説明

容器

【課題】任意の脱酸素剤を内容物に接触しにくい状態で、十分な気密性と、十分な酸素吸収能力を備える容器を提供する。
【解決手段】容器10は、開口部36から内容物が充填される容器本体30と、開口部36に着脱自在に嵌合される凹部66と凹部66内に形成されたライナー70とを有する蓋材60と、開口部36に取り外し可能に配置されるリング状の鍔部92と鍔部92の内側に形成され、脱酸素剤100が内容物120に非接触状態となるように、脱酸素剤100を開口部36の近傍に保持するカップ部94とを有する隔離カップ90と、を備える。隔離カップ90は、酸素は通すが、液体の水を実質的に通さない材料で形成されている。ライナー70は、ライナー70と鍔部92とが気密状態となるように、鍔部92に気密的に接触すると共に、内容物120が容器本体30の外部に対して密閉される状態となるように、開口部36に気密的に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関し、特に、任意の脱酸素剤を内容物に接触しにくい状態で備えることができる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品等(食品及び非食品をいう)の保存方法として脱酸素剤を利用した包装技術が広く適用されている。脱酸素剤を利用した包装技術とは、保存すべき食品等を被包した容器に脱酸素剤を入れたり、保存すべき食品等を、脱酸素機能を有する包装材料で形成した容器内に入れたりすることにより、容器内を脱酸素状態(酸素濃度0.1vol%以下)に保つことができる技術である。この技術によれば、容器内の酸素の存在に起因する食品等の品質劣化を防止し、食品等の品質を良好に保持することが可能である。
【0003】
脱酸素剤は、脱酸素作用を有する組成物であり、通常、粒状又は粉末状にして通気性を有する小袋に封入して用いられる。一般に、脱酸素剤としては、鉄粉を主剤とした酸素吸収剤や、金属探知器に感応することのない有機物を主剤とした酸素吸収剤が用いられる。また、酸素吸収剤を熱可塑性樹脂に配合して成形したシート状の脱酸素剤が用いられる。
【0004】
また、容器外からの酸素を遮断すると共に容器内の酸素を吸収して、容器内に充填された食品等を長期にわたって保存することが低コストでできるように、脱酸素性多層シートを蓋材に形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、一般に、小袋型の脱酸素剤は液体の水に浸漬された状態で使用することは困難である。また、密封後に加熱殺菌処理される場合が多い瓶詰め食品等に小袋型の脱酸素剤を使用した場合、加熱時に発生する蒸気が脱酸素剤に侵入し、侵入した蒸気中の水分によって酸化した脱酸素剤に生成する錆等が、小袋の外部表面に染み出して食品等に接触する虞がある。
【0006】
脱酸素剤が食品等に接触しにくいように、脱酸素剤を蓋材の裏面に、両面テープ、ホットメルト等の粘着剤を用いて貼付する方法がある。しかし、脱酸素剤が液体の水に直接接触する場合には、蓋材の裏面に貼付した脱酸素剤が、蓋の裏面から脱落し、容器の内部に収納された食品等に混入する虞があった。特に、容器に入れられる食品等が密閉した後に加熱することが必要な食品等である場合、容器を加熱すると粘着剤の粘着力が低下し、蓋材の裏面に貼付された脱酸素剤が食品等に落下する可能性が高かった。
【0007】
特許文献1の技術では、脱酸素性多層シートを蓋材の天井壁面に形成する必要があるので、脱酸素性多層シートの大きさが蓋材の形状の制限を受ける。このため、蓋材の形状の制限を受けた大きさの脱酸素性多層シートでは、容器内の酸素を吸収する能力に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−195421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、任意の脱酸素剤を内容物に接触しにくい状態で、十分な気密性と、十分な酸素吸収能力を備える容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る容器は、開口部を有し、前記開口部から内容物が充填される容器本体と、前記開口部を覆うように前記開口部に着脱自在に嵌合される凹部と前記凹部内に形成されたライナーとを有する蓋材と、前記内容物の酸素を吸収する脱酸素剤と、前記開口部に取り外し可能に配置されるリング状の鍔部と前記鍔部の内側に形成されたカップ部とを有する隔離カップと、を備える。前記隔離カップは、前記脱酸素剤が前記内容物に非接触状態となるように、前記脱酸素剤を前記開口部の近傍に保持し、酸素は通すが、液体の水を実質的に通さない材料で形成される。前記ライナーは、前記蓋材が前記開口部に取り付けられた密閉状態において、前記ライナーと前記鍔部とが気密状態となるように、前記鍔部に気密的に接触すると共に、前記内容物が前記容器本体の外部に対して密閉される状態となるように、前記開口部に気密的に接触する。
