説明

容量性リアクタンス素子と突入電流防止回路を組み合わせた高効率な交流LED点灯回路

【課題】 商用電源又はその他の交流電源を利用する高効率で高周波ノイズ発生の無い,LED点灯回路を提供する。
【解決手段】 LEDの電流制限素子に容量性リアクタンス素子を用いて高効率を実現し,点灯開始時に過度的に流れる突入電流をバイパス回路に流すと共に,LEDには直列にトランジスタ等による電子的スイッチを設け突入電流が流れている時間、遅延回路により電子的スイッチの導通開始を遅らせ、突入電流が流れなくなった後,定常電流を流すようにしてLEDを保護した高効率点灯回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
照明器具、照明装置関連技術分野における省エネルギー型で高効率な交流LED点灯回路に関する。
【背景技術】
【先行技術文献】
【0003】
従来技術として、交流LED点灯回路に関する先行技術文献を調査したところ、一部関連が有りそうなものとして次の▲1▼〜▲7▼の文献がある。
【先行文献▲1▼】

【0005】
図4について,この回路は容量性リアクタンスを用い高効率化を目指している。しかし,5の整流器で全波整流したのち,6の定電圧ダイオードで定電圧化して,一定電圧を出力している。この電圧を損失の原因となる10の限流抵抗器を通して,7のLEDと8のブリーダ抵抗器(回路を安定に動作させるため、無駄な電流を流す抵抗器)に供給している。さらに自動点滅回路用電源として,常時6の定電圧ダイオードに電流を流さなければならない。効率が低下する原因は、8及び10の抵抗器と6の定電圧ダイオードである。
【0007】
また15のトランジスタのベース回路に接続された16のコンデンサは,13の受光素子の周囲が暗くなり,点灯動作に入る時,点滅を繰り返した後点灯するため,この点滅の繰り返しを軽減する目的のものであると考えられる。周囲の明暗に関係なく、回路に交流電圧が印加された時に生ずる突入電流は,前述したように6の定電圧ダイオードに流して,一定電圧にしているが、その後の定常状態においても流し続けていることは明らかである。
【0009】
図5においても,25の整流器で全波整流を行い,26の定電圧ダイオードで安定化して,一定電圧を出力している。周囲が暗い状態で交流電圧が印加された時に生じる突入電流に対しては,図4と同様に定電圧ダイオードで対応しているが、27のLEDにも,突入電流が流れるため直列に30の限流抵抗器を挿入しなければならない。さらに並列に28のブリーダ抵抗器が接続されているため,損失が増加する欠点がある。
【先行文献▲2▼】

【0011】
図6について,この回路はLEDの電流制限抵抗器の代わりに38の容量性リアクタンス素子を使って効率向上を図っている。しかし,突入電流から43のLEDを保護するため,40の整流器で全波整流した後,41の定電圧ダイオードを並列に接続している。41の定電圧ダイオードの電圧は,43のLEDの端子電圧より高くする必要があるため,突入電流は最初端子電圧の低い43のLEDを流れ,電流が徐々に増して43のLEDの端子電圧が高くなり,41の定電圧ダイオード電圧と等しくなった時点で,初めて41の定電圧ダイオードに流れるようになる。その後は41の定電圧ダイオードと43のLEDを流れてしまうので,43のLEDを突入電流から完全に保護することができず,43のLEDが劣化する欠点がある。
【0013】
また、41の定電圧ダイオードの特性のバラツキ、43のLEDの温度特性などの影響で、43のLEDの最大電流時の順方向電圧を越えると、本来43のLEDを流れる電流が41の定電圧ダイオードを流れる危険性もある。
【先行文献▲3▼】

【0015】
図7について,この回路は51のLEDの電流制限素子として,48のコンデンサを利用して効率化を図っている。しかし,突入電流防止回路がないため,47,49の抵抗器Rで分圧した後,50の整流器で全波整流し,51のLEDを駆動している。そのため47,49の抵抗器の損失が大きくなり,消費電力が大きくなると共に、点灯開始時LEDに短い時間であるが、定常時の電流より大きな電流が流れ、51のLEDの劣化の原因となる欠点がある。
【先行文献▲4▼】

【0017】
図8について,この回路は電流制限素子として57のコンデンサを利用して,効率化を図っている。しかし、突入電流は初期時に必ず端子電圧の低い62のLEDを流れてしまうため、61の電流制限抵抗器を直列に挿入する必要がある。そのため、58の抵抗器の損失に61の電流制限抵抗器の損失が加わり、効率を低下させると共に突入電流を62のLEDに流してしまう欠点がある。
【先行文献▲5▼】

