寄棟屋根の換気構造

【課題】棟木、母屋、軒桁等の梁と、隅木、垂木等を備えた寄棟屋根において、隅木により前方を閉鎖された空間においても確実に換気を可能にする。
【解決手段】棟木(2)、軒桁(3)等の梁と、垂木(5)、隅木(6)、配付け垂木(7)等を備えた寄棟屋根において、前記垂木(5)間の空間、前記配付け垂木(7)と前記隅木(6)とで囲まれた空間の下側を下地材(8)で閉鎖し、前記下地材(8)の下面側に断熱材(9)を取り付けることにより行う寄棟屋根の換気構造であって、前記下地材(8)は、棟木(2)に当接する部分においては棟木(2)の下面まで延出し、隅木(6)に当接する部分においては隅木(6)の下面まで延出するとともに、棟木(2)の端部近傍においては棟木(2)の下面まで延出したことを特徴とし、これにより配付け垂木(7)と隅木(6)とで囲まれた空間内においても換気を可能にした。
【解決手段】棟木(2)、軒桁(3)等の梁と、垂木(5)、隅木(6)、配付け垂木(7)等を備えた寄棟屋根において、前記垂木(5)間の空間、前記配付け垂木(7)と前記隅木(6)とで囲まれた空間の下側を下地材(8)で閉鎖し、前記下地材(8)の下面側に断熱材(9)を取り付けることにより行う寄棟屋根の換気構造であって、前記下地材(8)は、棟木(2)に当接する部分においては棟木(2)の下面まで延出し、隅木(6)に当接する部分においては隅木(6)の下面まで延出するとともに、棟木(2)の端部近傍においては棟木(2)の下面まで延出したことを特徴とし、これにより配付け垂木(7)と隅木(6)とで囲まれた空間内においても換気を可能にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は寄棟屋根の換気構造に係り、より詳しくは、上方部分を隅木により閉鎖された空間内の換気を可能にしたことを特徴とする寄棟屋根の換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋根裏の換気は、屋根材と天井との間のいわゆる屋根裏空間を用いておこなっていたが、近年になり普及しているロフト等では、屋根裏の空間が無いために、このように屋根裏の空間が無い場合には、必然的に、屋根材の下面を利用した換気構造を行わざるを得ない。
【0003】
そしてそのとき、前述のような、屋根裏の空間が無い場合には断熱材の施工も屋根材の下面で行わざるを得ないために、断熱材の施工をしつつ換気も可能にするために、従来は、垂木間の空間に下地材を配設することにより換気構造の施工を行っていた。
【0004】
ここで、この構造を説明すると、図10は切妻屋根における構造部分の一部を概略で示しており、また、図11は、図10におけるM−M線断面で見た場合の切妻屋根の構造を示し、更に図12は、図10におけるN−N線断面で見た場合の切妻屋根の構造を示した図である。
【0005】
そして、図において31は棟木、32は母屋、更に33は軒桁であり、軒桁33から棟木31にかけては、棟木31と直交する方向に向けて複数本の垂木34が並列に架設されており、棟木31の上方には、棟換気構造40が備えられている(図11参照)。
【0006】
そして、このような構造における換気構造では、例えばダンボール等の下地材を用いて、この下地材を、垂木34間の空間の下側を閉鎖するような配置で垂木34の下面に配設し、この下地材の下面に断熱材を施工している。
【0007】
即ち、図11及び図12において35が下地材としてのダンボールであり、この下地材35は、垂木35間の空間S31の下側を閉鎖するような配置で、垂木35の下面に固着されており、この下地材35の下面には、断熱材としての発泡ウレタン36を吹き付けて断熱施工をしている。
【0008】
そして、このように垂木34間の空間S4の下側を下地材35で閉鎖すると、図10及び図11において矢印Oで示すように、軒桁33側から垂木34間の空間S31内に入ってきた空気は、この空間S31を棟木31に向かって上昇していき、その後に棟木31の上方に備えた棟換気構造40から抜けていき、あるいは反対側の軒桁33側へ抜け出ていき、これにより、断熱材36により断熱をしつつ、屋根材の下面で換気を行うことが可能となる。
【0009】
このように、切妻屋根の場合には、垂木間の空間S31の下側をダンボール等の下地材で閉鎖することで換気することが可能であるが、この方法では、寄棟屋根の場合には換気ができない箇所ができてしまうという問題点がある。
【0010】
即ち、図13は寄棟屋根の構造を示す図であり、周知のように、寄棟屋根では、四方向に傾斜を作るために隅木38を有しており、この隅木38には、屋根の傾斜方向と同一方向に向けて配付け垂木39の先端部が連結されている。そのために、寄棟屋根では、配付け垂木39と隅木38で囲まれた空間S32は、その傾斜方向に見た上端部分が隅木38により閉鎖された閉鎖空間となっている。
【0011】
従って、このような閉鎖空間S32では、その下面を下地材で閉鎖してしまうと、軒桁側33から閉鎖空間S32内に入ってきた空気は、隅木34の部分で止まってしまい抜け出る箇所が無いために、換気を行うことが不可能になってしまう。
【0012】
この点、断熱材として断熱用の板材を用いて、この断熱板材を母屋の下部に配設することで換気を可能にした施工方法も提供されており、これによれば、野地材と母屋との間に隙間が形成されるとともに母屋上に載置された隅木の下端面と断熱板材との間にも隙間が形成されるために、換気を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開平10−121594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述のような工法では、母屋の下端面に断熱材取付固定部材を固設する必要があり作業工程が増えてしまうという問題点が考えられる。
【0014】
また、断熱材として断熱用の板材を用いることを前提としているため、発泡ウレタン等の断熱材を吹き付ける方法と異なり、断熱材の取り付けに手間がかかるという問題点も考えられる。
【0015】
その一方、前述の工法では、母屋の下端面に断熱材を備える必要があるために、断熱材としては板材を用いざるを得ず、発泡ウレタン等の吹きつけによる断熱材の施工は不可能であるという問題点がある。
【0016】
