説明

容器

【課題】 押し潰したときにスプリングバックによる復元量が少ない容器を提供する。
【解決手段】 容器本体2を薄膜6によって構成する。薄膜6は、容器本体2の内側から外側に向かって順次積層された第1〜第5層6a〜6eによって構成する。第1層6a及び第5層6eは、ポリエチレンフィルムによって形成する。第2層6bは、ナイロンフィルムによって形成する。第3層6cは、アルミニウム箔によって形成する。第4層6dは、ポリエチレンからなる一軸延伸フィルムによって構成する。第4層6dは、一軸延伸フィルムの延伸方向を容器本体2の周方向に向けた状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば塗料や接着剤を収容するペール缶、吐出ガンのカートリッジとして用いるのに好適な容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペール缶等の各種の容器として、容器本体を樹脂フィルムからなる薄膜によって構成した容器が金属製の容器に代えて多用されるようになってきた。これは、容器を廃棄する際に容器本体を上下に押し潰すことにより、廃棄物の減量化を図ることができるからである。
【0003】
しかしながら、通常の薄膜は、押し潰された後スプリングバックする。このため、例えば容器本体を当初の高さの1/5程度にまで圧縮したとしても、圧縮力を解放すると容器本体の高さが当初の高さの1/3程度にまで復元しまうという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、下記特許文献1に記載のものにおいては、樹脂フィルムからなる容器本体の下端部及び上端部に環状部それぞれ形成し、上下の環状部に凸部と凹部とをそれぞれ形成している。そして、容器本体を押し潰した後、凸部と凹部とを互いに係合させることにより、容器本体を押し潰した状態に維持するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−227766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のものにおいては、容器本体を押し潰したときに凸部と凹部とが水平方向に位置ずれを起こすことが多い。そのような場合には、凸部と凹部との水平方向における位置合わせをする必要がある。ところが、押し潰された容器本体は、比較的強度が高くなっているのみならず、各部の強度が互いに異なっている。このため、凸部と凹部との位置合わせが困難であり、それらを係合させるのに多くの手間と時間を要するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するために、一端が開口した容器本体が、少なくとも一層の樹脂フィルムを有する柔軟な薄膜によって構成された容器において、上記薄膜を構成する上記樹脂フィルムのうちの少なくとも一層が一軸延伸フィルムからなり、この一軸延伸フィルムの延伸方向が上記容器本体の周方向に向けられていることを特徴としている。
この場合、上記薄膜が三層以上の樹脂フィルムを有しており、中間に配置された樹脂フィルムが上記一軸延伸フィルムによって構成されていることが望ましい。上記一軸延伸フィルムがポリエチレンからなる一軸延伸フィルムであることが望ましい
【発明の効果】
【0008】
容器の容器本体を押し潰したとき、一軸延伸フィルムは、その延伸方向と直交する方向に押し潰される。ここで、一軸延伸フィルムの延伸方向と直交する方向におけるスプリングバック量は、通常の樹脂フィルムのスプリングバック量に比して非常に小さい。したがって、容器本体を構成する薄膜を一軸延伸フィルムだけで形成した場合には、押し潰された容器本体は僅かに復元するだけであり、ほとんど押し潰された状態を維持する。また、容器本体を構成する薄膜を、一軸延伸フィルムを含む複数層の樹脂フィルム等によって形成した場合には、一軸延伸フィルム以外の樹脂フィルムは、一軸延伸フィルムのスプリングバック完了後にもさらにスプリングバックしようとする。しかるに、スプリングバックが完了した一軸延伸フィルムは、他の樹脂フィルム等がスプリングバックするのを抑える。いずれの場合においても、押し潰された容器本体が大きく復元することを阻止することができる。したがって、この発明に係る容器によれば、容器を押し潰した後、凸部と凹部とを嵌合させる等の手間を要することなく、容器を押し潰されて小さくなった状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態は、塗料、接着剤等を収容するペール缶(容器)1にこの発明を適用したものである。ペール缶1は、軸線を上下方向に向けて配置された円筒状をなす容器本体2と、この容器本体2の上端部外周面に固着された環状の上補強部3と、容器本体2の上下方向における中間部の外周面に固着された環状の中間補強部4と、容器本体2の下端部内周面に固着された底部5とを有している。
