説明

容量性表示素子の駆動装置

【課題】容量性表示素子を駆動する駆動装置において、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすこと。
【解決手段】EL表示素子60に正極性電圧とそれを反転した負極性電圧を交互に印加してEL表示素子60を駆動する駆動装置100は、EL表示素子60の一端に接続されるスイッチQ6と、一端に正極性電圧及び負極性電圧を供給するための電源70が接続され、他端にスイッチQ6が接続されるコンデンサ50と、EL表示素子60の他端と電源70とに接続されるスイッチQ1と、EL表示素子60の一端と電源70とに接続されるスイッチQ2と、EL表示素子60の他端とコンデンサ50の一端とを接続するスイッチQ4とを備え、EL表示素子60の充電期間のうち、充電期間開始直後の所定期間は、スイッチQ1及びQ6のみがONとなり、残りの期間は、スイッチQ1及びQ2のみがONとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量性表示素子に正極性電圧とそれを反転した負極性電圧を交互に印加して容量性表示素子を駆動する容量性表示素子の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として無機エレクトロルミネセンス表示素子(以下、EL表示素子という)が注目されている。EL表示素子は、対向する電極間に誘電物質で挟まれたEL層を含む誘電物質層が介在されているため、電気的にはコンデンサとして扱うことができる。単純マトリクス型液晶表示パネルも同様に、対向する電極間に電気絶縁性の液晶層が介在されているため、電気的にはコンデンサとして扱うことができる。このため、EL表示素子や液晶表示素子は、容量性表示素子として定義することができる。
【0003】
EL表示素子の駆動方式として、チョークコイルのリアクタンスとEL表示素子の容量との共振により発生する正弦波の電圧によって駆動するブロッキング発振方式や、極性を交互に反転させたパルスを印加することで駆動する反転パルス駆動方式等が知られている。
【0004】
EL表示素子の駆動方法に関する文献として、例えば特許文献1が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−260850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EL表示素子は、それ自体がコンデンサとして機能するため、スイッチング素子を切り替えて急峻な高電圧の交流波形をEL表示素子に印加すると、圧電効果により、音響ノイズや電磁ノイズが発生する。これらのノイズは、EL表示素子に印加される交流波形の電圧が高くなるほど大きくなり、EL表示素子の高輝度化の大きな課題となっている。また、急峻な交流波形はEL表示素子の寿命をも短くする。
【0007】
一般に、EL表示素子の低ノイズ化および長寿命化のためには、EL表示素子に印加される交流波形は正弦波カーブが最適であると言われており、スイッチング素子による急峻な波形をより正弦波カーブに近づける努力が為されている。
【0008】
上記ブロッキング発振方式によれば、EL表示素子の低ノイズ化および長寿命化を図ることができるが、この方式にはトランスやチョークコイルが必要であるため、EL表示素子を駆動する駆動装置が大きく且つ重くなってしまう。
【0009】
一方、反転パルス駆動方式によれば大型化を避けることも可能だが、スイッチング素子による急峻な波形がEL表示素子に印加されてしまうため、上記のような課題が発生してしまう。特に、家庭用テレビ等に搭載するEL表示素子のようにEL表示素子のサイズが大きくなると、EL表示素子の容量も大きくなるため、EL表示素子の充電及び放電時の突入電流が大きくなってしまい、EL表示素子を駆動する駆動装置に含まれるスイッチング素子の損傷やEL表示素子の劣化を促進することになってしまう。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、容量性表示素子を駆動する駆動装置において、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の駆動装置は、容量性表示素子に正極性電圧とそれを反転した負極性電圧を交互に印加して前記容量性表示素子を駆動する容量性表示素子の駆動装置であって、前記容量性表示素子の一端に接続される第1のスイッチと、一端に前記正極性電圧及び前記負極性電圧を供給するための電源が接続され、他端に前記第1のスイッチが接続される第1のコンデンサとを備え、前記第1のスイッチは、前記容量性表示素子と前記電源とが接続される前記容量性表示素子の充電期間のうち前記充電期間開始直後の所定期間は前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、残りの期間は前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを非接続にする。
【0012】
この構成により、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすことができる。
【0013】
