説明

寄生虫卵を含む組成物および寄生虫卵を分離および保存する方法

本発明は、寄生蠕虫からの卵を保存および成長させる組成物に関し、本組成物は、10℃から大気温度でpH値が7未満の液体キャリアをさらに含む。液体キャリアは、pHが0〜2の範囲の硫酸H2SO4であることが可能で、抗生物質を添加できる。さらに、本発明は、組成物から分離された卵を使用して、個々の動物または人間における自己免疫性またはアレルギー性疾患を改善的、予防的、または治癒的に治療する方法に関する。また、本発明は、寄生蠕虫の卵を分離、孵化、および保管する方法に関し、また、寄生蠕虫調合を含む医薬組成物を生成する方法に関する。寄生蠕虫卵は、豚の鞭虫の卵である豚鞭虫卵(Trichuris suis ova; TSO)であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寄生蠕虫からの卵を含む組成物、ならびにその組成物から分離される卵を使用して、個々の動物またはヒトにおける自己免疫性またはアレルギー性疾患を、改善的、予防的、または治癒的に治療する方法に関する。さらに、本発明は、寄生蠕虫卵を分離および保存する方法に関し、また、寄生蠕虫調合を含む医薬組成物を生成する方法に関する。寄生蠕虫卵は、豚の鞭虫からの卵である豚鞭虫卵(Trichuris suis ova; TSO)であってもよい。
【背景技術】
【0002】
TSOは、医薬品有効成分の原料であり、自己免疫性またはアレルギー性疾患の治療を目的とする。
【0003】
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease; IBD)の治療のための寄生虫マテリアル(Parasite Material)の利用については、例えば、米国特許第6,764,838号に記載されている。
【0004】
炎症性腸疾患(IBD)の原因には、遺伝要因および環境要因が関連すると考えられている。現在の理論によれば、IBDは、腸内細菌に対する異常な免疫反応によるものとされているが、それを引き起こす原因については不明である。IBDは、蠕虫定着がまれである先進工業国でよく見られる。反対に、多くの人々が蠕虫を有するような世界の地域においてIBDはまれである。蠕虫には、過敏な免疫反応を軽減させる独特な能力があるため、多くの自己免疫性またはアレルギー性疾患において有益となりうる。この考えに基づくと、蠕虫によってマウスおよびヒトの腸炎は軽減する。
【0005】
蠕虫属(Trichuris)は、治療的使用に有利な特徴を有する腸内回虫(鞭虫)を含む。豚鞭虫(Trichuris suis)、つまり豚の鞭虫は、通常、鞭虫(Trichuris trichiura)であるヒト鞭虫に関連しており、疾患を発生させることなく短期間だけヒトに定着することが実験的に示されている。豚鞭虫(T.suis)の卵は、特定病原菌未感染の豚、つまり、特定の病原菌に感染していない豚を利用して生成可能であり、生物学的汚染物質が確実に存在しないように処理される。
【0006】
TSOの生成について、培地として使用する溶液の粒子汚染および微生物活動に関し、以下のような厳密な耐性が存在する。
1) 分離過程において、2%または1%を越える溶液の粒子汚染が確実に計数されるべきである。
2) 分離過程において、その他の寄生虫卵を確実に除去すべきである。
3) 微生物プロファイルは、ヨーロッパ薬局方のカテゴリー3Bに基づいて、天然由来の原料を含む経口投与に関する要件を満たすべきである。
4) 保存に使用する培地によって、卵が、非孵化(非感染)から孵化(感染)卵に成長可能にすべきである。
5) 培地は、好ましくは、潜在的患者にアレルギー反応を引き起こす可能性のある抗生物質またはその他の化学物質を保持するべきではない。
6) 保存に使用する培地によって、TSOの感染性に影響を及ぼすことなくさらなる長期保存(3〜5年)を可能にし、医薬品の有効期限を延長化する。
7) 卵の大量回収に適用可能な方法であるべきである。
【特許文献1】米国特許第6,764,838号明細書
【発明の開示】
【0007】

〔寄生蠕虫〕
【0008】
寄生蠕虫を定義する際、2つの群に分けられる。第1の群は、ヒトを含む特定の哺乳類宿主に自然定着する寄生蠕虫であり、第2の群は、人間を含む特定の哺乳類種に定着しにくいが、感染すると、免疫系の刺激により、個体へ保護を提供する寄生蠕虫である。
【0009】
第1の群において、寄生蠕虫は、特定の哺乳類に応じて調整される複雑な生活環および成長過程を有する多細胞寄生虫である。ヒトの腸内に定着しうる蠕虫は、線虫(無体節の回虫)および扁形動物(扁虫)の2つの群に分けられる。本発明によると、ヒトまたは動物に自然定着する多くの寄生蠕虫のうちのいずれもが、目的の結果をもたらす。
【0010】
ヒトの腸に寄生し易い線虫は、回虫(Ascaris lumbricoides)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、鞭虫(Trichuris trichiura)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、およびアメリカ鉤虫(Necator americanus)、および糞線虫(Strongyloides stercoralis)である。旋毛虫(Trichinella spiralis)は、小腸に短期間寄生するがまれである。
【0011】
扁形動物は、吸虫および条虫を含む。ヒトの腸に寄生する最も一般的な吸虫成虫は、肥大吸虫属(Fasciolopsis)、棘口吸虫属(Echinostoma)、および有害異形属(Heterophyes)である。胆管系に寄生するものには、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、タイ肝吸虫(Opisthorchhis vivemini)、ネコ肝吸虫(O.felineus)、ならびに肝蛭(Fasciola hepatica)および巨大肝蛭(Fasciola gigantica)がある。住血吸虫(Schistosoma)属は、静脈系に寄生するが、いくつかの属は、卵が腸壁を通過することによって慢性的に腸に影響を及ぼす。一般的にヒトに感染する条虫成虫は、裂頭条虫属(Diphyllobothrium)(魚条虫)、無鉤条虫(Taenia saginata)(ウシ条虫)、有鉤条虫(Taenia solium)(ブタ条虫)、ならびに縮小条虫(Hymenolepsis diminuta)、および小形条虫(H.nana)(わい小条虫)である。
【0012】
該当するその他の蠕虫には、寄生糸状虫および肺吸虫が含まれる。これらは、腸相を持たないが、強い免疫反応を刺激する(Th2型)。
【0013】
本発明で利用可能な寄生蠕虫の第2の一般群は、人間を含む特定の哺乳類種に通常は定着しないが、「Th1型」免疫反応によって特徴付けられるアレルギーを含む疾患に対して保護を提供しうる蠕虫を含む。これらには、ネズミ鞭虫(Trichuris muris)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、糞線虫(Nippostrongylus brasiliensis)、腸管寄生線虫(Heligmosomoides polygyrus)、および小型条虫(Hymenolepsis nana)が含まれ、これら全ては、ネズミに感染性のある腸内蠕虫である。豚鞭虫(Trichuris suis)および豚回虫(Ascaris suum)は、ヒトに感染可能なブタの蠕虫である。イヌ鞭虫(Trichuris vulpis)、トキソカラ属(Toxocara)、犬小蛔虫属(Toxascaris)、顎口虫属(Gnathostoma)、および鉤虫属(Ancylostoma)は、イヌまたはネコの蠕虫であり、これらもヒトに感染可能である。アニサキス(Anisakis)およびシュードテラノーバ(Pseudoterranova)は、海洋哺乳類の線虫であり、ヒトに伝染可能である。鳥類住血吸虫(Schistosoma)は、過渡的にヒトに感染可能である。このような住血吸虫には、鳥類住血吸虫(S.douthitti)、小眼住血吸虫(Trichobilharzia ocellata)、カモ住血吸虫(T.stagnicolae)、カモ住血吸虫(T.physellae)、およびムクドリ住血吸虫(Gigantobilharzia huronensis)が含まれる。