【0010】
容器本体2は、後述する薄膜6からなるものであり、長方形状をなす薄膜6の水平方向の両端部を互いに重ね合わされて固着することにより、軸線を上下方向に向け、かつ両端が開口した円筒体として形成されている。容器本体2は、断面円形とすることなく、楕円形、正方形等の多角形、その他の形状にしてもよい。また、容器本体2は、上下方向の各部において一定の寸法を有するものとすることなく、上端側と下端側とで寸法を変えてもよい。例えば、容器本体2を下方へ向かうにしたがって小径となるように、テーパ状に形成してもよい。
【0011】
上補強部3は、LDPE(低密度ポリエチレン)等の比較的硬質の樹脂をリング状に成形してなるものであり、容器本体2の上端部外周面に固着されている。上補強部3が容器本体2の上端部に固着されることにより、容器本体2の上端開口部が一定の形状に、例えば円形に維持されている。上補強部3は、容器本体2に接着剤によって固着することも可能であるが、この実施の形態ではインサートインジェクション成形法により上補強部3の成形と同時に容器本体2に溶着されている。上補強部3の外周面には、一対の把持部3a,3a及び一対の係合突起3b,3bが形成されている。一対の把持部3a,3aは、周方向に180°離れて配置されている。一対の係合突起3b,3bは、周方向に180°離れて、かつ把持部3aに対して90°離れて配置されている。係合突起3bは、把持部3aと同一箇所に形成してもよい。
【0012】
中間補強部4は、上補強部3と同様に、LDPE等の比較的硬質の樹脂をリング状に成形することによって構成されており、容器本体2の上下方向における中間部の外周面に固着されている。容器本体2の中間部に中間補強部4が設けられることにより、容器本体2の中間部が一定の形状に維持されている。中間補強部4も容器本体2に接着することが可能であるが、上補強部3と同様に、中間補強部4の成形と同時に容器本体2に溶着するのが望ましい。
【0013】
底部5は、上記上補強部3及び中間補強部4と同様に、LDPE等の比較的硬質の樹脂を成形してなるものであり、容器本体2の下端部内周面に固着されている。底部5によって容器本体2の下端開口部が閉じられている。底部5も、容器本体2に接着することが可能であるが、成形と同時に溶着することが望ましい。底部5の下面には、複数の係合筒部5aが形成されている。
【0014】
容器本体2は、図4に示す積層構造の柔軟な薄膜6によって構成されている。薄膜6は、5層構造をなしており、容器本体2の内側から外側に向かって順次配置された第1〜第5層6a〜6eを有している。第1層6a〜第5層6eは、容器本体2の径方向において隣接するものどうしがドライラミネート法、その他の方法によって互いに固着されている。
【0015】
五つの層のうち最内層である第1層6aと最外層である第5層6bは、同一材質又は互いに溶着可能な樹脂からなる樹脂フィルムによって構成されている。この実施の形態では、第1層6a及び第5層6eを構成する樹脂としてポリエチレンが採用されている。第1層6aと第5層6eとを同一又は互いに溶着可能な樹脂で構成したのは、薄膜6の左右両端部を封筒張りするとき、つまり左右両端部を重ねて溶着するとき、最内層である第1層6aと最外層である第5層6eとが溶着されるからである。薄膜6の最内層と最外層とを同一又は溶着可能な樹脂フィルムで構成することは、薄膜6が5層構造以外の積層構造とされる場合にも適用するのが望ましい。ただし、薄膜6の両端部を合掌張りするときには、最内層である第1層6aの左右両端部が互いに溶着されるので、第1層6aと第5層6eとは異なる樹脂で構成してもよい。
【0016】
