説明

容器

【課題】 立体形状を印刷し、商品の需要を喚起する容器を提供する。
【解決手段】 粒状体または粉状体の発泡剤を含有するエポキシ系の立体インキ20を曲状側面に金属製の版(例えば、ステンレス製のスクリーン24)を介してスクリーン印刷し、前記発泡剤の発泡温度より低い予備発泡温度の雰囲気で立体インキ20を乾燥及び硬化させスクリーン印刷時の立体印刷部14として形状をそのまま維持させながら定着させる。また、金属製の版は、厚さが0.2から0.3mmの範囲内に設定することができ、容器の主成分は、ポリカァーボネート又はガラス若しくはポリプロピレンの何れか1つの耐熱性材料を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体印字の容器に関し、特に、立体印字部のアスペクト比が高い容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の3D印字表示(3D印字印刷)は、凸版印刷機に、3D印字の文字列をポジ状態で形成した3D印字用凸版を設け、シール紙の紙片をその裏面側が3D印字用凸版側となるようにして供給し、シール紙は、3D用凸版を通過する際にその裏面に3D印字用凸版を強く押付けて3D印字用凸版のポジ状態の3D印字によって、シール紙の表紙側に突出する3D印字を形成していた(特許文献1、参照)。また、有底円筒状の缶胴部と、ネック部と、缶胴部とネック部とを滑らかに連続させるテーパ部とを有するボトル型金属容器のテーパ部に、ベース印刷層、つやニス層を積層し、つやニス層の表面に3D表示部をスクリーン印刷またはパッド印刷した後、この3D印字表示部にクリヤニスをスプレーコートで塗布して保護するボトル型金属容器が提案されている(特許文献2、参照)。さらに、3D印字の印刷技術も提案されている(特許文献3、4、5、6、参照)。
【特許文献1】特開平5−246009号公報
【特許文献2】特開2003−34333号公報
【特許文献3】特開昭55−144192号公報
【特許文献4】特開平08−324575号公報
【特許文献5】特開平07−181887号公報
【特許文献6】特開2004−358830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の3D印字表示は、凸版印刷機の技術を応用して表紙側に突出する3D印字表示を形成したシール紙を大量に製造してから立体容器にシール紙を貼着するので、この貼着作業が煩雑であり容器の生産性が低下するという問題がある。また、シール紙を貼着した容器は見栄えも悪く、しかも容器からシール紙が剥がれるという問題も存在する。
【0004】
また、従来のインキ印刷技術を応用して3D印字表示を容器へ印刷しても、インキが印刷工程でだれて潰れ降下変形するので数μm程度の高さの3D印字表示しか形成できない。さらに、紫外線硬化性の3D印字表示インキでは印字の高さに比例して紫外線透過率が低下し3D印字表示の定着品質が低下するため、多層の印字インキ形成工程を必要とする問題も存在している。したがって、合成樹脂容器に3D印字表示部を突設させる容器成型用金型を用いて3D印字表示の容器を提供していた。
【0005】
さらに、特許文献2の3D印字表示部は、発泡インキをボトル型金属容器のテーパ部に積層したつやニス層に印刷した後に、ボトル型金属容器を加熱処理して発泡インキの体積を増大させているので、3D印字表示部の強度および定着性を確保するため、さらに3D印字表示部の表面にクリヤニスを塗布している。さらに、3D印字表示部はテーパー状の凸部に変形し、凸部と凸部の間に流れ込んだクリヤニスが3D印字表示部の谷部分を埋めてしまい、3D表示部の迫力を低下させるという問題も存在していた。
【0006】
しかも、ボトル型金属容器は合成樹脂容器に比して高温処理が可能であり、発泡インキに代えて金属インキも用いることができる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するため、アスペクト比の高い3D印字表示部を印刷し、需要を喚起する容器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、例えば、図1(a)および(b)に示すように、粒状体または粉状体の発泡剤を含有するエポキシ系の3D印字インキを曲状側面にスクリーン印刷し、発泡剤の発泡温度より低い予備発泡温度の雰囲気で3D印字インキを乾燥および硬化させスクリーン印刷時の3D印字表示部として形状をそのまま維持させながら定着させる容器を要旨とする。
