説明

密封装置

【課題】組み立て作業が容易で、かつ構成の簡易化を可能とする密封装置を提供する。
【解決手段】プラグチューブ151とヘッドカバー160との間の環状隙間を封止するプラグチューブシール100において、略円筒部112Aと、略円筒部112Aの一端側からプラグチューブ151に向かって伸び、プラグチューブ151の外周面に密着するシール部112Bとを有し、略円筒部112Aがゴム状弾性体で構成されたシール本体110と、略円筒部112Aの他端側から略円筒部112Aの筒内に嵌め込まれ、略円筒部112Aの外周面の少なくとも一部をヘッドカバー160の内周面に密着させる補強環120と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材間の環状隙間をシールする密封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イグニションコイルが挿入されるプラグチューブとヘッドカバーとの間の環状隙間を封止するプラグチューブシールや、インジェクタとヘッドカバーとの間の環状隙間を封止するインジェクションパイプシールなどの密封装置が知られている。このような2部材間の環状隙間を封止する密封装置においては、密封装置が環状隙間内に位置決めされた状態で固定されるように、シール本体内部に補強環が設けられるのが一般的である(特許文献1,2参照)。すなわち、当該密封装置は、金属などの剛体で構成される補強環と、この補強環に一体成形されるゴム状弾性体製のシール本体とから構成される。これにより、例えば、ヘッドカバーの内周面に対して、補強環の外周側に一体的に設けられたゴム状弾性体の部位(外周シール部)が圧入されることで、密封装置が位置決めされた状態で固定される。
【0003】
このように構成される密封装置においては、密封装置をヘッドカバーの内周面に圧入する際に、外周シール部の外周面が、補強環によって外周側に押圧された状態でヘッドカバーの内周面に摺動するため摺動抵抗が大きくなる。従って、外周シール部の表面がむしれてしまい易いといった問題があり、外周シール部における締め代を大きくすることができないという欠点がある。
【0004】
このことから、ヘッドカバーには、通常、寸法精度が要求される。しかしながら、例えば、ヘッドカバーを樹脂成形品とする場合には、金属製のものに比べて寸法ばらつきが大きくなり易い。ヘッドカバーの寸法ばらつきが大きい場合には、上記のように外周シール部における締め代を大きくできないことと相俟って、密封装置の圧入荷重が大きくなり過ぎたり、逆に、十分に圧入されずに位置決め固定ができなかったりしてしまう。
【0005】
そのため、ヘッドカバーの寸法ばらつきが大きい場合には、密封装置を組み立てるために大きな荷重で圧入プレスを行わなければならず、また、密封装置の抜け落ちを防止するための抜け止め板をヘッドカバーに設けなければならなかった(特許文献3,4参照)。
【0006】
以上のことから、組み立て作業が大変であったり、構成の複雑化を招いていたりしていた。また、抜け止め板は、樹脂製のものをヘッドカバーに溶着させるのが一般的であり、この場合には、密封装置を取り外すことができず、メンテナンス性が悪いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−364757号公報
【特許文献2】特開2003−106455号公報
【特許文献3】特許第4014423号公報
【特許文献4】特許第4198708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、組み立て作業が容易で、かつ構成の簡易化を可能とする密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明の密封装置は、
内周側部材と外周側部材との間の環状隙間を封止する密封装置において、
筒状部と、該筒状部の一端側から前記内周側部材に向かって伸び、該内周側部材の外周面に密着するシール部とを有し、少なくとも前記筒状部がゴム状弾性体で構成されたシール本体と、
前記筒状部の他端側から該筒状部の筒内に嵌め込まれ、該筒状部の外周面の少なくとも一部を前記外周側部材の内周面に密着させる補強環と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、シール本体における筒状部がゴム状弾性体で構成されているので、シール本体を、外周側部材に対して大きな荷重を必要とすることなく取り付ける(挿入)ことができる。これにより、シール本体を挿入する際において、シール本体における外周面と外周側部材の内周面と間の摺動抵抗を低くすることができる。これに伴い、補強環の外周面に外周シール部が一体的に設けられている場合とは異なり、シール本体の外周面付近に大きなせん断力が作用しない。そのため、シール本体の外周面がむしれてしまうようなことはなく、シール本体における外周面側の締め代を比較的大きくすることができる。従って、補強環を嵌め込む際の圧入力を比較的弱くしてもシール本体を十分に位置決めした状態で外周側部材に固定することができる。また、外周側部材の寸法ばらつきが大きな場合であっても、シール本体を十分に位置決め固定することができる。これらのことから組み立て作業を容易にすることができ、また、抜け止め板も不要となるので、構成の簡易化を図ることもできる。
