説明

容器詰清涼飲料

【課題】いずれの温度、特に低温において旨味と呈味のバランスに優れ、大量に摂取しやすく、さらには、ミネラル分も補給することができる、止渇用に適した容器詰清涼飲料を提供する。
【解決手段】容器詰清涼飲料は、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が30〜120であり、マルトース量(mg/L)が0.51〜2.50であり、麦由来可溶性固形分(%)が0.15〜0.48であり、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)が1.00〜4.00であることを特徴とするものであり、さらには、マルトース量に対するリン量の比(リン/マルトース)が0.60〜3.00であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発汗後などの水分を欲する時に飲用するのに適した容器詰清涼飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
発汗した後に水分を補給することは、喉を癒すだけではなく、身体機能維持の観点からも重要である。特にスポーツや炎天下での作業などで大量に発汗した後は、水分だけでなくミネラル分等も失っているため、これらを多く含む飲料、例えば、スポーツドリンクなどを飲用することが好適である。
【0003】
このような発汗後の水分やミネラル分の補給に適した飲料として、例えば、特許文献1には、Na40〜60mEq/L、K16〜24mEq/L、Cl40〜60mEq/L、Mg2+0〜3mEq/L、リン0〜3mmol/L、有機酸0〜50mEq/Lの組成の成分を含有し、ナトリウムイオンとブドウ糖のモル比が1:1.5〜2.5であることを特徴とする飲料が開示されており、この飲料を摂取すると、脱水状態における循環血漿量を速やかに正常状態に回復させることができることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、固形分中に非重合体カテキン類を含有し、シュウ酸(B)と非重合体カテキン類(A)との含有重量比[(B)/(A)]が0〜0.002の緑茶抽出物を配合し、次の成分(A)〜(C);(A)非重合体カテキン類0.03〜0.6重量%、(B)シュウ酸又はその塩成分(B)/成分(A)(重量比)=0〜0.02、(C)カフェイン成分(C)/成分(A)(重量比)=0〜0.16(D)炭水化物フルクトース換算量0.001〜15重量%、グルコース換算量0〜0.05重量%未満を含有する非茶系容器詰飲料が開示されており、この飲料はスポーツ等の水分を欲するときに飲む止渇飲料として適したものであると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−125639号公報
【特許文献2】特開2006−136204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スポーツドリンク等を鞄に携帯したり、オフィスの机上に置いたりして、喉の渇きに応じて少量ずつ時間をかけて飲用することがある。このような飲料には、酸味・甘味・香料などが添加されていることが多いため、少量ずつ飲む場合はしつこく感じられることがあった。特に、常温(例えば、20℃前後)に長時間放置した場合は、過度の甘さは後味が重く、糖分由来のだれ・しつこさが感じられる結果、かえって口渇に拍車がかかる場合があった。
【0007】
これに対し、従来からある麦茶は、焙煎麦由来の香ばしさを有しており、また、甘さなどの呈味も適度なものである。さらには、麦由来のミネラル分を多く含み、これらを補給することもできることから、夏季に好適に飲用されてきた。
【0008】
しかし、麦茶は濃度が高いと、激しい運動後など水分を大量に摂取する必要がある場合には焙煎麦由来の香ばしさや甘味の程度がやや強く感じられ、口渇の解消に適したものではなかった。一方、従来の麦茶を希釈したのみでは、すべての呈味成分が希薄となるため、嗜好的に好適なものではなかった。
また、常温や炎天下など高温環境下(例えば、30℃以上)では、麦茶でも、呈味のバランスが崩れ、好適に飲用することはできなかった。特に、口渇時に低温(約0℃)の麦茶飲料を飲用すると、味が感じづらく、旨味と呈味のバランスが崩れてしまうことがあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、いずれの温度、特に低温において旨味と呈味のバランスに優れ、大量に摂取しやすく、さらには、ミネラル分も補給することができる、止渇用に適した容器詰清涼飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の容器詰清涼飲料は、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が30〜120であり、マルトース量(mg/L)が0.51〜2.50であり、麦由来可溶性固形分(%)が0.15〜0.48であり、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)が1.00〜4.00であることを特徴とする。
