説明

容量可変型コンデンサ、非接触電力伝送用アンテナ装置、送電装置、受電装置および非接触電力伝送システム

【課題】容量を容易に変更可能としつつ薄厚化を図る。
【解決手段】筒状に形成された内側電極本体51と、内側電極本体51の挿入が可能な挿入孔42が形成された外側電極本体41とを備え、外側電極本体41の挿入孔42に対する内側電極本体51の挿入量に応じて容量が変更可能に構成された容量可変型コンデンサ30であって、8本の内側電極本体51と8本の外側電極本体41とを備え、8本の外側電極本体41が挿入孔42に対する内側電極本体51の挿入方向と交差する向きに沿って並んだ状態で連結されて一体化されると共に、8本の内側電極本体51がその交差する向きに沿って並んだ状態で挿入方向手前側の端部が連結部52によって連結されて一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側電極の挿入孔に対する内側電極の挿入量を変化させることで容量を変更可能に構成された容量可変型コンデンサ、その容量可変型コンデンサを備えて構成された非接触電力伝送用アンテナ装置、その非接触電力伝送用アンテナ装置を備えて構成された送電装置および受電装置、並びに、その送電装置や受電装置を備えて構成された非接触電力伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容量可変型コンデンサとして、特開2007−96319号公報に可変容量チューブラコンデンサ(以下、単に「チューブラコンデンサ」ともいう)が開示されている。このチューブラコンデンサは、金属チューブで構成された外側電極と、外側電極内に配設された誘電体の円筒状チューブ(以下、「誘電体チューブ」という)と、金属ロッドで構成されて誘電体チューブ内に配設された内側電極とで同軸構造に構成されている。この場合、このチューブラコンデンサでは、外側電極が誘電体チューブの外周面に接した状態で誘電体チューブに固定されて両者が一体化されると共に、内側電極が誘電体チューブの内周面に接した状態で誘電体チューブに対する軸方向への移動(スライド)が許容されている。したがって、このチューブラコンデンサでは、誘電体チューブに対して内側電極をスライドさせて外側電極に対する内側電極の挿入量を変化させることにより、外側電極の内周面と内側電極の外周面とが対向する面積を変化させて、その容量を変更することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−96319号公報(第3−10頁、第4−9図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のチューブラコンデンサには、以下の問題点が存在する。すなわち、従来のチューブラコンデンサでは、外側電極、誘電体チューブおよび内側電極で同軸構造に構成されている。一方、例えば非接触型電力伝送システムにおける送電装置や受電装置に搭載されたアンテナ装置では、送受電用のアンテナの製造上のバラツキや経年変化、および湿度や温度の変化などに応じて、送電用のアンテナと送電用の回路との間のインピーダンスや、受電用のアンテナと受電用の回路との間のインピーダンスを最適な整合状態とするために、容量可変型コンデンサがアンテナに並列接続されている。この場合、非接触型電力伝送システムは、各種利用形態での使用を想定して、一層の小型化や薄厚化が望まれている。したがって、送電装置や受電装置に搭載されるアンテナ装置についても、一層の薄厚化が望まれている。この場合、アンテナ装置におけるアンテナ本体については、金属薄板を所望の形状に切断したり、支持基板上の導体パターンで構成したりすることで、十分に薄厚化することが可能となっている。
【0005】
しかしながら、インピーダンス整合用の回路については、一般的なバリアブルコンデンサよりも小型化が図られている従来のチューブラコンデンサを使用したとしても、チューブラコンデンサにおける外側電極の外径よりも薄厚に形成することができない。したがって、インピーダンス整合用の容量可変型コンデンサに求められる容量を確保しつつ、整合用の回路全体の厚みを薄厚化するには、例えば、チューブラコンデンサを長尺に形成して小径化する必要が生じる。しかしながら、チューブラコンデンサを長尺に形成した場合には、インピーダンス整合時に容量を変化させる際の外側電極に対する内側電極の相対的な移動量が多くなる(外側電極に対して内側電極を相対的に大きく移動させる必要が生じる)。
【0006】
