説明

密封装置

【課題】通路ないし通路部分を通して高圧媒体が導かれる、部品間あるいは部品部分間のシール領域、特に内燃機関の燃料噴射装置における部品間あるいは部品部分間の高圧シール領域を密封するための密封装置に関し、これを、高圧シール領域の協働するシール面が低い精度で安価に製造できるようにする。
【解決手段】互いに対向して位置する部品(11、12)ないし部品部分の一方の対向面(15)に、その通路(13)ないし通路部分の部位に、通路ないし通路部分の内径を増大する凹所(17)が設けられ、この凹所(17)内に環状あるいは管状のブッシュ(18)が配置され、半組立状態において、前記ブッシュ(18)が凹所(17)から一部が突出し、他方の部品(12)ないし部品部分の対向面(16)に接し、組立中、前記ブッシュ(18)が、部品(11、12)ないし部品部分の対向面(15、16)が互いに接するように変形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品間あるいは部品部分間のシール領域、特に内燃機関の燃料噴射装置における部品間あるいは部品部分間の高圧シール領域を密封するための密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関例えばコモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射装置には、密封されねばならない互いに隣接する部品間あるいは部品部分間の複数の高圧シール領域が存在する。かかる高圧シール領域は、実用されている公知の燃料噴射装置では、シール面の部位に高い面圧が発生されることによって密封される。その場合、互いに隣接する部品あるいは部品部分のシール面に、特にその表面形状について、特にその表面あらさについて、厳しい要件が課せられる。即ち、例えば特許文献1において、内燃機関の燃料噴射弁が知られ、その弁体と中間円板との間の高圧シール領域は、弁体および中間円板に接し協働するシール面のうちの一方が、外側に球状に湾曲され、他方のシール面が平らであるか、同様に外側に球状に湾曲されている、ことによって密封されている。これは、高圧シール領域の協働するシール面の高い精度での製造を必要とし、このため、高い経費がかかる。
【特許文献1】独国特許出願公告第19608575号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、部品間あるいは部品部分間のシール領域を密封するための新たな密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1に記載の密封装置によって解決される。本発明により、互いに対向して位置する部品ないし部品部分の一方の対向面に、その通路ないし通路部分の部位に、通路ないし通路部分の内径を増大する凹所が設けられ、この凹所内に環状あるいは管状のブッシュが配置され、半組立状態において、前記ブッシュが凹所から一部が突出し、他方の部品ないし部品部分の対向面に接し、組立中、前記ブッシュが、部品ないし部品部分の対向面が互いに接するように変形される。
【発明の効果】
【0005】
本発明において、部品間あるいは部品部分間のシール領域の密封が、半組立状態において、互いに対向して位置する部品ないし部品部分の一方の対向面から一部が突出して、部品間あるいは部品部分面に隙間を規定する環状あるいは管状のブッシュを利用して行われる。その場合、組立中にブッシュが、部品間に面圧が発生するとその互いに対向して位置する面が互いに接しあるいは接触するように変形される。部品あるいは部品部分の互いに対向して位置する面は、低い精度で、特に表面あらさについてより安易な要件で製造できる。同じことは、組立中に特に弾性変形および塑性変形される環状あるいは管状のブッシュに対しても当てはまる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の有利な形態は従属請求項および以下の説明から理解できる。図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
本発明は、部品間あるいは部品部分間のシール領域、特に内燃機関の燃料噴射装置における部品間あるいは部品部分間の高圧シール領域を密封するための密封装置に関する。
【0008】
しかし本発明による密封装置の利用分野は燃料噴射装置に限定されず、この密封装置は、密封しなければならないシール領域の多くに採用できる。以下図1と図2を参照して本発明に基づく密封装置を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、2個の部品11、12の間におけるシール領域を密封するための本発明に基づく密封装置10を、半組立状態において部分断面図で示している。即ち、図1において、両部品11、12にそれぞれ通路13、14が設けられ、それらの通路13、14は部品11、12の対向面15、16を貫通し、相互に連通している。両部品11、12の通路13、14は高圧媒体で貫流され、その場合、通路13、14からの媒体流出は、本発明に基づく密封装置10によって防止される。
【0010】
図1において、両部品の一方に、即ち、部品11に凹所17が設けられている。図1において、この凹所17は部品11の面15に、通路13の部位に、通路13の内径を区域的に増大して設けられている。
【0011】
凹所17内に環状ないし管状のブッシュ18が配置されている。このブッシュ18は、図1に示された密封装置10の半組立状態において、凹所17から一部が突出し、即ち、部品11の面15から突出している。その場合、ブッシュ18はその端面19が部品12の面16に接し、図1の半組立状態において、両部品11、12間に幅aの隙間20を規定している。