【0011】
本発明は、デンプン量やβグルカン量の多糖類量を調整することによりテクスチャ感等を調整し、マルトース量を調整することにより滋味等を調整し、麦由来可溶性固形分を調整することにより濃度感等を調整し、ミネラル分を調整することによりさっぱり感等を調整した結果、いずれの温度、特に低温において旨味と呈味のバランスに優れ、大量に摂取しやすく、さらには、ミネラル分も補給することができる、止渇用に適した新たな容器詰清涼飲料を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の容器詰清涼飲料の実施形態を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<本容器詰清涼飲料の組成>
本発明の実施形態の一例に係る容器詰清涼飲料(以下「本容器詰清涼飲料」と称する)は、少なくとも、デンプンやβグルカンなどの多糖類、マルトース、麦由来可溶性固形分、及び、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル分を含む飲料である。
【0014】
本容器詰清涼飲料は、例えば、後述するように、焙煎麦を抽出して得られた抽出液乃至抽出物を用いた容器詰麦茶入り清涼飲料として作製することができる。よって、ここでは、そのように作製することを中心として説明するが、これに限定するものではない。
【0015】
本容器詰清涼飲料は、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が30〜120である。
この範囲であることにより、テクスチャ感などを調整することができる。
かかる観点から、多糖類量(mg/100mL)は、好ましくは50以上或いは97以下、特に好ましくは64以上或いは90以下である。
【0016】
本容器詰清涼飲料は、デンプン量(mg/100mL)が29〜116であるのが好ましい。
この範囲であることにより、粘度・固体感などを調整することができる。
かかる観点から、デンプン量(mg/100mL)は、より好ましくは45以上或いは93以下、特に好ましくは60以上或いは86以下である。
【0017】
デンプン量は、原料麦の焙煎条件や抽出条件等を適宜調整して、上記範囲に調整することができる。例えば、デンプン量は、これらの含量が多い原料麦、例えば二条大麦や焙煎の浅い麦を用いることにより高めることができる。
【0018】
本容器詰清涼飲料は、βグルカン量(mg/100mL)が0.1〜6.0であるのが好ましい。
この範囲であることにより、デンプンの呈味に対し厚みなどを付与することなどができる。
かかる観点から、βグルカン量(mg/100mL)は、より好ましくは0.8以上或いは5.2以下、特に好ましくは0.9以上或いは5.0以下である。
【0019】
βグルカン量は、原料麦の焙煎条件や抽出条件等を適宜調整して、上記範囲に調整することができる。例えば、βグルカン量は、これらの含量が多い原料麦、例えばβグルカン高含有品種を用いることにより高めることができる。
【0020】
本容器詰清涼飲料は、マルトース量(mg/L)が0.51〜2.50である。
この範囲であることにより、滋味などを調整することができる。
かかる観点から、マルトース量(mg/L)は、好ましくは0.65以上或いは1.70以下、特に好ましくは0.75以上或いは1.10以下である。
【0021】
マルトース量は、原料麦の焙煎条件や抽出条件等を適宜調整して、上記範囲に調整することができる。例えば、マルトース量は、これらの含量が多い原料麦、例えば麦芽や酵素処理麦を用いることにより高めることができる。
【0022】
本容器詰清涼飲料は、麦由来可溶性固形分(%)が0.15〜0.48である。
この範囲であることにより、濃度感などを調整することができる。
かかる観点から、麦由来可溶性固形分(%)は、好ましくは0.17以上或いは0.39以下、特に好ましくは0.20以上或いは0.30以下である。
【0023】
なお、麦由来可溶性固形分とは、原料麦から抽出して得られた抽出液の可溶性固形分をショ糖換算したときの値をいう。
【0024】
麦由来可溶性固形分は、原料麦の焙煎条件や抽出条件等を適宜調整して、上記範囲に調整することができる。例えば、麦由来可溶性固形分は、抽出液を高温にすることにより高めることができる。
【0025】
本容器詰清涼飲料は、マグネシウム(Mg)量とカルシウム(Ca)量とリン(P)量を合計したミネラル分量(mg/100mL)が1.00〜4.00である。
この範囲であることにより、さっぱり感などを調整することができる。
かかる観点から、ミネラル分量は、好ましくは1.20以上或いは3.44以下、特に好ましくは1.53以上或いは3.00以下である。
【0026】
本容器詰清涼飲料は、マグネシウム(Mg)量(mg/100mL)が0.118〜0.440であるのが好ましい。
この範囲であることにより、さっぱり感のうちの収斂味などを調整することができる。
かかる観点から、マグネシウム量は、特に好ましくは0.137以上或いは0.382以下、さらに好ましくは0.178以上或いは0.354以下である。