【0012】
また、前記外周側部材の内周面には環状突起が設けられており、
前記筒状部の外周面には、前記環状突起の両側に、該環状突起に係合可能に、それぞれ環状のシール突起が設けられているとよい。
【0013】
このような構成を採用すれば、シール突起によってシール性を高めつつ、環状突起と、その両側の環状のシール突起との係合により、シール本体の抜け落ちを、より一層抑制することができる。
【0014】
前記補強環の環状の胴体部には、前記一端側の方よりも他端側の方の径を小さくする段差が設けられると共に、前記シール本体における前記筒状部の前記他端側には、該段差に係合する環状の係合突起が設けられているとよい。
【0015】
これにより、シール本体の抜け落ちを、より一層抑制することができる。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、密封装置の組み立て作業を容易にすることができ、かつ密封装置の構成の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る密封装置の模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係るシール本体の模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係る補強環の模式的断面図である。
【図4】図4は本発明の実施例2に係る密封装置の模式的断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例2に係るシール本体の模式的断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例2に係る補強環の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例1)
図1〜図3を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置について説明する。本実施例においては、密封装置の一例として、プラグチューブシールの場合を説明する。なお、以下の説明において、図中下方向を「一方または一端側」、図中上方向を「他方または他端側」として説明する。
【0021】
<密封装置の全体構成>
特に、図1を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置としてのプラグチューブシール100の全体構成について説明する。プラグチューブシール100は、イグニションコイル150が挿入されるプラグチューブ151(内周側部材)と樹脂製のヘッドカバー160(外周側部材)との間の環状隙間を封止するために用いられる。このプラグチューブシール100は、シール本体110と、シール本体110をヘッドカバー160の内周面に位置決めした状態で固定させるための補強環120とから構成される。
【0022】
<シール本体>
特に、図2を参照して、シール本体110について詳細に説明する。シール本体110は、補助補強環111と、この補助補強環111に一体成形されるゴム状弾性体部112とから構成される。
【0023】
補助補強環111は孔の空いた略円板状の部材で構成されており、かつ内周側には一方に向かって折り曲げられた第1折り曲げ部111aと、外周側には他方に向かって折り曲げられた第2折り曲げ部111bとが設けられている。
【0024】
ゴム状弾性体部112は、筒状部としての略円筒部112Aと、シール部112Bとを備えている。上記の補助補強環111は、この略円筒部112Aとシール部112Bとの間の接続部分の内部に設けられている。そして、シール部112Bの根元の付近に第1折り曲げ部111aが配置され、略円筒部112Aの一端付近に第2折り曲げ部111bが配置されるように構成されている。
【0025】
略円筒部112Aには、その他端側の内周面に環状の係合突起112bが設けられており、かつその外周面に2条の環状のシール突起112c,112dが設けられている。シール本体110をヘッドカバー160に取り付けた状態においては、ヘッドカバー160の内周面に設けられている環状突起161の両側に、これらの環状のシール突起112c,112dが配置されるように構成されている(図1参照)。また、これらの環状のシール突起112c,112dは、上記の環状突起161に対して係合可能に設けられている。すなわち、シール本体110が一方に移動すると、シール突起112cが環状突起161に係合し、他方に移動すると、シール突起112dが環状突起161に係合するように構成されている。
【0026】
また、シール部112Bは、略円筒部112Aの一端側から、更に一端方向に向かって
伸びた後に、他端側に向かって戻るように湾曲し、かつその先端側にシールリップ部112aを有する構成である。このシールリップ部112aの先端がプラグチューブ151の外周面に密着した状態となる。また、このシールリップ部112aの内部にはスプリング113が埋設されており、リップ先端のプラグチューブ151の外周面への緊迫力を高めている。
【0027】
<補強環>
