説明

容器

【課題】内容物を搾り出して使用する方法と、容器を開封して内容物を使用する方法という2つの方法で内容物を使用できる容器を提供すること。
【解決手段】本発明の容器は、内容物が充填された合成樹脂製の容器本体2と、蓋材3とからなる容器1であって、容器本体2は、上方に開口した開口部24と、開口部24の周縁に形成されたフランジ部25とを備え、容器本体2の側壁部には、上方および内方に開口したポケット部27が形成され、蓋材3は、直線カット性フィルムからなり、開口部24を塞ぐように、フランジ部25にヒートシールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関し、より詳しくは、飲食物、化粧品、薬品などの内容物に対し好適に用いることができる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納された内容物の取り出し時に、容器の中央部分を一部開封し、指で摘んで二つ折りにすることにより、内容物を搾り出すことができるようにした包装容器が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載のような包装容器には、容器本体から蓋材を容易に剥離できるような易開封性がないために、容器を完全に開封して内容物を開口部から使用することは困難である。
【0003】
一方、内容物を搾り出して使用する方法だけでなく、容器を開封して内容物を使用する方法という2つの方法で内容物を使用できる容器が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載のような容器では、内容物を搾り出して使用する際に、蓋材が搾出口を覆うために、蓋材が邪魔となったり、汚れの原因となるなど作業性が悪い。また、これらの容器のうち、搾出口が容器の側方に設けられている容器では、使用後に内容物が液ダレするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−345719号公報
【特許文献2】国際公開第2007/82034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内容物を搾り出して使用する方法と、容器を開封して内容物を使用する方法という2つの方法で内容物を使用できる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような容器を提供するものである。
すなわち、本発明の容器は、内容物が充填された合成樹脂製の容器本体と、蓋材とからなる容器であって、前記容器本体は、上方に開口した開口部と、前記開口部の周縁に形成されたフランジ部とを備え、前記容器本体の側壁部には、上方および内方に開口したポケット部が形成され、前記蓋材は、直線カット性フィルムからなり、前記開口部を塞ぐように、前記フランジ部にヒートシールされており、前記蓋材には、前記容器を前記蓋材側からみた平面視において、前記ポケット部と重なる領域で前記蓋材を切断できるように、切り込み部が設けられ、前記フランジ部には、ヒートシールされたシール部の外側に未シール部が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の容器によれば、容器を蓋材側からみた平面視において、ポケット部と重なる領域まで、蓋材を剥離し、さらに、ポケット部を覆う蓋材をカットすれば、容器本体または蓋材を圧迫することで、ポケット部から内容物を搾り出して使用することができる。この場合において、蓋材は直線カット性フィルムからなるため、例えば力の弱い子供や高齢者でも容易にカットすることができる。また、蓋材を切り込み部から容易に直線的に、且つ適当な位置でカットすることができる。そして、ポケット部を覆う蓋材はカットされているために、内容物を搾り出して使用する際に、蓋材が邪魔となったり、汚れの原因となることがなく、作業性に優れている。また、ポケット部は容器の上方に開口することになるため、内容物を搾り出して使用した後に、内容物が液ダレするといった問題も発生しない。さらに、本発明の容器においては、例えば、ポケット部の巾寸法をその基端(側壁部)から離れるに従い広くなるようにしておけば、蓋材をカットする位置などで、ポケット部の上方の開口の大きさを調整することができ、内容物の搾り出し量を調整することができる。
一方で、フランジ部には、シール部の外側に未シール部が設けられているため、フランジ部および蓋材の未シール部をそれぞれ両手で持つことができ、容器本体から蓋材を容易に剥離できる。そして、容器本体から蓋材を完全に剥離すれば、例えば、被着物(例えば、パンなどの飲食物自体、スプーン、フォーク)を内容物にディッピングするといった方法で、内容物を使用することができる。そのため、本発明の容器は、例えば、大きな果肉のあるようなジャムのように、搾り出し使用に適さない内容物の容器としても好適に用いることができる。
【0008】
また、本発明の他の容器は、内容物が充填された合成樹脂製の容器本体と、蓋材とからなる容器であって、前記容器本体は、上方に開口した開口部と、前記開口部の周縁に形成されたフランジ部とを備え、前記蓋材は、直線カット性フィルムからなり、前記蓋材は、前記開口部を塞ぐように、且つ、前記開口部の周縁から外側に一部突出するようにシールされた突出シール部が形成されるように、前記フランジ部にヒートシールされており、前記突出シール部は、その内側に未シール部を有し、前記蓋材には、前記容器を前記蓋材側からみた平面視において、前記突出シール部と重なる領域で前記蓋材を切断できるように、切り込み部が設けられ、前記フランジ部には、ヒートシールされたシール部の外側に未シール部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の他の容器によれば、容器を蓋材側からみた平面視において、突出シール部と重なる領域まで、蓋材を剥離し、さらに、突出シール部における蓋材をカットすれば、容器本体または蓋材を圧迫することで、突出シール部の先端から内容物を搾り出して使用することができる。この場合において、蓋材は直線カット性フィルムからなるため、例えば力の弱い子供や高齢者でも容易にカットすることができる。また、蓋材を切り込み部から容易に直線的に、且つ適当な位置でカットすることができる。そして、突出シール部における蓋材はカットされているために、内容物を搾り出して使用する際に、蓋材が邪魔となったり、汚れの原因となることがなく、作業性に優れている。また、突出シール部は容器の上方にあるため、内容物を搾り出して使用した後に、内容物が液ダレするといった問題も発生しない。さらに、本発明の他の容器においては、例えば、突出シール部の巾寸法をその基端(側壁部)から離れるに従い広くなるようにしておけば、蓋材をカットする位置などで、突出シール部の先端の大きさを調整することができ、内容物の搾り出し量を調整することができる。
