説明

密着型イメージスキャナ

【課題】大幅な薄型軽量化を実現できるとともに、湾曲形状をなす対象物から画像や文書などを正確に読み取り可能な密着型イメージスキャナを提供する。
【解決手段】密着型イメージスキャナ1は、発光層20、感光層30、信号処理層40が上下方向に積層された構成を有する。発光層20には、原稿Tに向けて光を照射する有機EL23と、原稿Tから反射される光を下側に透過させる光透過部24とが、画素ごとにフィルム基板21に設けられている。感光層30は、光透過部24を透過して入射する光量に応じて電荷を蓄積する有機PD33が、画素ごとにフィルム基板31に設けられている。信号処理層40は、有機PD33に蓄積された電荷を読み出す有機TFT43が、画素ごとにフィルム基板41に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着型イメージスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物から画像や文書を読み取るスキャナは、撮像素子としてCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを使用する縮小光学方式(CCD方式)と、撮像素子としてCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを使用する密着光学方式(CIS(Contact Image Sensor)方式)とが知られている。例えば、CIS方式のスキャナでは、原稿を照明するLED(Light Emitting Diode)光源と、原稿からの反射光をCMOSセンサ上に結像するレンズアレイと、光電変換を行うCMOSイメージセンサとが、一体にユニット化されている。CIS方式のスキャナは、センサユニットを移動させることによって、原稿台に載置された原稿から画像や文書を読み取る。
【0003】
近年では、ユーザの利便性および携行性を考慮して、消費電力の小さい薄型・軽量のスキャナが注目されている。CIS方式のスキャナは、CCD方式のスキャナに比べて、装置の小型化が可能であること、駆動系が大幅に簡略化されること、省電力であること、縮小光学系に起因する画像の歪みが発生しないこと等、多くの利点を有している。そこで、CIS方式を利用した薄型・軽量のハンディスキャナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−149212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のCIS方式のスキャナは、光源部であるLED光源と、感光部であるCMOSセンサとが分離して配置されているため、LED光源およびCMOSセンサをそれぞれ独立して配置するためのスペースが必要となる。また、従来のCIS方式のスキャナは、一次元のラインセンサーとして構成されたセンサユニットを移動させる駆動機構を備える必要がある。従って、従来のスキャナでは、大幅な薄型軽量化を図るうえでの制約が大きいという問題があった。
【0006】
また、従来のCIS方式のスキャナでは、原稿から画像や文字などを読み取るために、原稿台に対して原稿を密接させる必要がある。そのため、このようなスキャナでは、例えば開かれた状態にある書籍のように、湾曲形状をなす対象物から画像や文書などを正確に読み取ることが困難であった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、大幅な薄型軽量化を実現できるとともに、湾曲形状をなす対象物から画像や文書などを正確に読み取り可能な密着型イメージスキャナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る密着型イメージスキャナは、上層側の対象物に向けて光を照射する発光部と、前記対象物から反射される光を下層側に透過させる光透過部とが、画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた発光層と、前記光透過部を透過して入射する光量に応じて電荷を蓄積する感光部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた、前記発光層よりも下層側に積層される感光層と、前記感光部に蓄積された電荷を読み出す駆動部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた、前記感光層よりも下層側に積層される信号処理層とを備えている。
【0009】
本態様によれば、画素ごとに発光部および光透過部が設けられた発光層と、画素ごとに感光部が設けられた感光層と、画素ごとに駆動部が設けられた信号処理層とが、上下方向に積層される。つまり、読み取り単位を構成する画素のそれぞれが、発光部、光透過部、感光部および駆動部を一体に備える。これにより、光源と感光素子とを独立して配置するためのスペースを設ける必要がなく、且つ、センサユニットを移動させる駆動機構を設ける必要がないため、密着型イメージスキャナの大幅な薄型軽量化を実現することができる。また、画素ごとに発光部、感光部および駆動部が上下方向に並んで配設されるため、画素面積を抑制しつつ画像読取に必要な構成を各画素に一体に備えることができるとともに、光透過部によって対象物からの反射光を画素内に適切に取り込むことができる。さらに、発光層、感光層および信号処理層は、それぞれ可撓性の板状部材を主体として上下方向に積層されるため、密着型イメージスキャナも全体として可撓性を有する薄型板状をなす。これにより、密着型イメージスキャナを対象物の読取面に沿って撓ませることで、湾曲形状をなす対象物から画像や文書などを正確に読み取ることができる。
