説明

密封小線源配置画像記録装置

【課題】リモートアフターローデイングシステムによる密封小線源治療時の密封小線源配置位置及び強度分布を記録できる密封小線源配置画像記録装置を提供する。
【解決手段】リモートアフターローデイングシステムによる密封小線源治療時の線源配置画像記録装置であって、放射線遮蔽材料にて放射線被ばく面を被覆された筐体と、該筐体の放射線被ばく面側中央に設けられ着脱可能なピンホール部材と、該ピンホール部材と対向する前記筐体の他端側に設けられた放射線画像記録部材と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内から放射線の照射を行なう密封小線源を用いるリモートアフターローディングシステムにおいて、この密封小線源による治療の際の線源配置位置や強度分布を記録し保存できる密封小線源配置画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線同位元素治療装置として、リモートアフターローディング装置が広く普及している。この装置は人体内から密封小線源によって放射線の照射を行い、例えば上咽頭がん、気管支がんなどの腔内照射治療に使用されている。
【0003】
一方密封小線源は、Ra、Cs、Ir、I、Au、Sr等が使用されている。チタンなどの金属によって、針、管、ピン、ワイヤー、シード、グレイン等の形状で線源を密封し、体内で直接一時装着源或いは永久刺入線源として用いられる。
【0004】
ところで、上記リモートアフターローディング装置の場合、別室から操作して密封小線源を体腔内で移動させることが可能であり、線源による術者の被ばくを最小限にできるものであるが、治療時の線源の配置や停留時間に関しては、予め治療計画装置によって算出されたデータによって実施される。しかし、実際の治療が計画された線源配置や停留時間の通りに実施されたか否かを治療後に検証することはできず、施術は治療計画の通りに実施されたものと推定し、その後の治療計画に反映されていた。しかしながら、このような推定では、的確な治療計画の立案、及びそれに基づいた治療の品質を保証するには十分ではない。
【0005】
そこで、生体腔内に治療用アプリケータを挿入し、この治療用アプリケータ内に放射線源を導入して患部を治療する治療装置であって、その治療用アプリケータ内に誘導した放射線源の放射する放射線を検出してその放射線源の位置を検出するシンチレータを設けた治療装置が提案されている(特許文献1参照。)。また、密封小線源治療時の線源停止位置を線源位置確認器具により確認する技術も提案されている(特許文献2参照。)。そして、複数個の放射線源を整列保持させた線源整列保持具と、放射線感光フィルム等の放射線強度を検出する放射線検出手段とを位置合わせる、放射線源の品質検査方法及び品質検査装置もある(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−185017号公報
【特許文献2】特開2003−038664号公報
【特許文献3】特開2006−263353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の特許文献1の技術は、治療用のアプリケータ内の一次元方向の位置確認は可能となるが、患部の二次元での線源配置の確認はできないものであった。また、上記の特許文献2の技術は、吸収板と保持物質との間に挿入された管とからなる線源位置確認器具を用いて、放射線源の位置を確定しようとするものであり、本願発明のピンホールカメラを使用する技術とは全く異なるものである。さらに特許文献3の技術は、放射線源の強度を感光性フィルムなどによって検知して、線源自体の品質管理を行なう技術であり、線源を使用して治療を行なう際の検知技術として利用できるものではなかった。
【0008】
そこで、X線の散乱線撮像に使用されるピンホールカメラを、密封小線源からの放射線の撮像に適用を試みたところ、以下の問題が明らかとなった。即ち、密封小線源は高エネルギーであるため、放射線遮蔽板の厚みが薄いと、密封小線源からの散乱線が混入してしまう問題があった。また、そのような不要な散乱線混入によって画像の鮮鋭度が低下するという問題があった。さらに、治療に用いる線源は線源の強度や大きさが治療計画により異なる場合があるため、ピンホールの大きさを調整する必要があることも明らかとなった。さらに画像を記録する面を平面で構成しなければ、撮像された画像を解析の際に、曲面の補正(拡大率補正)が煩雑になるという問題もあった。
【0009】
上記の問題点に鑑み本発明者らは、鋭意研究の結果、放射線の画像検出器であるイメージングプレート(以下IPと称する)を装着したカセッテと、新規なピンホールカメラを使用し、密封小線源治療時の線源配置位置と強度分布を記録・保存できる密封小線源配置画像記録装置を提供するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明の密封小線源配置画像記録装置は、放射線遮蔽材料にて被覆された筐体と、該筐体の放射線被ばく面側中央に設けられ着脱可能なピンホール部材と、該ピンホール部材と対向する前記筐体の他端側に設けられた放射線画像記録部材と、から構成されたことを第1の特徴とする。
【0011】
また、前記放射線遮蔽材料は、少なくとも10mmの厚さを有するPb材であることを第2の特徴とする。
【0012】
そして、前記ピンホール部材は、少なくとも10mmの厚さを有するPb材の中央に、所定のテーパを有するすり鉢形状の凹部が形成され、且つ該凹部の底部には直径0.5〜2.0mmの円形孔部が穿設されたことを第3の特徴とする。