〔本発明に関連して治療可能な疾患〕
A. 炎症性腸疾患(クローン病(Crohn's disease; CD)および潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis; UC)
【0014】
疫学データよると、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)の発症に対する遺伝的感受性が示唆されている。先進工業国におけるCDの発症率は、1950年代から増加し、現在では年間100,000人につき1人から8人の割合で発症している。このことから、我々の環境における未知変化がCDの頻度に影響を及ぼしていることが示唆される。
【0015】
IBDの原因は不明であるが、腸管粘膜免疫系の調節異常に起因するものと推定されている。通常、粘膜における炎症細胞によって、内腔内容物に対する保護が提供される。この極めて効果的な慢性炎症は、組織損傷を制限するように厳重に制御される。IBDは、内腔要因に対する不適切に活発な免疫反応に起因するものと考えられる。CDは、IFNガンマおよびTNFアルファを生成する、過剰に活発なTh1型炎症であると考えられる。UCの性質は、十分に定義されている。
【0016】
慢性腸炎に関する動物モデルがいくつか存在する。遺伝子操作された遺伝子欠失を有するネズミが、IBDに類似する慢性腸炎を発症する可能性があるという最近の発見は、重要な進歩である。これらのマウスには、特に、IL-2、IL-10、MHCクラスII、またはTCR遺伝子の標的欠失を有する突然変異のマウスが含まれる。これらのモデルのいくつかを使用して、免疫系自体の調節異常が腸損傷を媒介する可能性があることが示された。これらのモデルのうちのいくつかの粘膜炎症によって、大量のIFNガンマおよびTNFアルファが生成され、これにより、Th1型サイトカインの過剰生成は、疾患の病因の根底にある1つの共通機構であることが示唆される。また、Th1回路を阻止することによって、炎症が防がれる。また、CDは、高度のTh1応答によって特徴付けられる。したがって、これらのモデルは、このようなヒトの疾患過程の免疫病理学の理解について直接関係がある。

B. 関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis; RA)
【0017】
RAは、持続性炎症性滑膜炎を特徴とする慢性疾患であり、通常は、対称分布における末梢関節を侵す。本炎症により、骨浸食、軟骨損傷、および関節破壊に至る。人口の約1%が罹患している。有病率は年齢とともに増加し、男性よりも女性が罹患し易い。RAの増殖は、CD4+Th1細胞(III型過敏性)による免疫を介する事象である。

C. インスリン非依存性若年型糖尿病(Diabetes Mellitus; DM)(I型)
【0018】
I型DMは、成人早期に発症し、かつ血糖濃度に応じたインスリンの生成不能に起因する疾患である。インスリンの欠如により持続性高血糖値が引き起こされ、また、ブドウ糖を適切に代謝できないため代謝障害がもたらされる。この代謝障害によって目、腎臓、心臓、およびその他の器官が最終的に損傷される。非経口的にインスリンを摂取することによって、これらの代謝問題を部分的に管理することができる。I型DMは、インスリン源である膵臓ベータ細胞への自己免疫攻撃に起因する。活性化されたマクロファージおよび細胞障害性T細胞は、膵臓ベータ細胞を包囲および破壊する。遺伝的感受性および明確に定義されていない環境事象によって、疾患過程が引き起こされる。

D. 紅斑性狼瘡(Lupus Erythematosus; LE)
【0019】
LEは、早期から中期の女性に最も発症し易い全身性自己免疫疾患である。組織障害は、自己抗体および過反応性の制御性T細胞によって引き起こされる。異常な免疫反応により、III型過敏性に関連しうる病原性自己抗体および免疫複合体が持続的に生成される。これにより、筋骨格組織、皮膚組織、血液組織、腎臓組織、およびその他の組織系の損傷に至る。異常な免疫反応は、恐らく、多数の遺伝的要因および環境要因の相互作用によって決まる。

E. サルコイドーシス
【0020】
サルコイドーシスは、肺およびその他の器官の慢性肉芽腫性疾患であり、原因は不明である。患者の大部分の年齢は20〜40歳である。最もよく発生する症状は息切れである。本疾患は、恐らく、限られた数の抗原に対する過剰なTh1型細胞免疫反応に起因する。サルコイドーシスは、世界中で発症し、全人種に罹患している。しかしながら、特定の民族集団および人種集団によって、サイコイドーシスの有病率が顕著に相違している。例えば、ポーランド、東南アジア、およびインドにおいて本疾患はまれである。

F. 多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)
【0021】
MSは、中枢神経系の慢性再発性多発性炎症性疾患であり、局所脱髄および脳の瘢痕に至る。西欧諸国に100万人の罹患者が存在する頻繁に発生する疾患であり、早期から中期成人に発症することが多い。MSは、Th1細胞によって少なくとも部分的に媒介される自己免疫疾患である。MSの病変は、活性化T細胞およびマクロファージを含む遅延過敏性応答により誘導される病変に類似している。温帯気候の疾患であり、赤道から離れるにつれて有病率は増加する。

G. 乾癬
【0022】
乾癬は、慢性再発性皮膚炎であり、欧米社会における人口の2〜3%に認められうる。本疾患は、一般的に、10から30歳代で初めて診断され、異常な免疫反応に関連している。異常な免疫反応は、恐らく、多数の遺伝的要因および明確に定義されていない環境要因によって決まる。

H. 自閉症
自閉症は、行動的および発育的逸脱により特徴付けられ、社会的遂行能力の欠如をもたらす。自閉症は、人口における最大1%に認められうるが、発症率は着実に増加している。病因は不明であるが、遺伝子要素が強力であり、本疾患は、自己免疫疾患の体質を有する家族に特によくみられるため、自己免疫が関係していると考えられる。

I. アレルギー
【0023】
古典的な自己免疫疾患(上記の疾患など)について、アレルギー性疾患表現型(例えば、アトピー、食物アレルギー、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、およびアトピー性皮膚炎などのI型過敏性疾患)における過敏な免疫反応を修正するための蠕虫感染の関連性は、衛生仮説の内容に記載されているはずである。これらの疾患の発症率は、公衆衛生が高水準である先進工業国において着実に増加している。微生物暴露に関する観察研究において、特に、蠕虫感染がアトピーおよびアレルギー性疾患のリスク軽減に関連していることが常に報告されている。通常、蠕虫感染は、血清中に高水準のIgE抗体を呈するが、それ以外ではアレルギー性疾患にのみ見られる。しかしながら、アレルギー体質の者において、例えば、花粉に対するIgEによって、肥満細胞の活性および脱顆粒によりアレルギー性炎が引き起こされ、関連する症状(例えば、腫脹、くしゃみ、および流涙)がすぐに現れるが、蠕虫感染は、蠕虫に対する低応答性状態のために、無症状であることが多い。異なる種類の蠕虫(例えば、住血吸虫および鉤虫)による感染は、アトピーのリスク軽減に関連しており、共通の生物学的機構を示唆している。蠕虫感染中の低応答性状態は、アレルギー性鼻炎の効果的なアレルゲン免疫療法中に認められる特徴と類似した免疫学的特徴を呈し、その特徴には、サイトカインIL-10および抗原/アレルゲンに対する特定のIgG4の生成が含まれる。アレルギー反応と蠕虫感染の両方は、いわゆるTh2サイトカインプロファイル(lL-4、IL-5、およびIL-13)によって特徴付けられる。しかしながら、慢性蠕虫感染中に、本プロファイルは、抗炎症性制御特性を有すると考えられるサイトカインIL-10およびTGFβによって修正される。蠕虫感染およびアレルギー性疾患のマウスモデルにより、ヒトにおける上記観察が裏付けられる。
【0024】
観察研究の大部分は、ぜんそくと蠕虫の関係に焦点を当てており、これらの研究により、ぜんそくのリスク軽減は、ヒト宿主における全身性相を有する蠕虫属との感染についてより強力に観測されること、および/または糞便内の卵の数によって測定された感染強度が増加することによって強化されることが示唆される。現在、蠕虫またはその排泄物は、アレルギー性疾患の症状を防止および軽減しうる強固な抗炎症性制御性ネットワークの自然誘導に特に適した特徴分子を運ぶと考えられている。蠕虫感染とアレルギー性疾患のリスク軽減との直接的な因果関係の根拠は、地方病発生地域における非寄生虫治療によって多くの寄生虫体数を効果的に除去するが、このような治療は、アレルゲンに対する陽性皮膚反応(アトピー)の増加に一時的に関連することを示す研究によって示唆されている。
【0025】
上記疾患複合体(A〜G)の発現について、家畜の場合において様々に説明するべきであるが、背景および臨床状況は、ヒトの場合の相当する疾患とは異なる場合がある。しかしながら、動物におけるこれらの疾患も本発明に関連して治療可能であると考えられる強力な理由が存在する。
【0026】
上記の自己免疫疾患およびアレルギー性疾患、ならびにその治癒または改善に関する証拠は、治療の必要性の決定ならびに治療進歩の監視に必要とされる。以下の手順を利用して、人間における上記疾患の臨床的パラメータを測定することができる。