【0027】
本容器詰清涼飲料は、カルシウム(Ca)量(mg/100mL)が0.075〜0.300であるのが好ましい。
この範囲であることにより、さっぱり感のうちの後味などを調整することができる。
かかる観点から、カルシウム量は、特に好ましくは0.086以上或いは0.254以下、さらに好ましくは0.117以上或いは0.238以下である。
【0028】
本容器詰清涼飲料は、リン(P)量(mg/100mL)が0.84〜3.30であるのが好ましい。
この範囲であることにより、カルシウム・マグネシウムの硬度感などを調整することができる。
かかる観点から、リン量は、特に好ましくは0.98以上或いは2.80以下、さらに好ましくは1.26以上或いは2.64以下である。
【0029】
各ミネラル分は、原料麦の焙煎条件や抽出条件等を適宜調整して、上記範囲に調整することができる。例えば、マグネシウム量およびカルシウム量は、粉砕麦を用いるほか、籾殻を用いる等により高めることができ、またミネラルを含有する海洋深層水や、硬水等の添加によっても調整が可能である。リン量は、品種の選択と粉砕の有無、および焙煎方法(媒体焙煎かつ浅焙煎)により高めることができる。
【0030】
本容器詰清涼飲料は、マルトース量(mg/L)に対するリン量(mg/100mL)の比(リン/マルトース)が0.60〜3.00であることが好ましい。
この範囲であることにより、旨味などを調整することができる。
かかる観点から、リン/マルトースは、特に好ましくは0.70以上或いは2.90以下、さらに好ましくは1.00以上或いは2.40以下である。
【0031】
本容器詰清涼飲料は、pHが20℃で5.0〜8.0であることが好ましく、5.2以上或いは7.5以下であるのがより好ましく、5.5以上或いは7.2以下であるのがさらに好ましい。
【0032】
本容器詰清涼飲料は、L値が80〜98であることが好ましく、83以上或いは95以下であるのがより好ましく、86以上或いは92以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
本容器詰清涼飲料は、液中の溶存酸素量(mg/L)が、0.05〜20であることが好ましく、0.1以上或いは15以下であるのがより好ましく、0.5以上或いは10以下であるのがさらに好ましい。これにより、保管中に飲料と酸素が反応し、甘みを出すことができる。
なお溶存酸素量は、「Doメーター」と呼ばれる溶存酸素計等を用いて測定することができる。
【0034】
<本容器詰清涼飲料の製造方法>
本容器詰清涼飲料は、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)を30〜120に調整し、マルトース量(mg/L)を0.51〜2.50に調整し、麦由来可溶性固形分(%)を0.15〜0.48に調整し、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)を1.00〜4.00に調整して製造することができる。
【0035】
本容器詰清涼飲料は、各成分を所望量秤量して水に加えて調製することも可能であるが、例えば、焙煎麦を抽出して得られた抽出液乃至抽出物を用いて作製することができる。但し、この方法に限定するものではない。
以下、焙煎麦を抽出して得られた抽出液乃至抽出物を用いて本容器詰清涼飲料を製造する方法について説明する。
【0036】
本容器詰清涼飲料は、好ましくは、焙煎麦を抽出して得られた抽出液乃至抽出物を主成分とする液体から作製することができる。
ここで、「主成分」とは、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意である。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、焙煎麦を抽出して得られた抽出液乃至抽出物が、固形分濃度として、飲料中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に80質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
【0037】
上記の「焙煎麦を抽出して得られた抽出液乃至抽出物を主成分とする液体」としては、例えば、焙煎麦を抽出して得られた抽出液のみからなる液体、当該抽出液を希釈した液体、抽出液どうしを混合した液体、これら前記何れかの液体に添加物を加えた液体、或いは、これら前記何れかの液体を乾燥したものを分散させてなる液体などを挙げることができる。
【0038】
(原料)
焙煎麦は、原料麦を焙煎処理して得ることができる。
原料麦としては、二条・四条・六条等の各皮麦・裸麦などの大麦、水浸漬や酵素加工による加工麦、βグルカン高含有麦、アミロースフリー麦、低ポリフェノール麦などの改良種大麦を挙げることができる。
【0039】
なお、βグルカン高含有麦とは、βグルカンを多く含む麦であり、例えば、“CDC Fiber”,“CDC Alamo”,“Pronghorn”,“Salute”,“BG006”,“BG012”,“ビューファイバー”などの品種を挙げることができ、具体的な商品としては“BGバーレイ”などを挙げることができる。