また、母屋の下部に断熱材を配設する方法では、母屋を用いないツーバイフォーの場合には対応できないという問題点も指摘できる。
【0017】
そこで、本発明は、棟木、軒桁等の梁と、垂木、隅木、配付け垂木等を備えた寄棟屋根において、隅木により上端部分を閉鎖された閉鎖空間においても確実に換気を可能にした換気構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の寄棟屋根の換気構造は、棟木、軒桁等の梁と、垂木、隅木、配付け垂木等を備えた寄棟屋根において、前記垂木間の空間、前記配付け垂木と前記隅木とで囲まれた空間の下側を下地材で閉鎖して行う寄棟屋根の換気構造であって、
前記下地材は、棟木に当接する部分においては棟木の下面まで延出し、隅木に当接する部分においては隅木の下面まで延出するとともに、棟木の端部近傍においては棟木の下面まで延出した、ことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の寄棟屋根の換気構造は、前記下地材を棟木又は隅木下面まで延出するに際して、棟木又は隅木の下面と下地材との間に空間を形成することも特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の寄棟屋根の換気構造では、寄棟屋根において、垂木間の空間、配付け垂木と隅木とで囲まれた空間の下側を下地材で閉鎖するに際して、前記下地材を、棟木に当接する部分においては棟木の下面まで延出し、隅木に当接する部分においては隅木の下面まで延出し、更に、棟木の端部近傍においては棟木の下面まで延出することとしており、これにより、下地材が棟木に当接する部分近傍及び下地材が隅木と当接する部分近傍において垂木又は配付け垂木の下面と下地材との間に空間を形成し、更に、棟木の端部近傍において、隅木の下面と下地材との間に空間が形成されるようにしている。
【0021】
そのため、上端部分側を隅木により閉鎖されている空間に入ってきた空気は、まず、下地材が隅木と当接する部分近傍における配付け垂木の下面と下地材との間の空間を通って棟木の端部近傍まで上昇していき、その後、棟木の端部近傍において、隅木の下面と下地材との間の空間、下地材が棟木に当接する部分近傍における配付け垂木の下面と下地材との間の空間を通過して垂木間の空間に流れていき、その後、棟換気構造を介して屋根の外側に抜け出て行く。
【0022】
そしてこのとき、下地材を棟木又は隅木下面まで延出するに際して、棟木又は隅木の下面と下地材との間に空間を形成することにより、棟木と垂木、隅木と垂木の高さ方向の寸法が同一であるツーバイフォーの場合でも換気を行うことができる。
【0023】
従って、本発明によれば、隅木により上端部分を閉鎖された空間においても確実に換気を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の寄棟屋根の換気構造では、棟木、軒桁等の梁と、垂木、隅木、配付け垂木等を備えた寄棟屋根において、垂木又は配付け垂木の下面にダンボール等の下地材を貼り付けることにより、垂木間の空間、配付け垂木と隅木とで囲まれた空間の下側を下地材で閉鎖するとともに、下地材の下面側には、発泡ウレタン等の断熱材を吹き付けて構成されている。
【0025】
そして、前記下地材は、棟木に当接する部分においては棟木の下面まで延出しており、これにより、下地材が棟木に当接する部分近傍において、垂木の下面と下地材との間に、空間を形成している。
【0026】
また、前記下地材は、隅木に当接する部分において隅木の下面まで延出するとともに、棟木の端部近傍においては棟木の下面まで延出しており、これにより、下地材が隅木と当接する部分近傍において配付け垂木の下面と下地材との間に空間を形成するとともに、棟木の端部近傍において隅木の下面と下地材との間に空間を形成している。
【0027】
そしてこれらにより、上端部分を隅木により閉鎖された空間に入ってきた空気が、下地材が隅木と当接する部分近傍における配付け垂木の下面と下地材との間の空間を通って棟木の端部近傍まで上昇した後に、隅木の下側等を通過して垂木間の空間に流れていき棟換気構造を介して屋根の外側に抜け出て行くことを可能にしている。
【0028】
ここで、前記下地材を棟木又は隅木下面まで延出するに際して、スペーサーを介して、棟木又は隅木の下面と下地材との間に空間を形成してもよく、これによれば、棟木と垂木、隅木と垂木の高さ方向の寸法が同一であるツーバイフォーの場合でも、垂木間に入ってきた空気や上端部分を隅木により閉鎖されている空間に入ってきた空気を外部に出すことが可能である。
【実施例1】
【0029】
本発明の寄棟屋根の換気構造の実施例について図面を参照して説明すると、図1は、寄棟屋根における骨組み部分を示す平面図であり、図2は、図1におけるA−A線端面を拡大して示した図であり、図3は、図1におけるB−B線断面部分の近傍を拡大して示した図であり、図4は、図1におけるD−D線端面を拡大した図であり、図5は、図1におけるC−C線断面部分の近傍を拡大して示した斜視図であり、更に、図6は、図1におけるE−E断面を示した図である。
【0030】
そして、本実施例における寄棟屋根は、棟木及び隅木により四方向に傾斜が作られた構造としており、以下においては、図1において左側の傾斜面を「正面側屋根部1a」、右側の傾斜面を「背面側屋根部1c」、上側及び下側の傾斜面を「側面側屋根部1b」と称する。
【0031】
即ち、図において2は棟木であり、また、図において3は軒桁、4は母屋であり、前記棟木2の上方には、図1において点線で示した棟換気構造11が備えられている。
【0032】
更に、図において5は、軒桁3から棟木2に掛けて架設された垂木であり、この垂木5は、軒桁3から棟木2にかけて複数本が平行に架設されており、従って、垂木5間には空間S1(以下「連通空間」という。)が形成されているとともに、この連通空間S1は、一方面の軒桁3側から反対面の軒桁3側まで連通された空間とされている。そしてこれにより、軒桁3側から垂木5間の空間S1に入ってきた空気は、矢印Fで示しているように、屋根の傾斜方法に沿って棟木2に向かって上昇していった後に、棟換気構造11を介して屋根の外側へ抜け出て行くことが可能となる。
【0033】