【0009】
ここで、3D印字表示部14は、底辺Wに対して高さ12が3分の1乃至2分の1のアスペクト比を有する単層円柱形状の凸部であって、例えば、1.2mm乃至1.5mmの底辺と高さ400μm乃至800μmの3D印字を提供することができる。また、3D印字表示部14は高さ500μm乃至700μmの3D印字インキを立設させてもよい。
【0010】
また、3D印字は、文字や図形を用いて商品の種類を表現している。一文字のスペースには縦の寸法が約6mm、横寸法が約3.5mmのマスの中に、各凸部の高さが0.4mm乃至0.8mmに立設させることができる。
【0011】
さらに、3D印字インキ20は、液体またはゲルのエポキシ系の有色インキ、この有色インキの粘度を減少させる溶剤、有色インキの体積に対して20%の体積を有する透明エキステンダ、有色インキの体積に対して20%の体積を有する粒状の発泡剤、有色インキの体積に対して10%の体積を有する硬化剤を混合すればよく、発泡剤を予備発泡させる温度の100℃乃至120℃の雰囲気の乾燥炉で3D印字インキ20を5乃至15分間に亘り乾燥および硬化させ単層凸状の3D印字表示部14を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、3D印字のアスペクトを向上させる容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。図1(a)は、本発明の実施形態にかかる立体容器(本発明の容器)の平面から観察した一部断面図である。3D印字付き立体容器は、外周および内周の曲状表面を備え、底辺Wに対して高さHが3分の1乃至2分の1のアスペクト比を有する立設させる凸状の3D印字表示部14を立体合成樹脂容器16の外周の曲状側面に硬化定着させている。3D印字表示部14は、例えば、底辺Wが略1.5mmであって高さHが略0.8mmを有する凸部であって、底辺Wを立体合成樹脂容器16の曲状側面に硬化定着している。すなわち、3D印字表示部14のアスペクト比は3:1を例示しているが、本発明は3:1のアスペクト比に限定されず3D印字が可能な2:1のアスペクト比でもよい。
【0014】
3D印字表示部14は、3D印字形状であればよく、例えば、底辺Wが略1.2mm乃至1.5mm、高さHが0.40mm乃至0.8mmを有する凸部である。底辺Wが1.2mm未満であると立体合成樹脂容器16との密着性が低下し、底辺Wが1.5mmを超えると隣接する3D印字表示部14との間隔が狭くなり迫力が低下する虞がある。
【0015】
また、3D印字表示部14の高さが0.35mm未満であると3D印字の迫力が低下し、0.8mmを超えるとスクリーン24から完全に剥離しない一部の3D印字インキが立体合成樹脂容器16の表面に流れ出し3D印字の迫力が低下する虞がある。
【0016】
図1(b)は、本発明の実施形態にかかる3D印字付き立体容器の斜視図である。3D印字付き立体容器は、立体合成樹脂容器16の外周側の曲状表面に3D印字表示部14を備える。この3D印字表示部14で構成した3D印字は、図中の3D印字表示部18に「VIP」の文字を表示している。
【0017】
ここで、立体合成樹脂容器16は、その材質として、融点160−170℃のポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)の何れか1つを選択して射出形成した透明または有色若しくは半透明の容器である。立体合成樹脂容器16には流動物や粉状物や半流動物の飲食物を収容し立体合成樹脂容器16の上部開口部をフィルムで封印して市場へ流通させることができる。
【0018】
3D印字表示部14は、立体合成樹脂容器16の色と同色でもよく、立体合成樹脂容器16の色と相違する色で形成してもよい。例えば、ユニバーサルデザインを嗜好するマーケットでは、積極的に立体合成樹脂容器16と異色の3D印字表示部14を切望する。
【0019】
