説明

容量の小さい液体の光度測定のためのキュベット

【課題】少ない液体容量の、信頼性があり、かつ再現可能な光度測定を可能にするキュベットを提供する。
【解決手段】液体の光度測定のためのキュベット100は外壁11および液体を入れる内部空間12を有し、本体10は、A−A面において第1の略矩形断面を備える上側の開放頂部27を含む上側部位20と、B−B面における第2の略矩形断面を備える下側の開放頂部37を含む下側の測定チャンバ30と、A−A面とB−B面との間の遷移域40とを含む。キュベットは、下側の前壁32および下側の後壁33が、略平面かつ互いに対して略平行であって、下側のインナーエッジ36は第1の半径R1を有する隅肉部を含み、上側のインナーエッジ26は、第1の半径R1よりも大きい第2の半径R2を有する隅肉部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学システムにおける液体の光度測定のための光学キュベットの分野に関し、このキュベットは上側部位および底部の測定チャンバを含む。本発明はまた、このキュベットを含む光学システムおよびこの光学システムにおいてキュベットを用いる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
患者の診断および治療に関する種々の検査は、患者の液体試料の分析により行うことができる。分析の目的で、患者の試料は一般的に、サンプルバイアルに入れられ、サンプルバイアルから取り出され、専用の反応キュベットにおいて種々の試薬と組み合わされ、培養され、そして分析される。一般的な臨床化学分析およびいくつかの免疫化学分析においては、1つまたはそれ以上の分析試薬が液体試料に加えられ、試料と試薬の混合物は反応キュベット内で混合され培養される。このような反応キュベット中の試料と試薬の混合物を照射する光線を用いる光度測定は、検体の量が公知技術を用いて決定され得るようなものから行われる。このような光度測定の例には、比濁測定、蛍光測定、吸光測定などが含まれる。
【0003】
上記分析をより高速、安価および単純に行うために、分析の処理能力を高める一方で、正確性および信頼性を、向上させずとも維持する必要性がますます増加している。この目的を達成するために、相当な労力が種々の工程段階の縮小化、並行化および一体化に向けられており、例えば、ピペット処理ユニット、試薬および光学システムを含む完全自動分析器においていくつかのキュベットを同時に処理することによって、この目的が達成される。とりわけ反応容量を減少させる傾向があり、それにより試料および試薬の消費が最小限にされ、コストおよび廃棄容量が減少される。
【0004】
従来のキュベットは、約100μLまたはそれ以上の液体容量の混合および光度測定のために最適化されている。このキュベットをより少ない容量に用いようとすると、非効率的な混合および不都合な毛管効果などの問題が生じる。これは結果として光学検出中の位置決めをより困難にする。とりわけ、液面が低くなるほど、上記の問題が光度測定の信頼性を低くする。
【0005】
また代わりにより小さなキュベットを用いようとすると、容積対表面比が増えることによって、毛管効果は、より大きなキュベットを用いる場合よりも深刻となる。ゆえに測定はさらに信頼性の低いものとなる。
【0006】
大きな接触角に特徴付けられる液面の界面の場合、別の抑制不能な効果が観察されるおそれがあり、これはすなわち液面の傾斜である。小さい容量の場合、これは光度測定の信頼性に著しい負の影響をもたらすおそれがある。
【0007】
本発明は、少ない液体容量の、信頼性があり、かつ再現可能な光度測定を可能にするキュベットを提供する。これは、キュベットおよびそこに収容される測定チャンバの構造の最適化により達成され、これは測定容量の最大化を可能にする。
【0008】
本発明の利点は、少ない容量での操作を可能にすることによって、試料容積あたり、より多くの検査を行うことを可能にし、また試料の入手可能性が限られている場合にも検査を行うことを可能にすることである。本発明の別の利点は、試薬の消費の減少であって、これは1回の検査ごとの費用を減少させ、廃棄物も減少させるので、ユーザおよび環境の利益につながる。また、試料および試薬の容量を減少させることにより、反応はより迅速に完了に達する可能性があり、これにより回転時間が短くなる。本発明のさらに別の利点は、熱を必要とする反応の場合に、試料全体における熱時定数および温度勾配の最小化により、試料容積全体を通しての温度平衡が迅速なことである。ゆえに処理能力もまた向上される。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、液体の光度測定のためのキュベットに関する。このキュベットは、外壁と液体を入れる内部空間とを有する本体を含む。
【0010】
この本体は上側部位を含む。この上側部位は、液体をキュベット中に導入させる上側の開放頂部と、A−A面において4つの上側のインナーエッジ(inner edge)を備える第1の環状の断面または略矩形断面を有する内面とを含み、上側のインナーエッジはA−A面から上側の開放頂部に向かって延伸する。
【0011】
本体はさらに、下側の測定チャンバを含む。この下側の測定チャンバは、下側の閉鎖底部、4つの下側のインナーエッジを形成する、下側の前壁、下側の後壁、2枚の下側の側壁、およびB−B面において、A−A面における第1の環状または略矩形断面よりも小さな第2の略矩形断面を備える下側の開放頂部を含む。下側の前壁および下側の後壁は、略平面および互いに対して略平行である部分を有する。
【0012】
本体はさらに、上側部位と下側の測定チャンバとの間、すなわちA−A面とB−B面との間に急激な遷移域を含み、ここでA−A面はB−B面とは異なる。この遷移域は4つの下側のインナーエッジを上側部位に接続する4つの遷移インナーエッジを含む。
【0013】
「略矩形」という語は「略正方形」という語を包含し、ここでは少なくとも4つのエッジによって形成される形状を示すために用いられ、ここで4つのエッジの少なくとも2つは、少なくとも一直線かつ互いに対して平行な部分を含み、この形状は少なくとも隅部において滑らかにされてもよく、例えば曲率または半径を示してもよい。