1. 炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease; IBD)
【0027】
炎症の証拠:マウスにおける疾患の臨床的症状には、体重減少、下痢、直腸脱、および腸炎の組織学的証拠が含まれる。したがって、これらのパラメータが改善すると、疾患の改善が示される。
【0028】
動物モデルの腸炎を格付けするために、標準的な方法に従い組織を摘出し、筒状に巻き、パラフィン包理する。その切片は、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色される。一人の病理学者によって、盲目的方法で0から4まで半分定量的に、慢性炎症の度合いを格付けする。ここで、0=無炎症、1=低炎症、2=中炎症、3=壁肥厚を有する高炎症、および4=貫壁性浸透および壁肥厚を有する杯細胞損失である。
【0029】
肥満細胞を数えるために、個々のマウスからの腸組織試料を、筒状に巻く技術によって準備し、カルノワの固定液で固定し、パラフィン包理し、アルシアンブルーおよびサフラニンで染色処理する。固有層および筋層における粘膜肥満細胞の所定切片の50の隣接領域が走査される。肥満細胞は、アルシアンブルーによる特有の細胞内粒状染色によって識別される。全試料は、盲目的に評価される。
【0030】
種々の臨床的基準、実験室基準、および組織学的基準を使用して、ヒトの疾患活動性を監視する。IBD疾患活動性指標のいくつかは十分確立されており、その指標によって下痢および腹痛の頻度などの臨床的パラメータを監視する。クローン病評価の特に有用な指標の1つに、クローン病活動指数つまりCDAIが挙げられる。CDAIは、疾患活動性に関連する8つの変数を含み、クローン病の治療薬に関する最新の研究において利用されている。CDAIは、液状便または軟便の回数、腹痛または痙性腹痛の重度、全体的な健康状態、疾患の腸外徴候の存在、腹部腫瘤の有無、下痢防止剤の使用、ヘマクリット値、および体重を含む。複合点数は0から約600の範囲にある。150点未満は寛解を示し、450点を上回ると重症を示す。
【0031】
試験の際、一般に認められておりかつ疾患特有である生活の質に関するアンケートを治療前と治療後に行ない、治療進歩を評価してもよい。アーバイン炎症性腸疾患アンケートは、32項目のアンケートである。そのアンケートは、腸機能(例えば、軟便および腹痛)、全身症状(疲労および睡眠パターンの変化)、社会的機能(職場欠席状況および社交行を中止する必要性)、および情動状況(怒り、鬱状態、またはいら立ち)に関して、生活の質を評価する。点数は32から224点の範囲にあり、点数が高ければ高いほど生活の質が良いことを示す。寛解状態の患者の点数は、通常は170から190である。
【0032】
また、腸疾患活動性に関する内視鏡評価、X線評価、および組織学的評価も有用である。C反応性タンパク質レベルおよび血球沈降速度も、炎症の全身性指標として監視してもよい。

2. 関節リウマチ
【0033】
炎症の証拠:コラーゲン誘導関節炎のマウスに関し、一日おきにマウスを検査し、0(正常)、1(足関節またはつま先に限定される紅斑および軽度の腫脹)、2(足首から足中部の紅斑および軽度の腫脹)、3(足首から中足関節までの紅斑および重度の腫脹)、および4(関節腫脹を伴う強直性変形)でマウスの足を採点する。これらの関節炎に関する点数は、関節炎の関節における組織学的変化と相関性がある。治療が成功すると、組織学的改善に応じて関節炎の点数が減少する。
【0034】
プリスタン誘導関節炎に関し、関節をマイクロメータで測定することにより、腫脹を検出する。ヒトにおいて、RAは、関節腫脹、紅斑、運動制限、および痛みを測定することによって採点される。さらに、当技術分野において既知の方法に従って、滑液を分析し、サイトカインおよび炎症性タンパク質濃度ならびに白血球の組成物および機能を求めてもよい。骨膜生検により、当技術分野において既知の方法に従って、組織学的分析のための組織が提供される。

3. 紅斑性狼瘡
【0035】
炎症の証拠:免疫系の正常な発達および機能は、アポトーシスという過程による不要な細胞の除去に極めて依存する。特定の細胞表面分子およびその受容体を介した細胞間の相互作用により、その過程が引き起こされる。このようなシステムの1つは、FASおよびFASリガンドと呼ばれる。FAS(LPR-I-マウス)またはFASリガンド(GLD-I-マウス)を欠乏しているマウスは、狼瘡などの自己免疫疾患を発症する。
【0036】
LPRまたはGLDマウスのコロニーは、特定病原菌未感染状態下、マイクロアイソレータの収容ユニットにおいて保持される。これらのマウスは、自己免疫を自然発症する可能性があるが、人工誘導後の方がより予測可能である。疾患を誘導するために、プリスタンなどの薬剤を8週齢のマウスに注射する。2ヶ月以内で、マウスは自己免疫疾患にかかる。マウスおよびヒトにおける疾患誘導および疾患改善の判断に有用な多くの臨床的基準、組織学的基準、および免疫学的基準は、当技術分野においてよく知られている。

4. 若年型インスリン非依存性 糖尿病(I型)
【0037】
炎症の証拠:NODマウスは、膵臓ベータ細胞の自己免疫破壊により、ヒトと類似したI型糖尿病を発症する。当技術分野において既知である方法に従う臨床的検査、生化学的検査、免疫学的検査、および組織学的検査により、マウスにおける疾患誘導および疾患改善の評価が可能になる。

5. サルコイドーシス
【0038】
炎症の証拠:肺炎症のビーズ塞栓モデルにおいて、抗原は、セファロースビーズに結合され、このセファロースビーズは、尾静脈への注射によってマウスの肺に塞栓されている。通常、動物は、結合された抗原に事前感作される。宿主の免疫系は、原因ビーズに対する活発な免疫反応を開始する。数週間持続可能なこれらの局所性炎症反応の大きさについては組織学的に検査可能である。また、それらは組織から分離され、細胞組成物およびサイトカイン生成について研究可能である。さらに、肺門リンパ節および脾嚢は、容易に実験に利用可能である。
【0039】
ヒトの疾患であるサルコイドーシスは、通常は、肺に関与する。サルコイドーシスおよび疾患の程度は、当技術分野において既知の方法に従い決定可能である。肺機能検査により、肺コンプライアンスおよび肺機能を評価することができる。また、気管支洗浄により、炎症過程中に気管支樹に浸潤する炎症細胞を入手する。これらの細胞を研究して組成物および機能を求めることができる。肺浸潤および肺門部リンパ節腫脹は、サルコイドーシスの特徴である。したがって、定期的な胸部X線またはCTスキャンは、疾患活動性の評価に有用であることが可能である。当技術分野において既知である方法に従うアンジオテンシン変換酵素活性の測定などの血清検査を利用して、疾患程度および疾患活動性を測ることができる。

6. 多発性硬化症
【0040】
炎症の証拠:実験的自己免疫性脳脊髄炎は、適切な感作ミエリン抗原を繰り返し注射することによって、感受性マウスにおいて誘導される。0(無疾患)、1(尾アトニー)、2(後肢衰弱)、3(後肢麻痺)、4(後肢麻痺および前肢麻痺または衰弱)、5(瀕死)の基準に従いマウスを臨床的に評価する。組織学的分析のために、脊髄および脳が摘出され、ホルマリン固定される。パラフィン包埋切片を染色し、光学顕微鏡検査で検査する。分散脾細胞およびその他の部位の組織を体外で研究することができる。これらのパラメータは、疾患改善または疾患向上の測定に有用である。
【0041】
ヒトにおいて、MS疾患活動性は、神経学的徴候および症状の進行および寛解の監視によって測られる。最も広く利用される結果測定は、総合障害度評価尺度(The Expanded Disability Status Scale)と呼ばれる。また、当技術分野において既知の方法で分析された脳脊髄液タンパク質組成物および細胞含有物を利用して疾患活動性を監視してもよい。さらに、連続的なMRI研究により、ガドリニウムに増強された新しい脳病変が示される。

7. 乾癬
【0042】
乾癬は、皮膚炎に罹患した皮膚の割合を単に推定することによって測定してもよく、あるいは乾癬活動および重度指数(Psorisasis Activity and Severity Index; PASI)の点数によって測定することがより適切であり、この点数は、罹患皮膚領域の大きさと共に、経時的な皮膚病変の強度を反映する。

8. 自閉症
【0043】
自閉症は行動障害であり、症状の重度は、行動研究によってのみ研究可能である。

9. アレルギー
【0044】
アレルギーは、腫脹、くしゃみ、流涙などのすぐに現れる症状に関連する疾患を複合したものであり、疾患の採点は、特に、該当するアレルゲンへの暴露に関連する特定の症状の重度を測定することによって行なわれる。

