説明

容器詰飲料

【課題】長期保存しても澱の発生が抑制された容器詰飲料を提供すること。
【解決手段】茶抽出物を含有し、次の成分(A)及び(B):
(A)総ポリフェノール類:0.03〜0.25質量%、
(B)オリエンチン及びイソオリエンチンから選ばれる少なくとも1種:合計0.00003〜0.0015質量%
を含み、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.0003〜0.012である容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類は、コレステロール上昇抑制作用やアミラーゼ活性阻害作用等の生理効果を有することが報告されている(特許文献1、2)。カテキン類のこのような生理効果を発現させるためには、カテキン類を一定量以上摂取することが必要であるが、そのためにはカテキン類の含有量の多い緑茶であっても、成人一日あたり4〜5杯飲む必要がある。そこで、より簡便に大量のカテキン類を摂取するために、茶抽出物の濃縮物を使用することにより高濃度化を達成することができる(特許文献3)。
【0003】
一方、茶抽出物の濃縮物を使用して容器詰飲料を製造しようとすると、長期保存により澱が生じることが知られている。飲料の澱の原因は、茶葉由来の多糖類、蛋白質、ポリフェノール類や金属イオン等の成分が水不溶性固形分を形成するためであるといわれており、これを解決する方法が種々提案されている。例えば、茶抽出液を酵素処理して水不溶性固形分を形成する成分を分解・低分子化し澱の発生を抑制する方法(特許文献4)、緑茶成分を限外濾過し分子量約1万以上の高分子成分を除去する方法(特許文献5)、澱の原因物質の一つである金属イオンを陽イオン交換樹脂で処理し、更に微小濾過する方法(特許文献6)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−156614号公報
【特許文献2】特開平3−133928号公報
【特許文献3】特開2002−142677号公報
【特許文献4】特開平11−308965号公報
【特許文献5】特開平4−45744号公報
【特許文献6】特表平11−504224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、健康志向の高揚はもちろん、消費者の嗜好の多様化により飲料の需要が拡大し、多種多様の商品が上市されている。中でも、緑茶、烏龍茶、紅茶等の飲料が注目されている。これら飲料において、長期保存時の澱発生防止のために前記酵素処理を行うと、酵素自身の味によって茶本来の風味が変化してしまうことがある。また、限外濾過、微小濾過等に供すると、高分子成分がほとんど除去された結果滋味成分が大幅に低減してしまうため、茶特有の風味が乏しくなってしまう。
【0006】
したがって、本発明は、長期保存しても澱の発生が抑制された容器詰飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み種々検討した結果、天然物由来の特定のフラボンが茶抽出物を配合した容器詰飲料を長期保存した際の澱発生を抑制するのに有効であることを見出した。また、このフラボンは、茶本来の風味にあまり影響を与えないことも見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、茶抽出物を含有し、次の成分(A)及び(B):
(A)総ポリフェノール類:0.03〜0.25質量%、
(B)オリエンチン及びイソオリエンチンから選ばれる少なくとも1種:合計0.00003〜0.0015質量%
を含み、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.0003〜0.012である容器詰飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期保存しても澱の発生が抑制された容器詰飲料を提供することが可能になる。また、茶系飲料とした場合には、茶本来の風味を良好に維持することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の容器詰飲料は、茶抽出物を含有する。茶抽出物としては、緑茶抽出物、烏龍茶抽出物、紅茶抽出物等が挙げられる。
緑茶抽出物としては、例えば、不発酵茶の緑茶葉から得られた抽出液又はその濃縮物が挙げられ、これらを混合して使用することもできる。抽出に使用する緑茶葉としては、例えば、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹から製茶されたものが挙げられる。具体的には、例えば、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等が挙げられ、茎茶、棒茶、芽茶等も使用することができる。
【0011】
ここで、本明細書において「緑茶抽出液の濃縮物」とは、緑茶葉から水及び/又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出液中の溶媒の一部を除去して非重合体カテキン類濃度を高めたものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報などに記載の方法により製造することができる。その形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものがある。また、緑茶抽出液の濃縮物として、例えば、三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」等の市販品を使用してもよい。