本発明によれば、密閉状態において、脱酸素剤は容器内の酸素を吸収可能となるように、かつ、内容物に非接触状態となるように、開口部の近傍に保持される。これにより、ライナーは、容器の外部からの酸素浸入を遮断すると共に、容器本体の内部にある内容物やその水分が脱酸素剤に到達する事も防ぐことができる。
【0011】
前記鍔部は、前記密閉状態において、前記開口部より突出し、前記ライナーは、前記凹部の内側において、前記凹部の側面に向かうに従って厚くなるすり鉢形状を有することが好ましい。
このようにすることにより、鍔部が載置された開口部には、鍔部が載置されていない部分と、鍔部が載置されている部分との間に段差が生じても、ライナーは、その段差に沿うようなすり鉢形状を有するので、ライナーは、鍔部が載置されていない開口部と、鍔部とに、十分な気密性を有した状態で接触することができる。
【0012】
前記開口部は、前記密閉状態において、前記鍔部が前記開口部より突出するように、前記鍔部の一部を収容する段部を有することが好ましい。
このようにすることにより、鍔部の厚さをカップ部が脱酸素剤を気密的に保持するために必要な強度を発揮する寸法にまで厚くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、任意の脱酸素剤を内容物に接触しにくい状態で、十分な気密性と、十分な酸素吸収能力を備える容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る容器の一実施形態の一部を省略した、蓋材を容器本体の開口部に嵌合していない状態の垂直断面図である。
【図2】図1示した容器において、蓋材を容器本体の開口部に嵌合した状態の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る容器について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的に示したものであり、実際の形状とは異なる場合がある。
図1を参照するに、本発明に係る容器10は、容器本体30と、蓋材60と、隔離カップ90と、脱酸素剤100とを備える。
【0016】
容器本体30は、円筒形状の側面部32と、側面部32の下側の端部に形成された底部34と、側面部32の上側の端部に形成された開口部36とを有する。
側面部32と底部34とで構成する空間には、開口部36の貫通孔37を通って、内容物120が充填される。
開口部36の外周には、蓋材60の雌ネジ62に螺合する雄ネジ38が形成されている。
開口部36の端面40には、隔離カップ90の鍔部92が配置される段部42が形成されている。段部42の底面44は、端面40から距離aの位置に形成されている。
段部42の円筒側面46の直径は、鍔部92が段部42に容易に配置できるように、鍔部92の外径の寸法と同じが若干大きい寸法であることが好ましい。
容器本体30は、例えば、硝子や熱可塑性樹脂で一体的に形成される。
【0017】
蓋材60は、円盤形状を有する蓋材本体64とライナー70とを備える。蓋材本体64は、円筒形状の側面68及び底面69を有する凹部66と、凹部66の側面68に形成され、雄ネジ38に螺合可能な雌ネジ62とを備える。
ライナー70は、凹部66内に形成されている。具体的には、ライナー70は、凹部66の側面68と凹部66の底面69とに接触するように形成されている。上下方向Yにおけるライナー70の厚さtは、凹部66の内側の側面68において、凹部の側面68に向かう(開口部36の貫通孔37の半径方向Rにおいて、ライナー70のすり鉢形状の中心Cから離れる方向に向かう)に従って厚くなるすり鉢形状を有している。図1におけるライナー70の形状は、すり鉢形状の中央から底面69が露出する形状であり、すり鉢形状の表面はすり鉢状面71とされている。
蓋材本体64は、例えば、アルミやスチールで一体的に形成されていることが好ましい。