〔本発明に従う組成物〕
【0045】
本発明の第1の側面によると、豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)などの寄生蠕虫からの卵を保存するための組成物を提供することであり、前記組成物は、0℃から30℃または5℃から大気温度の温度で7未満のpH値を有する液体キャリアをさらに含む。
【0046】
前記液体キャリアは、pHが6未満のH2SO4、pHが0〜6のH2SO4、pHが0〜5のH2SO4、pHが0〜1のH2SO4、pHが1〜2のH2SO44、pHが2〜3のH2SO4、pHが3〜4のH2SO4、pHが4〜5のH2SO4、pHが5〜6のH2SO4などの硫酸H2SO4であることが可能である。pHが0〜2であることが好ましい。その他の酸性液体キャリアおよび抗生物質の添加も利用可能である。
【0047】
本発明の前記第1の側面の1つ以上の実施形態によると、前記寄生蠕虫は、回虫属(Ascaris)、蟯虫属(Enterobius)、鞭虫属(Trichuris)、鉤虫属(Ancylostoma)、鉤虫属(Necator)、および糞線虫属(Strongyloides)などの線虫属から選択されてもよい。また、本発明の前記第1の側面は、前記寄生蠕虫が扁形動物である実施形態も含む。また、前記寄生蠕虫が吸虫および条虫を含む群から選択されてもよいことも、本発明の前記第1の側面の実施形態の範囲内である。
【0048】
前記寄生蠕虫が、肥大吸虫属(Fasciolopsis)、棘口吸虫属(Echinostoma)、有害異形属(Heterophyes)、肝吸虫(Clonorchis)、オピストルキス属(Opisthorchis)、肝蛭(Fasciola)、住血吸虫属(Schistosoma)、裂頭条虫属(Diphyllobothrium)、テニア属(Taenia)、および膜様条虫属(Hymenolepsis)の寄生虫群から選択されることも、本発明の前記第1の側面の1つ以上の実施形態の範囲内である。
【0049】
また、前記寄生蠕虫が、寄生糸状虫および肺吸虫を含む群から選択されることも、本発明の前記第1の側面の実施形態の範囲内である。
【0050】
さらに、本発明の前記第1の側面は、前記寄生蠕虫が、鞭虫属(Trichuris)、ニッポストロンギルス属(Nippostrongylus)、ヘリグモソモイデス属(Heligmosomoides)、膜様条虫属(Hymenolepsis)、住血線虫属(Angiostrongylus)、回虫属(Ascaris)、トキソカラ属(Toxocara)、顎口虫(Gnathostoma)、鉤虫属(Ancylostoma)、アニサキス(Anisakis)、およびシュードテラノーバ(Pseudoterranova)の属を含む群から選択される実施形態を含む。
【0051】
本発明の前記第1の側面の好適な実施形態において、前記寄生蠕虫は豚鞭虫(Trichuris suis)である。ここで、ブタなどの動物を豚鞭虫(T.suis)に感染させることと、例えば、植菌後約7から9週間後などの、約5〜30週間後または約5〜11週間後の適切な時間の経過後、動物の糞便内の卵を分離することと、0から30℃または5℃から大気温度の温度範囲のpH値7未満の液体キャリアを、前記分離された卵に添加することと、を含む方法によって、前記組成物を入手してもよい。前記分離は、大直径(例えば、O 450mm)を有する認可篩(例えば、1000、500、250、100、80、70、60、50、および20μmのメッシュサイズ)を利用する一連の洗浄工程を利用した洗浄手順を含み、前記繰り返される洗浄工程は、メッシュサイズを減少させた篩を使用することによって、前記糞便物質における未消化の植物物質などから前記卵が効果的に洗浄および分離されることが好ましい。前記寄生虫卵は、前記篩過画分に含まれ、20〜50μmの粒径を有することが好ましい。
【0052】
前記蠕虫卵が豚鞭虫(Trichuris suis)属のものである場合(TSO)、本発明の前記第1の側面は、ブタの腸から直接分離した寄生虫から寄生虫卵を回収することと、0〜30℃の温度範囲のpH値7未満の液体キャリアを、前記卵に添加することと、を含む方法によって、前記組成物を入手する実施形態も含む。ここで、前記分離された寄生虫は、前記卵の回収前に、1つ以上の抗生物質を任意で含む培地において一回以上洗浄されてもよい。前記分離された寄生虫は、任意で抗性物質が補充された成長培地において体外保持され、前記分離された寄生虫はそこで卵を産むことが好ましい。前記卵は、前記液体キャリアの添加前に、篩(例えば、50μm)上でろ過されることによって、前記成長培地か分離されてもよい。

