説明

容器詰飲料

【課題】長時間保存しても色調変化のし難いイソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物 0.03〜0.17質量%、
(B)糖アルコール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種 0.01〜3質量%
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が3〜50であり、かつpHが2〜5である、容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
イソクエルシトリンは、ケルセチンの3位にグルコース1つがβ結合したフラボノール配糖体である。イソクエルシトリンは、強力な抗酸化活性を有し、色素の退色を防止することが知られており(特許文献1)、また、抗動脈硬化、血流改善等の生体への作用も期待されている。
【0003】
しかしながら、イソクエルシトリンは水に難溶であるため生体外では有効に作用するものの、生体内における効果が十分ではなく、飲料等の水系の組成物としての利用が制限されるという問題あった。そこで、水への溶解性を改善すべく、イソクエルシトリンにでん粉質の存在下、糖転移酵素を作用させて得られる「酵素処理イソクエルシトリン」が提案されている(特許文献2)。「酵素処理イソクエルシトリン」は、イソクエルシトリンと、イソクエルシトリンのグルコース残基に1以上のグルコースをα−1,4結合で更に付加したα−グルコシルイソクエルシトリンとの混合物である。
【0004】
また、酵素処理イソクエルシトリンに含まれるα−グルコシルイソクエルシトリンの組成を分画により変化させて、経口吸収性を更に高めたケルセチン配糖体組成物も提案されている(特許文献3)。そして、最近になりイソクエルシトリンには肥満者の体脂肪を低減させる作用があることが見出され、飲料の形態で摂取させて効果があることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−131888号公報
【特許文献2】特開平1−213293号公報
【特許文献3】国際公開第2006/070883号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】薬理と治療、第36巻、第10号、919〜930頁、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
イソクエルシトリンの生理作用を、より効果的に発現させるためには、酵素処理等によりイソクエルシトリンに糖を付加させてその摂取量及び体内吸収量を増やすことが有効であり、また、それを簡便に達成可能とする手段として飲料の形態とすることが挙げられる。
しかしながら、フラボノール配糖体を始めとするポリフェノールは一般に酸化されやすいため、それを含有する飲料を長期間にわたって保存すると徐々に着色が進んで色調が大きく変化してしまう。
本発明者は、酵素処理イソクエルシトリンを飲料に配合し、それを高濃度化するに従い色調変化が顕在化することを見出した。また、酵素処理イソクエルシトリンを高濃度で含有する場合でも、低水分の食品や、ゼリー等の高粘度食品では色調変化が見られないとの知見を得た。このように、酵素処理イソクエルシトリンを含有する飲食品において、色調変化は低粘度の飲料の形態に特有の課題であることが判明した。
したがって、本発明の課題は、長期間保存しても色調変化のし難いイソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、イソクエルシトリン及びその糖付加物とともに糖アルコール又はトレハロースをそれぞれ特定量含有せしめ、更にpHを特定範囲内に調整することで、長期間にわたって保存しても色調が変化し難く、外観が保持される飲料が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物 0.03〜0.17質量%、
(B)糖アルコール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種 0.01〜3質量%
を含有し、
成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が3〜50であり、かつ
pHが2〜5である容器詰飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期間保存しても色調変化のし難いイソクエルシトリン及びその糖付加物を含有する容器詰飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の容器詰飲料は(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物(以下、「イソクエルシトリン糖付加物等」とも称する)を0.03〜0.17質量%含有するものである。成分(A)の含有量は、色調変化抑制の点から0.15質量%以下、更に0.12質量%以下、更に0.1質量%以下であることが好ましい。また、成分(A)の含有量は、生理効果の観点から0.04量%以上、更に0.05質量%以上、更に0.06質量%以上が好ましい。成分(A)の含有量の範囲としては、0.04〜0.15質量%、更に0.05〜0.12質量%、更に0.06〜0.12質量%、更に0.06〜0.1質量%が好ましい。
【0012】
イソクエルシトリンは、ケルセチンの3位にグルコース1つがβ結合したものである(quercetin 3-O-β-D-glucopyranoside)。イソクエルシトリン糖付加物は、例えば、イソクエルシトリンに糖供与体(グルコース源)の存在下、糖転移酵素を作用させて得ることができ、イソクエルシトリンのグルコース残基に1以上のグルコースをα−1,4結合で更に付加したα−グルコシルイソクエルシトリンとなっている(FFIジャーナル,Vol.209,No.7,2004,p.622-628;食品衛生学雑誌,Vol.41,No.1,p.54-60)。
