密封構造
【課題】少ない部品点数で、かつバックアップリングの材料として硬度の高い硬質材を用いても、より確実にパッキンのはみ出しを抑制することのできる密封構造を提供する。
【解決手段】バックアップリング10における環状溝71のテーパ面71aに摺動する側の面はテーパ面で構成されており、バックアップリング10におけるテーパ面のテーパ角度の方が、環状溝71におけるテーパ面71aのテーパ角度よりも大きく設定され、バックアップリング10におけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して摺動自在に構成されることを特徴とする。
【解決手段】バックアップリング10における環状溝71のテーパ面71aに摺動する側の面はテーパ面で構成されており、バックアップリング10におけるテーパ面のテーパ角度の方が、環状溝71におけるテーパ面71aのテーパ角度よりも大きく設定され、バックアップリング10におけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して摺動自在に構成されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝内に配置され、これら2部材間の環状隙間を封止する密封装置が備えられた密封構造が知られている。このような従来例に係る密封構造について、図9〜図13を参照して説明する。
【0003】
図9及び図10は従来例1に係る密封構造の模式的断面図である。なお、図9は高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が小さい(あるいはない)状態を示し、図10は当該圧力差が大きい状態を示している。この密封構造は、ハウジング70の軸孔内周面に設けられた環状溝75にパッキン100が配置されることで、軸60とハウジング70との間の環状隙間が封止されている。そして、環状溝75内におけるパッキン100の低圧側(L)には、パッキン100に隣接してバックアップリング200が配置されている。このバックアップリング200は、パッキン100の内周端縁101が軸60とハウジング70との間の微小隙間にはみ出してしまうことを防止するために設けられている。
【0004】
このバックアップリング200は、装着性や寸法公差の観点から、外力が作用していない状態では、軸60に対して隙間Sが設けられるように構成されている。そして、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が大きくなると、バックアップリング200は、パッキン100と環状溝75の側壁面との間で圧縮されて、径方向に伸張変形する。これにより、バックアップリング200と軸60との間の隙間がなくなり、パッキン100の内周端縁のはみ出しが抑制される。
【0005】
ここで、パッキン100の材料として、比較的硬度の低いゴム材料(NBR等)が用いられる場合には、バックアップリング200の材料も比較的柔らかい樹脂材料(PTFE等)が用いられる。この場合、バックアップリング200は、軸方向の圧縮により、十分に径方向に伸張変形するため、バックアップリング200と軸60との間の隙間をより確実になくすことができる。
【0006】
しかしながら、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が非常に大きくなる使用条件の場合には、耐圧性を高めるために、バックアップリング200の材料として、硬度の高い硬質材(PA,PEEK,POM,PPS等)が用いられる。この場合、軸方向の圧縮に対して径方向の伸張変形量が小さいため、バックアップリング200と軸60との間の隙間をなくすのが難しい。そのため、パッキン100の内周端縁がはみ出してしまい、損傷してしまうことがある。あるいは、上記隙間Sを小さく設定することで、装着作業性が低下してしまう。
【0007】
この対策として、図11に示す従来例2のように、硬質材からなるバックアップリング210と比較的軟質の樹脂材料からなるバックアップリング220を組み合わせて用いる技術も知られている。しかしながら、この場合には、バックアップリングが複数必要となるため、配置スペースを広く確保しなければならないだけでなく、部品点数の増加によりコストも高くなってしまう。
【0008】
また、バックアップリングの弾性変形を利用して、軸とバックアップリングとの隙間をなくすのではなく、バックアップリングを軸に対して摺動させることで、常に、軸とバックアップリングとの隙間が生じないようにする技術も知られている。図12は従来例3に
係る密封構造の模式的断面図である。この従来例においては、ハウジング70の軸孔内周面に設けられた環状溝71の溝底面における低圧側には、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面71aが設けられている。そして、パッキン150に隣接して低圧側(L)に配置されたバックアップリング300の外周面も、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面で構成されている。これら環状溝71側のテーパ面71aのテーパ角度と、バックアップリング300における外周面のテーパ角度は等しくなるように構成されている。
【0009】
このような構成により、高圧側(H)と低圧側(L)で圧力差がある限り、バックアップリング300は低圧側(L)に押された状態が維持されるので、バックアップリング300と軸60との間には隙間がない状態が維持される。また、この従来例3によれば、軸60の偏心によって、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が変動した場合でも、バックアップリング300が低圧側(L)に押し込まれることで、バックアップリング300と軸60との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。
【0010】
しかしながら、この従来例3に係る密封構造の場合、バックアップリング300の外周面及び内周面は、テーパ面71aと軸60の外周面に対して、それぞれ面接触する構成である。そのため、各部品の表面状態や寸法精度によっては、バックアップリング300が軸方向に滑らかに移動せずに、バックアップリング300と軸60との間に隙間が生じてしまうことがある。特に、バックアップリング300が硬質材(PA,PEEK,POM,PPS等)で構成される場合には、バックアップリング300自体はあまり変形しないために、より一層、隙間が生じやすい。例えば、軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70との間の距離は、周方向のある箇所で最も狭く、当該箇所から180度の位置で最も広くなる。そのため、バックアップリング300自体があまり変形しないと、軸60とハウジング70との間の距離が最も広くなる付近で、隙間が生じてしまいやすい。
【0011】
この対策として、図13に示す従来例4のように、硬質材からなるバックアップリング310と比較的軟質の樹脂材料からなるバックアップリング320を組み合わせて用いる技術も知られている。しかしながら、この場合には、上記従来例2と同様、バックアップリングが複数必要となるため、配置スペースを広く確保しなければならないだけでなく、部品点数の増加によりコストも高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−315925号公報
【特許文献2】特開平09−222058号公報
【特許文献3】特開平11−072162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、少ない部品点数で、かつバックアップリングの材料として硬度の高い硬質材を用いても、より確実にパッキンのはみ出しを抑制することのできる密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0015】
すなわち、本発明の密封構造は、
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝内に配置されて、これら2部材間の環状隙間を封止する密封装置を備えた密封構造であって、
前記環状溝の溝底面における低圧側には、高圧側から低圧側に向かって他方の部材との距離が徐々に短くなるテーパ面が設けられており、
前記密封装置は、
高圧側に配置されるゴム状弾性体製のパッキンと、
該パッキンに隣接して低圧側に配置され、かつ前記テーパ面に対して摺動自在に設けられた、硬質材料からなるバックアップリングと、