〔本発明に従う方法〕
【0053】
本発明の第2の側面によると、前記豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)からの卵を分離および保存する方法が提供される。本発明の前記第2の側面の前記方法は、
a) 1)ブタの腸から摘出した寄生虫が適切な培地で卵を産む体外において、または2)腸に存在する寄生虫が卵を産み落としたブタの糞便物質から、寄生虫卵を分離することと、
b) 前記卵の成長(孵化)を可能にし、いかなる汚染細菌およびウィルスも不活性化するように、最終的には抗生物質と共にpH0〜2、0〜1、または1〜2のH2SO4などのH2SO4の酸性培地において、前記分離および任意で清浄された卵を保存することと、
を含む。
【0054】
本発明の第3の側面によると、前記豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)からの卵を分離および保存する方法が提供される。前記方法は、
a) 1)ブタの腸から摘出した寄生虫が適切な培地で卵を産む体外において、または2)腸に存在する寄生虫が卵を産み落としたブタの糞便物質から、寄生虫卵を分離することと、
b) 粒子汚染およびブタの異種寄生虫の卵を減少させるために、前記分離された物質をろ過することと、
c) 粒子汚染を減少させるために、前記分離された物質をろ過することと、
d) 異種病原菌(細菌、菌類、およびウィルス)の数を、希釈および不活性化によって減少させるために、pH0〜2、0〜1、または1〜2のH2SO4などの例えば硫酸H2SO4の酸性培地において、前記分離された物質を洗浄することと、
e) 前記卵の成長(孵化)を可能にし、さらに、いかなる細菌、菌類、およびウィルスの成長も不活性化するように、pH0〜2、0〜1、または1〜2のH2SO4などの例えばH2SO4の酸性培地において、前記分離および清浄された卵を保存することと、
f) 最高度の孵化(薬剤原料の繁殖能力)を有する卵の画分を分離するために、前記孵化した卵をろ過および浮遊すること、
g) 繁殖能力の維持および病原菌増殖の防止を可能にする、pH0〜2、0〜1、または1〜2のH2SO4などの例えばH2SO4の酸性培地において、前記分離および孵化した卵を保存することと、
を含む。
【0055】
本発明の前記第2および第3の両側面の前記方法について、前記卵の保存に使用する前記酸性培地は、pH値が7未満の液体キャリアであることが好ましい。前記液体キャリアは、pHが6未満のH2SO4、pHが0〜6のH2SO4、pHが0〜5のH2SO4、pHが0〜1のH2SO4、pHが1〜2のH2SO4、pHが2〜3のH2SO4、pHが3〜4のH2SO4、pHが4〜5のH2SO4、pHが5〜6のH2SO4などの硫酸H2SO4であることが可能である。pHが0〜2であることが好ましい。その他の酸性液体キャリアおよび抗生物質の添加も利用可能である。
【0056】
本発明の前記第2および第3の両側面の前記方法について、これらの方法は、前記酸性培地に保存された前記卵が、非孵化卵(非分化細胞を含む)から完全に孵化した卵(感染幼虫段階を含む)まで成長することによって、前記酸性培地において孵化した卵の懸濁液を入手することをさらに含む実施形態も含む。前記孵化した卵を含む前記酸性培地がpH0〜2の範囲のH2SO4である場合、これによって前記懸濁液の経口投与が可能になる。
【0057】
本発明の前記第3の側面の前記方法について、一実施形態によると、工程b)は任意である。また、工程c)が任意であることは、本発明の前記第3の側面の実施形態の範囲内である。また、本発明の前記第3の側面は、工程d)か任意であるおよび/または工程f)が任意である実施形態も含む。
【0058】
本発明の前記第4の側面によると、寄生蠕虫調合を含む医薬組成物を生成する方法が提供され、前記方法は、
(1)特定のヒトの無病原菌環境において、準備動物を育てることと、
(2)前記準備動物から寄生蠕虫分離株を入手することと、
(3)体外または糞便培養からの前記寄生蠕虫分離株から卵を摘出することと、
(4)第1の寄生蠕虫分離株からの未孵化の卵を、酸性液体キャリアをさらに含む組成物において保存することと、
(5)医薬組成物を生成するために、前記酸性液体キャリアにおける適切な状態下で、前記寄生蠕虫分離株からの卵を孵化させることと、
を含む。
【0059】
前記方法が、
(6)前記酸性液体キャリアにおける適切な状態下で、前記寄生蠕虫分離株からの孵化した卵を保存することと、
をさらに含むことは、本発明の前記第4の側面の実施形態の範囲内である。
【0060】
また、本発明の前記第4の側面について、前記酸性液体キャリアは、pH値が7未満であることが好ましい。前記液体キャリアは、pHが6未満のH2SO4、pHが0〜6のH2SO4、pHが0〜5のH2SO4、pHが0〜1のH2SO4、pHが1〜2のH2SO4、pHが2〜3のH2SO4、pHが3〜4のH2SO4、pHが4〜5のH2SO4、pHが5〜6のH2SO4などの硫酸H2SO4であることが可能である。pHが0〜2であることが好ましい。その他の酸性液体キャリアおよび抗生物質の添加も利用可能である。
【0061】
寄生蠕虫を分離することが、前記準備動物から排泄物を入手することと、前記排泄物から前記寄生蠕虫を分離することとを含むことは、本発明の前記第4の側面の実施形態の範囲内である。ここで、寄生蠕虫を分離することは、前記準備動物から組織を摘出することと、前記組織から前記寄生蠕虫またはその卵を分離することとを含む。好ましくは、前記組織は腸などの内蔵器官であってもよい。また、前記寄生蠕虫を分離することは、
(1)前記寄生虫が卵を産む寄生虫培養を生成するために、寄生虫の肉眼的分離を可能にするように、前記準備動物から前記組織を解離することと、
(2)卵を含むろ液を生成するために、前記寄生虫培養をろ過することと、
(3)前記ろ液から前記卵を分離することによって、前記寄生蠕虫分離株から卵を摘出することと、
をさらに含むことが好ましい。
【0062】
本発明の前記第4の側面の実施形態によると、前記寄生蠕虫調合は、線虫である寄生虫を含んでもよい。
【0063】
また、本発明の前記第4の側面は、前記寄生蠕虫調合が、回虫属(Ascaris)、蟯虫属(Enterobius)、鞭虫属(Trichuris)、鉤虫属(Ancylostoma)、鉤虫属(Necator)、糞線虫属(Strongyloides)の属を含む群から選択される寄生虫を含む、1つ以上の実施形態も含む。
【0064】
また、前記寄生蠕虫調合が扁形動物である寄生虫を含むことも、本発明の前記第4の側面の実施形態の範囲内である。また、前記寄生蠕虫調合が、吸虫および条虫を含む群から選択される寄生虫を含むことも、本発明の前記第4の側面の実施形態の範囲内である。
【0065】
前記寄生蠕虫調合が、肥大吸虫属(Fasciolopsis)、棘口吸虫属(Echinostoma)、有害異形属(Heterophyes)、肝吸虫(Clonorchis)、オピストルキス属(Opisthorchis)、肝蛭(Fasciola)、住血吸虫属(Schistosoma)、裂頭条虫属(Diphyllobothrium)、テニア属(Taenia)、および膜様条虫属(Hymenolepsis)の属を含む群から選択される寄生虫を含むことは、本発明の前記第4の側面の1つ以上の実施形態の範囲内である。
【0066】
また、前記寄生蠕虫調合が、寄生糸状虫および肺吸虫を含む群から選択される寄生虫を含むことも、本発明の前記第4の側面の実施形態の範囲内である。
【0067】
さらに、本発明の前記第4の側面は、前記寄生蠕虫調合が、鞭虫属(Trichuris)、ニッポストロンギルス属(Nippostrongylus)、ヘリグモソモイデス属(Heligmosomoides)、膜様条虫属(Hymenolepsis)、住血線虫属(Angiostrongylus)、回虫属(Ascaris)、トキソカラ属(Toxocara)、顎口虫(Gnathostoma)、鉤虫属(Ancylostoma)、アニサキス(Anisakis)、およびシュードテラノーバ(Pseudoterranova)の属を含む群から選択される寄生虫を含む実施形態を含む。
【0068】
本発明の前記第4の側面の好適な実施形態において、前記寄生蠕虫は豚鞭虫(Trichuris suis)である。
【0069】
本発明の第5の側面によると、個々の人間または動物における自己免疫性またはアレルギー性疾患の改善的、予防的、または治癒的な治療のための方法が提供され、前記方法は、本発明の前記第1の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される実施形態に従う組成物を提供することと、腸から蠕虫寄生虫を分離することと、卵を産む適切な増殖条件下で、前記分離された寄生虫を孵化させることと、前記培地から前記卵を分離することまたは腸の内容物から前記卵を分離することと、酸性液体キャリアに前記卵を移動させることによって、蠕虫卵の懸濁液を入手することと、前記卵を薬学的に許容可能なキャリアと混合して医薬組成物を生成することと、自己免疫性またはアレルギー性疾患を患うまたはこれらの疾患を予防する個々の人間または動物に、薬学的に有効な量の前記医薬組成物を投与することと、を含む。
【0070】
本発明の第6の側面によると、個々の人間または動物における自己免疫性またはアレルギー性疾患を治療する方法が提供され、前記方法は、本発明の前記第1の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される実施形態に従う組成物を提供することと、前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫からの卵を孵化させることによって、医薬組成物を入手することと、自己免疫性またはアレルギー性疾患を患うまたはこれらの疾患を予防する個々の人間または動物に、薬学的に有効な量の前記医薬組成物を投与することと、を含む。
【0071】
本発明の前記第5または第6の側面の実施形態によると、前記自己免疫疾患は、炎症性腸疾患であってもよい。前記炎症性腸疾患は、クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)であってもよい。
【0072】
また、前記自己免疫疾患が関節リウマチであってもよいことは、本発明の前記第5または第6の側面の実施形態の範囲内である。
【0073】
本発明の前記第5または第6の側面の実施形態によると、前記自己免疫疾患は紅斑性狼瘡であってもよい。
【0074】
また、前記自己免疫疾患がI型糖尿病であってもよいことは、本発明の前記第5または第6の側面の実施形態の範囲内である。
【0075】
また、前記自己免疫疾患がサルコイドーシスであってもよいことは、本発明の前記第5または第6の側面の実施形態の範囲内である。また、本発明の前記第5または第6の側面は、前記自己免疫疾患が多発性硬化症である実施形態も含む。
【0076】
また、前記自己免疫疾患が乾癬であってもよいこと、あるいは前記自己免疫疾患が自閉症であってもよいことは、本発明の前記第5または第6の側面の実施形態の範囲内である。
【0077】
本発明の前記第5または第6の側面の実施形態によると、前記疾患はアレルギーであってもよい。
【0078】
本発明の第7の側面によると、個々の人間または動物における過剰免疫反応を治療する方法が提供され、前記方法は、本発明の前記第1の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される実施形態に従う組成物を提供することと、前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫からの卵を孵化させることによって、医薬組成物を入手することと、前記個々の人間または動物において前記過剰免疫反応を軽減させるのに十分な量の前記医薬組成物を投与することと、を含む。ここで、前記過剰免疫反応は、増強されたTh1免疫反応であってもよい。
【0079】
本発明の第8の側面によると、個々の人間または動物において器官同種移植生着を延長する方法が提供され、前記方法は、Th2上方制御活性を含む医薬組成物の有効なTh2上方制御量を前記個体に投与することによって、前記個々の人間または動物における前記Th1免疫活性を下方制御することを含み、前記方法は、本発明の前記第1の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される実施形態に従う組成物を提供することと、前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫からの卵を孵化させることによって、Th2上方制御活性を含む医薬組成物を入手することと、前記個体において前記Th1活性を下方制御することによって前記個々の人間または動物における器官同種移植生着を延長するのに十分な量の前記医薬組成物を投与すること、を含む。
【0080】
また、前記治療が、改善的、予防的、または治癒的であってもよいことは、本発明の前記第8の側面の実施形態の範囲内である。
【0081】
前記個体は、ヒトまたは家畜などの哺乳類であることは、本発明の前記第5、第6、第7、または第8の側面の実施形態の範囲内である。
【0082】
本発明の第9の側面によると、前記治療を必要とする個々の人間または動物において自己免疫性またはアレルギー性疾患を治療するための薬物または医薬組成物の製造における、本発明の前記第1の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される実施形態に従う組成物の利用が提供される。ここで、前記自己免疫疾患は、炎症性腸疾患であってもよい。前記炎症性腸疾患は、クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)であってもよい。
【0083】
本発明の前記第9の側面の実施形態によると、前記自己免疫疾患は関節リウマチであってもよい。
【0084】
また、本発明の前記第9の側面は、前記自己免疫疾患が紅斑性狼瘡である実施形態も含む。
【0085】
また、前記自己免疫疾患がI型糖尿病であってもよいことは、本発明の前記第9の側面の実施形態の範囲内である。さらに、本発明の前記第9の側面は、前記自己免疫疾患がサルコイドーシスである実施形態と、前記自己免疫疾患が多発性硬化症である実施形態を含む。
【0086】
また、前記自己免疫疾患が乾癬であってもよいこと、または前記自己免疫疾患が自閉症であってもよいことは、本発明の前記第9の側面の実施形態の範囲内である。
【0087】
本発明の前記第9の側面の実施形態によると、前記自己免疫疾患はアレルギーであってもよい。
【0088】
また、前記薬物の製造が、本発明の前記第4の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される方法を含むことは、本発明の前記第9の側面の実施形態の範囲内である。
【0089】
本発明の第10の側面によると、前記治療を必要とする個々の人間または動物において過剰免疫反応を治療するための薬物または医薬組成物の製造における、本発明の前記第1の側面の前記実施形態のうちのいずれかから選択される実施形態に従う組成物の利用が提供される。ここで、前記過剰免疫反応は、増強されたTh1応答であってもよい。
【0090】
前記治療は、改善的、予防的、または治癒的であることは、本発明の第9または第10の側面の実施形態の範囲内である。また、前記個体は、ヒトまたは家畜などの哺乳類であることも、本発明の第9または第10の側面の実施形態の範囲内である。
【0091】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の図面および好適な実施形態の説明を参照することによってさらに明白になるだろう。
【発明の詳細な説明】
【0092】
以下(工程1〜9)において、本発明に従う実施形態について詳細に説明する。実施形態には、寄生虫卵の回収(1、2)、粒子汚染の低減(3、4)、異種寄生虫卵の除去(5)、酸性培地における洗浄(6)、寄生虫卵の孵化(7)、寄生虫卵の保存(8)、および寄生虫卵懸濁液の投与(9)が含まれる。