次に、図において6は隅木、7は上端を前記隅木6に連結された配付け垂木であり、前記隅木6の先端部分は前記棟木2の端部近傍上に設置されており、配付け垂木7の高さ寸法は、図4及び図5からも明らかなように、隅木6の高さ寸法よりも短いとともに、配付け垂木7は、上面を隅木7の上面と揃えた状態で隅木7に連結されている。
【0034】
そして、配付け垂木7と隅木6により囲まれた空間S2はいずれも、屋根の傾斜方向に向いた上方側を前記隅木6により閉鎖された空間とされている。そのために、何らの手当てをしない場合には、軒桁3側からこれらの空間S2内に入ってきた空気は、屋根の頂上へ向けて上昇した後に、隅木6に遮られてしまい抜け出ることができず、そのまま空間S2内に止まってしまい、換気を行うことができないことになる。
【0035】
次に、図2乃至図6において8は下地材である。即ち、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、前記連通空間S1及び閉鎖空間S2の下側面に下地材8を配設しており、これにより、前記連通空間S1及び閉鎖空間S2を換気用の空間としている。
【0036】
そして、本実施例では、前記下地材8としてはダンボール紙を用いており、この下地材8を、前記垂木5及び配付け垂木7の下面にステープル等の綴じ金具で固着して、前記連通空間S1及び閉鎖空間S2の下面を閉鎖している。
【0037】
更に、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、前記下地材8の下面に、断熱材としての発泡ウレタン7を吹き付けており、これにより屋根裏における断熱を可能にしている。
【0038】
ここで、本実施例における前記下地材8の取り付け方法について説明すると、図2及び図3において、前記連通空間S1の下面を閉鎖する下地材8は、垂木5の下面にステープル等で固着するとともに、母屋4及び棟木2に当接する部分においては、母屋4及び棟木2の下面に延出して、この延出した部分を母屋又は棟木2の下面にステープル等で留めており、これにより、下地材8が棟木2又は母屋4に当接する部分近傍においては、垂木5の下面と下地材8との間に空間S3、S4を形成している。
【0039】
また、図4及び図5において、前記閉鎖空間S2の下面を閉鎖する下地材8は、隅木6と当接する部分を前記隅木6の下面に延出しており、これにより、下地材8が隅木6と当接する部分近傍においては、配付け垂木7の下面と下地材8と間に空間S5を形成している。
【0040】
更に、図6において、棟木2の端部近傍においては、即ち、隅木6と棟木2とが交わる部分近傍においては、隅木7の下面に延出させた下地材8を更に、棟木2の下面に延出しており、これにより、棟木2の端部近傍においては、隅木6の下面と下地材8との間に空間S6が形成されるようにしている。
【0041】
次に、このように構成される本実施例の寄棟屋根の換気構造の作用について説明すると、まず、正面側屋根1a又は背面側屋根1cの軒桁部分から連通空間S1a内に入ってきた空気の流れについて説明すると、この空気は、図1において矢印Fで示すように、下地材8の上方側を通って棟木2に向かって上昇していった後に、棟木2の上方に備えた棟換気構造11を介して屋根の上方側へ抜け出ていく。
【0042】
次に、正面側屋根1a、背面側屋根1c、又は側面側屋根1bの軒桁3側から配付け垂木7と隅木6により囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気の流れについて、図1における矢印Gを用いて説明すると、正面側屋根1a又は背面側屋根1cにおける閉鎖空間S2に入ってきた空気は、まず、図5において矢印で示すように、下地材8が隅木6と当接する部分近傍における配付け垂木7の下面と下地材8間の空間S5を通って隅木6に沿って上昇していく。そして、隅木6の先端部分近傍に行き着いた後に、配付け垂木7の下面と下地材8の間の空間を通って、配付け垂木7と垂木5間に入り、棟換気構造11を介して屋根の外側に抜け出て行く。
【0043】
また、側面側屋根1bの軒桁3側から配付け垂木7と隅木6により囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気は、まず、下地材8が隅木6と当接する部分近傍における配付け垂木7の下面と下地材8との間の空間S5を通って隅木6に沿って上昇していき(図5参照)、隅木6の先端部分近傍に行き着いた後に、隅木6の先端部分が設置されている棟木2の端部近傍において、隅木6の下面と下地材8との間の空間S6を通って、隅木6を挟んで隣り合う閉鎖空間S2内へ移動する。そして、配付け垂木7の下面と下地材8との間の空間S5を通って配付け垂木7と垂木5間に入り、棟換気構造11を介して屋根の外側に抜け出て行く。
【0044】
従って、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、垂木5間の連通空間S1内に入ってきた空気のみならず、配付け垂木7と隅木6とで囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気をも排気可能である。
【0045】
そしてこのとき、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、垂木5の下面に下地材8を貼り付けるに際して、この下地材8を、棟木2に当接する部分においては棟木2の下面まで延出しており、隅木6に当接する部分において隅木6の下面まで延出し、更に、棟木2の端部近傍においては棟木2の下面まで延出するのみで良いため、断熱板材を母屋の下部に配設することで換気を可能にした施工方法と異なり、母屋の下端面に断熱材取付固定部材を固設する必要が無く、作業工程が増えてしまうことがないとともに、発泡ウレタン等の吹き付けにより断熱施工を行うことが可能である。
【0046】
なお、方形屋根においては、垂木のすべてが配付け垂木となるために垂木間の連通空間が存在せず屋根材の下面におけるすべての空間が閉鎖空間となるために、下地材を配設するに際しては、本実施例において閉鎖空間S2の下側に下地材8を配設する方法を踏襲すればよい。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の寄棟屋根の換気構造における他の実施例について説明すると、図7は、本実施例の寄棟屋根における骨組み部分を示す平面図であり、図8は、図7におけるH−H断面構造を拡大して示した図であり、図9は、図8におけるI−I線端面構造を拡大して示した図である。そして、本実施例の寄棟屋根の換気構造は、特にツーバーフォーに適した形態としている。