【0012】
また、本発明においては、緑茶抽出物として、緑茶抽出液又はその濃縮物の精製物(以下、「精製緑茶抽出物」ともいう)を含有することができる。精製緑茶抽出物は、例えば、緑茶抽出液又はその濃縮物(以下、「緑茶抽出液等」ともいう)をそのまま又は水若しくは有機溶媒水溶液に分散又は溶解した状態で、活性炭と、酸性白土及び/又は活性白土(以下、「酸性白土等」ともいう)と、所望によりろ過助剤等に接触させることにより製造することができる。精製に使用する有機溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステルが挙げられる。有機溶媒と水との混合質量比は、好ましくは60/40〜97/3、更に好ましくは85/15〜95/5とするのが、非重合体カテキン類の抽出効率、緑茶抽出液等の精製効率の点で好ましい。緑茶抽出液等と、水又は有機溶媒水溶液との割合は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して、緑茶抽出液等(固形分換算)を10〜40質量部、更に10〜30質量部添加して処理するのが、緑茶抽出液等を効率よく処理できるので好ましい。活性炭は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して0.5〜8質量部、更には0.5〜3質量部使用するのが、緑茶抽出液等の精製効率、ろ過工程におけるケーク抵抗が小さい点で好ましい。酸性白土及び活性白土の合計使用量は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して、好ましくは2.5〜25質量部、更に好ましくは2.5〜15質量部である。ろ過助剤としては、例えば、陶土、珪藻土等従来公知のものを使用することが可能であり、その添加量は適宜選択することができる。
【0013】
緑茶抽出液等を、活性炭、酸性白土等、ろ過助剤等と接触させる順序は特に限定されない。例えば、(1)緑茶抽出液等を水又は有機溶媒水溶液に分散又は溶解させた後、これに活性炭、酸性白土等及び所望によりろ過助剤等を同時に加えて接触させる方法、(2)水又は有機溶媒水溶液に活性炭、酸性白土等及び所望によりろ過助剤等を分散させた後、これに緑茶抽出液等を加えて接触させる方法、(3)緑茶抽出液等と酸性白土等及び所望によりろ過助剤等とを水又は有機溶媒水溶液に溶解又は分散させて接触処理した後、これに活性炭を加える方法、等が挙げられる。なお、(1)〜(3)の方法の中では(1)又は(3)の方法が好ましい。
【0014】
また、緑茶抽出物として、タンナーゼ処理したものを使用することができる。ここで、本明細書において「タンナーゼ処理」とは、緑茶抽出物を、タンナーゼ活性を有する酵素と接触させることをいう。なお、タンナーゼ処理における具体的な操作方法は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法が例示される。
【0015】
烏龍茶抽出物としては、前記緑茶葉を半発酵させて得た烏龍茶葉から抽出した烏龍茶抽出液を挙げることができる。烏龍茶葉としては、武夷岩茶、鉄観音、水仙、烏龍、包種、色種等が挙げられ、中でも、鉄観音、水仙、烏龍が好ましい。また、烏龍茶抽出液の濃縮物も使用することができ、その製造方法は前記緑茶抽出液の濃縮物の方法に準ずる。
【0016】
紅茶抽出物としては、例えば、ヌワラエリヤ、ウバ、ダージリン、アッサム及びスリランカから選択される少なくとも1種の紅茶葉から抽出した紅茶抽出液を挙げることができる。中でも、紅茶感増強の観点から、ヌワラエリヤ及びウバから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。また、紅茶抽出液の濃縮物も使用することができ、その製造方法は前記緑茶抽出物の濃縮物の方法に準ずる。
【0017】
茶葉からの抽出方法としては、ニーダー抽出、攪拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)、カラム抽出等の公知の方法を採用することができる。抽出溶剤としては、水、エタノール等の有機溶剤、水とエタノール等の有機溶剤混合物等が挙げられ、中でも、水が好ましい。また、抽出物は乾燥させたものでもよく、乾燥方法としては、凍結乾燥やスプレードライ等の公知の方法を採用することができる。
【0018】
本発明の容器詰飲料は、(A)総ポリフェノール類を含有する。ここで、本明細書において「総ポリフェノール類」とは、酒石酸鉄法により測定されるものをいい、具体的には、フラボン類、フラボノール類、イソフラボン類、フラバン類、フラバノール類、フラバノン類、フラバノノール類、カルコン類、アントシアニジン類等のフラボノイド類及びそれらの配糖体や重合体、クマリン類、クルクミン類、リグナン類等が挙げられる。フラボン類にはアピイン、アピゲニン、オリエンチン、イソオリエンチン等が包含され、フラボノール類にはケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール、ルチン等が包含される。またフラバノール類には非重合体カテキン類が包含され、更にその重合体にはテアフラビン類等が包含される。なお、(A)総ポリフェノール類の測定方法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。