を備える密封構造において、
前記バックアップリングにおける前記環状溝のテーパ面に摺動する側の面はテーパ面で構成されており、該バックアップリングにおけるテーパ面のテーパ角度の方が、前記環状溝におけるテーパ面のテーパ角度よりも大きく設定され、該バックアップリングにおけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記環状溝におけるテーパ面に対して摺動自在に構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、バックアップリングにおけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、環状溝におけるテーパ面に対して摺動自在に構成されているため、当該摺動部分は、(略)線接触の状態で摺動する。従って、これら各テーパ面のテーパ角度が等しく設定され、テーパ面どうしが面接触するように構成されたものに比べて、バックアップリングは、軸方向に、より滑らかに移動する。また、バックアップリングの材料として硬度の高い硬質材が用いられることで、バックアップリング自体が変形し難くても、2部材の偏心に対して、バックアップリング自体が(テーパ面同士が面接触の場合に比べて)傾き易くなるので、隙間の発生を抑制できる。
【0017】
前記バックアップリングにおける前記他方の部材に対して摺動する側の面もテーパ面で構成されており、このテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記他方の部材に対して摺動自在に構成されるとよい。
【0018】
これにより、バックアップリングはより一層軸方向に滑らかに移動することができ、かつ2部材の偏心に対して、バックアップリング自体がより傾き易くなり、隙間の発生をより確実に抑制できる。
【0019】
前記バックアップリングと前記環状溝における低圧側の側面との間には、バックアップリングの位置に関係なく、隙間が確保されるように構成されているとよい。
【0020】
これにより、バックアップリングが環状溝における低圧側の側面に突き当たってしまい、バックアップリングの移動が阻害されてしまい、バックアップリングに無理な力が作用してしまうというようなことを抑制できる。
【0021】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、少ない部品点数で、かつバックアップリングの材料として硬度の高い硬質材を用いても、より確実にパッキンのはみ出しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る密封構造を構成する主要部材の寸法関係を説明する図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る密封構造の動作説明図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係る密封構造の動作説明図である。
【図5】図5は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例2に係る密封構造の動作説明図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係る密封構造の動作説明図である。
【図8】図8は本発明の実施例3に係る密封構造の模式的断面図である。
【図9】図9は従来例1に係る密封構造の模式的断面図である。
【図10】図10は従来例1に係る密封構造の模式的断面図である。
【図11】図11は従来例2に係る密封構造の模式的断面図である。
【図12】図12は従来例3に係る密封構造の模式的断面図である。
【図13】図13は従来例4に係る密封構造の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
本実施例に係る密封構造は、2部材間の環状隙間を密封装置によって封止する構造である。なお、2部材は同心的に設けられており、これらの2部材は、相対的に移動(回転及び往復移動のうちの少なくともいずれか一方)してもよいし、互いに静止していてもよい。また、これらの2部材は同心的に設けられているものの、必ずしも常時同心状態を維持している必要はなく、偏心状態が生じても良い。本実施例に係る密封装置によれば、2部材が偏心状態となっても、好適に密封状態を維持できる。また、本実施例に係る密封構造においては、軸方向の一方が高圧側(H)となり、他方が低圧側(L)となる。ただし、両側の圧力に差圧が発生しない状態があり得るようにしてもよい。また、高圧側(H)には密封対象流体(油など)が密封され、低圧側(L)は大気となるようにしてもよいし、両側に密封対象流体が密封されるようにしてもよい。なお、本実施例に係る密封構造を適用し得る好適な例としては、直噴エンジンにおけるインジェクタ部,建設機械用シリンダ,一般機械用シリンダ、及びショックアブソーバを挙げることができる。
【0026】
(実施例1)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造について説明する。
【0027】
<密封構造全体>
本実施例に係る密封構造は、軸60(2部材のうちの他方の部材)とハウジング70(2部材のうちの一方の部材)との間の環状隙間を密封装置によって封止する構造である。そして、本実施例に係る密封装置は、パッキン50とバックアップリング10とから構成される。パッキン50は、ゴム状弾性体製(例えばNBR製)のOリングであり、高圧側(H)に配置される。なお、パッキン50の内周面は軸60の外周面に摺動自在に密着しており、内周面はハウジング70の軸孔内周面(より具体的には、後述する環状溝71の溝底面)に摺動自在に密着する。バックアップリング10は、硬質材料(例えば、PA,PEEK,POM,PPS)からなり、パッキン50に隣接して低圧側(L)に配置される。
【0028】
これらパッキン50とバックアップリング10とから構成される密封装置は、ハウジング70の軸孔の内周面に設けられた環状溝71内に配置される。環状溝71の溝底面における低圧側(L)には、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面71aが設けられている。つまり、このテーパ面71aは、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって軸60との距離が徐々に短くなっている。上記のバックアップリング10は、この環状溝71のテーパ面71aに対して摺動自在に構成されている。そして、バックアップリング10の外周面11も、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ
面によって構成されている。
【0029】
<環状溝とバックアップリングの詳細>
バックアップリング10における外周面11のテーパ角度は、環状溝71に設けられたテーパ面71aのテーパ角度よりも大きくなるように設定されている。つまり、図2に示すように、軸線(軸60,ハウジング70の軸孔,パッキン50及びバックアップリング10の軸線)を通る断面において、バックアップリング10の外周面11における母線と軸線とのなす角をαとし、環状溝71のテーパ面71aにおける母線と軸線とのなす角をθとした場合に、α>θを満たすように構成されている。なお、バックアップリング10における外周面11のテーパ角度は2αであり、環状溝71に設けられたテーパ面71aのテーパ角度は2θであることは言うまでもない。
【0030】
また、軸60と、ハウジング70の軸孔と、バックアップリング10とが同心状態で配置された場合に、バックアップリング10における高圧側(H)の径方向の厚みをT,テーパ面71aの高圧側(H)の端縁(環状溝71の溝底面のうちテーパ面71aが設けられていない部分も同様)と軸60の表面との距離をt1,テーパ面71aの低圧側(L)の端縁と軸60の表面との距離をt2とすると、t2<T≦t1を満たすように構成されている。
【0031】
更に、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリング10が最も低圧側(L)に移動した場合においても、バックアップリング10と環状溝71における低圧側の側面との間には、隙間Uが確保されるように構成されている(図4参照)。以上の構成により、バックアップリング10における外周面11の高圧側(H)の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。
【0032】
<動作説明>