特に、図3を参照して、補強環120について詳細に説明する。補強環120は、金属製(SPCC材など)または樹脂製の補強環本体121と、補強環本体121の他端側に一体成形により設けられるゴムまたは樹脂製のカバー122とから構成される。補強環本体121は、略円筒状の胴体部121aと、その他端側に設けられる内向きフランジ部121bとを備えている。また、胴体部121aには、一端側の方よりも他端側の方の径を小さくするテーパ状の段差121a1が設けられている。この段差121a1の外周面側に、シール本体110の略円筒部112Aにおける係合突起112bが係合するように構成されている(図1参照)。
【0028】
カバー122は、補強環本体121における内向きフランジ部121bを埋設するように、補強環本体121の他端側に設けられた、孔の空いた略円板状の部材である。このカバー122の一方側の面における内周側と外周側にはそれぞれ環状の凹部122a,122bが設けられている。このうち凹部122aはプラグチューブ151の先端に嵌り、凹部122bはヘッドカバー160の他端側の端面に設けられている環状突起162に嵌るように構成されている(図1参照)。
【0029】
また、本実施例に係る補強環本体121は、プラグチューブシール100の取り外しを容易にしてメンテナンス性を高めるために、手工具などで内側に潰せるように構成されている。より具体的には、補強環本体121の素材としてSPCC材を採用した場合には、板厚を0.3mm以上0.4mm以下とし、樹脂材を材用した場合には、板厚を1mm程度に設定する。また、内向きフランジ部121bの長さも短く設定し、かつ段差121a1の長さも1mm以下に設定する。これにより、補強環本体121を大がかりな装置を用いることなく、手工具などで簡単に内側に潰すことができる。
【0030】
<密封装置の組み立て方>
上記のように構成されるプラグチューブシール100の組み立て方について説明する。
【0031】
まず、ヘッドカバー160の内周面に対して、シール本体110を一方側に向けて挿入する。このとき、シール本体110における略円筒部112Aの外周面に設けられている2条の環状のシール突起112c,112dの間に、ヘッドカバー160の内周面に設けられている環状突起161が嵌る位置までシール本体110を挿入する。その後、補強環120における補強環本体121を、シール本体110における略円筒部112Aの筒内に、他端側から挿入(圧入)し、当該筒内に嵌め込む。このとき、補強環本体121の一方側の端部が、シール本体110におけるゴム状弾性体部112の略円筒部112Aとシール部112Bとの間の接続部分の他方側の面に突き当たるまで、補強環本体121を挿入する。これにより、補強環本体121における胴体部121aの段差121a1の外周面に、略円筒部112Aの係合突起112bが係合した状態となる。これを気筒数分実施した後に、プラグチューブ151が立っているシリンダーヘッドに、プラグチューブシール100が装着されているヘッドカバー160を被せることにより、図1に示す状態となる。このとき、カバー122における環状の凹部122a,122bが、それぞれプラグチューブ151の先端とヘッドカバー160の環状突起162に嵌った状態となる(図1参照)。
【0032】
<本実施例に係る密封装置(プラグチューブシール100)の優れた点>
本実施例に係るプラグチューブシール100によれば、シール本体110における略円筒部112Aがゴム状弾性体で構成されているので、シール本体110を、ヘッドカバー160に対して大きな荷重を必要とすることなく取り付ける(挿入する)ことができる。
【0033】
これにより、シール本体110を挿入する際において、シール本体110における外周面(略円筒部112Aの外周面)とヘッドカバー160の内周面と間の摺動抵抗を低くすることができる。これに伴い、補強環の外周面に外周シール部が一体的に設けられている場合とは異なり、シール本体110の外周面付近に大きなせん断力が作用しない。そのため、シール本体110の外周面がむしれてしまうようなことはなく、シール本体110における外周面側の締め代を比較的(補強環の外周面に外周シール部を一体的に設けた場合に比べて)大きくすることができる。従って、補強環120を嵌め込む際の圧入力を比較的弱くしてもシール本体110を十分に位置決めした状態でヘッドカバー160に固定することができる。また、ヘッドカバー160の寸法ばらつきが大きな場合であっても、シール本体110を十分に位置決め固定することができる。これらのことから組み立て作業を容易にすることができ、また、抜け止め板も不要となるので、構成の簡易化を図ることもできる。
【0034】
また、本実施例においては、シール本体110における略円筒部112Aの外周面には、ヘッドカバー160の内周面に設けられた環状突起161に対して係合可能なシール突起112c,112dを設ける構成を採用している。従って、シール突起112c,112dによってシール性を高めつつ、環状突起161と、その両側の環状のシール突起112c,112dとの係合により、シール本体110の抜け落ちを、より一層抑制することができる。
【0035】
また、本実施例においては、補強環本体121における胴体部121aの段差121a1の外周面に、略円筒部112Aの係合突起112bを係合させる構成を採用している。これにより、シール本体110の抜け落ちを、より一層抑制することができる。
【0036】