【0014】
「環状の」とは、主に円形または楕円形の形状を表し、より広義には、エッジのない湾曲した閉鎖線により規定されるあらゆる領域を表す。
【0015】
「略平面」および「略平行」とは、平らおよび互いに対して平行な表面を表すが、例えば、製造許容差または製造工程のために、わずかな曲率を示す場合もあり、また互いに対してわずかに傾斜する場合もある。
【0016】
「測定チャンバ」とは、その内側の容量とおおよそ一致する液体容量を入れることを意図される凹部であって、この凹部は液体の光度測定のために適合される。液体は1つまたはそれ以上の工程で導入されてもよい。例えば、凹部の容量とおおよそ一致する試料の容量は、それ自体で分析されるように導入されてもよい。また代替的には、より小さな1つまたはそれ以上の試料の容量および1つまたはそれ以上の試薬が導入され、全体の容量が凹部の容量とほぼ一致していてもよい。ゆえに測定チャンバは、所定の液体の全容量を受け取るように設計される液体閉じ込めチャンバであって、このような所定の液体容量で操作するように最適化される。好適な実施形態によれば、測定チャンバは50μLよりも少ない容量を有し、最も好適には20〜30μLの範囲、例えば約25μLの容量を有する。
【0017】
理想的には、液体はB−B面に位置する平らな上面を伴って測定チャンバを充填する。ここで「おおよそ」とは、この理想の状態からの逸脱を表し、この場合界面エネルギー、すなわち毛管力により、一般的にはメニスカスが形成される。メニスカスは、液体のキュベット材料への浸潤性によってB−B面の下にあっても上にあってもよく、ゆえに液体およびキュベット材料に依存している。それゆえ、凹部の容量に対してわずかに小さなまたは大きな液体容量が導入され得る。本発明によるキュベットのデザインの1つの効果は、このようなメニスカスの位置の逸脱を最小限にすることである。これは、この効果がメニスカスの最低部または最上部がB−B面に接近するようにメニスカスを最小限にするものということを意味し、ゆえに50μLよりも少ない液体容量でも、光度測定に確実に供され得る。
【0018】
これはキュベットを、少なくともB−B面において下側のインナーエッジが鋭いまたは第1の半径を有する隅肉部(fillet)を含み、A−A面において第1の環状の断面が第2の半径を有するか、または上側のインナーエッジが第2の半径を有する隅肉部を含むように設計することによって達成され、ここで第2の半径は第1の半径よりも大きい。さらに遷移インナーエッジは、B−B面における鋭いエッジまたは下側のインナーエッジの第1の半径から、A−A面における第1の環状の断面または上側のインナーエッジの第2の半径までを通る、次第に大きくなる半径を有する隅肉部を含む。
【0019】
「鋭い」とは、例えば製造許容差または製造工程により、下側の壁が直線のエッジまたは最小限にのみ曲線的なエッジに集まることを意味する。顕微鏡レベルでは第1の半径が常に下側のインナーエッジに存在することから、本発明によればエッジは0.01mmよりも小さな半径を有する場合に鋭いとみなされる。鋭いことの効果は、増大した毛管効果であり、すなわち通常用いられる液体(水溶液)がエッジに沿って上昇する傾向を強める。ゆえに、エッジが鋭ければ鋭いほど毛管効果は高まる。また滑らかまたは湾曲したエッジ、すなわち半径の大きなエッジでは、その反対である。
【0020】
「隅肉部」とは、ここではエッジを鋭いというよりはむしろ滑らかにするために、想像上のエッジの線上に物質が加えられたかのように、一定の半径を有するエッジにおいて曲率がより認識できることをいう。隅肉部の存在は製造または費用の理由から、避けられない場合もある。
【0021】
エッジまたは隅肉部の「半径」とは、曲率がエッジの曲率としっかり適合している、2枚の隣接する壁の間で左右対称に位置する接触円の半径を表す。とりわけこの円の半径は、所定の位置にある全ての実質的に接する円の間で、実質的にエッジと同一の曲率を有する。
【0022】
上記の効果を達成するために、しかしながら、下側のインナーエッジが少なくともB−B面において鋭いか、また隅肉部が形成される場合にはその隅肉部が最小限の第1の半径を有することが重要である。
【0023】
また同様に、A−A面における第1の断面がB−B面における第2の断面よりも大きいことおよび第2の半径が第1の半径よりも大きいことも重要である。このようにして急激な遷移域がB−B面とA−A面との間に形成され、ここで遷移インナーエッジは、B−B面からA−A面までを短い距離で通る、次第に大きくなる半径を有する隅肉部を含む。
【0024】
遷移が突然であるほど、すなわち半径における変化が大きく半径が変化する距離が短いほど、界面エネルギー、すなわちB−B面にあるエッジでのエネルギー障壁が強くなり、このエネルギーは液体がB−B面よりも上に上昇することを妨げる。またメニスカスは、液面の傾斜が防がれるように、対称のままであることを強いられる。ゆえに好適な実施形態によれば、A−A面とB−B面との間の距離は、A−A面と上側の開放頂部との間の距離およびB−B面と下側の閉鎖底部との間の距離と比べて短い。しかしながら、A−A面は常にB−B面とは異なり、これはすなわちA−A面とB−B面との間の距離は常にゼロよりも大きいということである。
【0025】
実際に、チャンバの容量よりも小さな液体容量が測定チャンバに加えられる際に起きることは、液体が鋭いエッジに沿って迅速に上昇し、B−B面と交わる部分で停止することである。液体をさらに加えることによって、メニスカスの最上部はますますB−B面に接近するが、メニスカスのエッジは、遷移インナーエッジに沿って上昇しその後上側のインナーエッジに沿って上昇するのではなく、B−B面に制限される。また液体をさらに加えることによって、エネルギー均衡が達成され、これにより界面エネルギーの障壁は壊れ、液体は上昇を続ける。メニスカスはこの均衡が達成される前にB−B面を超えて上昇する場合もある。しかしながら、所定の容量の液体が導入されるとメニスカスがB−B面のほんの少し下に形成され、エネルギー障壁を充分に下回るエネルギーレベルが達成されるようにキュベットを設計することが好ましい。例えばキュベットは、所定の容量の液体が導入されるとメニスカスの最低部が、B−B面と下側の閉鎖底部との間の距離の20%未満の距離だけB−B面から離れて停止されるように設計されてもよい。