また、3D印字表示部14を目立たないデザインとするマーケットでは立体合成樹脂容器16の色と同色を選択する。要は、本発明では3D印字インキを応用するので3D印字表示部14の色彩に対する選択範囲が従来に比して広い。
【0020】
さらに、図中の立体合成樹脂容器16の裏側表面にスクリーン印刷による商品ロゴまたは商品名が予め印刷されている。3D印字表示部14を追加印刷しても商品ロゴまたは商品名の印刷品質を低下させない点で有利である。しかも、立体合成樹脂容器16は、その上部開口部周囲に突出する鍔部を有するので、隣接する他の立体合成樹脂容器16と接触しても商品ロゴや商品名や3D印字表示部14の表面を保護できる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態にかかる3D印字付き立体容器の製造工程を示す図である。同図下部に示す立体合成樹脂容器16は、その開口部に立体容器支持部26を挿入し立体容器支持部26と嵌合する。立体容器支持部26は、その回動中心部に結合するシャフト28、このシャフト28に結合するヘッド29、このヘッド29から延在するシャフト28に連結する駆動輪31に接続されている。
【0022】
立体合成樹脂容器16は、同図上部に示すように、立体容器支持部26に嵌合したままスクリーン24の下側の回動軸28の中心に配置され、立体合成樹脂容器16の外側表面とスクリーン24の下面が接触する。スクリーン24はスクリーン枠22に包囲され図中の右側から左側へ駆動輪31の回動に同期して水平方向へ移動する。スクリーン24の上面には3D印字インキ20が一点鎖線で示す液面まで注入されている。
【0023】
同図のスキージ30は、スキージ支持部32の下部に坦持され、立体容器支持部26と対向してスクリーン24と接触する位置に配置されている。スキージ30はゴムのような弾性体であり、その硬度は「60度」、「70度」、「80度」、「90度」の中から何れか1つの硬度を選択することができる。
【0024】
本実施形態では印字インキ20に含有する樹脂の粒状体間の密着性を維持するように樹脂の粒状体が形状を維持しながら通過できる60度の硬度のスキージ30を用いると好ましい。但し、本発明は3D印字インキ20の中の粒状体または粉状体樹脂が小径であれば硬度が60度以上の密度の高いスキージ30を使用することができる。
【0025】
ここで、3D印字インキ20は、例えば、液体またはゲル状のエポキシ材の有色インキ(例えば、SSユニPE)、この有色インキの粘度を減少させる溶剤(例えば、SSユニ用)、有色インキの体積に対して20%の体積を有するゲル状の透明エキステンダ(例えば、SSユニ用)、有色インキの体積に対して20%の体積を有する粒状体または粉状体樹脂、有色インキの体積に対して10%の体積を有する液状の硬化剤(例えば、SSユニ用)を混合したインキである。また、粒状体または粉状体の樹脂として粉末(例えば、顆粒状)の発泡剤を用いることができる。
【0026】
発泡剤は、120℃を超える加熱処理により発泡する発泡性のマイクロカプセルを含んでいる。このマイクロカプセルは、熱可塑性樹脂からなるシェル内に、低沸点の炭化水素の液体(ブタン、プロパン等)が封入され、120℃超える温度(例えば、180〜200℃)に加熱されると熱可塑性樹脂が軟化するとともに予備発泡時に液体が気化している圧力によりシェルが体積膨張し発泡する。この膨張変形した状態のシェルが硬化することにより発泡剤が変形しながら体積を増大させる。
【0027】
したがって、発泡剤は、120℃を超えない加熱処理(100℃〜120℃)では粒状体の形状を維持させながら膨張し発泡剤同士を密着若しくは融着することができる。例えば、ビーズ形状の発泡剤を予備発泡させるとビーズ形状を維持したまま膨張する。
【0028】
3D印字インキ20は、エポキシ材の有色インキの体積を100%とした場合、体積比20%の透明エキステンダおよび樹脂の粒状体としての発泡剤、体積比10%の硬化剤の比率で混合して製造することができる。有色インキは例えば「SSユニPE」を、エキステンダは無色透明のインキ原料を、粒状体または粉状体樹脂として120℃を超える加熱温度から発泡する発泡剤を混合し、有色インキに対応する溶剤で3D印字インキ20の粘度を調整し、その流動性および定着性を最適化することができる。なお、SSユニPEの有色インキに代えて他の有色インキを用いることでペット(PET)の立体容器にも3D印字インキ20を対応させることもできる。