本発明の駆動装置は、前記容量性表示素子の他端と前記電源とを接続する第2のスイッチと、前記容量性表示素子の他端と前記第1のコンデンサの一端とを接続する第3のスイッチと、前記容量性表示素子の一端と前記電源とを接続する第4のスイッチとを備え、前記容量性表示素子の放電時、前記第1のスイッチは前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、前記第2のスイッチ及び前記第4のスイッチは前記電源と前記容量性表示素子とを非接続にし、前記第3のスイッチは前記容量性表示素子の他端と前記第1のコンデンサの一端とを接続する。
【0014】
この構成により、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすことができる。
【0015】
本発明の駆動装置は、前記電源は直流電源であり、前記容量性表示素子の他端に接続される第5のスイッチと、一端に前記電源のマイナス端子が接続され、他端に前記第5のスイッチが接続される第2のコンデンサと、前記容量性表示素子の一端と前記電源のプラス端子とを接続する第6のスイッチとを備え、前記第1のコンデンサの一端は前記電源のマイナス端子に接続されており、前記第2のスイッチは前記電源のプラス端子に接続されており、前記第4のスイッチは前記電源のマイナス端子に接続されており、前記正極性電圧による前記容量性表示素子の充電期間のうち、前記充電期間開始直後の所定期間は、前記第2のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続し、前記第1のスイッチが前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、残りの期間は、前記第1のスイッチが前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを非接続にし、前記第4のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続し、前記負極性電圧による前記容量性表示素子の充電期間のうち、前記充電期間開始直後の所定期間は、前記第6のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続し、前記第5のスイッチが前記容量性表示素子と前記第2のコンデンサとを接続し、残りの期間は、前記第5のスイッチが前記容量性表示素子と前記第2のコンデンサとを非接続にし、前記第3のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続する。
【0016】
この構成により、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすことができる。
【0017】
本発明の駆動装置は、前記正極性電圧による前記充電期間後の前記容量性表示素子の放電時、前記第1のスイッチは前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、前記第2のスイッチ及び前記第4のスイッチは前記電源と前記容量性表示素子とを非接続にし、前記第3のスイッチは前記容量性表示素子の他端と前記第1のコンデンサの一端とを接続し、前記負極性電圧による前記充電期間後の前記容量性表示素子の放電時、前記第5のスイッチは前記容量性表示素子と前記第2のコンデンサとを接続し、前記第3のスイッチ及び前記第6のスイッチは前記電源と前記容量性表示素子とを非接続にし、前記第4のスイッチは前記容量性表示素子の一端と前記第2のコンデンサの一端とを接続する。
【0018】
この構成により、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすことができる。
【0019】
本発明の駆動装置は、前記直流電源が交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換する電圧変換手段によって得られるものである。
【0020】
本発明の駆動装置は、前記容量性表示素子が無機EL表示素子を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容量性表示素子を駆動する駆動装置において、小型化を図りながら、容量性表示素子及び駆動装置の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態を説明するための駆動装置の概略構成を示す回路図である。
図1に示す駆動装置100は、容量性表示素子の一例であるEL表示素子60(図ではコンデンサ60で示してある)を駆動するものであり、家庭用電源等のAC電源からの交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータ10と、トランジスタ等で構成されるスイッチQ1〜Q6と、抵抗30と、コンデンサ40及び50と、所定のプログラムにしたがったタイミングでパルスを発生してスイッチQ1〜Q6の切り替え制御を行うパルス発生回路20とを備える。コンデンサ40の容量C1及びコンデンサ50の容量C2は、それぞれ例えばEL表示素子60の容量Cと同じであるものとする。EL表示素子60は、同一平面上にマトリクス状に配列されることでEL表示装置を構成する。駆動装置100は、このEL表示装置を構成している全てのEL表示素子60の駆動を行う。本実施形態では、EL表示装置として、例えばA1サイズのような大型のものを想定しているが、携帯電話機等に搭載するような小型のものであっても良い。尚、スイッチQ1は第2のスイッチに、スイッチQ2は第4のスイッチに、スイッチQ3は第6のスイッチに、スイッチQ4は第3のスイッチに、スイッチQ5は第5のスイッチに、スイッチQ6は第1のスイッチにそれぞれ相当する。
