密封部材、及びその密封部材の製造方法

【課題】柔軟性があり、コストを低減させた密封部材、及びその密封部材の製造方法を提供する。
【解決手段】密封部材100は、フィルム状樹脂部材10と、凸部20とを備える。フィルム状樹脂部材10は、所定形状をしており、この形状は密封部材100を取り付ける場所により様々な形状になる。凸部20は、任意の面に圧着させて、密封空間を形成する際に側壁の一部を成すものであり、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周させた凸形状のシリコンゴムにより形成させる。密封部材100は、例えば電池蓋210の内側面に取り付けられ、電池230と対向した状態になっている。そして、電池蓋210を携帯電話200に装着すると、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周する密封部20は、携帯電話200における電池保持部240の周囲を一周する凹部220の底面221に圧着される。
【解決手段】密封部材100は、フィルム状樹脂部材10と、凸部20とを備える。フィルム状樹脂部材10は、所定形状をしており、この形状は密封部材100を取り付ける場所により様々な形状になる。凸部20は、任意の面に圧着させて、密封空間を形成する際に側壁の一部を成すものであり、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周させた凸形状のシリコンゴムにより形成させる。密封部材100は、例えば電池蓋210の内側面に取り付けられ、電池230と対向した状態になっている。そして、電池蓋210を携帯電話200に装着すると、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周する密封部20は、携帯電話200における電池保持部240の周囲を一周する凹部220の底面221に圧着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間を密封空間にする密封部材、及びその密封部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機器の電池収容部分は、電池蓋により自由に開閉させることができる機構となっているものが多い。このため、携帯機器の電池収容部分は水や埃等の異物が浸入する機会が多く、故障の要因となっている。このような問題を解決するため、従来、電池を収容した状態の電池室は、防水用ガスケットを備えたリアカバープレートにより覆われていた(例えば、特許文献1参照。)。電池室側の面に固定された防水用ガスケットは、電池室の周りに接触してその電池室を取り巻いて一周し、電池室への水の浸入を防止する役割を担っている。そして、リアカバープレートは、1枚の金属板の板金加工で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−110810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、リアカバープレートが1枚の金属板の板金加工で形成されていて剛性が強いため、携帯機器にわずかな凹凸があっても、厳密な密封性を担保できない。また、携帯機器の形状に曲面がある場合、従来の剛性が強いリアカバープレートでは取り付けが容易ではない。また、金属板を板金加工するため、製造工程が増え、コストもその分増える。
【0005】
そこで、本発明は、柔軟性があり、コストを低減させた密封部材、及びその密封部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の密封部材は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の密封部材において、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材は、少なくとも上記凸部が形成された面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の密封部材は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の密封部材の製造方法は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、上記表面改質を行った上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の密封部材の製造方法は、所定の形状に形成されたフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、上記フィルム状樹脂部材に対してアニール処理を行うアニール処理工程と、上記アニール処理を行った上記フィルム状樹脂部材を上記所定の形状に切断する切断工程と、上記所定の形状にされた上記フィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、上記表面改質を行った上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の密封部材の製造方法は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層とを具備する密封部材の製造方法であって、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、上記表面改質を行った上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムによりシリコンゴム層が形成されるよう成形を行う成形工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密封部材に柔軟性があるため、ワークへの取り付けが容易である。また、密封部材をフィルム状樹脂により形成させているため、ワークに併せた形状対応が容易になり、気密性を容易に向上させることができる。また、密封部材をフィルム状樹脂により形成させているため、金属板よりも薄型化することが容易で、軽量化、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における密封部材100を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における密封部材100の使用例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における密封部材100の製造の流れを示すチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるフィルム状樹脂310にコロナ処理行うコロナ処理装置400の一例を示す図である。
【図5】剥離試験の態様を示す図である。