したがって、長尺に形成したチューブラコンデンサの容量を手動によって変更する構成を採用した場合には、内側電極(または、外側電極)を移動させる作業が煩雑となる。また、機械的に容量を変更する構成を採用した場合には、内側電極(または、外側電極)を移動させるための移動機構が大掛かりとなる。このため、従来のチューブラコンデンサには、容量を変更する作業が煩雑となる事態や、容量を変更するための移動機構が大掛かりとなる事態を招くことなく薄厚化するのが困難であるという問題点が存在する。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、容量を容易に変更可能としつつ薄厚化を図り得る容量可変型コンデンサを提供することを主目的とし、小型化が可能な非接触電力伝送用アンテナ装置、送電装置、受電装置および非接触電力伝送システムを提供することを他の主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の容量可変型コンデンサは、筒状または柱状に形成された内側電極と、当該内側電極の挿入が可能な挿入孔が形成された外側電極とを備え、当該外側電極の前記挿入孔に対する前記内側電極の挿入量に応じて容量が変更可能に構成された容量可変型コンデンサであって、N本(Nは、2以上の自然数)の前記内側電極とN本の前記外側電極とを備え、前記N本の外側電極が前記挿入孔に対する前記内側電極の挿入方向と交差する向きに沿って並んだ状態で連結されて一体化されると共に、前記N本の内側電極が前記交差する向きに沿って並んだ状態で当該挿入方向手前側の端部が連結されて一体化されている。
【0009】
また、請求項2記載の容量可変型コンデンサは、請求項1記載の容量可変型コンデンサにおいて、前記各内側電極のうちの少なくとも1本が筒状に形成されている。
【0010】
さらに、請求項3記載の容量可変型コンデンサは、請求項1または2記載の容量可変型コンデンサにおいて、前記挿入孔に挿入した状態の前記内側電極における外周面と前記外側電極の前記挿入孔における内周面との間に配設されて当該内側電極および当該外側電極の相対的なスライドを許容しつつ、当該内側電極および当該外側電極を相互に支持するリング状のスペーサを備えている。
【0011】
さらに、請求項4記載の容量可変型コンデンサは、請求項1から3のいずれかに記載の容量可変型コンデンサにおいて、前記N本の外側電極は、導電性材料で形成された板体に互いに平行なN個の前記挿入孔が形成されて構成されている。
【0012】
また、請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置は、請求項1から4のいずれかに記載の容量可変型コンデンサと、導体ラインがループ状に形成されたアンテナコイルとを備え、前記容量可変型コンデンサが前記アンテナコイルに接続されている。
【0013】
また、請求項6記載の送電装置は、請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置と、交流信号を発生して前記非接触電力伝送用アンテナ装置に供給する信号発生部とを備えている。
【0014】
また、請求項7記載の受電装置は、請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置と、当該非接触電力伝送用アンテナ装置の前記アンテナコイルに発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部とを備えている。
【0015】
また、請求項8記載の非接触電力伝送システムは、請求項6記載の送電装置と、非接触電力伝送用アンテナ装置のアンテナコイルに発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部を有する受電装置とを備えている。
【0016】
また、請求項9記載の非接触電力伝送システムは、請求項7記載の受電装置と、交流信号を発生して非接触電力伝送用アンテナ装置に供給する信号発生部を有する送電装置とを備えている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の容量可変型コンデンサによれば、筒状または柱状に形成されたN本の内側電極と内側電極の挿入が可能な挿入孔が形成されたN本の外側電極とを備え、N本の外側電極を挿入孔に対する内側電極の挿入方向と交差する向きに沿って並べた状態で連結して一体化すると共に、N本の内側電極を挿入孔に対する挿入方向と交差する向きに沿って並べた状態で挿入方向手前側の端部を連結して一体化したことにより、各外側電極および各内側電極を長尺化することなく、その外径を十分に小径化することができるため、静電容量を変化させる際の挿入孔に対する内側電極の挿入量の変化量が大きくなる事態を回避することができる結果、その容量を容易に変更可能としつつ、容量可変型コンデンサ全体としての厚みを十分に薄厚化することができる。