1. 糞便からの寄生虫卵の回収(体内寄生虫)
【0093】
一般的な腸内寄生虫である豚鞭虫(T.suis)に感染したブタは、植菌後約7〜9週間後に寄生虫卵をブタの糞便に排泄する。これらの卵は、糞便から大量に収集される。分離過程は、直径が大きく(例えば、O450mm)、一連の認定鉄製篩(例えば、1000、500、250、100、80、70、60、50、および20μmの網目サイズ)上での洗浄手順に依存する。篩の上で網目サイズを小さくしながら繰り返し洗浄する手順によって、糞便物質における未消化の植物繊維を卵から効果的に洗い落とすことが可能になる。寄生虫卵は、粒径20〜50μmを有する篩過画分に含まれる。20〜50μm画分は、H2SO4(例えば、pH0〜2)に再懸濁され、病原菌増殖を最小限に抑えるために抗生物質が最終的に添加され、以下の工程3および/または4でさらに処理される。

2. 寄生虫からの寄生虫卵の回収(体外寄生虫)
【0094】
あるいは、数は少なくなるが、ブタの腸から直接分離された寄生虫から卵を回収してもよい。抗生物質を含む培地で繰り返し洗浄後、寄生虫は、抗生物質またはその他の保存料を含む増殖培地において体外保存され、ここで寄生虫は卵を産む。50μmの篩の上でろ過することによって卵を培地から分離し、その後、20μmの篩の上でろ過する。得られた20〜50μm画分は、以下の工程3および/または4でさらに処理される。

3. 浮遊による粒子汚染の低減
【0095】
工程1および/または工程2で生成された卵の懸濁液は、不要な粒子の含有量をさらに低減させる初期物質を含む。このような懸濁液における全粒子は、20から50μmであるが、卵の密度は、その他の粒子(植物繊維および鉱物粒子)の大部分よりも低い。したがって、卵は、ミリリットルにつき1.18gを越える特定の重力で、塩化ナトリウム-ブドウ糖などの飽和塩-砂糖懸濁液のような浮遊液に浮遊可能であり、あるいは卵は、硫酸マグネシウムまたは塩化亜鉛の溶液中に浮遊可能である。遠心分離によって、卵は浮遊し、残屑は沈殿する。浮遊した卵を分離し、20μmの篩上で洗浄し、H2SO4(例えば、pH0〜2)に再懸濁する。

4. ろ過による粒子汚染の低減
【0096】
工程1、2、および/または3で生成された、粒径範囲20〜50μmの粒子を含む卵の懸濁液は、30〜35μmの認定メッシュサイズの使い捨てのナイロン網でろ過することによってさらに清浄され、20〜25μmのナイロン網上で卵を回収する。

5. ろ過による異種寄生虫卵の除去
【0097】
30〜35μmで懸濁液をろ過することによって、元々の糞便溶液に存在していた異種寄生虫卵の保持が確実になる。豚鞭虫(Trichuris suis)卵の長さは、最大80μmであるが、幅は、約23〜30μmほどの細長いレモン型であり、篩を通る溶液の流れの長手方向に向く。したがって、実験により、豚鞭虫(T.suis)卵は30μmの篩を通過することが示された。ブタに感染する可能性のあるその他の卵である、豚回虫(Ascaris suum)(50〜84μm)、ブタ肺虫(Metastrongylus)(38〜64μm)、糞線虫(Strongyloides)(30〜57μm)、グロボセファルス(Globocephalus)(40〜72μm)、腸結節虫属(Oesophagostomum)(38〜83μm)、紅色毛様虫(Hyostrongylus)(31〜76μm)、大鉤頭虫(Macracanthorhynchus)(65〜110μm)は篩を通過しない。ネコおよびイヌの一般的な回虫の卵であるトキソカラ属(Toxocara)(75〜90μm)も保持される。

6. H2SO4(例えば、pH0〜2)による洗浄および病原菌不活性化
【0098】
ろ過後、H2SO4(例えば、pH0〜2)において懸濁液を繰り返し洗浄し、いかなる病原菌および病原菌胞子も希釈によって減少させる。H2SO4(例えば、pH0〜2)によって、さらなる病原菌増殖を防止する。

7. H2SO4(例えば、pH0〜2)における豚鞭虫卵(TSO)の孵化
【0099】
15〜30℃の温度で懸濁液を孵卵器に保存し、未孵化から孵化状態に卵を成長させる。孵化過程は、培養温度に応じて2〜6ヶ月かかる。

8. H2SO4(例えば、pH0〜2)における豚鞭虫卵(TSO)の保存
【0100】
孵化後、薬剤原料を1〜10℃の温度で保存できるが、最大数年間であればその感染性は保存期間中に変化しない。したがって、卵の中の幼虫の感染性は、本期間中維持される。酸によって病原菌増殖を防止する。