第2層6b〜第4層6dのうちの一つの層は、引っ張り強度、圧縮強度及び破断強度が優れた樹脂フィルムによって構成され、他の一つの層は、ペール缶1内に収容された収容物が薄膜6を透過するのを阻止するためにアルミニウム箔等の金属箔によって構成され、残りの一つの層が一軸延伸フィルムによって構成されている。第2〜第4層6b〜6dをそれぞれ構成する各樹脂フィルムの一例を挙げると、この実施の形態では、第2層6bが強度の高いナイロンのフィルムによって構成され、第3層6cがアルミニウム箔によって構成され、第4層6dがポリエチレンからなる一軸延伸フィルムによって構成されている。
【0017】
一軸延伸フィルムは、周知のように、樹脂フィルムの製造工程において樹脂を一定の方向に引っ張って延ばす加工工程を入れて製造したものであり、その引っ張り方向(延伸方向)に対して引っ張り強度が非常に強いという性質、及び延伸方向と直交する方向に対して圧縮すると、ほとんどスプリングバックすることなく、圧縮された状態を維持するという性質を有している。この発明は、一軸延伸フィルムの後者の性質を利用することにより容器本体2のスプリングバックを小さくすることができるという着想に至ったものであり、一軸延伸フィルムからなる第4層6dは、延伸方向が容器本体2の押し潰し方向と直交する方向である周方向を向くように配置されている。一軸延伸フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン以外にポリプロピレン等他の周知の材質を用いることができる。なお、ポリエチレンからなる市販の一軸延伸フィルムとして、例えばPE3K−BT(二村化学工業株式会社の商品名)がある。
【0018】
薄膜6の強度が第1層6a、第3層6c、第4層6d及び第5層6eだけで十分である場合には、第2層6bを省略してもよい。ペール缶1内の収容物が薄膜6を透過するおそれがないようなものである場合には、第3層6cを省略してもよい。強度及び透過の両者を考慮する必要がない場合には、薄膜6を第1層6a、第4層6d及び第5層6eだけで構成してもよい。あるいは、薄膜6を一軸延伸フィルムからなる第4層6dだけで構成してもよい。ただし、一軸延伸フィルムは、延伸方向と直交する方向の強度が低いので、容器本体2を延伸方向が容器本体2の周方向を向く一軸延伸フィルムだけで構成すると、容器本体2の上下方向の強度が過度に低くなるおそれがある。そこで、容器本体2を構成する薄膜6については、容器本体2の上下方向の強度が強い樹脂フィルムと一軸延伸フィルムとの2層以上の複数層によって構成するのが望ましい。
【0019】
なお、この実施の形態では、薄膜6の強度、厚さ等を考慮し、第1〜第5層6a〜6eの各層の厚さを、50μm、25μm、12μm、50μm及び50μmにそれぞれ設定している。勿論、他の厚さに設定してもよい。
【0020】
上記構成のペール缶1を上下方向に押し潰した場合には、第1層6a〜第5層6eがスプリングバックによって復元しようとするが、延伸方向を容器本体2の周方向に向けて配置された一軸延伸フィルムからなる第4層6dの復元量は非常に小さい。しかも、第4層6dは、それ自体のスプリングバックによって復元した後は、それ以上に伸張されることに対して抵抗する。これにより、第1層〜第3層及び第5層6a〜6c及び6eのスプリングバックによる復元量が小さく抑えられ、ひいては容器本体2の復元量が小さく抑えられる。したがって、廃棄時におけるペール缶1の容量を小さくすることができる。
【0021】
図5及び図6は、上記ペール缶1を用いて粘性の高い二液性接着剤等を撹拌混合する場合の一例を示している。ペール缶1は、図5に示すように、その上補強部3が金属製の外缶7の上端面に載置されるまで外缶7に挿入される。これにより、ペール缶1の上端部が外缶7に支持される。ペール缶1が外缶7に挿入された状態においては、上補強部3の係合突起3bが外缶7の上端部内周面に形成された係合凹部7aに係合するとともに、底部5の係合筒部5aに外缶7の底面に形成された突起(図示せず)が嵌り込む。これにより、ペール缶1の上端部と下端部とが外缶7に回動不能に連結される。
【0022】
図6に示すように、ペール缶1が挿入された外缶7は、撹拌機8の載置部8aに載置される。ペール缶1の内部には、撹拌機8の撹拌腕8bが挿入される。そして、撹拌腕8bの先端部に設けられた撹拌羽根(図示せず)が回転させられることにより、ペール缶1内に収容された接着剤等の収容物が撹拌される。撹拌時には、容器本体2の内周面と収容物との間に作用する摩擦抵抗により、容器本体2にその軸線を中心とした捻り力が作用する。このとき、一軸延伸フィルムの延伸方向における強度が高いので、一軸延伸フィルムからなる第4層6dを有する容器本体2の周方向の強度が高い。したがって、容器本体2は捻り力によって大きく変形させられることがない。