【図6】図5において説明した条件下で行った剥離試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における密封部材100を示す図である。図1(a)は、本発明の実施の形態における密封部材100の斜視図である。密封部材100は、フィルム状樹脂部材10と、凸部20とを備える。
【0016】
フィルム状樹脂部材10は、所定形状をしており、この形状は密封部材100を取り付ける場所により様々な形状になる。また、フィルム状樹脂部材10として、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムが想定されるが、これに限るものではなく、その他の材質のフィルム状樹脂であってもよい。
【0017】
凸部20は、任意の面に圧着させて、密封空間を形成する際に側壁の一部を成すものであり、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周させた凸形状のシリコンゴムにより形成させることが想定されるが、これに限るものではなく、その他の材質であってもよい。図1(b)は、図1(a)における密封部材100のA−A断面図である。凸部20は、図1(b)に示すようにフィルム状樹脂部材10の外縁に凸形状のシリコンゴムとして設けられている。
【0018】
なお、本発明においてフィルム状樹脂部材10の外縁とは、図1(b)に示すようにフィルム状樹脂部材10の最外縁でなくてもよく、フィルム状樹脂部材10の最外縁から所定距離内側にずらした位置もフィルム状樹脂部材10の外縁と看做す。
【0019】
また、本発明の密封部材は、以上説明した密封部材100以外にも様々な態様のものが想定される。その一つとして、少なくともフィルム状樹脂部材10の凸部20が形成された面全体に(図示しない)シリコンゴム層を形成させたものが挙げられる。この態様の密封部材は、フィルム状樹脂部材10の少なくとも一方の面全体がシリコンゴムにより薄く(例えば、凸部20の厚さよりも薄く)コーティングされた状態になり、さらにフィルム状樹脂部材10の外縁に凸部20を有する態様になる。
【0020】
また、別の態様として、フィルム状樹脂部材10の外縁に設けられた凸部20と同様の厚さの(図示しない)シリコンゴム層を、少なくともフィルム状樹脂部材10の一方の表面全体に拡げたものが挙げられる。この態様の密封部材におけるシリコンゴム層は、上記態様のように薄くコーティングされた態様とは異なり、フィルム状樹脂部材10の一方の表面全体に所定の厚さを有して拡がった態様になる。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態における密封部材100の使用例を示す図である。図2(a)は、密封部材100を携帯電話200に使用した様子を示す図である。密封部材100は、図2(a)に示す態様で携帯電話200の電池蓋210の内側に取り付けられる。
【0022】
図2(b)は、図2(a)における携帯電話200のB−B断面図である。上記の通り密封部材100は、電池蓋210の内側面に取り付けられており、電池230と対向した状態になっている。そして、電池蓋210を携帯電話200に装着すると、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周する凸部20は、携帯電話200における電池保持部240の周囲を一周する凹部220の底面221に圧着される。これにより、凸部20は、外部から入り込んでくる水や埃を遮断する壁となり、電池保持部240を収容する空間を密封状態にする。
【0023】
以上が本発明の実施の形態における密封部材100の使用例であるが、密封部材100を電池蓋210の内側面に取り付ける際、フィルム状樹脂部材10と電池蓋210の内側面とを完全に密着させる必要がある。この点においてフィルム状樹脂部材10が柔軟性あるフィルム状樹脂により形成されているため、フィルム状樹脂部材10と電池蓋210の内側面とを完全に密着させた状態にすることが容易である。また、フィルム状樹脂部材10はフィルム状樹脂であるため追随性に優れ、電池蓋210の内側面への取り付けが容易である。また、従来技術である板金加工で形成された金属板と違って、密封部材100のように基材をフィルム状樹脂により形成させると、基材を上記金属板よりも薄型化することが容易であり、さらに上記金属板を用いた場合よりもコストを低減させることができる。以上は、携帯電話200に密封部材100を適用した場合についての説明であるが、携帯電話200以外の一般のワーク(密封部材100における被取付物)に対しても上記と同様に説明することができる。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態における密封部材100の製造の流れを示すチャート図である。最初に、フィルム状樹脂に対する処理について説明する。まず、裁断前のフィルム状樹脂にアニール処理を行う(ステップS911)。なお、アニール処理とは、材料を所定の温度の下、一定時間保持させることにより、残留応力を緩和させるものである。アニール処理に要する時間、温度は、用いられる樹脂等により様々な時間、温度が選択される。
【0025】
次に、アニール処理を行ったフィルム状樹脂を適当な大きさに裁断する(ステップS912)。なお、このステップS912における裁断は、ステップS911の前に行ってもよい。次に、フィルム状樹脂を洗浄して乾燥させる(ステップS913)。フィルム状樹脂の洗浄には、例えばIPA(イソプロピルアルコール)を用いる。そして、フィルム状樹脂をIPA(イソプロピルアルコール)に30分程度浸した後に乾燥させる。これにより、フィルム状樹脂の表面の油等の汚れが除去される。
【0026】
次に、フィルム状樹脂に対して表面改質処理を行う(ステップS914)。なお、表面改質を行う理由は、フィルム状樹脂の表面上で、他の液状体との親和性を向上させる事により、相手物(例えば、シリコンゴム)との接着力を向上・安定化させるためである。本発明において表面改質処理として、例えばコロナ処理、エアープラズマ処理、フレーム処理等が挙げられるが、これに限るものではなく、その他の表面改質処理も可能な限り本発明に含まれる。
【0027】
コロナ処理とは、処理基材表面周辺に高電圧・高周波を掛けてコロナ放電を発生させる処理を言う。コロナ放電時の高エネルギーにより、処理基材表面に極性分子を生成させる。その作用及び放電による物理的作用(荒面化)の相乗効果にて、処理基材は表面改質される。なお、極性分子として、−C=O、−COOH、−OH、−H3O、−CN等の官能基が想定されるが、これに限るものではない。
【0028】
エアープラズマ処理とは、ヘッドの電極間に高電圧・高周波を掛けて、オゾン等のイオン化されたガス(プラズマ)を発生させ、このガス(プラズマ)をエアーで処理基材表面に吹き付ける処理を言う。エアープラズマ処理によれば、ガス(プラズマ)を処理基材表面にエアーで吹き付けて処理基材表面に作用させ、処理基材表面に極性分子を生成させることにより処理基材は表面改質される。なお、一般的に、エアープラズマ処理をコロナ処理と言うこともある。
【0029】
