説明

容器詰炭酸飲料及びその製造方法

【課題】カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された容器詰炭酸飲料を提供する。
【解決手段】カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料であって、容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98であることを特徴とする容器詰炭酸飲料。容器詰炭酸飲料は、果実由来物及び/又は野菜由来物を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰炭酸飲料、容器詰炭酸飲料の製造方法、容器詰炭酸飲料の刺激感改善方法及び容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、その味わいのみならず、飲用した時に炭酸ガスの刺激によって清涼感を得ることができる清涼飲料であり、従来から広く普及している。さらに、果汁又は野菜汁を含有させることで、果汁の風味を活かし、かつ炭酸ガスによる清涼感や爽快感を出すために、種々工夫された果汁入り炭酸飲料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/067702号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、柑橘類のフレーバー等を含有する炭酸飲料や柑橘類の果汁(特にオレンジ果汁)等を含有する炭酸飲料は、カロテノイドを含有するものであるが、このカロテノイドが油っぽい好ましくない味を有するため、炭酸の刺激感が弱くなるという問題があった。そのため、従来のカロテノイド含有炭酸飲料においては、炭酸の刺激感の弱いものしか存在しなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された容器詰炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第一に本発明は、カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料であって、前記容器詰炭酸飲料における前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98であることを特徴とする容器詰炭酸飲料を提供する(発明1)。
【0007】
上記発明(発明1)においては、前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000であることが好ましい(発明2)。
【0008】
第二に本発明は、カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料であって、前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000であることを特徴とする容器詰炭酸飲料を提供する(発明3)。
【0009】
上記発明(発明1〜3)に係る容器詰炭酸飲料は、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された、嗜好的に好ましいものとなる。
【0010】
上記発明(発明1〜3)においては、前記ヘスペリジンの含有量[H]が43.5〜290mg/Lであることが好ましい(発明4)。
【0011】
上記発明(発明1〜4)に係る容器詰炭酸飲料は、果実由来物及び/又は野菜由来物を含有することが好ましい(発明5)。
【0012】
上記発明(発明5)によれば、容器詰炭酸飲料が果実由来物及び/又は野菜由来物を含有する場合において、当該果実由来物及び/又は野菜由来物による果実感及び/又は野菜感に優れたものとなる。
【0013】
上記発明(発明5)においては、前記果実由来物及び/又は前記野菜由来物がヘスペリジンを含有することが好ましい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明1〜6)に係る容器詰炭酸飲料は、炭酸ガスボリュームが2.0〜3.2であることが好ましい(発明7)。
【0015】
第三に本発明は、カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料の製造方法であって、前記容器詰炭酸飲料における前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98となるように、前記容器詰炭酸飲料に前記カロテノイド及び前記ヘスペリジンを含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料の製造方法を提供する(発明8)。
【0016】
第四に本発明は、カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料の製造方法であって、前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000となるように、前記容器詰炭酸飲料に前記カロテノイド及び前記ヘスペリジンを含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料の製造方法を提供する(発明9)。
【0017】
第五に本発明は、カロテノイドを含有する容器詰炭酸飲料の刺激感改善方法であって、前記容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98となるように、前記容器詰炭酸飲料に前記カロテノイド及び前記ヘスペリジンを含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料の刺激感改善方法を提供する。
【0018】
第六に本発明は、カロテノイドを含有する容器詰炭酸飲料の刺激感改善方法であって、前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000となるように、前記容器詰炭酸飲料に前記カロテノイド及び前記ヘスペリジンを含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料の刺激感改善方法を提供する。
【0019】
上記発明においては、前記容器詰炭酸飲料に果実由来物及び/又は野菜由来物を含有させることが好ましい。
【0020】
上記発明においては、前記果実由来物及び/又は前記野菜由来物がヘスペリジンを含有することが好ましい。
【0021】
第七に本発明は、果実由来物及び/又は野菜由来物を含有する容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法であって、前記容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98となるように、前記ヘスペリジンを含む前記果実由来物及び/又は前記野菜由来物を前記容器詰炭酸飲料に含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法を提供する。
【0022】