【0040】
焙煎処理は、熱風焙煎、砂炒焙煎、遠赤外線焙煎、開放釜焙煎、回転ドラム式焙煎、媒体焙煎などにより行うことができる。
【0041】
抽出は、特に限定するものではないが、カラム式抽出、バッチ式抽出などで行うことができる。
【0042】
抽出の際の原料麦の形態は、ホール(丸粒)、挽き割、粉砕などにすることができる。
【0043】
また、原料麦に、茶樹(Camellia sinensis var. sinensisやCamellia sinensis var. assamica、またはこれらの雑種)の葉や茎から製造された茶葉、玄米、ハト麦、とうもろこし、アマランサス、キヌア、ナンバンキビ、モズク、甘草、ハス、シソ、マツ、オオバコ、ローズマリー、桑、ギムネマ、ケツメイシ、大豆、昆布、霊芝、熊笹、柿、ゴマ、紅花、アシタバ、陳皮、グァバ、アロエ、ギムネマ、杜仲、ドクダミ、チコリー、月見草、ビワ、籾殻等の各種植物の葉、茎、根等を混合してもよい。
【0044】
好ましい一例としては、原料麦として六条大麦を用い、熱風または媒体焙煎をして得られた粉砕L値28〜55である焙煎麦を使用するのがよい。
【0045】
(抽出)
焙煎麦を60〜100℃の抽出液で抽出するのが好ましい。
【0046】
(調合)
原料麦の種類、焙煎条件、焙煎麦の抽出条件などを調整して、上記組成に調整することができる。
また、原料麦の種類、焙煎条件、焙煎麦の抽出条件などの異なる2種類或いは3種類以上の抽出液を混合することで、上記組成に調整することができる。
【0047】
各成分量を上記範囲に調整するために市販の麦抽出物を添加してもよいが、麦本来の香りの余韻の感じを失わないようにするために麦抽出物の使用は極力控えるべきであり、可能であれば使用しないのが好ましい。
【0048】
また、本容器詰清涼飲料には、長期保存しても沈殿物が発生しない限りにおいて、必要に応じ、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤、香料、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、乳化剤、保存料、甘味料、着色料、増粘安定剤、調味料、強化剤等の添加剤を単独又は組み合わせて配合することもできる。また、海洋深層水や硬水などを混合してもよい。
【0049】
(容器充填)
本容器詰清涼飲料に用いることができる容器としては、例えば、ガラス瓶、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、多層成形容器等のプラスチック容器、紙容器、金属容器等がある。
【0050】
容器としてプラスチック容器を用いた場合は、25℃、湿度55%RHにおける容器の酸素透過量(cc/Day/500mLボトル)が、0.010〜0.200であるのが好ましく、0.015〜0.100がより好ましく、0.020〜0.080がさらに好ましい。これにより、保管中に飲料と酸素が反応し、甘みを出すことができる。
【0051】
本容器詰清涼飲料の容器の口部と容器内の飲料の液面との間の空間(「ヘッドスペース」とも言う。)の酸素量(mL)が、内容液1mLに対して、0.0008〜0.040があるのが好ましく、0.0028〜0.032であるのがより好ましく、0.004〜0.020であるのがさらに好ましい。
【0052】
本容器詰清涼飲料は、清涼飲料を容器に充填する際、常温で充填するのが好ましい。また、窒素を充填しない方が好ましい。
【0053】
(殺菌)
本容器詰清涼飲料は、必要に応じ、製造工程のいずれかの段階で殺菌を行って製造される。殺菌の条件は食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択すればよいが、例えば、容器として耐熱容器を使用する場合にはレトルト殺菌を行えばよい。また、容器として非耐熱性容器を用いる場合、本容器詰清涼飲料は、例えば、清涼飲料を予めプレート式熱交換機等で高温短時間殺菌後、所定温度まで冷却し、熱時充填するか低温、たとえば10〜50℃で無菌充填を行うことで製造することができる。
【0054】
なお、上記各成分量及び麦由来可溶性固形分の測定は、例えば、後述の実施例で示す測定方法により測定することができる。
【0055】
<用語の説明>
本発明における「清涼飲料」とは、清涼感を与え、ノドの渇きを癒すのに適した飲料をいい、より詳しくは、食品衛生法の定義で示された「乳酸菌飲料・乳及び乳製品を除く、酒成分1容量%未満の飲料」をいう。
【0056】
本発明における「容器詰」とは、金属、ガラス、プラスチック、金属やプラスチックフィルムと複合された紙容器等に対象物が充填、密封されてなる状態を意味する。
【0057】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0059】
≪官能評価試験1≫
以下の実施例1〜9及び比較例1〜8の容器詰清涼飲料を作製し、官能評価試験を行った。
【0060】
<原料麦の作製>