【0024】
図2は、図1に示した回路の等価回路を示す図である。図2では、図1に示したパルス発生回路20は省略している。
図2において、AC/DCコンバータ10は、直流電圧を出力するものであるため、直流電源10として表記されている。図2に示すように、直流電源10のプラス端子には抵抗30を介してスイッチQ1及びQ3が接続され、マイナス端子にはスイッチQ2及びQ4とコンデンサ40の一端とコンデンサ50の一端とが接続されている。スイッチQ2及びQ3はEL表示素子60の一端に接続され、スイッチQ1及びQ4はEL表示素子60の他端に接続されている。EL表示素子60の一端にはスイッチQ6が接続され、スイッチQ6にはコンデンサ50の他端が接続されている。EL表示素子60の他端にはスイッチQ5が接続され、スイッチQ5にはコンデンサ40の他端が接続されている。
【0025】
次に、図1に示す駆動装置100の動作について、図3を参照して説明する。
図3は、駆動装置100の駆動動作を説明するための図であり、パルス発生回路20の切り替え制御によるスイッチQ1〜Q6の開閉状態を示すタイミングチャートと、各開閉状態におけるEL表示素子60の充放電波形を示した図である。図3において、斜線領域はスイッチがONになっていることを示し、その他の領域はスイッチがOFFになっていることを示す。
【0026】
まず、パルス発生回路20は、EL表示素子60を正極性電圧で充電するために、スイッチQ1とQ6をONにする。これにより、直流電源10のプラス端子とEL表示素子60の他端が抵抗30を介して接続され、EL表示素子60の一端とコンデンサ50の他端が接続され、コンデンサ50の一端と直流電源10のマイナス端子とが接続された回路が構成される。以下、この回路が構成された状態を第1の正充電状態と言う。第1の正充電状態では、EL表示素子60とコンデンサ50とは直列接続されているため、EL表示素子60の容量Cとコンデンサ50の容量C2との合成容量が、1/{(1/C)+(1/C2)}となる。本実施形態では、C=C2としているため、この合成容量はC/2となる。このため、第1の正充電状態において、EL表示素子60及びコンデンサ50は、それぞれ直流電源10からの電圧Vの半分の電圧V/2で充電されることになる。図3に示すように、スイッチQ1とQ6がONの時点で、EL表示素子60は電圧V/2で充電された状態となっている。
【0027】
所定期間後、パルス発生回路20は、スイッチQ6をOFFにし、スイッチQ2をONにする。これにより、直流電源10のプラス端子とEL表示素子60の他端が抵抗30を介して接続され、EL表示素子60の一端と直流電源10のマイナス端子とが接続された回路が構成される。以下、この回路が構成された状態を第2の正充電状態と言う。第2の正充電状態では、EL表示素子60のみが直流電源10からの電圧Vによって充電される。図3に示すように、スイッチQ1とQ2がONの時点で、EL表示素子60は電圧2/Vで充電された状態から電圧Vで充電された状態に変化している。尚、第1の正充電状態及び第2の正充電状態になっている期間(図3においてスイッチQ1がONになっている期間)が、EL表示素子60を正極性電圧で充電する正充電期間となる。正充電期間終了時、EL表示素子60はVで充電されており、コンデンサ50はV/2で充電されている。
【0028】
正充電期間終了後、パルス発生回路20は、EL表示素子60を放電するために、スイッチQ1とQ2をOFFにし、スイッチQ4とQ6をONにする。これにより、EL表示素子60の一端とコンデンサ50の他端とが接続され、コンデンサ50の一端とEL表示素子60の他端とが接続された閉回路が構成される。以下、この閉回路が構成された状態を第1の放電状態と言う。第1の放電状態では、EL表示素子60とコンデンサ50のみによって閉回路が構成されているため、EL表示素子60に蓄積されているエネルギーを、コンデンサ50に蓄積されているエネルギーを利用して放電することができる。図3に示すように、スイッチQ4とQ6がONの時点で、EL表示素子60は放電され、V/2で充電された状態となる。尚、第1の放電状態になっている期間が、EL表示素子60の放電期間となる。放電期間終了時、EL表示素子60はV/2で充電されており、コンデンサ50は充電されていない。
【0029】