【0018】
また、請求項2記載の容量可変型コンデンサによれば、各内側電極のうちの少なくとも1本を筒状に形成したことにより、例えば、各内側電極と同径の柱状の内側電極を備えた構成と比較して、中空構造にした内側電極の分だけ、容量可変型コンデンサ全体としての重量を軽量化することができる。
【0019】
さらに、請求項3記載の容量可変型コンデンサによれば、内側電極および外側電極の相対的なスライドを許容しつつ、内側電極および外側電極を相互に支持するリング状のスペーサを備えたことにより、各挿入孔の内周面と各内側電極の外周面との間の距離が変化して静電容量が変化する事態や、各挿入孔の内周面と各内側電極の外周面とが接触する事態を回避して、所望の静電容量を安定的に得ることができる。
【0020】
さらに、請求項4記載の容量可変型コンデンサによれば、導電性材料で形成された板体に互いに平行なN個の挿入孔を形成してN本の外側電極を一体的に構成したことにより、各外側電極を別体に形成してその後に一体化する構成と比較して、板体に対してN個の挿入孔を形成するだけで、各外側電極を相互に連結して一体化したものを製造することができるため、容量可変型コンデンサを確実かつ容易に製造することができる結果、その製造コストを十分に低減することができる。
【0021】
また、請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の容量可変型コンデンサと、導体ラインをループ状に形成したアンテナコイルとを備え、容量可変型コンデンサをアンテナコイルに接続して構成したことにより、アンテナコイルを薄厚に形成することで、非接触電力伝送用アンテナ装置を十分に薄厚化することができる。
【0022】
また、請求項6記載の送電装置によれば、請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置と、交流信号を発生して非接触電力伝送用アンテナ装置に供給する信号発生部とを備えたことにより、薄厚の容量可変型コンデンサを有する薄厚の非接触電力伝送用アンテナ装置を備えて構成したことで、送電装置自体を十分に薄厚化することができる。
【0023】
また、請求項7記載の受電装置によれば、請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置と、非接触電力伝送用アンテナ装置のアンテナコイルに発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部とを備えたことにより、薄厚の容量可変型コンデンサを有する薄厚の非接触電力伝送用アンテナ装置を備えて構成したことで、受電装置を十分に薄厚化することができる。
【0024】
また、請求項8記載の非接触電力伝送システムでは、請求項6記載の送電装置と、非接触電力伝送用アンテナ装置のアンテナコイルに発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部を有する受電装置とを備えている。また、請求項9記載の非接触電力伝送システムでは、請求項7記載の受電装置と、交流信号を発生して非接触電力伝送用アンテナ装置に供給する信号発生部を有する送電装置とを備えている。したがって、請求項8,9記載の非接触電力伝送システムによれば、薄厚の容量可変型コンデンサを有する薄厚の送電装置、および薄厚の容量可変型コンデンサを有する薄厚の受電装置の少なくとも一方を備えて構成することができる結果、非接触電力伝送システム全体としての厚みを十分に薄厚化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電力伝送システム100の構成を示す構成図である。
【図2】送信アンテナ装置10aおよび受信アンテナ装置10bの構成を示す斜視図である。
【図3】容量可変型コンデンサ30の構成を示す分解斜視図である。
【図4】容量可変型コンデンサ30の外観斜視図である。
【図5】容量可変型コンデンサ30の他の外観斜視図である。
【図6】容量可変型コンデンサ30の動作原理について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、容量可変型コンデンサ、非接触電力伝送用アンテナ装置、送電装置、受電装置および非接触電力伝送システムの実施の形態について説明する。
【0027】