まず、以下の原料麦1〜8を作製した。なお、粉砕L値は家庭用卓上電動ミルで30秒粉砕し粉末状としたものを、約1cmの厚みになるようセル内に配置して日本電色工業(株)製の色差計(日本電色SE−2000)にて表面色を測定した。
【0061】
(原料麦1)
カナダ産六条大麦(品種:レガシー)200gに蒸気噴霧処理を施して含有水分量が約25重量%になるように調整し、回転ドラム式媒体焙煎窯に投入し、焙煎温度255℃で90秒間の一次焙煎を行った。その後、焙煎温度を280℃で90秒間の二次焙煎を行った後、冷却装置のコンベアに移し、麦の品温が80〜140℃の温度域に47秒間滞留するように冷却ファン及びコンベアの速度を調整して緩慢冷却をし、原料麦1を製造した。この麦の粉砕L値は31であった。
【0062】
(原料麦2)
カナダ産六条大麦(品種:レガシー)200gを排気温度190℃にて小型熱風焙煎機に投入し、12分後品温184℃にて排出し、原料麦2を製造した。この麦の粉砕L値は46であった。
【0063】
(原料麦3)
国産六条大麦(品種:シュンライ)200gを排気温度265℃にて小型熱風焙煎機に投入し、7分後品温196℃にて排出し、原料麦3を製造した。この麦の粉砕L値は42であった。
【0064】
(原料麦4)
オーストラリア産二条大麦を約36時間、室温にて水浸漬後、さらに24時間程度湿潤環境下において十分に吸水させた後、約75℃の弱熱条件にて乾燥した。この乾燥麦250gを排気温度282℃にて回転式熱風焙煎機に投入し、4分後品温187℃にて排出し、原料麦4を製造した。この麦の粉砕L値は32であった。
【0065】
(原料麦5)
オーストラリア産二条大麦を約24時間、室温にて水浸漬後、さらに24時間程度湿潤環境下において十分に吸水させた後、約75℃の弱熱条件にて乾燥した。これを再び5℃にて24時間水浸漬し、余剰水分を除去後、引き続き蒸気雰囲気下にて60〜90℃に昇温させながら30分加熱し、乾燥した。この乾燥麦120kgを、排気温度205℃にて回転式熱風焙煎機に投入し、5分後品温179℃にて排出し、原料麦5を製造した。この麦の粉砕L値は49であった。
【0066】
(原料麦6)
アメリカ産六条大麦(βグルカン高含有品種)を蒸気噴霧処理を施して含有水分量が約15重量%になるように調整し、回転ドラム式媒体焙煎窯に投入し、焙煎温度230℃で90秒間の一次焙煎を行った。その後、焙煎温度を271℃で90秒間の二次焙煎を行った後、冷却装置のコンベアに移し、麦の品温が80〜140℃の温度域に120秒間滞留するように冷却ファン及びコンベアの速度を調整して緩慢冷却をし、原料麦6を製造した。この麦の粉砕L値は29であった。
【0067】
(原料麦7)
カナダ産六条大麦(品種:レガシー)150gを排気温度185℃にて小型熱風焙煎機に投入し、17分後品温190℃にて排出して焙煎麦を得た。これをハンドミルで粉砕し、原料麦7を製造した。この麦の粉砕L値は35であった。
【0068】
(原料麦8)
上記原料麦6をハンドミルで粉砕し、原料麦8とした。この麦の粉砕L値は29であった。
【0069】
<抽出液の作製>
(抽出液1〜8)
各原料麦1〜8を、下記表1に示す割合で配合(g/L)し、下記抽出方法で抽出して抽出液1〜8を作製した。
【0070】
【表1】

【0071】
(カラム式抽出)
容器下部に流量制御が可能なコックを備えたステンレス製ドリップ抽出容器(内径150mm、円筒部高150mm、容積約3120cm)に80メッシュの金網(直径40mm)を設置した。熱湯を入れてあらかじめ全体を高温にした同容器に、ホール状態の焙煎麦を200g投入し、高さを均一とした。これに98℃の熱水1Lを注ぎ、25分保持後、内容液を引き抜いて抽出原液Aとした。残渣にさらに98℃の熱水1Lを加えて20分保持後、内容液を引き抜いて抽出原液Bとした。抽出原液AとBを混合し、25℃に冷却後、235メッシュのステンレスメッシュで濾過し、イオン交換水にて2Lに定容し各抽出液を作製した。
【0072】
(バッチ式抽出)
抽出液4L分の焙煎麦を寸胴に投入し、高さを均一とした。これに表1に示した温度の熱水を注ぎ、その温度を保持したまま加温抽出した。抽出中は、抽出時間の中間に相当する時に15秒間攪拌を行った。これをステンレスメッシュ(80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却後、イオン交換水にて4Lに定容して各抽出液を作製した。なお、原料麦4及び5はホール麦、原料麦7及び8は粉砕麦にて抽出した。
【0073】
<清涼飲料の作製>
各抽出液1〜8を、下記表2,3に示す割合で配合し、アスコルビン酸を300ppm添加した後、重曹を添加してpH6.5に調整した。これにイオン交換水を加えて全量を5000mlに調整し、この液を135℃、30秒のUHT殺菌の後、35℃に冷却し、ペットボトルに無菌環境で充填し、プラスチックキャップにて巻き締め、密封を行い、実施例1〜9及び比較例1〜8の容器詰清涼飲料を作製した。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
なお、上記方法で作製した清涼飲料は、いずれも溶存酸素量2mg/Lであった。また、充填に使用したペットボトルの酸素透過量は、0.040cc/Day/ボトル500mL(25℃、55%RH)であり、ヘッドスペース中の酸素量は、清涼飲料1mLあたり0.006mLであった。