第八に本発明は、果実由来物及び/又は野菜由来物を含有する容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法であって、前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000となるように、前記ヘスペリジンを含む前記果実由来物及び/又は前記野菜由来物を前記容器詰炭酸飲料に含有させることを特徴とする容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法を提供する。
【0023】
上記発明においては、前記果実由来物及び/又は前記野菜由来物がヘスペリジンを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の容器詰炭酸飲料は、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された、嗜好的に好ましいものとなる。さらに、本発明の容器詰炭酸飲料が果実由来物及び/又は野菜由来物を含有する場合においては、当該果実由来物及び/又は野菜由来物による果実感及び/又は野菜感に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、カロテノイド及びヘスペリジンを含有するものである。
【0026】
カロテノイドは、テルペノイドの一種である一群の化合物群であり、緑黄色野菜などの植物に豊富に含まれる。カロテノイドとしては、β−カロテン、α−カロテン、γ−カロテン、リコペン等のカロテン類;β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等のキサントフィル類が挙げられる。カロテノイドは、抗酸化作用を有する他、生体内において代謝されてビタミンAになるなどの生理活性を有する。また、カロテノイドは、分子内の共役二重結合により光を吸収し呈色する性質を有するため、色素としても用いられる。本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、カロテノイド化合物単体を配合しても良く、又はカロテノイドを含有する組成物(例えば、カロテノイド色素や、カロテノイドを含有する果実由来物及び/又は野菜由来物等)を配合しても良い。
【0027】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料におけるカロテノイドの含有量は、容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aによって測定することができる。カロテノイド化合物はいずれも色素として光を吸収する性質があり、総じて450nmにおける吸光度Aと、カロテノイドに由来する油っぽい好ましくない味との間において、良好な相関関係を示す。そのため、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aを測定することにより、総カロテノイドの含有量を評価することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料におけるカロテノイドの含有量は、上述した吸光度Aの他、例えば、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(厚生労働省)に記載の高速液体クロマトグラフ法、吸光光度法等による測定も可能である。本明細書においては、容器詰炭酸飲料をヘキサン抽出し吸光光度法により測定し、得られた値からの算出値を、容器詰炭酸飲料におけるカロテノイドの含有量(mg/L)[C]として用いることがある。[C]の具体的な測定方法は、後述する実施例に示す。
【0029】
ヘスペリジンは、フラボノイド化合物の一つであって、アグリコンがヘスペレチンであり、糖部分がβ−ルチノースである化合物である。このヘスペリジンは、柑橘類の果皮等に含まれており、苦味を有する他、様々な生理作用を有することが知られている。本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、ヘスペリジン単体を配合しても良く、又はヘスペリジンを含有する組成物(例えば、柑橘類からの果汁等)を配合しても良い。なお、炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量は、公知の高速液体クロマトグラフィー法により測定することができる。本実施形態に係る容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の具体的な測定方法は、後述する実施例に示す。
【0030】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98となるものである。
【0031】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上記[H]/Aが上述した範囲にあることで、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、カロテノイドに由来する油っぽい味が抑制され、かつヘスペリジンに由来する苦味がほとんど感じられない、嗜好的に好ましいものとなる(これらの効果を以下「主効果」という)。上記[H]/Aは、50〜98であることが好ましく、50〜82であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対するヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が、176〜1000であることが好ましく、203〜880であることがより好ましく、203〜820であることがさらに好ましい。上記[H]/[C]が上述した範囲にあることで、上述した主効果がより顕著なものとなる。
【0033】
なお、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上述した[H]/A、又は[H]/[C]のそれぞれの範囲のうち、いずれか一つの範囲を満たすことで上述した主効果を得ることができるが、両方の範囲を満たすことが特に好ましい。
【0034】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、ヘスペリジンの含有量[H]が43.5〜290mg/Lであることが好ましく、62.5〜290mg/Lであることがより好ましく、62.5〜225mg/Lであることがさらに好ましい。ヘスペリジンの含有量[H]を上述した範囲内とすることで、上述した主効果がより顕著なものとなり、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。
【0035】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、果実由来物及び/又は野菜由来物を含有することが好ましく、果実由来物を含有することがさらに好ましい。特に果実由来物を含有することで、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料が、果実由来物による果実感に優れたものとなる。ここで、本明細書において、果実由来物及び/又は野菜由来物とは、果実及び/又は野菜に対し、搾汁、破砕、磨砕等の処理を行って得られるものであり、果汁、混濁果汁、透明果汁;野菜汁;果実及び/又は野菜の破砕物及び/又は磨砕物、並びにこれらの混合物等が挙げられ、さらにこれらから精製して得られる化合物等の成分も含まれる。上記の果実由来物及び/又は野菜由来物は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