上記のように構成された本実施例に係る密封構造によれば、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差や軸60のハウジング70の軸孔に対する偏心に応じて、バックアップリング10が高圧側(H)または低圧側(L)に移動する。このとき、環状端縁部分Eは、環状溝71におけるテーパ面71aに対して摺動する。以下、この点について、詳細に説明する。
【0033】
高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が大きくなればなるほど、パッキン50は低圧側(L)に押圧される。これにより、バックアップリング10は、パッキン50によって低圧側(L)に押されて、低圧側(L)に移動する。このとき、バックアップリング10の内周面は軸60の外周面に対して面接触の状態で摺動し、バックアップリング10の外周面側は環状端縁部分Eがテーパ面71aに対して(略)線接触の状態で摺動する。バックアップリング10が低圧側(L)に移動すればするほど、バックアップリング10が接している部分における軸60とテーパ面71aとの間の距離は小さくなる。そのため、バックアップリング10は、低圧側(L)に移動すればするほど、軸60とテーパ面71aとから圧縮される圧縮量が大きくなる。従って、バックアップリング10と軸60との間に隙間が生じてしまうことを抑制でき、パッキン50の一部が、これらバックアップリング10と軸60との間の隙間にはみ出してしまうことを抑制できる。
【0034】
また、ハウジング70の軸孔に対して軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が変化する。図3は当該距離が小さい場合(距離S1)を示し、図4は当該距離が大きい場合(距離S2)を示している。
【0035】
軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が小さくなればなるほど、バックアッ
プリング10は高圧側(H)に移動する(図3参照)。そして、当該距離が大きくなればなるほど、バックアップリング10は低圧側(L)に移動する(図4参照)。ただし、軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70との間の距離は、周方向のある箇所で最も狭く、当該箇所から180度の位置で最も広くなる。従って、軸線を通る断面で見た場合、見かけ上、バックアップリング10は図3や図4に示すように軸方向に移動するが、バックアップリング10全体が軸方向に軸線に平行に移動している訳ではない。実際上は、軸60の偏心時には、バックアップリング10は軸60の軸線に対して傾くように変形しており、バックアップリング10を、当該軸線を通る断面で見た場合には、見かけ上、軸線に平行移動する。
【0036】
<本実施例の優れた点>
上記の通り、本実施例に係る密封構造によれば、バックアップリング10における外周面(テーパ面)11の高圧側(H)の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して摺動自在に構成されている。そのため、当該摺動部分は、(略)線接触の状態で摺動する。従って、これら各テーパ面のテーパ角度が等しく設定され、テーパ面どうしが面接触するように構成されたものに比べて、バックアップリング10は、軸方向に、より滑らかに移動する。また、バックアップリング10の材料として硬度の高い硬質材が用いられることで、バックアップリング10自体が変形し難くても、軸60の偏心に対して、バックアップリング10自体が(テーパ面同士が面接触の場合に比べて)傾き易くなるので、隙間の発生を抑制できる。これにより、パッキン50のはみ出しを抑制し、パッキン50の損傷を抑制することができる。
【0037】
このように、本実施例に係る密封構造においては、バックアップリング10が一つだけでも、パッキン50のはみ出しを効果的に抑制することができる。従って、材料の異なるバックアップリングを2種類用いるものに比べて、配置スペースを広く確保する必要も無く、コストの増加を抑えることもできる。
【0038】
なお、本実施例においては、バックアップリング10がパッキン50に押された際に、バックアップリング10自体が変形することなく、より確実に移動(偏心時には傾く動作も含む)するように、硬度の高い(ロックウェル硬さで65HR以上が望ましい)材料を用いるのが好適である。何故なら、仮に、硬度の低い材料を用いた場合には、特に、軸60の偏心時において、バックアップリング10自体が変形することで、経時的に「へたり」が生じてしまう。そのため、バックアップリング10と軸60との間に隙間が生じてしまうおそれがある。
【0039】
また、本実施例に係る密封構造においては、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリング10が最も低圧側(L)に移動した場合においても、バックアップリング10と環状溝71における低圧側の側面との間には、隙間Uが確保されるように構成されている。従って、バックアップリング10が環状溝71における低圧側の側面に突き当たってしまい、バックアップリング10の移動が阻害されてしまい、バックアップリング10に無理な力が作用してしまうというようなことを抑制できる。また、バックアップリング10の移動が阻害されないことにより、バックアップリング10と軸60またはハウジング70との間に隙間が発生してしまうことを抑制できる。
【0040】
(実施例2)
図5〜図7には、本発明の実施例2が示されている。本実施例では、バックアップリングの内周面もテーパ面で構成し、バックアップリングと軸との摺動部も(略)線接触の状態で摺動するように構成した場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
本実施例に係るバックアップリング20は、その外周面21は上記実施例1の場合と同様に、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面によって構成されている。これにより、上記実施例1の場合と同様に、バックアップリング20における外周面21の高圧側(H)の環状端縁部分E1が、環状溝71におけるテーパ面71aに対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。
【0042】
そして、本実施例の場合には、バックアップリング20の内周面22は、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって拡径するテーパ面によって構成されている。これにより、バックアップリング20における内周面22の高圧側(H)の環状端縁部分E2が、軸60に対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。なお、軸線を通る断面において、バックアップリング20の内周面22における母線と軸線とのなす角をβとすると、これに対応する軸60における角度は0°であり、β>0°を満たしている。また、バックアップリング20の内周面22のテーパ角度は2βであることは言うまでもない。
【0043】
また、本実施例の場合も、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリング20が最も低圧側(L)に移動した場合においても、バックアップリング20と環状溝71における低圧側の側面との間には、隙間Uが確保されるように構成されている(図7参照)。
【0044】
以上のような構成により、本実施例に係る密封構造によれば、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差に応じて、バックアップリング20は高圧側(H)または低圧側(L)に移動する。このとき、バックアップリング20の外周面側は環状端縁部分E1がテーパ面71aに対して(略)線接触の状態で摺動し、内周面側は環状端縁部分E2が軸60に対して(略)線接触の状態で摺動する。
【0045】
また、ハウジング70の軸孔に対して軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が変化する。図6は当該距離が小さい場合を示し、図7は当該距離が大きい場合を示している。そして、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が小さくなればなるほど、バックアップリング20は高圧側(H)に移動する(図6参照)。そして、当該距離が大きくなればなるほど、バックアップリング10は低圧側(L)に移動する(図7参照)。なお、軸線を通る断面で見た場合、見かけ上、バックアップリング20は図6や図7に示すように軸方向に移動するが、バックアップリング20全体が軸方向に軸線に平行に移動している訳ではないことは、実施例1で説明した通りである。
