説明

密封部材

【課題】ハウジング側に溝加工を施す必要が無いことから、ケースの小型化及び薄肉化が図られると共に、ガスケットの取り扱い性が良好で、安定したシール性能が維持できる密封部材を提供できることを目的とするものである。
【解決手段】一方のハウジング部材と他方のハウジング部材との間に介在して、前記両部材間の間隙を密封する密封部材において、
前記密封部材が、断面略H形状の樹脂材製保持部材と、前記保持部材の両溝部に一体的設けた一対のゴム材製シール部材とより構成され、前記両シール部材には、前記両溝部より突出したリップ部が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の密封部材に係り、更に詳しくは、携帯電話端末等の電子機器の内部へ水滴が浸入しないようにシールする構造に関するものである。
従って、本発明の密封部材は、防水電子機器のシール構造として好適に利用される。
【背景技術】
【0002】
図6に示す様に、例えば携帯電話端末においては、互いに嵌合するハウジング100、200を組み合わせて、ケースが形成されており、このケース内に水滴が浸入しないように、ハウジング100、200間には、ゴム単体のOリング等よりなるガスケット300が介装されている(特許文献1)。
【0003】
また、ガスケット300は、その圧縮量(潰し代)を一定に保つべく、ハウジング200に設けた環状溝600内に配置される。
このことにより、ハウジング100、200相互が当接することにより、それ以上過大にガスケット300が圧縮される事は無い。
そして、近年、ケースの小型化及び薄肉化が要求されているため、ここに使用されるガスケット300についても、ハウジング100,200に対してできるだけ負荷をかけないよう、小断面化および低硬度材化が要求されている。
【0004】
しかしながら、このようにガスケット300を小断面化及び低硬度材化を進めると、ガスケット300自体の剛性が非常に小さく成らざるを得ない。
この結果、ガスケット300のハンドリング性(取り扱い作業性)が低下することから、
ガスケット300の組付作業の作業効率が悪化する問題を招来した。
【0005】
この問題を解決するには、図7に示すように、ゴム単体ガスケット300の剛性を高めて、ハンドリング性(取り扱い作業性)を向上させる試みがなされた。
すなわち、ガスケット300に樹脂フィルム500を全周に亙って一体化することが試みられた。
このことにより、樹脂フィルム500は、ゴム単体のガスケット300よりも剛性が高いことから、樹脂フィルム500をゴム単体のガスケット300に一体化することによりガスケット300が変形しにくくなり、ガスケット300のハンドリング性(取り扱い作業性)が向上した。
【0006】
しかしながら、このようなガスケット300も、図6に示す様な、ハウジング200に設けた環状溝600内に配置して使用する必要があった。
このため、ハウジング200に環状溝600を形成する為の費用が嵩むばかりでなく、ハウジング200が肉厚にならざるを得ず、ケースの小型化及び薄肉化を阻害する要因の一つとなっていた。
【0007】
この対策の一つとして、図8に示す様に、ゴム単体ガスケット300が接着剤層700を介して、ハウジング100側に固着され、平坦面の(溝を設けない)ハウジング200との間で挟持する態様が提案された(特許文献2)。
しかし、ハウジング100,200間の圧縮量(間隙)がばらつく為、ガスケット300の安定したシール性能が得られない問題を惹起した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−249139号公報
【特許文献2】特開2008−248899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ハウジング側に溝加工を施す必要が無いことから、ケースの小型化及び薄肉化が図られると共に、ガスケットの取り扱い性が良好で、安定したシール性能が維持できる密封部材を提供できることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明にあっては、一方のハウジング部材と他方のハウジング部材との間に介在して、前記両部材間の間隙を密封する密封部材において、
前記密封部材が、断面略H形状の樹脂材製保持部材と、前記保持部材の両溝部に一体的設けた一対のゴム材製シール部材とより構成され、前記両シール部材には、前記両溝部より突出したリップ部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明の密封部材によれば、ハウジング側に溝加工を施す必要が無いことから、ケースの小型化及び薄肉化が図られると共に、ガスケットの取り扱い性が良好で、安定したシール性能が維持出来る。
また、請求項2記載の発明の密封部材によれば、接着剤を用いる事無く、シール部材と保持部材とを一体化することが出来ると共に、成形が容易である。
【0012】
更に、請求項3記載の発明の密封部材によれば、ハウジング部材と保持部材との間で、シール部材が噛み込まれることによる損傷を防止すると共に、安定したシール面圧を維持出来る。
更に、請求項4記載の発明の密封部材によれば、防水携帯電話用として最適である。
【0013】
更に、請求項5記載の発明の密封部材によれば、ハウジング側に溝加工を施こさないタイプに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る密封部材の断面図。
【図2】図1で使用した樹脂材製保持部材の部分斜視図。
【図3】図1の密封部材がハウジング部材間に挟持された状態図。
【図4】図1の密封部材が溝を設けたハウジング部材間に挟持された状態図。
【図5】図1の密封部材が金型内で成形されている状態図。
【図6】従来技術に係る密封部材が、ハウジング部材間に挟持された状態図。
【図7】更なる他の従来技術に係る密封部材の断面図。
【図8】他の従来技術に係る密封部材がハウジング部材間に挟持された状態図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る密封部材は、図1乃至図3に示す様に、一方のハウジング部材1と他方のハウジング部材2との間に介在して、この両部材1、2間の間隙を密封する密封部材3であって、この密封部材3が、断面略H形状の樹脂材製保持部材31と、この保持部材31の両溝部311a、311bに一体的設けた一対のゴム材製シール部材32a、32bとより構成され、両シール部材32a、32bには、両溝部311a、311bより突出したリップ部321a、321bが形成された構成としている。