一方で、フランジ部には、シール部の外側に未シール部が設けられているため、フランジ部および蓋材の未シール部をそれぞれ両手で持つことができ、容器本体から蓋材を容易に剥離できる。そして、容器本体から蓋材を完全に剥離すれば、例えば、被着物(例えば、パンなどの飲食物自体、スプーン、フォーク)を内容物にディッピングするといった方法で、内容物を使用することができる。そのため、本発明の他の容器は、例えば、大きな果肉のあるようなジャムのように、搾り出し使用に適さない内容物の容器としても好適に用いることができる。
【0010】
本発明の容器においては、前記ポケット部の深さ寸法は、前記容器本体の中央部の深さ寸法よりも短いことが好ましい。
この発明によれば、内容物を搾り出して使用する際に、ポケット部に残る内容物の量が少なくなる。そのため、容器本体または蓋材の押し込み量に対する内容物の搾り出し量を多くすることができる。
【0011】
本発明の容器においては、前記ポケット部または前記突出シール部の周縁におけるフランジ部の巾寸法が1mm以上20mm以下であることが好ましい。
この発明によれば、ポケット部の周縁におけるフランジ部が一定の大きさを有しているために、このフランジ部で搾り出した内容物を均一に延ばすことができる。
【0012】
本発明の容器においては、前記蓋材は、前記フランジ部に二段階でヒートシールされており、前記フランジ部には、第一シール部と、前記第一シール部よりも低いシール温度でヒートシールされた第二シール部とが形成され、前記第一シール部および前記第二シール部のうちの少なくとも一方には、前記蓋材を容易に開封するための易開封部が設けられており、前記易開封部では、その一部が外側に張り出していることが好ましい。
この発明においては、シール部の一部(易開封部)が外側に張り出している。そして、開封時には、外側に張り出している易開封部に局所的に力が加わるために、この易開封部からは蓋材を容易に開封できる。
【0013】
本発明の容器においては、前記容器本体は、表面層を少なくとも有するシートを成形してなり、前記蓋材は、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有するフィルムからなり、前記フランジ部に現れる容器本体の表面層および前記蓋材のシール層には、それぞれシール部が形成されており、前記容器本体の表面層および前記蓋材のシール層のうちの少なくとも一方が凝集破壊することで、開封可能となることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、容器本体の表面層および蓋材のシール層には、それぞれシール部が形成されている。そのため、高い密封性が維持されるとともに、容器本体の表面層および蓋材のシール層のうちの少なくとも一方が凝集破壊することで、蓋材が開封可能とされるため、容器本体の表面層とこの表面層に隣接する層とを界面剥離させる態様と比較して、初期開封強度も安定し、開封がスムースに進行される。
ここで、容器本体の表面層および蓋材のシール層のうちの少なくとも一方が凝集破壊されるとは、開封に際し、容器本体の表面層または蓋材のシール層が凝集破壊される層となって開封されていくことのみならず、容器本体の表面層と蓋材のシール層の何れも凝集破壊して開封されていく態様も含む。
【0015】
本発明の容器においては、前記フランジ部に有るシール部の内周縁近傍には、前記容器本体の表面層、前記表面層に隣接する層および前記蓋材のシール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が形成されていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、フランジ部に有るシール部の内周縁部近傍には、容器本体の表面層、この表面層に隣接する層および蓋材のシール層の構成樹脂からなる瘤(こぶ)状の樹脂溜まり部が形成されているので、凝集剥離が樹脂溜まり部の介在するところまで進行すると、この樹脂溜まり部の介在により剥離する応力が蓋材を容器本体から引き離す方向に作用することとなり、蓋材と容器本体のフランジ部との切断が良好に行われることとなり、良好な開封性を備えた易開封性の容器となる。
さらに、この樹脂溜まり部を形成することで、蓋材を開けようとする応力(内圧)が集中する樹脂溜まりの付け根(フランジ内周側)と、内圧で蓋材が開封する場合は、最初に破壊される可能性が高い部位を離れさせることができるため、内圧に対し開き難い(以下、「高密封性」ともいう)を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態における容器を示す図であって、蓋材で密封された状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第一実施形態における容器を示す図であって、内容物を搾り出して使用するために、蓋材を開封した状態を示す概略図である。
【図3】本発明の第一実施形態における容器を示す図であって、内容物を搾り出して使用するために、蓋材を開封し、ポケット部を覆う蓋材をカットした状態を示す概略図である。
【図4】本発明の第一実施形態における容器を示す図であって、内容物を使用するために、蓋材を概ね開封した状態を示す概略図である。
【図5】本発明の第一実施形態における容器を蓋材側からみた上面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿って切断した容器の断面図である。
【図7】本発明の第一実施形態における容器の開封開始部近傍を示す部分断面図である。
【図8】本発明の第一実施形態におけるヒートシール工程を示す模式図である。
【図9】本発明の第一実施形態におけるシール盤を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第一実施形態の容器のシール部が初期開封された状態を示す部分断面図である。
【図11】本発明の第一実施形態の容器のシール部が完全に開封された状態を示す部分断面図である。
【図12】本発明の第二実施形態における容器を示す図であって、蓋材で密封された状態を示す概略図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線に沿って切断した容器の断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態の容器のシール部が初期開封された状態を示す部分断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態の容器のシール部が完全に開封された状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