9. H2SO4(例えば、pH0〜2)における卵の懸濁液(TSO)の経口投与
【0101】
孵化した蠕虫卵(感染幼虫を有する)を含む懸濁液を、カプセルまたはその他の手段によって経口懸濁液として個体(人間または動物)に直接投与することができる。
【0102】
本発明に関連する方法および/または実施形態について、図1〜3のフローチャートでさらに詳しく説明する。
【0103】
図1は、本発明の実施形態に従い、鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)に感染したブタの糞便(体内寄生虫)から、あるいは腸内寄生虫(体外寄生虫)から、寄生虫卵を分離する方法を示すフローチャートである。
【0104】
図1において、出発点は、豚への寄生虫マテリアル101の植菌である。次に、寄生虫卵を回収するための2つの経路が後に続く。図1の第1の経路は、上述の工程2に対応し、腸を摘出すること102aと、寄生虫を採取すること103aと、寄生虫を洗浄すること104aと、寄生虫培養に使用する培地において卵を体外回収すること105aと、細菌増殖を最小限にするように、硫酸(H2SO4)における卵をろ過および再懸濁すること106aと、最終的に粒子汚染を低減する原料を得ること107と、を含む。図1の第2の経路は、上述の工程1に対応し、糞便物質を収集すること102bと、糞便物質を懸濁および篩過すること103bと、篩過画分を回収すること104bと、糞便物質から卵の体外分離すること105bと、細菌増殖を最小限にするように、硫酸(H2SO4)における卵をろ過および再懸濁すること106bと、最終的に粒子汚染を低減する原料を入手すること107と、を含む。
【0105】
図2は、本発明の実施形態に従い、豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)の卵の懸濁液における、粒子汚染の低減方法ならびに異種寄生虫卵の除去方法を示すフローチャートである。図2のフローチャートに記載される経路は、上述の工程3〜6に対応する。出発点は、図1の工程107の後の、寄生虫または糞便から回収された卵の原料である。次に、図2に示される方法は、塩-砂糖浮遊液において卵を篩過および再懸濁すること201と、浮遊卵を遠心分離および分離すること202と、塩-砂糖浮遊液よりも大きい密度の異種粒子を有する沈殿物を破棄すること203と、硫酸H2SO4における浮遊卵を再懸濁すること204と、メッシュサイズ30〜50マイクロメータのナイロン網を介して卵の懸濁液をろ過し205、その後、30マイクロメータよりも大きい粒子および異種寄生虫卵を除去することと、メッシュサイズ20マイクロメータのナイロン網上で卵の懸濁液をろ過することにより、20マイクロメータより小さい粒子を除去すること206と、硫酸における繰り返し洗浄で、希釈により病原菌を低減すること207と、溶液における卵の濃度を調整すること208と、硫酸において卵を保存することにより卵の孵化原料を入手すること209と、を含む。
【0106】
図3は、本発明の実施形態に従い、経口投与の医薬品の原料として使用する豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)の卵の孵化、保存、および調合方法を示すフローチャートである。図3のフローチャートに記載の経路は、上述の工程7〜9に対応する。出発点は、図2の浮遊および篩過工程209によって清浄された卵の原料である。次に、図3に示される方法は、繰り返し撹拌および振盪して、2〜6ヶ月間15〜30℃で硫酸において卵を孵化すること301と、未分化卵から幼虫を含む卵(孵化)までの成長を継続的に観察すること302と、孵化係数が60〜90%の範囲または90%を越えるまで孵化を進めること303と、2〜10℃の硫酸H2SO4において卵を洗浄すること304と、大量保存用の溶液において卵の濃度を調整すること305と、病原菌増殖を防ぐように抗生物質を最終的に添加し、硫酸(H2SO4)において1〜10℃で卵を保存すること306と、溶液の卵の濃度を薬剤原料の必要性に調整し、その後標準化懸濁を調合してもよいこと307と、卵の溶液の用量を輸送容器に詰めて、その後梱包およびラベル貼り、管理、発売、および流通してもよいこと308と、を含む。
【0107】
図4は、豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)の生活環を示す。成虫は、ブタ402の大腸壁401の中およびその上に見られる。2つの方法で寄生虫の卵を入手することができる。その2つの方法は、1)卵が孵化する培地403のある培養皿に寄生虫を移動し、その培地403で寄生虫が卵を産むことと、2)糞便物質を篩過することによって糞便から直接卵を回収することと、を含む。1)または2)から得られた卵は、未分化物質を含む非孵化の卵404である。最終的に抗生物質を添加した酸性培地で2〜6ヶ月間保存した後、その内部に明確に視認できる幼虫構造を有する卵405が孵化する。このように孵化した卵、つまり豚鞭虫卵(TSO)は、経口投与の活性医薬品の構成要素となる。
【0108】
その他の実施形態は、当業者にとって明白であるだろう。前述の詳細な説明は、明確にするために提供されており、単に例示的なものであることを理解されたい。本発明の精神および範囲は、上記の実例に限定されず、以下の請求項によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施形態に従い、鞭虫つまり豚鞭虫(Trichuris suis)に感染したブタの(体内において腸内寄生虫が沈着する)糞便から、あるいは(体外において分離された寄生虫が沈着する)培養における寄生虫から、寄生虫卵を分離する方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に従い、豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)の卵の懸濁液における、粒子汚染の低減方法ならびに異種寄生虫卵の除去方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に従い、経口投与の医薬品の原料として使用する豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)の卵の孵化、保存、および保管方法を示すフローチャートである。
【図4】豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)の生活環を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生蠕虫からの卵と、0〜30℃の温度範囲で7未満のpH値を有する液体キャリアと、を含む、組成物。
【請求項2】
前記液体キャリアは、硫酸H2SO4である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記液体キャリアは、0から2の範囲のpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記液体キャリアは、2から3の範囲のpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記液体キャリアは、3から4の範囲のpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記寄生蠕虫は、線虫である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記寄生蠕虫は、回虫属(Ascaris)、蟯虫属(Enterobius)、鞭虫属(Trichuris)、腸結節虫属(Oesophagostomum)、鉤虫属(Ancylostoma)、鉤虫属(Necator)、および糞線虫属(Strongyloides)を含む寄生虫属から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記寄生蠕虫は、扁形動物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記寄生蠕虫は、吸虫および条虫を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記寄生蠕虫は、肥大吸虫属(Fasciolopsis)、棘口吸虫属(Echinostoma)、有害異形属(Heterophyes)、肝吸虫(Clonorchis)、オピストルキス属(Opisthorchis)、肝蛭(Fasciola)、住血吸虫属(Schistosoma)、裂頭条虫属(Diphyllobothrium)、テニア属(Taenia)、および膜様条虫属(Hymenolepsis)を含む前記蠕虫属から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記寄生蠕虫は、寄生糸状虫および肺吸虫を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記寄生蠕虫は、鞭虫属(Trichuris)、ニッポストロンギルス属(Nippostrongylus)、ヘリグモソモイデス属(Heligmosomoides)、膜様条虫属(Hymenolepsis)、住血線虫属(Angiostrongylus)、回虫属(Ascaris)、腸結節虫属(Oesophagostomum)、トキソカラ属(Toxocara)、顎口虫(Gnathostoma)、鉤虫属(Ancylostoma)、犬小蛔虫(Toxascaris)、馬蛔虫(Parascaris)、アニサキス(Anisakis)、およびシュードテラノーバ(Pseudoterranova)を含む蠕虫属を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記寄生蠕虫は、豚鞭虫(Trichuris suis; T.suis)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ブタなどの動物を豚鞭虫(Trichuris suis)に感染させることと、植菌後約5から20週間、約7から9週間などの適切な時間の経過後、動物の糞便内の卵を分離することと、0〜30℃の温度範囲のpH値7未満の液体キャリアを、前記分離された卵に添加することと、を含む方法によって得られうる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記分離は、大直径(例えば、O450mm)を有する認可篩(例えば、1000、500、250、100、80、70、60、50、および20μmのメッシュサイズ)を使用する一連の洗浄工程を利用した洗浄手順を含み、前記繰り返される洗浄工程は、メッシュサイズを減少させた篩を使用することによって、前記糞便物質における未消化の植物物質から前記卵が効果的に洗浄および分離される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記寄生虫卵は、前記篩過画分に含まれ、20〜50μmの粒径を有する、請求項1および13から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
ブタの腸から直接分離した寄生虫から寄生虫卵を回収することと、0〜30℃の温度範囲のpH値7未満の液体キャリアを、前記卵に添加することと、を含む方法によって得られうる、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記分離された寄生虫は、前記卵の回収前に、1つ以上の抗生物質を任意で含む培地において一回以上洗浄される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記分離された寄生虫は、任意で抗性物質が補充された成長培地において体外保持され、前記分離された寄生虫は、前記成長培地に卵を産む、請求項17および18に記載の組成物。
【請求項20】
小さめのメッシュサイズ(例えば、20μmの篩)で篩に保持される前ならびに前記液体キャリアが添加される前に、篩(例えば、50μmの篩)でろ過されることによって、前記卵は、前記成長培地および前記寄生虫から分離される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)からの卵を分離および保存する方法であって、
a) 次の手法(1)又は手法(2):
手法(1):ブタの腸から摘出し、かつその成長に適切な成長培地で成長させた寄生虫から卵を分離することを含み、前記寄生虫は、前記適切な成長培地で卵を産むことを含む手法;
手法(2):感染動物を使用して、またはブタなどの動物を豚鞭虫(Trichuris suis)に感染させて、前記ブタから生成された糞便物質から卵を分離することを含む手法;
のいずれかを使用して寄生虫卵を分離するステップと、
b) 前記卵の成長(孵化)を可能にし、いかなる汚染細菌、菌類、およびウィルスも不活性化するように、最終的には抗生物質と共にpH0〜2のH2SO4などのH2SO4などの酸性培地において、前記分離された(場合によっては清浄された)卵を保存するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
豚の鞭虫である豚鞭虫(Trichuris suis)からの卵を分離および保存する方法であって、
a) 次の手法(1)又は手法(2):
