説明

容器

【課題】蓋体が容器本体の内側に嵌る構造の容器において、使用時に容易に無理なく蓋体を取り外すことができる簡便な構造を備えた容器を提供する。
【解決手段】上面11が開口して開口縁部12を形成した容器本体10と、蓋面部36とその外周を囲む蓋縁部32を備え開口縁部に対して内嵌合する内嵌合溝部34を形成した蓋体30とを備えた容器1であって、蓋縁部の蓋鍔部33に外側に向けて上側に反りあがった板状体51である押下操作部50が突設され、内嵌合溝部が開口縁部の内側に嵌合して容器本体に蓋体が合着した状態において、押下操作部が押し下げることによって押下操作部が開口縁部の容器鍔部13の上端部20に当接してこれが押し下げ、容器本体と蓋体との合着を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関し、特に蓋体が容器本体の内側と嵌合する容器における蓋体の開封を容易にする構造を備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、惣菜や弁当等の食品、その他の加工食品類を収容する包装用容器においては、ともに合成樹脂シート製の容器本体に蓋体を重ね合わせた形態の容器が一般的である(例えば、特許文献1、2等参照)。特許文献等に例示される形態の容器では、蓋体の外周部分は容器本体の周囲よりも大きく形成される。容器本体の開口部に形成された縁部(フランジ部)の外側から蓋体側の縁部(フランジ部、スカート部等)が被さる。
【0003】
当該構成の容器において容器本体と蓋体の分離を防止し、しかも内容物の乾燥や漏出を極力抑制するため、容器本体に蓋体を重ね合わせた後にラップフィルムにより双方を完全に被覆する手法が多用されている。特に、コンビニエンスストア等で販売される弁当類に多く見られる。事後的にラップフィルムで被覆されるため、従来のテープ類を用いた容器本体と蓋体との封止に比べて衝撃に強く、取り扱い時等の利便性は高い。
【0004】
蓋体が容器本体に被さり封止する容器の場合、蓋体側の縁部は容器本体の縁部よりも下方側に垂れ下がる形態が多い。このため、容器外側の周囲に蓋体側の縁部による空間が不可避的に生じる。また、コンビニエンスストア等で販売される弁当類は、蓋体を容器本体に被せたまま容器ごと電子レンジにより加熱される。当然、水蒸気が内部の食品から発生する。従前の容器では、蓋体が容器本体に被さり封止する構造であるため、発生した水蒸気は逃げ道を探し蓋体の縁部を伝い容器外部へ吹き出すこともある。そうすると、水蒸気に流れに伴う内容物の液漏れにより見た目を損なう点が指摘されていた。
【0005】
これらの点を改善するべく、蓋体が容器本体の開口部に形成された縁部よりも内側に収容される封止構造が提案されている。当該構造によると、食品から発生した水蒸気は蓋体周囲の縁部と容器本体開口部の縁部の隙間から吹き出す。つまり、最短距離で水蒸気が逃げるため、容器の見た目を損なう点は改善される。
【0006】
ところが、蓋体が容器本体の内側に嵌る構造の場合、蓋体は専ら容器本体側にはめ込まれているため、蓋体を取り出すようにして開封することは必ずしも容易ではない。そのため、蓋体をつまみ上げたり持ち上げたりすることになる。特に蓋体の嵩が低い場合には持ち難く、蓋体を簡単に取り外すことができず不便さを伴う場合がある。
【0007】
従来の蓋体が容器本体に被さり封止する容器にあっては、蓋体の一部に膨出部を設けた容器が提案されており、同膨出部を操作することにより蓋体を取り外しやすくすることができる(特許文献3等参照)。しかしながら、蓋体が容器本体の内側に嵌る構造の容器の場合、喫食時に容易に無理なく蓋体を取り外すことができる便利な構造が存在しないことから、その登場が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−218213号公報
【特許文献2】特開平11−79211号公報