【0046】
以上のように、本実施例に係る密封構造の場合、バックアップリング20は、外周面側も内周面側も高圧側(H)の環状端縁部分E1,E2が(略)線接触の状態で摺動するように構成されている。従って、実施例1の場合に比べて、バックアップリング20はより一層軸方向に滑らかに移動することができ、かつ軸60の偏心に対して、バックアップリング20自体がより傾き易い。従って、隙間の発生をより確実に抑制できる。また、バックアップリング20に対して軸60が傾いている状態であっても、バックアップリング20における内周面側の環状端縁部分E2が(略)線接触の状態で、全周に亘って軸60に接触した状態を維持できる。従って、本実施例に係るバックアップリング20の場合には、軸60の傾きに対しても、隙間の発生を好適に抑制できる。このように、本実施例に係るバックアップリング20は、軸60が傾く状態となり得る場合に適している。なお、バックアップリングの内周面を軸に対して面接触させ、かつバックアップリングの外周面をハウジングに設けられた環状溝のテーパ面に対して面接触させる構成を採用した場合において、軸が傾いた場合には、バックアップリングと軸との間に隙間が生じてしまう。何故なら、この場合には、バックアップリング自体は殆ど傾くことはなく、バックアップリングに対して軸が傾いた状態となる。そして、バックアップリングの内周における軸に対す
る接触位置については、高圧側(H)の端縁で接触する部分と、低圧側(L)の端縁で接触する部分とが生じてしまう。そのため、バックアップリングの内周における高圧側(H)の端縁と軸との間に隙間が生じてしまう。また、上記実施例1や以下に説明する実施例3の場合のように、バックアップリングの内周面を軸に対して面接触させ、かつバックアップリングの外周面をハウジングに設けられた環状溝のテーパ面に対して線接触させる場合には、軸の傾きに対しても、バックアップリングと軸との間に隙間が生じてしまうことを抑制することができる。何故なら、バックアップリングは、ハウジングに対してある程度傾くことが可能なため、軸が傾くと、軸と共にバックアップリングが傾くことで、バックアップリングと軸との間に隙間が生じてしまうことを抑制することができる。言い換えれば、軸が傾いても軸に対してバックアップリングは傾かないため、バックアップリングの内周面を軸に対して面接触させた状態を維持できる。
【0047】
(実施例3)
図8には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、軸の外周面もテーパ面で構成されている場合について説明する。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0048】
本実施例に係る密封構造においては、軸61の外周面が、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって拡径するテーパ面によって構成されている。なお、軸線を通る断面において、軸61の外周面における母線と軸線とのなす角をγとすると、当該テーパ面のテーパ角度は2γであることは言うまでもない。
【0049】
また、本実施例に係るバックアップリング30は、その外周面31は上記実施例1の場合と同様に、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面によって構成されている。これにより、上記実施例1の場合と同様に、バックアップリング30における外周面31の高圧側(H)の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。なお、本実施例に係るバックアップリング30の内周面は、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって拡径するテーパ面によって構成されており、そのテーパ角度は軸61の外周面のテーパ角度と同じになるように設定されている。従って、バックアップリング30の内周面は、軸61の外周面に対して面接触の状態で摺動する。
【0050】
以上のように構成された本実施例に係る密封構造によれば、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。ただし、本実施例に係る密封構造は、軸61とハウジング70が相対的に往復移動する用途には不適当であり、これらが相対的に回転するか、互いに静止した用途に好適である。
【0051】
<その他>
上記実施例3におけるバックアップリング30の内周面のテーパ角度を、軸61の外周面のテーパ角度2γよりも大きくなるように設定することで、上記実施例2の場合と同様に、当該内周面の高圧側(H)の環状端縁部分が軸61に対して、(略)線接触状態を維持させるようにしてもよい。このようにすれば、バックアップリング30は、より一層軸方向に滑らかに移動することができ、かつ軸61の偏心に対して、バックアップリング30自体がより傾き易くなる。
【0052】
また、上記各実施例においては、ハウジング70の軸孔の内周面に設けられた環状溝71内に密封装置を配置させる構成を示した。しかしながら、軸側に環状溝を設けて、この環状溝内に密封装置を配置させる構成を採用してもよい。この場合、軸側に設けられた環状溝の溝底面における低圧側に、高圧側から低圧側に向かって拡径するテーパ面が設けられる。つまり、このテーパ面は、高圧側から低圧側に向かってハウジングとの距離が徐々
に短くなっている。そして、バックアップリングの内周面は、環状溝におけるテーパ面のテーパ角度よりも大きなテーパ角度に設定されたテーパ面により構成される。これにより、バックアップリングにおける内周面(テーパ面)の高圧側の環状端縁部分が、環状溝におけるテーパ面に対して(略)線接触状態を維持することができる。なお、外周面側もテーパ面で構成して、ハウジングの軸孔内周面に対して、(略)線接触の状態で接するようにしてもよいことは言うまでもない。また、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリングが最も低圧側に移動した場合においても、バックアップリングと環状溝における低圧側の側面との間には、隙間が確保されるように構成することが好適であることも言うまでもない。
【0053】
また、上述した各実施例におけるバックアップリングに関しては、周方向にカット部(分離部)が設けられていないタイプのものであってもよいし、装着性を向上させるために、周方向の1箇所にカット部が設けられているタイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 バックアップリング
11 外周面
20 バックアップリング
21 外周面
22 内周面
30 バックアップリング
31 外周面
50 パッキン
60,61 軸
70 ハウジング
71 環状溝
71a テーパ面
E,E1,E2 環状端縁部分
U 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝内に配置され、これら2部材間の環状隙間を封止する密封装置が備えられた密封構造が知られている。このような従来例に係る密封構造について、図9〜図13を参照して説明する。
【0003】
図9及び図10は従来例1に係る密封構造の模式的断面図である。なお、図9は高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が小さい(あるいはない)状態を示し、図10は当該圧力差が大きい状態を示している。この密封構造は、ハウジング70の軸孔内周面に設けられた環状溝75にパッキン100が配置されることで、軸60とハウジング70との間の環状隙間が封止されている。そして、環状溝75内におけるパッキン100の低圧側(L)には、パッキン100に隣接してバックアップリング200が配置されている。このバックアップリング200は、パッキン100の内周端縁101が軸60とハウジング70との間の微小隙間にはみ出してしまうことを防止するために設けられている。
【0004】
このバックアップリング200は、装着性や寸法公差の観点から、外力が作用していない状態では、軸60に対して隙間Sが設けられるように構成されている。そして、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が大きくなると、バックアップリング200は、パッキン100と環状溝75の側壁面との間で圧縮されて、径方向に伸張変形する。これにより、バックアップリング200と軸60との間の隙間がなくなり、パッキン100の内周端縁のはみ出しが抑制される。