ライナー70は、弾力性及び気密性があり、酸素や水蒸気の透過度の低い合成樹脂で形成することが好ましい。ライナー70は、例えば、容器10の気密性を出すためにシリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム系材料、又は、軟質ポリエチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリウレタン、発泡塩化ビニル樹脂等のプラスチック材料を採用することができる。
【0018】
隔離カップ90は、開口部36に取り外し可能に配置されるリング状の鍔部92と、鍔部92の内側に形成され、脱酸素剤100が内容物120(図2参照)に非接触状態となるように、脱酸素剤100を開口部36の近傍に保持するカップ部94とを有する。
上面93aと下面93bとの間である鍔部92の厚さ寸法bは、開口部36の端面40と段部42の底面44との間の距離aよりも大きい。したがって、鍔部92は、隔離カップ90が開口部36に載置されると、開口部36の端面40から突出している状態になる。
鍔部92は、外径が段部42の円筒側面46と同じか若干小さい寸法を有し、内径が開口部36の貫通孔37の内径よりも小さい寸法を有するリング状を形成している。
カップ部94は、鍔部92に一体に形成され、円筒形状を有する本体部95と、本体部95に形成された凹部96とを有する。凹部96は、脱酸素剤100を気密的に収容できる大きさ及び深さを有する。本体部95の外径は、本体部95が貫通孔37内に容易に配置できるように、貫通孔37の内径と同じか若干小さい寸法であることが好ましい。
隔離カップ90は、酸素は通すが、液体の水を実質的に通さない、公知材料である熱可塑性樹脂で形成されている。隔離カップ90は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン類、エラストマー及びこれらの変性物、又はこれらの混合物が好ましく用いられ、特に好ましくは、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物、プロピレン−エチレンランダム共重合体又はこれらの混合物が用いられる。隔離カップの酸素透過度は特に限定されないが、30〜210cm3/(m2・day・atm)が好ましく、60〜180cm3/(m2・day・atm)がより好ましい。隔離カップの酸素透過度が上記範囲にある場合、30cm3/(m2・day・atm)未満の場合と比べ、速やかに容器内の酸素が吸収される。また、隔離カップの酸素透過度が上記範囲にある場合、210cm3/(m2・day・atm)より大きい場合と比べ、隔離カップの強度を高める事が出来る。
【0019】
脱酸素剤100は、酸素を吸収することができる組成物であればよく、例えば、鉄粉等の金属粉、鉄化合物等の還元性無機物質、多価フェノール類、多価アルコール類、アスコルビン酸又はその塩等の還元性有機物質又は金属錯体等を酸素吸収反応の主剤とする脱酸素剤組成物が用いられる。これらの中でも、脱酸素性能に優れた鉄粉を主剤とする脱酸素剤組成物が好ましく、特に主剤の鉄粉と酸素吸収反応を促進する金属ハロゲン化物からなる脱酸素剤組成物が、脱酸素性能に優れる。
脱酸素剤組成物に用いられる鉄粉としては、脱酸素反応を起こすことができるものであれば特に制限はなく、通常脱酸素剤として用いられる鉄粉が使用できる。
脱酸素剤組成物に用いられる金属ハロゲン化物には特に制限はなく、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物、臭化物、ヨウ化物等を挙げることができる。
また、脱酸素剤100は、例えば、三菱瓦斯化学株式会社製の商品名:エージレス(登録商標)を用いることが好ましい。脱酸素剤100の形状は、凹部96に配置できればよく、例えば、三菱瓦斯化学株式会社製の商品名:エージレス(登録商標)のラベル型(エージレスFLタイプ)、カード型(エージレスFCタイプ)、パッキング型(エージレスFPタイプ)、パウチ型(エージレスFX,ZPT,FSタイプ)であってもよい。
【0020】
図1及び図2を参照して、以上の容器10の使い方を説明する。
【0021】
まず、図1に示すように、蓋材60を開口部36から外した状態で、内容物120を開口部36の貫通孔37を介して容器本体30の中に入れる。
次に、鍔部92が段部42の円筒側面46が形成する穴内に差し込まれるように、かつ、本体部95が貫通孔37内に差し込まれるように、開口部36に隔離カップ90を載置する。これにより、隔離カップ90は、開口部36の貫通孔37の半径方向Rにほとんど移動しなくなる。
次に、カップ部94に脱酸素剤100を載置する。