【0026】
メニスカスをB−B面で固定することは、液体容量が遷移域および上側部位で失われることを防ぎ、これは下側の測定チャンバにおいて光度測定に必要とされる容量を減少させる。測定はゆえに少ない液体容量でも可能にされ得る。
【0027】
エネルギーレベルは、キュベットを移動させる場合および/または例えば超音波または振動を用いる攪拌によって測定チャンバ中の液体を混合する場合でも、測定チャンバからの液体の損失が最小限にされるような程度のものである。A−A面およびB−B面をそれぞれ異なる面で有することによって、言い換えれば傾斜した遷移域を有することによって、最終的に、例えば混合中に測定チャンバから逸脱する液体が測定チャンバにより容易に戻り得るという利点を有する。仮に遷移域が平らである場合、すなわちA−A面およびB−B面が同一平面上にある場合には、測定チャンバから平らな遷移域に逸脱した液体はそこで保持されるので、この液体は、測定チャンバに戻る可能性なく失われたままである。
【0028】
一実施形態によれば、キュベットの上側部位は断面でテーパ形状を有し、この断面はA−A面から開放頂部にかけて次第に大きくなっている。
【0029】
一実施形態によれば上側のインナーエッジは、A−A面と開放頂部との間で一定である第2の半径を有する隅肉部を含む。
【0030】
一実施形態によれば上側のインナーエッジは、A−A面から開放頂部に向かって次第に大きくなる第2の半径を有する隅肉部を含む。
【0031】
一実施形態によれば、開放頂部は略円形または楕円形の断面を有する。
【0032】
上側部位の断面および/またはA−A面の上の第2の半径の大きさは、上述した界面エネルギーに関するもの以外の役割も果たす。その役割とは、例えばより容易および/またはより安価なキュベットの製造、または例えば液体を導入する時やキュベットを操作する時の、より利便性の高いキュベットの使用に関するものでもよい。
【0033】
一実施形態によれば、下側の前壁および下側の後壁は、下側の閉鎖底部の近傍で湾曲した形状を備える隅部を含む、略矩形領域を有する。
【0034】
一実施形態によれば、少なくとも下側の前壁および下側の後壁は、光学的に透明である。
【0035】
一実施形態によれば、開放頂部に近接するキュベットは、キュベット本体の外側に突出する少なくとも1つの周縁部(lip)を含む。この周縁部は、キュベットの操作の時、および/または光学システムのキュベット保持位置においてキュベットを保持するため、および/または光学システムにおいてキュベットを配列するために好都合な場合もある。
【0036】
一実施形態によればキュベットは、射出成形されたポリマー材料で一体に製造される。
【0037】
他の実施形態によれば、例えば互いに隣り合って並ぶキュベットアレイとして配置され、例えば上側部位にあるストリップまたは共通の周縁部によって結合される、複数のキュベットを含む製品は、射出成形されたポリマー材料で一体に製造される。
【0038】
本発明はまた、液体の光度測定のための光学システムにも言及する。この光学システムは、上述した実施形態のいずれかによる複数のキュベット、光線を発する光源および光学検出器を含む。この光学システムはさらに、下側の前壁が光源に面し、下側の後壁が光学検出器に面するように、キュベットを1度に1つずつ、光源203および光学検出器204と光学的に一直線に並ぶ配置に移動させるように設定された制御ユニットを含む。
【0039】
本発明によれば光学システムは、分離したユニットか、分析機器に一体化された構成部品またはモジュールである。とりわけこの光学システムは、キュベットの測定チャンバに配置される試料を通して、制御された様態で光を導くことと、試料中に存在する検体を光学分析するために、例えば吸光および散乱などの光透過における変化を測定することを可能にする。この光学システムは、しかしながら、さらに他の分光測定を行うように構成されてもよい。また、一時的な静的測定、時間分解測定、またはその両方を伴ってもよい。
【0040】
このシステムは、少なくとも1つのキュベット保持位置を含む、保持のためのキュベット保持ユニットを含んでもよい。このキュベット保持ユニットは、例えば少なくとも一方向に移動する直線状または回転型のコンベヤとして具体化されてもよく、1つまたはそれ以上の電気モータにより駆動され、前方への移動を行うことができるロボットアームとして具体化されてもよい。一実施形態によれば、キュベット保持ユニットは多数のキュベット保持位置を含み、このキュベット保持位置は、確定した分析順序に従って光路上に1つずつ配置される。好適な実施形態によれば、キュベット保持ユニットは、複数のキュベットを受け取り、光路上、すなわちキュベットを1つずつ光源および検出器と光学的に一直線に並ぶ配置に移動させるために、複数のキュベット保持位置を含むローターとして組み立てられる。
【0041】
この光学システムはとりわけ生体試料の分析に適している。試料は、好ましくは、1つまたはそれ以上の目的とする検体が発見される可能性のある液体溶液であって、例えば血液、血清、血漿、尿、母乳、唾液、脳脊髄液などの体液である。試料は、そのまま分析されても他の溶液で希釈された後に分析されてもよく、また、例えば臨床化学分析および免疫分析など1つ以上の診断分析を行うために、試薬と混合された後に分析されてもよい。光学システムは、例えば凝固分析、凝集分析、比濁分析において化学または生体反応の結果を検出するため、または化学または生体反応の進行を観察するために、散乱分析の実施において有利に用いられてもよい。
【0042】
本発明の光源は、使用可能な波長帯において光線を発することができる、光学システム内のユニットである。「使用可能な」とは、試料を通して導かれる光が、試料中に存在する検体の濃度を測定できるような、選択された波長または波長帯のことを言う。
【0043】
