説明

密度測定装置

【課題】フロートの変位を検出する弾性部材の変形を防止すること。
【解決手段】ステムに案内されて燃料油の密度に対応して浮沈する第一のフロート7と、前記ステムに案内されて水の液位に対応して移動する第二のフロート8と、第一と第二のフロート7、8の間に位置し、第一のフロート7の位置に対応して伸縮する弾性部材9と、前記弾性部材の伸縮を検出する手段とを備え、第一と第二のフロート7、8とのそれぞれの相対向する端部に、弾性部材9の最大収縮時の全長程度の収容部材71、81が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油設備の燃料貯蔵容器の燃料等の密度を検出することができる液面測定装置に付属する密度測定機能、特にフロートと弾性部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
給油設備の燃料貯蔵容器の燃料の密度を検出する装置は、例えば特許文献1に見られるように駆動体と、この駆動体に係止し、自身の弾性変位が駆動体の駆動力を示す尺度であるバネと、例えば特許文献2に示されたようなバネの弾性変位を取得するための磁歪位置計測システムとより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第1881316号公報
【特許文献2】特許第3307610号公報
【特許文献2】特開2010-217082公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、密度測定のためだけにマグネットを有するストッパを余分に必要とするため構造が複雑になるという問題がある。
このような問題を解消するため、出願人は特願2010−136930に示したような容器の底部に存在する水の深さに対応して移動する水フロートを磁歪線に摺動自在に配設し、一端に設けられた発信用スイッチにより前記磁歪線の他端に向けて電気信号を発信し、水フロートに設けられたマグネットとの磁気的に相互作用により生じる信号の到達時間を計測する磁歪式液面計測装置において、液の密度に対応して浮沈し、かつ磁歪線と磁気的に相互作用する密度フロートを水フロートの上部に弾性部材により連結して配置した密度測定装置を提案した。
【0005】
これによれば既存の磁歪線式液面計の構造を利用して簡単な構造の密度度測定機能を有する液面計測装置を提供できるものの、フロートと弾性部材との結合構造が明確に規定されていないため、タンクへの注油に伴う激しい液面の変化や、液面計測装置の運搬時に構成部品に過剰な力が作用してフロート間に配置された弾性部材に塑性変形を生じさせるという不都合が見られた。
【0006】
また、複数のフロートが弾性部材を介して同一軸上に上下関係となるように配置されているため、フロート間にオフセットが生じ、フロート間の最小距離に限界があり、計測可能な最小値に限界があった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、フロートと弾性部材との接触構造を改良して弾性部材の変形を防止することである。
また本発明の他の目的は、計測可能な最小値を可及的に最小化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために請求項1の発明は、ステムに案内されて燃料油の密度に対応して浮沈する第一のフロートと、前記ステムに案内されて水の液位に対応して移動する第二のフロートと、第一と第二のフロートの間に位置し、前記第一のフロートの位置に対応して伸縮する弾性部材と、前記弾性部材の伸縮を検出する手段とを備え、前記第一と第二のフロートとのそれぞれの相対向する端部に、前記弾性部材の最大収縮時の全長程度の収容部材が設けられている。
【0009】
請求項2の発明は、前記収容部材の一方がフロートの本体に収まるように形成されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば収容部材により弾性部材が保護される。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて第一と第二のフロートとの最小距離を、一方の収容部材の長さだけ短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例を示すものである。
【図2】図(A)(B)(C)は、それぞれ本発明の第一の実施例を2つのフロートが密着している状態で示す上面図、及び断面図、斜視図である。
【図3】図(A)(B)は、それぞれ本発明のフロート構造の第一の実施例を2つのフロートが離間している状態で示す断面図と斜視図である。
【図4】図(A)(B)は、それぞれ本発明の第二の実施例を2つのフロートが密着している状態で示す断面図、及び斜視図である。
【図5】図(A)(B)は、それぞれ本発明のフロート構造の第二の実施例を2つのフロートが離間している状態で示す断面図と斜視図である。
【図6】図(A)(B)は、それぞれ本発明のフロート構造の第三の実施例を示す断面図と斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の一実施例を示すものであって、地下タンク1には地上に設けられたピットとの間にライザパイプ3が接続されていて、本発明が特徴とする液面検出装置4がタンク1に設置されている。
【0014】
液面検出装置4は、駆動手段を収容したヘッド部10と、磁歪線や検出部の収容体を兼ねる管により構成されたステム5と、貯油領域に位置しステム5に摺動可能に挿入された油面検出用フロート6で構成されている。
【0015】
ステム5は、収容している磁歪線の張力や、外力に抗することができる程度の剛性を備えた非磁性体金属、この実施例では不錆鋼のパイプにより構成されている。なお、符号11はデータ処理部を示す。
【0016】
このように構成されたシステムにおけるフロート6の変位(位置)は、特許文献3の発明に見られるように、ステム内の磁歪線と圧電素子、及びフロートのマグネットとを相互作用させるように配置し、先端側からコイルにパルス信号を供給すると、磁歪線、圧電素子、及びマグネットとの相互作用により信号が発生し、この信号の到達時間から計測できる。
【0017】