放電期間終了後、パルス発生回路20は、EL表示素子60を負極性電圧で充電するために、スイッチQ4とQ6をOFFにし、スイッチQ3とQ5をONにする。これにより、直流電源10のプラス端子とEL表示素子60の一端とが抵抗30を介して接続され、EL表示素子60の他端とコンデンサ40の他端とが接続され、コンデンサ40の一端と直流電源10のマイナス端子とが接続された回路が構成される。以下、この回路が構成された状態を第1の負充電状態と言う。第1の負充電状態では、EL表示素子60とコンデンサ40とは直列接続されているため、EL表示素子60の容量Cとコンデンサ40の容量C1との合成容量が、1/{(1/C)+(1/C1)}となる。本実施形態では、C=C1としているため、この合成容量はC/2となる。このため、第1の負充電状態において、EL表示素子60及びコンデンサ40は、それぞれ直流電源10からの電圧−Vの半分の電圧−V/2で充電されることになる。図3に示すように、スイッチQ3とQ5がONの時点で、EL表示素子60は電圧−V/2で充電された状態となっている。
【0030】
所定期間後、パルス発生回路20は、スイッチQ5をOFFにし、スイッチQ4をONにする。これにより、直流電源10のマイナス端子とEL表示素子60の他端が接続され、EL表示素子60の一端と直流電源10のプラス端子とが抵抗30を介して接続された回路が構成される。以下、この回路が構成された状態を第2の負充電状態と言う。第2の負充電状態では、EL表示素子60のみが直流電源10からの電圧−Vによって充電される。図3に示すように、スイッチQ3とQ4がONの時点で、EL表示素子60は電圧−2/Vで充電された状態から電圧−Vで充電された状態に変化している。尚、第1の負充電状態及び第2の負充電状態になっている期間(図3においてスイッチQ3がONになっている期間)が、EL表示素子60を負極性電圧で充電する負充電期間となる。負充電期間終了時、EL表示素子60は−Vで充電されており、コンデンサ40は−V/2で充電されている。
【0031】
負充電期間終了後、パルス発生回路20は、EL表示素子60を放電するために、スイッチQ3とQ4をOFFにし、スイッチQ2とQ5をONにする。これにより、EL表示素子60の他端とコンデンサ40の他端とが接続され、コンデンサ40の一端とEL表示素子60の一端とが接続された閉回路が構成される。以下、この閉回路が構成された状態を第2の放電状態と言う。第2の放電状態では、EL表示素子60とコンデンサ40のみによって閉回路が構成されているため、EL表示素子60に蓄積されているエネルギーを、コンデンサ40に蓄積されているエネルギーを利用して放電することができる。図3に示すように、スイッチQ2とQ5がONの状態でEL表示素子60は放電され、−V/2で充電された状態となる。尚、駆動装置100を第2の放電状態にしている期間が、EL表示素子60の放電期間となる。放電期間終了時、EL表示素子60は−V/2で充電されており、コンデンサ40は充電されていない。この後も駆動装置100は、正充電期間、放電期間、負充電期間、放電期間をこの順に繰り返すことにより、EL表示素子60を駆動する。尚、本実施形態では、正充電期間、放電期間、負充電期間、及び放電期間の制御を、パルス発生回路20が発生するパルスの1周期T(=1/f)で行っている。
【0032】
以上のように駆動装置100によれば、正充電期間の開始直後は、EL表示素子60とコンデンサ50とを直列に接続して、EL表示素子60とコンデンサ50とを充電し、その後、EL表示素子60とコンデンサ50との接続を解除して、EL表示素子60のみを充電するようにしているため、EL表示素子60に急峻な高電圧が印加されてしまうことがなくなる。これは、負充電期間についても同様である。このため、EL表示素子60への突入電流を小さくすることができ、駆動装置100に含まれるスイッチやコンデンサ等の素子やEL表示素子60の損傷,劣化を防ぐことができる。したがって、EL表示素子60や駆動装置100の寿命を延ばすことが可能となる。又、駆動装置100によれば、トランスやチョークコイル等の素子を不要とすることができるため、装置の小型化を図ることができる。
【0033】
又、従来のブロッキング発振方式のように、EL表示素子駆動装置にチョークコイルを設ける構成では、EL表示素子の特性に合わせたチョークコイルが必要であるため、汎用性を持たせるために様々な特性のEL表示素子に対応させて複数種類のチョークコイルを設ける必要があった。しかしながら、チョークコイルを複数種類設けてしまうと、EL表示素子駆動装置が非常に大きくなってしまうという問題が生じる。ところが、駆動装置100によれば、例えば、スイッチQ6及びコンデンサ50の直列回路やスイッチQ5及びコンデンサ40の直列回路に並列に、様々な特性のEL表示素子に対応させたコンデンサとスイッチの直列回路を設けておくことで、汎用性を持たせることが可能となる。コンデンサやスイッチは、チョークコイルに比べて小型であるため、小型化で且つ汎用性のあるEL表示素子駆動装置を実現することができる。
【0034】
又、駆動装置100によれば、放電期間において、EL表示素子60とコンデンサ50又はコンデンサ40のみからなる閉回路を構成し、EL表示素子60に蓄積されているエネルギーを、コンデンサ50又はコンデンサ40に蓄積されているエネルギーを利用して放電することができる。このため、駆動装置100の低消費電力化を図ることができる。又、放電の際、EL表示素子60に蓄積されているエネルギーに急激な変化が加わることがないため、放電時の突入電流も小さくすることができる。
【0035】