【特許文献3】特開2005−247320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、蓋体が容器本体の内側に嵌る構造の容器において、使用時に容易に無理なく蓋体を取り外すことができる簡便な構造を備えた容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、上面が開口して開口縁部を形成した容器本体と、蓋面部と該蓋面部の外周を囲む蓋縁部を備えるとともに前記蓋縁部に前記容器本体の前記開口縁部に対して内嵌合する内嵌合溝部を形成した蓋体とを備えた容器であって、前記蓋縁部に該蓋体の外側に向けて押下操作部が突設され、前記内嵌合溝部が前記開口縁部の内側に嵌合して前記容器本体に前記蓋体が合着した状態において、前記押下操作部が押し下げられることによって前記押下操作部が前記容器本体の前記開口縁部の上端部に当接して該上端部が押し下げられ、前記容器本体と前記蓋体との合着が解除されることを特徴とする容器に係る。
【0011】
請求項2の発明は、前記押下操作部が前記蓋体の上側に反りあがった板状体である請求項1に記載の容器に係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記板状体にリブ部が形成されている請求項2に記載の容器に係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記押下操作部に前記開口縁部と当接する当接突部が設けられる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器に係る。
【0014】
請求項5の発明は、前記蓋縁部に蓋鍔部が設けられる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器に係る。
【0015】
請求項6の発明は、前記開口縁部に容器鍔部が設けられる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器に係る。
【0016】
請求項7の発明は、前記蓋縁部及び前記開口縁部が平面視多角形形状を構成し、前記押下操作部が当該多角形形状の蓋縁部の角部に位置している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器に係る。
【0017】
請求項8の発明は、前記容器本体が弁当もしくは惣菜の包装に用いられる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の容器に係る。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る容器によると、上面が開口して開口縁部を形成した容器本体と、蓋面部と該蓋面部の外周を囲む蓋縁部を備えるとともに前記蓋縁部に前記容器本体の前記開口縁部に対して内嵌合する内嵌合溝部を形成した蓋体とを備えた容器であって、前記蓋縁部に該蓋体の外側に向けて押下操作部が突設され、前記内嵌合溝部が前記開口縁部の内側に嵌合して前記容器本体に前記蓋体が合着した状態において、前記押下操作部が押し下げられることによって前記押下操作部が前記容器本体の前記開口縁部の上端部に当接して該上端部が押し下げられ、前記容器本体と前記蓋体との合着が解除されるため、蓋体が容器本体の内側に嵌る構造の容器において、使用時に容易に無理なく蓋体を取り外すことができる簡便な構造を備えた容器を実現することができる。
【0019】
請求項2の発明に係る容器によると、請求項1の発明において、前記押下操作部が前記蓋体の上側に反りあがった板状体であるため、単純な板状のみであるよりも変形が生じにくくなり、また、押下操作部の下方側への回動量を確保することもできる。
【0020】
請求項3の発明に係る容器によると、請求項2の発明において、前記板状体にリブ部が形成されているため、板状体の反りあがり形状を維持可能とするとともに板状体自体の強度を高めることができる。
【0021】
請求項4の発明に係る容器によると、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記押下操作部に前記開口縁部と当接する当接突部が設けられるため、押下操作部を押し下げる際の操作時に動作起点となり、押下操作部の回動を容易にすることができる。
【0022】
請求項5の発明に係る容器によると、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記蓋縁部に蓋鍔部が設けられるため、蓋体の蓋縁部における撓み変形に対する構造強度が高まり、容器本体との嵌合精度を維持することができる。
【0023】