フレーム処理とは、酸素を混合させたプロパンガス等の可燃性ガスを処理基材表面で燃焼させる処理を言う。フレーム処理によれば、処理基材表面で燃焼させて酸化反応を起こさせ、処理基材表面に極性分子を生成させることにより処理基材は表面改質される。なお、上記の可燃性ガスに酸化ケイ素系物質を混合させて燃焼時にそれを処理基材表面に付与させるようにしてもよい。
【0030】
一方で、硬化剤を配合したシリコンゴムを準備する(ステップS915)。そして、表面改質させたフィルム状樹脂を金型にセットして、その金型にステップS915を経たシリコンゴムを射出して射出成形により一体成形を行う(ステップS916)。その結果、成形体300が生成される。成形体300は、フィルム状樹脂310に複数の凸部20が融着した状態にある。一般的に、フィルム状樹脂とシリコンゴムとは、接着性が悪く、フィルム状樹脂にシリコンゴムを融着させても簡単に剥がせてしまう。しかしながら、本発明のようにフィルム状樹脂に対して表面改質処理を行うと、フィルム状樹脂とシリコンゴムとの接着性が強固になり、フィルム状樹脂にシリコンゴムを融着させても簡単に剥がせなくなる(図5、図6参照)。なお、フィルム状樹脂310にシリコンゴムを接着させる場合、両者の接着性をさらに強固なものとするのに、所定の接着剤を用いてもよい。この場合も、本発明の範囲に含まれる。
【0031】
また、図1で説明したフィルム状樹脂部材10の少なくとも一方の面全体をシリコンゴムにより薄くコーティングし、かつフィルム状樹脂部材10の外縁に凸部20を有する態様の別態様密封部材を製造する場合、ステップS916における一体成形は、射出・トランスファ成形ではなく、圧縮成形により行うようにしてもよい。この場合、フィルム状樹脂部材10の一方の面に所定量のシリコンゴムをセットして、圧縮成形する。圧縮成形の場合、射出・トランスファ成形に比べて、無駄になるシリコンゴムの量を少なくすることができるため、製造コストの低減に資する。
【0032】
さらに、一般的に、シリコンゴムを成形した後には、シリコンゴムに所定のコーティングを施すことがよく行われている。密封部材100に対してステップS916の後に、凸部20を形成するシリコンゴムに所定のコーティングを施す場合、フィルム状樹脂部材10の表面にそのコーティング剤が塗布されないように、フィルム状樹脂部材10の表面にマスキングをする。一方、別態様密封部材においては、ステップS916の後に、凸部20を形成するシリコンゴムに所定のコーティングを施す場合、凸部20が形成された面全体にシリコンゴムが薄く(例えば、凸部20の厚さよりも薄く)コーティングされているため、フィルム状樹脂部材10の表面にマスキングしなくてもよい。薄くコーティングされたシリコンゴムにコーティング剤が塗布されても問題ないからである。この場合、別態様密封部材の製造工程においてこのマスキングする工程、及びマスキングを取り除く工程を省けるため、この点からも製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
その後、成形体300に対して後硬化処理(POST CURE)を行う(ステップS917)。そして、最終処理として、例えば成形体300を所望の大きさに裁断して、バリ等をカットした後に密封部材100が完成する(ステップS918)。
【0034】
なお、以上説明した密封部材100の製造方法は一例であって、ステップS914、ステップS916以外は、適宜密封部材100を製造する上で最適な別の工程をとることができ、そのような密封部材100の製造方法も本発明に含まれる。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態におけるフィルム状樹脂にコロナ処理行うコロナ処理装置400の一例を示す図である。コロナ処理装置400は、電極411及び412と、電源420と、コンベア430とを備える。
【0036】
電源420をオンさせると、電極411及び412に電圧が印加され、電極411及び412の間でコロナ放電が生じる。コンベア430は、フィルム状樹脂を速度Sで移動させる。コロナ放電の空間中をフィルム状樹脂に通過させることにより、フィルム状樹脂の表面に極性分子が生成され、表面改質が行われる。
【0037】
なお、(装置の出力×ワークのコンベア通し回数)/(コンベア速度×ワークとヘッドの間の距離)を表面改質処理の強さとする。本願出願人は、装置の出力を0.65kw、コンベア速度を0.6m/分、ワークとヘッドの間の距離を15mm〜20mm程度、ワークのコンベア通し回数を数回程度(例えば、2回)にしてフィルム状樹脂310としてPETフィルムを用いてフィルム状樹脂310にコロナ処理を行った。その結果、フィルム状樹脂310にシリコンゴムが強固に融着した。しかしながら、このコロナ処理の条件は一例であって、その他の条件下でコロナ処理を行ったコロナ処理を本発明の密封部材の製造方法から除外するものではない。
【0038】
本願出願人は、フィルム状樹脂にコロナ処理を施した場合と、フィルム状樹脂にコロナ処理を施さなかった場合とでフィルム状樹脂とシリコンゴムとの接着の度合いを比較するため、JIS K6854−3(T型接着剥離試験)及びJIS K6256−1(ゴムと布との接着試験)の両方を参考して剥離試験を行った。
【0039】
図5は、上記剥離試験の態様を示す図である。図5(a)は、上記剥離試験に用いた試験片510を示す平面図及び側面図である。試験片510においてフィルム状樹脂は、厚さが約0.1mm程度のPETフィルム511及び512を用いた。このPETフィルム511及び512の形状は、概ね長辺120mm、短辺15mmの長方形とした。また、シリコンゴム513は厚さを約1.8mm程度とし、概ね長辺80mm、短辺15mmの長方形とした。試験片510は、シリコンゴム513をPETフィルム511及び512により挟み込む態様で構成されている。そして、図5(a)に示すように、シリコンゴム513と、PETフィルム511及び512との接着部は80mm程度であり、非接着部は40mm程度とした。
【0040】
以上のような条件の試験片510を2つ用意した。そのうち1つは、シリコンゴム513と、PETフィルム511及び512との接着においてPETフィルム511及び512にコロナ処理を施して、上記説明した密封部材100の製造方法に習って製造したものである。これをコロナ処理有り試験片と呼ぶこととする。もう1つは、シリコンゴム513と、PETフィルム511及び512との接着においてPETフィルム511及び512にコロナ処理を施さずに、上記説明した密封部材100の製造方法に習って製造したものである。これをコロナ処理無し試験片と呼ぶこととする。
【0041】
上記剥離試験は、図5(b)に示すように、上記試験片510における非接着部のPETフィルム511の端を掴んで上矢印方向へ引っ張り、上記試験片510における非接着部のPETフィルム512の端を掴んで下矢印方向へ引っ張ることにより行った。そして、引っ張り速度を50mm/分とした。これをコロナ処理有り試験片、及びコロナ処理無し試験片のそれぞれに行った。PETフィルム511及び512それぞれの端を掴んでそれぞれ上下方向へ引っ張ると、PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着が剥がれて、PETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離Dは段々大きくなっていく。