(容器1の構成)
図1から図4は、本発明の容器1の一態様(第一実施形態)を示した概略図である。図1は、蓋材3で密封された状態を示している。図2は、内容物を搾り出して使用するために、開封開始部4から蓋材3を開封した状態を示し、図3は、図2に示すように、蓋材3を開封した後に、ポケット部27を覆う蓋材3をカットした状態を示している。図4は、内容物を使用するために、蓋材3を概ね開封した状態を示している。また、図5は、第一実施形態における容器を蓋材側からみた上面図であり、図6は、図5におけるVI−VI線に沿って切断した容器の断面図である。さらに、図7は、図1の開封開始部4近傍の部分断面図である。
【0019】
容器1は、容器本体2およびフィルム状の蓋材3を備えている。容器本体2には、開口部24に対して蓋材3を載置して、容器本体2の開口部24の周縁に配設されたフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして、シール部26が形成され、図1に示すように、容器1の内部が密封状態とされる。なお、容器本体2の側壁部には、上方および内方に開口したポケット部27が形成されている。
一方、密封状態の容器1を開封するには、図2に示すように、容器1に設けられた開封開始部4において蓋材3を上部(図2の矢印方向)に引き上げるようにすれば、容器1が簡便に開封される。
【0020】
そして、容器1の内容物を使用する方法としては、次の2つの方法を採用することができる。
すなわち、図2に示すように、容器1を蓋材3側からみた平面視において、ポケット部27と重なる領域まで、容器本体2から蓋材3を剥離した後に、図3に示すように、ポケット部27を覆う蓋材3をカットする。また、蓋材3をカットしつつ、図3に示すような状態となるよう、蓋材3を剥離してもよい。このようにすれば、容器本体2または蓋材3を圧迫することで、ポケット部27から内容物を搾り出して使用することができる。
一方、図4に示すように、容器本体2から蓋材3を概ね剥離する。このようにすれば、例えば、被着物を内容物にディッピングするといった方法で、内容物を使用することができる。
【0021】
(容器本体2の構成)
容器本体2には、図1、図5および図6に示すように、所定の深さを有する略長方形の内容物の収納部が設けられ、容器本体2の側壁部には、上方および内方に開口したポケット部が形成されている。また、容器本体2は、ポケット部27の部分が一部突出した略長方形状の開口部24を有し、開口部24の周縁には、外側に張り出すようにフランジ部25が配設されている。なお、図6に示すように、ポケット部27の深さ寸法は、容器本体2の中央部の深さ寸法よりも短くなっている。また、ポケット部27の底部は傾斜しており、ポケット部27の深さ寸法は、容器本体2の側壁部から離れるに従って短くなっている。
また、ポケット部27の周縁におけるフランジ部25の巾寸法は、1mm以上20mm以下の範囲となっている。
【0022】
このような容器本体2は、図7に示すように、表面層21、表面下層22および基材層23の少なくとも3層からなる多層シートを成形して得られる。
この多層シートの硬さは、片手で押して内容物を押し出せる硬さであれば特に制限はない。
また、この多層シートの層構成については、特に限定はないが、基材層23に接着層およびガスバリア層を有する構造を採用することが好ましい。この接着層およびガスバリア層としては、特に制限はなく、それぞれ接着性を有する樹脂からなる層、およびガスや水蒸気の難透過性を有する樹脂からなる層であればよい。
この多層シートの厚みは20μm以上2000μm以下の範囲であればよいが、容器などに成形する用途としての多層シートの厚みは100μm以上2000μm以下の範囲が好ましい。
【0023】
ここで、本実施形態においては、後記する図10に示すが、容器本体2の表面層21が凝集破壊される凝集剥離により開封される。
表面層21を構成可能な樹脂は、例えば、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体やスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくとも一つを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物が挙げられる。この場合にあっては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体やスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上50質量部以下の範囲、特に好ましくは15質量部以上40質量部以下の範囲で添加するようにすればよい。表面層の厚みは5μm以上500μm以下の範囲であることが好ましく、10μm以上300μm以下の範囲であることがより好ましい。
【0024】
容器本体2を構成する表面下層22は、表面層21の下に、この表面層21に隣接されて配される層である。この層の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂などの材料、および、これらのブレンド材料を用いることができる。
【0025】
容器本体2を構成する基材層23は、容器本体2の外部に現れる層である。この層の構成材料としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂などの材料、および、これらのブレンド材料の単層または積層体や、また、ガスバリア性を付与すべく、例えばエチレンビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などの樹脂材料やアルミ蒸着などで形成されたガスバリア層を形成する樹脂などを使用することができる。
【0026】
また、前記接着層としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどを含有する樹脂からなる層が挙げられる。
前記ガスバリア層としては、ナイロン(NY)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などからなる層が挙げられる。
【0027】
(蓋材3の構成)
蓋材3は、直線カット性を有し、且つ、図7に示すように、容器1の外部に現れる外層32と、容器本体2の表面層21とヒートシールされるシール層31を少なくとも有する直線カット性フィルムからなる。
この直線カット性フィルムは、少なくとも直線カット性をもつ層と、シール層31とを有するものであればよい。また、直線カット性フィルムは、外層32が直線カット性をもつ層である場合には、外層32およびシール層31の2層からなるものであってもよい。さらに、直線カット性フィルムは、外層32およびシール層31以外に、直線カット性をもつ層を有するものであってもよい。直線カット性フィルムの厚みは60μm以上200μm以下の範囲であることが好ましい。