【0048】
周知のように、ツーバーフォーの屋根においては、棟木の側面側に垂木を連結しており、垂木と棟木との高さ寸法は同一としている。また、隅木と配付け垂木との高さ寸法も同一としている。そのために、垂木の下面に貼り付けた下地材を棟木又は隅木の下面に延出した場合でも、下地材が棟木に当接する部分近傍及び下地材が隅木と当接する部分近傍において垂木と下地材との間に空間を形成することができない。そこで、本実施例では、下地材を棟木又は隅木の下面に延出するに際して、棟木と下地材との間、及び、隅木と下地材との間に空間を形成することとしている。
【0049】
即ち、図8において、棟木2の下面に下地材8を延出するに際して、棟木2の下面にスペーサー10を配置し、このスペーサー10に下地材8をステープル等で留めている。そしてこれにより、棟木2の下面と下地材8との間、及び、棟木2の近傍における垂木5と下地材8との間に空間S7を形成している。
【0050】
また、図9において、隅木6の下面に下地材8を延出するに際しては、隅木6の下面にもスペーサー10を配置してこのスペーサー10に下地材8をステープル等で留め、これにより、隅木6の下面と下地材8との間、及び、隅木6の近傍における垂木5と下地材8との間にも空間S8を形成している。
【0051】
次に、このように構成される本実施例の寄棟屋根における換気構造の作用について説明すると、正面側屋根1aの軒桁3側から垂木5間の空間S1に入ってきた空気は、図7において矢印Jで示すように、屋根の傾斜方向に向かって上昇していき、棟木2に行き着いた後に、棟木2の下面と下地8間の空間S7を通過して背面側屋根1cの垂木5間に入っていき、この垂木5間を下降していき背面側屋根1cの軒桁3より抜け出ていく。
【0052】
一方、閉鎖空間S2内に入ってきた空気は、図7において矢印Kで示すように、屋根の傾斜方向に向かって上昇した後に、隅木6の下面と下地材8との間の空間S8を通って、隅木6を挟んで隣り合う閉鎖空間S2内に入り、その後、屋根の傾斜に沿って下降していき軒桁3から抜け出ていくか、あるいは、図7において矢印Lで示すように、隅木6の下面と下地材8との間の空間S8を通って隅木6に沿って上昇していき、隅木6の先端部分近傍に行き着いた後に、配付け垂木7の下面と下地材8との間の空間を通って配付け垂木7と垂木5間に入り、屋根の傾斜に沿って下降して軒桁3より抜け出て行く。
【0053】
従って、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、ツーバーフォーの場合であっても、配付け垂木7と隅木6とで囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気を排気することが可能である。
【0054】
なお、本実施例の寄棟屋根の換気構造は、スペーサーを用いて、棟木2と下地材8との間、及び隅木6と下地材8との間に空間を形成したことを特徴としており、その他の構成等は前述の実施例と同様であるため、重複した説明は省略するとともに、同一部分には同一符号を付した。
【0055】
また、本実施例におけるスペーサーの形状等は特に限定されないが、ブロック状のスペーサーの場合には等間隔を置いて複数個配置し、正面形状をラウンド状にして通気路が形成されている場合には棟木2又は隅木6に沿って連続して配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明では、空気が抜け出ることが不可能な閉鎖空間内の換気を可能にしているために、方形屋根等、換気が不可能な閉鎖空間を有する屋根の全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の寄棟屋根の換気構造の実施例を説明するための図であり、寄棟屋根の骨組み部分の平面を示している。
【図2】図1におけるA−A線端面を拡大して示した図である。
【図3】図1におけるB−B線断面部分を拡大して示した斜視図である。
【図4】図1におけるD−D線端面を拡大して示した図である。
【図5】図1におけるC−C線断面部分近傍を拡大して示した斜視図である。
【図6】図1におけるE−E線断面構造を示した図である
【図7】本発明の寄棟屋根の換気構造の第2実施例を説明するための図であり、寄棟屋根の骨組み部分の平面を示している。
【図8】図7におけるH−H断面構造を拡大して示した図である。
【図9】図7におけるI−I端面構造を拡大して示した図である。
【図10】切妻屋根における換気構造を説明するための図である。
【図11】図10におけるM−M線断面構造を示す図である。
【図12】図10におけるN−N線断面構造を示す図である。
【図13】寄棟屋根を説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
1a 正面側屋根部分
1b 側面側屋根部分
1c 背面側屋根部分
2 棟木
3 軒桁
4 母屋
4b 横架材
5 垂木
6 隅木
7 配付け垂木
8 下地材
9 断熱材
10 スペーサー
11 棟換気構造
S1 垂木間の空間(「連通空間」)
S2 閉鎖空間
S3 下地材が棟木に当接する部分近傍における下地材と垂木下面間の空間
S4 下地材が母屋に当接する部分近傍における下地材と垂木下面間の空間
S5 下地材が隅木と当接する部分近傍における下地材と配付け垂木下面間の空間
S6 棟木の端部近傍における下地材と隅木下面間の空間
S7 棟木の下面側に形成した空間
S8 隅木の下面側に形成した空間
【技術分野】
【0001】
本発明は寄棟屋根の換気構造に係り、より詳しくは、上方部分を隅木により閉鎖された空間内の換気を可能にしたことを特徴とする寄棟屋根の換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋根裏の換気は、屋根材と天井との間のいわゆる屋根裏空間を用いておこなっていたが、近年になり普及しているロフト等では、屋根裏の空間が無いために、このように屋根裏の空間が無い場合には、必然的に、屋根材の下面を利用した換気構造を行わざるを得ない。
【0003】