【0042】
図6は、図5において説明した条件下で行った剥離試験の結果を示す図である。そのうち、図6(a)は、コロナ処理無し試験片に対して行った剥離試験の結果を示す図である。また、図6(b)は、コロナ処理有り試験片に対して行った剥離試験の結果を示す図である。また、横軸は、図5(b)におけるPETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離Dである。縦軸は、PETフィルム511及び512をそれぞれ上下方向へ引っ張る引っ張り荷重である。
【0043】
コロナ処理無し試験片に対する剥離試験では、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離していくと、距離D(PETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離)が大きくなるにしたがって、引っ張り荷重も段々大きくなっていっている。そして、距離D=20mm程度で約45N程度の引っ張り荷重が必要になっている。これを超えると、剥離に必要な引っ張り荷重は小さくなっていっている。全体的に見ると、剥離に必要な平均引っ張り荷重は約20N程度である。そして、図6(a)に示すように、ついには、距離D=160mm程度付近で、PETフィルム511の接着処理面からシリコンゴム513が完全に剥離してしまった。このことから、(PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着力<シリコンゴム513自体の破断必要力)の関係があると考えられる。このため、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離することはこれ以上できなくなった。
【0044】
一方、コロナ処理有り試験片に対する剥離試験では、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離していくと、距離D(PETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離)が大きくなるにしたがって、引っ張り荷重も段々大きくなっていっている。そして、距離D=30mm程度付近で約200N程度の引っ張り荷重が必要になっている。距離D=30mm程度を超えても、剥離に必要な引っ張り荷重は概ね約200N程度付近である。全体的に見ると、剥離に必要な平均引っ張り荷重は約195N程度である。そして、図6(b)に示すように、ついには、距離D=290mm程度付近で、シリコンゴム513自体が中央から裂けるような態様で全て破断してしまった。それでも、試験後のPETフィルム511及び512と、シリコンゴム513とは接着した状態を保っている。このことから、上記コロナ処理無し試験片の場合と違って(PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着力>シリコンゴム513自体の破断必要力)の関係があると考えられ、PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着力が著しく強固なものになったと言える。このため、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離することはこれ以上できなくなった。
【0045】
図6(a)及び図6(b)を比較すれば明らかなように、コロナ処理有り試験片においてPETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離する際に必要な引っ張り荷重は、コロナ処理無し試験片においてPETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離する際に必要な引っ張り荷重に比べてかなり大きな引っ張り荷重となっている。剥離に必要な平均引っ張り荷重の面から見ても、コロナ処理有り試験片の平均引っ張り荷重は、コロナ処理無し試験片の平均引っ張り荷重の約10倍程度になっており、差異が際立っている。
【0046】
以上の結果から評価するに、本発明における密封部材100の製造方法によれば、接着剤を用いなくてもPETフィルムとシリコンゴムとを強固に接着させた状態を作り出すことができ、これは従来にはないものである。
【0047】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 フィルム状樹脂部材
20 凸部
100 密封部材
310 フィルム状樹脂
400 コロナ処理装置
411 電極
420 電源
430 コンベア
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間を密封空間にする密封部材、及びその密封部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機器の電池収容部分は、電池蓋により自由に開閉させることができる機構となっているものが多い。このため、携帯機器の電池収容部分は水や埃等の異物が浸入する機会が多く、故障の要因となっている。このような問題を解決するため、従来、電池を収容した状態の電池室は、防水用ガスケットを備えたリアカバープレートにより覆われていた(例えば、特許文献1参照。)。電池室側の面に固定された防水用ガスケットは、電池室の周りに接触してその電池室を取り巻いて一周し、電池室への水の浸入を防止する役割を担っている。そして、リアカバープレートは、1枚の金属板の板金加工で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−110810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、リアカバープレートが1枚の金属板の板金加工で形成されていて剛性が強いため、携帯機器にわずかな凹凸があっても、厳密な密封性を担保できない。また、携帯機器の形状に曲面がある場合、従来の剛性が強いリアカバープレートでは取り付けが容易ではない。また、金属板を板金加工するため、製造工程が増え、コストもその分増える。
【0005】