【0077】
≪清涼飲料の成分≫
実施例1〜9及び比較例1〜8の容器詰清涼飲料の成分を測定し、各値を算出した。その結果を下記記表4,5に示す。
なお、各成分の測定方法は下記に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
<デンプン>
試料溶液10gに対し、エタノールを10g加え、遠心分離(8000g〜10000g、20分)処理を行い、上澄を廃棄する。残渣に再び蒸留水を適宜加え、3分間加熱糊化を行う。
これに、グルコアミラーゼ(「AMYLOGLUCOSIDASE、Megazyme」日本バイオコン株式会社製)を加えて37℃にて2時間保温後、20mLに定容し、濾紙(「ADVANTEC No.5B」東洋濾紙株式会社製)にて濾過する。
【0081】
この濾液について、市販のグルコース定量用キット(例えば、「グルコースCII−テストワコー」和光純薬株式会社製)を用いてグルコース量を求める。グルコース量から次の式により、試料に含まれるデンプン量が算出することができる。
デンプン(g/100g)=グルコース量(g/100g)×0.9…式
【0082】
<βグルカン>
βグルカン量は、βグルカン定量用キット(例えば、Megazyme社製「分析用キット」など)を用いて求めることができる。試料溶液5mLに2.5gの硫酸アンモニウムを加え、泡立たないように注意深く混和し、4℃で20時間静置する。この溶液を遠心分離(1000g、10分)し、上澄を除去する。残渣に1.0mLの50%エタノールを加えて激しく攪拌し、さらに10mLの50%エタノールを加えて混合し、これを遠心分離(1000g、5分)し、上澄を除去する。得られた残渣に対し再度同様の操作を繰り返し行ったのち、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5)4.8mLに溶解
し、リケナーゼ(10U)を0.2mL加えて40℃で5分静置する。これを遠心分離(1000g、10分)し、得られた上澄を0.1mLずつ3本の試験管に移す。うち1本の試験管には50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)0.1mLを加える(ブランク用サンプル)。残りの2本にはβ−グルコシダーゼ・50mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)溶液(0.2U)0.1mLを加える(反応用サンプル)。それぞれ40℃、15分間静置し、これにグルコース定量用試薬(GOPOD Reagent)をそれぞれ3.0mLずつ加えたのち、40℃,20分静置する。これらの溶液について、510nmにおける吸光度Aを測定し、次式により吸光度差ΔAを求める。
ΔA=A(反応用サンプル)−A(ブランク)…式
さらに吸光度差ΔAより、次式により試料溶液に含まれるβグルカン量を算出することができる。
βグルカン量(mg/L)=ΔA × F × 9…式
但し、F=100/A(グルコース標準液)
ここで、グルコース標準液は、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(0.1mL)、1.0mg/mLグルコース水溶液(0.1mL)、グルコース定量用試薬GOPOD(3.0mL)を混合することにより得られる。サンプルは2本以上測定し、その平均値を以てβグルカン量とした。
【0083】
<マルトース>
試料溶液100μLに、100ppmのラクト−ス水溶液を100μL、蒸留水を800μL加え分析用原液とした。分析用原液を、1mLのメタノールおよび蒸留水で洗浄した固層担体(「BOND Elut−SAX、1mL」VARIAN社製)に通液した。
最初の100μLは廃棄し、次いで得られる300μLを分析用検体とした。検量線用検体には、マルトースおよびラクト−スの混合液を、各10ppmから1/2ずつの希釈で6点検量線となるように調整した原液を同様に処理したものを用いた。校正用検体にはラクトース10ppmとなるように調整した溶液を同様に処理したものを用いた。各検体はそれぞれ0.45μmカートリッジフィルターに通液した後、下記の機器・条件を用いてHPLC分析に供した。得られた結果は、校正用検体のラクト−ス値(L’)を各分析用検体のラクトース値(L)で除した補正係数k=(L’)/(L)を、各分析検体のマルトース分析値に乗じて分析用原液の濃度を求め、さらに希釈率を乗じて試料溶液中の含量とした。
【0084】
(分析条件)
サンプル注入量:25μL
流量:1.0mL/min
溶離液A:0.2M水酸化ナトリウム水溶液
溶離液B:1M酢酸ナトリウム水溶液
溶離液C:蒸留水
カラム温度30℃
【0085】
(分析機器)
HPLC装置の構成ユニットの型番は次の通り(全て日本ダイオネクス社製)。
ディテクター:統合アンペロメトリ検出器EC50A
オーブン:TCC−100
ポンプ:GP50
オートサンプラー:AS50
解析用ソフトウェア:CHROMELEON