尚、上記では、駆動装置100の駆動対象をEL表示素子60として説明したが、駆動対象は容量性表示素子であれば何でもよく、例えば、液晶表示素子であっても良い。
【0036】
又、上記では、駆動装置100が、AC電源からの交流電圧をAC/DCコンバータ10で直流電圧に変換し、この直流電圧を利用してEL表示素子60を駆動しているが、AC電源ではなく、乾電池やリチウムイオン電池等の電池を電源としても良い。この場合は、AC/DCコンバータ10は不要である。
【0037】
又、上記では、EL表示素子60の容量Cとコンデンサ40の容量C1及びコンデンサ50の容量C2とを同じとしているが、これは同じでなくても良く、EL表示素子60の特性に応じて様々な値にすることが可能である。EL表示素子60の容量Cとコンデンサ40の容量C1及びコンデンサ50の容量C2との関係は、C1=C2=X(X=0.3〜0.8)×Cとなっていることが、突入電流を抑制するうえで特に好ましい。又、抵抗30は、EL表示素子60への突入電流をより小さくするために設けたものであるが、抵抗30の抵抗値RとEL表示素子60の容量Cとの関係は、R=(1/2πfC)×10−2×Y(Y=0.2〜1.2)となっていることが、突入電流を抑制するうえで特に好ましい。
【0038】
又、上記では、スイッチQ1をON,スイッチQ3をOFFにして、AC/DCコンバータ10からEL表示素子60に印加される電圧を正極性電圧にし、スイッチQ3をON,スイッチQ1をOFFにして、AC/DCコンバータ10からEL表示素子60に印加される電圧を負極性電圧にするといった具合に、スイッチQ1,Q3のスイッチングによって、正極性電圧及び負極性電圧を生成しているが、AC/DCコンバータ10の替わりに、正極性電圧と負極性電圧を交互に発生するパルス発振器70を用いた構成であっても良い。この場合の等価回路は、図2に示す等価回路において、スイッチQ3、スイッチQ5、及びコンデンサ40を設けず、直流電源10をパルス発振器70に置き換えた図4に示すような回路となる。
【0039】
図4に示す等価回路で示される駆動装置100の動作を説明する。
まず、パルス発生回路20は、EL表示素子60を正極性電圧で充電するために、パルス発振器70が正極性パルスを発振している期間に、スイッチQ1とQ6をONにする。これにより、駆動装置100は第1の正充電状態となり、EL表示素子60及びコンデンサ50は、それぞれパルス発振器70からの電圧Vの半分の電圧V/2で充電される。
【0040】
所定期間後、パルス発生回路20は、スイッチQ6をOFFにし、スイッチQ2をONにする。これにより、駆動装置100は第2の正充電状態となり、EL表示素子60のみがパルス発振器70からの電圧Vによって充電され、コンデンサ50はV/2で充電された状態となる。
【0041】
正充電期間終了後、パルス発生回路20は、EL表示素子60を放電するために、スイッチQ1とQ2をOFFにし、スイッチQ4とQ6をONにする。これにより、駆動装置100は第1の放電状態となり、EL表示素子60は放電され、V/2で充電された状態となる。
【0042】
放電期間終了後、パルス発生回路20は、EL表示素子60を負極性電圧で充電するために、パルス発振器70が負極性パルスを発振している期間に、スイッチQ1とQ6をONにする。これにより、駆動装置100は第1の正充電状態となり、EL表示素子60及びコンデンサ50は、それぞれパルス発振器70からの電圧−Vの半分の電圧−V/2で充電される。
【0043】
所定期間後、パルス発生回路20は、スイッチQ6をOFFにし、スイッチQ2をONにする。これにより、駆動装置100は第2の正充電状態となり、EL表示素子60のみがパルス発振器70からの電圧−Vによって充電され、コンデンサ50は−V/2で充電された状態となる。
【0044】
負充電期間終了後、パルス発生回路20は、EL表示素子60を放電するために、スイッチQ1とQ2をOFFにし、スイッチQ4とQ6をONにする。これにより、駆動装置100は第1の放電状態となり、EL表示素子60は放電され、−V/2で充電された状態となる。この後も駆動装置100は、正充電期間、放電期間、負充電期間、放電期間をこの順に繰り返すことにより、EL表示素子60を駆動する。
【0045】
このように、図4に示すような構成であっても、上述したような効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態を説明するための駆動装置の概略構成を示す回路図
【図2】本発明の実施形態を説明するための駆動装置の等価回路を示す図
【図3】本発明の実施形態を説明するための駆動装置の駆動動作を説明するための図
【図4】本発明の実施形態を説明するための駆動装置の等価回路の変形例を示す図
【符号の説明】
【0047】
100 駆動装置
10 AC/DCコンバータ
20 パルス発生回路
40,50 コンデンサ
60 EL表示素子
Q1〜Q6 スイッチ
70 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量性表示素子に正極性電圧とそれを反転した負極性電圧を交互に印加して前記容量性表示素子を駆動する容量性表示素子の駆動装置であって、
前記容量性表示素子の一端に接続される第1のスイッチと、