【0013】
成分(A)は、より具体的には、下記式(1)において、グルコース残基数(n)が0であるイソクエルシトリンと、グルコース残基数(n)が1以上の整数(好ましくは1〜15の整数、より好ましくは1〜10の整数、更に好ましくは1〜8の整数)であるイソクエルシトリン糖付加物との混合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、Glcはグルコース残基を示し、nは0又は1以上の整数を示す。〕
【0016】
また、成分(A)中のイソクエルシトリン糖付加物/イソクエルシトリンの質量比は、水溶性の点から1以上であることが好ましく、更に2以上、殊更に4以上が好ましい。また、当該質量比は、製造効率の点から1000以下、更に500以下、更に100以下、更に50以下、更に25以下、殊更に10以下であることが好ましい。かかる質量比の範囲としては、1〜1000、更に1〜500、更に1〜100、更に1〜50、更に1〜25、更に1〜10、更に2〜10、更に4〜10が好ましい。
【0017】
このような(A)イソクエルシトリン糖付加物等は商業的に入手可能であり、例えば、サンメリンAO−1007、サンメリンパウダーC−10等(以上、三栄源エフ・エフ・アイ社製)を挙げることができる。
【0018】
イソクエルシトリンの配糖化処理に使用される糖転移酵素としては、例えば、α−アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)、α−グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.20)等のグルコシダーゼや、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.19)等のトランスグルコシダーゼを挙げることができる。
【0019】
これらの糖転移酵素はいずれも商業的に入手可能であり、例えば、コンチザイム(天野エンザイム社製)を挙げることができる。なお、糖転移酵素の使用量は酵素の種類や所望の組成により一様ではないが、例えば、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ〔酵素比活性約100単位(溶性デンプンからβ−シクロデキストリンを1分間当たり1mg生成する酵素量を1単位とする)〕の場合、イソクエルシトリン1質量部に対して、通常0.001〜20質量部、好ましくは0.005〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0020】
配糖化の際に用いられる糖供与体(グルコース源)としては、そのグルコース残基の1分子以上がイソクエルシトリンの1分子に転移され得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、グルコース、マルトース、アミロース、アミロペクチン、でん粉、でん粉液化物、でん粉糖化物、シクロデキストリン等を挙げることができる。グルコース源の使用量は、イソクエルシトリン1質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0021】
また、得られる(A)イソクエルシトリン糖付加物等の組成は反応条件によって一様ではなく、例えば、温度80℃以下、好ましくは20〜80℃、より好ましくは40〜75℃、pH3〜11、好ましくはpH4〜8の条件で、糖供与体(グルコース源)の存在下、イソクエルシトリンに糖転移酵素を作用させることにより種々の組成のものが得られる。なお、(A)イソクエルシトリン糖付加物等の分析方法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。
【0022】
上記反応は、静置又は攪拌若しくは振盪しながら行うことができる。反応中の酸化を防止するために、反応系のヘッドスペースを窒素等の不活性ガスで置換してもよく、またアスコルビン酸等の酸化防止剤を反応系に添加することも可能である。
【0023】
(A)イソクエルシトリン糖付加物等は、前述のようにイソクエルシトリンを原料とする他、ルチンから出発して調製することも可能である。例えば、ルチンにα−1,6−ラムノシダーゼ(E.C.3.2.1.40)を作用させてイソクエルシトリンに変換してから、前述の方法にしたがって(A)イソクエルシトリン糖付加物等を調製することができる。α−1,6−ラムノシダーゼは商業的に入手可能であり、例えば、ヘスペリジナーゼ、ナリンジナーゼ(以上、田辺製薬社製)、セルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム社製)が挙げられる。
【0024】
また、本発明においては、上記式(1)で表わされる(A)イソクエルシトリン糖付加物等において、nが0であるイソクエルシトリンと、nが1以上の整数であるイソクエルシトリン糖付加物との混合物から、例えば、nが0であるイソクエルシトリンと、nが4以上であるイソクエルシトリン糖付加物を分画により低減し、nが3であるイソクエルシトリン糖付加物を豊富に含む画分を分取して使用してもよい。
【0025】
本発明の容器詰飲料は、(A)イソクエルシトリン糖付加物等をケルセチン換算で0.01〜0.07質量%となるように含有することが、色調変化抑制の観点から好ましく、更に0.06質量%以下、更に0.05質量%以下、更に0.04質量%以下であるのが好ましく、また生理効果の観点から、0.016質量%以上、更に0.021質量%以上、更に0.025質量%以上が好ましい。成分(A)の含有量の範囲としては、ケルセチン換算で0.016〜0.06質量%、更に0.021〜0.05質量%、更に0.025〜0.04質量%が好ましい。
【0026】