【0012】
組立の際、両部品11、12は、好適には、互いにねじ結合され、その際、ブッシュ18と部品12との間に面圧が発生され、その面圧により、組立中にブッシュ18が、両部品11、12がそれらの対向面15、16が互いに接するか接触するように変形され、それに応じて、両部品11、12間の隙間20が消滅する。この場合、ブッシュ18は弾性変形し、続いて塑性変形する。これにより、ブッシュ18の端面19と部品12の面16との間における密封力が均一化され、従って、部品11、12の対向面15、16並びにブッシュ18の端面19は、その表面特性についてより安易な要件で、特にそれらの表面あらさについてより安易な要件で製造できる。
【0013】
半組立状態において、隙間20の幅aは、0.1mm〜1.0mmであり、それに応じて、半組立状態においてブッシュ18は部品11の凹所17から0.03mm〜1.0mm突出している。ブッシュ18の壁厚、即ち、その内径と外径との差は0.5mm〜5.0mmであり、そのブッシュ18の外径は、好適には、ブッシュ18の内径の1.01倍から1.5倍である。
【0014】
高圧シール領域を密封する際、ブッシュ18は、金属材料で形成されるのが有利である。低圧シール領域を密封する際、ブッシュ18はプラスチックでも作れる。
【実施例2】
【0015】
図2に本発明に基づく密封装置21の異なった実施例が示されている。図2の実施例は本質的に図1の実施例に相当し、従って、重複説明を回避するために、同一部分に同一符号が利用されている。以下、図2の実施例の図1の実施例と異なった部分についてだけ説明する。
【0016】
図2の実施例において、ブッシュ18の外周面に溝状凹所22が設けられている。ブッシュ18の剛性が、その凹所22並びに壁厚ないし外径/内径比により、的確に設定されている。
【0017】
既に述べたように、密封装置10、21の半組立状態において、ブッシュ18は部品11の面15から寸法aだけ突出し、組立中にブッシュ18が、両部品11、12の対向面15、16が互いに接するように変形される。ブッシュ18の端面19と部品12の面16との間に最高面圧が作用し、ブッシュ18が塑性域まで変形される。これによって、密封作用力の均一化が達成される。ブッシュ18は部品11、12に設けられた通路13、14を補完している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に基づく密封装置の第1実施例の断面図。
【図2】本発明に基づく密封装置の第2実施例の断面図。
【符号の説明】
【0019】
10 密封装置
11 部品
12 部品
13 通路
14 通路
15 面
16 面
17 凹所
18 ブッシュ
19 端面
20 隙間
21 密封装置
22 凹所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して位置する部品あるいは部品部分にそれぞれ通路ないし通路部分が設けられ、該通路ないし通路部分が、部品あるいは部品部分の対向面を貫通し、その通路ないし通路部分を通して高圧媒体が導かれる、部品間あるいは部品部分間のシール領域、特に内燃機関の燃料噴射装置における部品間あるいは部品部分間の高圧シール領域を密封するための密封装置において、
互いに対向して位置する部品(11、12)ないし部品部分の一方の対向面(15)に、その通路(13)ないし通路部分の部位に、通路ないし通路部分の内径を増大する凹所(17)が設けられ、該凹所(17)内に環状あるいは管状のブッシュ(18)が配置され、半組立状態において、前記ブッシュ(18)が凹所(17)から一部が突出し、他方の部品(12)ないし部品部分の対向面(16)に接し、組立中、前記ブッシュ(18)が、部品(11、12)ないし部品部分の対向面(15、16)が互いに接するように変形されることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
組立中にブッシュ(18)が弾性変形され、続いて塑性変形されることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
ブッシュ(18)の外径が、ブッシュ(18)の内径の1.01倍から1.5倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の密封装置。
【請求項4】
ブッシュ(18)が0.5mm〜5.0mmの壁厚を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の密封装置。
【請求項5】
半組立状態において、ブッシュ(18)が凹所(17)から0.03mm〜1.0mm突出していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の密封装置。
【請求項6】
環状あるいは管状のブッシュ(18)の外周面に少なくとも1個の凹所(22)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の密封装置。
【請求項7】
ブッシュ(18)が、部品ないし部品部分に設けられた通路ないし通路部分を補完していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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