本発明が特徴とする密度フロート7は、水検出用フロート8と上下関係となるように弾性部材9を介挿した状態でステム5に摺動自在に配置されている。これら2つのフロート7,8には油面検出用フロート6と同様にステム内の磁歪線との相互作用によりその位置を検出するための位置検出用の図示しないマグネットがそれぞれ設けられている。
【0018】
この実施例において、密度フロート7は、油液の密度に対応し浮力が作用するから水検出用フロート8との間の弾性体9に相応の張力、押圧力を印加するから、両フロート間の距離Lが油液の密度に対応して変化する。この距離Lは、水検出用フロート8及び密度フロート7のそれぞれのマグネットに到達する磁歪信号の時間差として検出することができる。
【0019】
なお、水フロート8はタンクに水が浸入した時にその水位に応じて上昇移動する。この移動量は、水フロートに設けられているマグネットにより磁歪信号として検出される。
【0020】
図2及び図3は、それぞれ密度フロート、水検出用フロート及び弾性部材の相互の構造を示すものであって、それぞれのフロートは、水には浮き、また燃料油には沈殿する程度の密度、比重に調整された筒状体として構成されており、それぞれが相対向する端部には、ステム5が貫通可能な内径を有するコイルばねからなる弾性部材9の縮小時の長さの1/2程度の筒状の収容部材71、81が取り付けられている。
なお、この実施例では各フロートにステム内の磁歪線、圧電素子と相互作用するマグネットMが装着されている。
【0021】
これら収容部材71、81は、それぞれ非対向側を各フロートのそれぞれの相対向側に嵌合して固定され、また対向する側の先端は対向する側が広くなるようにテーパ部72、82が設けられている。なお、図中符号7a、8aは、それぞれステム5の貫通穴を示す。
【0022】
この実施例によれば水検出用フロート8が下方となり、弾性部材9を介装するように密度フロート7をステム5に装着すると、弾性部材9は、その両端の外周が各フロート7、8の収容部材71,81の先端のテーパ72、82にガイドされて、各フロートの収容部材71、81にスムースに進入する。
【0023】
今状態で、液位の急激な変動や、輸送時の衝撃で各フロートがステム上を激しく摺動しても、それぞれのフロートの収容部材7,8の相対向する先端が衝突して少なくとも弾性部材9の収縮時程度の空間が確保されるから、弾性部材9が座屈するようなことはなく永久変形することがない。
【0024】
また、水の浸入や密度の変化により各フロート7、8が上下に移動する際にも弾性部材9は、その外周を各フロートの収容部材71、81のテーパ72、82にガイドされるため、各フロートの収容部材71、81にスムースに収容され、フロート7、8が燃料油の密度や侵入した水液位に正確に追従する。
【0025】
図4、図5は本発明の他の実施例を示すもので、この実施例においては前述の実施例の一方のフロート、この実施例においては密度フロート7の収容部材71’を、フロート7の下部の円筒状の凹部7bに埋め込んだものである。
【0026】
そしてこの実施例においては各収容部材71’、81は、奥側に弾性部材を固定する複数の突起またはリブなどからなる弾性部材受け73,83が形成されており、弾性部材9はその端部をこれらの弾性部材受け73,83よりも奥側に押し込まれて抜けを防止されている。 また前述の実施例と同様に収容部の先端に内周面が対向する側が広くなるようにテーパ72、82が形成されている。
【0027】
この実施例によれば、一方の弾性部材収容部材71’をフロート7の内部に収容したので、フロート7の可動範囲を収容部材の長さL分だけ最小側に拡大することができ、密度の計測範囲を拡大できる。
【0028】
図6(A)(B))は、それぞれ本発明の第三の実施例を示すもので、この実施例においては前述の第二実施例の外部に突出している収容部材81の先端にリブ84を、また他方の収容部材71の先端には収容部材81程度の長さ程度の突起74を形成し、その先端に抜け止め75が形成されている。
【0029】
この実施例によれば突起74によりステムの軸線に垂直な方向の運動を制限するとともに、抜け止め75により2つのフロート7、8が大きく離間し過ぎて弾性部材9に変形が生じるのを防止できる。
また、フロート7とフロート8とが衝突しても弾性部材9が座屈するようなことがなく、永久変形するのを防止できる。
【符号の説明】
【0030】
1 地下タンク
3 ライザパイプ
4 液面検出装置
5 ステム
6 油面検出用フロート
7 密度フロート
8 水検出用フロート
9 弾性部材
M マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムに案内されて燃料油の密度に対応して浮沈する第一のフロートと、前記ステムに案内されて水の液位に対応して移動する第二のフロートと、第一と第二のフロートの間に位置し、前記第一のフロートの位置に対応して伸縮する弾性部材と、前記弾性部材の伸縮を検出する手段とを備え、前記第一と第二のフロートとのそれぞれの相対向する端部に、前記弾性部材の最大収縮時の全長程度の収容部材が設けられている密度測定装置。
【請求項2】
前記収容部材の一方がフロートの本体に収まるように形成されている請求項1に記載の密度測定装置。
【請求項3】
前記収容部材のそれぞれの相対向する端部に先端側に拡開するテーパが、その内面に形成されている請求項1に記載の密度測定装置。
【請求項4】
前記弾性部材の両端が前記各主要部材に固定されている請求項1に記載の密度測定装置。
【請求項5】
第一のフロート及び第二のフロートのそれぞれにマグネットが装着され、また前記ステムに貼設された磁歪線とこれの一端に振動伝達可能に設けられた検出部とが収容され、前記各フロートのマグネットによる信号の到達時間差から密度を計測する請求項1に記載の密度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154702(P2012−154702A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12440(P2011−12440)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ (167)
【Fターム(参考)】