図1に示す非接触電力伝送システム(以下、単に「電力伝送システム」という)100は、送電装置1および受電装置2を備え、送電装置1から受電装置2に非接触で電力を送電すると共に、受電装置2において受電した電力を負荷(一例としてバッテリ)9に対して出力することができるように構成されている。この場合、送電装置1は、送信アンテナ装置10a(「非接触電力伝送用アンテナ装置」の一例)、信号発生部11および第1処理部12を備えて構成されている。また、受電装置2は、受信アンテナ装置10b(「非接触電力伝送用アンテナ装置」の他の一例)、直流電圧生成部21および第2処理部22を備えて構成されている。
【0028】
送信アンテナ装置10aは、図2に示すように、アンテナコイル31と、アンテナコイル31の両端部31a,31bに対して並列に接続された容量可変型コンデンサ30とを備えている。アンテナコイル31は、一例として、導電性金属薄板を角枠状に切断することで導体ラインが形成されて、1ターンのコイルとして機能するように構成されている。
このアンテナコイル31は、受電装置2における受信アンテナ装置10bに配設された後述のアンテナコイル31と電磁結合する。具体的には、送信アンテナ装置10aのアンテナコイル31は、受信アンテナ装置10bのアンテナコイル31と共に一対の共鳴器(一対の自己共振コイル)を構成し、電磁場において共鳴する。容量可変型コンデンサ30は、外側電極部40および内側電極部50を備えて構成されている。
【0029】
外側電極部40は、図3に示すように、一例として、導電性金属材料で形成された板体に互いに平行な8個の円形の挿入孔42(「N=8」の例)が形成されて構成されている。この場合、本例の容量可変型コンデンサ30では、外側電極部40における各挿入孔42の周辺部位(同図において一点鎖線で区切った角筒状の部位)がそれぞれ「外部電極」に相当する外側電極本体41として機能する。また、この外側電極部40では、1枚の平板に8個の挿入孔42を形成することで8本の外側電極本体41を形成したことにより、8本の外側電極本体41が、後述する内側電極部50における各内側電極本体51の各挿入孔42に対する挿入方向(矢印Iの向き)と交差する向き(この例では直交する向き)に沿って並んだ状態で連結されて一体化されると共に、互いに電気的に接続された状態となっている。
【0030】
内側電極部50は、8本の内側電極本体51、連結部52、スペーサ53および絶縁板54を備えている。内側電極本体51は、「内側電極」に相当し、一例として、導電性金属材料によって外側電極部40の挿入孔42よりも小径の円筒状(「筒状」の一例)に形成されている(「N本の内側電極のうちの少なくとも1本」が「N=8本」の構成の例)。この内側電極本体51は、外側電極部40の各挿入孔42に対する挿入方向(矢印Iの向き)と交差する向きに沿って並んだ状態で挿入方向手前側の端部(同図における上側の端部)が連結部52によって連結されて一体化されると共に、連結部52を介して相互に電気的に接続されている。また、本例では、一例として、連結部52が各内側電極本体51と同じ導電性金属材料で形成されている。
【0031】
スペーサ53は、外側電極部40の各挿入孔42に挿入した状態の各内側電極本体51における外周面と挿入孔42における内周面との間に配設されて外側電極本体41および内側電極本体51の相対的なスライド(矢印I,Oの向きでの移動)を許容しつつ、外側電極本体41および内側電極本体51を相互に支持する。このスペーサ53は、一例として、テフロン(登録商標)でリング状に形成されて、その外径が外側電極部40における挿入孔42の内径と同程度で、その内径が内側電極部50における内側電極本体51の外径と同程度に形成されている。また、本例では、一例として、各スペーサ53が内側電極本体51の周面に固定されて、各内側電極本体51と共に外側電極部40の挿入孔42内をスライドさせられる構成が採用されている。
【0032】
絶縁板54は、図4に示すように、外側電極部40の各挿入孔42に対して内側電極部50の各内側電極本体51を最も奥側まで挿入した状態において、連結部52の端面が外側電極部40の連結部52側の端面に接して外側電極部40と内側電極部50とが電気的に接続された状態となるのを回避するための絶縁体であって、一例として、内側電極本体51の外径と同径の8個の丸孔が形成された樹脂またはセラミック等の平板で構成されている。なお、この絶縁板54に代えて、外側電極部40における連結部52との対向面に絶縁板54と同様の絶縁板を配設してもよい(図示せず)。
【0033】
