説明

密封構造及びガスケット

【課題】ガスケットが密着する部分において、2部材間の距離が変化する部分が存在するような場合であっても適切に封止することが可能な密封構造及びガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケットは、第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分111を有する第1ガスケット部と、第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分150を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、を備え、第2被装着部分150の両側面には、第2溝の両側面にそれぞれ密着する一対の第1凸部151が設けられており、第1被装着部分111の側面のうち、第2ガスケット部が繋がっている部分の真裏の位置に、第1溝の側面に密着する第2凸部160が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造及びガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
相対的に静止した2部材の表面間をガスケットによって封止する場合、2部材においてガスケットが密着する部分については、両者の距離を一定にするのが一般的である。何故なら、両者の距離が変化する部分が存在すると、2部材によってガスケットを圧縮した場合に、ガスケットに対して両者の距離が長くなる側にガスケットを押す力が発生するために、ガスケットの位置がずれてしまい、密封機能を発揮させるのが難しくなってしまうからである。
【0003】
しかしながら、何らかの事情で、両者の距離が変化する部分が存在してしまうことも想定される。以下に、その一例を説明する。
【0004】
相対的に静止した2部材の表面間を封止するためのガスケットの場合、ガスケットの位置がずれてしまわないように、2部材のうちの一方に溝が形成され、この溝内にガスケットが装着されるのが一般的である。
【0005】
一方、寸法や、成形等による品質上の問題から、ガスケットを装着する部分において、ガスケットを装着するための溝を形成できないこともある。
【0006】
また、ガスケットを装着するための溝を形成することが可能な部位と、ガスケットを装着するための溝を形成することができない部位が繋がっているような場合においては、溝が形成されている部位専用のガスケットと、溝が形成されていない部位専用のガスケットを、それぞれ独立に設けることが考えられる。
【0007】
しかしながら、それぞれガスケットを独立に設けた場合には、両者が繋がる部分を確実に密封するのが難しいことが考えられる。また、それぞれ独立にガスケットを設ける場合には、部品点数が増加してしまい、ガスケットを装着する作業工程も増えてしまう。
【0008】
そのため、溝が形成されている部位と溝が形成されていない部位の両者を封止可能なガスケットが求められる。しかしながら、ガスケットを装着するための溝が形成されている部位と、ガスケットを装着するための溝が形成されていない部位では、ガスケットが密着する部分において、2部材間の距離が異なってしまい、両者が繋がる部分に、2部材間の距離が変化する部分が存在してしまう。
【0009】
このように、ガスケットが密着する部分において、2部材間の距離が変化する部分が存在してしまう場合があり、このような場合でも、ガスケットによって適切に封止させることが要求される。
【0010】
ここで、ガスケットを装着するための溝を形成することが可能な部位と、ガスケットを装着するための溝を形成することができない部位が繋がっているような構成が採用され得る具体例を説明する。
【0011】
自動車のエンジンのシリンダヘッドとシリンダヘッドカバーなどの2部材間に組み付けられるガスケットは、一般的に、シリンダヘッドカバーなど、一方の部材に設けられた溝の中に装着される。
【0012】
また、エンジンの構成上、シリンダヘッド内からシリンダヘッドカバー内に至る領域には、例えば、ブローバイガス用の流路を形成する管部や、吸気や排気用の流路を形成する管部あるいは吸排気マニホールドなどの各種管部や、点火栓孔やボルト挿通孔などの各種連通孔などが設けられる。
【0013】
そのため、管部や連通孔のうち、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとが合わさる部分に、ガスケットを設けなければならないことがある。
【0014】
そして、レイアウト上の理由などにより、管部や連通孔が、シリンダヘッドやシリンダヘッドカバーの外壁部に隣接して設けられることがある。また、管部や連通孔を形成する壁(隔壁)に、ガスケットを装着するための溝を形成することができない、あるいは溝を形成するのは望ましくない場合があり得る。これは、省スペース化に伴うレイアウト上の理由や、シリンダヘッドカバーを樹脂成形により製造する場合における成形品質上の理由などによるものである。
【0015】
このような場合に、ガスケットを装着するための溝を形成することが可能な部位(外壁の部分)と、ガスケットを装着するための溝を形成することができない部位(管部や連通孔を形成する壁(隔壁)の部分)が繋がっているような構成が採用され得る。
【0016】
そして、このような構成が採用される場合には、装着作業性などの観点から、両方の部位を封止可能なガスケット(溝に装着される部分を封止するガスケットと溝に装着されない部分を封止するガスケットが一体的に構成されるようなガスケット)が求められるが、特に両者が繋がる部位において確実に密封するのが難しいことから、両方の部位を適切に封止できるようなガスケットは知られていない。
【0017】
なお、ガスケットを装着するための溝を形成することが可能な部位と、ガスケットを装着するための溝を形成することができない部位が繋がっているような構成を適用し得る構造の例としては、例えば、特許文献1〜5に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平11−223118号公報
【特許文献2】特開2006−29364号公報
【特許文献3】特開2004−138196号公報
【特許文献4】実用新案登録第2548725号公報
【特許文献5】特開2002−61539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、ガスケットが密着する部分において、2部材間の距離が変化する部分が存在するような場合であっても適切に封止することが可能な密封構造及びガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0020】
すなわち、本発明の密封構造は、
第1部材と第2部材との間の隙間をガスケットによって封止する密封構造において、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
前記ガスケットは、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第2被装着部分の両側面には、第2溝の両側面にそれぞれ密着する一対の第1凸部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の他の密封構造は、
第1部材と第2部材との間の隙間をガスケットによって封止する密封構造において、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
前記ガスケットは、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第1被装着部分の側面のうち、第2ガスケット部が繋がっている部分の真裏の位置に、第1溝の側面に密着する第2凸部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明のガスケットは、
第1部材と第2部材との間の隙間を封止するガスケットにおいて、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第2被装着部分の両側面には、第2溝の両側面にそれぞれ密着する一対の第1凸部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の他のガスケットは、
第1部材と第2部材との間の隙間を封止するガスケットにおいて、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第1被装着部分の側面のうち、第2ガスケット部が繋がっている部分の真裏の位置に、第1溝の側面に密着する第2凸部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
以上の発明によれば、第1凸部が第2溝の両側面にそれぞれ密着することにより、あるいは、第2凸部が第1溝の側面に密着することにより、第2被装着部分の第2溝への装着
状態を安定させることができる。つまり、第2被装着部分の位置がずれてしまうことを抑制できる。これにより、第1部材と第2部材との間の距離が変化する部分(第2溝が設けられている部分)が存在しても、第2被装着部分は第2溝内で位置がずれてしまうことが抑制されるので、安定した密封機能が発揮される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、ガスケットが密着する部分において、2部材間の距離が変化する部分が存在するような場合であっても適切に封止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0027】
(実施例)
図1〜図15を参照して、本発明の実施例に係る密封構造及びガスケットについて説明する。
【0028】
<ガスケットの全体的な構成>
図1〜図8を参照して、本発明の実施例に係るガスケットの全体的な構成について説明する。図1は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図2は本発明の実施例に係るガスケットを上方側から見た斜視図である。図3は本発明の実施例に係るガスケットにおける下方側から見た斜視図の一部である。図4は本発明の実施例に係るガスケットを第1部材(カムカバー)に装着した状態を示す上方側から見た斜視図の一部である。図5は本発明の実施例に係る第1部材(カムカバー)の模式的平面図である。図6は本発明の実施例に係る第1部材(カムカバー)の斜視図の一部である。図7及び図8は本発明の実施例に係るガスケットにおける第1ガスケット部の装着状態を示す模式的断面図である。なお、図7は図2中、矢印Aで示す部分の切断部の断面図であり、図8は図2中、矢印Bで示す部分の切断部の断面図である。
【0029】
まず、特に図4〜図8を参照して、ガスケット100が装着される相手側の部材に関して説明する。なお、本実施例では、第1部材としてのカムカバー200と第2部材としてのハウジング300との間の隙間を、ガスケット100によって密封する構造を例にして説明する。
【0030】
カムカバー200は、例えば図5に示すように、隔壁220によって内部の空間領域が分割されており、外壁部210の端部(開口部側の端部)によって形成される第1開口部K1と、外壁部210の端部の一部と隔壁220の端部(開口部側の端部)によって形成され、第1開口部K1の領域内に設けられる第2開口部K2とを有する。なお、本実施例では、ブローバイガス管として機能する管部分における外部に開放する開口部が第2開口部K2に相当する。
【0031】
そして、外壁部210の端部には、第1開口部K1の開口端縁に沿うようにして、第1溝211が形成されている。また、隔壁220の端部には、外壁部210に繋がる付近のみに、第1溝211の底面211aから隔壁220の端部表面に至る傾斜した底面221aを有する第2溝221が第1溝211から分岐するようにして形成されている。なお、隔壁220の端部全体に溝を設けていないのは、寸法や製造に伴う品質上の理由に基づくものである。
【0032】
ハウジング300には、カムカバー200の外壁部210の端部と隔壁220の端部にそれぞれ対向する対向面301が設けられている。この対向面301は、同一平面上にあるように構成されており、外壁部210の端部に対向する面の部分と隔壁220の端部に対向する面の部分は同一平面上にあるように構成されている。
【0033】
次に、特に図1〜図4、図7及び図8を参照して、ガスケット100について説明する。
【0034】
ガスケット100は、カムカバー200の外壁部の端部に沿った形状で構成される第1ガスケット部110と、カムカバー200の隔壁220の端部に沿った形状で構成される第2ガスケット部120とを備えている。なお、第2ガスケット部120の両端は、第1ガスケット部110に繋がっている。
【0035】
また、ガスケット100におけるハウジング300側の面には、第1シール凸部131と第2シール凸部132と第3シール凸部133が設けられている。これらのシール凸部によって、第1ガスケット部110と第2ガスケット部120には、いずれもハウジング300の対向面301に密着する一対のシール凸部が設けられる。ここで、第1シール凸部131は、第1開口部K1の開口端縁に沿うように設けられており、第2シール凸部132は、第1開口部K1の領域のうち第2開口部K2の領域を除いた部分の開口部の端縁に沿うように設けられており、第3シール凸部133は、第2開口部K2の開口端縁に沿うように設けられている。
【0036】
第1ガスケット部110は、カムカバー200の外壁部210の端部に形成された第1溝211に装着される第1被装着部分111と、第1溝211の開口端縁に沿って配置されるように両側面側にそれぞれ張り出すように設けられ、カムカバー200とハウジング300との間に挟み込まれる張り出し部115とを備えている。
【0037】
図7及び図8は第1被装着部分111の装着状態を断面にて示したものである。これらの図に示すように、第1被装着部分111の先端が第1溝211の底面211aに密着し、一対のシール凸部(この図に示されたものの場合には、第1シール凸部131と第2シール凸部132)がハウジング300における対向面301に密着する。
【0038】
また、第1被装着部分111には、その両側面に、脱落防止用の突起140が複数個所に設けられている。図7は脱落防止用の突起140が設けられている部分を示したもので、図8は脱落防止用の突起140が設けられていない部分を示したものである。図7に示すように、脱落防止用の突起140は、第1溝211の側面に密着する。これにより、ガスケット装着後、第1ガスケット部110が、第1溝211から脱落することが防止される。
【0039】
<第2ガスケット部>
特に、図9〜図15を参照して、第2ガスケット部120について、更に詳細に説明する。図9は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2被装着部分の辺りを示す斜視図である。なお、図9は、図3におけるCで囲んだ辺りの斜視図に相当する。図10は本発明の実施例に係る第1部材(カムカバー)における第2溝の辺りを示す斜視図である。図11及び図12は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2ガスケット部の装着状態を説明する模式的断面図である。なお、図11はハウジングが組み込まれる直前(ハウジングによる外力が作用する前)の状態を示し、図12はハウジングが組み込まれた状態を示している。ここで、図11及び図12中の第2ガスケット部120は、図3におけるDで囲んだ辺りの断面に相当する。図13は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2被装着部分の装着状態を説明する模式的断面図である。図14は比較例(仮想技術)に係
るガスケットにおける第2被装着部分の装着状態を説明する模式的断面図である。図15は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2被装着部分を示す底面図である。
【0040】
第2ガスケット部120は、カムカバー200の隔壁220の端部における外壁部210に繋がる付近にのみに形成された第2溝221に装着される第2被装着部分150を備えている。そして、第2被装着部分150の底面には、第2溝221の傾斜した底面221aに密着する傾斜面152を有している。この第2ガスケット部120の場合、第2被装着部分150を除く部分は、溝には装着されず、隔壁220の端部表面とハウジング300における対向面301との間に挟み込まれる。
【0041】
まず、特に、図11及び図12を参照して、第2ガスケット部120における第2被装着部分150を除く部分の装着状態について説明する。図11は、ガスケット100が、カムカバー200側に装着された状態であって、ハウジング300が組み立てられる直前の状態、つまり、ガスケット100に対してハウジング300による外力が作用していない状態を示したものである。この図に示すように、ハウジング300による外力が作用していない状態では、第2ガスケット部120は隔壁220の端部には接していない。
【0042】
第2ガスケット部120は、隔壁220の端部に沿って密着するシール突起部163と、ハウジング300における対向面301に密着する一対のシール凸部(第2シール凸部132と第3シール凸部133)を備えている。これら一対のシール凸部は、シール突起部163が設けられている側とは反対側の面において、シール突起部163の両側に沿うようにして設けられる。
【0043】
また、第2ガスケット部120には、その両側面側に、それぞれシール突起部163と同じ方向に向かって伸び、かつ、隔壁220の両側面に沿うようにして設けられる位置決め部としての一対のガイド161,162が設けられている。これらのガイド161,162の内側の隅部161a,162aは湾曲状に凹んでいる。
【0044】
以上のように構成された第2ガスケット部120が、完全に組み込まれた状態(ハウジング300が組み立てられた状態)における第2ガスケット部120の装着状態について、図12を参照して説明する。
【0045】
第2ガスケット部120が完全に組み込まれた状態においては、第2ガスケット部120は、隔壁220の端部とハウジング300の対向面301によって挟み込まれた状態となる。このとき、シール突起部163の先端が隔壁220の端部に密着し、一対のシール凸部(第2シール凸部132と第3シール凸部133)がハウジング300における対向面301に密着する。このように、第2ガスケット部120は、3箇所の突起状の部分によって、3点接触のような状態で圧縮される。このため、第2ガスケット部120が過剰に圧縮されることが防止される。
【0046】
また、一対のガイド161,162が隔壁220の両側面に沿うように配置される。この一対のガイド161,162によって、第2ガスケット部120における隔壁220に対する位置ずれを防止させることができる。なお、第2ガスケット部120が隔壁220の端部とハウジング300の対向面301によって圧縮されると、第2ガスケット部120は、カムカバー200における第2開口部K2の外側に拡がるように変形しようとする。そのため、一対のガイド161,162のうち、特に第2開口部K2に面したガイド161が隔壁220の側面に密着して、第2ガスケット部120の位置ずれを防止する。従って、通常、主としてガイド161が位置決め部として機能し、ガイド162は位置決め部としてあまり機能することはない。また、上記の通り、ガイド161,162の内側の隅部161a,162aは湾曲状に凹んでいるため、これらの隅部161a,162aが
隔壁220の角部に強く当たってしまうことを防止できる。
【0047】
次に、特に、図9及び図13〜図15を参照して、第2ガスケット部120における第2被装着部分150について詳細に説明する。
【0048】
第2溝221の底面221aは、第1溝211の底面211aからハウジング300における対向面301との距離が徐々に近づくように傾斜する傾斜面によって構成されている。そして、第2ガスケット部120における第2被装着部分150の底面には、この第2溝221の傾斜した底面221aに密着する傾斜面152を有している。この傾斜面152に関して、特に、図13及び図14を参照して詳しく説明する。
【0049】
本実施例においては、この傾斜面152は、第2被装着部分150がカムカバー200の第2溝221に装着され、かつハウジング300による外力が作用していない状態においては、図13に示すように、第1溝211の底面211a側は密着しており、隔壁220の端部表面側に近づくにつれて徐々に隙間が大きくなるように設定されている。この隙間は、より具体的には、第2ガスケット部120が隔壁220とハウジング300によって挟み込まれた場合(ハウジング300が組み立てられた状態)において、第2被装着部分150の圧縮率が全体的に等しくなるように設定されている。こうすることで、第2被装着部分150における隔壁220表面に対する面圧及びハウジング300における対向面301に対する面圧を均一にすることができる。