【0005】
ここで、パッキン100の材料として、比較的硬度の低いゴム材料(NBR等)が用いられる場合には、バックアップリング200の材料も比較的柔らかい樹脂材料(PTFE等)が用いられる。この場合、バックアップリング200は、軸方向の圧縮により、十分に径方向に伸張変形するため、バックアップリング200と軸60との間の隙間をより確実になくすことができる。
【0006】
しかしながら、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が非常に大きくなる使用条件の場合には、耐圧性を高めるために、バックアップリング200の材料として、硬度の高い硬質材(PA,PEEK,POM,PPS等)が用いられる。この場合、軸方向の圧縮に対して径方向の伸張変形量が小さいため、バックアップリング200と軸60との間の隙間をなくすのが難しい。そのため、パッキン100の内周端縁がはみ出してしまい、損傷してしまうことがある。あるいは、上記隙間Sを小さく設定することで、装着作業性が低下してしまう。
【0007】
この対策として、図11に示す従来例2のように、硬質材からなるバックアップリング210と比較的軟質の樹脂材料からなるバックアップリング220を組み合わせて用いる技術も知られている。しかしながら、この場合には、バックアップリングが複数必要となるため、配置スペースを広く確保しなければならないだけでなく、部品点数の増加によりコストも高くなってしまう。
【0008】
また、バックアップリングの弾性変形を利用して、軸とバックアップリングとの隙間をなくすのではなく、バックアップリングを軸に対して摺動させることで、常に、軸とバックアップリングとの隙間が生じないようにする技術も知られている。図12は従来例3に
係る密封構造の模式的断面図である。この従来例においては、ハウジング70の軸孔内周面に設けられた環状溝71の溝底面における低圧側には、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面71aが設けられている。そして、パッキン150に隣接して低圧側(L)に配置されたバックアップリング300の外周面も、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面で構成されている。これら環状溝71側のテーパ面71aのテーパ角度と、バックアップリング300における外周面のテーパ角度は等しくなるように構成されている。
【0009】
このような構成により、高圧側(H)と低圧側(L)で圧力差がある限り、バックアップリング300は低圧側(L)に押された状態が維持されるので、バックアップリング300と軸60との間には隙間がない状態が維持される。また、この従来例3によれば、軸60の偏心によって、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が変動した場合でも、バックアップリング300が低圧側(L)に押し込まれることで、バックアップリング300と軸60との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。
【0010】
しかしながら、この従来例3に係る密封構造の場合、バックアップリング300の外周面及び内周面は、テーパ面71aと軸60の外周面に対して、それぞれ面接触する構成である。そのため、各部品の表面状態や寸法精度によっては、バックアップリング300が軸方向に滑らかに移動せずに、バックアップリング300と軸60との間に隙間が生じてしまうことがある。特に、バックアップリング300が硬質材(PA,PEEK,POM,PPS等)で構成される場合には、バックアップリング300自体はあまり変形しないために、より一層、隙間が生じやすい。例えば、軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70との間の距離は、周方向のある箇所で最も狭く、当該箇所から180度の位置で最も広くなる。そのため、バックアップリング300自体があまり変形しないと、軸60とハウジング70との間の距離が最も広くなる付近で、隙間が生じてしまいやすい。
【0011】
この対策として、図13に示す従来例4のように、硬質材からなるバックアップリング310と比較的軟質の樹脂材料からなるバックアップリング320を組み合わせて用いる技術も知られている。しかしながら、この場合には、上記従来例2と同様、バックアップリングが複数必要となるため、配置スペースを広く確保しなければならないだけでなく、部品点数の増加によりコストも高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−315925号公報
【特許文献2】特開平09−222058号公報
【特許文献3】特開平11−072162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、少ない部品点数で、かつバックアップリングの材料として硬度の高い硬質材を用いても、より確実にパッキンのはみ出しを抑制することのできる密封構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0015】
すなわち、本発明の密封構造は、
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝内に配置されて、これら2部材間の環状隙間を封止する密封装置を備えた密封構造であって、
前記環状溝の溝底面における低圧側には、高圧側から低圧側に向かって他方の部材との距離が徐々に短くなるテーパ面が設けられており、
前記密封装置は、
高圧側に配置されるゴム状弾性体製のパッキンと、
該パッキンに隣接して低圧側に配置され、かつ前記テーパ面に対して摺動自在に設けられた、硬質材料からなるバックアップリングと、
を備える密封構造において、
前記バックアップリングにおける前記環状溝のテーパ面に摺動する側の面はテーパ面で構成されており、該バックアップリングにおけるテーパ面のテーパ角度の方が、前記環状溝におけるテーパ面のテーパ角度よりも大きく設定され、該バックアップリングにおけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記環状溝におけるテーパ面に対して摺動自在に構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、バックアップリングにおけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、環状溝におけるテーパ面に対して摺動自在に構成されているため、当該摺動部分は、(略)線接触の状態で摺動する。従って、これら各テーパ面のテーパ角度が等しく設定され、テーパ面どうしが面接触するように構成されたものに比べて、バックアップリングは、軸方向に、より滑らかに移動する。また、バックアップリングの材料として硬度の高い硬質材が用いられることで、バックアップリング自体が変形し難くても、2部材の偏心に対して、バックアップリング自体が(テーパ面同士が面接触の場合に比べて)傾き易くなるので、隙間の発生を抑制できる。
【0017】
前記バックアップリングにおける前記他方の部材に対して摺動する側の面もテーパ面で構成されており、このテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記他方の部材に対して摺動自在に構成されるとよい。
【0018】
これにより、バックアップリングはより一層軸方向に滑らかに移動することができ、かつ2部材の偏心に対して、バックアップリング自体がより傾き易くなり、隙間の発生をより確実に抑制できる。
【0019】
前記バックアップリングと前記環状溝における低圧側の側面との間には、バックアップリングの位置に関係なく、隙間が確保されるように構成されているとよい。
【0020】
これにより、バックアップリングが環状溝における低圧側の側面に突き当たってしまい、バックアップリングの移動が阻害されてしまい、バックアップリングに無理な力が作用してしまうというようなことを抑制できる。
