説明

容器詰め製品の内容物検査方法

【課題】内容物と培地を混合して微生物を培養することで内容物中の微生物の有無を検査するような容器詰め製品の内容物検査方法について、内容物と培地を混合する際に、連結具に耐久性を持たせることができ、内容物がコーヒー飲料や茶飲料であっても、内容物と培地との混合液を黒変させることのないようにする。
【解決手段】内容物と培地を混合するために、耐熱性筒体4の筒内に連結具5を装着した状態で、高周波誘導加熱により連結具5を加熱殺菌してから、連結具5の各挿入部分をそれぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器2,3内に挿入するような場合に、容器2,3の内部同士を連通させるための連結具5として、ステンレススチール製の連結具5を使用すると共に、連結具5を加熱するための高周波誘導加熱手段として、耐熱性筒体4の外周を囲むような銅製のブロック18,19を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETボトル等のような容器の内部に飲料等の内容物を充填してキャップにより密封した容器詰め製品について、容器内の内容物に細菌やカビ等の微生物が混入しているか否かを検査するための方法に関し、特に、そのような容器詰め製品の内容物検査方法において、細菌やカビ等の微生物を外部から混入させることなく、微生物を培養する培地と容器内の内容物とを混合するための方法で、内容物が茶飲料やーヒー飲料等である場合に好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PETボトルやボトル型缶のようなボトル型の容器を使用して、略無菌雰囲気内で殺菌済みの容器に殺菌済みの内容物を充填して殺菌済みのキャップで密封する、所謂無菌充填法により飲料等を内容物とする容器詰め製品を製造する場合に、充填・密封後に加熱殺菌の工程を行なわないことから、製造された製品中からランダムに抽出したサンプルによる抜き取り検査によって、容器内に細菌やカビ等の微生物が混入しているか否かを検査している。
【0003】
そのような微生物の有無を検査する容器詰め製品の内容物検査方法について、容器内に内容物が充填・密封された最終製品を、無菌環境下で開封して容器内の内容物に濃縮培地を添加した後、再度密封状態にして10〜60℃で保管してから、容器内の内容物の濁り、炭酸ガスの発生、カビを目視することにより、最終製品内における微生物の存在の有無を確認する、ということが下記の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2004−229587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来公知の容器詰め製品の内容物検査方法では、内容物が充填・密封された状態から容器を一旦開封しているため、無菌環境下での開封とはいっても、開封時に細菌やカビ等の微生物が容器内に入り込む虞が全くないとはいえず、そのような開封時での微生物の混入の可能性により、結果的に、製品の内容物中の微生物を培養してその存在の有無を確認するような内容物検査の精度を低下させることとなる。
【0005】
一方、製品の内容物中の微生物を培養してその存在の有無を確認する場合に、内容物に対する培地の混合割合を増やす(大量の培地を混合する)ことで、僅かな微生物でも確実に培養することができて、内容物検査の精度の向上を図ることができる。これに対して、上記のような従来公知の容器詰め製品の内容物検査方法では、容器内に充填された内容物に対して、内容物が充填された容器内のヘッドスペースの分だけ培地を混合できるだけで、それ以上に大量の培地を混合することはできない。
【0006】
そのような問題を解消するために、本出願人は、内容物と培地とを混合して内容物中の微生物を培養することで微生物の有無を検査するような容器詰め製品の内容物検査方法についての本出願に先立つ出願(特願2006−129965)において、内容物が充填されキャップで密封された容器の内部と、培地が充填されキャップで密封された容器の内部とを、それぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される各挿入部分を備えた連結具を介して連通させることで、内容物と培地を混合するための方法として、「両方の容器のキャップのスカート部に嵌挿可能な耐熱性筒体に対し、その筒内に高周波誘導加熱が可能な材質からなる連結具を装着した状態で、キャップ同士が対向するように容器軸線方向に沿って直列的に配置された両方の容器に対して、両方のキャップのスカート部にわたって耐熱性筒体を装着することで、両方の容器のキャップの天板部の間に連結具を配置して、耐熱性筒体の外側からの高周波誘導加熱により連結具を加熱殺菌してから、両方のキャップ同士が近づくよう両方の容器の少なくとも一方を容器軸線方向に押圧することにより、連結具の各挿入部分がそれぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入されるようにする」ということを既に提案している。