【0016】
また、断面略H形状の樹脂材製保持部材31は、図2に示す様に、その内周側筒部313と外周側筒部314、及びこの内周側筒部313と外周側筒部314とを連結している連結部312とより構成されている。
この保持部材31は、通常略矩形の環状形状を呈しており、平面形状に限らず、使用用途により3次元の立体形状のものとしても使用できる。
そして、この連結部312には、貫通孔3121が複数個等配に形成されている。
【0017】
また、シール部材32a、32bは、この貫通孔3121を介して一体化されている。
更に、リップ部321a、321bが、両溝部311a、311bより突出している長さXは、密封部材3がハウジング部材1、2間に挟持された状態で、最適な密封面圧が得られる様設計されている。
シール部材32a、32bの材質としては、ゴム状弾性を備えたゴム材であり、ニトリルゴム、アクリルゴム、EPDM、CR、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられるが、液状シリコーンゴム、液状フッ素ゴム等の自己接着性ゴムが好ましい。
【0018】
また、樹脂材製保持部材31の材質としては、弾性を備えた樹脂材であり、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PSF(ポリスルホン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PMMA(アクリル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PA(ナイロン/ポリアミド)、PC(ポリカーボネイト)、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、LCP(液晶ポリマー)、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0019】
更に、図3は、図1の密封部材3がハウジング部材1、2間に挟持された状態図であるが、保持部材31とシール部材32a、32bとの間に、シール部材32a、32bが、両ハウジング部材1、2間に圧接挟持された際のリップ部321a、321bの逃げ部4が設けられている。
このことにより、ハウジング部材1、2と保持部材31との間で、シール部材32a、32bが噛み込まれることによる損傷を防止すると共に、安定したシール面圧を維持出来る。
【0020】
更に、密封部材3は、断面略H形状の樹脂材製保持部材31を介して、ハウジング部材1、2間に、しっかりと安定した状態で挟持されるため、密封部材3が捩れて装着される危険性が無い。
また、この種密封部材3は、防水携帯電話に好適に用いる事が出来、その場合、一方のハウジング部材1が、防水携帯電話のケースであり、他方のハウジング部材2が、携帯電話の蓋となる。
【0021】
更に、この種密封部材3は、図3に示す様に、両ハウジング部材1、2の平坦な両面間に挟持され態様としているが、必ずしも両ハウジング部材1、2が平坦である必要はなく、図4に示す様に、他方のハウジング部材2に環状の溝6を設け、この溝6内に密封部材3を配置する形で使用する事も可能である。
【0022】
図5は、この種密封部材3が、金型内で成形されている状態図であるが、上金型81及び下金型82にそれぞれ設けた環状突起811、812、821、822が樹脂材製保持部材31に当接して、シール部材32a、32bのゴム材料がバリとして流出する事を阻止している為、バリの発生を抑える事が出来る。
特に、保持部材31が樹脂材製であることが、上金型81及び下金型82との良好な密接状態を維持できる為、バリの発生を抑止できる要因となっている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る密封部材は、電子機器の防水、特に防水携帯電話に使用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 一方のハウジング部材
2 他方のハウジング部材
3 密封部材
4 逃げ部
31 樹脂材製保持部材
32a、32bシール部材
311a、311b溝部
312連結部
313内周側筒部
314外周側筒部
321a、321bリップ部
3121貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のハウジング部材(1)と他方のハウジング部材(2)との間に介在して、前記両部材(1)、(2)間の間隙を密封する密封部材(3)において、
前記密封部材(3)が、断面略H形状の樹脂材製保持部材(31)と、前記保持部材(31)の両溝部(311a)、(311b)に一体的設けた一対のゴム材製シール部材(32a)、(32b)とより構成され、前記両シール部材(32a)、(32b)には、前記両溝部(311a)、(311b)より突出したリップ部(321a)、(321b)が形成されていることを特徴とする密封部材。
【請求項2】
前記両シール部材(32a)、(32b)が、前記保持部材(31)の連結部(312)に設けた貫通孔(3121)を介して一体化されていることを特徴とする請求項1記載の密封部材。
【請求項3】
前記保持部材(31)と前記シール部材(32a)、(32b)との間に、前記シール部材(32a)、(32b)が、前記両ハウジング部材(1)、(2)間に圧接挟持された際の前記リップ部(321a)、(321b)の逃げ部(4)が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の密封部材。
【請求項4】
前記一方のハウジング部材(1)が、防水携帯電話のケースであり、前記他方のハウジング部材(2)が、携帯電話の蓋であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の密封部材。
【請求項5】
前記密封部材(3)が、前記両ハウジング部材(1)、(2)の平坦な両面間に挟持されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の密封部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−190892(P2011−190892A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58591(P2010−58591)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】