果実由来物の原料となる果実の種類としては、本発明の効果が発揮される限りにおいて特に限定されることなく、例えば、イチゴ、キウイフルーツ、ブドウ、モモ、リンゴ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類、柑橘類果実類(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)等が挙げられる。上記の果実は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
野菜由来物の原料となる野菜の種類としては、特に限定されることなく、例えば、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、エダマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等が挙げられる。上記の野菜は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上記果実由来物及び/又は上記野菜由来物のうち、少なくともヘスペリジンを含有する果実由来物を含むことが好ましい。本実施形態に係る容器詰炭酸飲料にヘスペリジンを含有する果実由来物を配合することで、[H]/A及び/又は[H]/[C]を上述した範囲内にすることが容易となり、上述した主効果を容易に得ることができる上に、果実由来物による果実感に優れるため、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。ヘスペリジンを含有する果実由来物としては、上述した柑橘類(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)の果汁、混濁果汁、透明果汁、破砕物、磨砕物等が挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上述した中でも、オレンジ果実由来物を含むことが特に好ましい。オレンジ果実由来物にはカロテノイドが豊富に含まれており、カロテノイドが油っぽい好ましくない味を有するため、従来のオレンジ果汁含有容器詰炭酸飲料においては、炭酸の刺激感の弱いものしか存在しなかった。しかし、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強いものとなるため、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料にオレンジ果実由来物を含有させることで、炭酸の刺激感が強く、かつオレンジ果実由来物による果実感が強い容器詰炭酸飲料を得ることができる。
【0040】
果実由来物及び/又は野菜由来物は、常法により得ることができ、例えば、搾汁、破砕、磨砕等の処理により、さらに所望により裏ごしすることにより、得ることができる。搾汁する場合には、例えば、果実又は野菜(所望により洗浄し選別されたもの)を、クラッシャー等を用いて破砕し、リーマ等を用いて搾り取る方法、油圧プレス機、ローラー圧搾機やインライン搾汁機を用いて圧搾し搾汁する方法、パルパー・フィニッシャー等を用いて破砕し裏ごしする方法、並びにチューブヒーター等で加熱して殺菌及び酵素失活を行った後、エクストラクター等を用いて搾汁する方法が挙げられる。さらに、これらの方法に従って圧搾(搾汁)されたものを、所望により、ジューサーやホモジナイザーにかけたり、濃縮や殺菌を行っても良い。得られるものとしては、主に果汁、混濁果汁、透明果汁等が挙げられる。
【0041】
破砕又は磨砕して果実由来物及び/又は野菜由来物を得る場合には、例えば、原料としての果実又は野菜に対して、温める、煮る、蒸す等の加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を施してから、ラインミキサー、エマルダー、カッターミル、ディスパー、ジューサーミキサー、マイルダー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の装置を使用して、破砕又は磨砕する。裏ごしは、パルパー・フィニッシャー等の裏ごし機を使用して行うことができる。
【0042】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスのガスボリュームは、2.0〜3.2であることが好ましく、2.2〜3.2であることがより好ましい。炭酸ガスのガスボリュームがこの範囲にあることで、炭酸の刺激感がより強いものとなり、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料が有する効果をさらに効果的に発揮させることができる。また、炭酸ガスのガスボリュームが上述した範囲にあることで、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができる。なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0043】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、水や、公知の飲料に含まれる材料(成分)、例えば、ビタミン類、甘味付与剤、酸味料、香料、ミネラル分、機能性成分等を、本実施形態による効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0044】
水は、飲用に適した水であればよく、例えば、純水、硬水、軟水、イオン交換水等のほか、これらの水を脱気処理した脱気水等が挙げられる。
【0045】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK及びビタミンB群等が挙げられる。
【0046】
甘味付与剤としては、糖類又は甘味料を使用することができ、糖類としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等のほか、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、ソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよいし、シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。
【0047】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0048】
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、植物の種実、根茎、木皮、葉等又はこれらの抽出物、乳又は乳製品、合成香料等が挙げられる。
【0049】
ミネラル分としては、例えば、カルシウム、カリウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等が挙げられる。
【0050】