また、本発明の容器詰飲料は、色調変化を抑制するために、(B)糖アルコール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種を含有する。糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、トレイトール、アラビニトール、リビトール等を挙げることができる。中でも、エリスリトール、キシリトール、マルチトールが好ましい。糖アルコールは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分(B)としては、より一層の色調変化抑制の観点から、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種が好ましく、エリスリトール、キシリトール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0027】
本発明の容器詰飲料中の成分(B)の含有量は0.01〜3質量%であるが、より一層の色調変化抑制の観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、そして、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、殊更に好ましくは0.4質量%以上である。成分(B)の含有量の範囲としては、色調変化抑制の観点から、0.05〜3質量%、更に0.1〜2質量%、更に0.2〜1.5質量%、更に0.3〜1.5質量%、更に更に0.4〜1.5質量%が好ましい。
【0028】
本発明の容器詰飲料中の成分(A)と、成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]は、色調変化抑制、風味、喉越しの点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、そして、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは7以上である。かかる質量比[(B)/(A)]の範囲としては、3〜50、更に3〜40、更に5〜30、更に7〜30が好ましい。また、色調変化抑制、風味の点から、質量比[(B)/(A)]は、5〜25、更に7〜20が好ましい。
【0029】
更に、本発明の容器詰飲料には、糖アルコール及びトレハロースを除く甘味料を含有させることができる。かかる甘味料としては、例えば、果糖,ブドウ糖,タガトース,アラビノース等の単糖、乳糖,麦芽糖,ショ糖等の二糖、粉末水あめ等の多糖といった結晶性糖類や、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖、水あめ等の非結晶性糖類、更にはブドウ糖や果糖等の糖分が約7割を占める蜂蜜等を挙げることができる。これら甘味料は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の容器詰飲料中の甘味料(糖アルコール及びトレハロースを除く)の含有量は適宜決定することが可能であるが、0.02〜1質量%、更に0.05〜0.8質量%、更に0.05〜0.6質量%であることが色調変化抑制の観点から好ましい。
【0030】
また、本発明においては、所望により、炭酸飲料とすることも可能であり、炭酸ガスの適度な起泡性により、ソフト感及び清涼感を継続して付与して嗜好性を高めることができる。
本発明の容器詰飲料に炭酸ガスを含有させる場合、その含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1〜0.9質量%、更に好ましくは0.2〜0.8質量%、殊更に好ましくは0.3〜0.7質量%である。なお、炭酸ガスの測定方法としては、ガスボリューム計により計測し、ガス量に換算することができる。ガスボリュームとは、飲料中に溶解している炭酸ガスの20℃における気体容量の飲料容量に対する比率をいい、本発明の容器詰飲料の場合、好ましくは0.5〜4、更に1〜3.8、更に2〜3.5であることが好ましい。
【0031】
更に、本発明の容器詰飲料は、カリウムイオンを含有することができる。これにより、長期保存時においても爽快感が希薄にならず、口中におけるスッキリ感が保持される。したがって、日常生活での飲用はもちろんのこと、特にスポーツなどの場面で飲む飲料として適している。
カリウムイオンは、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム等又はそれらの混合物のようなカリウム塩として配合することができる。なお、カリウムイオンは、原料由来のものも含まれる。
本発明の容器詰飲料中のカリウムイオンの含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、更に好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、殊更に好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.09質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以下、殊更に好ましくは0.07質量%以下である。カリウムイオンの含有量の範囲としては0.001〜0.2質量%が好ましく、更に0.002〜0.1質量%、更に0.003〜0.09質量、更に0.005〜0.08質量%、殊更に0.01〜0.07質量%が好ましい。
【0032】
更に、本発明の容器詰飲料には、所望により、酸味料、ビタミン、香料(乳化香料を含む)、ミネラル、酸化防止剤、起泡剤、泡安定剤、各種エステル類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、野菜エキス類、花蜜エキス類、品質安定剤等の添加剤を単独で又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。なお、添加剤の含有量は、本発明の目的を妨げない範囲内で適宜選択可能である。
【0033】
本発明の容器詰飲料のpH(20℃)は2〜5であるが、より一層の色調変化抑制の観点から、3〜4が好ましい。
【0034】