【0013】
さらに、前記放射線画像記録部材は、遮光箱であるカセッテ内に装着されたIPであることを第4の特徴とする。
【0014】
しかも、移動自在な車輪を装着し、上下移動可能なリフトをさらに備えたことを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る密封小線源配置画像記録装置によれば、射線遮蔽材料にて被覆された筐体と、該筐体の放射線被ばく面側中央に設けられ着脱可能なピンホール部材と、該ピンホール部材と対向する前記筐体の他端側に設けられた放射線画像記録部材と、から構成されており、ピンホールから放射される放射線によって、密封小線源の配置が放射線画像記録部材上に記録され、予め計画された密封小線源の配置と、実際の密封小線源の配置とが2次元画像で確認することができるという優れた効果を有する。
【0016】
尚、本発明に係る密封小線源配置画像記録装置を異なる二以上の方向に設置すれば、それぞれの装置から得られる配置をもとに、実際の小線源の配置を3次元で確認することも可能となる。
【0017】
また、放射線遮蔽材料に少なくとも10mmの厚さを有するPb材を使用したため、散乱放射線による画質への悪影響を軽減できるという優れた効果を有する。
【0018】
そして、直径0.5〜2.0mmの円形孔部を有するピンホール部材を選択して着脱可能に使用できるため、密封小線源の強度や大きさ毎に変更して使用できるという優れた効果を有する。
【0019】
尚、ピンホール部材は使用する線源の強度及び大きさ、並びにピンホール部材の各構成要素によって、当業者であれば適宜最適なものを選択することができるが、一例を挙げれば、線源寸法0.6mmΦ×3.5mm、放射能370GBqのイリジウム192線源を用いる場合、放射線遮蔽材料厚みを10mm、底部ピンホール直径を0.7mmとすることで、鮮鋭な画像を得ることが可能となる。
【0020】
さらに、遮光箱であるカセッテ内に装着されたIPを画像記録部材として使用し、ピンホールを通して画像を記録するため、画像記録部材の取り扱いが簡便であると共に、密封小線源配置位置の2次元等法拡大補正が可能であるという効果を有する。
【0021】
尚、上記密封小線源配置画像記録装置は、移動自在な車輪と上下移動可能なリフトを備えており、治療用の台への移動が簡単であると同時に、台の高さに合わせて上下位置調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の密封小線源配置画像記録装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】密封小線源配置画像記録装置本体の正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】ピンホール部の部分拡大説明図である。
【図5】本発明の密封小線源配置画像記録装置による撮像原理を示す図である。
【図6】本発明の密封小線源配置画像記録装置による撮像原理を示す図である。
【図7】従来のピンホールカメラによる撮像図である。
【図8】本発明の密封小線源配置画像記録装置による撮像図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の密封小線源配置画像記録装置を図面に基づいて説明する。図1は本発明の密封小線源配置画像記録装置の一実施例を示す正面断面説明図、図2は本発明の密封小線源配置画像記録装置本体の正面図、図3は図2の平面図、図4はピンホール部の部分拡大説明図、図5は本発明の密封小線源配置画像記録装置による撮像原理を示す図、図6は本発明の密封小線源配置画像記録装置による他の撮像原理を示す図、図7は従来のピンホールカメラによる撮像図、図8は本発明の密封小線源配置画像記録装置による撮像図である。
【実施例1】
【0024】
図1乃至図3に示すように、本発明の密封小線源配置画像記録装置1は、略四角錐台形の筐体からなる装置本体2と、この装置本体2を移動自在に載置するリフト台車3と、から構成されており、装置本体2の上部に取り付けられたピンホール部材4から入射した密封小線源(図示せず)からの放射線を後述するIPで受けて記録する。
【0025】
装置本体2の上面部5及び側面部6は、何れもPb板材で被覆されており、このPb板材は10mmの厚さで形成されている。
【0026】
また、装置本体2の下部には、カセッテ挿入台7がスライド自在に装着するカセッテ受部8が設けられ、後述するイメージングプレートを水平に装着可能とする。そして装置本体2の上面部5の中央には、ピンホール部材4が着脱可能とする取り付け凹部9が形成されており、この取り付け凹部9の中央には入射穴10が形成されている。
【0027】
図4は、ピンホール部材の部分拡大説明図である。図に示すように、ピンホール部材4は10mm厚のPb板からなり、その中央には、直径10〜20mmのすり鉢状凹部11が形成され、その中央底部には0.5〜2.0mm径の円形孔部12が穿設されている。そして、このピンホール部材4は装置本体2の上部に形成された取り付け凹部8に着脱自在に載置される。なおこのとき、すり鉢形状の凹部のテーパ角は、50°〜90°の範囲にある。
【0028】
図5は、上記構成の密封小線源配置画像記録装置を使用した密封小線源画像の撮像原理を示す図であり、また図6は密封小線源配置画像記録装置を使用する三次元撮像原理を示す図である。図5に示すように、治療用の寝台13の右端に設置された密封小線源14、14から放射される放射線15を、寝台13の下部に配置された装置本体2によって撮像する。そして、図6に示すように、寝台13の下部及び側面方向に配置された装置本体2によって、密封小線源14、14から放射される放射線15は同時に撮像される。