そしてそのとき、前述のような、屋根裏の空間が無い場合には断熱材の施工も屋根材の下面で行わざるを得ないために、断熱材の施工をしつつ換気も可能にするために、従来は、垂木間の空間に下地材を配設することにより換気構造の施工を行っていた。
【0004】
ここで、この構造を説明すると、図10は切妻屋根における構造部分の一部を概略で示しており、また、図11は、図10におけるM−M線断面で見た場合の切妻屋根の構造を示し、更に図12は、図10におけるN−N線断面で見た場合の切妻屋根の構造を示した図である。
【0005】
そして、図において31は棟木、32は母屋、更に33は軒桁であり、軒桁33から棟木31にかけては、棟木31と直交する方向に向けて複数本の垂木34が並列に架設されており、棟木31の上方には、棟換気構造40が備えられている(図11参照)。
【0006】
そして、このような構造における換気構造では、例えばダンボール等の下地材を用いて、この下地材を、垂木34間の空間の下側を閉鎖するような配置で垂木34の下面に配設し、この下地材の下面に断熱材を施工している。
【0007】
即ち、図11及び図12において35が下地材としてのダンボールであり、この下地材35は、垂木35間の空間S31の下側を閉鎖するような配置で、垂木35の下面に固着されており、この下地材35の下面には、断熱材としての発泡ウレタン36を吹き付けて断熱施工をしている。
【0008】
そして、このように垂木34間の空間S4の下側を下地材35で閉鎖すると、図10及び図11において矢印Oで示すように、軒桁33側から垂木34間の空間S31内に入ってきた空気は、この空間S31を棟木31に向かって上昇していき、その後に棟木31の上方に備えた棟換気構造40から抜けていき、あるいは反対側の軒桁33側へ抜け出ていき、これにより、断熱材36により断熱をしつつ、屋根材の下面で換気を行うことが可能となる。
【0009】
このように、切妻屋根の場合には、垂木間の空間S31の下側をダンボール等の下地材で閉鎖することで換気することが可能であるが、この方法では、寄棟屋根の場合には換気ができない箇所ができてしまうという問題点がある。
【0010】
即ち、図13は寄棟屋根の構造を示す図であり、周知のように、寄棟屋根では、四方向に傾斜を作るために隅木38を有しており、この隅木38には、屋根の傾斜方向と同一方向に向けて配付け垂木39の先端部が連結されている。そのために、寄棟屋根では、配付け垂木39と隅木38で囲まれた空間S32は、その傾斜方向に見た上端部分が隅木38により閉鎖された閉鎖空間となっている。
【0011】
従って、このような閉鎖空間S32では、その下面を下地材で閉鎖してしまうと、軒桁側33から閉鎖空間S32内に入ってきた空気は、隅木34の部分で止まってしまい抜け出る箇所が無いために、換気を行うことが不可能になってしまう。
【0012】
この点、断熱材として断熱用の板材を用いて、この断熱板材を母屋の下部に配設することで換気を可能にした施工方法も提供されており、これによれば、野地材と母屋との間に隙間が形成されるとともに母屋上に載置された隅木の下端面と断熱板材との間にも隙間が形成されるために、換気を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開平10−121594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述のような工法では、母屋の下端面に断熱材取付固定部材を固設する必要があり作業工程が増えてしまうという問題点が考えられる。
【0014】
また、断熱材として断熱用の板材を用いることを前提としているため、発泡ウレタン等の断熱材を吹き付ける方法と異なり、断熱材の取り付けに手間がかかるという問題点も考えられる。
【0015】
その一方、前述の工法では、母屋の下端面に断熱材を備える必要があるために、断熱材としては板材を用いざるを得ず、発泡ウレタン等の吹きつけによる断熱材の施工は不可能であるという問題点がある。
【0016】
また、母屋の下部に断熱材を配設する方法では、母屋を用いないツーバイフォーの場合には対応できないという問題点も指摘できる。
【0017】
そこで、本発明は、棟木、軒桁等の梁と、垂木、隅木、配付け垂木等を備えた寄棟屋根において、隅木により上端部分を閉鎖された閉鎖空間においても確実に換気を可能にした換気構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の寄棟屋根の換気構造は、棟木、軒桁等の梁と、垂木、隅木、配付け垂木等を備えた寄棟屋根において、前記垂木間の空間、前記配付け垂木と前記隅木とで囲まれた空間の下側を下地材で閉鎖して行う寄棟屋根の換気構造であって、
前記下地材は、棟木に当接する部分においては棟木の下面まで延出し、隅木に当接する部分においては隅木の下面まで延出するとともに、棟木の端部近傍においては棟木の下面まで延出した、ことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の寄棟屋根の換気構造は、前記下地材を棟木又は隅木下面まで延出するに際して、棟木又は隅木の下面と下地材との間に空間を形成することも特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の寄棟屋根の換気構造では、寄棟屋根において、垂木間の空間、配付け垂木と隅木とで囲まれた空間の下側を下地材で閉鎖するに際して、前記下地材を、棟木に当接する部分においては棟木の下面まで延出し、隅木に当接する部分においては隅木の下面まで延出し、更に、棟木の端部近傍においては棟木の下面まで延出することとしており、これにより、下地材が棟木に当接する部分近傍及び下地材が隅木と当接する部分近傍において垂木又は配付け垂木の下面と下地材との間に空間を形成し、更に、棟木の端部近傍において、隅木の下面と下地材との間に空間が形成されるようにしている。
【0021】
そのため、上端部分側を隅木により閉鎖されている空間に入ってきた空気は、まず、下地材が隅木と当接する部分近傍における配付け垂木の下面と下地材との間の空間を通って棟木の端部近傍まで上昇していき、その後、棟木の端部近傍において、隅木の下面と下地材との間の空間、下地材が棟木に当接する部分近傍における配付け垂木の下面と下地材との間の空間を通過して垂木間の空間に流れていき、その後、棟換気構造を介して屋根の外側に抜け出て行く。