この光源は、少なくとも1つの発光エレメントを含む。発光エレメントは、白熱灯、エレクトロルミネセントランプ、放電灯、光輝度放電ランプおよびレーザなどの電力線源である。
【0044】
一実施形態によれば、この少なくとも1つの発光エレメントは例えばハロゲンランプであって、ハロゲンランプは全ての白熱光電球と同様、近紫外線から遠赤外線まで連続的かつ広範囲にわたって光を生み出す。別の実施形態によれば、この少なくとも1つの発光エレメントは発光ダイオードまたは「LED」である。
【0045】
一実施形態によれば、この光線は4つの対称なセクターに分けられる湾曲した形状を有し、各セクターは、下側の閉鎖底部に近接するキュベットの隅部の形状と実質的に合致する形状を有する。
【0046】
一実施形態によれば、この光線は、下側の前壁と交わる面積を有し、この面積は下側の前壁の面積よりも2〜10倍小さい。
【0047】
本発明の光学検出器は光検出器であって、これは電磁エネルギーを電気信号に変換し、単素子光学検出器と多素子光学検出器の両方またはアレイ光学検出器を含む装置である。したがって、光学検出器は、光学電磁信号を監視し、電気出力信号、または光路に配置されている試料中の検体の存在および/または濃度を示すベースライン信号に関する応答信号を提供することができる装置である。このような装置としては、例えば、アバランシェフォトダイオードを含むフォトダイオード、フォトトランジスタ、光導電検出器、リニアセンサアレイ、CCD検出器、CMOSアレイ検出器を含むCMOS光学検出器、光電子増倍管、および光電子増倍管アレイが挙げられる。ある実施形態によれば、フォトダイオードや光電子増倍管などの光学検出器は、信号を調整または処理する付加的な電子機器をさらに含んでいてもよい。例えば、光学検出器は、少なくとも1つのプリアンプ、電子フィルタ、または積分回路を含んでもよい。適切なプリアンプは、積分プリアンプ、トランスインピーダンスプリアンプ、および電流増幅(電流ミラー)プリアンプを含む。一実施形態によれば、検出器はCCDまたはCMOS型のものである。また別の実施形態によれば、検出器はフォトダイオードまたはPMT型のものである。
【0048】
制御ユニットは、プログラム可能な論理制御装置として構成されてもよく、これはプロセスオペレーションプランに基づきオペレーションを行うための命令を備えた、コンピュータが読み取り可能なプログラムを実行する。
【0049】
本発明による分析機器は、ユーザによる検出、例えば診断目的での試料の質的および/または量的な光学評価を補助する装置である。このような機器の例は、臨床化学分析器、凝固化学分析器、免疫化学分析器、尿分析器であって、これらは自立式の機器または上述したモジュールを複数含むシステム中のモジュールとして、化学または生体反応の結果を検出するため、または化学または生体反応の進行を観察するために用いられる。
【0050】
とりわけ、この機器は、試料および/または試薬のピペット操作、投与、混合を補助するユニット、試料管または試料管を含むラックの取り付けおよび/または取り外し、および/または輸送、および/または保管のためのユニット、試薬コンテナまたはカセットの取り付けおよび/または取り外し、および/または輸送、および/または保管のためのユニットを含んでいてもよい。また分析器は、センサーを含む識別ユニット、例えばバーコードリーダを含んでいてもよい。RFIDなどの代替的な技術も、識別のために用いられ得る。
【0051】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに、分析される試料を受け取るための試料受け取りユニットを含む。試料は、例えば採血管などの管の形状や、試料のアリコートを含むより小さなチューブまたは容器の形状で受け取られてもよい。試料は、単一のキャリアまたはホルダに配置されてもよいし、複数の試料のためのラックに配置されてもよい。
【0052】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに、分析を行うために試薬を把持する試薬保持ユニットを含む。試薬は例えば、個別の試薬または試薬の群を収容し、適切なレセプタクル(receptacle)または保管区画またはコンベヤ内の適切な位置に配置されるコンテナまたはカセットの形状で配置されてもよい。
【0053】
好適な実施形態によれば、この機器はさらにキュベットをキュベット保持ユニットに供給するキュベット供給ユニットを含む。
【0054】
好適な実施形態によれば、この機器はさらに1つまたはそれ以上の液体処理ユニット、例えばピペット処理ユニットを含み、このユニットは試料および/または試薬を光学キュベットに運ぶためのものである。このピペット処理ユニットは、再利用可能かつ洗浄可能な針、例えばスチール針を含んでいてもよく、使い捨て可能なピペットチップを含んでいてもよい。通常、ピペット処理ユニットは、機器に関してピペットチップまたは針を移動させる自動位置決め装置に操作可能に結合されており、また例えばガイドレールによって平面上で2つの進行方向に動かされ、例えばスピンドルドライブによって平面と直交する第3の移動方向に動かされ得る移送ヘッドに取り付けられてもよい。
【0055】
この機器はさらに、反応の間、試料/試薬混合物を一定の温度に維持するための1つまたはそれ以上の培養ユニット、ピペットチップまたは針を洗浄するための洗浄ステーション、混合パドルなどを含んでいてもよい。
【0056】
この機器はさらに、例えば液体を含むキュベットを振るシェーカー、またはキュベットまたは試薬容器中の液体を混同する混合パドル、または超音波発生器を含む1つまたはそれ以上の混合ユニットを含んでいてもよい。
【0057】
好適な実施形態によれば、この機器は、所定の液体容量の下側の測定チャンバにおいてピペット操作を制御するため、または所定の液体容量が達成されるまで1つまたはそれ以上の液体を加えるために設定されており、この液体容量は下側の測定チャンバの容量とほぼ一致する。液体の境界はB−B面に制限されているという事実から、ピペット処理および/または製造の許容差に対応することが可能である。例えば、たとえ下側の測定チャンバの容量をわずかに上回る液体容量が加えられても、メニスカスの中心はB−B面を上回るがその境界はB−B面にとどまったままである。