【0021】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、少ない部品点数で、かつバックアップリングの材料として硬度の高い硬質材を用いても、より確実にパッキンのはみ出しを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る密封構造の模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る密封構造を構成する主要部材の寸法関係を説明する図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る密封構造の動作説明図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係る密封構造の動作説明図である。
【図5】図5は本発明の実施例2に係る密封構造の模式的断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例2に係る密封構造の動作説明図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係る密封構造の動作説明図である。
【図8】図8は本発明の実施例3に係る密封構造の模式的断面図である。
【図9】図9は従来例1に係る密封構造の模式的断面図である。
【図10】図10は従来例1に係る密封構造の模式的断面図である。
【図11】図11は従来例2に係る密封構造の模式的断面図である。
【図12】図12は従来例3に係る密封構造の模式的断面図である。
【図13】図13は従来例4に係る密封構造の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
本実施例に係る密封構造は、2部材間の環状隙間を密封装置によって封止する構造である。なお、2部材は同心的に設けられており、これらの2部材は、相対的に移動(回転及び往復移動のうちの少なくともいずれか一方)してもよいし、互いに静止していてもよい。また、これらの2部材は同心的に設けられているものの、必ずしも常時同心状態を維持している必要はなく、偏心状態が生じても良い。本実施例に係る密封装置によれば、2部材が偏心状態となっても、好適に密封状態を維持できる。また、本実施例に係る密封構造においては、軸方向の一方が高圧側(H)となり、他方が低圧側(L)となる。ただし、両側の圧力に差圧が発生しない状態があり得るようにしてもよい。また、高圧側(H)には密封対象流体(油など)が密封され、低圧側(L)は大気となるようにしてもよいし、両側に密封対象流体が密封されるようにしてもよい。なお、本実施例に係る密封構造を適用し得る好適な例としては、直噴エンジンにおけるインジェクタ部,建設機械用シリンダ,一般機械用シリンダ、及びショックアブソーバを挙げることができる。
【0026】
(実施例1)
図1〜図4を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造について説明する。
【0027】
<密封構造全体>
本実施例に係る密封構造は、軸60(2部材のうちの他方の部材)とハウジング70(2部材のうちの一方の部材)との間の環状隙間を密封装置によって封止する構造である。そして、本実施例に係る密封装置は、パッキン50とバックアップリング10とから構成される。パッキン50は、ゴム状弾性体製(例えばNBR製)のOリングであり、高圧側(H)に配置される。なお、パッキン50の内周面は軸60の外周面に摺動自在に密着しており、内周面はハウジング70の軸孔内周面(より具体的には、後述する環状溝71の溝底面)に摺動自在に密着する。バックアップリング10は、硬質材料(例えば、PA,PEEK,POM,PPS)からなり、パッキン50に隣接して低圧側(L)に配置される。
【0028】
これらパッキン50とバックアップリング10とから構成される密封装置は、ハウジング70の軸孔の内周面に設けられた環状溝71内に配置される。環状溝71の溝底面における低圧側(L)には、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面71aが設けられている。つまり、このテーパ面71aは、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって軸60との距離が徐々に短くなっている。上記のバックアップリング10は、この環状溝71のテーパ面71aに対して摺動自在に構成されている。そして、バックアップリング10の外周面11も、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ
面によって構成されている。
【0029】
<環状溝とバックアップリングの詳細>
バックアップリング10における外周面11のテーパ角度は、環状溝71に設けられたテーパ面71aのテーパ角度よりも大きくなるように設定されている。つまり、図2に示すように、軸線(軸60,ハウジング70の軸孔,パッキン50及びバックアップリング10の軸線)を通る断面において、バックアップリング10の外周面11における母線と軸線とのなす角をαとし、環状溝71のテーパ面71aにおける母線と軸線とのなす角をθとした場合に、α>θを満たすように構成されている。なお、バックアップリング10における外周面11のテーパ角度は2αであり、環状溝71に設けられたテーパ面71aのテーパ角度は2θであることは言うまでもない。
【0030】
また、軸60と、ハウジング70の軸孔と、バックアップリング10とが同心状態で配置された場合に、バックアップリング10における高圧側(H)の径方向の厚みをT,テーパ面71aの高圧側(H)の端縁(環状溝71の溝底面のうちテーパ面71aが設けられていない部分も同様)と軸60の表面との距離をt1,テーパ面71aの低圧側(L)の端縁と軸60の表面との距離をt2とすると、t2<T≦t1を満たすように構成されている。
【0031】
更に、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリング10が最も低圧側(L)に移動した場合においても、バックアップリング10と環状溝71における低圧側の側面との間には、隙間Uが確保されるように構成されている(図4参照)。以上の構成により、バックアップリング10における外周面11の高圧側(H)の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。
【0032】
<動作説明>
上記のように構成された本実施例に係る密封構造によれば、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差や軸60のハウジング70の軸孔に対する偏心に応じて、バックアップリング10が高圧側(H)または低圧側(L)に移動する。このとき、環状端縁部分Eは、環状溝71におけるテーパ面71aに対して摺動する。以下、この点について、詳細に説明する。
【0033】
高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差が大きくなればなるほど、パッキン50は低圧側(L)に押圧される。これにより、バックアップリング10は、パッキン50によって低圧側(L)に押されて、低圧側(L)に移動する。このとき、バックアップリング10の内周面は軸60の外周面に対して面接触の状態で摺動し、バックアップリング10の外周面側は環状端縁部分Eがテーパ面71aに対して(略)線接触の状態で摺動する。バックアップリング10が低圧側(L)に移動すればするほど、バックアップリング10が接している部分における軸60とテーパ面71aとの間の距離は小さくなる。そのため、バックアップリング10は、低圧側(L)に移動すればするほど、軸60とテーパ面71aとから圧縮される圧縮量が大きくなる。従って、バックアップリング10と軸60との間に隙間が生じてしまうことを抑制でき、パッキン50の一部が、これらバックアップリング10と軸60との間の隙間にはみ出してしまうことを抑制できる。
【0034】
また、ハウジング70の軸孔に対して軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が変化する。図3は当該距離が小さい場合(距離S1)を示し、図4は当該距離が大きい場合(距離S2)を示している。
【0035】
軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が小さくなればなるほど、バックアッ
プリング10は高圧側(H)に移動する(図3参照)。そして、当該距離が大きくなればなるほど、バックアップリング10は低圧側(L)に移動する(図4参照)。ただし、軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70との間の距離は、周方向のある箇所で最も狭く、当該箇所から180度の位置で最も広くなる。従って、軸線を通る断面で見た場合、見かけ上、バックアップリング10は図3や図4に示すように軸方向に移動するが、バックアップリング10全体が軸方向に軸線に平行に移動している訳ではない。実際上は、軸60の偏心時には、バックアップリング10は軸60の軸線に対して傾くように変形しており、バックアップリング10を、当該軸線を通る断面で見た場合には、見かけ上、軸線に平行移動する。