【0007】
そのような本出願人の提案による容器詰め製品の内容物検査方法によれば、内容物や培地を外気に曝すことで細菌やカビ等の微生物を混入させるようなことなく、内容物に対して、所望の容量の容器一つ分の培地を充分に混合させることができる。しかも、耐熱性筒体の筒内に設けた連結具を、耐熱性筒体の外側から高周波誘導加熱により殺菌していることで、連結具やキャップの天板部付近に微生物が侵入するのを耐熱性筒体により防止できると共に、連結具に微生物が付着していても、これを充分に殺菌できることから、連結具によるキャップの貫通部分から容器内に微生物が侵入するのを確実に防止することができる。その結果、微生物の培養による内容物検査の精度を向上させることができる。
【0008】
しかしながら、そのような本出願人の提案による容器詰め製品の内容物検査方法においても、容器に詰める内容物の種類がミルクコーヒー等のコーヒー飲料や茶飲料の場合には、以下に述べるような問題のあることが判った。
【0009】
すなわち、上記のような本出願人の提案による容器詰め製品の内容物検査方法において、両方の容器の内部同士を連通させる連結具の材質については、高周波誘導加熱により加熱され易い材質を使用することが当然に考えられることから、一般炭素鋼により製造された連結具を使用したが、その場合に、各種の飲料について検査を実施したところ、飲料が充填された容器と培地が充填された容器とを結合させた際に、他の飲料では問題はなかったが、コーヒー飲料や茶飲料などでは、飲料と培地との混合液が黒く変色してしまう現象が発生して、その結果、細菌や微生物に起因する変敗の確認が困難なものとなってしまった。
【0010】
そのように飲料と培地との混合液が黒く変色してしまう現象について精査したところ、連結具の鉄分が飲料の液中に溶出すると共に、この鉄分が茶飲料のタンニン酸やコーヒー飲料のクロロゲン酸と反応することで、酸化鉄が生成されて黒変するということが判った。そこで、連結具の表面から鉄分が溶出しないように、連結具の表面に亜鉛メッキやニッケルメッキやクロームメッキを施してみたが、ピンホール等が存在しない高いメッキ精度が要求される一方、連結具は過酸化水素水等の腐食性の強い殺菌液や高温に曝されるものであることから、高い精度でメッキを施しても、数回の使用に耐えられるだけで、耐久性に問題のあるということが判った。
【0011】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、本出願に先立つ出願(特願2006−129965)により提案された容器詰め製品の内容物検査方法について、内容物と培地とを混合させるため連結具に耐久性を持たせることができ、内容物がコーヒー飲料や茶飲料であっても、内容物と培地との混合液を黒変させることなく、微生物の培養による内容物検査の精度を向上させることができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するために、内容物と培地とを混合して内容物中の微生物を培養することで微生物の有無を検査するような容器詰め製品の内容物検査方法において、内容物が充填されキャップで密封された容器の内部と、培地が充填されキャップで密封された容器の内部とを、それぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される各挿入部分を備えた連結具を介して連通させることで、内容物と培地を混合するための方法として、両方の容器のキャップのスカート部に嵌挿可能な耐熱性筒体に対して、その筒内に高周波誘導加熱が可能な材質からなる連結具が装着され、キャップ同士が対向するように容器軸線方向に沿って直列的に配置された両方の容器に対して、両方のキャップのスカート部にわたって耐熱性筒体が装着され、両方の容器のキャップの天板部の間に連結具が配置された状態で、耐熱性筒体の外側からの高周波誘導加熱により連結具を加熱殺菌してから、両方のキャップ同士が近づくように両方の容器の少なくとも一方を容器軸線方向に押圧することにより、連結具の各挿入部分をそれぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入するような場合に、両方の容器の内部同士を連通させる連結具として、ステンレススチール製の連結具を使用すると共に、連結具を加熱するための高周波誘導加熱手段として、耐熱性筒体の外周を囲むような銅製のブロックを使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記のような本発明の容器詰め製品の内容物検査方法によれば、内容物が充填された容器の内部と、培地が充填された容器の内部とを、連結具を介して連通させていることで、内容物や培地を外気に曝すことで細菌やカビ等の微生物を混入させるようなことなく、内容物に対して、所望の容量の容器一つ分の培地を充分に混合させることができる。