そこで、本発明は、柔軟性があり、コストを低減させた密封部材、及びその密封部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の密封部材は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の密封部材において、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材は、少なくとも上記凸部が形成された面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の密封部材は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の密封部材の製造方法は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、上記表面改質を行った上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の密封部材の製造方法は、所定の形状に形成されたフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、上記フィルム状樹脂部材に対してアニール処理を行うアニール処理工程と、上記アニール処理を行った上記フィルム状樹脂部材を上記所定の形状に切断する切断工程と、上記所定の形状にされた上記フィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、上記表面改質を行った上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の密封部材の製造方法は、所定の形状のフィルム状樹脂部材と、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層とを具備する密封部材の製造方法であって、上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、上記表面改質を行った上記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムによりシリコンゴム層が形成されるよう成形を行う成形工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密封部材に柔軟性があるため、ワークへの取り付けが容易である。また、密封部材をフィルム状樹脂により形成させているため、ワークに併せた形状対応が容易になり、気密性を容易に向上させることができる。また、密封部材をフィルム状樹脂により形成させているため、金属板よりも薄型化することが容易で、軽量化、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態における密封部材100を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における密封部材100の使用例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における密封部材100の製造の流れを示すチャート図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるフィルム状樹脂310にコロナ処理行うコロナ処理装置400の一例を示す図である。
【図5】剥離試験の態様を示す図である。
【図6】図5において説明した条件下で行った剥離試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における密封部材100を示す図である。図1(a)は、本発明の実施の形態における密封部材100の斜視図である。密封部材100は、フィルム状樹脂部材10と、凸部20とを備える。
【0016】
フィルム状樹脂部材10は、所定形状をしており、この形状は密封部材100を取り付ける場所により様々な形状になる。また、フィルム状樹脂部材10として、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムが想定されるが、これに限るものではなく、その他の材質のフィルム状樹脂であってもよい。
【0017】
凸部20は、任意の面に圧着させて、密封空間を形成する際に側壁の一部を成すものであり、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周させた凸形状のシリコンゴムにより形成させることが想定されるが、これに限るものではなく、その他の材質であってもよい。図1(b)は、図1(a)における密封部材100のA−A断面図である。凸部20は、図1(b)に示すようにフィルム状樹脂部材10の外縁に凸形状のシリコンゴムとして設けられている。
【0018】
なお、本発明においてフィルム状樹脂部材10の外縁とは、図1(b)に示すようにフィルム状樹脂部材10の最外縁でなくてもよく、フィルム状樹脂部材10の最外縁から所定距離内側にずらした位置もフィルム状樹脂部材10の外縁と看做す。
【0019】
また、本発明の密封部材は、以上説明した密封部材100以外にも様々な態様のものが想定される。その一つとして、少なくともフィルム状樹脂部材10の凸部20が形成された面全体に(図示しない)シリコンゴム層を形成させたものが挙げられる。この態様の密封部材は、フィルム状樹脂部材10の少なくとも一方の面全体がシリコンゴムにより薄く(例えば、凸部20の厚さよりも薄く)コーティングされた状態になり、さらにフィルム状樹脂部材10の外縁に凸部20を有する態様になる。
【0020】
また、別の態様として、フィルム状樹脂部材10の外縁に設けられた凸部20と同様の厚さの(図示しない)シリコンゴム層を、少なくともフィルム状樹脂部材10の一方の表面全体に拡げたものが挙げられる。この態様の密封部材におけるシリコンゴム層は、上記態様のように薄くコーティングされた態様とは異なり、フィルム状樹脂部材10の一方の表面全体に所定の厚さを有して拡がった態様になる。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態における密封部材100の使用例を示す図である。図2(a)は、密封部材100を携帯電話200に使用した様子を示す図である。密封部材100は、図2(a)に示す態様で携帯電話200の電池蓋210の内側に取り付けられる。
【0022】
図2(b)は、図2(a)における携帯電話200のB−B断面図である。上記の通り密封部材100は、電池蓋210の内側面に取り付けられており、電池230と対向した状態になっている。そして、電池蓋210を携帯電話200に装着すると、フィルム状樹脂部材10の外縁を一周する凸部20は、携帯電話200における電池保持部240の周囲を一周する凹部220の底面221に圧着される。これにより、凸部20は、外部から入り込んでくる水や埃を遮断する壁となり、電池保持部240を収容する空間を密封状態にする。
【0023】