【0029】
図3は、本発明の実施形態に用いる金属製(例えば、ステンレス製)の版を用いたスクリーン印刷機の正面から観察した断面図である。スクリーン印刷機は、スキージ30を担持したスキージ支持部32、スキージ30の下部先端と接触するスクリーン24を備える。スクリーン24は、乳化剤を弾性繊維のメッシュ38に含浸した乳化層32と、スクリーン24の表面を被覆するフッ素コーティング層の多層構造である。
【0030】
スクリーン印刷機は、例えば、ステンレス製の版のスクリーン24を水平に配置し、図中右から左へ水平移動するスクリーン24を貫通する直径1.2mm乃至1.5mmの3D印字パターン孔40を通して回動しながら接触する立体合成樹脂容器16(図1参照)の曲状側面に3D印字インキ20を印刷する。3D印字パターン孔40は、レーザで孔を開けてもよくエッチングで形成してもよい。
【0031】
例えば、3D印字インキ20はスキージ30と接触するスクリーン24のパターン側壁25に沿って下方へ流動し、パターン側壁25の形状と略同一の形状の3D印字表示部14を立体合成樹脂容器16(図1参照)の外周側面に印字される。印字される3D印字インキ20はスクリーン24の膜厚500μm乃至800μmと略同一の厚さ(高さ)を有し、その底面は3D印字パターン孔40の開口面積と略同一である。
【0032】
同図下部にスクリーン24の斜視図を示す。スクリーン24は、ステンレス製の版を選択できるが、本願発明者は、上述した厚さの版を用いることで3D印字インキ20の3D印字パターン孔40への流入性およびスクリーン24からの剥離性の最適値を得た。但し、本発明は上述した版の厚さのスクリーン24に限定されず、3D印字インキ20の粘度および樹脂の粒状体(発泡剤)の通過性を調整し他のステンレス製の版のスクリーン24を用いることもできる。
【0033】
図4は、本発明の実施形態に用いる乾燥炉の斜視図である。乾燥炉50は、基台52上に載置し、乾燥炉50の左側開口部からコンベア54を介して3D印字を印刷した立体合成樹脂容器16を装荷し内部に導入する。乾燥炉50は図5に示すように内部の温度を100℃乃至120℃の範囲に設定し、立体合成樹脂容器16aに印刷された3D印字インキ20を120℃以下の雰囲気(例えば、温風熱乾燥式)の乾燥炉50内で10分間に亘り乾燥および硬化させ底辺に対して高さが3分の1乃至2分の1のアスペクト比を有する凸状の3D印字表示部14を立体合成樹脂容器16aの曲状側面に定着させることができる。
【0034】
また、図5に示すように、立体合成樹脂容器16aの3D印字表示部14(図1、参照)はt0=0からt2=10分まで昇温され、乾燥および硬化処理される。その後、3D印字付き立体合成樹脂容器16bはt2からt3=15分まで大気中に放置され自然冷却される。このように3D印字表示部14が3D印字付き立体合成樹脂容器16bの曲状側面に定着した3D印字表示部14は、粘着テープの剥離テストの結果、立体合成樹脂容器16aから剥離せず、印刷の合格品質を有しその印字信頼性をも維持している。
【0035】
図6(a)は、粒状体を含有しない3D印字インキ15を立体合成樹脂容器10へ印刷した断面図である。スクリーン印刷機で印刷した段階で3D印字インキ15は流動し降下変形するので、凸状部の高さが3D印字のアスペクト比を達成できない。
【0036】
図6(b)は、樹脂の粒状体Cを含有する3D印字インキ14を立体合成樹脂容器10へ印刷した断面図である。スクリーン印刷機で印刷した段階で3D印字インキ14は形状を維持し、円柱状の凸状部の高さが3D印字のアスペクト比を達成できる。
【0037】
すなわち、3D印字インキ14では、有色インキ、その溶剤、および硬化剤を混合した液体またはゲルのインキAと、粒状体または粉状体樹脂C間および立体合成樹脂容器10との密着性を高める透明エキステンダBが混合されているので、乾燥および硬化前の3D印字インキ14の形状を維持することができる。
【0038】
図1〜図6を参照して、本発明の実施形態にかかる3D印字付き立体容器の製造方法を例示する。
【0039】