更に、本実施例においては、補強環本体121を手工具などで簡単に内側に潰すことができるため、プラグチューブシール100を簡単に取り外すことができ、プラグチューブシール100の交換が容易で、メンテナンス性にも優れている。
【0037】
(実施例2)
図4〜図6を参照して、本発明の実施例2に係る密封装置について説明する。本実施例においては、密封装置の一例として、インジェクションパイプシールの場合を説明する。なお、以下の説明において、図中下方向を「一方または一端側」、図中上方向を「他方または他端側」として説明する。
【0038】
<密封装置の全体構成>
特に、図4を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置としてのインジェクションパイプシール200の全体構成について説明する。インジェクションパイプシール200は、インジェクタ250(内周側部材)と樹脂製のヘッドカバー260(外周側部材)との間の環状隙間を封止するために用いられる。このインジェクションパイプシール200は、シール本体210と、シール本体210をヘッドカバー260の内周面に位置決めした状態で固定させるための補強環220とから構成される。
【0039】
<シール本体>
特に、図5を参照して、シール本体210について詳細に説明する。シール本体210は、補助補強環211と、この補助補強環211に一体成形されるゴム状弾性体部212
とから構成される。
【0040】
補助補強環211は孔の空いた略円板状の部材で構成されており、かつ内周側には一方に向かって折り曲げられた第1折り曲げ部211aと、外周側には他方に向かって折り曲げられた第2折り曲げ部211bとが設けられている。
【0041】
ゴム状弾性体部212は、筒状部としての略円筒部212Aと、シール部212Bとを備えている。上記の補助補強環211は、この略円筒部212Aとシール部212Bとの間の接続部分の内部に設けられている。そして、シール部212Bの根元の付近に第1折り曲げ部211aが配置され、略円筒部212Aの一端付近に第2折り曲げ部211bが配置されるように構成されている。
【0042】
略円筒部212Aには、その他端側の内周面に環状の係合突起212bが設けられており、かつその外周面に2条の環状のシール突起212c,212dが設けられている。シール本体210をヘッドカバー260に取り付けた状態においては、ヘッドカバー260の内周面に設けられている環状突起261の両側に、これらの環状のシール突起212c,212dが配置されるように構成されている(図4参照)。また、これらの環状のシール突起212c,212dは、上記の環状突起261に対して係合可能に設けられている。すなわち、シール本体210が一方に移動すると、シール突起212cが環状突起261に係合し、他方に移動すると、シール突起212dが環状突起261に係合するように構成されている。
【0043】
また、シール部212Bは、略円筒部212Aの一端側から、更に一端方向に向かって伸びた後に、他端側に向かって戻るように湾曲し、かつその先端側にシールリップ部212aを有する構成である。このシールリップ部212aの先端がインジェクタ250の外周面に密着した状態となる。また、このシールリップ部212aの内部にはスプリング213が埋設されており、リップ先端のインジェクタ250の外周面への緊迫力を高めている。
【0044】
<補強環>
特に、図6を参照して、補強環220について詳細に説明する。補強環220は、金属製(SPCC材など)または樹脂製の補強環本体221と、補強環本体221の他端側に一体成形により設けられるゴムまたは樹脂製のカバー222とから構成される。補強環本体221は、略円筒状の胴体部221aと、その他端側に設けられる内向きフランジ部221bとを備えている。また、胴体部221aには、一端側の方よりも他端側の方の径を小さくするテーパ状の段差221a1が設けられている。この段差221a1の外周面側に、シール本体210の略円筒部212Aにおける係合突起212bが係合するように構成されている(図4参照)。
【0045】
カバー222は、補強環本体221における内向きフランジ部221bの一部を埋設するように、補強環本体221の他端側に設けられた、孔の空いた略円板状の部材である。このカバー222は、その外周面側の端部に内向きフランジ部221bの一部が埋設されており、内周面側の端部は自由端となっている。この自由端の先端付近の他方側の面が、インジェクタ250の外周面における湾曲状に縮径する表面に当接するように構成されている。
【0046】
また、本実施例に係る補強環本体221は、インジェクションパイプシール200の取り外しを容易にしてメンテナンス性を高めるために、手工具などで内側に潰せるように構成されている。より具体的には、補強環本体221の素材としてSPCC材を採用した場合には、板厚を0.3mm以上0.4mm以下とし、樹脂材を材用した場合には、板厚を
1mm程度に設定する。また、内向きフランジ部221bの長さも短く設定し、かつ段差221a1の長さも1mm以下に設定する。これにより、補強環本体221を大がかりな装置を用いることなく、手工具などで簡単に内側に潰すことができる。
【0047】
<密封装置の組み立て方>
上記のように構成されるインジェクションパイプシール200の組み立て方について説明する。
【0048】