【0028】
蓋材3を構成するシール層31の構成材料としては、容器本体2の表面層21が凝集破壊して剥離する開封態様で、表面層21を構成する樹脂として前記した樹脂組成物を採用する場合にあっては、ランダムポリプロピレン(RPP)やブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレンなどを使用することができる。シール層31の厚みは50μm以上100μm以下の範囲であることが好ましい。
【0029】
蓋材3を構成する外層32は、直線カット性フィルムを2層構成にできるという観点から、直線カット性をもつ層であることが好ましい。なお、直線カット性をもつ層は、例えば一軸延伸または二軸延伸法で好適に製造される。このような外層32の構成材料としては、特に制限はないが、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy)などを使用することができる。直線カット性を有する外層32の厚みは10μm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。
【0030】
なお、このような表面層21を容器本体2に、またシール層31を蓋材3に採用して両者をヒートシールした場合にあっては、両層21,31が融着する一方、開封の際には、応力に対して弱い容器本体2の表面層21が凝集剥離して、開封が良好に行われることになる。
【0031】
(樹脂溜まり部6の形成)
本実施形態の容器1は、図7に示すように、フランジ部25上に有るシール部の内周縁近傍(図2のXの位置)に、容器本体2の表面下層22、表面層21および蓋材3のシール層31が、容器本体2の開口部24方向に押し出されるようにして、瘤(こぶ)状の樹脂溜まり部6が形成されている。
図7に示すように、樹脂溜まり部6は、容器本体2の表面層21の樹脂溜まり61、表面下層22の樹脂溜まり62、および蓋材3のシール層31樹脂溜まり63が集まって形成されているが、容器本体2の表面層21が凝集剥離される開封形態の容器1にこのような樹脂溜まり部6を形成させることにより、包装容器として高い密封性を備えた上で、凝集剥離による開封形態を採用して易開封性を良好な状態で維持するとともに、この樹脂溜まり部6における蓋材3と容器本体2のフランジ部25との切断が簡便に行われるとともに、内圧による応力がかかる向きと凝集破壊による開封しやすい向きを異ならせることにより、密封性の向上を実現することとなる。
【0032】
ここで、容器1を製造するにあって、容器本体2のフランジ部25と蓋材3とを融着して容器1を密封状態とするには、容器本体2のフランジ部25に蓋材3を重ね合わせ、この蓋材3の上面から、加熱状態のシール盤を押圧することによりヒートシールが実施されるのであるが、前記したような、開封開始部4のシール部の内周縁近傍Xに瘤状の樹脂溜まり部6を形成するには、例えば、下記のような方法を用いればよい。
【0033】
図8は、本実施形態の容器1を製造する場合における開封開始部4のシール工程を示した模式図である。
容器本体2のフランジ部25と蓋材3とのヒートシールは、図8に示すように、容器本体2のフランジ部25に蓋材3を重ね合わせ、この蓋材3の上部から、加熱状態のシール盤7を図7の矢印方向に押圧することにより実施される。これにより、容器本体2のフランジ部25に現れた表面層21と蓋材3のシール層31が融着される。
【0034】
また、図9は、本実施形態におけるシール盤7の部分拡大断面図である。
本実施形態の容器1を製造するために使用されるシール盤7は、フランジ部上面に対して、内周縁にR加工が施され、外周縁がシール盤7の先端(図9の先端73)より遅れて蓋材3に当たるようにされた形状のシール盤7であり、具体的には、境界A(シール盤7の先端73でもある)を介して、外周縁側には、断面が傾斜状となる傾斜面部71が、また、内周縁側には、R加工されて断面が曲面状の曲面部72が連続して形成されている。
【0035】
このうち、シール盤7の外周縁側に形成される傾斜面部71における、図9のようにフランジ部25に対して内周縁から外周縁に向かって形成されることとなる角度(θ)はシール盤7の巾Hによって異なるが、2°以上20°以下の範囲、好ましくは3°以上15°以下の範囲に設定することが好ましい。
この傾斜面部71の角度が2°より小さいと、ヒートシール時に押圧した場合であっても、前記した図7に示すような樹脂溜まり部6が、シール部26の外周縁近傍にも形成され易くなり、得られた容器1の開封時におけるシール部26外側で抵抗が大きくなり、容器1の開封を円滑に行うことが困難となる。一方、傾斜面部71の角度が20°を超えると、境界Aの周辺がなだらかでなく尖ってしまい、シール時若しくは開封時に蓋材3が切断されてしまう場合があり、易開封性が損なわれるおそれがある。
【0036】
ここで、シール盤7に対して、これら傾斜面部71および曲面部72は、境界Aがシール盤7の断面巾方向に対して内側寄り(内周縁寄り)となるように形成されることが好ましい。境界Aがシール盤7の断面巾方向に対して内側であれば、シール盤7の内周縁側に曲面部72、このシール盤7の外周縁側に傾斜面部71が形成されていることも相俟って、ヒートシールに際してシール盤7の外周縁側より先端73が先に蓋材3と接すること(シール盤7の外周縁が先端73より蓋材3に遅れて接すること)が確実になされ、先に接した内周縁側の開口部24側に対して樹脂溜まり部6が、内側に選択的に形成されることになる。
【0037】
図8および図9に示した形状のシール盤7を用いて、容器本体2のフランジ部25と蓋材3をヒートシールするには、まず、シール盤7における傾斜面部71と曲面部72との境界Aに対応する先端73が蓋材3に接し、その後、この境界Aの内周縁側に形成された曲面部72が蓋材3の内側に向かって、また、境界Aの外周縁側に形成された傾斜面部71が蓋材3の外側に向かって押圧していく。これにより、容器本体2の表面層21とこの表面層21と隣接する表面下層22の樹脂成分は、前記の境界Aの下部から容器本体2の内側に押し出され、フランジ部25のシール盤7の内周縁が接する位置の近傍、すなわち、容器本体2のシール部26の内周縁近傍Xに盛り上がった瘤状の樹脂溜まり61,62を形成し、また、蓋材3のシール層31も追随して樹脂溜まり63を形成して、これらが樹脂溜まり部6を形成した状態で、容器本体2のフランジ部25に現れた表面層21と、蓋材3のシール層31とがヒートシールされ、両者が融着されることになる。
【0038】