この容量可変型コンデンサ30は、図2に示すように、一例として、外側電極部40がアンテナコイル31の端部31aに電気的に接続され、かつ、内側電極部50(この例では、内側電極部50の連結部52)がアンテナコイル31の端部31bに電気的に接続されると共に、図1に示すように、端部31aおよび外側電極部40と、端部31bおよび内側電極部50とが信号発生部11にそれぞれ接続されている。また、この送信アンテナ装置10aは、一例として、外側電極部40がアンテナコイル31と共に図示しない支持基板に固定的に取り付けられると共に、内側電極部50が外側電極部40に対するスライドが許容された状態で配設されている。この場合、この送信アンテナ装置10aでは、一例として、リニアモータによって内側電極部50を外側電極部40の挿入孔42内でスライドさせる構成が採用されている(図示せず)。
【0034】
信号発生部11は、交流信号Sacを生成し、図示しないケーブルを介して送信アンテナ装置10aにおけるアンテナコイル31の両端部31a,31bに供給する。第1処理部12は、上記のリニアモータに制御信号S1を出力して、内側電極部50に対して外側電極部40をスライドさせる。
【0035】
受信アンテナ装置10bは、送電装置1における上記の送信アンテナ装置10aと同様に構成されている。なお、以下の説明において、送電装置1の送信アンテナ装置10aと受電装置2の受信アンテナ装置10bとを区別しないときには、「アンテナ装置10」ともいう。なお、送信アンテナ装置10aおよび受信アンテナ装置10bが同様に構成されている例について説明するが、これは、「非接触電力伝送システム」の「送電装置」および「受電装置」の双方が同じ構成の「アンテナ装置」を備えていることを発明の要件とするものではない。すなわち、送電装置1用のアンテナ装置、および受電装置2用のアンテナ装置において、互いに相違する形状のアンテナコイルを備えて構成することもできるし、容量や大きさが相違する容量可変型コンデンサを備えて構成することもできる。
【0036】
直流電圧生成部21は、一例として整流回路および平滑回路(いずれも図示せず)で構成されて、受信アンテナ装置10bのアンテナコイル31に発生した交流電圧を整流・平滑して、直流電圧Vを生成し、生成した直流電圧Vを負荷9に供給する。第2処理部22は、送電装置1における送信アンテナ装置10aの第1処理部12と同様にして、図示しないリニアモータに制御信号S2を出力して受信アンテナ装置10bにおける容量可変型コンデンサ30の内側電極部50を外側電極部40の挿入孔42内でスライドさせる。
【0037】
この場合、第1処理部12や第2処理部22が実行するインピーダンス整合処理の開始のタイミングや、目標とするインピーダンスの整合状態については、特に限定されるものではないが、一例として、特開2010−130800号公報において出願人が開示している非接触電力システムにおける送電装置の第1処理部や受電装置の第2処理部が実行するインピーダンス整合処理と同様である。したがって、整合処理の開始タイミング等に関する詳細な説明を省略するが、この電力伝送システム100では、出願人が開示している上記の非接触電力システムにおける第1処理部や第2処理部がインピーダンス整合処理に際して第1整合部の容量可変型コンデンサや第2整合部の容量可変型コンデンサの静電容量を変更するのと同様にして、第1処理部12が、送信アンテナ装置10aにおける容量可変型コンデンサ30の静電容量を変更して送信アンテナ装置10aの整合状態を良好な状態に移行させると共に、第2処理部22が、受信アンテナ装置10bにおける容量可変型コンデンサ30の静電容量を変更して受信アンテナ装置10bの整合状態を良好な状態に移行させる処理を実行する。
【0038】
具体的には、第1処理部12および第2処理部22は、インピーダンス整合処理に際して、図示しないリニアモータに制御信号S1,S2を出力することにより、アンテナ装置10における容量可変型コンデンサ30の内側電極部50をスライドさせて静電容量を変化させる。この場合、この容量可変型コンデンサ30では、図5,6に示すように、外側電極部40の各挿入孔42に内側電極部50の各内側電極本体51を挿入した状態において、外側電極部40に対して内側電極部50を矢印Iの向きまたは矢印Oの向きにスライドさせることにより、各挿入孔42に対する各内側電極本体51の挿入長L(すなわち、各挿入孔42に対する各内側電極本体51の挿入量)を変化させて、各外側電極本体41における挿入孔42の内周面と各内側電極本体51の外周面との対向面積を変化(増減)させることによって静電容量を変化させる構成が採用されている。
【0039】