以上が本発明の実施の形態における密封部材100の使用例であるが、密封部材100を電池蓋210の内側面に取り付ける際、フィルム状樹脂部材10と電池蓋210の内側面とを完全に密着させる必要がある。この点においてフィルム状樹脂部材10が柔軟性あるフィルム状樹脂により形成されているため、フィルム状樹脂部材10と電池蓋210の内側面とを完全に密着させた状態にすることが容易である。また、フィルム状樹脂部材10はフィルム状樹脂であるため追随性に優れ、電池蓋210の内側面への取り付けが容易である。また、従来技術である板金加工で形成された金属板と違って、密封部材100のように基材をフィルム状樹脂により形成させると、基材を上記金属板よりも薄型化することが容易であり、さらに上記金属板を用いた場合よりもコストを低減させることができる。以上は、携帯電話200に密封部材100を適用した場合についての説明であるが、携帯電話200以外の一般のワーク(密封部材100における被取付物)に対しても上記と同様に説明することができる。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態における密封部材100の製造の流れを示すチャート図である。最初に、フィルム状樹脂に対する処理について説明する。まず、裁断前のフィルム状樹脂にアニール処理を行う(ステップS911)。なお、アニール処理とは、材料を所定の温度の下、一定時間保持させることにより、残留応力を緩和させるものである。アニール処理に要する時間、温度は、用いられる樹脂等により様々な時間、温度が選択される。
【0025】
次に、アニール処理を行ったフィルム状樹脂を適当な大きさに裁断する(ステップS912)。なお、このステップS912における裁断は、ステップS911の前に行ってもよい。次に、フィルム状樹脂を洗浄して乾燥させる(ステップS913)。フィルム状樹脂の洗浄には、例えばIPA(イソプロピルアルコール)を用いる。そして、フィルム状樹脂をIPA(イソプロピルアルコール)に30分程度浸した後に乾燥させる。これにより、フィルム状樹脂の表面の油等の汚れが除去される。
【0026】
次に、フィルム状樹脂に対して表面改質処理を行う(ステップS914)。なお、表面改質を行う理由は、フィルム状樹脂の表面上で、他の液状体との親和性を向上させる事により、相手物(例えば、シリコンゴム)との接着力を向上・安定化させるためである。本発明において表面改質処理として、例えばコロナ処理、エアープラズマ処理、フレーム処理等が挙げられるが、これに限るものではなく、その他の表面改質処理も可能な限り本発明に含まれる。
【0027】
コロナ処理とは、処理基材表面周辺に高電圧・高周波を掛けてコロナ放電を発生させる処理を言う。コロナ放電時の高エネルギーにより、処理基材表面に極性分子を生成させる。その作用及び放電による物理的作用(荒面化)の相乗効果にて、処理基材は表面改質される。なお、極性分子として、−C=O、−COOH、−OH、−H3O、−CN等の官能基が想定されるが、これに限るものではない。
【0028】
エアープラズマ処理とは、ヘッドの電極間に高電圧・高周波を掛けて、オゾン等のイオン化されたガス(プラズマ)を発生させ、このガス(プラズマ)をエアーで処理基材表面に吹き付ける処理を言う。エアープラズマ処理によれば、ガス(プラズマ)を処理基材表面にエアーで吹き付けて処理基材表面に作用させ、処理基材表面に極性分子を生成させることにより処理基材は表面改質される。なお、一般的に、エアープラズマ処理をコロナ処理と言うこともある。
【0029】
フレーム処理とは、酸素を混合させたプロパンガス等の可燃性ガスを処理基材表面で燃焼させる処理を言う。フレーム処理によれば、処理基材表面で燃焼させて酸化反応を起こさせ、処理基材表面に極性分子を生成させることにより処理基材は表面改質される。なお、上記の可燃性ガスに酸化ケイ素系物質を混合させて燃焼時にそれを処理基材表面に付与させるようにしてもよい。
【0030】
一方で、硬化剤を配合したシリコンゴムを準備する(ステップS915)。そして、表面改質させたフィルム状樹脂を金型にセットして、その金型にステップS915を経たシリコンゴムを射出して射出成形により一体成形を行う(ステップS916)。その結果、成形体300が生成される。成形体300は、フィルム状樹脂310に複数の凸部20が融着した状態にある。一般的に、フィルム状樹脂とシリコンゴムとは、接着性が悪く、フィルム状樹脂にシリコンゴムを融着させても簡単に剥がせてしまう。しかしながら、本発明のようにフィルム状樹脂に対して表面改質処理を行うと、フィルム状樹脂とシリコンゴムとの接着性が強固になり、フィルム状樹脂にシリコンゴムを融着させても簡単に剥がせなくなる(図5、図6参照)。なお、フィルム状樹脂310にシリコンゴムを接着させる場合、両者の接着性をさらに強固なものとするのに、所定の接着剤を用いてもよい。この場合も、本発明の範囲に含まれる。
【0031】
また、図1で説明したフィルム状樹脂部材10の少なくとも一方の面全体をシリコンゴムにより薄くコーティングし、かつフィルム状樹脂部材10の外縁に凸部20を有する態様の別態様密封部材を製造する場合、ステップS916における一体成形は、射出・トランスファ成形ではなく、圧縮成形により行うようにしてもよい。この場合、フィルム状樹脂部材10の一方の面に所定量のシリコンゴムをセットして、圧縮成形する。圧縮成形の場合、射出・トランスファ成形に比べて、無駄になるシリコンゴムの量を少なくすることができるため、製造コストの低減に資する。
【0032】
さらに、一般的に、シリコンゴムを成形した後には、シリコンゴムに所定のコーティングを施すことがよく行われている。密封部材100に対してステップS916の後に、凸部20を形成するシリコンゴムに所定のコーティングを施す場合、フィルム状樹脂部材10の表面にそのコーティング剤が塗布されないように、フィルム状樹脂部材10の表面にマスキングをする。一方、別態様密封部材においては、ステップS916の後に、凸部20を形成するシリコンゴムに所定のコーティングを施す場合、凸部20が形成された面全体にシリコンゴムが薄く(例えば、凸部20の厚さよりも薄く)コーティングされているため、フィルム状樹脂部材10の表面にマスキングしなくてもよい。薄くコーティングされたシリコンゴムにコーティング剤が塗布されても問題ないからである。この場合、別態様密封部材の製造工程においてこのマスキングする工程、及びマスキングを取り除く工程を省けるため、この点からも製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
その後、成形体300に対して後硬化処理(POST CURE)を行う(ステップS917)。そして、最終処理として、例えば成形体300を所望の大きさに裁断して、バリ等をカットした後に密封部材100が完成する(ステップS918)。
【0034】
なお、以上説明した密封部材100の製造方法は一例であって、ステップS914、ステップS916以外は、適宜密封部材100を製造する上で最適な別の工程をとることができ、そのような密封部材100の製造方法も本発明に含まれる。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態におけるフィルム状樹脂にコロナ処理行うコロナ処理装置400の一例を示す図である。コロナ処理装置400は、電極411及び412と、電源420と、コンベア430とを備える。
【0036】
