる。
【0018】
本発明は、容器詰め果汁飲料の製造において、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合することからなる褐変の抑制と果汁飲料本来の香味を維持した容器詰め果汁飲料の製造方法の発明を包含する。また、本発明は、容器詰め果汁飲料において、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合することからなる容器詰め果汁飲料の褐変の抑制と果汁飲料本来の香味を維持する方法の発明を包含する。
【0019】
すなわち具体的には本発明は、(1)アスコルビン酸カルシウムを配合させることにより褐変が抑制された容器詰め果汁飲料や、(2)アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合させることを特徴とする上記(1)記載の容器詰め果汁飲料や、(3)果汁飲料のpHを3.0以上4.6未満に調整したことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の容器詰め果汁飲料や、(4)使用する果汁が、混濁果汁であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の容器詰め果汁飲料や、(5)容器詰め果汁飲料の製造において、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合したことを特徴とする褐変が抑制された容器詰め果汁飲料の製造方法や、(6)容器詰め果汁飲料において、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合したことを特徴とする容器詰め果汁飲料の褐変を抑制する方法からなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、容器詰め果汁飲料において特に問題となる流通時の経時的な褐変を効果的に抑制し、果汁飲料本来の香味を維持した容器詰め果汁飲料、及びその製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合させることにより、褐変が抑制され、果汁飲料本来の香味が維持された容器詰め果汁飲料、及び該容器詰め果汁飲料を製造する方法からなる。
【0022】
本発明における容器詰め果汁飲料とは、果汁を使用した容器詰め飲料全般を指し、果汁の含有率については特に限定されないが、本発明が特に有効に適用される果汁含有率としては、10%以上である。
【0023】
本発明の容器詰め果汁飲料に使用する原料果汁の種類(グレープフルーツ、レモン、ライム、ウメ、りんご、もも、バナナ、マンゴー、オレンジ、パインアップルなど)、性状・状態(透明/混濁、濃縮/非濃縮など)は、特に限定されないが、本発明が特に有効に適用される原料果汁としては、混濁果汁であり、より有効に適用される原料果汁としては、乳白色系の混濁果汁であり、更に有効に適用される原料果汁としては、混濁りんご果汁、混濁グレープフルーツ果汁である。また、これらは、単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明において配合するアスコルビン酸カルシウムの添加率は、使用する原料果汁の種類や含有率にもよるが、果汁飲料全量に対して、0.05〜1重量%又は、0.05以上1重量%未満である。より好ましくは、0.2〜0.8重量%である。アスコルビン酸カルシウムの添加率が0.05重量%より少ない場合は、優れた褐変抑制効果が期待できず、1重量%より多い場合は、アスコルビン酸カルシウム自体の香味の影響が大きくなり、果汁飲料本来の香味が損なわれる。また、酸味も弱く感じられるようになるため、香味上好ましくない。
【0025】
本発明における容器詰め果汁飲料のpHは、使用する原料果汁の種類や含有率にもよるが、3.0以上4.6未満に調整されることが好ましく、より好ましくは、3.5以上4.6未満である。pHが3.0より低い場合は、アスコルビン酸カルシウム添加による優れた褐変抑制効果が期待できず、pHが4.6以上の場合は、微生物増殖危害の観点から殺菌強度を上げる必要性があり、殺菌処理により褐変が進行する他、果汁飲料本来の香味への悪影響も懸念される。
【0026】
本発明における容器詰め果汁飲料は、アスコルビン酸カルシウムを果汁飲料全量に対して特定の割合で配合し、容器詰め果汁飲料の褐変の抑制を図る他、その他の添加物については、通常、容器詰め果汁飲料の製造に際して用いられる添加物を適宜添加することができる。例えば、甘み付与のために砂糖、果糖、ブドウ糖などの糖類やアセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ネオテームなどの高甘味度甘味料、酸味付与のためにクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、色調調整のためにカロテノイド系、アントシアニン系などの着色料、香り付与のために香料、爽快感付与のために二酸化炭素などを添加することができる。また、ビタミン類などの栄養素も必要に応じて、適宜添加することができる。
【0027】
本発明における容器詰果汁飲料の製造方法は、果汁を使用した飲料に通常適用される製造方法に従って行われ(「最新ソフトドリンクス」(社)全国清涼飲料工業会/(財)日本炭酸飲料検査協会 監修 P330-364)、適宜、PETボトル、缶、壜、紙などの容器に充填して、商品化することができる。
【0028】
本発明における褐変の抑制効果については、パネラーによる官能評価の他、Lを用いて評価を行うことができる。Lは色の明るさを示し、a及びbは色の方向(+aは赤方向、−aは緑方向、+bは黄方向、−bは青方向)を示す。