【0050】
なお、図14には、比較例(仮想技術)として、第2被装着部分150における傾斜面152aと第2溝221の傾斜した底面221aとの間に隙間がないように設定した場合の例を示している。この場合には、第2被装着部分150の圧縮率が不均一になり、第2被装着部分150における隔壁220表面に対する面圧及びハウジング300における対向面301に対する面圧が不均一になってしまう。
【0051】
すなわち、ハウジング300を組み立てる場合に、ハウジング300によって第2被装着部分150が押し込まれる量(寸法)はどの位置でも同じである。一方、第2被装着部分150の肉厚は、第1溝211に近づく程、厚くなるように構成されている。従って、ハウジング300による外力が作用していない状態で、第2被装着部分150における傾斜面152aと第2溝221の傾斜した底面221aとの間に隙間がないように設定した場合には、ハウジング300によって第2被装着部分150が押し込まれると、第1溝211に近づくほど、圧縮率は低くなり、圧縮率が不均一になってしまう。
【0052】
これに対して、上記の通り、本実施例では圧縮率を均一にすることができる。
【0053】
ここで、第2被装着部分150がカムカバー200とハウジング300によって圧縮される場合に、第2被装着部分150における傾斜面152は、第2溝221における傾斜した底面221aから反作用を受ける。この反作用による力は、第2被装着部分150が、第1溝211側に移動する方向への分力を含んでいる。そのため、第2被装着部分150が第1溝211側にずれてしまうと、第2被装着部分150における傾斜面152と第2溝221の傾斜した底面221aとの間の面圧が低下してしまう。
【0054】
そこで、本実施例では、第2被装着部分150の位置ずれを抑制する構造を採用している。すなわち、本実施例では、第2被装着部分150の両側面には、第2溝221の両側面にそれぞれ密着する一対の第1凸部151が設けられている。また、第1被装着部分111の側面のうち、第2ガスケット部120(第2被装着部分150)が繋がっている部分の真裏の位置には、第1溝211の側面に密着する第2凸部160が設けられている。
【0055】
これら一対の第1凸部151及び第2凸部160によって、第2被装着部分150における第2溝221内での位置ずれが抑制される。
【0056】
<本実施例の優れた点>
以上のように本実施例に係る密封構造、及びガスケット100によれば、カムカバー200における第1溝211が形成されている部位(外壁部210の端部全体)については第1ガスケット部110により封止することができ、溝が形成されていない部位(隔壁220の端部の大部分)は第2ガスケット部120により封止することができる。
【0057】
そして、外壁部210と隔壁220とが繋がる部位においては、隔壁220の端部における外壁部210に繋がる付近のみに第2溝221が形成されており、この第2溝221に、第2ガスケット部120に備えられた第2被装着部分150が装着されることによって封止することができる。ここで、第2溝221の底面221aは、第1溝211の底面211aから隔壁220の端部表面に至る傾斜した面によって構成され、第2被装着部分150には、この第2溝221の底面221aに密着する傾斜面152が備えられることで、外壁部210と隔壁220とが繋がる部位においても安定的に密封性能を発揮させることができる。
【0058】
そして、本実施例によれば、2部材(カムカバー200とハウジング300)間の距離が変化する部分(カムカバー200の隔壁220に設けられた第2溝221の部分)が存在しているものの、この部分を適切に封止することができる。
【0059】
すなわち、第2溝221の底面221aは傾斜した面によって構成されるため、ガスケット100における第2溝221に装着される部分である第2被装着部分150は、ガスケット100が圧縮された場合に、第1溝211側に移動する方向への力を受ける。
【0060】
しかし、本実施例では、第2被装着部分150の両側面に一対の第1凸部151が設けられているので、第2溝221内における第2被装着部分150の充填率が高まり、第2被装着部分150が第2溝221内で移動してしまうことが抑制される。更に、第1被装着部分111の側面のうち、第2ガスケット部120が繋がっている部分の真裏の位置には第2凸部160が設けられているので、第2被装着部分150が第1溝211側に移動するのを直接的に抑制することができ、第2被装着部分150が第2溝221内で移動してしまうことがより一層抑制される。
【0061】
このように、本実施例によれば、第2被装着部分150の第2溝221内における装着状態を安定させることができる。従って、密封性能を安定的に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るガスケットを上方側から見た斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るガスケットにおける下方側から見た斜視図の一部である。