【0058】
また本発明は、液体の光度測定の方法にも言及する。この方法は、下側の前壁が光源に面し、下側の後壁が光学検出器に面するように、光源および検出器と光学的に一直線に並ぶように上述の実施形態のいずれかによるキュベットを保持する工程を含む。この方法はさらに、光度測定の間、キュベットを下側の前壁に平行な軸に沿って移動させる工程を含む。
【0059】
またこの方法は、キュベット、とりわけ測定チャンバに所定の液体容量を導入する工程または所定の液体容量に到達するまで1つまたはそれ以上の液体を加える工程を含んでいてもよい。この工程は、好ましくは液体処理ユニットによって自動的に実行される。
【0060】
好適な実施形態によれば、この方法は、下側の前壁が光源に面し、下側の後壁が光学検出器に面するように、キュベットを1度に1つずつ光源および検出器と光学的に一直線に並ぶ配置に移動させる工程を含む。好ましくは、例えば回転型のコンベヤとして構成される保持ユニットが、回転によってキュベットを1度に1つずつ光源および検出器と光学的に一直線に並ぶ配置に移動させる。このローターは、光度測定の間、キュベットが下側の前壁に平行な軸に沿って移動するように、連続的に回転してもよい。新しいキュベットごとにローターを停止させると、誘発されるローターの振動によって、再現可能な一直線の配列を達成することがより不確実および時間のかかるものになる。これは位置決め変動により、より長い測定/制御時間およびより低い精密度を導く。
【0061】
一方で、ローターを連続的に移動させると、測定に利用可能な時間が制限される。それゆえ、条件を満たす測光シグナルを得るために、測定容量を最大化することが重要である。
【0062】
本発明のキュベットおよびシステムは、所定の少ない液体容量を受け取る測定容量を最大限にするために最適化される。「測定容量」とは、光度測定の間に実際に光線にさらされる測定チャンバ中の液体容量と定義される。この容量は、光線と下側の前壁との交差部分の面積に、下側の前壁と下側の後壁との間の距離を乗じることにより得られる。下側の前壁と下側の後壁との間の距離は、光路とも呼ばれる。キュベットが測定中に移動する場合は、測定容量は測定時間中に光線によって走査される面積に光路を乗じることにより得られる。
【0063】
確実な測定を行うために、測定時間中に光線が、測定を干渉するおそれのあるエッジおよびメニスカスから充分に離れて下側の前壁と交わることを確実にすることが重要である。これを確実にするために考慮に入れられる必要のある要因は例えば、光学システムにおけるキュベットの位置/配置許容差、製造許容差、測定チャンバ中に存在する可能性のある隅肉部である。これらの要因全てが、メニスカスの最低部が見られる、下側の閉鎖底部からの最小限の距離を伴って、「許容測定ウインドウ」を画定する。
【0064】
本発明の目的は、所定の液体容量のための許容ウインドウ内で測定容量を最大化するために許容ウインドウを最大化することである。
【0065】
本発明の一態様によれば、メニスカスは上述のように、B−B面の近傍で安定化され、ほぼ平らにされるので、下側の閉鎖底部からメニスカスの最低部までの距離は長くなる。また許容測定ウインドウが増加するので許容ウインドウ内で測定容量を増加させることが可能である。鋭いまたは小さな第1の半径を有する隅肉部を含む下側のインナーエッジを有することによって、許容ウインドウの減少を最小限にするという効果を有するので測定容量を増加させることが可能である。
【0066】
光線は通常円形または楕円形の断面を有する。本発明の他の態様によれば、下側の閉鎖底部に近接する隅部が、光学システムにおいて用いられる光線のセクターの1つの形状と実質的に合致する形状を有するように、下側の前壁および下側の後壁を設計することにより、検出容量はさらに増加される。さらに下側の前壁および下側の後壁は、好ましくは下側の前壁と光線との間の交差部分の面積の2〜10倍である面積を有するように設計される。このように、より大きな光線が用いられてもよく、またキュベットを光線に対して移動させることにより測定時間中に光線によって走査される面積が増加し、ゆえに測定容量が最大化され得る。
【0067】
さらなる改良は、互いに隣り合って並び、一体に製造されるキュベットアレイを用いることにより得られ得る。この構成要素は、例えば光学システムの回転型のコンベヤなどのコンベヤに取り付けられるような、例えばセグメントの形状を有していてもよい。このような方法で、光学システム内でのキュベットの位置/配置許容差は最小限にされ得る。ゆえに各測定および各キュベットに対する許容測定ウインドウの位置の変化が最小限化される。
【0068】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の記載および好適な実施形態を図解し、本発明の原理のより詳細な説明に役立つ、付随する図面から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】液体の光度測定のためのキュベットの実施形態を示す。
【図2】図1のキュベットの寸法(ミリメートル単位)の一例である。
【図3】A−A断面およびB−B断面の形状に関して、図1のキュベットの変形例を概略的に示す。
【図4】図1のキュベットの形状の、液体メニスカスに対する効果を概略的に示す。
【図5】図1のキュベットに関する、許容ウインドウと測定容量と間の関係を示す。
【図6】液体の光度測定のための光学システムを含む分析機器を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、本発明のキュベット100の一例を示す。とりわけ図1aはキュベット100の上面図を示し、図1bはキュベット100の斜視図を示し、図1cはキュベット100の正面図を示し、図1dは図1cのA−A面でのキュベット100の断面図を示し、図1eは図1cのB−B面でのキュベット100の断面図を示す。図1a〜図1eの図面および以下の図は、図を明確にするために正確な縮尺ではない。
【0071】