【0022】
そしてこのとき、下地材を棟木又は隅木下面まで延出するに際して、棟木又は隅木の下面と下地材との間に空間を形成することにより、棟木と垂木、隅木と垂木の高さ方向の寸法が同一であるツーバイフォーの場合でも換気を行うことができる。
【0023】
従って、本発明によれば、隅木により上端部分を閉鎖された空間においても確実に換気を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の寄棟屋根の換気構造では、棟木、軒桁等の梁と、垂木、隅木、配付け垂木等を備えた寄棟屋根において、垂木又は配付け垂木の下面にダンボール等の下地材を貼り付けることにより、垂木間の空間、配付け垂木と隅木とで囲まれた空間の下側を下地材で閉鎖するとともに、下地材の下面側には、発泡ウレタン等の断熱材を吹き付けて構成されている。
【0025】
そして、前記下地材は、棟木に当接する部分においては棟木の下面まで延出しており、これにより、下地材が棟木に当接する部分近傍において、垂木の下面と下地材との間に、空間を形成している。
【0026】
また、前記下地材は、隅木に当接する部分において隅木の下面まで延出するとともに、棟木の端部近傍においては棟木の下面まで延出しており、これにより、下地材が隅木と当接する部分近傍において配付け垂木の下面と下地材との間に空間を形成するとともに、棟木の端部近傍において隅木の下面と下地材との間に空間を形成している。
【0027】
そしてこれらにより、上端部分を隅木により閉鎖された空間に入ってきた空気が、下地材が隅木と当接する部分近傍における配付け垂木の下面と下地材との間の空間を通って棟木の端部近傍まで上昇した後に、隅木の下側等を通過して垂木間の空間に流れていき棟換気構造を介して屋根の外側に抜け出て行くことを可能にしている。
【0028】
ここで、前記下地材を棟木又は隅木下面まで延出するに際して、スペーサーを介して、棟木又は隅木の下面と下地材との間に空間を形成してもよく、これによれば、棟木と垂木、隅木と垂木の高さ方向の寸法が同一であるツーバイフォーの場合でも、垂木間に入ってきた空気や上端部分を隅木により閉鎖されている空間に入ってきた空気を外部に出すことが可能である。
【実施例1】
【0029】
本発明の寄棟屋根の換気構造の実施例について図面を参照して説明すると、図1は、寄棟屋根における骨組み部分を示す平面図であり、図2は、図1におけるA−A線端面を拡大して示した図であり、図3は、図1におけるB−B線断面部分の近傍を拡大して示した図であり、図4は、図1におけるD−D線端面を拡大した図であり、図5は、図1におけるC−C線断面部分の近傍を拡大して示した斜視図であり、更に、図6は、図1におけるE−E断面を示した図である。
【0030】
そして、本実施例における寄棟屋根は、棟木及び隅木により四方向に傾斜が作られた構造としており、以下においては、図1において左側の傾斜面を「正面側屋根部1a」、右側の傾斜面を「背面側屋根部1c」、上側及び下側の傾斜面を「側面側屋根部1b」と称する。
【0031】
即ち、図において2は棟木であり、また、図において3は軒桁、4は母屋であり、前記棟木2の上方には、図1において点線で示した棟換気構造11が備えられている。
【0032】
更に、図において5は、軒桁3から棟木2に掛けて架設された垂木であり、この垂木5は、軒桁3から棟木2にかけて複数本が平行に架設されており、従って、垂木5間には空間S1(以下「連通空間」という。)が形成されているとともに、この連通空間S1は、一方面の軒桁3側から反対面の軒桁3側まで連通された空間とされている。そしてこれにより、軒桁3側から垂木5間の空間S1に入ってきた空気は、矢印Fで示しているように、屋根の傾斜方法に沿って棟木2に向かって上昇していった後に、棟換気構造11を介して屋根の外側へ抜け出て行くことが可能となる。
【0033】
次に、図において6は隅木、7は上端を前記隅木6に連結された配付け垂木であり、前記隅木6の先端部分は前記棟木2の端部近傍上に設置されており、配付け垂木7の高さ寸法は、図4及び図5からも明らかなように、隅木6の高さ寸法よりも短いとともに、配付け垂木7は、上面を隅木7の上面と揃えた状態で隅木7に連結されている。
【0034】
そして、配付け垂木7と隅木6により囲まれた空間S2はいずれも、屋根の傾斜方向に向いた上方側を前記隅木6により閉鎖された空間とされている。そのために、何らの手当てをしない場合には、軒桁3側からこれらの空間S2内に入ってきた空気は、屋根の頂上へ向けて上昇した後に、隅木6に遮られてしまい抜け出ることができず、そのまま空間S2内に止まってしまい、換気を行うことができないことになる。
【0035】
次に、図2乃至図6において8は下地材である。即ち、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、前記連通空間S1及び閉鎖空間S2の下側面に下地材8を配設しており、これにより、前記連通空間S1及び閉鎖空間S2を換気用の空間としている。
【0036】
そして、本実施例では、前記下地材8としてはダンボール紙を用いており、この下地材8を、前記垂木5及び配付け垂木7の下面にステープル等の綴じ金具で固着して、前記連通空間S1及び閉鎖空間S2の下面を閉鎖している。
【0037】
更に、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、前記下地材8の下面に、断熱材としての発泡ウレタン7を吹き付けており、これにより屋根裏における断熱を可能にしている。
【0038】
ここで、本実施例における前記下地材8の取り付け方法について説明すると、図2及び図3において、前記連通空間S1の下面を閉鎖する下地材8は、垂木5の下面にステープル等で固着するとともに、母屋4及び棟木2に当接する部分においては、母屋4及び棟木2の下面に延出して、この延出した部分を母屋又は棟木2の下面にステープル等で留めており、これにより、下地材8が棟木2又は母屋4に当接する部分近傍においては、垂木5の下面と下地材8との間に空間S3、S4を形成している。
【0039】
また、図4及び図5において、前記閉鎖空間S2の下面を閉鎖する下地材8は、隅木6と当接する部分を前記隅木6の下面に延出しており、これにより、下地材8が隅木6と当接する部分近傍においては、配付け垂木7の下面と下地材8と間に空間S5を形成している。