本発明の容器詰飲料中の(A)総ポリフェノール類の含有量は0.03〜0.25質量%であるが、より一層の澱発生抑制効果の点から、好ましくは0.04〜0.23質量%、より好ましくは0.04〜0.2質量%、更に好ましくは0.05〜0.18質量%、殊更に好ましくは0.05〜0.17質量%である。
【0019】
本発明の容器詰飲料は、(B)オリエンチン及びイソオリエンチン(以下、これらを総称して「オリエンチン類」とも称する)から選ばれる少なくとも1種を含有する。本発明で使用するオリエンチン類は、フラボン類の一種であって、(A)総ポリフェノール類に包含される成分である。オリエンチンはルテオリンの8位の炭素にグルコシル基が直接結合したC配糖体(ルテオリン8−C−グルコシド)である。また、イソオリエンチンはオリエンチンの構造異性体であって、ルテオリンの6位の炭素にグルコシル基が直接結合したC配糖体(ルテオリン6−C−グルコシド)である。
本発明の容器詰飲料中の(B)オリエンチン類の合計含有量は0.00003〜0.0015質量%であるが、より一層の澱発生抑制効果の点から、好ましくは0.00004〜0.001質量%、より好ましくは0.00005〜0.0008質量%、更に好ましくは0.00006〜0.0005質量%、殊更に好ましくは0.00007〜0.0003質量%である。なお、(B)オリエンチン類の合計含有量の測定法は、後掲の実施例に記載の方法に従うものとする。
オリエンチン類は、細胞及び体内の活性酸素を除去するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)様活性及び/又は抗酸化能等を有することが知られているが、オリエンチン類が飲料の長期保存時における澱の発生を抑制する効果について報告はなく、全く予期し得ないところであった。
【0020】
オリエンチン類は、天然由来品でも、化学合成品でもよく、更に市販品であってもよい。市販品としては、例えば、EXTRASYNTHESE社製のオリエンチンが挙げられる。
また、天然由来品としては、例えば、オリエンチン類を含有する植物から抽出したものが挙げられ、必要によりカラムクロマトグラフィー等により分離精製してもよい。オリエンチン類を含有する植物としてはオリエンチン類を含有すれば特に限定されないが、例えば、ルイボス、アロエ、タケ、イネ等が挙げられる。抽出方法としては、公知の方法を採用することが可能であるが、例えば、水、有機溶媒又は有機溶媒水溶液で抽出する方法、水蒸気蒸留で抽出する方法、超臨界抽出で抽出する方法が挙げられる。なお、有機溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、テトラヒドロフラン等のエーテル、ポリエチレングリコール等のポリエーテル、トルエン、石油エーテル等の炭化水素が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
抽出に使用する植物の部位は特に限定されず、種子、種皮、果肉、花、葉、茎、根、根茎又は全草等のいずれの部位も適宜選択して使用することができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することも可能である。また、抽出する際には、植物を粉砕、切断、乾燥等の前処理をしてもよい。
【0021】
本発明において、オリエンチン類として植物抽出物を含有する場合には、オリエンチン類を合計0.005〜0.05質量%含有する植物抽出物であることが、澱発生抑制効果の点から好ましく、更に0.008〜0.04質量%、更に0.01〜0.03質量%含有する植物抽出物が好ましい。また、植物抽出物の固形分中のオリエンチン類含有量は0.5〜5質量%であることが、澱発生抑制効果の点から好ましく、更に0.8〜4質量%、更に0.9〜3質量%であることが好ましい。ここで、本明細書において「固形分」とは、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して溶媒等の揮発物質を除いた残分をいう。
【0022】
本発明の容器詰飲料は、(A)総ポリフェノールに対する(B)オリエンチン類の質量比[(B)/(A)]が0.0003〜0.012であるが、より一層の澱発生抑制効果の点から、好ましくは0.00035〜0.01、より好ましくは0.0004〜0.009、更に好ましくは0.0007〜0.006、殊更0.001〜0.003である。
【0023】
本発明の容器詰飲料は、(C)非重合体カテキン類を含有することが好ましい。(C)非重合体カテキン類はフラバノール類の一種であって、(A)総ポリフェノール類に包含される成分である。本明細書において「(C)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、非重合体カテキン類濃度は上記8種の合計量に基づいて定義される。なお、非重合体カテキン類濃度の測定方法は、後掲の実施例に記載の方法に従うものとする。
【0024】
本発明の容器詰飲料は、(A)総ポリフェノール類に対する(C)非重合体カテキン類の質量比[(C)/(A)]が0.5〜0.94であることが、澱発生抑制効果の点から好ましく、更に0.6〜0.93、更に0.7〜0.91、殊更0.7〜0.88であることが好ましい。