キュベット100は、外壁11と、液体を入れる内部空間12とを有する本体10を含む。本体10は上側部位20を含む。一実施形態によれば、この上側部位20は、液体をキュベット100へと導入させるための上側の開放頂部21、上側の前壁22、上側の後壁23、2枚の上側の側壁24、25、これら上側の壁22、23、24、25によって形成されている4つの上側のインナーエッジ26、およびA−A面において第1の略矩形断面を備える上側の開放底部27を含む。
【0072】
本体10はさらに、下側の測定チャンバ30を含む。この下側の測定チャンバ30は、下側の閉鎖底部31、下側の前壁32、下側の後壁33、2枚の下側の側壁34、35、これら下側の壁32、33、34、35によって形成されている4つの下側のインナーエッジ36、およびB−B面における第2の略矩形断面であって、A−A面における第1の略矩形断面よりも小さな断面を備える下側の開放頂部37を含む。下側の前壁32および下側の後壁33は、略平面であって互いに対して略平行である。
【0073】
本体10はさらに、A−A面とB−B面との間、すなわち上側部位20と下側の測定チャンバ30との間に遷移域40を含む。この遷移域40は4つの下側のインナーエッジ36を4つの上側のインナーエッジ26に接続する4つの遷移インナーエッジ46を含む。
【0074】
下側のインナーエッジ36は、第1の半径R1を有する隅肉部(fillet)を含む。A−A面において、上側のインナーエッジ26は第2の半径R2を有する隅肉部を含み、この第2の半径R2は第1の半径R1よりも大きい。遷移インナーエッジ46は、B−B面における第1の半径R1からA−A面における第2の半径R2までを、次第に大きくなる半径を有する隅肉部を含む。
【0075】
またキュベット100は、上側の開放頂部21の面において第3の略矩形断面を有し、これはA−A面における第1の略矩形断面よりも大きい。ゆえに上側部位20は、断面においてテーパ形状を有し、断面はA−A面から開放頂部21に向かって次第に大きくなる。また上側のインナーエッジ26は第2の半径R2を有する隅肉部を含み、これはA−A面から開放頂部21に向かって次第に大きくなる。
【0076】
キュベット100はさらに、上側の開放頂部21の近傍において、キュベット本体10の外側に突出する、フレームとしての周縁部(リップ)28を含む。この周縁部28は、分析機器におけるキュベット100の操作および保持に便利である。
【0077】
下側の前壁32および下側の後壁33は、光学的に透明である。
【0078】
図2は、図1のキュベット100の寸法(ミリメートル単位で)のいくつかを示す。とりわけ、図2aは図1aのキュベット100の上面図と同じものを示す。図2bは、本体10の中央を通って上側の開放頂部21から下側の閉鎖底部31までを通る垂直なC−C面におけるキュベット100の断面図を示す。図2cは、本体10の中央を通って上側の開放頂部21から下側の閉鎖底部31までを通り、かつC−C面と直交するD−D面におけるキュベット100の断面図を示す。キュベット本体10の壁の厚さは、ほぼ一定であり、約0.5mmである。
【0079】
キュベット100は、A−A面において約3.8mmの幅を備える第1の略正方形の断面を有し、B−B面において約3mmの幅を備える第2の略正方形の断面を有し、上側の開放頂部21の面において約4.2mmの幅を備える第3の略正方形の断面を有する。A−A面から上側の開放頂部までの距離は約14.7mmである。下側の閉鎖底部31からB−B面までの距離は約3mmである。A−A面とB−B面との間の距離は約0.6mmである。下側のインナーエッジ36は、B−B面から下側の閉鎖底部31まで、約0.1mmの第1の半径R1を備える隅肉部を有する。上側のインナーエッジ26は、A−A面から開放頂部21に向かって次第に大きくなる、第2の半径R2を備える隅肉部を有する。第2の半径R2はA−A面において約0.7mmであり、上側の開放頂部21の面において約1.4mmである。
【0080】
ゆえに、4つの下側のインナーエッジ36を4つの上側のインナーエッジ26に接続する遷移インナーエッジ46は、B−B面からA−A面の間の0.6mmという短い距離の中で、B−B面からA−A面に向かって0.1mm〜0.7mmの間で次第に大きくなる半径を備える隅肉部を有する。これは急激な遷移、すなわち短い距離における変化が大きいものの一例であって、これは強い界面エネルギー、すなわちB−B面の下側のインナーエッジにおける強いエネルギー障壁の原因となる。一般的に遷移は、4つの下側のインナーエッジ36を上側部位20に接続する遷移インナーエッジ46が、1mmよりも小さな第1の半径R1から、数mm、例えば環状、例えば円形の断面27の場合には断面27の半径を超えない第2の半径R2まで、B−B面とA−A面との間の0よりも大きく5mmを超えない距離内で次第に大きくなる半径を備える隅肉部を有する場合に、急激であると考えられ得る。図2の実施形態では、下側の前壁32および下側の後壁33は略矩形領域を有し、下側の閉鎖底部31の近傍で湾曲した形状を備える隅部39を含み、この隅部39は約0.7mmの半径R3を有する。
【0081】
このような寸法の場合、下側の測定チャンバ30の容量は約25μLである。
【0082】
図3は、A−A断面およびB−B断面の形状についての、キュベット100の変形例を概略的に示す。とりわけ図3aは、比較のために図1および図2の実施形態を示す。図3bは、製造は困難であるが、下側のインナーエッジ36が鋭い代替的な実施形態を示す。図3cでは、A−A面の断面は、エッジの間でのみB−B面の断面よりも大きい。図3dは、細長い矩形断面を示す。図3eでは、A−A面における断面が略円形である一方で、B−B面における断面は略正方形である。図3fでは、A−A面の断面は2つの対向するエッジの間でのみB−B面の断面よりも大きい。もちろん、上記の例から形状を組み合わせることも可能である。また、A−A面およびB−B面における断面は、非同心および/または非対称であってもよい。エッジは曲線的な円形または楕円形の半径を備える隅肉部を有していてもよい。これらの変形例は全て、上部の開放頂部21の断面の異なる形状と組み合わされてもよく、上部の開放頂部分21は略矩形または環状を有していてもよい(図示せず)。