先ず、紫外線を透過しない液状またはゲルのエポキシ系の有色インキ、この有色インキの粘度を減少させる溶剤、有色インキの体積に対して20%の体積を有する透明エキステンダ、有色インキの体積に対して20%の体積を有する粒状体または粉状体樹脂C(例えば、発泡剤)、および有色インキの体積に対して20%の体積を有する液体またはゲルの硬化剤を混合した3D印字インキ20を準備する。
【0040】
本実施形態の有色インキ20は、3D印字付き立体容器の製造業者、3D印字付き立体容器へ食品を充填する食品製造業者、食品入り3D印字付き立体容器の流通業者、3D印字付き立体容器を介して食品を販売する販売業者が、有色インキ20が有色の3D印字表示部14を形成して視覚を通して認識し易く特定食品の個装状態から、その食品の同定を行うのに利点がある。
【0041】
また、透明エキステンダを使用するので、複数の有色インキの中から任意に選択する色を実現することができるという利点もある。例えば、茶色はコーヒーゼリー、橙色はオレンジゼリーに区別する色を使用することができる。
【0042】
次に、スクリーン印刷機を用いて、膜厚500μmのスクリーン24を貫通する3D印字パターン孔40を通して3D印字インキ20を、スキージ30により押し出し水平方向に移動するスクリーン24に接触しながら、回動軸28を中心に回動する立体合成樹脂容器16の曲状側面に3D印字印刷する。
【0043】
スクリーン24は、膜厚500μmのステンレス製の版を用い、3D印字インキ20の粘性により、その流動性およびスクリーン24からの剥離性を考慮し3D印字表示部14の形成不良を防止することができる。但し、本発明は膜厚500μmのスクリーン24に限定するのもではなく、3D印字インキ20の粘度を調整することにより任意のスクリーン24を選択ができる点は上述した通りである。
【0044】
引き続き、3D印字印刷が完了した立体合成樹脂容器16を立体容器支持部26から離嵌させ次工程の乾燥および硬化工程へ移送する。この場合、本実施形態では、エポキシ系の有色インキを使用しているので、紫外線照射をして3D印字インキ20を硬化させる紫外線硬化工程を省略することができるという利点がある。
【0045】
また、3D印字インキ20は粒状体または粉状体樹脂の発泡剤を含有するためスクリーン24からの剥離性が向上するとともに、図6(b)に示すように、3D印字表示部14の形状変化を防止することができ、アスペクト比の高い円柱状の3D印字を形成することができる。
【0046】
一方、3D印字インキ20に粒状体樹脂(例えば、発泡剤)を混合しない場合、3D印字インキ20を回動する立体合成樹脂容器16へ印刷すると、図6(a)に示すように、立体合成樹脂容器16の曲状側面上に3D印字インキ20が自重により円筒形状から円錐形状(山形)に変形し、その高さが低くなり底面積が広がり背の低い印刷3D印字部15を形成し3D印字の触読性を低下させる。
【0047】
さらに、樹脂粒状体(例えば、発泡剤)を含有しない3D印字インキ20では、回動する立体合成樹脂容器16がスクリーン24と接触し通過する段階で3D印字表示部14の形状が変形し、その一部が糸を引くように立体合成樹脂容器16の曲状側面に流れ出るという不具合が発生する。このような糸を引くようなインキ形状が立体合成樹脂容器16の曲状側面に形成されると3D印字の触読性を低下させる。
【0048】
引き続き、粒状体樹脂として発泡剤を含有する3D印字インキ20を印刷した場合、立体合成樹脂容器16を120℃以下の雰囲気中の乾燥炉へ導入して3D印字インキ20を5乃至15分間に亘り乾燥および硬化させ底面に対して高さが3分の1乃至2分の1のアスペクト比を有する凸状の3D印字部14を立体合成樹脂容器16の曲状側面に定着させることができる。
【0049】
この場合、発泡剤は、形状を約30倍から80倍に発泡する発泡温度(例えば、160℃)に達しなくても予備発泡温度(例えば、100〜120℃)で3D印字表示部14の形状を維持しながら僅かに膨張し発泡剤同士を密着させ、3D印字インキ20の乾燥および硬化の際に収縮する体積を補完するので3D印字インキ20の形状をそのまま維持するとともに、3D印字表示部14の耐衝撃性を従来に比して向上させる。本実施形態では、3D印字表示部14の凸状部を従来に比して高くしても耐衝撃性が高く、その印刷定着性も向上させることができる、という技術的な利点を有する。