【0019】
図9について,この回路は,電流制限素子として,66のコンデンサのみを用いる。極めて高い効率が得られる。しかし,点灯開始時に流れる突入電流で68のLEDが破壊され,実用化は難しい。また半波で68のLEDを点灯しているため,チラツキも問題である。
【先行文献▲6▼】

【0021】
図10について,この回路は損失を低減し効率の向上を図っているが,方法は全く異なる。72のLEDユニットを駆動するために73の定電流回路を用いる。そして,定電流回路に加える電圧は,定電流動作が可能な最低電圧を印加するように,74の最低電圧検出装置により自動的に制御して効率を高くしている。
【先行文献▲7▼】

【0023】
図11について,この回路は効率向上を目指しているが回路方式は異なる。スイッチング素子として,82のサイリスタを用いた位相制御回路により電力損失を少なくしている。
【前出の先行技術文献一覧】
先行文献▲1▼ 特開2007−59247の回路図その1(図4)
先行文献▲1▼ 特開2007−59247の回路図その2(図5)
先行文献▲2▼ 特開平11−97747の回路図(図6)
先行文献▲3▼ 特開2008−107370の回路図(図7)
先行文献▲4▼ 特開2000−306685の回路図(図8)
先行文献▲5▼ 特開2003−332625の回路図(図9)
先行文献▲6▼ 特開2006−278304の回路図(図10)
先行文献▲7▼ 特開平6−242733の回路図(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
温室効果ガスCO削減により地球温暖化を防止することは、人類の責務である。照明の分野においても省エネルギー化を進めており、LEDを光源にした照明器具、照明装置に関する先行技術文献が発表され、製品も市販されている。しかし、従来の白熱電球に比べれば大幅に省エネルギー化されたものの、より効率化を考えるとまだ十分とは言い難い。
本発明は、LEDを商用電源またはその他の交流電源で、ノイズの発生することなく、高効率に点灯する目的の電子回路に関するものである。
【0027】
商用電源や交流電源を使用したLED点灯回路において、容量性リアクタンス素子を利用することによる高効率化と、点灯開始時に過度的に流れる突入電流から、LEDを保護する安定な点灯回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記課題を解決するため、LEDに流す定常時の電流値を決める電流制限素子として容量性リアクタンス(低損失のコンデンサ)を主体に用いる。しかし、LED点灯開始時に、容量性リアクタンス素子を充電するための過度的に大きな突入電流が流れ、先行文献▲5▼が示すように、LEDが破損する。これを阻止する目的で、この突入電流を点灯開始時のみバリスタ素子でバイパスさせる。かつ定常時にはバリスタに電流を流さない様にしている。
【0031】
こうして、LEDに流れる電流は、過度的に突入電流が流れている間はLEDに直列に接続されたトランジスタを遮断状態に保ち流さないようにしている。容量性リアクタンス素子の充電が完了した後は、LEDに定常状態の電流を流す様にしている。
【0033】
このように、本発明は、先行文献▲1▼、▲3▼、▲4▼が示すように損失の要因となる電流制限抵抗器を使用することなく、電流制限素子をほぼ容量性リアクタンスとしたことによる高効率化と、先行文献▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼に示すように、突入電流をLEDに流すことなく、LEDを過度的な突入電流から保護するため、故障が少なく安全なLED点灯回路を提供できる。
【0035】
また回路内に先行文献▲7▼に示すような位相制御回路、高周波スイッチング回路等を使用しないため、高周波ノイズを発生することがない。
【発明の効果】
【0037】
一般の家庭等で常夜灯として利用されている豆電球は約5Wであり、同程度の明るさを得る本発明点灯回路使用時のLED3個の消費電力は、図3に示すように20分の1の約0.25Wである。その他の照明装置全般にも使用できる高効率の交流LED型電球用点灯回路が提供できるため、温室効果ガスCOの削減に役立ち、地球温暖化防止に寄与できる。
【0039】
一例を示すと、日本の世帯数約5000万戸、各戸で常夜灯電球5Wを2個使用した時の全消費電力は50万kWとなる。本発明の点灯回路でLED3個の明るさで使用時の消費電力は、0.25Wであり、2個使用すると0.5Wとなり、全所帯数では消費電力は2万5000kWである。差し引き47万5000kWの削減効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】は、本発明の一実施例の回路図である。
【図2】は、本発明の一実施例のLED電球の外観。