しかも、耐熱性筒体の筒内に設けた連結具を、耐熱性筒体の外側から高周波誘導加熱により殺菌していることで、連結具やキャップの天板部付近に微生物が侵入するのを耐熱性筒体により防止できると共に、連結具に微生物が付着していても、これを充分に殺菌できることから、連結具によるキャップの貫通部分から容器内に微生物が侵入するのを確実に防止することができる。その結果、微生物の培養による内容物検査の精度を向上させることができる。
【0014】
さらに、ステンレススチール製の連結具を使用することにより、連結具が過酸化水素水等の腐食性の強い殺菌液や高温に曝されるのに対して、連結具の耐久性を充分に確保することができて、容器詰め製品の内容物がタンニン酸を含む茶飲料やクロロゲン酸を含むコーヒー飲料などであっても、それら内容物の液中に連結具の表面から鉄分を溶出させることはなく、それら内容物の酸成分と鉄分との反応により内容物と培地との混合液を黒く変色させてしまうようなことはない。また、連結具をステンレススチール製とすることで、一般炭素鋼製とする場合に比べて高周波誘導加熱され難くなっているが、連結具を内装する耐熱性筒体の外周を囲むような銅製のブロックを高周波誘導加熱手段として使用することにより、連結具を充分に高周波誘導加熱することができる。
【0015】
なお、連結具の構造を、それぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される部分となる中空筒部と、中空筒部の軸線方向中央付近の外面側に形成されるフランジ部とからなるものとした場合には、耐熱性筒体の外周を囲むような銅製のブロックにより連結具を高周波誘導加熱する際に、断続的に高周波誘導加熱して連結具のうちのフランジ部を先ず加熱し、フランジ部からの熱を中空筒部に伝導させて連結具の全体を昇温させることにより、ステンレススチール製の連結具を迅速で効率的に昇温させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
内容物と培地とを混合して内容物中の微生物を培養することで微生物の有無を検査するような容器詰め製品の内容物検査方法について、内容物と培地とを混合する際に、連結具に耐久性を持たせることができ、内容物がコーヒー飲料や茶飲料であっても、内容物と培地との混合液を黒変させることなく、微生物の培養による内容物検査の精度を向上させるという目的を、最良の形態として以下の実施例に具体的に示すように、内容物が充填されキャップで密封された容器の内部と、培地が充填されキャップで密封された容器の内部とを、それぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される各挿入部分を備えた連結具を介して連通させることで、内容物と培地を混合するための方法として、両方の容器のキャップのスカート部に嵌挿可能な耐熱性筒体に対して、その筒内に高周波誘導加熱が可能な材質からなる連結具が装着され、キャップ同士が対向するように容器軸線方向に沿って直列的に配置された両方の容器に対して、両方のキャップのスカート部にわたって耐熱性筒体が装着され、両方の容器のキャップの天板部の間に連結具が配置された状態で、耐熱性筒体の外側からの高周波誘導加熱により連結具を加熱殺菌してから、両方のキャップ同士が近づくように両方の容器の少なくとも一方を容器軸線方向に押圧することにより、連結具の各挿入部分をそれぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入するような場合に、両方の容器の内部同士を連通させる連結具として、ステンレススチール製の連結具を使用すると共に、連結具を加熱するための高周波誘導加熱手段として、耐熱性筒体の外周を囲むような銅製のブロックを使用するということで実現した。
【実施例】
【0017】
本発明の容器詰め製品の内容物検査方法の一実施例について、先ず、本実施例の方法でそれぞれ容器内に充填された内容物と培地を混合する際に使用する装置の一例であるボトル連結装置について説明すると、図1に示すように、ボトル連結装置1では、その基盤11から垂直に高さの異なる二本の支柱12,13が平行に立設されており、高い方の支柱12の上部には、上下方向に伸縮する伸縮ロッド15を備えたエアシリンダー14が設けられ、このエアシリンダー14の伸縮ロッド15の先端には加圧パッド16が設けられている。
【0018】