【0040】
更に、図6において、棟木2の端部近傍においては、即ち、隅木6と棟木2とが交わる部分近傍においては、隅木7の下面に延出させた下地材8を更に、棟木2の下面に延出しており、これにより、棟木2の端部近傍においては、隅木6の下面と下地材8との間に空間S6が形成されるようにしている。
【0041】
次に、このように構成される本実施例の寄棟屋根の換気構造の作用について説明すると、まず、正面側屋根1a又は背面側屋根1cの軒桁部分から連通空間S1a内に入ってきた空気の流れについて説明すると、この空気は、図1において矢印Fで示すように、下地材8の上方側を通って棟木2に向かって上昇していった後に、棟木2の上方に備えた棟換気構造11を介して屋根の上方側へ抜け出ていく。
【0042】
次に、正面側屋根1a、背面側屋根1c、又は側面側屋根1bの軒桁3側から配付け垂木7と隅木6により囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気の流れについて、図1における矢印Gを用いて説明すると、正面側屋根1a又は背面側屋根1cにおける閉鎖空間S2に入ってきた空気は、まず、図5において矢印で示すように、下地材8が隅木6と当接する部分近傍における配付け垂木7の下面と下地材8間の空間S5を通って隅木6に沿って上昇していく。そして、隅木6の先端部分近傍に行き着いた後に、配付け垂木7の下面と下地材8の間の空間を通って、配付け垂木7と垂木5間に入り、棟換気構造11を介して屋根の外側に抜け出て行く。
【0043】
また、側面側屋根1bの軒桁3側から配付け垂木7と隅木6により囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気は、まず、下地材8が隅木6と当接する部分近傍における配付け垂木7の下面と下地材8との間の空間S5を通って隅木6に沿って上昇していき(図5参照)、隅木6の先端部分近傍に行き着いた後に、隅木6の先端部分が設置されている棟木2の端部近傍において、隅木6の下面と下地材8との間の空間S6を通って、隅木6を挟んで隣り合う閉鎖空間S2内へ移動する。そして、配付け垂木7の下面と下地材8との間の空間S5を通って配付け垂木7と垂木5間に入り、棟換気構造11を介して屋根の外側に抜け出て行く。
【0044】
従って、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、垂木5間の連通空間S1内に入ってきた空気のみならず、配付け垂木7と隅木6とで囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気をも排気可能である。
【0045】
そしてこのとき、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、垂木5の下面に下地材8を貼り付けるに際して、この下地材8を、棟木2に当接する部分においては棟木2の下面まで延出しており、隅木6に当接する部分において隅木6の下面まで延出し、更に、棟木2の端部近傍においては棟木2の下面まで延出するのみで良いため、断熱板材を母屋の下部に配設することで換気を可能にした施工方法と異なり、母屋の下端面に断熱材取付固定部材を固設する必要が無く、作業工程が増えてしまうことがないとともに、発泡ウレタン等の吹き付けにより断熱施工を行うことが可能である。
【0046】
なお、方形屋根においては、垂木のすべてが配付け垂木となるために垂木間の連通空間が存在せず屋根材の下面におけるすべての空間が閉鎖空間となるために、下地材を配設するに際しては、本実施例において閉鎖空間S2の下側に下地材8を配設する方法を踏襲すればよい。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の寄棟屋根の換気構造における他の実施例について説明すると、図7は、本実施例の寄棟屋根における骨組み部分を示す平面図であり、図8は、図7におけるH−H断面構造を拡大して示した図であり、図9は、図8におけるI−I線端面構造を拡大して示した図である。そして、本実施例の寄棟屋根の換気構造は、特にツーバーフォーに適した形態としている。
【0048】
周知のように、ツーバーフォーの屋根においては、棟木の側面側に垂木を連結しており、垂木と棟木との高さ寸法は同一としている。また、隅木と配付け垂木との高さ寸法も同一としている。そのために、垂木の下面に貼り付けた下地材を棟木又は隅木の下面に延出した場合でも、下地材が棟木に当接する部分近傍及び下地材が隅木と当接する部分近傍において垂木と下地材との間に空間を形成することができない。そこで、本実施例では、下地材を棟木又は隅木の下面に延出するに際して、棟木と下地材との間、及び、隅木と下地材との間に空間を形成することとしている。
【0049】
即ち、図8において、棟木2の下面に下地材8を延出するに際して、棟木2の下面にスペーサー10を配置し、このスペーサー10に下地材8をステープル等で留めている。そしてこれにより、棟木2の下面と下地材8との間、及び、棟木2の近傍における垂木5と下地材8との間に空間S7を形成している。
【0050】
また、図9において、隅木6の下面に下地材8を延出するに際しては、隅木6の下面にもスペーサー10を配置してこのスペーサー10に下地材8をステープル等で留め、これにより、隅木6の下面と下地材8との間、及び、隅木6の近傍における垂木5と下地材8との間にも空間S8を形成している。
【0051】
次に、このように構成される本実施例の寄棟屋根における換気構造の作用について説明すると、正面側屋根1aの軒桁3側から垂木5間の空間S1に入ってきた空気は、図7において矢印Jで示すように、屋根の傾斜方向に向かって上昇していき、棟木2に行き着いた後に、棟木2の下面と下地8間の空間S7を通過して背面側屋根1cの垂木5間に入っていき、この垂木5間を下降していき背面側屋根1cの軒桁3より抜け出ていく。
【0052】
