説明

密封包装体及び製造方法

【課題】簡単な構成で容易に開封することができる筒状の密封包装体を提供すること。
【解決手段】密封包装体1は、内容物Bが充填される筒状の本体フィルム2と、本体フィルム2の端部を結紮するクリップ3と、クリップ3で結紮されて内容物Bが密封された本体フィルム2を開封するための開封部5を有するものであって、開封部5は、本体フィルム2の表面にレーザ光を照射して形成された凹溝10を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物が充填される筒状の密封包装体及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、易開封性を持たせる包装体が数多く提案されている。例えば、包装体を剥がして内容物を取り出すために、包装体を構成する本体フィルムに、予め帯状の開封フィルムを融着させておき、この開封フィルムを引っ張ることにより、本体フィルムを引き破る方法(例えば、特許文献1を参照)や、本体フィルムの幅方向両端部を互いに重ね合わせてヒートシールした合掌シール部の外側部分に複数の切れ目を入れておき、該切れ目から本体フィルムを引き裂く方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−246458号公報
【特許文献2】特開2002−219777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記開封フィルムを用いる方法の場合、本体フィルムを筒状に製袋する製袋工程の前に、開封フィルムの溶着を行うので、溶着工程時、あるいはその後の製袋工程や、内容物の充填工程、加熱殺菌工程等において、包装体にピンホールが発生したり、溶着部分から破袋するおそれがあった。また、開封フィルムを別途用意しなければならず、本体フィルムに開封フィルムを溶着する装置も必要となり、製造工程が複雑で工数が多く、コストが高いという問題を有していた。
【0005】
そして、上記切れ目による開封方法の場合、切れ目から引き裂くことができるが、引き裂く方向を誘導できないので、所望の位置に沿って切り裂くことができず、合掌シール部のみが千切れてしまうおそれがある。また、流通時や加熱時における破袋防止のために、本体フィルムの厚さを厚くすると、手で開封することはもはや困難である。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で容易に開封することができる密封包装体及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の密封包装体は、内容物が充填される筒状の本体フィルムと、該本体フィルムの端部を結紮する結紮手段と、該結紮手段で結紮されて前記内容物が密封された前記本体フィルムを開封するための開封部を有する密封包装体であって、前記開封部は、前記本体フィルムの表面にレーザ光を照射して形成された凹溝を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の密封包装体によれば、開封部は、本体フィルムの表面にレーザ光を照射して形成された凹溝を有するので、例えば製造工程中の加熱や加圧などの外力を受ける加工工程が終了した後で、本体フィルムの表面にレーザ光を照射して凹溝を形成することによって、外力を受ける加工工程時における本体フィルムの強度を確保し、ピンホールの発生や破袋を防ぐことができる。そして、外力を受ける加工工程の終了後に、本体フィルムの開封部におけるフィルム強度を弱くすることができ、易開封性に優れたものとすることができる。
【0009】
したがって、ピンホールや破袋の発生を防ぎかつ容易に開封することができる簡単な構成の密封包装体を提供することができる。
【0010】
また、本発明の密封包装体によれば、レーザを照射するレーザ加工工程までは、密封包装体に開封部が設けられていない製品と同条件で製造でき、ピンホールや破袋の有無を確認する管理項目の追加を、レーザ加工工程以降に限定することができ、工数の削減による低コスト化を図ることができる。
【0011】
本発明の密封包装体では、本体フィルムは、レーザ光の照射された箇所が消失する表面層と、表面層の下側に配置されてレーザ光を反射するレーザ反射層とを有する構成とすることが好ましい。そして、レーザ反射層は、金属粉を含有する金属層を有することが好ましい。また、本体フィルムは、レーザ反射層の下側で酸素の透過を阻止するバリア層と、バリア層の下側に熱溶着可能な内面層を有する構成としてもよい。
【0012】
本発明の密封包装体では、凹溝は、筒状の本体フィルムの筒軸方向に直交して周方向に延在することが好ましい。また、凹溝は、本体フィルムの端部から、本体フィルムの直径長さと等しい距離だけ離間した位置に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明の密封包装体は、表面層の上に接着されて開封部に沿って延在し、開封部の位置を示す開封位置表示フィルムを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の密封包装体によれば、開封部は、本体フィルムの表面にレーザ光を照射して形成された凹溝を有するので、例えば製造工程中の加熱や加圧などの外力を受ける加工工程が終了した後で、本体フィルムの表面にレーザ光を照射して凹溝を形成することによって、外力を受ける加工工程時における本体フィルムの強度を確保し、ピンホールの発生や破袋を防ぐことができる。そして、外力を受ける加工工程の終了後に、本体フィルムの開封部におけるフィルム強度を弱くすることができ、易開封性に優れたものとすることができる。したがって、ピンホールや破袋の発生を防ぎかつ容易に開封することができる簡単な構成の密封包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における密封包装体の構成を説明する図。