前記茶抽出物において、前記質量比[(C)/(A)]は、緑茶抽出物の場合、通常0.7〜0.95、好ましくは0.8〜0.92であり、烏龍茶抽出物の場合、通常0.3〜0.85、好ましくは0.4〜0.8であり、紅茶抽出物の場合、通常0.1〜0.75、好ましくは0.2〜0.7である。よって、本発明の容器詰飲料において複数の茶抽出物を組み合わせる場合には、前記質量比[(C)/(A)]が上記範囲内となるように調製することが好ましい。また、茶抽出物として、(A)総ポリフェノール中の(C)非重合体カテキン類純度を高めた精製緑茶抽出物を使用する場合も同様である。精製緑茶抽出物としては、澱発生抑制効果の点から、(A)総ポリフェノール類に対する(C)非重合体カテキン類の質量比[(C)/(A)]が0.8〜1のものを用いることが好ましく、更に0.85〜0.98、更に0.9〜0.95のものを用いることが好ましい。
【0025】
また、本発明の容器詰飲料は、澱発生抑制の点から、(C)非重合体カテキン類を0.02〜0.22質量%含有することが好ましく、更に0.03〜0.21質量%、更に0.04〜0.18質量%含有することが好ましい。
【0026】
本発明の容器詰飲料は、茶系飲料でも非茶系飲料でもよく、所望により、酸化防止剤、pH調整剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、品質安定剤等の添加剤を単独で又は併用して配合することもできる。
【0027】
本発明の容器詰飲料は、保存安定性の観点から、pH(20℃)が3〜8、更に4〜7、更に5〜7、更に5〜6.5であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の容器詰飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
更に、本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【0029】
〔茶抽出物中の固形分含有量〕
茶抽出物中の固形分含有量は、試料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥し、残分の質量を測定した。
【0030】
〔総ポリフェノール類含有量〕
総ポリフェノール類の測定は、酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNO.10)。試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線から総ポリフェノール量を求めた。
・酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
・リン酸緩衝液の調製:1/15Mリン酸水素ニナトリウム溶液と1/15Mリン酸ニ水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0031】
〔非重合体カテキン類含有量〕
試料をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム(L−カラムTM ODS、4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0032】
〔オリエンチン類含有量〕
オリエンチン類は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により、次の手順にて定量した。
・試料調製:サンプルを凍結乾燥させ、60倍濃縮物を得る。次にそこから試料1gを採取し、メタノール及び2.5質量%酢酸水溶液を体積比4/1で混合した溶液80mLに溶解し、超音波を5分間照射した後に、同じ混合溶液にて100mLにメスアップした。
・装置:LC−10ATvp(島津製作所製)
・検出器:紫外可視吸光光度計 SPD−10AV(島津製作所製)
・カラム:Unison UK−C18 φ4.6mm×15cm、3μm(インタクト(株)製)
・移動相:水−リン酸(1000:4)及びアセトニトリル及びメタノールの混液
グラジエント溶出
・測定波長:360nm
・流量:1.0ml/min
・カラム温度:50℃
【0033】
〔茶抽出物の製造〕
1.緑茶抽出物
静岡県産2番煎茶300gを、90℃のイオン交換水9000gにて30秒攪拌後90秒間静置し、更に10秒間攪拌後170秒間静置することにより抽出した。その後抽出液を冷却し、2号ろ紙にてろ過し、その後ゼータプラスTMフィルターカートリッジ Cシリーズ 10C(住友スリーエム製)で濾過して総ポリフェノール含有量0.394質量%、非重合体カテキン類含有量0.347質量%の緑茶抽出液7569gを得た。得られた緑茶抽出液は、(A)総ポリフェノール類に対する(C)非重合体カテキン類の質量比[(C)/(A)]0.88であった。この緑茶抽出液を「緑茶抽出物」とした。
【0034】
2.紅茶抽出物
ヌワラエリアクウォリティ33.3gを95℃のイオン交換水1000gにて30秒攪拌後90秒間静置し、更に10秒間攪拌後、170秒間静置することにより抽出した。その抽出液を冷却し、2号ろ紙にて濾過して総ポリフェノール含有量0.47質量%、非重合体カテキン類含有量0.32質量%の紅茶抽出液875gを得た。得られた紅茶抽出液は、(A)総ポリフェノール類に対する(C)非重合体カテキン類の質量比[(C)/(A)]は0.68であった。この紅茶抽出液を「紅茶抽出物」とした。