より具体的には、容量可変型コンデンサ30の静電容量を増加させるときには、内側電極部50に対して外側電極部40を矢印Iの向き(挿入方向)にスライドさせることによって挿入長Lを長くする。これにより、各外側電極本体41における挿入孔42の内周面と各内側電極本体51の外周面との対向面積が増加する結果、静電容量が増加する。一方、容量可変型コンデンサ30の静電容量を減少させるときには、内側電極部50に対して外側電極部40を矢印Oの向き(挿入方向に対する逆向き)にスライドさせることによって挿入長Lを短くする。これにより、各外側電極本体41における挿入孔42の内周面と各内側電極本体51の外周面との対向面積が減少する結果、静電容量が減少する。
【0040】
この場合、この容量可変型コンデンサ30では、N=8個の挿入孔42が形成された外側電極部40と、N=8本の内側電極本体51を一体化した内側電極部50とを備えて構成されている。したがって、従来のチューブラコンデンサの外側電極部や内側電極部の直径に対して、約1/8の外径(本例では、外側電極部40の厚み)の各外側電極本体41、および約1/8の外径の内側電極本体51によって従来のチューブラコンデンサと同程度の静電容量を得ることが可能となっている。
【0041】
また、従来のチューブラコンデンサにおける外側電極や内側電極部の直径を容量可変型コンデンサ30における各外側電極本体41の外径(外側電極部40の厚み)や各内側電極本体51の直径と同程度とした場合には、容量可変型コンデンサ30と同程度の静電容量を得るために、各外側電極本体41(各挿入孔42)および各内側電極本体51の長さの8倍の長さにする必要が生じる。このため、容量可変型コンデンサ30は、そのように構成したチューブラコンデンサと比較して十分に短尺となっており、静電容量を変化させる際に各挿入孔42に対する各内側電極本体51の挿入長L(挿入量)を変化させるべき量も十分に少なくなっている。したがって、各内側電極本体51をスライドさせる機構についても十分に簡易な構造となっている。
【0042】
また、この容量可変型コンデンサ30では、各内側電極本体51の周面にスペーサ53が固定されて、このスペーサ53が各内側電極本体51と共に外側電極部40の挿入孔42内をスライドさせられる構成が採用されている。したがって、図6に示すように、各外側電極本体41における挿入孔42の内周面と各内側電極本体51の外周面との間の距離が一定に保たれる結果、外側電極部40に対する内側電極部50のスライド時や、容量可変型コンデンサ30に振動が加わった際に、がたつきに起因して、静電容量が変化したり、各外側電極本体41と各内側電極本体51とが接触したりする事態が回避される。また、この容量可変型コンデンサ30では、連結部52の端面に絶縁板54が配設されている。したがって、図4に示すように、内側電極部50に対して外側電極部40をスライドさせて各内側電極本体51を各挿入孔42に対して最も奥側まで挿入した状態においても、外側電極部40の端面と連結部52の端面とが接触する事態が回避される。
【0043】
このように、この容量可変型コンデンサ30によれば、筒状または柱状(この例では、円筒状)に形成されたN本(この例では、N=8本)の内側電極本体51と内側電極本体51の挿入が可能な挿入孔42が形成されたN本(この例では、N=8本)の外側電極本体41とを備え、挿入孔42に対する内側電極本体51の挿入方向と交差する向きに沿って各外側電極本体41を並べた状態で連結して一体化すると共に、挿入孔42に対する挿入方向と交差する向きに沿って各内側電極本体51を並べた状態で挿入方向手前側の端部を連結部52によって連結して一体化したことにより、各外側電極本体41および各内側電極本体51を長尺化することなく、その外径を十分に小径化することができるため、静電容量を変化させる際の挿入孔42に対する内側電極本体51の挿入量の変化量が大きくなる事態を回避することができる結果、その容量を容易に変更可能としつつ、容量可変型コンデンサ30全体としての厚みを十分に薄厚化することができる。
【0044】
また、この容量可変型コンデンサ30によれば、各内側電極本体51のうちの少なくとも1本(この例では、すべて)を筒状に形成したことにより、例えば、各内側電極本体51と同径の柱状の「内側電極」を備えた構成と比較して、中空構造にした内側電極本体51の分だけ、容量可変型コンデンサ30全体としての重量を軽量化することができる。
【0045】
さらに、この容量可変型コンデンサ30によれば、内側電極本体51および外側電極本体41の相対的なスライドを許容しつつ、内側電極本体51および外側電極本体41を相互に支持するリング状のスペーサ53を備えたことにより、各挿入孔42の内周面と各内側電極本体51の外周面との間の距離が変化して静電容量が変化する事態や、各挿入孔42の内周面と各内側電極本体51の外周面とが接触する事態を回避して、所望の静電容量を安定的に得ることができる。
【0046】