ここで、シール条件として、シール温度としては、ヒートシールされる材料の種類などにより適宜決定すればよいが、一般に、160℃以上240℃以下の範囲とすればよい。同様に、シール圧力は、10kg/cm以上50kg/cm以下の範囲(100kPa以上500kPa以下の範囲)とすればよい。
【0039】
(易開封部の形成)
本実施形態の容器1では、シール部の一部が外側に突起状に張り出しており、他の部分よりも開封がしやすい易開封部(図示しない)が形成されている。開封時には、外側に張り出している易開封部に局所的に力が加わるために、この易開封部からは蓋材を容易に開封できる。このような易開封部を、開封開始部4とすれば、蓋材3を容易に開封できる。このような易開封部を形成するには、例えば、下記のような方法を用いればよい。
【0040】
シール盤7により、前述した瘤状の樹脂溜まり部6を形成しながら、蓋材3のシール層31をフランジ部25の表面層21にヒートシールして第一シール部(図示しない)を形成する。その後、他のシール盤(図7のシール盤7a)を用いて、樹脂溜まり部6に、このシール盤7aが当たらず、かつ、第一シール部の外周側に当たるように押圧して、容器本体2の表面層21と蓋材3のシール層31をヒートシールして第二シール部(図示しない)を形成する。
ここで、第二シール部を形成する際のシール温度は、第一シール部を形成する際のシール温度よりも低く(より好ましくは20℃以上低く、特に好ましくは40以上低く)しておく。具体的には、第一シール部を形成する際のシール温度を160℃以上240℃以下の範囲(より好ましくは、180℃以上200℃以下の範囲)とすればよい。また、第二シール部を形成する際のシール温度を130℃以上150℃以下の範囲(より好ましくは、135℃以上140℃以下の範囲)とすればよい。
なお、第一シール部を形成する際に用いるシール盤7には、外側に突起状に張り出した部分を設けておき、この部分が第二シール部の外側に張り出すように、第二シール部を形成する。このようにして、シール部の一部に、易開封部を形成することができる。また、以上のような方法では、シール部の一部に、第一シール部が第二シール部の外側に張り出している部分を設けており、この部分(易開封部)では他の部分と比較してシール樹脂の溶出が大きいことから、比較的に剥離がしやすくなっている。このように、易開封部ではより開封しやすい構成となっている。
【0041】
(容器1の開封)
図10は、本実施形態の容器1が初期開封された状態を示した断面図であり、図11は、この容器1が完全に開封された状態を示した断面図である。
なお、ここでいう「初期開封された状態」とは、凝集剥離された剥離面が樹脂溜まり部6まで達していない状態を指す。
【0042】
前記のようにして、容器本体2のフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして得られた本実施形態の容器1を開封開始部4から開封するために、図10に示すように、蓋材3に対して図10の矢印方向に力Fがかかった場合には、容器本体2の表面層21の凝集剥離が進行する。
また、この凝集剥離が樹脂溜まり部6に達したところにおいては、表面層21の凝集剥離は、この表面層21と隣接する表面下層22に形成された樹脂溜まり62の形状に沿って進行されることになる。
【0043】
そして、表面層21の凝集剥離が、シール部の内周縁近傍(切断位置にもなる)Xにまで達したら、蓋材3のシール層31に形成された樹脂溜まり63の形状に追随するようにして、容器本体2の表面層21の樹脂溜まり61が切断されることにより、容器1における容器本体2と蓋材3との開封が容易に行われることになる。
【0044】
(本実施形態の効果)
前記したような第一実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)容器1を蓋材3側からみた平面視において、ポケット部27と重なる領域まで、蓋材3を剥離し、さらに、ポケット部27を覆う蓋材3をカットすれば、容器本体2または蓋材3を圧迫することで、ポケット部27から内容物を搾り出して使用することができる。この場合において、蓋材3は直線カット性フィルムからなるため、例えば力の弱い子供や高齢者でも容易にカットすることができる。また、蓋材3を切り込み部33から容易に直線的に、且つ適当な位置でカットすることができる。そして、ポケット部27を覆う蓋材はカットされているために、内容物を搾り出して使用する際に、蓋材3が邪魔となったり、汚れの原因となることがなく、作業性に優れている。また、ポケット部27は容器の上方に開口することになるため、内容物を搾り出して使用した後に、内容物が液ダレするといった問題も発生しない。さらに、図1に示すように、ポケット部27の巾寸法はその基端(側壁部)から離れるに従い広くなるようにしてあるため、蓋材3をカットする位置などで、ポケット部27の上方の開口の大きさを調整することができ、内容物の搾り出し量を調整することができる。
【0045】
(2)フランジ部25には、シール部26の外側に未シール部が設けられているため、フランジ部25および蓋材3の未シール部をそれぞれ両手で持つことができ、容器本体2から蓋材3を容易に剥離できる。そして、容器本体2から蓋材3を完全に剥離すれば、例えば、被着物を内容物にディッピングするといった方法で、内容物を使用することができる。そのため、容器1は、例えば、大きな果肉のあるようなジャムのように、搾り出し使用に適さない内容物の容器としても好適に用いることができる。
【0046】
(3)容器1においては、ポケット部27の深さ寸法は、容器本体2の中央部の深さ寸法よりも短いことにより、内容物を搾り出して使用する際に、ポケット部27に残る内容物の量が少なくなる。そのため、容器本体2または蓋材3の押し込み量に対する内容物の搾り出し量を多くすることができる。
【0047】
(4)容器1においては、ポケット部27の周縁におけるフランジ部25の巾寸法が1mm以上20mm以下であることにより、ポケット部27の周縁におけるフランジ部25が一定の大きさを有しているために、このフランジ部25で搾り出した内容物を均一に延ばすことができる。
【0048】
(5)容器1においては、シール部26の一部に、第一シール部(図示しない)が第二シール部(図示しない)の外側に張り出している易開封部を設けている。そして、開封時には、外側に張り出している易開封部に局所的に力が加わるために、この易開封部からは蓋材3を容易に開封できる。また、この易開封部では他の部分と比較してシール樹脂の溶出が大きいことから、比較的に剥離がしやすくなっており、より開封しやすい構成となっている。
【0049】
(6)容器1が、開口部24の周縁にフランジ部25を配設する容器本体2と、この容器本体2のフランジ部25と蓋材3がヒートシールされてなるので、高い密封性が維持されるとともに、容器本体2の表面層21が凝集破壊することで、蓋材3が開封可能とされるため、容器本体2の表面層21とこの表面層21に隣接する表面下層22とを界面剥離させる態様と比較して、初期開封強度も安定し、開封がスムースに進行される。また、開封時に、樹脂溜まり部6にある表面層21が伸びて、容器1の開封外観が悪くなるという問題の発生を防止することができる。