【0029】
密封小線源14から放射した放射線15が装置本体2に照射されると、装置本体2の表面のPb板によって遮蔽された面ではそのほとんどが遮蔽され、上面中央に形成されたピンホール部材4に照射された放射線は、中央部の円形孔部10を通して装置本体2の内部に入り、カセッテ15に到達する。尚、カセッテ15の内部には、予めIP(図示せず)が装着されており、アルミ若しくはカーボンにて成形されているカセッテ15を通して放射線画像が記録される。
【0030】
上記の構成からなる本発明の密封小線源配置画像記録装置を使用して、実際の高線量率リモートアフターローデイング装置による密封小線源治療における線源配置画像の記録を行なった。また、比較として、従来の構造を持つピンホールカメラを使用した線源配置画像の撮影を行なった。尚、使用した機器は以下のとおりである。
・高線量率リモートアフターローデイング装置:マイクロセレクトロンHDR(Nucletron製)
・密封小線源 :Ir‐192(径0.6mm×3.5mm)
・ピンホール径 :0.7mm
・IP :コニカミノルタ製六切サイズ
・画像解析ソフト :ImageJ
結果を図6及び図7に示す。
【0031】
図7は、従来のピンホールカメラを使用して線源配置を撮像した画像であり、図7(a)は計画線源配置を示し、図7(b)は実際の線源配置画像を示し、図7(c)は計画線源配置と実際の線源配置画像の合成画像を示している。また、図8は、本発明の密封小線源配置画像記録装置による撮像画像であり図8(a)は計画線源配置を示し、図8(b)は実際の線源配置画像を示し、図8(c)は計画線源配置と実際の線源配置画像の合成画像を示している。尚、この線源配置には2種(タンデム、オボイド)のアプリケータを用いて線源の移動を行なった。
【0032】
図7に示すように、従来のピンホールカメラを使用して撮像した線源配置画像の場合、図7(b)の中央上部に記録されたタンデムの線源画像と、下部左右に記録されたオボイドの線源画像は何れもボケた画像となっており、図7(c)に示すように線源の配置位置の判別が困難であった。これに対し本発明の密封小線源配置画像記録装置による線源配置画像は、図8(b)に示すように、線源の円柱状の形状が判別可能となり、図8(a)の計画線源配置と合成した画像である図8(c)に示すように、予め計画した線源の配置と、実際に配置した線源の配置位置との確認が明確であることが判明した。尚、オボイドを使用した線源配置位置に関しては、線源がIPに対して垂直方向に配置されたため、本発明の密封小線源配置画像記録装置でも線源が明確に分離した画像は得られなかった。
【0033】
以上、本発明による密封小線源配置画像記録装置によれば、射線遮蔽材料にて被覆された筐体と、該筐体の放射線被ばく面側中央に設けられ着脱可能なピンホール部材と、該ピンホール部材と対向する前記筐体の他端側に設けられた放射線画像記録部材と、から構成されており、ピンホールから放射される放射線によって、密封小線源の配置が放射線画像記録部材上に記録され、予め計画された密封小線源の配置と、実際の密封小線源の配置とが2次元画像で確認することが可能となり、実際の治療時の線源配置の比較検証ができると共に、放射線治療分野における品質管理・品質保証に活用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 密封小線源配置画像記録装置
2 装置本体
3 リフト台車
4 ピンホール部材
5 上面部
6 側面部
7 カセッテ挿入台
8 カセッテ受部
9 すり鉢状凹部
10 入射穴
11 すり鉢状凹部
12 円形孔部
13 寝台
14 密封小線源
15 放射線
16 カセッテ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートアフターローデイングシステムによる密封小線源治療時の線源配置画像記録装置であって、放射線遮遮蔽材料にて放射線被ばく面を被覆された筐体と、該筐体の放射線被ばく面側中央に設けられ着脱可能なピンホール部材と、該ピンホール部材と対向する前記筐体の他端側に設けられた放射線画像記録部材と、から構成されたことを特徴とする密封小線源配置画像記録装置。
【請求項2】
前記放射線遮断材料は、少なくとも10mmの厚さを有するPb材であることを特徴とする請求項1に記載の密封小線源配置画像記録装置。
【請求項3】
前記ピンホール部材は、少なくとも10mmの厚さを有するPb板材の中央に、所定のテーパを有するすり鉢形状の凹部が形成され、且つ該凹部の底部には直径0.5〜2.0mmの円形孔部が穿設されたことを特徴とする請求項1に記載の密封小線源配置画像記録装置。
【請求項4】
前記放射線画像記録部材は、遮光箱であるカセッテ内に装着されたイメージングプレートであることを特徴とする請求項1に記載の密封小線源配置画像記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の密封小線源配置画像記録装置であって、移動自在な車輪を装着し、上下移動可能なリフトをさらに備えたことを特徴とする密封小線源配置画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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