手法(1):ブタの腸から摘出し、かつその成長に適切な成長培地で成長させた寄生虫から卵を分離することを含み、前記寄生虫は、前記適切な成長培地で卵を産むことを含む手法;
手法(2):感染動物を使用して、またはブタなどの動物を豚鞭虫(Trichuris suis)に感染させて、前記ブタから生成された糞便物質から卵を分離することを含む手法;
のいずれかを使用して寄生虫卵を分離するステップと、
b) 粒子汚染およびブタの異種寄生虫の卵を減少させるように、前記分離された物質をろ過するステップと、
c) 粒子汚染を減少させるために、前記分離された物質をろ過するステップと、
d) 異種病原菌(細菌、菌類、およびウィルス)の数を、希釈および不活性化によって減少させるために、pH0〜2のH2SO4などの硫酸H2SO4の酸性培地において、前記分離された物質を洗浄するステップと、
e) 前記卵の成長(孵化)を可能にし、さらに、存在するのであれば、いかなる汚染細菌、菌類、および/またはウィルスも不活性化するように、最終的には抗生物質が補充されるpH0〜2のH2SO4などのH2SO4の酸性培地において、前記分離および清浄された卵を保存するステップと、
f) 最高度の孵化(繁殖能力および薬剤原料)を有する卵の画分を分離するために、前記孵化した卵をろ過および浮遊するステップ、
g) 抗生物質を最終的に補充するステップによって繁殖能力の維持および病原菌増殖の防止を可能にする、pH0〜2のH2SO4などのH2SO4のような酸性培地において、前記分離および孵化した卵を保存するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
工程b)は任意である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程c)任意である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
工程d)は任意である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
工程f)は任意である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
寄生蠕虫調合を含む医薬組成物を生成する方法であって、
(1)特定のヒトの無病原菌環境において、準備動物を育てるステップと、
(2)前記準備動物から寄生蠕虫分離株を入手するステップと、
(3)前記寄生蠕虫分離株から卵を摘出するステップと、
(4)第1の寄生蠕虫分離株からの未孵化の卵を、酸性液体キャリアをさらに含む組成物において保存するステップと、
(5)医薬組成物を生成するために、前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫分離株からの卵を孵化させるステップと、
(6)前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫分離株からの孵化した卵を保存するステップと、
を含む、方法。
【請求項28】
前記寄生蠕虫を分離するステップは、前記準備動物から排泄物を入手するステップと、前記排泄物から前記寄生蠕虫を分離するステップとを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記寄生蠕虫を分離するステップは、前記準備動物から組織を摘出するステップと、前記組織から前記寄生蠕虫またはその卵を分離するステップとを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組織は、腸などの内蔵器官である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記寄生蠕虫を分離するステップは、
(1)前記寄生虫が卵を産む寄生虫培養を生成するために、寄生虫の肉眼的分離を可能にするように、前記準備動物から前記組織を解離するステップと、
(2)卵を含むろ液を生成するために、前記寄生虫培養をろ過するステップと、
(3)前記ろ液から前記卵を分離することによって、前記寄生蠕虫分離株から卵を摘出するステップと、
をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記寄生蠕虫調合は、線虫である寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記寄生蠕虫調合は、回虫属(Ascaris)、蟯虫属(Enterobius)、鞭虫属(Trichuris)、鉤虫属(Ancylostoma)、鉤虫属(Necator)、糞線虫属(Strongyloides)、腸結節虫属(Oesophagostomum)、犬小蛔虫(Toxascaris)、馬蛔虫(Parascaris)の属を含む群から選択される寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記寄生蠕虫調合は、扁形動物である寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記寄生蠕虫調合は、吸虫および条虫を含む群から選択される寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記寄生蠕虫調合は、肥大吸虫属(Fasciolopsis)、棘口吸虫属(Echinostoma)、有害異形属(Heterophyes)、肝吸虫(Clonorchis)、オピストルキス属(Opisthorchis)、肝蛭(Fasciola)、住血吸虫属(Schistosoma)、裂頭条虫属(Diphyllobothrium)、テニア属(Taenia)、および膜様条虫属(Hymenolepsis)の属を含む群から選択される寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記寄生蠕虫調合は、寄生糸状虫および肺吸虫を含む群から選択される寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記寄生蠕虫調合は、鞭虫属(Trichuris)、ニッポストロンギルス属(Nippostrongylus)、ヘリグモソモイデス属(Heligmosomoides)、膜様条虫属(Hymenolepsis)、住血線虫属(Angiostrongylus)、回虫属(Ascaris)、トキソカラ属(Toxocara)、顎口虫(Gnathostoma)、鉤虫属(Ancylostoma)、アニサキス(Anisakis)およびシュードテラノーバ(Pseudoterranova)、腸結節虫属(Oesophagostomum)、犬小蛔虫(Toxascaris)、ならびに馬蛔虫(Parascaris)の属を含む群から選択される寄生虫を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記寄生蠕虫は、豚鞭虫(Trichuris suis)である、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
個々の動物または人間における自己免疫性またはアレルギー性疾患を治療する医薬品を製造する方法であって、
請求項1から20のいずれかに記載の組成物を提供するステップと、前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫からの卵を孵化させることによって、医薬組成物を入手するステップと、自己免疫性またはアレルギー性疾患を患うまたはこれらの疾患を予防する個体に、薬学的に有効な量の前記医薬組成物を投与するステップと、を含む、方法。
【請求項41】
前記自己免疫疾患は、炎症性腸疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記自己免疫疾患は、1型糖尿病である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記自己免疫疾患は、紅斑性狼瘡である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記自己免疫疾患は、サルコイドーシスである、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記自己免疫疾患は、多発性硬化症である、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記自己免疫疾患は、乾癬である、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記自己免疫疾患は、自閉症である、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患は、アレルギーである、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
個体における過剰免疫反応を治療する方法であって、
請求項1から20のいずれかに記載の組成物を提供するステップと、前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫からの卵を孵化させることによって、医薬組成物を入手するステップと、前記個体において前記過剰免疫反応を軽減させるのに十分な量の前記医薬組成物を投与するステップと、を含む方法。
【請求項51】
前記過剰免疫反応は、増強されたTh1免疫反応である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
個体において器官同種移植生着を延長する方法であって、
Th2上方制御活性を含む医薬組成物の有効なTh2上方制御量を前記個体に投与することによって、前記個体における前記Th1免疫活性を下方制御することを含み、
請求項1から20のいずれかに記載の組成物を提供するステップと、
前記酸性液体キャリアにおける適切な条件下で、前記寄生蠕虫からの卵を孵化させることによって、Th2上方制御活性を含む医薬組成物を入手するステップと、
前記個体において前記Th1活性を下方制御することによって前記個体における器官同種移植生着を延長するのに十分な量の前記医薬組成物を投与するステップと、
をさらに含む、方法。
【請求項53】
前記治療は、改善的、予防的、または治癒的である、請求項40から52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記個体はヒトである、請求項40から53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記治療を必要とする個体において自己免疫性またはアレルギー性疾患を治療するための薬物の製造における、請求項1から20のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項56】
前記自己免疫疾患は、炎症性腸疾患である、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチである、請求項55に記載の使用。
【請求項58】
前記自己免疫疾患は1型糖尿病である、請求項55に記載の使用。
【請求項59】
前記自己免疫疾患は、紅斑性狼瘡である、請求項55に記載の使用。
【請求項60】
前記自己免疫疾患は、サルコイドーシスである、請求項55に記載の使用。
【請求項61】
前記自己免疫疾患は、多発性硬化症である、請求項55に記載の使用。
【請求項62】
前記自己免疫疾患は、乾癬である、請求項55に記載の使用。
【請求項63】
前記自己免疫疾患は、自閉症である、請求項55に記載の使用。
【請求項64】
前記疾患は、アレルギーである、請求項55に記載の使用。
【請求項65】
前記薬物の前記製造は、請求項27から39のいずれかの方法を含む、請求項55から64のいずれかに記載の使用。
【請求項66】
前記治療を必要とする個体において過剰免疫反応を治療する薬物の製造における、請求項1から20のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項67】
前記過剰免疫反応は、増強されたTh1応答である、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
前記治療は、改善的、予防的、または治癒的である、請求項55から67のいずれかに記載の使用。
【請求項69】
前記個体は、哺乳類、ヒト、または動物である、請求項55から68のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−522214(P2009−522214A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547854(P2008−547854)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000751
【国際公開番号】WO2007/076868
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508189038)パラサイト テクノロジーズ エーエス (1)
【氏名又は名称原語表記】PARASITE TECHNOLOGIES A/S
【住所又は居所原語表記】Vallerod Banevej 12, DK−2960 Rungsted Kyst (DK)
【Fターム(参考)】