一端に前記正極性電圧及び前記負極性電圧を供給するための電源が接続され、他端に前記第1のスイッチが接続される第1のコンデンサとを備え、
前記第1のスイッチは、前記容量性表示素子と前記電源とが接続される前記容量性表示素子の充電期間のうち前記充電期間開始直後の所定期間は前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、残りの期間は前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを非接続にする容量性表示素子の駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の容量性表示素子の駆動装置であって、
前記容量性表示素子の他端と前記電源を接続する第2のスイッチと、
前記容量性表示素子の他端と前記第1のコンデンサの一端とを接続する第3のスイッチと、
前記容量性表示素子の一端と前記電源とを接続する第4のスイッチとを備え、
前記容量性表示素子の放電時、前記第1のスイッチは前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、前記第2のスイッチ及び前記第4のスイッチは前記電源と前記容量性表示素子とを非接続にし、前記第3のスイッチは前記容量性表示素子の他端と前記第1のコンデンサの一端とを接続する容量性表示素子の駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の容量性表示素子の駆動装置であって、
前記電源は直流電源であり、
前記容量性表示素子の他端に接続される第5のスイッチと、
一端に前記電源のマイナス端子が接続され、他端に前記第5のスイッチが接続される第2のコンデンサと、
前記容量性表示素子の一端と前記電源のプラス端子とを接続する第6のスイッチとを備え、
前記第1のコンデンサの一端は前記電源のマイナス端子に接続されており、
前記第2のスイッチは前記電源のプラス端子に接続されており、
前記第4のスイッチは前記電源のマイナス端子に接続されており、
前記正極性電圧による前記容量性表示素子の充電期間のうち、前記充電期間開始直後の所定期間は、前記第2のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続し、前記第1のスイッチが前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、残りの期間は、前記第1のスイッチが前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを非接続にし、前記第4のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続し、
前記負極性電圧による前記容量性表示素子の充電期間のうち、前記充電期間開始直後の所定期間は、前記第6のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続し、前記第5のスイッチが前記容量性表示素子と前記第2のコンデンサとを接続し、残りの期間は、前記第5のスイッチが前記容量性表示素子と前記第2のコンデンサとを非接続にし、前記第3のスイッチが前記容量性表示素子と前記電源とを接続する容量性表示素子の駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の容量性表示素子の駆動装置であって、
前記正極性電圧による前記充電期間後の前記容量性表示素子の放電時、前記第1のスイッチは前記容量性表示素子と前記第1のコンデンサとを接続し、前記第2のスイッチ及び前記第4のスイッチは前記電源と前記容量性表示素子とを非接続にし、前記第3のスイッチは前記容量性表示素子の他端と前記第1のコンデンサの一端とを接続し、
前記負極性電圧による前記充電期間後の前記容量性表示素子の放電時、前記第5のスイッチは前記容量性表示素子と前記第2のコンデンサとを接続し、前記第3のスイッチ及び前記第6のスイッチは前記電源と前記容量性表示素子とを非接続にし、前記第4のスイッチは前記容量性表示素子の一端と前記第2のコンデンサの一端とを接続する容量性表示素子の駆動装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の容量性表示素子の駆動装置であって、
前記直流電源は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換する電圧変換手段によって得られるものである容量性表示素子の駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の容量性表示素子の駆動装置であって、
前記容量性表示素子は、無機EL表示素子を含む容量性表示素子の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−48935(P2006−48935A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223722(P2004−223722)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】