請求項6の発明に係る容器によると、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記開口縁部に容器鍔部が設けられるため、容器本体の不用意な変形への抵抗力が増し、蓋体との嵌合精度を維持することができる。また、押下操作部と開口縁部側との当接部位が広がり、押下操作部の操作が容易となる。
【0024】
請求項7の発明に係る容器によると、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記蓋縁部及び前記開口縁部が平面視多角形形状を構成し、前記押下操作部が当該多角形形状の蓋縁部の角部に位置しているため、蓋体を開封するための一度の操作により生じた蓋体の変形が直接押下操作部を挟んだ左右の両蓋辺部に伝わり、蓋体と容器本体の嵌合部位に対し、押下操作部を配置した部位を始点に辺部に沿ってより大きな変形量を生じやすくすることができる。
【0025】
請求項8の発明に係る容器によると、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記容器本体が弁当もしくは惣菜の包装に用いられるため、従前の蓋部に起こりえた蓋部を伝った食品内容物の液漏れ等の問題を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例に係る容器の分離状態の全体斜視図である。
【図2】蓋体の全体平面図である。
【図3】図2のQ部分の部分拡大図である。
【図4】容器の押下操作部を含む部分の縦端面図である。
【図5】押し下げ操作時の第1部分拡大縦端面図である。
【図6】押し下げ操作時の第2部分拡大縦端面図である。
【図7】押し下げ操作時の第3部分拡大縦端面図である。
【図8】容器本体と蓋体の分離状態の部分拡大縦端面図である。
【図9】他の実施例に係る容器の分離状態の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
請求項1をはじめ各発明に規定する本実施例の容器1は、図1の分離状態の全体斜視図のとおり、容器本体10とこの上部に冠着され当該容器本体10の内側と嵌合する蓋体30を備える。図示の容器本体10及び蓋体30はともに平面視で多角形状である。多角形状とは角部分が辺部分同士により接合されている形態に加え、辺部分同士の接合部位が湾曲して面取りされた形態も含まれる。
【0028】
この実施例の容器本体10及び蓋体30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂のシート(合成樹脂シート)、さらにはポリ乳酸等の生分解性樹脂の熱可塑性樹脂のシートから形成される。前記の合成樹脂シートは真空成形により図示をはじめとする各種形状に成形される。合成樹脂シートの厚さは適宜ではあるものの、概ね1mm以下の厚さである。容器本体と蓋体の組み合わせにおいて、合成樹脂シートの原料樹脂を同一種類としても異なる種類としてもよい。樹脂の種類は用途、内容物、包装対象により適宜選択される。なお、容器本体10または蓋体30のいずれかもしくは両方を紙やその他の可撓性素材から製造することもできる。
【0029】
図1から理解されるように、容器本体10では、上面11が開口し、上面11の開口部分11eに開口縁部12が周状に形成される。開口縁部12の容器本体内部側は内周壁部17となり、内周壁部17の下端に容器内段部18が形成される。内周壁部17及び容器内段部18は開口縁部12に対応して上面11の開口部分11eの全体に形成される。内周壁部17及び容器内段部18は、後述するように蓋体30を受け入れ嵌合する部分となる。
【0030】
開口縁部12には、請求項6の発明に規定するように、容器鍔部13が設けられる。さらに、容器鍔部13の外側に外周壁部19が設けられる。容器本体10の開口縁部12において、容器鍔部13が設けられることにより蓋体30との水平方向の接触量が増す。このように、開口縁部12は、内周壁部17、容器鍔部13、加えて外周壁部19を設けた構造である(後出図4参照)。そこで、容器本体10の上面11の開口部分11eにおいて撓み変形に対する構造強度が高められる。すなわち、容器本体の不用意な変形への抵抗力が増し、蓋体30との嵌合精度を維持することができる。
【0031】