一方、閉鎖空間S2内に入ってきた空気は、図7において矢印Kで示すように、屋根の傾斜方向に向かって上昇した後に、隅木6の下面と下地材8との間の空間S8を通って、隅木6を挟んで隣り合う閉鎖空間S2内に入り、その後、屋根の傾斜に沿って下降していき軒桁3から抜け出ていくか、あるいは、図7において矢印Lで示すように、隅木6の下面と下地材8との間の空間S8を通って隅木6に沿って上昇していき、隅木6の先端部分近傍に行き着いた後に、配付け垂木7の下面と下地材8との間の空間を通って配付け垂木7と垂木5間に入り、屋根の傾斜に沿って下降して軒桁3より抜け出て行く。
【0053】
従って、本実施例の寄棟屋根の換気構造では、ツーバーフォーの場合であっても、配付け垂木7と隅木6とで囲まれた閉鎖空間S2内に入ってきた空気を排気することが可能である。
【0054】
なお、本実施例の寄棟屋根の換気構造は、スペーサーを用いて、棟木2と下地材8との間、及び隅木6と下地材8との間に空間を形成したことを特徴としており、その他の構成等は前述の実施例と同様であるため、重複した説明は省略するとともに、同一部分には同一符号を付した。
【0055】
また、本実施例におけるスペーサーの形状等は特に限定されないが、ブロック状のスペーサーの場合には等間隔を置いて複数個配置し、正面形状をラウンド状にして通気路が形成されている場合には棟木2又は隅木6に沿って連続して配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明では、空気が抜け出ることが不可能な閉鎖空間内の換気を可能にしているために、方形屋根等、換気が不可能な閉鎖空間を有する屋根の全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の寄棟屋根の換気構造の実施例を説明するための図であり、寄棟屋根の骨組み部分の平面を示している。
【図2】図1におけるA−A線端面を拡大して示した図である。
【図3】図1におけるB−B線断面部分を拡大して示した斜視図である。
【図4】図1におけるD−D線端面を拡大して示した図である。
【図5】図1におけるC−C線断面部分近傍を拡大して示した斜視図である。
【図6】図1におけるE−E線断面構造を示した図である
【図7】本発明の寄棟屋根の換気構造の第2実施例を説明するための図であり、寄棟屋根の骨組み部分の平面を示している。
【図8】図7におけるH−H断面構造を拡大して示した図である。
【図9】図7におけるI−I端面構造を拡大して示した図である。
【図10】切妻屋根における換気構造を説明するための図である。
【図11】図10におけるM−M線断面構造を示す図である。
【図12】図10におけるN−N線断面構造を示す図である。
【図13】寄棟屋根を説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
1a 正面側屋根部分
1b 側面側屋根部分
1c 背面側屋根部分
2 棟木
3 軒桁
4 母屋
4b 横架材
5 垂木
6 隅木
7 配付け垂木
8 下地材
9 断熱材
10 スペーサー
11 棟換気構造
S1 垂木間の空間(「連通空間」)
S2 閉鎖空間
S3 下地材が棟木に当接する部分近傍における下地材と垂木下面間の空間
S4 下地材が母屋に当接する部分近傍における下地材と垂木下面間の空間
S5 下地材が隅木と当接する部分近傍における下地材と配付け垂木下面間の空間
S6 棟木の端部近傍における下地材と隅木下面間の空間
S7 棟木の下面側に形成した空間
S8 隅木の下面側に形成した空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟木(2)、軒桁(3)等の梁と、垂木(5)、隅木(6)、配付け垂木(7)等を備えた寄棟屋根において、前記垂木(5)間の空間、前記配付け垂木(7)と前記隅木(6)とで囲まれた空間の下側を下地材(8)で閉鎖して行う寄棟屋根の換気構造であって、
前記下地材(8)は、棟木(2)に当接する部分においては棟木(2)の下面まで延出し、隅木(6)に当接する部分においては隅木(6)の下面まで延出するとともに、棟木(2)の端部近傍においては棟木(2)の下面まで延出した、ことを特徴とする寄棟屋根の換気構造。
【請求項2】
前記下地材(8)を棟木(2)又は隅木(6)の下面まで延出するに際して、棟木(2)又は隅木(6)の下面と下地材(8)との間に空間(S7、S8)を形成することを特徴とする請求項1に記載の寄棟屋根の換気構造。
【請求項3】
前記下地材(8)の下面に断熱材(9)を装備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の寄棟屋根の換気構造。
【請求項1】
棟木(2)、軒桁(3)等の梁と、垂木(5)、隅木(6)、配付け垂木(7)等を備えた寄棟屋根において、前記垂木(5)間の空間、前記配付け垂木(7)と前記隅木(6)とで囲まれた空間の下側を下地材(8)で閉鎖して行う寄棟屋根の換気構造であって、
前記下地材(8)は、棟木(2)に当接する部分においては棟木(2)の下面まで延出し、隅木(6)に当接する部分においては隅木(6)の下面まで延出するとともに、棟木(2)の端部近傍においては棟木(2)の下面まで延出した、ことを特徴とする寄棟屋根の換気構造。
【請求項2】
前記下地材(8)を棟木(2)又は隅木(6)の下面まで延出するに際して、棟木(2)又は隅木(6)の下面と下地材(8)との間に空間(S7、S8)を形成することを特徴とする請求項1に記載の寄棟屋根の換気構造。
【請求項3】
前記下地材(8)の下面に断熱材(9)を装備したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の寄棟屋根の換気構造。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図12】


【図13】


【公開番号】特開2007−315118(P2007−315118A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147746(P2006−147746)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(506181933)有限会社スクラム (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(506181933)有限会社スクラム (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]