本発明の容器詰飲料は、容器詰めされた状態において低粘度のものであることが好ましい。例えば、ゼリー等の保形性を有する高粘度食品ではなく、容器を傾けるだけで流動して飲用できる程度の粘度のものであることが好ましい。具体的な粘度としては、振動式粘度計にて20℃で測定した場合に0.01〜500mPa・s、更に0.01〜400mPa・s、殊更0.01〜200mPa・sであることが好ましい。
【0035】
また、本発明の容器詰飲料は、色調安定性の観点から、濁度(25℃)が好ましくは0.01〜90、より好ましくは0.1〜85、更に好ましくは0.1〜80、更に好ましくは0.2〜75である。ここで、「濁度」とは、光路長10mmのガラスセルを透過した透過光と散乱光をあわせた状態で測定される値であり、その測定方法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。濁度が上記範囲内にある場合、成分が均一に分散して存在していることを示し、長期間の飲用に適する。また、酸素透過性の透明容器の形態であっても、ショーウィンドウで照明が照射されたときに、飲料の外観変化が生じず、酸素透過下での光照射による色調安定性に優れる。
【0036】
更に、本発明の容器詰飲料は、色調安定性の観点から、55℃で7日間保存した後の容器詰飲料のb*値から、製造直後の容器詰飲料のb*値を減じた値(Δb*)が、2未満、更に1.9以下、更に1.8以下であることが好ましい。ここで、「b*値」とは、色をL***表色系で表現したときに色相、彩度を表す座標値の一つであって、黄色方向の彩度を示す座標値である。L***表色系には、明度を示すL*と、赤色方向の彩度を示す座標値であるa*もあるが、本発明においては、色調変化したときに最も顕在化しやすいb*について規定するものである。なお、b*値の測定方法は、後掲の実施例に記載の方法にしたがうものとする。
【0037】
本発明の容器詰飲料は、例えば、成分(A)と成分(B)を配合し、各成分の濃度及びpHを調整して製造することができる。
【0038】
また、本発明の容器詰飲料に使用できる容器としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器が挙げられる。
更に、容器に充填後、例えば、金属缶のような加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件で殺菌することができる。他方、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【0039】
上記実施形態に関し、本発明は以下の発明を開示する。
〔1〕
次の成分(A)及び(B):
(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物 0.03〜0.17質量%、
(B)糖アルコール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種 0.01〜3質量%
を含有し、成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が3〜50であり、かつpHが2〜5である、容器詰飲料。
〔2〕
成分(A)の含有量が、好ましくは0.04量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.06質量%以上であって、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である、前記〔1〕記載の容器詰飲料。
〔3〕
成分(A)の含有量が、好ましくは0.04〜0.15質量%、より好ましくは0.05〜0.12質量%、更に好ましくは0.06〜0.12質量%、更に好ましくは0.06〜0.1質量%である、前記〔1〕記載の容器詰飲料。
〔4〕
成分(A)は、イソクエルシトリン糖付加物/イソクエルシトリンの質量比が、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上であって、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは10以下である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔5〕
成分(A)は、イソクエルシトリン糖付加物/イソクエルシトリンの質量比が、好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜500、更に好ましくは1〜100、更に好ましくは1〜50、更に好ましくは1〜25、更に好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜10である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔6〕
成分(A)の含有量が、ケルセチン換算で、好ましくは0.01〜0.07質量%、より好ましくは0.016〜0.06質量%、更に好ましくは0.021〜0.05質量%、更に好ましくは0.025〜0.04質量%である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔7〕
成分(B)が、エリスリトール、キシリトール、マルチトール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔8〕
成分(B)が、エリスリトール、キシリトール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔9〕
成分(B)の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であって、好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔10〕
成分(B)の含有量が、好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.2〜1.5質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%、更に更に0.4〜1.5質量%である、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