【0050】
以上の如く、本発明の実施形態によれば、高価な金型を必要とせず、商品の販売者および購入者が視覚を通じて有色3D印字を認識することができる立体合成樹脂容器を提供することができるという利点がある。
【0051】
しかも、立体容器の曲状表面に3D印字インキをスクリーン印刷して凸状の3D印字部を形成する3D印字表示付き立体容器を試行しても、有色の3D印字インキでは紫外線が3D印字インキの深部に透過せず、3D印字インキの表面だけが硬化するので3D印字部の定着信頼性が低下するという問題をスクリーン印刷技術により解決できる。また、紫外線硬化性の3D印字インキではアスペクト比の高い3D印字部を形成するために紫外線透過型インキに限定され有色の3D印字インキが使用できないという問題を二液エポキシ硬化インキにより解消することもできる。
【0052】
さらに、本実施形態では、加熱炉は、立体合成樹脂容器およびその表面樹脂印刷部を熱変形させる程度の温度未満に設定されているので、従来の金属容器の高温処理に比して低温で印刷インキの乾燥および硬化処理ができる点で有利である。
【0053】
なお、本発明の実施形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。例えば、ステンレス製の版を鉄製や銅製やアルミ製の版に代替してもよい場合があり、単層でも多層でも形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態にかかる容器を示す図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる容器の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に用いるスクリーン印刷機を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に用いる乾燥炉の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に用いる乾燥および定着工程を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に用いる立体印刷部の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
14 立体印刷部
16 容器
20 立体インキ
24 スクリーン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状体または粉状体の発泡剤を含有するエポキシ系のインキを曲状側面に金属製の版を介してスクリーン印刷し、前記発泡剤の発泡温度より低い予備発泡温度の雰囲気で前記インキを乾燥及び硬化させ前記スクリーン印刷時の立体印刷部として形状をそのまま維持させながら定着させることを特徴とする容器。
【請求項2】
粒状体または粉状体の発泡剤を含有するエポキシ系のインキを曲状側面に、厚さ0.2から0.3mmの範囲内の金属製の版を介してスクリーン印刷し、前記発泡剤の発泡温度より低い予備発泡温度の雰囲気で前記インキを乾燥及び硬化させ前記スクリーン印刷時の立体印刷部として形状をそのまま維持させながら定着させる容器。
【請求項3】
粒状体または粉状体の発泡剤を含有するエポキシ系のインキを曲状側面に、厚さ0.2から0.3mmの範囲内の金属製の版を介してスクリーン印刷し、前記発泡剤の発泡温度より低い予備発泡温度の雰囲気で前記インキを乾燥及び硬化させ前記スクリーン印刷時の立体印刷部として形状をそのまま維持させながら定着させるポリカァーボネート又はガラス若しくはポリプロピレンの何れか1つの耐熱性材料を主成分とする容器。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12031(P2012−12031A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147928(P2010−147928)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(591263617)有限会社小堀加工所 (3)
【Fターム(参考)】