次に、図2に示すように、蓋材60の雌ネジ62を開口部36の雄ネジ38に螺合させ、蓋材60を開口部36に取り付けた密閉状態にする。このとき、蓋材60は、回転させながら開口部36に螺合させるので、ライナー70のすり鉢状面71は、ライナー70のすり鉢形状の中心Cを回転中心として開口部36の上側で回転しながら、鍔部92の上面93aと、開口部36の端面40とに気密的な状態で面接触する。
これにより、脱酸素剤100は、カップ部94とライナー70と凹部66とにより形成される空間に隔離される。
ライナー70と鍔部92とが気密的に面接触しているので、内容物120は、ライナー70と鍔部92との間を通って脱酸素剤100に到達する虞はない。
また、ライナー70と開口部36の端面40とが気密的に面接触しているので、内容物120と容器10の外部との間は、ライナー70と開口部36の端面40との面接触により遮断される。つまり、容器10の外部の酸素が進入して内容物120に到達する虞はない。
また、カップ部94は、酸素は通すが、液体の水を実質的に通さない材料で形成されているので、内容物120に含まれる液体の水が脱酸素剤100に到達する虞はない。
したがって、脱酸素剤100は、液体の水に浸漬されること無く、カップ部94を透過してくる容器本体30内のヘッドスペース中の酸素を吸収することが可能となり、内容物120に含まれる酸素が減少する。これにより、容器10は、容器本体30内の酸素の存在に起因する内容物120の品質劣化を防止することができる。
【0022】
内容物120は、何ら限定されないが、特に水分を多く含む食品等であり酸化により変色を起こす食品等、例えば、緑茶飲料、抹茶ゼリー、ジャム、すりおろしニンニク、すりおろし生姜等の加工食品に、本容器を好適に用いることが出来る。
【0023】
以上の容器は、食品等を内容物として説明したが、これに限定されず、例えば、薬、サプリメントの錠剤等の粒状体やマイクロカプセル等の粉状体を収容するための容器として利用することができる。
また、開口部36には、段部42が形成されているとして説明したが、鍔部92に必要な強度を有する厚さが確保できれば、段部42が開口部36に形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10 容器
30 容器本体
32 側面部
34 底部
36 開口部
37 貫通孔
38 雄ネジ
40 開口部の端面
42 段部
44 底面
46 円筒側面
60 蓋材
62 雌ネジ
64 蓋材本体
66 凹部
68 側面
69 底面
70 ライナー
71 すり鉢状面
90 隔離カップ
92 鍔部
93a 鍔部の上面
93b 鍔部の下面
94 カップ部
95 本体部
96 凹部
100 脱酸素剤
120 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、前記開口部から内容物が充填される容器本体と、
前記開口部を覆うように前記開口部に着脱自在に嵌合される凹部と前記凹部内に形成されたライナーとを有する蓋材と、
前記内容物の酸素を吸収する脱酸素剤と、
前記開口部に取り外し可能に配置されるリング状の鍔部と前記鍔部の内側に形成されたカップ部とを有する隔離カップと、を備え、
前記隔離カップは、前記脱酸素剤が前記内容物に非接触状態となるように、前記脱酸素剤を前記開口部の近傍に保持し、酸素は通すが、液体の水を実質的に通さない材料で形成され、
前記ライナーは、前記蓋材が前記開口部に取り付けられた密閉状態において、前記ライナーと前記鍔部とが気密状態となるように、前記鍔部に気密的に接触すると共に、前記内容物が前記容器本体の外部に対して密閉される状態となるように、前記開口部に気密的に接触する、容器。
【請求項2】
前記鍔部は、前記密閉状態において、前記開口部より突出し、
前記ライナーは、前記凹部の内側において、前記凹部の側面に向かうに従って厚くなるすり鉢形状を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記開口部は、前記密閉状態において、前記鍔部が前記開口部より突出するように、前記鍔部の一部を収容する段部を有する、請求項2に記載の容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−23272(P2013−23272A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162367(P2011−162367)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】