容器本体10は側面に容器壁部15を有し、底面に容器底部16を有した片側のみ開口する構造の容器である。そして、容器本体10の上面11の直下に容器本体内部14が形成された容器構造である。図示では容器本体10を単一の容器本体内部14の空間としている。容器本体10の包装対象は特段限定されないものの、食品包装分野が主用途であり、特には、請求項8の発明に規定するように、弁当もしくは惣菜の包装に用いられる。本発明の容器1を弁当もしくは惣菜の包装に用いる場合、蓋体が容器本体の内側に嵌合する封止形態であるため、従前の蓋部に起こりえた蓋部を伝った食品内容物の液漏れ等の問題を生じにくくすることができる。なお、必要に応じて包装対象に応じ容器本体10の内部を2以上に区画する仕切り部(図示せず)が容器壁部と容器底部に備えられる。こうすると、互いの食品同士が混ざり合わなくすることもできる。
【0032】
図示実施例の容器本体10の開口縁部12は平面視でわずかに辺部分に膨らみを有する正方形形状であることから、容器角部10cと容器辺部10sを有するこれらの組み合わせである。むろん、容器形状は図示のように底面側から開口側に向けて広がる拡開形状に限られず、容器全高を低くしたり寸胴形状としたりすることは包装対象により適宜である。加えて容器本体の開口縁部は図示の正方形形状に限らず、その他、三角形や五角形、さらには角のある星形等の多角形等を採用することができる。図中、符号20は開口縁部12の上端部であり、実施例では容器角部10c付近の容器鍔部13の一部と対応する。
【0033】
蓋体30について図1とともに図2の蓋体平面図及びQ部分の部分拡大図となる図3も加えて説明する。蓋体30には蓋面部36とこの蓋面部36の外周31を囲む蓋縁部32が備えられる。そして、蓋縁部32に容器本体10の開口縁部12に対して内嵌合する内嵌合溝部34が形成される。また、図示の蓋体30は高さのある形状に成形され、蓋体30の蓋面部36と蓋縁部32の間の側面に蓋壁部35が設けられる。図示の内嵌合溝部34は蓋壁部35と蓋縁部32の間に形成される。内嵌合溝部34は容器本体10の内周壁部17及び容器内段部18に対しその内側に面接触して嵌合する。このことにより蓋体30は容器本体10に合着可能となる。
【0034】
容器本体10は開口縁部12を正方形の多角形形状としているため、図2に示すとおり、蓋体30の蓋縁部32も対応する形状となり平面視でわずかに辺部分に膨らみを有する正方形とする多角形形状である。当該形状は蓋角部30cと蓋辺部30sの組み合わせである。実施例の蓋体30では、請求項5の発明に規定するように、蓋縁部32に蓋鍔部33が設けられる。内嵌合溝部34とともに蓋鍔部33が存在するため、蓋体30の蓋縁部32における撓み変形に対する構造強度が高められ、容器本体10との嵌合精度を維持することができる。
【0035】
さらに、図示実施例の蓋体30の蓋縁部32には、当該蓋体30の外側に向けて押下操作部50が突設される。この押下操作部50は、容器本体10と蓋体30との嵌合による合着状態を解除するときに用いられる。より詳しく述べると、請求項2の発明に規定するように、押下操作部50は蓋体30の上側、つまり蓋面部36側に端が反りあがった板状体51を備える。蓋体30を合成樹脂シートの真空成形により形成する際、板状体51も一緒に形成される。板状体51を反りあがった形状とすることにより、単純な水平の板状のみであるよりも変形が生じにくくなる。また、後記するように、反らせる向きを上向きとすることにより下方側への回動量を確保することもできるためである(図6参照)。
【0036】
押下操作部50の配置部位は、図2から容易に把握され、請求項7の発明に規定するように、当該容器1の蓋縁部32及び開口縁部12が平面視にて多角形形状(図示実施例ではほぼ正方形)を構成していることから、多角形形状の蓋体30の蓋縁部32の角部30cに配置される。蓋体が多角形形状である場合、その形状の角部に押下操作部を配置することにより、蓋体を開封するための一度の操作により生じた蓋体の変形が直接押下操作部を挟んだ左右の両蓋辺部に伝わる。このため、蓋体と容器本体の嵌合部位に対し、蓋体は押下操作部を配置した部位を始点に辺部に沿ってより大きな変形量を生じさせやすくなる。従って、多角形形状の蓋体にあっては、押下操作部を蓋縁部の角部に配置することが最も効果的である。
【0037】
押下操作部50における板状体51は図1に示し既述のとおり反りあがった形状としている。そこで、蓋縁部32の蓋角部30cに配置した板状体51の反りあがり形状を維持するため、板状体51の左右方向を伸ばして蓋縁部32(蓋鍔部33)の側に到達させている。図3から把握されるように、板状体51の左片部51pは紙面下方の蓋鍔部33と一体化し、板状体51の右片部51qは紙面右方の蓋鍔部33と一体化している。このため、押下操作部50の板状体51は、蓋縁部32の角部30cを平面視で緩やかなL字状として囲む形状に形成され、より強度が高められる。