【0050】
(7)フランジ部25のシール部26の内周縁近傍Xには、容器本体2の表面層21、この表面層21に隣接する表面下層22および蓋材3のシール層31の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部6が形成されているので、高密封性を確保できる。
【0051】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図12および図13を用いて説明する。
図12は、本発明の第二実施形態における容器を示す図であって、蓋材で密封された状態を示す概略図である。図13は、図12におけるXIII−XIII線に沿って切断した容器の断面図である。
【0052】
第二実施形態では、容器本体2の形状が異なる以外は第一実施形態と同様の構成であるので、容器本体2の形状のみを説明する。
容器本体2には、図12および図13に示すように、所定の深さを有する略長方形の内容物の収納部が設けられている。
そして、容器本体2には、開口部24に対して蓋材3を載置して、第一実施形態と同様のシール盤7を用いて、容器本体2の開口部24の周縁に配設されたフランジ部25と蓋材3とをヒートシールして、シール部26が形成され、図12に示すように、容器1Aの内部が密封状態とされる。
上記のように、第一実施形態とは容器本体2の形状が異なるにも拘わらず、第一実施形態と同様のシール盤7を用いて、ヒートシールしたために、次のようになる。つまり、蓋材3は、開口部24を塞ぐように、且つ、開口部24の周縁から外側に一部突出するようにシールされた突出シール部Sが形成されるように、フランジ部25にヒートシールされる。そして、この突出シール部Sは、図12に示すように、その内側に未シール部を有している。また、突出シール部Sの巾寸法は、シール部26の巾寸法と同じである。
【0053】
そして、容器1Aの内容物を使用する方法としては、次の2つの方法を採用することができる。
すなわち、容器1Aを蓋材3側からみた平面視において、突出シール部Sと重なる領域まで、容器本体2から蓋材3を剥離した後には、突出シール部Sにおける蓋材3をカットする。このようにすれば、容器本体2または蓋材3を圧迫することで、突出シール部Sの先端から内容物を搾り出して使用することができる。
一方、容器本体2から蓋材3を概ね剥離すれば、例えば、被着物を内容物にディッピングするといった方法で、内容物を使用することができる。
【0054】
このように、第二実施形態の構成の包装容器においても、前述の第一実施形態の効果(2)および(4)から(7)までと同様の効果、並びに下記効果(8)を奏することができる。
(8)容器1Aを蓋材3側からみた平面視において、突出シール部Sと重なる領域まで、蓋材3を剥離し、さらに、突出シール部Sにおける蓋材3をカットすれば、容器本体2または蓋材3を圧迫することで、突出シール部Sの先端から内容物を搾り出して使用することができる。この場合において、蓋材3は直線カット性フィルムからなるため、例えば力の弱い子供や高齢者でも容易にカットすることができる。また、蓋材3を切り込み部33から容易に直線的に、且つ適当な位置でカットすることができる。そして、突出シール部Sにおける蓋材3はカットされているために、内容物を搾り出して使用する際に、蓋材3が邪魔となったり、汚れの原因となることがなく、作業性に優れている。また、突出シール部Sは容器の上方にあるため、内容物を搾り出して使用した後に、内容物が液ダレするといった問題も発生しない。さらに、図12に示すように、突出シール部Sの巾寸法はその基端(側壁部)から離れるに従い広くなるようにしてあるため、蓋材3をカットする位置などで、突出シール部Sの先端の大きさを調整することができ、内容物の搾り出し量を調整することができる。
【0055】
[実施形態の変形]
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造および形状などは、本発明の目的および効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状などとしても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0056】
例えば、前記第一実施形態では、容器本体2の表面層21が凝集剥離する態様を示したが、図14および図15に示すように、容器本体2と蓋材3が開封するに際して、蓋材3のシール層31が凝集剥離する態様であってもよい。
また、本発明にあっては、開封に際し、容器本体2の表面層21と蓋材3のシール層31の両層が凝集破壊されて開封される場合も含む。更には、容器本体2の表面層21と、表面下層22が同一部材である場合でも、前記同一部材が蓋材3のシール層31とヒートシール可能で、蓋材3を開封する際に、蓋材3のシール層31が凝集破壊する場合は、前述した本発明の効果が期待できるため、本発明に含まれる。
また、前記第一実施形態では、易開封部の形成にあたり、第一シール部を形成した後に、第二シール部を形成したが、これに限定されない。例えば、シール盤7aにより、第二シール部を形成した後に、シール盤7の外周端を第二シール部の内周端より内側に当たるように押圧して、容器本体2の表面層21と蓋材3のシール層31をヒートシールして第一シール部を形成してもよい。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
下記の材料および方法を用いて、全体形状を図1に示す本発明の容器を製造した。
ディストリビューター方式共押出し多層シート製造装置を用いて、下記に示す表面層21/表面下層22/基材層23をこの順で備える、厚さが300μmの多層シートを成形した。
表面層21:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)70質量%と、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(日本ポリエチレン社製、製品名「レクスパール ET220X」)30質量%とを混合したものからなる層(厚み:30μm)
表面下層22:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)80質量%と、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、製品名「R−300」)20質量%とを混合したものからなる層(厚み:50μm)