さらに、この容量可変型コンデンサ30によれば、導電性材料で形成された板体に互いに平行なN(この例では、N=8個)の挿入孔42を形成して各外側電極本体41を一体的に構成したことにより、「各外側電極」を別体に形成してその後に一体化する構成と比較して、板体に対してN個(本例では、8個)の挿入孔42を形成するだけで、各外側電極本体41を相互に連結して一体化したもの(外側電極部40)を製造することができるため、容量可変型コンデンサ30を確実かつ容易に製造することができる結果、その製造コストを十分に低減することができる。
【0047】
また、この送信アンテナ装置10aおよび受信アンテナ装置10bによれば、容量可変型コンデンサ30と、導体ラインをループ状に形成したアンテナコイル31とを備え、容量可変型コンデンサ30をアンテナコイル31に接続して構成したことにより、アンテナコイル31を薄厚に形成することで、送信アンテナ装置10aおよび受信アンテナ装置10bを十分に薄厚化することができる。
【0048】
また、この送電装置1によれば、送信アンテナ装置10aと、交流信号Sacを発生して送信アンテナ装置10aに供給する信号発生部11とを備えたことにより、薄厚の容量可変型コンデンサ30を有する薄厚の送信アンテナ装置10aを備えて構成したことで、送電装置1自体を十分に薄厚化することができる。
【0049】
また、この受電装置2によれば、受信アンテナ装置10bと、受信アンテナ装置10bのアンテナコイル31に発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧Vを生成す有する薄厚の受信アンテナ装置10bを備えて構成したことで、受電装置2を十分に薄厚化することができる。
【0050】
また、この電力伝送システム100によれば、交流信号Sacを発生して送信アンテナ装置10aに供給する信号発生部11を有する送電装置1と、受信アンテナ装置10bのアンテナコイル31に発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧Vを生成する直流電圧生成部21を有する受電装置2とを備えたことにより、薄厚の容量可変型コンデンサ30を有する薄厚の送電装置1、および薄厚の容量可変型コンデンサ30を有する薄厚の受電装置2を備えて構成することができる結果、電力伝送システム100全体としての厚みを十分に薄厚化することができる。
【0051】
なお、容量可変型コンデンサ、非接触電力伝送用アンテナ装置、送電装置、受電装置および非接触電力伝送システムの構成については、上記した容量可変型コンデンサ30、アンテナ装置10、送電装置1、受電装置2および電力伝送システム100の構成に限定されるものではない。例えば、静電容量の変更に際して外側電極部40に対して内側電極部50をスライドさせる例について説明したが、内側電極部50を固定的に設置した状態において内側電極部50に対して外側電極部40をスライドさせる構成や、外側電極部40および内側電極部50の双方を互いにスライドさせる構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合においても、上記の容量可変型コンデンサ30と同様に静電容量を好適に変化させることができる。
【0052】
この場合、リニアモータによって内側電極部50をスライドさせる構成について説明したが、「外側電極」や「内側電極」をスライドさせるための機構はこれに限定されず、回転モータとギアとを組み合わせたスライド機構や、空気圧を利用したスライド機構(エアシリンダ)等の各種機構(図示せず)を採用して「外側電極」および「内側電極」の一方に対して他方を相対的にスライドさせることができる。また、手動によって「外側電極」や「内側電極」をスライドさせる構成を採用することもできる。
【0053】
また、導電性金属材料の板体に互いに平行な8個の円形の挿入孔42を形成した外側電極部40を有する容量可変型コンデンサ30を例に挙げて説明したが、「N本の外部電極」の構成はこれに限定されず、別個独立して形成したN本の筒体を「外部電極」として、この「外部電極」を「挿入孔(筒体の内側)」に対する「内側電極」の挿入方向と交差する向きに沿って並べた状態で連結して一体化する構成を採用することもできる(図示せず)。このような構成を採用した場合においても、上記の容量可変型コンデンサ30と同様にして、十分に薄厚化しつつ、静電容量を好適に変化させることができる。また、「外部電極」を「挿入孔(筒体の内側)」に対する「内側電極」の挿入方向と直交する向きに沿って並べた構成について説明したが、直交する向きに限らず、斜めに交差する方向に沿って並べた構成を採用することもできる。このような構成を採用した場合においても、十分に薄形化することができる。