装置1の高い方の支柱12の中程には、樹脂製の絶縁体17が固定的に設置され、この絶縁体17を介装させた状態で、高周波誘導加熱手段となる一方の銅製ブロック18が設けられている。一方、低い方の支柱13の上部には、水平方向に伸縮するエアシリンダー22が設置され、このエアシリンダー22の伸縮ロッド21の先端には、樹脂製の絶縁体20を介装させた状態で、高周波誘導加熱手段となる他方の銅製ブロック19が設けられていて、両方の銅製ブロック18,19は、同じ高さで対向している。
【0019】
装置1の両方の支柱12,13の間には、内容物が充填されたボトル容器2と培地が充填されたボトル容器3とを保持するセッティングパイプ6が配置されており、このセッティングパイプ6は、図5に示すように、一方のボトル容器2(内容物が充填されたもの)の胴部を保持する円筒部6aと、他方のボトル容器3(培地が充填されたもの)の胴部を保持する円筒部6bとが、対向する一対の帯状連結部6cにより連結されたような形状となるように、合成樹脂等の適宜な材料によって一体的に形成されている。
【0020】
このセッティングパイプ6により、内容物が充填されたボトル容器2と、培地が充填されたボトル容器3とは、一方のボトル容器2が倒立状態で上方に位置し、他方のボトル容器3が正立状態で下方に位置するように、容器軸線方向に沿って上下方向に直列的に配置された状態で保持されており、両方のボトル容器2,3の間には、両方の容器2,3のキャップ2a,3aのスカート部にわたって耐熱性筒体4が装着され、また、耐熱性筒体4の筒内で両方の容器2,3のキャップ2a,3aの天板部の間に連結具5が装着されている。
【0021】
そのようにセッティングパイプ6により倒立状態と正立状態で直列的に保持されている両方のボトル容器2,3に対して、図1に示すように、装置1の支柱12の上部に設けられたエアシリンダー14の伸縮ロッド15の先端の加圧パッド16は、倒立状態で上側に位置するボトル容器2の底部と対向しており、セッティングパイプ6により正立状態と倒立状態で直列的に保持されている各ボトル容器2,3に対して、倒立状態で上側に位置するボトル容器2の底部を加圧パッド16により約30kgf の力で下方へ押し込むことができるようになっている。
【0022】
この連結具5は、炭素鋼よりも高周波誘導加熱され難いが、高周波誘導加熱が可能で、且つ、過酸化水素水等の腐食性の強い殺菌液に対して耐蝕性に優れたステンレススチールによって形成されている。このステンレススチール製の連結具5に対して、これを高周波誘導加熱するための手段として、銅製のブロック18,19が、耐熱性筒体4の外周を囲むような状態で、耐熱性筒体4を間に置いて連結具5と対峙するように、耐熱性筒体4の外側に配置されている。
【0023】
なお、本実施例では、各ボトル容器2,3の容器本体は、何れも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなる樹脂製容器であり、各ボトル容器2,3のキャップ2a,3aは、何れも、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなる樹脂製キャップである。また、耐熱性筒体4は、高周波誘導加熱されない透明な耐熱性の強化ガラスで形成されている。
【0024】
高周波誘導加熱手段となる一対の銅製ブロック18,19については、図2および図3に示すように、銅製ブロック18,19の何れにおいても、銅製ブロック18,19同士が対向する内端側で、耐熱性筒体4の外周に合致する円弧状となって、それぞれ耐熱性筒体4の外周の半分に略当接するような形状となっている。また、各銅製ブロック18,19の大きさは、セッティングパイプ6の略中央に形成されて対向する一対の帯状連結部6c,6cの間に挿入できる大きさになっている。
【0025】
また、一方の銅製ブロック18が、固定用として、高い方の支柱12に固定され、他方の銅製ブロック19が、移動用として、低い方の支柱13に設けられたエアシリンダー22により水平方向に移動可能とされていることで、図2に示すように、耐熱性筒体4の外周を両方のブロック18,19により囲った状態にしたり、図3に示すように、両方のブロック18,19の間に耐熱性筒体4を出し入れできる状態にしたりできるようになっている。
【0026】
そして、図2に示すように、耐熱性筒体4の外周を両方の銅製ブロック18,19により囲った状態では、両方の銅製ブロック18,19は、その一端側では銀接点18a,19aによって通電させ、その他端側では隙間を持たせる(樹脂製の絶縁体を間に咬ませても良い)ことで通電させないようになっていて、各銅製ブロック18,19の銀接点18a,19aとは反対の側(通電させない側)には、それぞれに電極板23,24が設けられ、それぞれの電極板23,24には、高周波出力用トランス(図示せず)にまで延びる電線25,26が接続されている。
【0027】