基材層23:ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)80質量%と、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、製品名「R−300」)20質量%とを混合したものからなる層(厚み:75μm)/接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三菱化学社製、製品名「モディックAP P604」)からなる層(厚み:5μm)/エチレンビニルアルコール(EVOH、クラレ社製、製品名「エバールJ」)からなる層(厚み:10μm)/接着性樹脂(無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三菱化学社製、製品名「モディックAP P604」)からなる層(厚み:5μm)/ポリプロピレン(プライムポリマー社製、製品名「E−105GM」)80質量%と、ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製、製品名「R−300」)20質量%とを混合したものからなる層(厚み:125μm)をこの順で備える積層体
【0059】
次に、この多層シートを用いて、プラグアシスト真空成形により、大きさが44mm×57mm×13.5mmのフランジ付の容器本体2を成形した。なお、容器本体2は、ポケット部27の部分が一部突出した略長方形状の開口部24を有し、開口部24の周縁には、外側に張り出すようにフランジ部25が配設されている。また、ポケット部27の周縁におけるフランジ部25の巾寸法(最短となる部分の巾寸法)は5mmとなっている。
【0060】
このようにして得られた容器本体2に内容物(14gのイチゴジャム、または14gのトマトケチャップ)を投入し、その後、開口部24周縁のフランジ部25に対して、下記に示す外層32/シール層31をこの順で備える多層フィルムを蓋材3として載置した。
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学製、製品名「テックバリア」、厚み:12μm)/直線カット性PETフィルム(ユニチカ製、製品名「エンブレム」、厚み:12μm)をこの順で備える積層体
シール層31:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、出光ユニテック社製、製品名「LS700C」、厚み:50μm)
【0061】
そして、シール盤として、傾斜面部71と曲面部72が全周に形成された下記のシール盤(シールリング)を使用して、下記のシール条件により、蓋材3および容器本体2のフランジ部25に対してヒートシールをした。その後、図1に示すように、蓋材3には、ポケット部27の先端T1からの容器長辺方向における距離が2mmとなる位置に、切り込み部33を設けた。
(シール盤の仕様)
シール巾:2mm
シール面における傾斜角度θ(傾斜面部71):9°
シール面におけるR加工(曲面部72)の曲率半径R:1.0mm
(シール条件)
シール温度:200℃
シール圧力:160kg/個
シール時間:1.2秒
【0062】
[実施例2]
実施例1と同様の材料および方法を用いて、全体形状を図12に示す本発明の容器を製造した。なお、容器本体2の突出シール部Sの周縁におけるフランジ部25の巾寸法(最短となる部分の巾寸法)は5mmとなっている。また、蓋材3には、突出シール部Sの先端T2からの容器長辺方向における距離が2mmとなる位置に、切り込み部33を設けている。
【0063】
[比較例1]
下記に示す外層32/シール層31をこの順で備える多層フィルムを蓋材3として用いたこと、および、切り込み部を容器本体2のフランジ部25にも設けた以外は実施例1と同様にして、容器を製造した。なお、比較例1で得られた容器は、容器本体2のフランジ部25もカットして、内容物を搾り出すことを前提としている。
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学製、製品名「テックバリア」、厚み:12μm)
シール層31:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、出光ユニテック社製、製品名「LS700C」、厚み:50μm)
【0064】
[比較例2]
下記に示す外層32/シール層31をこの順で備える多層フィルムを蓋材3として用いた以外は実施例1と同様にして、容器を製造した。
外層32:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学製、製品名「テックバリア」、厚み:12μm)
シール層31:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、出光ユニテック社製、製品名「LS700C」、厚み:50μm)
【0065】
[容器の評価]
実施例および比較例で得られた容器について、開封性、搾り出し口のばらつき、搾り出し性、および、搾り出し後の液ダレを下記の方法にて測定または評価した。
(開封性)
蓋材を切り込み部からカットしつつ、容器を開封し、そのときに開封感を以下の基準に基づいて評価した。試験は、n=5で行った。
◎:蓋材を手で簡単にカットすることができ、容器を開封も良好である。
○:容器を開封は良好である。
評価結果については、実施例1および2で得られた容器の評価は「◎」であったのに対し、比較例1および2で得られた容器の評価は「○」であった。なお、比較例1で得られた容器については、容器本体を切り込み部からカットすることを試みたが、容器本体を手でカットすることはできなかった。
【0066】
(搾り出し口のばらつき)
蓋材を切り込み部からカットしつつ、容器を開封したものを試料とした。そして、試料について、ポケット部27の先端T1からの容器長辺方向における距離、或いは、突出シール部Sの先端T2からの容器長辺方向における距離を測定した。試験は、n=5で行い、試験の平均値や標準偏差を求めた。評価結果を表1に示す。なお、比較例1で得られた容器は、容器本体2のフランジ部25もカットして、内容物を搾り出すことを前提としているので、この試験は行わなかった。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示す結果からも明らかなように、実施例で得られた容器では、搾り出し口のばらつきが少なく、容易に蓋材をカットできることが確認された。これに対し、蓋材が直線カット性を有していない比較例2で得られた容器では、搾り出し口のばらつきが大きくなることが確認された。
【0069】
(搾り出し性)