【0054】
さらに、円形の挿入孔42、および円筒状の内側電極本体51を有する容量可変型コンデンサ30を例に挙げて説明したが、「挿入孔」や「内側電極」の形状は円形に限定されず、三角形や多角形の角形の「挿入孔」や、「挿入孔」と相似形の角筒状または角柱状の「内部電極」を備えて構成することもできる。また、各スペーサ53が内側電極本体51の周面に固定されて、各内側電極本体51と共に外側電極部40の挿入孔42内をスライドさせられる構成の容量可変型コンデンサ30を例に挙げて説明したが、「リング状のスペーサ」については、「内部電極」に固定する構成に限定されず、「挿入孔」の内周面に固定する構成を採用したり、「外部電極(挿入孔)」および「内部電極」のいずれにも固定しない構成を採用したりすることができる。また、各内側電極本体51の少なくとも1つを柱状に構成することもできる。
【0055】
加えて、電力伝送システム100における送電装置1および受電装置2のアンテナ装置10に容量可変型コンデンサ30を搭載した例について説明したが、非接触電力伝送システム100における送電装置1および受電装置2のいずれか一方にのみ本発明に係る「容量可変型コンデンサ」を搭載してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 送電装置
2 受電装置
10a 送信アンテナ装置
10b 受信アンテナ装置
11 信号発生部
12 第1処理部
21 直流電圧生成部
22 第2処理部
30 容量可変型コンデンサ
31 アンテナコイル
40 外側電極部
41 外側電極本体
42 挿入孔
50 内側電極部
51 内側電極本体
52 連結部
53 スペーサ
54 絶縁板
100 非接触電力伝送システム
I 矢印
L 挿入長
O 矢印
S1,S2 制御信号
Sac 交流信号
V 直流電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状または柱状に形成された内側電極と、当該内側電極の挿入が可能な挿入孔が形成された外側電極とを備え、当該外側電極の前記挿入孔に対する前記内側電極の挿入量に応じて容量が変更可能に構成された容量可変型コンデンサであって、
N本(Nは、2以上の自然数)の前記内側電極とN本の前記外側電極とを備え、前記N本の外側電極が前記挿入孔に対する前記内側電極の挿入方向と交差する向きに沿って並んだ状態で連結されて一体化されると共に、前記N本の内側電極が前記交差する向きに沿って並んだ状態で当該挿入方向手前側の端部が連結されて一体化されている容量可変型コンデンサ。
【請求項2】
前記各内側電極のうちの少なくとも1本が筒状に形成されている請求項1記載の容量可変型コンデンサ。
【請求項3】
前記挿入孔に挿入した状態の前記内側電極における外周面と前記外側電極の前記挿入孔における内周面との間に配設されて当該内側電極および当該外側電極の相対的なスライドを許容しつつ、当該内側電極および当該外側電極を相互に支持するリング状のスペーサを備えている請求項1または2記載の容量可変型コンデンサ。
【請求項4】
前記N本の外側電極は、導電性材料で形成された板体に互いに平行なN個の前記挿入孔が形成されて構成されている請求項1から3のいずれかに記載の容量可変型コンデンサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の容量可変型コンデンサと、導体ラインがループ状に形成されたアンテナコイルとを備え、前記容量可変型コンデンサが前記アンテナコイルに接続されている非接触電力伝送用アンテナ装置。
【請求項6】
請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置と、交流信号を発生して前記非接触電力伝送用アンテナ装置に供給する信号発生部とを備えている送電装置。
【請求項7】
請求項5記載の非接触電力伝送用アンテナ装置と、当該非接触電力伝送用アンテナ装置の前記アンテナコイルに発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部とを備えている受電装置。
【請求項8】
請求項6記載の送電装置と、非接触電力伝送用アンテナ装置のアンテナコイルに発生した交流電圧を整流すると共に平滑して直流電圧を生成する直流電圧生成部を有する受電装置とを備えている非接触電力伝送システム。
【請求項9】
請求項7記載の受電装置と、交流信号を発生して非接触電力伝送用アンテナ装置に供給する信号発生部を有する送電装置とを備えている非接触電力伝送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate