密封構造
【課題】パイプの挿入が軽く円滑であって、しかも、密封性能に優れた密封構造を提供する。
【解決手段】管継手の内挿筒部の外周面に横断面略矩形状のシール溝6を凹設し、上記内挿筒部が挿入されるパイプ端部の内周面に上記シール溝6に装着したOリングを密接させる密封構造に於て、上記シール溝6の内径側両隅部16,17の内の内挿筒部先端側隅部16に対応した溝底18の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝6に装着したOリングの全体外径寸法を縮小させるOリング保持凹部20を、形成して、パイプ未挿入状態下でのOリング待機状態とする。
【解決手段】管継手の内挿筒部の外周面に横断面略矩形状のシール溝6を凹設し、上記内挿筒部が挿入されるパイプ端部の内周面に上記シール溝6に装着したOリングを密接させる密封構造に於て、上記シール溝6の内径側両隅部16,17の内の内挿筒部先端側隅部16に対応した溝底18の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝6に装着したOリングの全体外径寸法を縮小させるOリング保持凹部20を、形成して、パイプ未挿入状態下でのOリング待機状態とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造に係り、特に、内挿筒部を有する管継手の密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多種多様のこの種の構造の管継手が使用されており、本出願人も過去に多くの提案を行ってきた(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3876258号公報
【特許文献2】特開2008−57574号公報
【特許文献3】特開2008−291886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の密封構造では、上記特許文献3を除き、次のような問題が残されていた。即ち、図15と図16に示すような従来の構造にあっては、管継手40の内挿筒部41を、被接続用パイプPの端部42に挿入する際に、シール溝43に装着されたOリング44に、パイプPの内周端縁角部45が衝突し(干渉して)、矢印A方向に強く押込もうとしても、容易に挿入できない場合があった。さらに、無理に強力な力で矢印A方向にパイプPを押せば、Oリング44を損傷して、その後の流体洩れの原因となっていた。
また、上記特許文献3に於ては、特別にパイプ誘導環体を付設していたが、部品点数が増加するという問題と組立ユニットとして、このパイプ誘導環体が脱落(紛失)してしまうという問題があった。あるいは、パイプを斜め切りしたときにはOリングを保護しつつ誘導するという効果が薄れたり、又は、パイプの先端面とパイプ誘導環体とを連続的に挿入しないで間隔が空くと、Oリングを保護するという作用が得られない等の問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を、簡易な構成にて解決し、パイプ端部に内挿筒部を、スムース(円滑)、かつ、迅速に挿入することができる密封構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、管継手の内挿筒部の外周面に横断面略矩形状のシール溝を凹設し、上記内挿筒部が挿入されるパイプ端部の内周面に上記シール溝に装着したOリングを密接させる密封構造に於て、上記シール溝の内径側両隅部の内の内挿筒部先端側隅部に対応した溝底の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝に装着したOリングの全体外径寸法を縮小させるOリング保持凹部を、形成したものである。
【0007】
また、上記シール溝の上記溝底の断面形状は、上記Oリング保持凹部が円弧状又は浅皿形であると共に、残部は直線状として、パイプ挿入に伴って上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが上記残部に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したものである。
【0008】
または、上記シール溝の上記溝底の断面形状は、上記Oリング保持凹部が円弧状又は浅皿形であると共に、残部は直線状として、密封流体の圧力を受けて、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが上記残部に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したものである。
【0009】
また、上記内挿筒部先端側隅部に向かって、上記内挿筒部をラジアル方向に貫通する流体圧力導入小孔が設けられ、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが該小孔から導入される流体圧力を受けて該Oリング保持凹部から飛び出すように構成したものである。
【0010】
また、シール溝の内挿筒部先端側の側面にラジアル方向の小溝を凹設して、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが、該小溝から導入される流体圧力を受けて該Oリング保持凹部から押し出されるように構成した。
【0011】
また、上記Oリング保持凹部に保持されたOリングが、パイプ挿入状態において、内挿筒部先端側のシール溝側面との間に微小間隙を形成するように、上記Oリング保持凹部の軸心方向寸法を設定し、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが、該微小間隙から導入される流体圧力を受けて該Oリング保持凹部から押し出されるように構成した。
【0012】
また、上記直線状の残部には、上記Oリング保持凹部よりも溝深さの浅い副凹部を形成した。
【発明の効果】
【0013】
パイプ未挿入状態下では、Oリングは、Oリング保持凹部に位置して、シール溝内の正規全体外径寸法よりも小さな寸法であるので、パイプ端部の内周端縁角部に軽く接触する程度にて、円滑にOリングを通過し、Oリングを傷付けずに容易かつ迅速な挿入作業を行い得る。その後、流体圧力が掛った受圧状態下では、シール溝の溝底のOリング保持凹部を除いた残部にOリングが位置して、十分にラジアル方向の圧縮を受けて、確実に密封作用をなすことができる。また、パイプ挿入後に、Oリングが保持凹部に位置していたとしても、流体圧力pが作用すると上記残部に確実に移動して、密封作用をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態を示し、挿入途中を示す要部断面図である。
【図2】挿入完了状態の要部断面図である。
【図3】シール溝の一例の拡大断面図である。
【図4】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図5】他の実施の形態を示す挿入完了状態の要部断面図である。
【図6】カシメ状態の要部断面図である。
【図7】流体圧力を受けた密封状態を示す要部断面図である。
【図8】別の実施の形態を示す未受圧状態(カシメ完了状態)の要部断面図である。
【図9】流体圧力を受けた密封状態を示す要部断面図である。
【図10】変形例を示すシール溝の形状説明図である。
【図11】さらに他の変形例を示すシール溝の形状説明図である。
【図12】別の変形例を示すシール溝の説明図である。
【図13】さらに別の変形例を示すシール溝の説明図である。
【図14】本発明のさらに別の実施の形態を示す断面図である。
【図15】従来例を示す要部断面説明図である。
【図16】従来例の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1〜図4に示す実施の形態に於て、1は管継手を示し、被接続用パイプPの(パイプ)端部2に挿入される内挿筒部3を備え、かつ、図例では、カシメ用筒材4が取着環5を介して、付設されている。
【0016】
管継手1の内挿筒部3の外周面3Aには、横断面略矩形状のシール溝6,6が凹設されている。図1,図2では、2本のシール溝6,6の場合を例示するが、この本数は1本でも、あるいは3本とすることも可能である。
また、内挿筒部3は、その先端7の外周には、パイフ端部2が矢印A方向に挿入し易いように先細テーパ部8が形成されると共に、(後述の)図2に矢印B方向へのカシメ加工時に局部的に縮径変形するカシメ用筒材4が嵌込可能なように、適数個の凹周溝部9,10,11が、上記シール溝6,6の先端側・基端側に隣接して、形成されている。
【0017】
シール溝6には、Oリング15が装着され、(図1から図2のように)内挿筒部3がパイプ端部2の内周面12にOリング15の外周面側が密接して密封状態となる。
そして、シール溝6は、その内径側両隅部16,17の内の内挿筒部先端7側の隅部16に対応した溝底18の一部に、図1と図4(A)に示す如く、パイプ未挿入状態下でOリング15を待機させて保持するOリング保持凹部20を、断面形状円弧状に形成している。
【0018】
このOリング保持凹部20に待機状態で保持されることによって、シール溝6に装着したOリング15の全体外径寸法Dを、Oリング15自身の縮径方向弾発力によって、縮小し、Oリング15の内周面側は、弾発的に密に、Oリング保持凹部20に接触してその位置を、保持している。
【0019】
シール溝6の溝底18の断面形状は、Oリング保持凹部20が円弧状であると共に、残部21は、直線状とされ、図1から図2に示すように、あるいは、図4中の(A)→(B)→(C)→(D)と順次示すように、矢印A方向のパイプ挿入に伴って、凹部20内に保持されていたOリング15が、残部21に移動して、ラジアル方向に弾発的に圧縮されたOリング圧縮状態に切換わり、密封作用をなす(密封状態という)。その後、図2中に矢印Bにて示すように、(図示省略のカシメ作業工具によって)カシメ用筒材4をラジアル内方向に圧縮遡性変形させることにより、パイプ端部2を、引抜けないように、管継手1に対して、一体状に接続できる。
【0020】
ここで、図4に基づいて、さらに、詳しく説明すれば、図4(A)のパイプ未挿入の待機状態では、Oリング15の(全体)外径寸法Dは図16に示した従来例のOリング44の(全体)外径寸法D′よりも小さい状態に保持される。しかも、パイプ内径寸法dよりも上記外径寸法Dを僅かに大きく設定する。
【0021】
即ち、d<D<D′とする。Oリング保持凹部20の径寸法と、残部21の径寸法との差は、パイプ内径寸法dが10mm〜20mmでは、 0.2mm〜0.7mm とするのが望ましい。また、パイプ内径寸法dが40mm〜50mmでは、 0.5mm〜1.0mm が望ましい。
【0022】
次に、図1から図4(B)に示すように、相対的にパイプPが矢印A方向に前進すれば、パイプ端部2の開口端内周角部22がOリング保持凹部20内のOリング15に、軽く接触し、さらにパイプPを挿入してゆけば、Oリング15は、図4(B)から(C)のように、僅かに矢印C方向に回転しつつ、矢印E方向に(軸心方向に)移動して、図4(D)の密封状態(Oリング圧縮状態)となる。このように、パイプ端部2の内面との摩擦によって(摩擦抵抗によって)、Oリング15はOリング保持凹部20から溝底残部21へと移動して、パイプ挿入が完了し、密封状態(Oリング圧縮状態)に切換わる。
【0023】
なお、図1〜図4に示した断面円弧状のOリング保持凹部20を、図10に示すような浅皿状とするも、自由である。特に、図10に示した勾配面13を形成して、Oリング15の移動(残部21への乗り上げ)を容易とすることも可能である。また、図11に示すように、直線状残部21を1°〜10°の傾斜角θをもって緩勾配に形成することも可能である。図4(D)に示した密封状態下で、Oリング15の弾性的圧縮変形を確実として、受圧時の密封性を向上できる。なお、図11の傾斜状残部と図10の浅皿状凹部20とを組み合わせることも、自由である。
【0024】
次に、図5〜図7は、他の実施の形態を示す。図1〜図4と同一符号は同様の構成であるので、重複説明は省略するが、相違する構成の一つは、図5に示すように、内挿筒部3がパイプ端部2に挿入されても、Oリング15がOリング保持凹部20に残留している点にある。図6は、その後、図示省略のカシメ加工具にて、矢印B方向にカシメ用筒材4を局部的に縮径遡性加工した接続完了状態となった図であるが、Oリング15は、依然、そのまま凹部20に残留している。
【0025】
その後の使用状態下で、密封流体の圧力pが作用すると、図6から図7に示すようにOリング保持凹部20内のOリング15は、凹部20から溝底残部21に移動して、密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成されている。また、Oリング15は1個として、シール溝6も1個である場合を示している。
【0026】
そして、図6と図7に示すように、内挿筒部3内の流体圧力が、直ちに、Oリング15に作用させるために、流体圧力導入小孔24が複数本設けられている。即ち、シール溝6の内挿筒部先端7側の隅部16に向かって、内挿筒部3をラジアル方向に貫通するように、流体圧力導入小孔24が複数本設けられている。Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が、この小孔24から、図7の矢印Gのように導入される流体圧力pを受けて、Oリング保持凹部20からOリング15が図6から図7のように左方向(基端方向)へ飛び出す。
【0027】
ところで、シール溝6の他の隅部17側に向かって局部的カシメ凸部26が配設されれば、図7に示した密封状態下でのOリング圧縮が一層確実となり、密封性が向上できる。なお、図5〜図7の実施の形態に於て、円形弯曲凹状の凹部20の形状を図10に示した浅皿状とするも自由であり、または、図11に示したようにシール溝6の溝底残部21を傾斜状としても良い。
【0028】
そして、図8と図9は、2本のOリング15,15を使用した別の実施の形態を示し、先端7側のシール溝6の形状、及び、流体圧力導入小孔24等の構成は、図5〜図7と同様であり、説明を省略するが、その基端側に隣接するように、別のシール溝6を形成し、この別のシール溝6は、小孔24を省略し、代わりに、先端側の側面27に圧力導入用径方向小溝28を、例えば、ラジアル方向小ドリル孔によって、形成している。
【0029】
図9に示すように、先端側Oリング15が小孔24から矢印G方向に導入した圧力pによって、(図8から)図9に示したOリング圧縮状態となると、あるいは、先端側Oリング15が何らかのトラブルで漏洩を生じた場合、相前後して(又は同時に)基端側Oリング15は、シール溝6の側面27の小溝28を介して圧力(流体)が導入されて、Oリング保持凹部20から迅速に飛び出し、図9に示したOリング圧縮状態となる。このような2連密封構造とすることも望ましい。また、この図8,図9に於ても、図10や図11にて既述した変形例を付加することも、自由である。
【0030】
なお、図8,図9に示した小溝28を有するシール溝6の1本のみを内挿筒部3に適用しても、自由である(図示省略)。つまり、シール溝6の内挿筒部先端側の側面27にラジアル方向の小溝28を凹設して、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が、該小溝28から導入される流体圧力pを受けて該Oリング保持凹部20から押し出されるように構成する。
【0031】
また、図13に示す変形例のように、上記Oリング保持凹部20に保持されたOリング15が、パイプ挿入状態において、内挿筒部先端側のシール溝側面27との間に微小間隙Goを形成するように、上記Oリング保持凹部20の軸心方向寸法W20を設定し、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が、該微小間隙Goから導入される流体圧力pを受けて該Oリング保持凹部20から押し出されるように構成するのも、自由である。つまり、図13に実線と2点鎖線にて示すように、パイプPの端部2の内周面12にて圧縮された状態下で、軸心方向に僅かに移動可能として、Oリング15を凹部20内に保持し、微小間隙Goから流体圧力pが浸入するようにしている。
【0032】
また、図12に示した変形例のように、直線状の残部21に、Oリング保持凹部20よりも溝深さH30の浅い副凹部30を形成するも好ましく、図12中に2点鎖線にて示すように残部21に移った状態のOリング15の座りが良好となり、また、Oリング15が先端方向に逆移動することを防ぐ作用をもなしている。
【0033】
本発明に於ける管継手1の構造としては、上述したカシメ用筒材4を有して、カシメ加工にてパイプ端部2を固着するものの他に、先行技術文献1,2,3等の他の管継手1にも、そのまま応用自由であり、内挿筒部3を有する種々多様な管継手であっても良い。
【0034】
例えば、図14に示したような管継手1の内挿筒部3に応用可能であって、Oリング15,15は2個として、シール溝6,6も2個の場合を示す。この管継手1では、内挿筒部3を所定円環状パイプ収納部32を形成する外筒体33を有しており、しかも、この外筒体33は、基端筒体33aと先端筒体33bを組合せて一体状とした構成で、先端筒体33bには、先端縮径状テーパ孔34を形成すると共に、円周一箇所に切れ目を有するC字型パイプ抜け止め締付輪35が、収納部32の外周寄りに内有されている。
【0035】
パイプPが矢印A方向から収納部32に挿入されてくると、内挿筒部3のシール溝6,6
に装着されたOリング15,15は、既述の図1〜図11と同様の構成及び作用によって、軽くスムースにパイプPはOリング15,15を乗り越えつつ、挿入可能である。このとき、パイプ抜け止め締付輪35は図14に示した拡径状態にあって、先端側の係止爪36は軽くパイプPの外周面に接触しつつ、パイプPが挿入される。その後の使用状態下で、流体圧力が作用し、あるいは、外力により、パイプPが矢印Aと逆方向に引抜けようとした場合、係止爪36がパイプPの外周面に軽く食い込み、その抵抗でパイプ抜け止め締付輪35は矢印Aと逆方向へ僅かに移動するが、先端筒体33bのテーパ孔34に、締付輪35が摺接しつつ、強力にラジアル内方向に縮径して、係止爪36がパイプPの外周面に強く食い込んで、パイプPの引抜けを阻止できる構造である。
例えば、この図14のような種々の構造の管継手にも、本発明は応用自由であり、内挿筒部3さえ有しておれば、応用自在といえる。
【0036】
本発明は、以上述べたように、管継手1の内挿筒部3の外周面3Aに横断面略矩形状のシール溝6を凹設し、上記内挿筒部3が挿入されるパイプ端部2の内周面12に上記シール溝6に装着したOリング15を密接させる密封構造に於て、上記シール溝6の内径側両隅部16,17の内の内挿筒部先端側隅部16に対応した溝底18の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝6に装着したOリング15の全体外径寸法Dを縮小させるOリング保持凹部20を、形成したので、従来の図13にて述べたようなOリング44に挿入したパイプPの角部45が干渉して、パイプPの矢印A方向への(相対的)挿入が困難となる問題を、簡単な構成にて、かつ、部品点数の増加なくして、解決できた。このように、管継手1をパイプPの接続作業を能率良く行い得るようになり、しかも、パイプ挿入後は、Oリング15は十分に弾性的に圧縮されて、優れた密封性能を発揮する。
【0037】
また、上記シール溝6の上記溝底18の断面形状は、上記Oリング保持凹部20が円弧状又は浅皿形であると共に、残部21は直線状として、パイプ挿入に伴って上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が上記残部21に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したので、Oリング15がOリング保持凹部20にて待機した状態で、パイプPの挿入が行われるため、スムースに軽く挿入が可能であり、しかも、パイプ挿入に伴って、自動的にOリング15の全体外径寸法が増加せんとして、十分に弾性的に圧縮されて、Oリング圧縮状態となって、優れた密封性能(シール性)を発揮する。
【0038】
また、上記シール溝6の上記溝底18の断面形状は、上記Oリング保持凹部20が円弧状又は浅皿形であると共に、残部21は直線状として、密封流体の圧力pを受けて、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が上記残部21に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したので、Oリング保持凹部20にて待機中のOリング15と、パイプ端部2の内周面との摩擦は一層小さくて済み、さらにスムースに軽くパイプ挿入が可能である。そして、密封流体の圧力を受けて、自動的に受圧時にOリング圧縮状態に切換わって、密封作用をなし、構造が簡易ながら、優秀なシール性を示す。
【0039】
また、上記内挿筒部先端側隅部16に向かって、上記内挿筒部3をラジアル方向に貫通する流体圧力導入小孔24が設けられ、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が該小孔24から導入される流体圧力pを受けて該Oリング保持凹部20から飛び出すように構成したので、流体圧力pが作用すると、直ちに、Oリングは凹部20から飛び出して、基端側の溝底残部21にて、圧縮されたOリング圧縮状態に切換わって、確実に密封作用をなす。
【符号の説明】
【0040】
1 管継手
2 パイプ端部
3 内挿筒部
3A 外周面
6 シール溝
12 内周面
15 Oリング
16,17 隅部
18 溝底
20 Oリング保持凹部
21 残部
27 側面
28 小溝
30 副凹部
D 全体外径寸法
p 流体圧力
P バイプ
Go 微小間隙
Ho 溝深さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造に係り、特に、内挿筒部を有する管継手の密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多種多様のこの種の構造の管継手が使用されており、本出願人も過去に多くの提案を行ってきた(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3876258号公報
【特許文献2】特開2008−57574号公報
【特許文献3】特開2008−291886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の密封構造では、上記特許文献3を除き、次のような問題が残されていた。即ち、図15と図16に示すような従来の構造にあっては、管継手40の内挿筒部41を、被接続用パイプPの端部42に挿入する際に、シール溝43に装着されたOリング44に、パイプPの内周端縁角部45が衝突し(干渉して)、矢印A方向に強く押込もうとしても、容易に挿入できない場合があった。さらに、無理に強力な力で矢印A方向にパイプPを押せば、Oリング44を損傷して、その後の流体洩れの原因となっていた。
また、上記特許文献3に於ては、特別にパイプ誘導環体を付設していたが、部品点数が増加するという問題と組立ユニットとして、このパイプ誘導環体が脱落(紛失)してしまうという問題があった。あるいは、パイプを斜め切りしたときにはOリングを保護しつつ誘導するという効果が薄れたり、又は、パイプの先端面とパイプ誘導環体とを連続的に挿入しないで間隔が空くと、Oリングを保護するという作用が得られない等の問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を、簡易な構成にて解決し、パイプ端部に内挿筒部を、スムース(円滑)、かつ、迅速に挿入することができる密封構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、管継手の内挿筒部の外周面に横断面略矩形状のシール溝を凹設し、上記内挿筒部が挿入されるパイプ端部の内周面に上記シール溝に装着したOリングを密接させる密封構造に於て、上記シール溝の内径側両隅部の内の内挿筒部先端側隅部に対応した溝底の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝に装着したOリングの全体外径寸法を縮小させるOリング保持凹部を、形成したものである。
【0007】
また、上記シール溝の上記溝底の断面形状は、上記Oリング保持凹部が円弧状又は浅皿形であると共に、残部は直線状として、パイプ挿入に伴って上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが上記残部に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したものである。
【0008】
または、上記シール溝の上記溝底の断面形状は、上記Oリング保持凹部が円弧状又は浅皿形であると共に、残部は直線状として、密封流体の圧力を受けて、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが上記残部に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したものである。
【0009】
また、上記内挿筒部先端側隅部に向かって、上記内挿筒部をラジアル方向に貫通する流体圧力導入小孔が設けられ、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが該小孔から導入される流体圧力を受けて該Oリング保持凹部から飛び出すように構成したものである。
【0010】
また、シール溝の内挿筒部先端側の側面にラジアル方向の小溝を凹設して、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが、該小溝から導入される流体圧力を受けて該Oリング保持凹部から押し出されるように構成した。
【0011】
また、上記Oリング保持凹部に保持されたOリングが、パイプ挿入状態において、内挿筒部先端側のシール溝側面との間に微小間隙を形成するように、上記Oリング保持凹部の軸心方向寸法を設定し、上記Oリング保持凹部内に保持されていたOリングが、該微小間隙から導入される流体圧力を受けて該Oリング保持凹部から押し出されるように構成した。
【0012】
また、上記直線状の残部には、上記Oリング保持凹部よりも溝深さの浅い副凹部を形成した。
【発明の効果】
【0013】
パイプ未挿入状態下では、Oリングは、Oリング保持凹部に位置して、シール溝内の正規全体外径寸法よりも小さな寸法であるので、パイプ端部の内周端縁角部に軽く接触する程度にて、円滑にOリングを通過し、Oリングを傷付けずに容易かつ迅速な挿入作業を行い得る。その後、流体圧力が掛った受圧状態下では、シール溝の溝底のOリング保持凹部を除いた残部にOリングが位置して、十分にラジアル方向の圧縮を受けて、確実に密封作用をなすことができる。また、パイプ挿入後に、Oリングが保持凹部に位置していたとしても、流体圧力pが作用すると上記残部に確実に移動して、密封作用をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態を示し、挿入途中を示す要部断面図である。
【図2】挿入完了状態の要部断面図である。
【図3】シール溝の一例の拡大断面図である。
【図4】作用説明のための要部拡大断面図である。
【図5】他の実施の形態を示す挿入完了状態の要部断面図である。
【図6】カシメ状態の要部断面図である。
【図7】流体圧力を受けた密封状態を示す要部断面図である。
【図8】別の実施の形態を示す未受圧状態(カシメ完了状態)の要部断面図である。
【図9】流体圧力を受けた密封状態を示す要部断面図である。
【図10】変形例を示すシール溝の形状説明図である。
【図11】さらに他の変形例を示すシール溝の形状説明図である。
【図12】別の変形例を示すシール溝の説明図である。
【図13】さらに別の変形例を示すシール溝の説明図である。
【図14】本発明のさらに別の実施の形態を示す断面図である。
【図15】従来例を示す要部断面説明図である。
【図16】従来例の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1〜図4に示す実施の形態に於て、1は管継手を示し、被接続用パイプPの(パイプ)端部2に挿入される内挿筒部3を備え、かつ、図例では、カシメ用筒材4が取着環5を介して、付設されている。
【0016】
管継手1の内挿筒部3の外周面3Aには、横断面略矩形状のシール溝6,6が凹設されている。図1,図2では、2本のシール溝6,6の場合を例示するが、この本数は1本でも、あるいは3本とすることも可能である。
また、内挿筒部3は、その先端7の外周には、パイフ端部2が矢印A方向に挿入し易いように先細テーパ部8が形成されると共に、(後述の)図2に矢印B方向へのカシメ加工時に局部的に縮径変形するカシメ用筒材4が嵌込可能なように、適数個の凹周溝部9,10,11が、上記シール溝6,6の先端側・基端側に隣接して、形成されている。
【0017】
シール溝6には、Oリング15が装着され、(図1から図2のように)内挿筒部3がパイプ端部2の内周面12にOリング15の外周面側が密接して密封状態となる。
そして、シール溝6は、その内径側両隅部16,17の内の内挿筒部先端7側の隅部16に対応した溝底18の一部に、図1と図4(A)に示す如く、パイプ未挿入状態下でOリング15を待機させて保持するOリング保持凹部20を、断面形状円弧状に形成している。
【0018】
このOリング保持凹部20に待機状態で保持されることによって、シール溝6に装着したOリング15の全体外径寸法Dを、Oリング15自身の縮径方向弾発力によって、縮小し、Oリング15の内周面側は、弾発的に密に、Oリング保持凹部20に接触してその位置を、保持している。
【0019】
シール溝6の溝底18の断面形状は、Oリング保持凹部20が円弧状であると共に、残部21は、直線状とされ、図1から図2に示すように、あるいは、図4中の(A)→(B)→(C)→(D)と順次示すように、矢印A方向のパイプ挿入に伴って、凹部20内に保持されていたOリング15が、残部21に移動して、ラジアル方向に弾発的に圧縮されたOリング圧縮状態に切換わり、密封作用をなす(密封状態という)。その後、図2中に矢印Bにて示すように、(図示省略のカシメ作業工具によって)カシメ用筒材4をラジアル内方向に圧縮遡性変形させることにより、パイプ端部2を、引抜けないように、管継手1に対して、一体状に接続できる。
【0020】
ここで、図4に基づいて、さらに、詳しく説明すれば、図4(A)のパイプ未挿入の待機状態では、Oリング15の(全体)外径寸法Dは図16に示した従来例のOリング44の(全体)外径寸法D′よりも小さい状態に保持される。しかも、パイプ内径寸法dよりも上記外径寸法Dを僅かに大きく設定する。
【0021】
即ち、d<D<D′とする。Oリング保持凹部20の径寸法と、残部21の径寸法との差は、パイプ内径寸法dが10mm〜20mmでは、 0.2mm〜0.7mm とするのが望ましい。また、パイプ内径寸法dが40mm〜50mmでは、 0.5mm〜1.0mm が望ましい。
【0022】
次に、図1から図4(B)に示すように、相対的にパイプPが矢印A方向に前進すれば、パイプ端部2の開口端内周角部22がOリング保持凹部20内のOリング15に、軽く接触し、さらにパイプPを挿入してゆけば、Oリング15は、図4(B)から(C)のように、僅かに矢印C方向に回転しつつ、矢印E方向に(軸心方向に)移動して、図4(D)の密封状態(Oリング圧縮状態)となる。このように、パイプ端部2の内面との摩擦によって(摩擦抵抗によって)、Oリング15はOリング保持凹部20から溝底残部21へと移動して、パイプ挿入が完了し、密封状態(Oリング圧縮状態)に切換わる。
【0023】
なお、図1〜図4に示した断面円弧状のOリング保持凹部20を、図10に示すような浅皿状とするも、自由である。特に、図10に示した勾配面13を形成して、Oリング15の移動(残部21への乗り上げ)を容易とすることも可能である。また、図11に示すように、直線状残部21を1°〜10°の傾斜角θをもって緩勾配に形成することも可能である。図4(D)に示した密封状態下で、Oリング15の弾性的圧縮変形を確実として、受圧時の密封性を向上できる。なお、図11の傾斜状残部と図10の浅皿状凹部20とを組み合わせることも、自由である。
【0024】
次に、図5〜図7は、他の実施の形態を示す。図1〜図4と同一符号は同様の構成であるので、重複説明は省略するが、相違する構成の一つは、図5に示すように、内挿筒部3がパイプ端部2に挿入されても、Oリング15がOリング保持凹部20に残留している点にある。図6は、その後、図示省略のカシメ加工具にて、矢印B方向にカシメ用筒材4を局部的に縮径遡性加工した接続完了状態となった図であるが、Oリング15は、依然、そのまま凹部20に残留している。
【0025】
その後の使用状態下で、密封流体の圧力pが作用すると、図6から図7に示すようにOリング保持凹部20内のOリング15は、凹部20から溝底残部21に移動して、密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成されている。また、Oリング15は1個として、シール溝6も1個である場合を示している。
【0026】
そして、図6と図7に示すように、内挿筒部3内の流体圧力が、直ちに、Oリング15に作用させるために、流体圧力導入小孔24が複数本設けられている。即ち、シール溝6の内挿筒部先端7側の隅部16に向かって、内挿筒部3をラジアル方向に貫通するように、流体圧力導入小孔24が複数本設けられている。Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が、この小孔24から、図7の矢印Gのように導入される流体圧力pを受けて、Oリング保持凹部20からOリング15が図6から図7のように左方向(基端方向)へ飛び出す。
【0027】
ところで、シール溝6の他の隅部17側に向かって局部的カシメ凸部26が配設されれば、図7に示した密封状態下でのOリング圧縮が一層確実となり、密封性が向上できる。なお、図5〜図7の実施の形態に於て、円形弯曲凹状の凹部20の形状を図10に示した浅皿状とするも自由であり、または、図11に示したようにシール溝6の溝底残部21を傾斜状としても良い。
【0028】
そして、図8と図9は、2本のOリング15,15を使用した別の実施の形態を示し、先端7側のシール溝6の形状、及び、流体圧力導入小孔24等の構成は、図5〜図7と同様であり、説明を省略するが、その基端側に隣接するように、別のシール溝6を形成し、この別のシール溝6は、小孔24を省略し、代わりに、先端側の側面27に圧力導入用径方向小溝28を、例えば、ラジアル方向小ドリル孔によって、形成している。
【0029】
図9に示すように、先端側Oリング15が小孔24から矢印G方向に導入した圧力pによって、(図8から)図9に示したOリング圧縮状態となると、あるいは、先端側Oリング15が何らかのトラブルで漏洩を生じた場合、相前後して(又は同時に)基端側Oリング15は、シール溝6の側面27の小溝28を介して圧力(流体)が導入されて、Oリング保持凹部20から迅速に飛び出し、図9に示したOリング圧縮状態となる。このような2連密封構造とすることも望ましい。また、この図8,図9に於ても、図10や図11にて既述した変形例を付加することも、自由である。
【0030】
なお、図8,図9に示した小溝28を有するシール溝6の1本のみを内挿筒部3に適用しても、自由である(図示省略)。つまり、シール溝6の内挿筒部先端側の側面27にラジアル方向の小溝28を凹設して、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が、該小溝28から導入される流体圧力pを受けて該Oリング保持凹部20から押し出されるように構成する。
【0031】
また、図13に示す変形例のように、上記Oリング保持凹部20に保持されたOリング15が、パイプ挿入状態において、内挿筒部先端側のシール溝側面27との間に微小間隙Goを形成するように、上記Oリング保持凹部20の軸心方向寸法W20を設定し、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が、該微小間隙Goから導入される流体圧力pを受けて該Oリング保持凹部20から押し出されるように構成するのも、自由である。つまり、図13に実線と2点鎖線にて示すように、パイプPの端部2の内周面12にて圧縮された状態下で、軸心方向に僅かに移動可能として、Oリング15を凹部20内に保持し、微小間隙Goから流体圧力pが浸入するようにしている。
【0032】
また、図12に示した変形例のように、直線状の残部21に、Oリング保持凹部20よりも溝深さH30の浅い副凹部30を形成するも好ましく、図12中に2点鎖線にて示すように残部21に移った状態のOリング15の座りが良好となり、また、Oリング15が先端方向に逆移動することを防ぐ作用をもなしている。
【0033】
本発明に於ける管継手1の構造としては、上述したカシメ用筒材4を有して、カシメ加工にてパイプ端部2を固着するものの他に、先行技術文献1,2,3等の他の管継手1にも、そのまま応用自由であり、内挿筒部3を有する種々多様な管継手であっても良い。
【0034】
例えば、図14に示したような管継手1の内挿筒部3に応用可能であって、Oリング15,15は2個として、シール溝6,6も2個の場合を示す。この管継手1では、内挿筒部3を所定円環状パイプ収納部32を形成する外筒体33を有しており、しかも、この外筒体33は、基端筒体33aと先端筒体33bを組合せて一体状とした構成で、先端筒体33bには、先端縮径状テーパ孔34を形成すると共に、円周一箇所に切れ目を有するC字型パイプ抜け止め締付輪35が、収納部32の外周寄りに内有されている。
【0035】
パイプPが矢印A方向から収納部32に挿入されてくると、内挿筒部3のシール溝6,6
に装着されたOリング15,15は、既述の図1〜図11と同様の構成及び作用によって、軽くスムースにパイプPはOリング15,15を乗り越えつつ、挿入可能である。このとき、パイプ抜け止め締付輪35は図14に示した拡径状態にあって、先端側の係止爪36は軽くパイプPの外周面に接触しつつ、パイプPが挿入される。その後の使用状態下で、流体圧力が作用し、あるいは、外力により、パイプPが矢印Aと逆方向に引抜けようとした場合、係止爪36がパイプPの外周面に軽く食い込み、その抵抗でパイプ抜け止め締付輪35は矢印Aと逆方向へ僅かに移動するが、先端筒体33bのテーパ孔34に、締付輪35が摺接しつつ、強力にラジアル内方向に縮径して、係止爪36がパイプPの外周面に強く食い込んで、パイプPの引抜けを阻止できる構造である。
例えば、この図14のような種々の構造の管継手にも、本発明は応用自由であり、内挿筒部3さえ有しておれば、応用自在といえる。
【0036】
本発明は、以上述べたように、管継手1の内挿筒部3の外周面3Aに横断面略矩形状のシール溝6を凹設し、上記内挿筒部3が挿入されるパイプ端部2の内周面12に上記シール溝6に装着したOリング15を密接させる密封構造に於て、上記シール溝6の内径側両隅部16,17の内の内挿筒部先端側隅部16に対応した溝底18の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝6に装着したOリング15の全体外径寸法Dを縮小させるOリング保持凹部20を、形成したので、従来の図13にて述べたようなOリング44に挿入したパイプPの角部45が干渉して、パイプPの矢印A方向への(相対的)挿入が困難となる問題を、簡単な構成にて、かつ、部品点数の増加なくして、解決できた。このように、管継手1をパイプPの接続作業を能率良く行い得るようになり、しかも、パイプ挿入後は、Oリング15は十分に弾性的に圧縮されて、優れた密封性能を発揮する。
【0037】
また、上記シール溝6の上記溝底18の断面形状は、上記Oリング保持凹部20が円弧状又は浅皿形であると共に、残部21は直線状として、パイプ挿入に伴って上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が上記残部21に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したので、Oリング15がOリング保持凹部20にて待機した状態で、パイプPの挿入が行われるため、スムースに軽く挿入が可能であり、しかも、パイプ挿入に伴って、自動的にOリング15の全体外径寸法が増加せんとして、十分に弾性的に圧縮されて、Oリング圧縮状態となって、優れた密封性能(シール性)を発揮する。
【0038】
また、上記シール溝6の上記溝底18の断面形状は、上記Oリング保持凹部20が円弧状又は浅皿形であると共に、残部21は直線状として、密封流体の圧力pを受けて、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が上記残部21に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成したので、Oリング保持凹部20にて待機中のOリング15と、パイプ端部2の内周面との摩擦は一層小さくて済み、さらにスムースに軽くパイプ挿入が可能である。そして、密封流体の圧力を受けて、自動的に受圧時にOリング圧縮状態に切換わって、密封作用をなし、構造が簡易ながら、優秀なシール性を示す。
【0039】
また、上記内挿筒部先端側隅部16に向かって、上記内挿筒部3をラジアル方向に貫通する流体圧力導入小孔24が設けられ、上記Oリング保持凹部20内に保持されていたOリング15が該小孔24から導入される流体圧力pを受けて該Oリング保持凹部20から飛び出すように構成したので、流体圧力pが作用すると、直ちに、Oリングは凹部20から飛び出して、基端側の溝底残部21にて、圧縮されたOリング圧縮状態に切換わって、確実に密封作用をなす。
【符号の説明】
【0040】
1 管継手
2 パイプ端部
3 内挿筒部
3A 外周面
6 シール溝
12 内周面
15 Oリング
16,17 隅部
18 溝底
20 Oリング保持凹部
21 残部
27 側面
28 小溝
30 副凹部
D 全体外径寸法
p 流体圧力
P バイプ
Go 微小間隙
Ho 溝深さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手(1)の内挿筒部(3)の外周面(3A)に横断面略矩形状のシール溝(6)を凹設し、上記内挿筒部(3)が挿入されるパイプ端部(2)の内周面(12)に上記シール溝(6)に装着したOリング(15)を密接させる密封構造に於て、
上記シール溝(6)の内径側両隅部(16)(17) の内の内挿筒部先端側隅部(16)に対応した溝底(18)の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝(6)に装着したOリング(15)の全体外径寸法(D)を縮小させるOリング保持凹部(20)を、形成したことを特徴とする密封構造。
【請求項2】