【0083】
図4は、図1のキュベット100の構造の、液体メニスカス37に対する効果を概略的に示す。実際に起こることは、下側の測定チャンバ30にチャンバ30の内部容量よりも少ない液体容量を加えると、小さな半径R1により液体は下側のインナーエッジ36に沿って迅速に上昇し、B−B面との交点において停止する。さらに液体を加えることにより、メニスカス37の最低部38は、上昇してB−B面にさらに接近するが、メニスカス37のエッジは遷移インナーエッジ46に沿って上昇するのではなく、B−B面にとどまったままである。それゆえキュベット100は、例えば23〜25μLの所定の液体容量が約25μLの内部容量を有する下側の測定チャンバ30に導入されると、最低部38がB−B面の真下にあるメニスカス37が形成され、ゆえに液体容量は下側の測定チャンバ30の内部容量とほぼ一致するように設計される。このようにして、液体が遷移域40および上側部位20において失われることを防ぎ、液体容量が少ない場合でも確実な光度測定を行うことが可能になる。
【0084】
図5は、許容測定ウインドウ50と図1のキュベット100の測定容量との間の関係を示す。キュベット100が測定中に動いている場合、測定容量は、光線60と下側の前壁32との間の交差部分における光線60によって走査される面積51に、下側の前壁32と下側の後壁33との間の距離であって、この実施例では3mmである光路61を乗じることにより得られる。確実な測定を行うために、測定時間中に光線が、測定を干渉するおそれのあるエッジおよびメニスカスから充分に離れて下側の前壁と交わることを確実にすることが重要である。測定中、考慮に入れる必要のある要因は例えば、光学システムにおけるキュベット100の位置/配置の許容差、製造許容差、測定チャンバ30内の隅肉部の存在、および最低部38を有するメニスカス37の実際の位置である。これら全ての要因が「許容測定ウインドウ」50を画定する。これは、許容測定ウインドウ50の位置が、各測定および各キュベット100で変わる可能性があることを意味する。しかしながら、確実かつ再現可能な測定を行うために、光線60によって走査される面積51は常に許容測定ウインドウ50の内部の範囲に入ることが重要である。液体容量および光路の長さ61は固定されると、より多くの測定シグナルを得てより感度を高めるために、可能な限り大きな面積51を有することも重要である。キュベット100のデザインはメニスカス37の最低部38を上昇させることに貢献する。下側のインナーエッジ36を有することにより、小さな第1の半径R1を有する隅肉部を含むことにより、許容測定ウインドウ50の大きさに対する隅肉部の影響を減少させることに貢献する。また、光線60によって走査される面積51を増やすことを可能にする一方で、この面積51が許容測定ウインドウ50の内部の範囲に入ることも確実にする。
【0085】
下側の前壁32および下側の後壁33が、光線60の1つのセクターの形状に実質的に一致させる形状を備えた、下側の閉鎖底部31に近接する隅部39を有するように設計することによって、例えば、この実施例では0.7mmの隅部39の半径R3を、光線60の半径R3’と実質的に一致させることによって、他の改良が得られる。最適な結果は下側の前壁32および下側の後壁33を、下側の前壁32と光線60との間の交差部分の面積62よりも2〜10倍大きな面積を有するように設計することにより達成される。この実施例では、下側の前壁32および下側の後壁33は、下側の前壁32と光線60との間の交差部分の面積62よりも5〜6倍大きな面積を有するように設計される。
【0086】
図6は、液体の光度測定用の光学システム200を含む分析機器300を概略的に示す。光学システム200は、光線60を発する光源203、光学検出器204、多数のキュベット保持位置202を含むローターとして配置されるキュベット保持ユニット201、および下側の前壁32が光源203に面し、下側の後壁33が光学検出器204に面するように、キュベット100を1度に1つずつ、光源203および光学検出器204と光学的に一直線に並ぶ配置に移動させるように設定された制御ユニット205を含む。ローター201は、光度測定を行っている間、下側の前壁32と平行な軸に沿って回転し、キュベット100を移動させるように配置される。機器300はさらに、分析される試料を含む試料管(図示せず)を受け取る試料受け取りユニット301を含む。分析機器300はさらに、分析を行う試薬を含む試薬容器(図示せず)を保持する試薬保持ユニット302を含む。機器300はさらに、光学キュベット100をキュベット保持ユニット201に供給するためのキュベット供給ユニット303を含む。分析機器300はさらに、試料および/または試薬をキュベット100へと運ぶ、少なくとも1つのピペット処理ユニットなどの液体処理ユニット304を含む。キュベット100は、試料および/または試薬の付加または混合ユニット305による混合操作のために、ローター201から一時的に取り除かれてもよい。
【0087】
当然、上記記載に鑑みて、本発明の様々な修正および変更が可能である。ゆえに添付の請求項の範囲内であれば、本発明は詳細に考案されたもの以外にも実施され得るということを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁(11)および液体を入れる内部空間(12)を有する本体(10)を含む液体の光度測定のためのキュベット(100)であって、
前記本体(10)が、
上側の開放頂部(21)およびA−A面において環状または略矩形の、4つの上側のインナーエッジ(26)を備える断面(27)を有する内面を含み、前記上側のインナーエッジ(26)が前記A−A面から上側の開放頂部(21)に向かって延伸する上側部位(20)と、