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、牡蠣エキス、キトサン、プロポリス、ローヤルゼリー、トコフェロール、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
【0051】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
【0052】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料のpHは、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。容器詰炭酸飲料のpHが上記範囲内にあると、ほどよい酸味が得られ、嗜好的に好ましい飲料となる。
【0053】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aと容器詰炭酸飲料におけるヘスペリジン含有量[H]とが所定の範囲内となるようにカロテノイド及び/又はヘスペリジンを含有する組成物等を配合する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、カロテノイド及び/又はヘスペリジンを含有する組成物等を添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。
【0055】
以上の容器詰炭酸飲料は、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された、嗜好的に好ましいものとなる。本発明の容器詰炭酸飲料が果実由来物を含有する場合においては、当該果実由来物による果実感に優れたものとなる。
【0056】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0057】
以下、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0058】
〔容器詰炭酸飲料の製造(1)〕
水に、容器詰炭酸飲料における最終濃度が表1に示す濃度になるように、オレンジ果実由来物(混濁果汁(混濁果汁A)、果実磨砕物と混濁果汁との混合物(混合物B)及び透明果汁(透明果汁C)のうちいずれか一又は二以上)と、甘味料とを添加し、さらに容器詰炭酸飲料における酸度が0.19になるように酸味料を添加した後、98℃40秒間の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが表1に示す値になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰炭酸飲料を得た(試料1〜6)。
【0059】
<試験例1>吸光度の測定
試料1〜6の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、紫外可視分光光度計(島津製作所社製,UV−1800)を用い、450nmにおける吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
<試験例2>総カロテノイド量の定量
各サンプル10mLを50mLの褐色共栓遠心管に量りとり、ヘキサン:アセトン:メタノール(10:5:5)溶液10mlを加え、激しく振り混ぜた後、遠心分離し、ヘキサン層を分取した。得られたヘキサン層を減圧濃縮器に入れて減圧濃縮した後、ヘキサンを加えて5mLに定容し、この液をメンブランフィルターでろ過し、試験溶液とした。紫外可視分光光度計(島津製作所社製,UV-1600)を用い、セル長10mmにて、試験溶液の450nmにおける吸光度を測定した。次式により総カロテノイド量[C]を求めた。
【0061】
総カロテノイド量[C](mg/L)=試験溶液の吸光度×1000/E×1/L×0.5
式中、Eはヘキサン溶液におけるカロテノイドの450nmでの吸光係数(25.05L/g・mm)、Lはセル長(10mm)を表す。
結果を表1に示す。
【0062】
<試験例3>ヘスペリジンの定量
試料1〜6の各容器詰炭酸飲料(サンプル)50mLを200mLの耐圧ビンに入れ、発泡がなくなるまで超音波処理を行い、さらに減圧下で発泡が収まるまで超音波処理を行い、各サンプルの前処理とした。
【0063】
前処理を行った各サンプル100μLをメタノールで10倍希釈し、400G、5分間の遠心処理を行った。得られた上清をさらにメタノールで10倍希釈した後、0.45μmのフィルターでろ過し、測定用のサンプルとした。得られた測定用サンプルを、高速液体クロマトグラフ質量分析装置(Waters社製,Acquity TQ Detector)を用い、以下の条件により高速液体クロマトグラフィー質量分析に供した。得られた結果を表1に示す。
【0064】
=液体クロマトグラフィー条件=
カラム:Waters Acquity UPLC BEH C18 1.7μm 2.1×100mm
カラム温度:40℃
注入量:2.0μL
移動相A:0.1%ギ酸水溶液
移動相B:アセトニトリル
グラジエント条件(B%):10%(0min)→28%(6min)→
60%(6.1min)→60%(7min)→10%(7.1min)→
10%(10min)
流速:0.3mL/min
【0065】
=質量分析条件=
イオン化方式:エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
ポラリティ:ES−
検出:MRM (m/z 609 > 301)
以下の条件は一例であり、装置によって検出感度が最高となるように設定した。
キャピラリ電圧:3kV
コーン電圧:55V
コリジョン電圧:35V
ソース温度:130℃
デソルベーション温度:350℃
コーンガス流量:50L/hr
デソルベーションガス流量:800L/hr
コリジョンガス流量:0.20mL/min
【0066】
<試験例4>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1〜6の各容器詰炭酸飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、ガス内圧計を取り付けて、針先でキャップを穿孔し、一度活栓を開いてガス抜き(以下「スニフト」という。)し、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、ゲージの指針が一定の位置に達したときの値(MPa)を読み取り記録した。
【0067】
スニフトした後ガス内圧計を取り外し、開栓して温度計で液温を測定し記録した。測定して得たガス内圧力と液温を炭酸ガス吸収係数表に当てはめ、必要なガス内圧力の温度補正を行い、炭酸ガスボリュームを導いた。結果を表1に示す。
【0068】
<試験例5>官能評価
試料1〜6の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却保管されたサンプル30mLを試飲することにより行った。次に示す基準で、炭酸感/刺激感、油っぽさ、苦味、果実感の4項目に関し、5段階にて評価した。最も多かった評価を表1に示す。
【0069】
=炭酸感/刺激感の評価=
5:強く刺激的である
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:弱すぎる
【0070】
=油っぽさの評価=
5:感じられない
4:弱く感じる
3:感じるが許容範囲である
2:やや強い