【図2】図1の要部を拡大して示す図。
【図3】図2のA−A線断面図。
【図4】本実施の形態における密封包装体の開封方法を示す図。
【図5】本実施の形態における密封包装体の他の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における密封包装体の構成を説明する図、図2は、図1の要部を拡大して示す図、図3は、図2のA−A線断面図である。
【0018】
密封包装体1は、ソーセージ・ハム・チーズかまぼこ等の筒状にケーシングされた食品であるソーセージ様食品に用いられる。密封包装体1は、ソーセージ様食品の内容物が充填される筒状の本体フィルム2と、本体フィルム2の端部を結紮する結紮手段であるクリップ3と、クリップ3で結紮されて内容物が密封された本体フィルム2を開封するための開封部5を有している。
【0019】
本体フィルム2は、一定の厚みを有する帯状のフィルムを幅方向に折り曲げて、長手方向に延在しかつ互いに対向する一対の長辺部を互いに重ね合わせて溶着することによって筒状とされ、溶着部分には合掌シール部4が形成されている。クリップ3は、例えば金属製のワイヤークリップによって構成されており、本体フィルム2の端部を結紮し、両端部間に内容物を密封する。
【0020】
開封部5は、手で容易に開封できるように密封包装体1の本体フィルム2に加工を施したものであり、本体フィルム2の表面にレーザ光を照射して形成された凹溝10を有している。凹溝10は、筒状の本体フィルム2の筒軸方向に直交して周方向に延在するように形成されている。
【0021】
凹溝10は、筒軸方向の一方端部から、本体フィルム2の直径長さD1とほぼ等しい距離D2だけ離間した位置に設けられている(D1≒D2)。凹溝10は、点線状に設けられている場合を例に示しているが、手で容易に開裂させることができる強度を有するものであればよく、連続的に延在する直線状であってもよい。
【0022】
本体フィルム2は、その断面を図3に示すように、表面層11、レーザ反射層12、バリア層13、内面層14が順番に積層されたフィルム状積層体であることが望ましい。例えば、断面構造がポリプロピレン(PP)、ナイロン、ポリプロピレン(PP)の3層で構成されており、15μm以上の厚みであることが好ましい。
【0023】
本実施の形態では、表面層11は、レーザ光の照射を受けることによって消失する材料、例えばポリプロピレンフィルム(PP)やナイロンフィルム等によって構成されている。
【0024】
レーザ反射層12は、表面層11の下側に配置されており、レーザ光を反射する構成を有している。レーザ反射層12は、例えば、通常の二軸延伸ナイロンフィルムによって構成された中間支持層と、その中間支持層の上に、アルミニウム箔の金属粉を含有するメタリックインキを塗布して形成された金属層によって構成されている。
【0025】
バリア層13は、酸素の透過を阻止する構成を有しており、例えば厚さ5μm〜9μmのアルミニウム箔によって構成されている。内面層14は、加熱殺菌処理に耐えることができ(変形や脆弱化しない)、かつ熱によって溶融して互いに融着し得る材料、例えばポリプロピレンフィルム(PP)によって構成されている。
【0026】
密封包装体1を製造する場合、長い帯状の本体フィルム2を長手方向に移動させながら、本体フィルム2の内面層14を内側として幅方向に2つに折り曲げて、互いに対向する一対の長辺部で内面層14を互いに重ね合わせて熱溶着し、本体フィルム2を筒状にする。
【0027】
そして、本体フィルム2の移動方向先端側に位置する一方端部にクリップ3を取り付けて結紮し、他方端部側から本体フィルム2内にソーセージ肉等の内容物を充填し、所定量を充填したところで他方端部にクリップ3を取り付けて結紮し、内容物を本体フィルム2内に密封する。そして、他方端部のクリップ3よりも外側位置で本体フィルム2を切断して単体の密封包装体1とされ、加熱殺菌工程に移行する。
【0028】
そして、加熱殺菌工程等の、製造工程中の加熱や加圧などの外力を受ける加工工程が終了した後で、本体フィルム2にレーザ光を照射して凹溝10を形成するレーザ加工工程が行われる。
【0029】
凹溝10は、表面層11のレーザ光の照射を受けた部分が消失することによって形成される。本体フィルム2は、レーザ光によって表面層11の厚さ分だけ切り込みを入れるハーフカットがなされる。レーザ光は、レーザ反射層12によって反射され、凹溝10の溝深さがそれ以上大きくなるのを防ぎ、本体フィルム2に貫通穴が形成されるのを防止し、所定の溝深さを有する凹溝10を形成する。
【0030】
図4は、本実施の形態における密封包装体の開封方法を説明する図である。
密封包装体1は、図4(a)に示すように、密封された状態から密封包装体1の一方端部に設けられているクリップ3を合掌シール部4側に向かって付勢すると、開封部5の凹溝10に対して、凹溝10の溝幅方向に互いに離反する方向に引っ張る力が作用し、図4(b)に示すように、開封部5の凹溝10が開裂して開封され、開口部21が形成される。