【0035】
〔ルイボス抽出物の製造〕
オリエンチン類は、ルイボス茶葉から抽出することにより製造した。ルイボス茶葉100g(三井農林社製)を、90℃のイオン交換水1000gにて10分連続攪拌し、冷却後2号ろ紙にてろ過して、(B)オリエンチン類含有量0.013質量%(固形分中の含有量1.17質量%)、(A)総ポリフェノール類含有量0.23質量%のルイボス茶抽出液777gを得た。このルイボス茶抽出液を「ルイボス抽出物」とした。
【0036】
〔精製緑茶抽出物の製造〕
市販の緑茶抽出物の濃縮物(ポリフェノンHG、三井農林社製)1,000gを、25℃、200r/minの攪拌条件下で、95質量%エタノール水溶液9,000g中に懸濁させ、活性炭(クラレコールGLC、クラレケミカル社製)200gと酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)500gを投入後、約10分間攪拌を続けた。次いで、25℃のまま約30分間の攪拌処理を続けた。次いで、2号濾紙で活性炭、酸性白土、及び沈殿物を濾過した後、0.2μmのメンブランフィルターによって再濾過を行った。最後にイオン交換水200gを濾過液に添加し、40℃、3.3kPaでエタノールを留去し、減圧濃縮を行った。このうち750gをステンレス容器に投入し、イオン交換水で全量を10,000gとし、5質量%重炭酸ナトリウム水溶液30gを添加してpH5.5に調整した。次いで、22℃、150r/minの攪拌条件下で、イオン交換水10.7g中にタンナーゼKTFH(Industrial Grade、500U/g以上、キッコーマン社製)2.7gを溶解した液を添加し、30分後にpHが4.24に低下した時点で酵素反応を終了した。次いで、95℃の温浴にステンレス容器を浸漬し、90℃、10分間保持して酵素活性を完全に失活させた。次いで、25℃まで冷却した後に濃縮処理を行い「精製緑茶抽出物」を得た。得られた精製緑茶抽出物は、総ポリフェノール類含有量は15.7質量%、非重合体カテキン類含有量は14.9質量%であった。また(A)総ポリフェノール類に対する(C)非重合体カテキン類の質量比[(C)/(A)]は0.949であった。この精製緑茶抽出物を「カテキン製剤」とした。
【0037】
〔官能評価〕
3名の専門パネルにより、「澱」及び「風味」について官能評価を行った。評価結果において評価値が全て「3」以上であれば合格とし、いずれか1つでも「2」以下のものがあれば不合格とした。
1.澱の評価
以下の基準に従い、蛍光灯下で目視により澱の抑制効果レベルを評価し、その評点の平均値により澱抑制効果の評価値とした。なお、本明細書において「澱」とは、フロック状の浮遊物又は沈殿物をいう。
5:浮遊物、沈殿いずれも発生せず
4:小さな浮遊物が僅かに発生するが容器内の飲料が動くとすぐ消失
3:小さな浮遊物が発生するが容器内の飲料が動くとすぐ消失
2:大きな浮遊物又は沈殿が少量発生し、容器内の飲料が動いても消失しない
1:大きな浮遊物又は沈殿が多量に発生し、容器内の飲料が動いても消失しない
【0038】
2.風味の評価
風味の評価は、「茶風味」及び「苦味」のそれぞれについて、以下の基準に従い、飲用することにより評価し、その後協議により評点を決定した。
<茶風味>
5:強い、4:やや強い、3:やや弱い、2:弱い、1:なし
<苦味>
5:なし、4:弱い、3:やや弱い、2:やや強い、1:強い
【0039】
実施例1〜7及び比較例1〜8
表1に示す量の各成分を配合して飲料を製造した。なお、配合後のpHが6となるように、重曹の配合量を調整した。この飲料をUHT殺菌(138℃、30秒)し、PETボトルに充填して容器詰飲料を得た。得られた容器詰飲料を55℃に保存し、5日後に容器ごと取り出し、25℃に調整した後に官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果から、(A)総ポリフェノール類及び(B)オリエンチン類の含有量、並びにその質量比を特定範囲内に制御することで、長期保存しても澱の発生が抑制され、かつ茶風味が良好で苦味も少ない容器詰飲料を得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物を含有し、次の成分(A)及び(B):
(A)総ポリフェノール類:0.03〜0.25質量%、
(B)オリエンチン及びイソオリエンチンから選ばれる少なくとも1種:合計0.00003〜0.0015質量%
を含み、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が0.0003〜0.012である容器詰飲料。
【請求項2】
成分(A)に対する成分(C)非重合体カテキン類の質量比[(C)/(A)]が0.5〜0.94である、請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
(C)非重合体カテキン類の含有量が0.02〜0.22質量%である、請求項1又は2記載の容器詰飲料。

【公開番号】特開2012−223170(P2012−223170A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96189(P2011−96189)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】