【図4】図4は本発明の実施例に係るガスケットを第1部材(カムカバー)に装着した状態を示す上方側から見た斜視図の一部である。
【図5】図5は本発明の実施例に係る第1部材(カムカバー)の模式的平面図である。
【図6】図6は本発明の実施例に係る第1部材(カムカバー)の斜視図の一部である。
【図7】図7は本発明の実施例に係るガスケットにおける第1ガスケット部の装着状態を示す模式的断面図である。
【図8】図8は本発明の実施例に係るガスケットにおける第1ガスケット部の装着状態を示す模式的断面図である。
【図9】図9は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2被装着部分の辺りを示す斜視図である。
【図10】図10は本発明の実施例に係る第1部材(カムカバー)における第2溝の辺りを示す斜視図である。
【図11】図11は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2ガスケット部の装着状態を説明する模式的断面図である。
【図12】図12は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2ガスケット部の装着状態を説明する模式的断面図である。
【図13】図13は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2被装着部分の装着状態を説明する模式的断面図である。
【図14】図14は比較例(仮想技術)に係るガスケットにおける第2被装着部分の装着状態を説明する模式的断面図である。
【図15】図15は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2被装着部分を示す底面図である。
【符号の説明】
【0063】
100 ガスケット
110 第1ガスケット部
111 第1被装着部分
115 張り出し部
120 第2ガスケット部
131 第1シール凸部
132 第2シール凸部
133 第3シール凸部
140 突起
150 第2被装着部分
151 第1凸部
152 傾斜面
152a 傾斜面
160 第2凸部
161,162 ガイド
161a,162a 隅部
163 シール突起部
200 カムカバー
210 外壁部
211 第1溝
211a 底面
220 隔壁
221 第2溝
221a 底面
300 ハウジング
301 対向面
K1 第1開口部
K2 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間の隙間をガスケットによって封止する密封構造において、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
前記ガスケットは、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第2被装着部分の両側面には、第2溝の両側面にそれぞれ密着する一対の第1凸部が設けられていることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
第1部材と第2部材との間の隙間をガスケットによって封止する密封構造において、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
前記ガスケットは、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第1被装着部分の側面のうち、第2ガスケット部が繋がっている部分の真裏の位置に、第1溝の側面に密着する第2凸部が設けられていることを特徴とする密封構造。
【請求項3】
第1部材と第2部材との間の隙間を封止するガスケットにおいて、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第2被装着部分の両側面には、第2溝の両側面にそれぞれ密着する一対の第1凸部が設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
第1部材と第2部材との間の隙間を封止するガスケットにおいて、
第1部材には、ガスケットが装着される第1溝及び第1溝から分岐した第2溝が形成されており、かつ、第2溝の底面は、第1溝の底面から第2部材におけるガスケットが密着する面との距離が近づくように傾斜する傾斜した面によって構成されており、
第1溝内に装着されて第1溝の底面に密着する第1被装着部分を有する第1ガスケット部と、
第2溝内に装着されて第2溝の傾斜した底面に密着する傾斜面を有する第2被装着部分を第1ガスケット部に繋がる付近に有する第2ガスケット部と、
を備え、
第1被装着部分の側面のうち、第2ガスケット部が繋がっている部分の真裏の位置に、
第1溝の側面に密着する第2凸部が設けられていることを特徴とするガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−249096(P2008−249096A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94638(P2007−94638)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】