蓋材を切り込み部からカットしつつ、容器を開封したもの(内容物は14gのケチャップ)を試料とした。なお、比較例1で得られた容器については、ポケット部27の先端T1からの容器長辺方向における距離が2mmとなる位置で、蓋材3および容器本体2のフランジ部25をカットしたものを試料とした。そして、試料から、塗布長さが5cmとなるよう、内容物を搾り出して塗布し、これを3回繰り返した。塗布巾をそれぞれ測定して平均値を求めた。試験は、n=5で行い、試験の平均値や標準偏差を求めた。評価結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
表2に示す結果からも明らかなように、実施例で得られた容器では、内容物を搾り出した際の塗布巾のばらつきが少なく、搾り出し性が優れることが確認された。これに対し、蓋材が直線カット性を有していない比較例2で得られた容器では、内容物を搾り出した際の塗布巾のばらつきが大きくなり、また、塗布巾が必要以上に広くなることが確認された。
【0072】
(搾り出し後の液ダレ)
蓋材を切り込み部からカットしつつ、容器を開封したもの(内容物は14gのイチゴジャム)を試料とした。なお、比較例1で得られた容器については、ポケット部27の先端T1からの容器長辺方向における距離が2mmとなる位置で、蓋材3および容器本体2のフランジ部25をカットしたものを試料とした。そして、試料から、塗布長さが5cmとなるよう、内容物を搾り出して塗布し、これを3回繰り返した。その後、常温(温度20℃)にて1時間放置した際の容器周辺への液ダレの有無を評価した。なお、容器周辺への液ダレがある場合には「×」と判定し、容器周辺への液ダレがない場合には「○」と判定した。試験は、n=5で行った。評価結果を表3に示す。
【0073】
【表3】

【0074】
表3に示す結果からも明らかなように、実施例で得られた容器では、容器周辺への液ダレがないことが確認された。これに対し、容器本体2のフランジ部25もカットされ、搾り出し口が容器の側面にある比較例1で得られた容器では、搾り出し口から内容物が容器周辺へ液ダレすることが確認された。また、蓋材が直線カット性を有していない比較例2で得られた容器では、蓋材に付着していた内容物が容器周辺へ液ダレすることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の容器は、飲食物、化粧品、薬品などの内容物の容器に好適に用いることができる。そして、この内容物としては、より具体的には、マヨネーズ、ケチャップ、マスタード、バター、蜂蜜、ジャムなどが挙げられる。また、この内容物の形状としては、液状、ペースト状、粉状、顆粒状、粒状などが挙げられる。
【符号の説明】
【0076】
1,1A…容器
2…容器本体
21…表面層
22…表面下層
24…開口部
25…フランジ部
26…シール部
27…ポケット部
3…蓋材
31…シール層
33…切り込み部
6…樹脂溜まり部
61…樹脂溜まり(容器本体2の表面層21)
62…樹脂溜まり(容器本体2の表面下層22)
63…樹脂溜まり(蓋材3のシール層31)
S…突出シール部
X…シール部の内周縁近傍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された合成樹脂製の容器本体と、蓋材とからなる容器であって、
前記容器本体は、上方に開口した開口部と、
前記開口部の周縁に形成されたフランジ部とを備え、
前記容器本体の側壁部には、上方および内方に開口したポケット部が形成され、
前記蓋材は、直線カット性フィルムからなり、前記開口部を塞ぐように、前記フランジ部にヒートシールされており、
前記蓋材には、前記容器を前記蓋材側からみた平面視において、前記ポケット部と重なる領域で前記蓋材を切断できるように、切り込み部が設けられ、
前記フランジ部には、ヒートシールされたシール部の外側に未シール部が設けられている
ことを特徴とする容器。
【請求項2】
内容物が充填された合成樹脂製の容器本体と、蓋材とからなる容器であって、
前記容器本体は、上方に開口した開口部と、
前記開口部の周縁に形成されたフランジ部とを備え、
前記蓋材は、直線カット性フィルムからなり、
前記蓋材は、前記開口部を塞ぐように、且つ、前記開口部の周縁から外側に一部突出するようにシールされた突出シール部が形成されるように、前記フランジ部にヒートシールされており、前記突出シール部は、その内側に未シール部を有し、
前記蓋材には、前記容器を前記蓋材側からみた平面視において、前記突出シール部と重なる領域で前記蓋材を切断できるように、切り込み部が設けられ、
前記フランジ部には、ヒートシールされたシール部の外側に未シール部が設けられている
ことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1に記載の容器において、
前記ポケット部の深さ寸法は、前記容器本体の中央部の深さ寸法よりも短い
ことを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の容器において、
前記ポケット部または前記突出シール部の周縁におけるフランジ部の巾寸法が1mm以上20mm以下である
ことを特徴とする容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の容器において、
前記蓋材は、前記フランジ部に二段階でヒートシールされており、
前記フランジ部には、第一シール部と、前記第一シール部よりも低いシール温度でヒートシールされた第二シール部とが形成され、
前記第一シール部および前記第二シール部のうちの少なくとも一方には、前記蓋材を容易に開封するための易開封部が設けられており、前記易開封部では、その一部が外側に張り出している
ことを特徴とする容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の容器において、
前記容器本体は、表面層を少なくとも有するシートを成形してなり、
前記蓋材は、前記表面層と接着可能なシール層を少なくとも有するフィルムからなり、
前記フランジ部に現れる容器本体の表面層および前記蓋材のシール層には、それぞれシール部が形成されており、
前記容器本体の表面層および前記蓋材のシール層のうちの少なくとも一方が凝集破壊することで、開封可能となる
ことを特徴とする容器。
【請求項7】
請求項6に記載の容器において、
前記フランジ部に有るシール部の内周縁近傍には、前記容器本体の表面層、前記表面層に隣接する層および前記蓋材のシール層の構成樹脂からなる瘤状の樹脂溜まり部が形成されている
ことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−10557(P2013−10557A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145866(P2011−145866)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】