1:強く感じ、不快である
【0071】
=苦味の評価=
5:感じられない
4:弱く感じる
3:感じるが許容範囲である
2:やや強い
1:強く感じ、不快である
【0072】
=果実感の評価=
5:大変強く、好ましい
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:感じられない
【0073】
また、炭酸感/刺激感、油っぽさ及び苦味の評点の小計に果実感の評点を乗じ、総合点を算出した。さらに、総合点をもとに、次の基準で総合評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
=総合評価=
◎:総合点が40以上
○:総合点が30以上40未満
△:総合点が20以上30未満
×:総合点が20未満
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、[H]/Aが48〜98となる試料2〜4は、炭酸の刺激感が強く、オレンジ果実由来物による果実感が強く感じられ、かつカロテノイドに由来する油っぽい味とヘスペリジンに由来する苦味とが抑制された、嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料であった。
【0077】
〔容器詰炭酸飲料の製造(2)〕
容器詰炭酸飲料における炭酸ガスボリュームが表2に示す値になるように、純水と無添加炭酸水とを使用した以外は上述の試料3と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料7〜9)。
【0078】
得られた試料7〜9の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、試験例1〜4と同様にして吸光度、総カロテノイド含有量、ヘスペリジン含有量、及びガスボリュームを測定し、かつ試験例5と同様にして官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2に示すように、本発明の要件を満たす試料7〜9は、いずれも嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料であった。ただし、試料9については、炭酸ガスボリュームが低いため、本発明の効果である炭酸感/刺激感が若干弱いものとなった。
【0081】
〔容器詰炭酸飲料の製造(3)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表3に示す濃度になるように、オレンジ果汁及び甘味料を使用した以外は試料1〜6と同様に製造し、容器詰炭酸飲料を得た(試料10〜15)。
【0082】
得られた試料10〜15の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、試験例1〜4と同様にして吸光度、総カロテノイド含有量、ヘスペリジン含有量、及びガスボリュームを測定し、かつ試験例5と同様にして官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示すように、本発明の要件を満たすように製造すれば、果汁の配合を変更した場合であっても嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、カロテノイドを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつカロテノイドに由来する油っぽい味が抑制された容器詰炭酸飲料として有用である。特に、本発明によれば、果実由来物及び/又は野菜由来物を含有する場合において、当該果実由来物及び/又は野菜由来物による果実感及び/又は野菜感に優れた容器詰炭酸飲料が得られるため、本発明の容器詰炭酸飲料は、果実感に優れかつ炭酸による刺激感の強い容器詰炭酸飲料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料であって、
前記容器詰炭酸飲料における前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98である
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料。
【請求項2】
前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項3】
カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料であって、
前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000である
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料。
【請求項4】
前記ヘスペリジンの含有量[H]が43.5〜290mg/Lであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項5】
果実由来物及び/又は野菜由来物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項6】
前記果実由来物及び/又は前記野菜由来物がヘスペリジンを含有することを特徴とする請求項5に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項7】
炭酸ガスボリュームが2.0〜3.2であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項8】
カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料の製造方法であって、
前記容器詰炭酸飲料における前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]を前記容器詰炭酸飲料の450nmにおける吸光度Aで除した値[H]/Aが48〜98となるように、前記容器詰炭酸飲料に前記カロテノイド及び前記ヘスペリジンを含有させる
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料の製造方法。
【請求項9】
カロテノイド及びヘスペリジンを含有する容器詰炭酸飲料の製造方法であって、
前記容器詰炭酸飲料における前記カロテノイドの含有量(mg/L)[C]に対する前記ヘスペリジンの含有量(mg/L)[H]の比[H]/[C]が176〜1000となるように、前記容器詰炭酸飲料に前記カロテノイド及び前記ヘスペリジンを含有させる
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料の製造方法。

【公開番号】特開2012−231783(P2012−231783A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200864(P2011−200864)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【分割の表示】特願2011−102384(P2011−102384)の分割
【原出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】