【0040】
〔11〕
成分(A)と、成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]が、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは7以上であって、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは20以下である、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔12〕
成分(A)と、成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]が、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜40、更に好ましくは5〜30、更に好ましくは7〜30である、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔13〕
成分(A)と、成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]が、好ましくは5〜25、更に好ましくは7〜20である、前記〔1〕〜〔10〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔14〕
糖アルコール及びトレハロース以外の甘味料の含有量が、好ましくは0.02〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.8質量%、更に好ましくは0.05〜0.6質量%である、前記〔1〕〜〔13〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔15〕
更に炭酸ガスを含有し、炭酸ガスの含有量が、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1〜0.9質量%、更に好ましくは0.2〜0.8質量%、更に好ましくは0.3〜0.7質量%である、前記〔1〕〜〔14〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔16〕
当該容器詰飲料がカリウムイオンを含み、カリウムイオンの含有量が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.002質量%以上、更に好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であって、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.09質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以下、更に好ましくは0.07質量%以下である、前記〔1〕〜〔15〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔17〕
当該容器詰飲料がカリウムイオンを含み、カリウムイオンの含有量が、好ましくは0.001〜0.2質量%、より好ましくは0.002〜0.1質量%、更に好ましくは0.003〜0.09質量、更に好ましくは0.005〜0.08質量%、更に好ましくは0.01〜0.07質量%である、前記〔1〕〜〔15〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔18〕
pH(20℃)が、好ましくは3〜4である、前記〔1〕〜〔17〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔19〕
濁度(25℃)が、好ましくは0.01〜90、より好ましくは0.1〜85、更に好ましくは0.1〜80、更に好ましくは0.2〜75である、前記〔1〕〜〔18〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
〔20〕
55℃で7日間保存した後の容器詰飲料のb*値から、製造直後の容器詰飲料のb*値を減じた値(Δb*)が、好ましくは2未満、更に好ましくは1.9以下、更に好ましくは1.8以下である、前記〔1〕〜〔19〕のいずれか一に記載の容器詰飲料。
【実施例】
【0041】
1.イソクエルシトリン糖付加物等の分析
イソクエルシトリン糖付加物等の分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器は、LC-10AD(島津製作所社製)を使用した。
分析機器の装置構成は次の通りである。
検出器 :紫外可視吸光光度計 SPD-10AV(島津製作所社製)
カラム :YMC-Pack ODS-A AA12S05-1506WT、φ6mm×150mm(ワイエムシィ社製)
【0042】
分析条件は次の通りである。
カラム温度:40℃
移動相 :水、アセトニトリル、2−プロパノール及び酢酸の混液(200:38:2:1)
流量 :1.0mL/min
試料注入量:10μL
測定波長 :360nm
【0043】
以下の手順にて分析用試料を調製した。
検体1gを量りとり、メタノール1mLを加え、更にメタノール及び水の混液(1:1、体積比)を加えて10mLに定容し、試料溶液とした。調製した試料溶液を高速液体クロマトグラフ分析に供した。
【0044】
また、イソクエルシトリンの標準品を用いて濃度既知の溶液を調製し、高速液体クロマトグラフ分析に供することにより検量線を作成し、イソクエルシトリンを指標として、前記試料溶液中のイソクエルシトリン糖付加物等の定量を行った。即ち、前記検量線から、前記試料溶液のHPLC分析におけるイソクエルシトリン(前記式(1)におけるn=0)及びn≧1の各糖付加物についてそれぞれモル濃度を求め、更に各物質の分子量からその含有量(質量%)を計算し、試料中のイソクエルシトリン糖付加物等の定量を行った。また、試料中のイソクエルシトリン糖付加物等のケルセチン換算量は、上記イソクエルシトリン及び各糖付加物のそれぞれのモル濃度から、アグリコン部分の含有量を計算することにより算出した。