【0038】
そして、押下操作部50の板状体51には、請求項3の発明に規定するように、リブ部52が形成される。板状体51にリブ部52(図示では6箇所)が設けられることにより(図2,3参照)、板状体51に部分的に3次元の構造部位が生じ、板状体51の反りあがり形状を維持可能とするとともに板状体自体の強度を高めることができる。特に、押下操作部50には後述する押し下げ圧力が加わることから適度な強度が必要とされるためである。
【0039】
加えて、請求項4の発明に規定するように、押下操作部50に当接突部53が設けられる。当接突部53は、容器本体10の開口縁部12と当接する。より正確には、図3からよくわかるように、容器鍔部13の上端部20(図中の破線枠部分に相当)と当接する。当接突部53は、押下操作部50を押し下げる際の操作時に動作起点となる部位である。押下操作部50の回動を容易にするため、当接突部53は押下操作部50を容器本体10の開口縁部12(容器鍔部13)から浮かせる必要から設けられた。
【0040】
図4の縦端面図を用い実施例の容器1の容器本体10及び蓋体30、押下操作部50の断面構造を説明する。なお、図示が煩雑となるため断面図ではなく必要部分の端面図とした。ただし、説明の便宜上、リブ部52を押下操作部50に示した。以降の図5ないし図8も同様である。
【0041】
図4は図2のA−A線に対応した容器1の縦端面図であり押下操作部50付近の開示である。容器本体10の開口縁部12は、当該容器本体10の容器本体内部14側から外側にかけて、容器内段部18、内周壁部17、容器鍔部13、及び外周壁部19の順にこれらを備えて形成され、概ね断面視Π字状の構造となる。容器本体10の開口縁部12と対応し蓋体30の蓋鍔部33の内側に形成される内嵌合溝部34は、蓋壁部35、蓋溝底部38、及び溝周壁部37より形成され、概ね断面視U字状の構造となる。内嵌合溝部34は蓋縁部32の全周囲にわたり設けられる(図2等参照)。この実施例では容器鍔部13に蓋鍔部33が重なるため、蓋体30側が必要以上に容器本体10内部に侵入して落ち込むことはない。また、容器本体10側に容器内段部18も備えられているため、蓋体30を受け止めることもできる。
【0042】
図示の端面図では、押下操作部50を含む部分となるため、蓋縁部32の蓋鍔部33から板状体51は外側に向けて張り出し、しかも板状体51は蓋体の仰角側となるように上側に反りあがっている。図示するリブ部52は、板状体51の上側に突出する形状に成形される。また、当接突部53は、開口縁部12の容器鍔部13と当接するため蓋体30(押下操作部50)の下側に突出する形状に形成される。
【0043】
図示実施例では、容器本体10に対する蓋体30の嵌合による合着力を補強するため、係止構造25も設けられる。具体的には、容器本体10の開口縁部12において、その内周壁部17に係止凹部21が形成される。これと対応するべく、蓋体30の蓋縁部32において、その溝周壁部37に係止凸部23が形成される。係止凹部21と係止凸部23の双方からなる係止構造25により、蓋体30は安易に容器本体10から脱離しなくなる。係止構造25に含まれる係止凹部21及び係止凸部23の形状、凹凸の量は、特段制約されず開口縁部12及び蓋縁部32の大きさ、形状に応じ適宜である。
【0044】
係止構造25の有無、配置等は容器1において必ずしも必須ではないものの、蓋体30と容器本体10の安定した合着のため係止構造25を備えることが望ましい。特に、係止構造を備えて蓋体と容器本体の合着力が増した容器において、押下操作部による蓋体の開封し易さの効果が発揮される。
【0045】
図5ないし図8は押下操作部50付近の部分拡大縦端面図であり、押下操作部50の押し下げ動作順に伴った蓋体30の変形の様子を連続して示す。図5は押し下げ操作の初期である。容器本体10に蓋体30が嵌合し互いに合着している状態において、押下操作部50の押し下げ操作を行った場合、押下操作部50は当接突部53を始点に、容器鍔部13の上端部20に当接するとともに同部位に対して回動しはじめる(図中の太線矢印参照)。押下操作部50の回動に連動して、蓋縁部32の蓋鍔部33が当初位置からせり上がる。そして、溝周壁部37は蓋鍔部33の上昇に引き寄せられて、溝周壁部37と同部に形成された係止凸部23も一緒に上昇しはじめる。開口縁部12に容器鍔部13を設けたため、押下操作部50、この例では当接突部53との当接部位(上端部20)が広がり、押下操作部50の操作が容易となる。