なお、本実施例では、両方の銅製ブロック18,19には、それぞれの内部又は周囲に形成された冷却水通路と連通する冷却用配管27が接続されていて、この冷却用配管27や、電極板23,24に接続される電線25,26は、何れも、図2および図3に示すように、一方の銅製ブロック19の水平方向への移動の動きに応じて変形できるようになっている。
【0028】
耐熱性筒体4は、筒の内径がキャップ2a,3aのスカート部に嵌挿可能な大きさとなっており、一方、連結具5は、図4(A),(B)に示すように、容器の口部(口頸部)に挿入可能な外径を有する中空筒部51と、中空筒部51の軸線方向中央付近の外面側に形成されるフランジ部52とからなり、フランジ部52の外径は、耐熱性筒体4の筒内に係合可能な大きさとなっていて、中空筒部51では、フランジ部52よりも下側の部分が上側の部分よりも薄肉に形成されている。
【0029】
連結具5のフランジ部52には、複数の透孔53が穿たれており、連結具5の中空筒部51の両端部には、切り欠き部54がそれぞれ一ケ所ずつ設けられていて、この切り欠き部54の深さ(中空筒部の軸線方向での長さ)は、対応するそれぞれのキャップ2a,3aの天板部の厚さよりも長くなっている。また、下側のボトル容器3に挿入する中空筒部51の下端側51aは、上側のボトル容器2に挿入する中空筒部51の上端側51bよりも鋭利に形成されている。
【0030】
上記のようなボトル連結装置1を使用して実施される本実施例の容器詰め製品の内容物検査方法について以下に説明すると、先ず、各ボトル容器2、3と耐熱性筒体4と連結具5とセッティングパイプ6の各部材について、過酸化水素水、次亜塩素酸水、微酸性電解水などの殺菌液に適当な時間だけ浸潰して各部材の表面を殺菌した後、殺菌液を除去して各部材の表面を乾燥させておく。このことは必須要件ではないが、そうしておくことが望ましい。
【0031】
次いで、一方のボトル容器3(培地が充填されたもの)を正立させて置き、この正立させたボトル容器3のキャップ3aのスカート部に、上方から耐熱性筒体4の下端側を嵌挿し、耐熱性筒体4の筒内に連結具5を挿入してから、連結具5の中空筒部51内に、濃度が35%の過酸化水素水を0.3mlを滴下して、連結具5の中空筒部51の内側とボトル容器3の天板部を殺菌する。
【0032】
次いで、耐熱性筒体4を嵌挿させて正立させたボトル容器3に対して、セッティングパイプ6を被せてから、他方のボトル容器2(内容物が充填されたもの)を倒立させて持ち、このボトル容器2をセッティングパイプ6に上方から挿入すると共に、下側のボトル容器3のキャップ3aに装着された耐熱性筒体4に対して、倒立させた上側のボトル容器2のキャップ2aのスカート部を、上方から耐熱性筒体4の上端側に挿入する。
【0033】
それにより、図5に示すように、両方のボトル容器2,3の胴部がセッティングパイプ6により保持された状態で、両方のボトル容器2,3が強固に一体化されると共に、倒立状態と正立状態で上下方向に直列的に配置されたボトル容器2(内容物が充填されたもの)とボトル容器3(培地が充填されたもの)とに対して、両方のボトル容器2,3の各キャップ2a,3aのスカート部にわたって嵌挿された状態で耐熱性筒体4が装着され、また、各キャップ2a,3aの天板部の間に挟み込まれた状態で連結具5が配置されることとなる。
【0034】
そのように両方のボトル容器2,3を一体化させたセッティングパイプ6を、図3に示すように、両方の銅製ブロック18,19同士が離れている状態で、両方の銅製ブロック18,19の間に位置するように、ボトル連結装置1の基盤11上にセットした後で、装置1を作動させることにより、冷却用配管27に水を流して両方の銅製ブロック18,19を冷却しながら、低い支柱13に設置されたエアシリンダー22の伸縮ロッド21が伸びて、その先端に絶縁体20を介して取り付けられた銅製ブロック19が、固定された銅製ブロック18の方に移動し、それによって、図2に示すように、耐熱性筒体4の外周を両方の銅製ブロック18,19が囲むようになる。
【0035】
そのように銅製ブロック18,19により耐熱性筒体4の外周を囲んだ状態から、1.2kWの高周波出力用トランス(図示せず)から電線25,26と電極板23,24を通して各銅製ブロック18,19に約8秒間通電することで、連結具5の中空筒部51内に滴下した過酸化水素水を蒸散させた後、連結具5の過加熱を防止して連結具5の温度を均一にするために、通電を約5秒間止めてから、再度、過酸化水素水を蒸散させるために約6.5秒間通電し、再び約5秒間通電を止めて連結具5の過加熱を防止し、連結具5を均一な温度にしてから、最後に、ボトル容器2、3同士の結合に充分な温度にまで昇温させるために、約1.5秒間通電して、耐熱性筒体4の内側と連結具5とキャップ2a、3aの天板部の殺菌を完了する。
【0036】