電源420をオンさせると、電極411及び412に電圧が印加され、電極411及び412の間でコロナ放電が生じる。コンベア430は、フィルム状樹脂を速度Sで移動させる。コロナ放電の空間中をフィルム状樹脂に通過させることにより、フィルム状樹脂の表面に極性分子が生成され、表面改質が行われる。
【0037】
なお、(装置の出力×ワークのコンベア通し回数)/(コンベア速度×ワークとヘッドの間の距離)を表面改質処理の強さとする。本願出願人は、装置の出力を0.65kw、コンベア速度を0.6m/分、ワークとヘッドの間の距離を15mm〜20mm程度、ワークのコンベア通し回数を数回程度(例えば、2回)にしてフィルム状樹脂310としてPETフィルムを用いてフィルム状樹脂310にコロナ処理を行った。その結果、フィルム状樹脂310にシリコンゴムが強固に融着した。しかしながら、このコロナ処理の条件は一例であって、その他の条件下でコロナ処理を行ったコロナ処理を本発明の密封部材の製造方法から除外するものではない。
【0038】
本願出願人は、フィルム状樹脂にコロナ処理を施した場合と、フィルム状樹脂にコロナ処理を施さなかった場合とでフィルム状樹脂とシリコンゴムとの接着の度合いを比較するため、JIS K6854−3(T型接着剥離試験)及びJIS K6256−1(ゴムと布との接着試験)の両方を参考して剥離試験を行った。
【0039】
図5は、上記剥離試験の態様を示す図である。図5(a)は、上記剥離試験に用いた試験片510を示す平面図及び側面図である。試験片510においてフィルム状樹脂は、厚さが約0.1mm程度のPETフィルム511及び512を用いた。このPETフィルム511及び512の形状は、概ね長辺120mm、短辺15mmの長方形とした。また、シリコンゴム513は厚さを約1.8mm程度とし、概ね長辺80mm、短辺15mmの長方形とした。試験片510は、シリコンゴム513をPETフィルム511及び512により挟み込む態様で構成されている。そして、図5(a)に示すように、シリコンゴム513と、PETフィルム511及び512との接着部は80mm程度であり、非接着部は40mm程度とした。
【0040】
以上のような条件の試験片510を2つ用意した。そのうち1つは、シリコンゴム513と、PETフィルム511及び512との接着においてPETフィルム511及び512にコロナ処理を施して、上記説明した密封部材100の製造方法に習って製造したものである。これをコロナ処理有り試験片と呼ぶこととする。もう1つは、シリコンゴム513と、PETフィルム511及び512との接着においてPETフィルム511及び512にコロナ処理を施さずに、上記説明した密封部材100の製造方法に習って製造したものである。これをコロナ処理無し試験片と呼ぶこととする。
【0041】
上記剥離試験は、図5(b)に示すように、上記試験片510における非接着部のPETフィルム511の端を掴んで上矢印方向へ引っ張り、上記試験片510における非接着部のPETフィルム512の端を掴んで下矢印方向へ引っ張ることにより行った。そして、引っ張り速度を50mm/分とした。これをコロナ処理有り試験片、及びコロナ処理無し試験片のそれぞれに行った。PETフィルム511及び512それぞれの端を掴んでそれぞれ上下方向へ引っ張ると、PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着が剥がれて、PETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離Dは段々大きくなっていく。
【0042】
図6は、図5において説明した条件下で行った剥離試験の結果を示す図である。そのうち、図6(a)は、コロナ処理無し試験片に対して行った剥離試験の結果を示す図である。また、図6(b)は、コロナ処理有り試験片に対して行った剥離試験の結果を示す図である。また、横軸は、図5(b)におけるPETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離Dである。縦軸は、PETフィルム511及び512をそれぞれ上下方向へ引っ張る引っ張り荷重である。
【0043】
コロナ処理無し試験片に対する剥離試験では、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離していくと、距離D(PETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離)が大きくなるにしたがって、引っ張り荷重も段々大きくなっていっている。そして、距離D=20mm程度で約45N程度の引っ張り荷重が必要になっている。これを超えると、剥離に必要な引っ張り荷重は小さくなっていっている。全体的に見ると、剥離に必要な平均引っ張り荷重は約20N程度である。そして、図6(a)に示すように、ついには、距離D=160mm程度付近で、PETフィルム511の接着処理面からシリコンゴム513が完全に剥離してしまった。このことから、(PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着力<シリコンゴム513自体の破断必要力)の関係があると考えられる。このため、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離することはこれ以上できなくなった。
【0044】
一方、コロナ処理有り試験片に対する剥離試験では、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離していくと、距離D(PETフィルム511の端からPETフィルム512の端までの距離)が大きくなるにしたがって、引っ張り荷重も段々大きくなっていっている。そして、距離D=30mm程度付近で約200N程度の引っ張り荷重が必要になっている。距離D=30mm程度を超えても、剥離に必要な引っ張り荷重は概ね約200N程度付近である。全体的に見ると、剥離に必要な平均引っ張り荷重は約195N程度である。そして、図6(b)に示すように、ついには、距離D=290mm程度付近で、シリコンゴム513自体が中央から裂けるような態様で全て破断してしまった。それでも、試験後のPETフィルム511及び512と、シリコンゴム513とは接着した状態を保っている。このことから、上記コロナ処理無し試験片の場合と違って(PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着力>シリコンゴム513自体の破断必要力)の関係があると考えられ、PETフィルム511及び512と、シリコンゴム513との接着力が著しく強固なものになったと言える。このため、PETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離することはこれ以上できなくなった。
【0045】
図6(a)及び図6(b)を比較すれば明らかなように、コロナ処理有り試験片においてPETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離する際に必要な引っ張り荷重は、コロナ処理無し試験片においてPETフィルム511及び512をシリコンゴム513から剥離する際に必要な引っ張り荷重に比べてかなり大きな引っ張り荷重となっている。剥離に必要な平均引っ張り荷重の面から見ても、コロナ処理有り試験片の平均引っ張り荷重は、コロナ処理無し試験片の平均引っ張り荷重の約10倍程度になっており、差異が際立っている。