【0045】
2.糖アルコール及びトレハロースの分析
糖アルコールの分析は、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法により、次に示す方法にしたがって行った。
分析機器の装置構成は次の通りである。
検出器 :示差屈折計 RID-10A(島津製作所社製)
カラム :Shodex Asahipak NH2P-50 4E、φ4.6mm×250mm(昭和電工社製)
【0046】
分析条件は次の通りである。
カラム温度:室温
移動相 :アセトニトリル及び水の混液(81:19 体積比)
流量 :1mL/min
試料注入量:20μL
【0047】
以下の手順にて分析用試料を調製した。
検体を3g量りとり、これに水10mLを加えて溶解し中和した溶液を、超音波洗浄器を用いて超音波抽出を30分間行った。その溶液に水を加えて20mLに容定した。その溶液をメンブレンフィルタでろ過し、試料溶液とした。その試料溶液を高速液体クロマトグラフ分析に供した。
【0048】
3.カリウムイオンの分析
カリウムは、「分析実務者が書いた五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説」(財団法人日本食品分析センター編集、中央法規出版株式会社発行所、2001年7月10日発行)のp90−91及びp99−103にしたがい測定した。
具体的には、検体2〜5gを抽出容器に量り取り、1%塩酸溶液200mLを加え、室温下で30分振とう抽出した。抽出液を遠心管に移し、遠心分離後の上澄み液を原子吸光用試験溶液とした。原子吸光光度計の測定波長を766.5nmに設定し、カリウムを測定した。そして、予め作成した検量線を用いて試料中のカリウム量を定量した。
【0049】
4.色調変化の測定
分光光度計(形式Color Meter ZE-2000、日本電色工業社製)を使用し、試料を光路長10mmの石英セルに入れてL***表色系のb*値を測定した。製造直後の容器詰飲料、及び55℃で7日間保存後の容器詰飲料のb*値から、Δb*(保存後のb*値−保存前のb*値)を求めた。
【0050】
5.渋味の評価方法
専門パネル5名が各容器詰飲料を飲用し、その渋味について下記の基準で評価し、その後協議により最終スコアを決定して評価値とした。
【0051】
評価基準
5:渋味がない
4:渋味が若干ある
3:渋味がある
2:渋味がやや強い
1:渋味が強い
【0052】
6.喉越しの評価方法
専門パネル5名が各容器詰飲料を飲用し、その喉越しについて下記の基準で評価し、その後協議により最終スコアを決定して評価値とした。なお、ここでいう喉越しとは、飲用した時に「喉に引っ掛かる感じ」の強弱のレベルで評価した。
【0053】
評価基準
5:喉越しが良い(喉に引っ掛かる感じが全くない)
4:喉越しがややよい
3:どちらともいえない
2:喉越しがやや悪い
1:喉越しが悪い
【0054】
実施例1〜11、比較例1〜3
表1に示す組成で調合し、次いで85℃で2分間殺菌を行い、200mLのPETボトルに160mL充填して容器詰飲料を調製した。各容器詰飲料の成分分析及び評価結果を表1に併せて示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から、成分(A)とともに成分(B)をそれぞれ特定量含有せしめ、更に成分(A)と成分(B)との含有質量比[(B)/(A)]、及びpHをそれぞれ特定範囲内に制御することで、長時間にわたって保存しても色調が変化し難く、外観が保持されることが確認された。
【0057】
実施例12
実施例1の処方において、4倍濃縮液となるようにイオン交換水を配合し、当該濃縮液を85℃で2分間殺菌を行い、次いで4倍希釈した際に炭酸ガスボリュームが2.5となるように、5℃に冷却した炭酸水を配合し、耐圧性PETボトルに充填し巻き締め後、65℃で20分殺菌して容器詰飲料を調製した。この容器詰飲料について、前記「色調変化」及び「渋味」の評価を行ったところ、実施例1と同じ結果が得られた。
【0058】
実施例13
実施例1の処方において、更に塩化カリウムを0.02質量%(カリウムイオンとして0.0105質量%)添加した以外は実施例1と同様の操作を行い、容器詰飲料を調製した。この容器詰飲料について、前記「色調変化」及び「渋味」の評価を行ったところ、実施例1と同じ結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)イソクエルシトリン及びその糖付加物 0.03〜0.17質量%、
(B)糖アルコール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種 0.01〜3質量%
を含有し、
成分(A)に対する成分(B)の質量比[(B)/(A)]が3〜50であり、かつ
pHが2〜5である、容器詰飲料。
【請求項2】
成分(B)がエリスリトール、キシリトール、トレハロース及びマルチトールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
成分(B)がエリスリトール、キシリトール及びトレハロースから選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項4】
成分(A)中のイソクエルシトリン糖付加物/イソクエルシトリンの質量比が1以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の容器詰飲料。
【請求項5】
前記成分(A)中のイソクエルシトリン糖付加物/イソクエルシトリンの質量比が1000以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載の容器詰飲料。
【請求項6】
成分(A)の含有量が、ケルセチン換算で0.01〜0.07質量%である、請求項1〜5のいずれか1項記載の容器詰飲料。