【0036】
<本実施例の優れた点>
上記の通り、本実施例に係る密封構造によれば、バックアップリング10における外周面(テーパ面)11の高圧側(H)の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して摺動自在に構成されている。そのため、当該摺動部分は、(略)線接触の状態で摺動する。従って、これら各テーパ面のテーパ角度が等しく設定され、テーパ面どうしが面接触するように構成されたものに比べて、バックアップリング10は、軸方向に、より滑らかに移動する。また、バックアップリング10の材料として硬度の高い硬質材が用いられることで、バックアップリング10自体が変形し難くても、軸60の偏心に対して、バックアップリング10自体が(テーパ面同士が面接触の場合に比べて)傾き易くなるので、隙間の発生を抑制できる。これにより、パッキン50のはみ出しを抑制し、パッキン50の損傷を抑制することができる。
【0037】
このように、本実施例に係る密封構造においては、バックアップリング10が一つだけでも、パッキン50のはみ出しを効果的に抑制することができる。従って、材料の異なるバックアップリングを2種類用いるものに比べて、配置スペースを広く確保する必要も無く、コストの増加を抑えることもできる。
【0038】
なお、本実施例においては、バックアップリング10がパッキン50に押された際に、バックアップリング10自体が変形することなく、より確実に移動(偏心時には傾く動作も含む)するように、硬度の高い(ロックウェル硬さで65HR以上が望ましい)材料を用いるのが好適である。何故なら、仮に、硬度の低い材料を用いた場合には、特に、軸60の偏心時において、バックアップリング10自体が変形することで、経時的に「へたり」が生じてしまう。そのため、バックアップリング10と軸60との間に隙間が生じてしまうおそれがある。
【0039】
また、本実施例に係る密封構造においては、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリング10が最も低圧側(L)に移動した場合においても、バックアップリング10と環状溝71における低圧側の側面との間には、隙間Uが確保されるように構成されている。従って、バックアップリング10が環状溝71における低圧側の側面に突き当たってしまい、バックアップリング10の移動が阻害されてしまい、バックアップリング10に無理な力が作用してしまうというようなことを抑制できる。また、バックアップリング10の移動が阻害されないことにより、バックアップリング10と軸60またはハウジング70との間に隙間が発生してしまうことを抑制できる。
【0040】
(実施例2)
図5〜図7には、本発明の実施例2が示されている。本実施例では、バックアップリングの内周面もテーパ面で構成し、バックアップリングと軸との摺動部も(略)線接触の状態で摺動するように構成した場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0041】
本実施例に係るバックアップリング20は、その外周面21は上記実施例1の場合と同様に、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面によって構成されている。これにより、上記実施例1の場合と同様に、バックアップリング20における外周面21の高圧側(H)の環状端縁部分E1が、環状溝71におけるテーパ面71aに対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。
【0042】
そして、本実施例の場合には、バックアップリング20の内周面22は、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって拡径するテーパ面によって構成されている。これにより、バックアップリング20における内周面22の高圧側(H)の環状端縁部分E2が、軸60に対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。なお、軸線を通る断面において、バックアップリング20の内周面22における母線と軸線とのなす角をβとすると、これに対応する軸60における角度は0°であり、β>0°を満たしている。また、バックアップリング20の内周面22のテーパ角度は2βであることは言うまでもない。
【0043】
また、本実施例の場合も、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリング20が最も低圧側(L)に移動した場合においても、バックアップリング20と環状溝71における低圧側の側面との間には、隙間Uが確保されるように構成されている(図7参照)。
【0044】
以上のような構成により、本実施例に係る密封構造によれば、高圧側(H)と低圧側(L)の圧力差に応じて、バックアップリング20は高圧側(H)または低圧側(L)に移動する。このとき、バックアップリング20の外周面側は環状端縁部分E1がテーパ面71aに対して(略)線接触の状態で摺動し、内周面側は環状端縁部分E2が軸60に対して(略)線接触の状態で摺動する。
【0045】
また、ハウジング70の軸孔に対して軸60が偏心した場合には、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が変化する。図6は当該距離が小さい場合を示し、図7は当該距離が大きい場合を示している。そして、軸60とハウジング70(の軸孔)との間の距離が小さくなればなるほど、バックアップリング20は高圧側(H)に移動する(図6参照)。そして、当該距離が大きくなればなるほど、バックアップリング10は低圧側(L)に移動する(図7参照)。なお、軸線を通る断面で見た場合、見かけ上、バックアップリング20は図6や図7に示すように軸方向に移動するが、バックアップリング20全体が軸方向に軸線に平行に移動している訳ではないことは、実施例1で説明した通りである。
【0046】
以上のように、本実施例に係る密封構造の場合、バックアップリング20は、外周面側も内周面側も高圧側(H)の環状端縁部分E1,E2が(略)線接触の状態で摺動するように構成されている。従って、実施例1の場合に比べて、バックアップリング20はより一層軸方向に滑らかに移動することができ、かつ軸60の偏心に対して、バックアップリング20自体がより傾き易い。従って、隙間の発生をより確実に抑制できる。また、バックアップリング20に対して軸60が傾いている状態であっても、バックアップリング20における内周面側の環状端縁部分E2が(略)線接触の状態で、全周に亘って軸60に接触した状態を維持できる。従って、本実施例に係るバックアップリング20の場合には、軸60の傾きに対しても、隙間の発生を好適に抑制できる。このように、本実施例に係るバックアップリング20は、軸60が傾く状態となり得る場合に適している。なお、バックアップリングの内周面を軸に対して面接触させ、かつバックアップリングの外周面をハウジングに設けられた環状溝のテーパ面に対して面接触させる構成を採用した場合において、軸が傾いた場合には、バックアップリングと軸との間に隙間が生じてしまう。何故なら、この場合には、バックアップリング自体は殆ど傾くことはなく、バックアップリングに対して軸が傾いた状態となる。そして、バックアップリングの内周における軸に対す
る接触位置については、高圧側(H)の端縁で接触する部分と、低圧側(L)の端縁で接触する部分とが生じてしまう。そのため、バックアップリングの内周における高圧側(H)の端縁と軸との間に隙間が生じてしまう。また、上記実施例1や以下に説明する実施例3の場合のように、バックアップリングの内周面を軸に対して面接触させ、かつバックアップリングの外周面をハウジングに設けられた環状溝のテーパ面に対して線接触させる場合には、軸の傾きに対しても、バックアップリングと軸との間に隙間が生じてしまうことを抑制することができる。何故なら、バックアップリングは、ハウジングに対してある程度傾くことが可能なため、軸が傾くと、軸と共にバックアップリングが傾くことで、バックアップリングと軸との間に隙間が生じてしまうことを抑制することができる。言い換えれば、軸が傾いても軸に対してバックアップリングは傾かないため、バックアップリングの内周面を軸に対して面接触させた状態を維持できる。