このときの殺菌効果を検証するために、予めキャップ3aの天板部に Bacillus atrophaeus NBRC13721 又は、Geobacillus stearothermophilus ATCC12980 の芽胞を約10cfuを塗布してから、上記のように殺菌を完了させた後で検査してみたところ、6D(10cfuの菌が処理後に1cfu 未満となる)の殺菌効果が得られていた。
【0037】
次いで、最後の高周波誘導加熱により連結具5の殺菌が終わった約2.5秒後に、高い支柱12に設置されたエアシリンダー14を作動させて加圧パッド16を下方に移動させ、倒立状態となっている上側のボトル容器2(内容物が充填されたもの)の底部を加圧パッド16によって上方から下方へ約3秒間ほど押圧すると、上方から押圧されるボトル容器2の圧力で、連結具5の中空筒部51の両端部(51a,51b)は、各ボトル容器2,3のキャップ2a,3aの天板部を貫通して容器口部(口頸部)の内部に挿入されることとなり、その結果、図6に示すような状態となって、連結具5の中空筒部51の筒内を通して各ボトル容器2,3の内部同士が連通され、内容物と培地が混合される。
【0038】
なお、本実施例では、各ボトル容器2,3のキャップ2a,3aは、何れもポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなる樹脂製キャップであるため、高周波誘導加熱により高温となっている連結具5の熱によりキャップ天板部の樹脂が軟化することとなって、連結具5の中空筒部51の端部を軟化したキャップ天板部に容易に貫通させることができる。その際、加圧パッド16により押圧する加圧状態を5〜15秒間程度維持することで、キャップ天板部の軟化していた貫通部分を冷却させて固化させることができる。
【0039】
そのように連結具5を介して各ボトル容器2,3の内部同士を連通させ、ボトル容器2に充填された内容物をボトル容器3に充填された培地に混合してから、図6に示すような状態のままで、10〜60℃の温度環境で所定の時間だけ保管した後で、容器内の内容物の濁り、炭酸ガスの発生、カビなどを目視することで、ボトル容器2に充填された内容物について、細菌やカビ等の微生物の存在の有無を検査することとなる。
【0040】
上記のような本実施例の容器詰め製品の内容物検査方法によれば、内容物が充填されたボトル容器2の内部と培地が充填されたボトル容器3の内部とを、連結具5を介して連通させていることにより、内容物や培地を外気に曝すことで細菌やカビ等の微生物を混入させるようなことなく、ボトル容器2に充填された内容物に対してボトル容器3に充填された培地を充分に混合させることができる。
【0041】
また、耐熱性筒体4の筒内に設けた連結具5を、耐熱性筒体4の外側から高周波誘導加熱により殺菌していることにより、連結具5やキャップ2a,3aの天板部の付近に細菌等の微生物が侵入するのを耐熱性筒体4により防止できると共に、連結具5に細菌等の微生物が付着していても、これを充分に殺菌できることから、連結具5によるキャップ2a,3aの貫通部分から容器内に細菌等の微生物が侵入するのを確実に防止することができる。
【0042】
そして、連結具5としてステンレススチール製のものを使用していることにより、連結具5が過酸化水素水等の腐食性の強い殺菌液や高温に曝されるのに対して、連結具5の耐久性を充分に確保することができる。また、容器詰め製品の内容物がタンニン酸を含む茶飲料やクロロゲン酸を含むコーヒー飲料などであっても、それら内容物の液中に連結具5の表面から鉄分を溶出させることはなく、それら内容物の酸成分と鉄分との反応により内容物と培地との混合液を黒く変色させてしまうようなことはない。
【0043】
なお、連結具5をステンレススチール製とすることで、一般炭素鋼製とする場合に比べて高周波誘導加熱され難くなっているが、連結具5を内装する耐熱性筒体4の外周を囲むような銅製のブロック18,19を高周波誘導加熱手段として使用することにより、連結具5がステンレススチール製であっても充分に高周波誘導加熱することができる。
【0044】
特に、本実施例では、連結具5の構造が、それぞれのキャップ2a,3aの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される部分となる中空筒部51と、中空筒部51の軸線方向中央付近の外面側に形成されるフランジ部52とからなることで、耐熱性筒体4の外周を囲む銅製のブロック18,19により連結具5を高周波誘導加熱する際に、断続的な高周波誘導加熱を行って、連結具5のうちのフランジ部52を先ず加熱し(磁力線に対して直交するフランジ部52が先ず加熱される)、フランジ部52からの熱を中空筒部51に伝導させて連結具5の全体を昇温させるように、昇温のための加熱と熱伝導のための休止を繰り返していることにより、連結部5を充分に均一に昇温させることができて、連結具5の加熱殺菌を効果的に行なうことができる。