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
(アスコルビン酸の種類による褐変抑制効果及び香味への影響確認)
配合1−1〜配合1−4の原料についてそれぞれ混合・加熱殺菌した液が容器に充填されたものをサンプルとした(表1)。保存開始前及び5℃・50℃でそれぞれ10日保存したサンプルについて、パネラー5名にて、外観(色調)・香味について官能評価を実施した。外観(色調)評価(*1)及び香味評価(*2)は、表2の評価基準を用いて行い、評価点を平均化した。また、同サンプルについて、L(L測定機器:ミノルタ株式会社製分光測色計)及びpHを測定した。Lの中から、外観(色調)変化の指標として、aを選定し、配合1−1の保存開始前サンプルを対照にその他サンプルとの差(△(デルタ)a)を算出した。結果を以下に示す。(表3)
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
官能評価(外観(色調))について、配合1−1〜配合1−4の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも良好であった。50℃10日保存品ではいずれも褐変が確認されたが、配合1−1が最も褐変しており、次いで配合1−2が、最後に同レベルで配合1−3と配合1−4が続いた。官能評価(香味)について、配合1−1の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であった。配合1−2は酸味の増加、配合1−3は酸味の低下と塩味の付加、配合1−4は酸味の低下が確認されたが、これらの中では配合1−4の香味が比較的良好であった。50℃10日保存品では保存開始前及び5℃10日保存品で確認された傾向に加え、いずれもフレッシュ感の低下が確認されたが、配合1−1は特にフレッシュ感の低下が大きかった。
【0035】
△aについて、配合1−1の保存開始前と比較し、配合1−1の5℃10日保存品、配合1−2〜配合1−4の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも大きな変化はなかった。50℃10日保存品ではいずれも増加したが、配合1−1の値が最も高く、次いで配合1−2が、最後にほぼ同値で配合1−3と配合1−4が続いた。
【実施例2】
【0036】
(アスコルビン酸カルシウムの添加率違いによる褐変抑制効果及び香味への影響確認)
配合2−1〜配合2−8の原料についてそれぞれ混合・加熱殺菌した液が容器に充填されたものをサンプルとした(表4)。保存開始前及び5℃・50℃でそれぞれ10日保存したサンプルについて、パネラー5名にて、外観(色調)・香味について官能評価を実施した。外観(色調)評価(*3)及び香味評価(*4)は、表5の評価基準を用いて行い、評価点を平均化した。また、同サンプルについて、L(L測定機器:ミノルタ株式会社製分光測色計)及びpHを測定した。Lの中から、外観(色調)変化の指標として、aを選定し、配合2−1の保存開始前サンプルを対照にその他サンプルとの差(△a)を算出した。結果を以下に示す。(表6)
【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
官能評価(外観(色調))について、配合2−1〜配合2−8の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも良好であった。50℃10日保存品ではいずれも褐変が確認されたが、配合2−1と配合2−2が最も褐変しており、配合2−3〜配合2−8はアスコルビン酸カルシウムの添加率が高くなるにつれ、その程度に差異はあるもののいずれも褐変が抑制されていることが確認された。官能評価(香味)について、配合2−1と配合2−2の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であった。配合2−3〜配合2−8はアスコルビン酸カルシウムの添加率が高くなるにつれ、その程度に差異はあるもののいずれも酸味の低下が、さらに配合2−7と配合2−8はえぐみの付加が確認された。50℃10日保存品では保存開始前及び5℃10日保存品で確認された傾向に加え、いずれもフレッシュ感の低下が確認されたが、配合2−1と配合2−2は特にフレッシュ感の低下が大きかった。
【0041】
△aについて、配合2−1の保存開始前と比較し、配合2−1の5℃10日保存品、配合2−2〜配合2−8の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも大きな変化はなかった。50℃10日保存品ではいずれも増加したが、配合2−1と配合2−2の値が高く、配合2−3〜配合2−8はアスコルビン酸カルシウムの添加率が高くなるにつれ、その値が低くなる傾向にあった。
【実施例3】
【0042】
(使用果汁の種類の違いによるアスコルビン酸カルシウムの褐変抑制効果及び香味への影響確認)
配合3−1〜配合3−3、配合3−1’〜配合3−3’の原料についてそれぞれ混合・加熱殺菌した液が容器に充填されたものをサンプルとした(表7)。保存開始前及び5℃・50℃でそれぞれ10日保存したサンプルについて、パネラー5名にて、外観(色調)・香味について官能評価を実施した。外観(色調)評価(*5)及び香味評価(*6)は、表8の評価基準を用いて行い、評価点を平均化した。また、同サンプルについて、L(L測定機器:ミノルタ株式会社製分光測色計)及びpHを測定した。Lの中から、外観(色調)変化の指標として、配合3−1と配合3−1’においては、aを、配合3−2と配合3−2’、配合3−3と配合3−3’においては、bを選定し、それぞれ配合3−1〜配合3−3の保存開始前サンプルを対照にその他サンプルとの差(△aあるいは△b)を算出した。結果を以下に示す(表9)。
【0043】
【表7】