カラム:CarboPac PA1(ガードカラム:径φ4×長さ50mm,分離用カラム:径φ4×長さ250mm)
【0086】
(濃度勾配条件)
時間(溶離液A/溶離液B/溶離液C 各%)
0〜5分(5/0/95)
20分(60/0/40)
30分(80/0/20)
31〜40分(0/100/0)
41〜55分(5/0/95)
【0087】
<麦由来可溶性固形分>
麦由来可溶性固形分(%)は、示差濃度計「DD−7」(アタゴ社製)で測定した。
【0088】
<ミネラル分>
マグネシウム、カルシウム、リンの各成分は、ICP発光分光分析/ICP質量分析装置(ICP−OES)「Vista−PRO」(Varian,Inc.,CA,USA)で測定した。
【0089】
≪評価≫
実施例1〜9及び比較例1〜8の各容器詰清涼飲料を用いて、液温15℃における官能評価(常温時評価)と液温30℃における官能評価(口渇時評価)を行った。
【0090】
<常温時評価>
各容器詰清涼飲料を恒温槽で液温15℃とし、熟練した男性審査官5名(いずれも20代)に試飲してもらい、滋味、テクスチャ感、濃度感、さっぱり感について官能評価をした。各項目について、以下の評価基準に従い、5名の合議で「◎」〜「×」の4段階で評価した。この結果を上記表4,5に示す。
【0091】
なお、滋味とは、口中に含んだ時の、主に甘味・うま味と苦渋味からなる総合的な焙煎麦由来の呈味を示す。テクスチャ感とは、飲用時に感じられる液体の粘度・固体感を示す。また、濃度感とは飲料を含んだ時に感じられる飲料の濃さを示す。さっぱり感とは、滋味と濃度感に対し、引き締まった呈味の感覚を示す。
【0092】
<評価基準>
(滋味)
滋味は、適度の場合を「◎」、感じられない或いは強く感じられる場合を「×」として4段階で評価した。
(テクスチャ感)
テクスチャ感は、適度の場合を「◎」、感じられない或いは重く感じられる場合を「×」として4段階で評価した。
(濃度感)
濃度感は、適度の場合を「◎」、薄すぎ或いは濃すぎの場合を「×」として4段階で評価した。
(さっぱり感)
さっぱり感は、適度の場合を「◎」、感じられない或いはえぐみが強く感じられる場合を「×」として4段階で評価した。
【0093】
<総合評価>
「呈味に関する総合評価」と「さっぱり感に関する総合評価」を算出した。
「呈味に関する総合評価(呈味総合評価)」は、滋味とテクスチャ感の評価から算出した。まず、一つでも「×」の評価がある場合は、呈味総合評価を「×」と評価した。次に、平均の評価を呈味総合評価とした。平均の評価が間になった場合、例えば、滋味が「◎」でテクスチャ感が「○」の場合は切下げた評価、つまり「○」の評価とした。
この結果を上記表4,5に示す。
【0094】
「さっぱり感に関する総合評価(さっぱり感総合評価)」は、濃度感とさっぱり感の評価から算出した。評価方法は、上記呈味総合評価と同様である。
この結果を上記表4,5に示す。
【0095】
常温時総合評価は、「呈味総合評価」と「さっぱり感総合評価」から算出した。評価方法は、上記呈味総合評価と同様である。
この結果を上記表4,5に示す。
【0096】
<常温時評価の結果>
実施例は、いずれも常温時総合評価が「○」以上であり、呈味に優れ及びさっぱり感のある飲料であった。
一方、比較例は、比較例7を除きいずれも常温時総合評価が「×」であった。
比較例1,4の結果から多糖類はテクスチャ感に影響を及ぼし、比較例2,3結果からマルトースは滋味に影響を及ぼすものと思われ、呈味の評価が芳しいものではなかった。
【0097】
また、比較例5,6の結果から麦由来可溶性固形分は濃度感に影響を及ぼし、比較例8の結果からミネラル分は常温での飲用におけるさっぱり感に影響を及ぼすものと思われ、さっぱり感の評価が芳しいものではなかった。
【0098】
<口渇時評価>
各容器詰清涼飲料を30℃に暖め、上記男性5名に試飲してもらった。なお、5名には室温30℃、湿度60〜70%(WBGT27〜29℃相当)の環境下で30分の運動(ルームランナーによる走行)を15分間してもらった直後に試飲してもらった。
まず、上記常温時評価試験と同様に滋味、テクスチャ感、濃度感、さっぱり感について官能評価をした。その結果を上記表4,5に示す。
【0099】
<総合評価>
「呈味に関する総合評価」と「さっぱり感に関する総合評価」を算出し、これらに基づき口渇時総合評価を算出した。
「呈味に関する総合評価(呈味総合評価)」、「さっぱり感に関する総合評価(さっぱり感総合評価)」及び口渇時総合評価は、上記常温時総合評価と同様に評価した。
この結果を上記表4,5に示す。
【0100】
(口渇時評価の結果)
実施例は、いずれも口渇時総合評価が「△」以上であり、呈味及びさっぱり感のある飲料であった。
一方、比較例は、比較例8を除きいずれも口渇時総合評価が「×」であった。
比較例の結果は、上記常温時総合評価と同様の結果であり、多糖類及びマルトースが呈味に影響を及ぼし、また、麦由来可溶性固形分は濃度感に影響を及ぼし、特に比較例7の結果からミネラル分が口渇時のさっぱり感に影響を及ぼすものと思われ、総合評価が芳しいものではなかった。
【0101】