【図3】は、本発明の一実施例LED3個使用回路の電源電圧と消費電力の関係示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0043】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は回路図である。3は定常状態におけるLEDに流れる電流の値を決める容量性リアクタンス素子(低損失のコンデンサ)である。
【0045】
8は点灯開始時に過度的に流れる過大な突入電流をバイパスする目的で使用するバリスタである。そのバリスタ電圧は、定常状態における7のLEDの順方向電圧と、9のトランジスタの飽和電圧の和の電圧より高い値を選び、定常時には7のLEDだけに電流を流し、8のバリスタには流さないようにしている。
【0047】
また、12の抵抗器はバリスタを流れる突入電流の最大値を決めるためのものである。8のバリスタのピーク許容電流値が大きいため、12の抵抗値の値は3の容量性リアクタンスの値と比較して極めて低く設定できるため、高効率化が実現できる。
【0049】
6、10の抵抗器は9のトランジスタのベース電流を決めると共に、11のコンデンサと組み合わせて、遅延回路を形成し、突入電流が流れている時間、9のトランジスタの導通開始を遅延させる。
【0051】
結果的には、突入電流が流れている間、9のトランジスタは遮断状態となり、LEDを突入電流から保護する。定常状態においては、LEDに定常電流を流し続ける。
【0053】
なお、10の抵抗器は、9のトランジスタのベース電流と遅延時間を決めると共に、商用電源または他の交流電源への接続が切断された時、11のコンデンサの電荷を放電させ、次の点灯開始時の突入電流に備えるためのものである。
【0055】
11のコンデンサと6、10の抵抗器から決定される充電時定数は、突入電流の流れている時間より大きく選び、放電時定数は、可能な限り小さくする。
【0057】
点灯開始時に流れる突入電流の流れる時間は、概算3の容量性リアクタンス素子の静電容量値及び12の抵抗器の抵抗値、商用電源または交流電源のインピーダンスから求められる。
【0059】
4の抵抗器は、3の容量性リアクタンス素子に充電された電荷を放電させるためのものであり、電撃防止を目的に接続している。
【0061】
2のヒューズは、点灯回路に不具合が発生した場合に流れる過大電流に備えるものであり安全目的に使用されている。2のヒューズは電流動作型ヒューズに限らず、温度動作型ヒューズを用いても良い。5はダイオードによるブリッジ整流回路である。
【0063】
8のバリスタは前述したように過度的に流れる突入電流を流すものであり、双方向性または単方向性のノイズ吸収用ダイオードを用いても良い。また、9のトランジスタはスイッチング作用をしており、バイポーラトランジスタに限らずFETを利用しても良いのは当然である。
【0065】
図1の実施例においてLEDの数は、商用電源100Vの場合は1〜24個位まで対応可能である。当然200Vラインにも対応できる。使用LEDの数により、3の容量性リアクタンス素子の容量、8のバリスタの動作電圧の値、6の抵抗器の抵抗値、11のコンデンサの容量などを変更する必要がある。さらにLEDの個数を増加させるには、本回路を複数個使用することが可能である。
【産業上の利用の可能性】
【0067】
本発明は、白熱電球に代わるLED電球の新しい高効率の点灯回路として、家庭用照明器具、装置への利用は当然のことであるが、照明装置は、公共施設、オフィス、工場、交通機関などあらゆる分野で利用できるものであり、それぞれの分野において、エネルギー削減に大きく寄与できるものである。
【符号の説明】
1 商用電源または他の交流電源
2 普通溶断型または温度ヒューズ
3 容量性リアクタンス素子(低損失コンデンサ)
4 放電用抵抗器
5 整流用ダイオードまたはダイオードブリッジ
6 遅延時間及びバイアス電流設定用抵抗器
7 LED
8 バリスタまたはノイズ吸収用ダイオード
9 トランジスタまたはFET
10 放電用抵抗器
11 遅延時間設定用コンデンサ
12 突入電流最大値設定用抵抗器
13 突入電流の流れる方向
14 定常電流の流れる方向
15 突入電流防止回路
16 本発明点灯回路使用のLED電球3種類の外観
17 本発明点灯回路LED3個の電源電圧対消費電力特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源又は他の交流電源を利用するLED点灯回路にあって,LEDの電流制限素子として,容量性リアクタンスを用いて,エネルギー効率を高くすると共に,点灯開始時に容量性リアクタンス素子に過度的に流れる突入電流をバリスタ回路にバイパスし,突入電流がバリスタを流れている間LEDに直列に接続されたトランジスタの導通開始を遅らせ、LEDには突入電流が流れなくなったのち,定常電流を流すようにして,LEDを突入電流から保護した高効率点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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