【0047】
(実施例3)
図8には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、軸の外周面もテーパ面で構成されている場合について説明する。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0048】
本実施例に係る密封構造においては、軸61の外周面が、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって拡径するテーパ面によって構成されている。なお、軸線を通る断面において、軸61の外周面における母線と軸線とのなす角をγとすると、当該テーパ面のテーパ角度は2γであることは言うまでもない。
【0049】
また、本実施例に係るバックアップリング30は、その外周面31は上記実施例1の場合と同様に、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって縮径するテーパ面によって構成されている。これにより、上記実施例1の場合と同様に、バックアップリング30における外周面31の高圧側(H)の環状端縁部分Eが、環状溝71におけるテーパ面71aに対して、(略)線接触状態を維持することを可能としている。なお、本実施例に係るバックアップリング30の内周面は、高圧側(H)から低圧側(L)に向かって拡径するテーパ面によって構成されており、そのテーパ角度は軸61の外周面のテーパ角度と同じになるように設定されている。従って、バックアップリング30の内周面は、軸61の外周面に対して面接触の状態で摺動する。
【0050】
以上のように構成された本実施例に係る密封構造によれば、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。ただし、本実施例に係る密封構造は、軸61とハウジング70が相対的に往復移動する用途には不適当であり、これらが相対的に回転するか、互いに静止した用途に好適である。
【0051】
<その他>
上記実施例3におけるバックアップリング30の内周面のテーパ角度を、軸61の外周面のテーパ角度2γよりも大きくなるように設定することで、上記実施例2の場合と同様に、当該内周面の高圧側(H)の環状端縁部分が軸61に対して、(略)線接触状態を維持させるようにしてもよい。このようにすれば、バックアップリング30は、より一層軸方向に滑らかに移動することができ、かつ軸61の偏心に対して、バックアップリング30自体がより傾き易くなる。
【0052】
また、上記各実施例においては、ハウジング70の軸孔の内周面に設けられた環状溝71内に密封装置を配置させる構成を示した。しかしながら、軸側に環状溝を設けて、この環状溝内に密封装置を配置させる構成を採用してもよい。この場合、軸側に設けられた環状溝の溝底面における低圧側に、高圧側から低圧側に向かって拡径するテーパ面が設けられる。つまり、このテーパ面は、高圧側から低圧側に向かってハウジングとの距離が徐々
に短くなっている。そして、バックアップリングの内周面は、環状溝におけるテーパ面のテーパ角度よりも大きなテーパ角度に設定されたテーパ面により構成される。これにより、バックアップリングにおける内周面(テーパ面)の高圧側の環状端縁部分が、環状溝におけるテーパ面に対して(略)線接触状態を維持することができる。なお、外周面側もテーパ面で構成して、ハウジングの軸孔内周面に対して、(略)線接触の状態で接するようにしてもよいことは言うまでもない。また、使用環境(異常な場合を除く)において、バックアップリングが最も低圧側に移動した場合においても、バックアップリングと環状溝における低圧側の側面との間には、隙間が確保されるように構成することが好適であることも言うまでもない。
【0053】
また、上述した各実施例におけるバックアップリングに関しては、周方向にカット部(分離部)が設けられていないタイプのものであってもよいし、装着性を向上させるために、周方向の1箇所にカット部が設けられているタイプのものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 バックアップリング
11 外周面
20 バックアップリング
21 外周面
22 内周面
30 バックアップリング
31 外周面
50 パッキン
60,61 軸
70 ハウジング
71 環状溝
71a テーパ面
E,E1,E2 環状端縁部分
U 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝内に配置されて、これら2部材間の環状隙間を封止する密封装置を備えた密封構造であって、
前記環状溝の溝底面における低圧側には、高圧側から低圧側に向かって他方の部材との距離が徐々に短くなるテーパ面が設けられており、
前記密封装置は、
高圧側に配置されるゴム状弾性体製のパッキンと、
該パッキンに隣接して低圧側に配置され、かつ前記テーパ面に対して摺動自在に設けられた、硬質材料からなるバックアップリングと、
を備える密封構造において、
前記バックアップリングにおける前記環状溝のテーパ面に摺動する側の面はテーパ面で構成されており、該バックアップリングにおけるテーパ面のテーパ角度の方が、前記環状溝におけるテーパ面のテーパ角度よりも大きく設定され、該バックアップリングにおけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記環状溝におけるテーパ面に対して摺動自在に構成されることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記バックアップリングにおける前記他方の部材に対して摺動する側の面もテーパ面で構成されており、このテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記他方の部材に対して摺動自在に構成されることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記バックアップリングと前記環状溝における低圧側の側面との間には、バックアップリングの位置に関係なく、隙間が確保されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の密封構造。
【請求項1】
2部材のうちの一方の部材に設けられた環状溝内に配置されて、これら2部材間の環状隙間を封止する密封装置を備えた密封構造であって、
前記環状溝の溝底面における低圧側には、高圧側から低圧側に向かって他方の部材との距離が徐々に短くなるテーパ面が設けられており、
前記密封装置は、
高圧側に配置されるゴム状弾性体製のパッキンと、
該パッキンに隣接して低圧側に配置され、かつ前記テーパ面に対して摺動自在に設けられた、硬質材料からなるバックアップリングと、
を備える密封構造において、
前記バックアップリングにおける前記環状溝のテーパ面に摺動する側の面はテーパ面で構成されており、該バックアップリングにおけるテーパ面のテーパ角度の方が、前記環状溝におけるテーパ面のテーパ角度よりも大きく設定され、該バックアップリングにおけるテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記環状溝におけるテーパ面に対して摺動自在に構成されることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記バックアップリングにおける前記他方の部材に対して摺動する側の面もテーパ面で構成されており、このテーパ面の高圧側の環状端縁部分が、前記他方の部材に対して摺動自在に構成されることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記バックアップリングと前記環状溝における低圧側の側面との間には、バックアップリングの位置に関係なく、隙間が確保されるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の密封構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−21723(P2011−21723A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169271(P2009−169271)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
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