【0044】
【表8】

【0045】
【表9】

【0046】
官能評価(外観(色調))について、配合3−1の保存開始前、配合3−1’の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であった。配合3−1の5℃・50℃10日保存品、配合3−1’の50℃10日保存品ではいずれも褐変が確認されたが、配合3−1の50℃10日保存品が最も褐変しており、次いで配合3−1’の50℃10日保存品が、最後に配合3−1の5℃10日保存品が続いた。配合3−2’の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であった。配合3−2の保存開始前及び5・50℃10日保存品、配合3−2’の50℃10日保存品ではいずれも褐変が確認されたが、配合3−2の50℃10日保存品が最も褐変しており、次いで同レベルで配合3−2の5℃10日保存品と3−2’の50℃10日保存品が、最後に配合3−2の保存開始前が続いた。配合3−3’の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であった。配合3−3の保存開始前及び5・50℃10日保存品、配合3−3’の50℃10日保存品ではいずれも褐変が確認されたが、配合3−3の50℃10日保存品が最も褐変しており、次いで同レベルで配合3−3の5℃10日保存品と3−3’の50℃10日保存品が、最後に配合3−3の保存開始前が続いた。
【0047】
官能評価(香味)について、配合3−1の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であったが、配合3−1’の保存開始前及び5℃10日保存品では酸味の低下が確認された。50℃10日保存品ではいずれもフレッシュ感の低下が確認されたが、配合3−1は配合3−1’よりフレッシュ感の低下が大きかった。配合3−2の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であったが、配合3−2’の保存開始前及び5℃10日保存品では酸味の低下が確認された。50℃10日保存品ではいずれもフレッシュ感の低下が確認された。配合3−3の保存開始前及び5℃10日保存品では良好であったが、配合3−3’の保存開始前及び5℃10日保存品では酸味の低下が確認された。50℃10日保存品ではいずれもフレッシュ感の低下が確認されたが、配合3−3は配合3−3’よりフレッシュ感の低下が大きかった。
【0048】
△aについて、配合3−1の保存開始前と比較し、配合3−1の5℃10日保存品、
配合3−1’の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも大きな変化はなかった。50℃10日保存品ではいずれも増加したが、配合3−1’は配合3−1の値より低くなった。
△bについて、配合3−2の保存開始前と比較し、配合3−2の5℃10日保存品では大きな変化はなかったが、配合3−2’の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも減少した。50℃10日保存品ではいずれも増加したが、配合3−2は配合3−2’の値より高くなった。配合3−3の保存開始前と比較し、配合3−3の5・50℃10日保存品ではいずれも減少したが、50℃10日保存品は5℃10日保存品より値が低くなった。配合3−3’の保存開始前及び5・50℃10日保存品ではいずれも増加したが、50℃10日保存品は保存開始前及び5℃10日保存品より値が低くなった。
【実施例4】
【0049】
(pHの違いによるアスコルビン酸カルシウムの褐変抑制効果確認)
配合4−1〜配合4−4の原料についてそれぞれ混合・加熱殺菌した液が容器に充填されたものをサンプルとした(表10)。保存開始前及び5℃・50℃で10日保存したサンプルについて、パネラー5名にて、外観(色調)について官能評価を実施した。外観(色調)評価(*7)は、表11の評価基準を用いて行い、評価点を平均化した。また、同サンプルについて、L(L測定機器:ミノルタ株式会社製分光測色計)及びpHを測定した。Lの中から、外観(色調)変化の指標として、aを選定し、配合4−1の保存開始前サンプルを対照にその他サンプルとの差(△a)を算出した。結果を以下に示す。(表12)
【0050】
【表10】

【0051】
【表11】

【0052】
【表12】

【0053】
官能評価(外観(色調))について、配合4−1〜配合4−4の保存開始前及び5℃10日保存品ではいずれも良好であった。50℃10日保存品ではいずれも褐変が確認されたが、配合4−2が最も褐変しており、次いで配合4−1、配合4−3、配合4−4と続いた。
【0054】
△aについて、配合4−1の保存開始前と比較し、配合4−2〜配合4−4の保存開
始前及び5℃10日保存品ではいずれも大きな変化はなかった。50℃10日保存品ではいずれも増加したが、配合4−2の値が最も高く、次いで配合4−1、配合4−3、配合4−4と続いた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、容器詰め果汁飲料において特に問題となる流通時の経時的な褐変を効果的に抑制し、果汁飲料本来の香味を維持した容器詰め果汁飲料、及びその製造方法を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸カルシウムを配合させることにより褐変が抑制された容器詰め果汁飲料。
【請求項2】
アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合させることを特徴とする請求項1記載の容器詰め果汁飲料。
【請求項3】
果汁飲料のpHを3.0以上4.6未満に調整したことを特徴とする請求項1又は2記載の容器詰め果汁飲料。
【請求項4】
使用する果汁が、混濁果汁であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の容器詰め果汁飲料。
【請求項5】
容器詰め果汁飲料の製造において、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合したことを特徴とする褐変が抑制された容器詰め果汁飲料の製造方法。
【請求項6】
容器詰め果汁飲料において、アスコルビン酸カルシウムを、果汁飲料全量に対して0.05〜1重量%配合したことを特徴とする容器詰め果汁飲料の褐変を抑制する方法。