まず、ヘッドカバー260の内周面に対して、シール本体210を一方側に向けて挿入する。このとき、シール本体210における略円筒部212Aの外周面に設けられている2条の環状のシール突起212c,212dの間に、ヘッドカバー260の内周面に設けられている環状突起261が嵌る位置までシール本体210を挿入する。その後、補強環220における補強環本体221を、シール本体210における略円筒部212Aの筒内に、他端側から挿入(圧入)し、当該筒内に嵌め込む。このとき、補強環本体221の一方側の端部が、シール本体210におけるゴム状弾性体部212の略円筒部212Aとシール部212Bとの間の接続部分の他方側の面に突き当たるまで、補強環本体221を挿入する。これにより、補強環本体221における胴体部221aの段差221a1の外周面に、略円筒部212Aの係合突起212bが係合した状態となる。これを気筒数分実施した後に、インジェクタ250が立っているシリンダーヘッドに、インジェクションパイプシール200が装着されているヘッドカバー260を被せることにより、図4に示す状態となる。このとき、カバー222における内周側の自由端の先端付近の他方側の面が、インジェクタ250の外周面における湾曲状に縮径する表面に当接した状態となる。
【0049】
以上の構成により、本実施例においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(その他)
上記実施例においては、密封装置の一例として、プラグチューブシールの場合とインジェクションパイプシールの場合を説明したが、その他の密封装置にも適用できることは言うまでもない。
【0051】
また、上記の実施例においては、外周側部材の一例として、樹脂製のヘッドカバーの場合を説明したが、その他の部材についても適用可能である。なお、本発明は、シール本体の外周側部材に対する締め代を大きく設定できることから、外周側部材の寸法ばらつきが大きなもの(樹脂成形品など)に対して効果的に用いられるが、勿論、寸法精度の高いもの(金属製のヘッドカバーなど)にも適用可能である。また、上記の実施例において示した樹脂製のヘッドカバーは、内周面に環状突起が設けられているが、環状突起を一か所のみ設ける構成の場合、アンダーカット部が発生せず、成形によって簡単に製造可能である。
【0052】
また、上記の実施例においては、補強環にカバーを設ける構成を採用したことで、シール部側へのダスト等の侵入を抑制し、シール寿命を延ばすことを可能にしている。ただし、使用環境等に応じて、カバーを設けない構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0053】
100 プラグチューブシール
110 シール本体
111 補助補強環
111a 第1折り曲げ部
111b 第2折り曲げ部
112 ゴム状弾性体部
112A 略円筒部
112B シール部
112a シールリップ部
112b 係合突起
112c,112d シール突起
113 スプリング
120 補強環
121 補強環本体
121a 胴体部
121a1 段差
121b 内向きフランジ部
122 カバー
122a,122b 環状の凹部
150 イグニションコイル
151 プラグチューブ
160 ヘッドカバー
161 環状突起
162 環状突起
200 インジェクションパイプシール
210 シール本体
211 補助補強環
211a 第1折り曲げ部
211b 第2折り曲げ部
212 ゴム状弾性体部
212A 略円筒部
212B シール部
212a シールリップ部
212b 係合突起
212c,212d シール突起
213 スプリング
220 補強環
221 補強環本体
221a 胴体部
221a1 段差
221b 内向きフランジ部
222 カバー
250 インジェクタ
260 ヘッドカバー
261 環状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側部材と外周側部材との間の環状隙間を封止する密封装置において、
筒状部と、該筒状部の一端側から前記内周側部材に向かって伸び、該内周側部材の外周面に密着するシール部とを有し、少なくとも前記筒状部がゴム状弾性体で構成されたシール本体と、
前記筒状部の他端側から該筒状部の筒内に嵌め込まれ、該筒状部の外周面の少なくとも一部を前記外周側部材の内周面に密着させる補強環と、
を備えることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記外周側部材の内周面には環状突起が設けられており、
前記筒状部の外周面には、前記環状突起の両側に、該環状突起に係合可能に、それぞれ環状のシール突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記補強環の環状の胴体部には、前記一端側の方よりも他端側の方の径を小さくする段差が設けられると共に、前記シール本体における前記筒状部の前記他端側には、該段差に係合する環状の係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−141040(P2012−141040A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−673(P2011−673)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】