これら結果から、デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が30〜120であり、マルトース量(mg/L)が0.51〜2.50であり、麦由来可溶性固形分(%)が0.15〜0.48であり、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)が1.00〜4.00である容器詰清涼飲料は、いずれの温度でも呈味に優れ、また、大量に摂取しやすく、さらには、ミネラル分も補給することができる容器詰清涼飲料になることが見出せた。
【0102】
≪官能評価試験2≫
<氷結温度・通常時並びに口渇時評価>
味の感じづらい低温(氷結温度約0℃)で飲用した際の容器詰清涼飲料について評価した。
上記実施例3、5、9を用いるとともに、上記各抽出液を、下記表6に示す割合で配合し、上記と同様な製法で実施例10〜13の容器詰清涼飲料を作製した。これらの成分を測定した結果を下記表7に示す。
【0103】
【表6】

【0104】
【表7】

【0105】
これらの飲料を氷水内に12時間保管し、飲料温度を0度とした。これらの飲料を、上記男性審査官5名に、「氷温・通常時評価」ならびに「氷温・口渇時評価」を行ってもらった。「氷温・通常時評価」は、官能評価試験1の常温時評価と同様に試験を行い、氷結温度での飲料の官能試験を行った。「氷温・口渇時評価」は、官能評価試験1の口渇時評価と同様に、運動直後に試飲してもらい、氷結温度の飲料を官能評価してもらった。特に口渇時における旨味と呈味とのバランスに注目して官能評価を行ってもらった。旨味と呈味とのバランスの評価基準は下記に示す。これらの結果を上記表7に示す。
【0106】
<評価基準>
(旨味と呈味のバランス)
旨味と呈味とのバランスが最も好ましい場合を「+++」、バランスをやや欠く場合を「±」として、上から順に「+++」、「++」、「+」、「±」の4段階で評価した。
【0107】
(結果)
実施例3及び実施例10は、旨味と呈味のバランスが最も好ましいものであった。
実施例5及び実施例11は、旨味と呈味のバランスが好ましいものであった。
実施例12は、氷結温度での飲用時には旨味が強く感じられ、実施例3及び実施例10に比べるとややバランスを欠いた。
実施例13は、旨味が弱く、氷結温度での飲用時には実施例3及び実施例10に比べるとややバランスを欠いた。
【0108】
この結果、マルトース量に対するリン量の比率(リン/マルトース)が0.60〜3.00であると、氷結温度での口渇時の摂取においても、旨味と呈味のバランスが好適な容器詰清涼飲料になることが見出せた。
これはエンハンス(増幅)効果により旨味が増強されるためであると思われる。つまり、リンとマルトースのバランスが旨味に影響を与え、味を感じづらい氷結温度のような低温域でも旨味を増幅させたものと思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)が30〜120であり、マルトース量(mg/L)が0.51〜2.50であり、麦由来可溶性固形分(%)が0.15〜0.48であり、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)が1.00〜4.00である容器詰清涼飲料。
【請求項2】
マルトース量に対するリン量の比(リン/マルトース)が0.60〜3.00である請求項1に記載の容器詰清涼飲料。
【請求項3】
デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)を30〜120に調整し、マルトース量(mg/L)を0.51〜2.50に調整し、麦由来可溶性固形分(%)を0.15〜0.48に調整し、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)を1.00〜4.00に調整する容器詰清涼飲料の製造方法。
【請求項4】
マルトース量に対するリン量の比(リン/マルトース)を0.60〜3.00に調整する請求項3に記載の容器詰清涼飲料の製造方法。
【請求項5】
デンプン量とβグルカン量とを合わせた多糖類量(mg/100mL)を30〜120に調整し、マルトース量(mg/L)を0.51〜2.50に調整し、麦由来可溶性固形分(%)を0.15〜0.48に調整し、マグネシウム量とカルシウム量とリン量とを合わせたミネラル分量(mg/100ml)を1.00〜4.00に調整する容器詰清涼飲料の呈味改善方法。
【請求項6】
マルトース量に対するリン量の比(リン/マルトース)を0.60〜3.00に調整する請求項5に記載の容器詰清涼飲料の呈味改善方法。

【公開番号】特開2013−111029(P2013−111029A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261049(P2011−261049)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【特許番号】特許第5086469号(P5086469)
【特許公報発行日】平成24年11月28日(2012.11.28)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】