【0046】
図6は押し下げ操作の中期である。図5からさらに押下操作部50の押し下げ操作に伴い蓋縁部32の蓋角部30cが当接突部53を支点とする梃子(てこ)として作用する。押下操作部50の降下回動により開口縁部12の容器鍔部13に位置する上端部20が押し下げられ、同時に蓋縁部32の蓋鍔部33及び溝周壁部37がさらに持ち上がる。そこで、押し下げ操作の回動(図中の太線矢印参照)に伴い生じた蓋鍔部33及び溝周壁部37の上昇力が、容器本体10の係止凹部21と蓋体30の係止凸部23との間の凹凸による係止の強さに勝る。このため、係止凸部23は係止凹部21から外れる。
【0047】
図7は押し下げ操作の終期である。図6からさらに押下操作部50の押し下げ操作を行い蓋鍔部33と溝周壁部37との当初の形成角度から図示の屈曲状態まで変形した状態である。図5,6の当接突部53を中心とした回動から、板状体51が直接開口縁部12の容器鍔部13と当接して回動する段階に移行する(図中の太線矢印参照)。そして、図示の当接状態のまま押下操作部50の押し下げ操作が進行し、板状体51が梃子として作用して蓋縁部32自体を持ち上げはじめる。
【0048】
図示の押下操作部50の回動に起因して板状体51と縁接する蓋縁部32にも変形が生じる。図3にて開示のとおり、板状体51の左右の左片部51pと右片部51qがともに蓋鍔部33側と一体化しているため、蓋角部30cに生じた変形は左片部51p及び右片部51qを通じて左右の蓋縁部32に広く伝わる。結果的に、蓋縁部32の内嵌合溝部34(溝周壁部37)にも変形を生じさせ、内嵌合溝部34と容器本体10の内周壁部17との内嵌合を解除する。特にこの例の容器1は係止構造25を設けているため、内嵌合溝部34(溝周壁部37)の変形により係止凸部23も変形し、対応する係止凹部21との係止もいっそう解除されやすくなる。
【0049】
図8は押し下げ操作が完了して容器本体10から蓋体30が脱離し、容器本体10と蓋体30との合着が完全に解除した状態である。この実施例の容器1の容器本体10と蓋体30はともに熱可塑性樹脂のシートの形成物であるため、剛性とともに部材の樹脂弾性も備える。そのため、容器本体10も蓋体30も加わる応力がなくなることにより当初の形状に復帰する。なお、各図に開示の実施例のように、蓋縁部32に蓋鍔部33が設けられるため、押下操作部50に板状体51、リブ部52、当接突部53が形成可能であり、押下操作部50自体の強度維持やその回動をより容易にすることができる。
【0050】
図9は本発明の他の実施例に係る容器2の分離状態の全体斜視図である。この実施例の容器2は、これまでに図示し詳述した平面視で四角形形状の容器1と異なり、平面視円形形状に形成された円錐台(円筒も含む)である。開示の平面視円形形状のように角部と辺部の区別のない形態として、図示以外に平面視楕円形形状も加えられる。容器2では容器本体10Aに蓋体30Aが組み合わされる。容器本体10Aの上面11、開口縁部12a、容器鍔部13等の構成は容器角部と容器辺部の区別がない以外は前掲の実施例と同様である。なお、容器本体10Aでは容器内段部18、外周壁部19を省略している。蓋体30Aの蓋面部36、蓋縁部32a、蓋鍔部33等の構成も蓋角部と蓋辺部の区別がない以外は前掲の実施例と同様である。図1等の容器1の実施例と共通する部位には同一符号を付し、重複するため説明を省略する。
【0051】
この実施例の蓋体30Aの内嵌合溝部34aは、蓋縁部32aの蓋鍔部33の内側に全周にわたって円形に形成される。蓋体30Aの内嵌合溝部34aを嵌着可能に受け入れる容器本体10Aの開口縁部12aの内周壁部17も円形である。そして、蓋体30Aの蓋縁部32aには、前出の容器1の蓋体30と同様に押下操作部50が当該蓋体の外側に向けて突設される。なお、当該容器2においても、合着強度確保のため、前記の係止凹部及び係止凸部を含む係止構造を備えることができる。
【0052】