【0023】
図7は、この発明の他の実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を化粧用あるいは殺虫剤用のスプレー缶10に適用したものであり、スプレー缶10は、外缶20、カートリッジ(容器)30及びノズル40を主な構成要素としている。カートリッジ30は、円筒状をなすカートリッジ本体(容器本体)31を有している。カートリッジ本体31は、一軸延伸フィルムを有する積層体からなる薄膜によって構成されている。カートリッジ本体31の上端部には、上補強部32が設けられており、下端部には底部33が設けられている。そして、カートリッジ本体31は、その底部を先にして外缶20にその上端開口部から挿入され、上補強部32が外缶20の上端開口部に螺合固定されている。上補強部32の上端部に形成された吐出口部32aには、ノズル40の連結筒部41が螺合固定されている。ノズル40の操作ボタン42を押し下げると、操作ボタン42のノズル孔(図示せず)からカートリッジ本体31内に収容された収容物が吐出される。なお、ノズル40の連結筒部41には、カバー50が着脱可能に嵌合されている。
【0024】
このように構成されたスプレー缶10において、カートリッジ30内に収容された収容物を使い切った場合には、カートリッジ30が外缶20から取り出されるとともに、カートリッジ30からノズル40が取り外される。その後、カートリッジ30が上下方向(カートリッジ本体31の軸線方向)に押し潰される。カートリッジ30の本体が、一軸延伸フィルムを有する薄膜によって構成されているので、押し潰されたカートリッジ本体30は小さい容積を維持する。
【0025】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、この発明は、接着剤やコーキング材を所望の箇所に吐出する吐出ガンに用いられるカートリッジにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施の形態を示す平面図である。
【図2】同実施の形態の正面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】図1〜図4に示す実施の形態のペール缶を撹拌用外缶に挿入しているときの状態を示す斜視図である。
【図6】外缶に挿入されたペール缶内の収容物を撹拌機によって撹拌している状態を示す斜視図である。
【図7】この発明の他の実施の形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ペール缶(容器)
2 容器本体
6 薄膜
6d 第4層(一軸延伸フィルム)
10 スプレー缶
30 カートリッジ(容器)
31 カートリッジ本体(容器本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した容器本体が、少なくとも一層の樹脂フィルムを有する柔軟な薄膜によって構成された容器において、
上記薄膜を構成する上記樹脂フィルムのうちの少なくとも一層が一軸延伸フィルムからなり、この一軸延伸フィルムの延伸方向が上記容器本体の周方向に向けられていることを特徴とする容器。
【請求項2】
上記薄膜が三層以上の樹脂フィルムを有しており、中間に配置された樹脂フィルムが上記一軸延伸フィルムによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
上記一軸延伸フィルムがポリエチレンからなる一軸延伸フィルムであることを特徴とする請求項2に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−117302(P2006−117302A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309298(P2004−309298)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】