50μLよりも少ない内部容量を備える下側の測定チャンバ(30)であって、下側の閉鎖底部(31)と、下側の前壁(32)と、下側の後壁(33)と、2枚の下側の側壁(34、35)と、これら下側の壁(32、33、34、35)によって形成されている4つの下側のインナーエッジ(36)と、前記A−A面における第1の略矩形断面(27)よりも小さな、B−B面における第2の略矩形断面(37)を備える下側の開放頂部とを含み、少なくとも前記下側の前壁(32)および前記下側の後壁(33)が、略平面かつ互いに対して略平行である下側の測定チャンバ(30)と、
前記A−A面と前記B−B面との間を延伸し、前記4つの下側のインナーエッジ(36)を前記上側部位(20)に接続する4つの遷移インナーエッジ(46)を含む、前記上側部位(20)と前記下側の測定チャンバ(30)の間の急激な遷移域(40)であって、前記A−A面は前記B−B面とは異なっている遷移域(40)と
を含み、
少なくとも前記B−B面において、前記下側のインナーエッジ(36)が鋭いか、または第1の半径(R1)を有する隅肉部を含み、
前記A−A面において、前記第1の環状の断面が第2の半径(R2)または第2の半径(R2)を有する隅肉部を含む前記上側のインナーエッジ(26)を有し、前記第2の半径(R2)が前記第1の半径(R1)よりも大きく、
前記遷移インナーエッジ(46)が、前記B−B面における前記鋭いエッジまたは前記下側のインナーエッジの第1の半径(R1)から、A−A面における前記第1の環状の断面または前記上側のインナーエッジ(26)の第2の半径(R2)までを通る、次第に大きくなる半径を有する隅肉部を含むことを特徴とする液体の光度測定のためのキュベット(100)。
【請求項2】
前記上側部位(20)が、前記A−A面から前記開放頂部(21)に向かって次第に大きくなる断面を備えるテーパ形状を有する請求項1記載のキュベット(100)。
【請求項3】
前記上側のインナーエッジ(26)が、前記A−A面と前記上側の開放頂部(21)との間に一定な第2の半径(R2)を有する隅肉部を含む請求項1または2記載のキュベット(100)。
【請求項4】
前記上側のインナーエッジ(26)が、前記A−A面から前記上側の開放頂部(21)に向かって次第に大きくなる第2の半径(R2)を有する隅肉部を含む請求項1または2記載のフィレット(100)。
【請求項5】
前記上側の開放頂部(21)が環状の断面を有する請求項4記載のキュベット(100)。
【請求項6】
前記下側の前壁(32)および前記下側の後壁(33)が、前記下側の閉鎖底部(31)の近傍で湾曲した形状を備える隅部を含む略矩形領域を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のキュベット(100)。
【請求項7】
少なくとも前記下側の前壁および前記下側の後壁が光学的に透明である請求項1〜6のいずれか1項に記載のキュベット(100)。
【請求項8】
前記キュベット(100)が、前記キュベット本体の外側に向かって突出する少なくとも1つの周縁部を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のキュベット(100)。
【請求項9】
液体の光度測定のための光学システム(200)であって、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の複数のキュベット(100)と、
光線(60)を発する光源(203)と、
光学検出器(204)と、
下側の前壁(32)が前記光源(203)に面し、下側の後壁(33)が前記光学検出器(204)に面するように、キュベット(100)を1つずつ、前記光源(203)および前記光学検出器(204)と光学的に一直線に並ぶ配置に移動させるように設定されている制御ユニット(205)と
を含む光学システム(200)。
【請求項10】
前記光線(60)が、下側の閉鎖底部(31)に近接する前記キュベット(100)の隅部(39)の形状と実質的に一致する形状を有する断面を有する請求項9記載の光学システム(200)。
【請求項11】
前記光線(60)が、前記下側の前壁(32)の面積よりも2〜10倍小さい、前記下側の前壁(32)との交差部分の面積(62)を有する請求項9または10記載の光学システム(200)。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の光学システム(200)および液体処理ユニット(304)を含む液体の光度測定のための機器(300)であって、
該機器(300)が、キュベット(100)の下側の測定チャンバ(30)における所定の液体容量のピペット処理を制御するため、または所定の液体容量に達するまで1つまたはそれ以上の液体を加えるために設定されており、前記所定の液体容量は、前記測定チャンバ(30)の内部容量とほぼ一致することを特徴とする機器(300)。
【請求項13】
液体の光度測定のための方法であって、
下側の前壁(32)が前記光源(203)に面し、下側の後壁(33)が前記光学検出器(204)に面するように、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキュベット(100)を光線(60)を発する光源(203)および検出器(204)と光学的に一直線に並ぶように保持する工程と、
光度測定を行いながら前記下側の前壁(32)と平行な軸に沿って前記キュベット(100)を移動させる工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記下側の前壁(32)および前記下側の後壁(33)が、前記下側の前壁(32)と前記光線(60)との間の交差部分の面積(62)の2〜10倍の面積を有し、下側の閉鎖底部(31)に近接する隅部(39)が、前記光源(60)の1つのセクターの形状と一致する形状を有するように、前記下側の前壁(32)および前記下側の後壁(33)を設計する工程を含む請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127964(P2012−127964A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−273564(P2011−273564)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】