【0046】
以上の結果から評価するに、本発明における密封部材100の製造方法によれば、接着剤を用いなくてもPETフィルムとシリコンゴムとを強固に接着させた状態を作り出すことができ、これは従来にはないものである。
【0047】
なお、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 フィルム状樹脂部材
20 凸部
100 密封部材
310 フィルム状樹脂
400 コロナ処理装置
411 電極
420 電源
430 コンベア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、
シリコンゴムにより形成され、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部と
を備えたことを特徴とする密封部材。
【請求項2】
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材は、少なくとも前記凸部が形成された面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層を有することを特徴とする請求項1に記載の密封部材。
【請求項3】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層と
を備えたことを特徴とする密封部材。
【請求項4】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、
前記表面改質を行った前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程と
を備えたことを特徴とする密封部材の製造方法。
【請求項5】
所定の形状に形成されたフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、
前記フィルム状樹脂部材に対してアニール処理を行うアニール処理工程と、
前記アニール処理を行った前記フィルム状樹脂部材を前記所定の形状に切断する切断工程と、
前記所定の形状にされた前記フィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、
前記表面改質を行った前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程と
を備えたことを特徴とする密封部材の製造方法。
【請求項6】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層とを具備する密封部材の製造方法であって、
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、
前記表面改質を行った前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムによりシリコンゴム層が形成されるよう成形を行う成形工程と
を備えたことを特徴とする密封部材の製造方法。
【請求項1】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、
シリコンゴムにより形成され、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部と
を備えたことを特徴とする密封部材。
【請求項2】
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材は、少なくとも前記凸部が形成された面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層を有することを特徴とする請求項1に記載の密封部材。
【請求項3】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層と
を備えたことを特徴とする密封部材。
【請求項4】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、
前記表面改質を行った前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程と
を備えたことを特徴とする密封部材の製造方法。
【請求項5】
所定の形状に形成されたフィルム状樹脂部材と、シリコンゴムにより形成され、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周させた凸形状の凸部とを具備する密封部材の製造方法であって、
前記フィルム状樹脂部材に対してアニール処理を行うアニール処理工程と、
前記アニール処理を行った前記フィルム状樹脂部材を前記所定の形状に切断する切断工程と、
前記所定の形状にされた前記フィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、
前記表面改質を行った前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の外縁を一周する凸形状の凸部がシリコンゴムにより形成されるよう成形を行う成形工程と
を備えたことを特徴とする密封部材の製造方法。
【請求項6】
所定の形状のフィルム状樹脂部材と、前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムで形成されたシリコンゴム層とを具備する密封部材の製造方法であって、
前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の表面改質を行う表面改質工程と、
前記表面改質を行った前記所定の形状のフィルム状樹脂部材の少なくとも一方の表面にシリコンゴムによりシリコンゴム層が形成されるよう成形を行う成形工程と
を備えたことを特徴とする密封部材の製造方法。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【公開番号】特開2012−21566(P2012−21566A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159243(P2010−159243)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(510193957)トーアテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(510193957)トーアテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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