【0031】
そして、開口部21からソーセージ様食品である内容物Bが露出する。そして、クリップ3を更に押し移動させることによって、図4(c)に示すように、開口部21から内容物Bの端部が突出した状態にすることができる。
【0032】
上記した密封包装体1によれば、開封部5が、本体フィルム2の表面にレーザ光を照射して形成された凹溝10を有するので、例えば製造工程中の加熱や加圧などの外力を受ける加工工程が終了した後で、本体フィルム2の表面にレーザ光を照射して凹溝10を形成することによって、外力を受ける加工工程時における本体フィルム2の強度を確保し、ピンホールの発生や破袋を防ぐことができる。そして、外力を受ける加工工程の終了後に、本体フィルム2の開封部5におけるフィルム強度を弱くすることができ、易開封性に優れたものとすることができる。したがって、ピンホールや破袋の発生を防ぎかつ容易に開封することができる簡単な構成の密封包装体1を提供することができる。
【0033】
また、レーザを照射するレーザ加工工程までは、密封包装体1に開封部10が設けられていない製品と同条件で製造でき、ピンホールや破袋の有無を確認する管理項目の追加を、レーザ加工工程以降に限定することができ、工数の削減による低コスト化を図ることができる。
【0034】
図5は、密封包装体に開封部の位置を示す開封位置表示フィルムを設けた状態を示す図である。開封位置表示フィルム6は、本体フィルム2の上に接着されて開封部5に沿って延在するように設けられている。開封位置表示フィルム6は、本体フィルム2と異なる色のフィルムによって構成され、あるいは、図5に示すように、開封位置を示す矢印が印刷されて構成されている。したがって、本発明の密封包装体1が用いられたソーセージ様食品を扱うユーザに対して、開封部5の位置をより明確に指し示すことができ、ユーザによる開封作業を更に容易ならしめることができる。
【0035】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では、密封包装体1の筒軸方向一方端部のみに開封部5を設けた構成について説明したが、筒軸方向両端部にそれぞれ開封部5を設けてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 密封包装体
2 本体フィルム
3 クリップ(結紮手段)
4 合掌シール部
5 開封部
10 凹溝
11 表面層
12 中間支持層
13 バリア層
14 内面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填される筒状の本体フィルムと、該本体フィルムの端部を結紮する結紮手段と、該結紮手段で結紮されて前記内容物が密封された前記本体フィルムを開封するための開封部を有する密封包装体であって、
前記開封部は、前記本体フィルムの表面にレーザ光を照射して形成された凹溝を有することを特徴とする密封包装体。
【請求項2】
前記本体フィルムは、前記レーザ光の照射された箇所が消失する表面層と、該表面層の下側に配置されて前記レーザ光を反射するレーザ反射層とを有することを特徴とする請求項1に記載の密封包装体。
【請求項3】
前記レーザ反射層は、金属粉を含有する金属層を有することを特徴とする請求項2に記載の密封包装体。
【請求項4】
前記本体フィルムは、前記レーザ反射層の下側で酸素の透過を阻止するバリア層と、バリア層の下側に熱溶着可能な内面層を有することを特徴とする請求項2または3に記載の密封包装体。
【請求項5】
前記凹溝は、前記筒状の本体フィルムの筒軸方向に直交して周方向に延在することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の密封包装体。
【請求項6】
前記凹溝は、前記本体フィルムの端部から、前記本体フィルムの直径長さと等しい距離だけ離間した位置に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の密封包装体。
【請求項7】
前記表面層の上に接着されて前記開封部に沿って延在し、前記開封部の位置を示す開封位置表示フィルムを有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の密封包装体。
【請求項8】
内容物が充填される筒状の本体フィルムと、該本体フィルムの端部を結紮する結紮手段と、該結紮手段で結紮されて前記内容物が密封された前記本体フィルムを開封するための開封部を有する密封包装体を製造する密封包装体の製造方法であって、
筒状の本体フィルムの一方端部を結紮するステップと、
該本体フィルムの他方端部から前記本体フィルムに内容物を充填するステップと、
該内容物が充填された本体フィルムの他方端部を結紮するステップと、
該本体フィルムの表面にレーザ光を照射して凹溝を形成するステップと、
を有することを特徴とする密封包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62066(P2012−62066A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205692(P2010−205692)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000233620)株式会社マルハニチロ食品 (34)
【Fターム(参考)】