押下操作部50を用いた作用は既述の容器1の場合と同様である。すなわち、内嵌合溝部34aが開口縁部12aの内側に嵌合して容器本体10Aに蓋体30Aが合着した状態において押下操作部50が押し下げられる。このことにより押下操作部50は容器本体10Aの開口縁部12aの上端部20に当接してこの上端部20が押し下げられる。そして、容器本体10Aと蓋体30Aとの合着が解除される。容器2のとおり、平面視円形形状であっても、押下操作部50に生じた押し下げ操作に伴う形状変形が蓋縁部32a並びに内嵌合溝部34aに伝わり、広汎に各部の形状変形を誘発する作用は容器1の場合と同様である。
【0053】
これまでに図示し、詳述した実施例の容器における容器本体及び蓋体の構造を適用することにより、蓋体が容器本体の内側に嵌る構造の容器においても容易な蓋体の開封を可能とすることができる。特に封止解除に際し、片手で押下操作部を操作して簡単に容器本体から蓋体を取り外すことができるため、包装容器としてのバリアフリー化に貢献する。従って、蓋体の開封し易さを実現しつつ、他商品との差別化、購入者や販売者への訴求性につながる容器や蓋体の提案が可能となる。
【0054】
なお、本発明の容器における容器本体及び蓋体の大きさ、形状、さらには内嵌合溝部等
大きさや形状は、容器の使用目的、用途、内容物を勘案して最適に選択される。このため、図示し詳述した実施例の構成のみには限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1,2 容器
10,10A 容器本体
10c 容器角部
10s 容器辺部
11 上面
12,12a 開口縁部
13 容器鍔部
17 内周壁部
18 容器内段部
19 外周壁部
20 上端部
30,30A 蓋体
30c 蓋角部
30s 蓋辺部
31 外周
32,32a 蓋縁部
33 蓋鍔部
34,34a 内嵌合溝部
36 蓋面部
50 押下操作部
51 板状体
52 リブ部
53当接突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口して開口縁部を形成した容器本体と、蓋面部と該蓋面部の外周を囲む蓋縁部を備えるとともに前記蓋縁部に前記容器本体の前記開口縁部に対して内嵌合する内嵌合溝部を形成した蓋体とを備えた容器であって、
前記蓋縁部に該蓋体の外側に向けて押下操作部が突設され、
前記内嵌合溝部が前記開口縁部の内側に嵌合して前記容器本体に前記蓋体が合着した状態において、前記押下操作部が押し下げられることによって前記押下操作部が前記容器本体の前記開口縁部の上端部に当接して該上端部が押し下げられ、前記容器本体と前記蓋体との合着が解除されることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記押下操作部が前記蓋体の上側に反りあがった板状体である請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記板状体にリブ部が形成されている請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記押下操作部に前記開口縁部と当接する当接突部が設けられる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記蓋縁部に蓋鍔部が設けられる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
前記開口縁部に容器鍔部が設けられる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記蓋縁部及び前記開口縁部が平面視多角形形状を構成し、前記押下操作部が当該多角形形状の蓋縁部の角部に位置している請求項1ないし6のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
前記容器本体が弁当もしくは惣菜の包装に用いられる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−18525(P2013−18525A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154668(P2011−154668)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(593215829)アテナ工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】