上記シール溝(6)の上記溝底(18)の断面形状は、上記Oリング保持凹部(20)が円弧状又は浅皿形であると共に、残部(21)は直線状として、パイプ挿入に伴って上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が上記残部(21)に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成した請求項1記載の密封構造。
【請求項3】
上記シール溝(6)の上記溝底(18)の断面形状は、上記Oリング保持凹部(20)が円弧状又は浅皿形であると共に、残部(21)は直線状として、密封流体の圧力(p)を受けて、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が上記残部(21)に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成した請求項1記載の密封構造。
【請求項4】
上記内挿筒部先端側隅部(16)に向かって、上記内挿筒部(3)をラジアル方向に貫通する流体圧力導入小孔(24)が設けられ、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が該小孔(24)から導入される流体圧力(p)を受けて該Oリング保持凹部(20)から飛び出すように構成した請求項3記載の密封構造。
【請求項5】
シール溝(6)の内挿筒部先端側の側面(27)にラジアル方向の小溝(28)を凹設して、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が、該小溝(28)から導入される流体圧力(p)を受けて該Oリング保持凹部(20)から押し出されるように構成した請求項3記載の密封構造。
【請求項6】
上記Oリング保持凹部(20)に保持されたOリング(15)が、パイプ挿入状態において、内挿筒部先端側のシール溝側面(27)との間に微小間隙(Go)を形成するように、上記Oリング保持凹部(20)の軸心方向寸法(W20)を設定し、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が、該微小間隙(Go)から導入される流体圧力(p)を受けて該Oリング保持凹部(20)から押し出されるように構成した請求項3記載の密封構造。
【請求項7】
上記直線状の残部(21)には、上記Oリング保持凹部(20)よりも溝深さ(H30)の浅い副凹部(30)を形成した請求項2,3,4,5又は6記載の密封構造。
【請求項1】
管継手(1)の内挿筒部(3)の外周面(3A)に横断面略矩形状のシール溝(6)を凹設し、上記内挿筒部(3)が挿入されるパイプ端部(2)の内周面(12)に上記シール溝(6)に装着したOリング(15)を密接させる密封構造に於て、
上記シール溝(6)の内径側両隅部(16)(17) の内の内挿筒部先端側隅部(16)に対応した溝底(18)の一部に、パイプ未挿入状態下で上記シール溝(6)に装着したOリング(15)の全体外径寸法(D)を縮小させるOリング保持凹部(20)を、形成したことを特徴とする密封構造。
【請求項2】
上記シール溝(6)の上記溝底(18)の断面形状は、上記Oリング保持凹部(20)が円弧状又は浅皿形であると共に、残部(21)は直線状として、パイプ挿入に伴って上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が上記残部(21)に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成した請求項1記載の密封構造。
【請求項3】
上記シール溝(6)の上記溝底(18)の断面形状は、上記Oリング保持凹部(20)が円弧状又は浅皿形であると共に、残部(21)は直線状として、密封流体の圧力(p)を受けて、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が上記残部(21)に移動して密封作用をなすOリング圧縮状態に切換わるように構成した請求項1記載の密封構造。
【請求項4】
上記内挿筒部先端側隅部(16)に向かって、上記内挿筒部(3)をラジアル方向に貫通する流体圧力導入小孔(24)が設けられ、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が該小孔(24)から導入される流体圧力(p)を受けて該Oリング保持凹部(20)から飛び出すように構成した請求項3記載の密封構造。
【請求項5】
シール溝(6)の内挿筒部先端側の側面(27)にラジアル方向の小溝(28)を凹設して、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が、該小溝(28)から導入される流体圧力(p)を受けて該Oリング保持凹部(20)から押し出されるように構成した請求項3記載の密封構造。
【請求項6】
上記Oリング保持凹部(20)に保持されたOリング(15)が、パイプ挿入状態において、内挿筒部先端側のシール溝側面(27)との間に微小間隙(Go)を形成するように、上記Oリング保持凹部(20)の軸心方向寸法(W20)を設定し、上記Oリング保持凹部(20)内に保持されていたOリング(15)が、該微小間隙(Go)から導入される流体圧力(p)を受けて該Oリング保持凹部(20)から押し出されるように構成した請求項3記載の密封構造。
【請求項7】
上記直線状の残部(21)には、上記Oリング保持凹部(20)よりも溝深さ(H30)の浅い副凹部(30)を形成した請求項2,3,4,5又は6記載の密封構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−180969(P2010−180969A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25827(P2009−25827)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000221638)東尾メック株式会社 (60)
【Fターム(参考)】
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