【0045】
また、本実施例では、中空筒部51のフランジ部52よりも下側の部分を、中空筒部51のフランジ部52よりも上側の部分よりも薄肉に形成していることから、連結具5を高周波誘導加熱した際に、中空筒部51のフランジ部52よりも下側で薄肉に形成された部分が迅速に昇温することとなって、中空筒部51の下方に溜まった殺菌液などが蒸散され易くなっている。
【0046】
さらに、本実施例では、連結具5のフランジ部52に複数の透孔53を形成していることにより、高周波誘導加熱により連結具5を加熱殺菌する際に、連結具5の熱容量を少なくして連結具5を素速く昇温させることができると共に、樹脂製のキャップ2a,3aの天板部が溶けて透孔53に流入して固まることで、連結具5を介して両方のボトル容器2,3のキャップ2a,3a同士を強固に結合させることができる。
【0047】
また、本実施例では、連結具5の中空筒部51の両端部について、下側のボトル容器3に挿入する中空筒部51の下端側51aを、上側のボトル容器2に挿入する中空筒部51の上端側51bよりも鋭利に形成していることから、上側のボトル容器2を上方から押圧したときに、上側のボトル容器2よりも先に、下側のボトル容器3で連結具5の中空筒部51がキャップ3aを貫通して挿入されるため、倒立させた上側のボトル容器2のキャップ2aの貫通部分から内容物の液体が溢れ出るような虞はない。
【0048】
また、本実施例では、連結具5の中空筒部51の両端部に切り欠き部54をそれぞれ一ケ所ずつ設けて、この切り欠き部54の深さ(中空筒部の軸線方向での長さ)を、対応するそれぞれのキャップ2a,3aの天板部の厚さよりも長くしていることから、連結具5の中空筒部51の両端部をそれぞれのキャップ2a,3aの天板部に貫通させた際に、それぞれのキャップ2a,3aで、切り欠き部54の所で天板部が切断されずにキャップ側にドアのように開いて残るため、天板部の切断された部分が中空筒体51の通路(筒内)を塞いで各ボトル容器2,3の内部同士の連通を妨げるようなことはない。
【0049】
以上、本発明の容器詰め製品の内容物検査方法の一実施例について説明したが、本発明の方法は、上記のような具体的な実施例にのみ限定されるものではなく、例えば、容器詰め製品に使用される容器について、上記の実施例では、樹脂製の容器本体とキャップからなるボトル容器であるが、キャップにより密封される容器であれば、金属製のボトル缶や注出口付き袋状容器のような他の容器であっても良く、キャップについても、加熱された連結具の中空筒部による天板部の貫通という点では樹脂製のキャップが好ましいが、天板部を貫通できれば金属製のキャップでも可能である。
【0050】
また、上記の実施例では、内容物が充填された容器が上となり、培地が充填された容器が下となるように、両方の容器を上下方向に直列的に配置しているが、そのような方法に限らず、内容物が充填された容器が下となり、培地が充填された容器が上となるようにしても良いし、両方の容器を上下方向ではなく水平方向に直列的に配置しても良い。また、連結具を介して容器の内部同士を連通させるための装置についても、上記の実施例に示したようなボトル連結装置の具体的な構造に限定されるものではない等、適宜に変更可能なものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の一例を示す部分断面側面図。
【図2】図1に示した装置について、(容器を図示しない状態での)A−A線に沿った部分断面平面図。
【図3】図2に示した装置で、高周波誘導加熱手段である一対の銅製ブロックが開いた状態を示す部分断面平面図。
【図4】本発明の方法を実施するために使用する連結具の一例を示す(A)平面図、および(B)縦断面図。
【図5】本発明の方法において、内容物が充填された容器と培地が充填された容器とを、両方の容器の間に耐熱性筒体と連結具を介装させて、倒立状態と正立状態で上下方向に直列的に配置した状態から、セッティングパイプを被せることで両方の容器を強固に一体化した状態を示す部分断面側面図。
【図6】本発明の方法において、内容物が充填された容器と培地が充填された容器とが、両方の容器の間に耐熱性筒体と連結具が介装された状態で、両方の容器の内部が連結具を介して連通された(内容物と培地が混合された)状態を示す部分断面側面図。
【符号の説明】
【0052】
1 装置(ボトル連結装置)
2 容器(ボトル容器)
2a キャップ
3 容器(ボトル容器)
3a キャップ
4 耐熱性筒体
5 連結具
6 セッティングパイプ
14 エアシリンダー
16 加圧パッド
18 銅製ブロック(高周波誘導加熱手段)
19 銅製ブロック(高周波誘導加熱手段)
22 エアシリンダー
51 (連結具の)中空筒部
52 (連結具の)フランジ部
53 (フランジ部の)透孔
54 (中空筒部の)切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物と培地とを混合して内容物中の微生物を培養することで微生物の有無を検査するような容器詰め製品の内容物検査方法において、内容物が充填されキャップで密封された容器の内部と、培地が充填されキャップで密封された容器の内部とを、それぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される各挿入部分を備えた連結具を介して連通させることで、内容物と培地を混合するための方法として、両方の容器のキャップのスカート部に嵌挿可能な耐熱性筒体に対して、その筒内に高周波誘導加熱が可能な材質からなる連結具が装着され、キャップ同士が対向するように容器軸線方向に沿って直列的に配置された両方の容器に対して、両方のキャップのスカート部にわたって耐熱性筒体が装着され、両方の容器のキャップの天板部の間に連結具が配置された状態で、耐熱性筒体の外側からの高周波誘導加熱により連結具を加熱殺菌してから、両方のキャップ同士が近づくように両方の容器の少なくとも一方を容器軸線方向に押圧することにより、連結具の各挿入部分をそれぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入するような場合に、両方の容器の内部同士を連通させる連結具として、ステンレススチール製の連結具を使用すると共に、連結具を加熱するための高周波誘導加熱手段として、耐熱性筒体の外周を囲むような銅製のブロックを使用することを特徴とする容器詰め製品の内容物検査方法。
【請求項2】
耐熱性筒体の筒内に装着される連結具が、それぞれのキャップの天板部を貫通してそれぞれの容器内に挿入される部分となる中空筒部と、中空筒部の軸線方向中央付近の外面側に形成されるフランジ部とからなり、中空筒部は、ボトル容器の口部に挿入可能な外径を有し、フランジ部は、耐熱性筒体の筒内に係合可能な外径を有することを特徴とする請求項1に記載の容器詰め製品の内容物検査方法。
【請求項3】
高周波誘導加熱により連結具を加熱する際に、断続的に高周波誘導加熱して連結具のうちのフランジ部を先ず加熱し、フランジ部からの熱を中空筒部に伝導させることで、連結具の全体を昇温させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の容器詰め製品の内容物検査方法。
【請求項4】
連結具の中空筒部のうちのフランジ部よりも下側の部分を上側の部分よりも薄肉に形成することで、高周波誘導加熱されたフランジ部からの熱伝導により、中空筒部の薄肉に形成された部分を先ず昇温させてから、連結具の全体を昇温させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の容器詰め製品の内容物検査方法。
【請求項5】
連結具のフランジ部に複数の透孔を形成することで、高周波誘導加熱により連結具を加熱殺菌する際には、該透孔の分だけ少ない熱容量で連結具を迅速に昇温させると共に、両方の容器を連結させた後では、両方の容器のキャップ天板部の溶けた部分が該透孔を通して癒着した状態で固まることにより、両方の容器の連結部分が強固なものとなるようにすることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の容器詰め製品の内容物検査方法。
【請求項6】
連結具の中空筒部の端部で、正立させた下側の容器に挿入される中空筒部の下端側を、倒立させた上側の容器に挿入される中空筒部の上端側よりも鋭利に形成することで、倒立させた上側の容器の底部を上方から下方に押圧したときに、倒立させた上側の容器よりも先に、正立させた下側の容器で、中空筒部の下端側がキャップの天板部を貫通して容器内に挿入されるようにしたことを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の容器詰め製品の内容物検査方法。
【請求項7】
連結具の中空筒部の両端部のそれぞれに切り欠き部を一ケ所ずつ設けて、この切り欠き部の深さを、それぞれの切り欠き部と対向するキャップの天板部の厚さよりも長くしていることを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載の容器詰め製品の内容物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−220307(P2008−220307A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65616(P2007−65616)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】