【0010】
また、本態様において、前記発光部は、前記光透過部の外縁の一部または全部に沿って発光するEL光源であってもよい。発光部が光透過部の外縁に沿って発光することで、発光部からの光が対象物に照射されるまでの光路と、対象物から反射される光が光透過部に入射されるまでの光路とをより小さくすることができる。また、対象物から反射される光のうちで、発光部によって光透過部への入射が妨げられる割合が低減されるので、画素面積を抑制しつつ光透過部の形成面積を最大限に受光面積として機能させることができる。さらに、発光部をEL光源とすることで、より薄型の面光源で画像等の読み取りに十分な照度を確保することができる。したがって、密着型イメージスキャナのさらなる薄型軽量化と読取精度の向上とを実現することができる。
【0011】
また、本態様において、前記発光層の板状部材は、透明基板であって、前記発光部は、平面視で矩形状をなす発光セグメントの内側に透光性の窓部を有し、前記光透過部は、前記透明基板のうちで前記窓部を介して光が入射する部位であってもよい。これにより、発光部において発光セグメントの内側に透光性の窓部を設けるだけで、透明基板のうちでその窓部を介して光が入射する部位が光透過部として機能するので、発光層に光透過部を容易に形成することができる。さらに、光透過部の外縁全周に沿って発光セグメントが配設されることになるので、発光部からの光が対象物に照射されるまでの光路と、対象物から反射される光が光透過部に入射されるまでの光路とをより小さくすることができる。また、対象物から反射される光のうちで、発光部によって光透過部への入射が妨げられる割合が低減されるので、画素面積を抑制しつつ光透過部の形成面積を最大限に受光面積として機能させることができる。
【0012】
また、本態様において、前記対象物から反射される光を集光して前記感光部に照射する集光部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた集光層を備えてもよい。集光層を備えることで、対象物からの反射光が集光されて感光部に照射されるため、密着型イメージスキャナの読取精度をさらに向上させることができる。また、集光層は可撓性の板状部材を主体として積層されるため、集光層を備えても密着型イメージスキャナの可撓性を保つことができる。
【0013】
また、本態様において、前記集光層は、前記発光層と前記感光層との間に積層されてもよい。集光層を発光層と感光層との間に積層することで、集光層を発光層よりも上層側に設けた場合と比較して、対象物からの反射光以外のノイズ光が集光される割合を低減することができる。
【0014】
また、本態様において、前記集光部は、フレネルレンズであってもよい。集光部をフレネルレンズとすることで、対象物からの反射光を十分に集光可能な薄型レンズを、集光層に形成することができる。
【0015】
また、本態様において、前記感光部に対する前記対象物から反射される光の照射を妨げる遮光部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた遮光層を備えてもよい。遮光層を備えることで、対象物からの反射光以外のノイズ光が感光部に照射される前に遮断されるため、密着型イメージスキャナの読取精度をさらに向上させることができる。また、遮光層は可撓性の板状部材を主体として積層されるため、遮光層を備えても密着型イメージスキャナの可撓性を保つことができる。
【0016】
また、本態様において、前記遮光層は、前記発光層よりも下層側に積層されてもよい。遮光層を発光層よりも下層側に積層することで、遮光層を発光層よりも上層側に設けた場合と比較して、対象物からの反射光以外のノイズ光が遮断される割合を高めることができる。
【0017】
また、本態様において、前記遮光部は、前記発光部と略同一の形状および大きさの開口部を有するブラックマトリクスであってもよい。遮光部を発光部に対応するブラックマトリクスとすることで、対象物からの反射光以外のノイズ光を効率的に且つ簡易な構成で遮断することができる。
【0018】
また、本態様において、前記発光部、前記感光部および前記駆動部にそれぞれ接続される配線が可撓性の板状部材に設けられた配線電源層を備えてもよい。配線電源層を備えることで、各画素では、発光部、感光部および駆動部が、配線電源層に設けられた配線にそれぞれ層間接続されるとともに、配線電源層のみで配線の引き回しが行われる。これにより、発光層、感光層および信号処理層でのフィルム上配線が不要となり、各層に配設される電子部品(発光部、感光部、駆動部)の実装密度が向上する。そのため、密着型イメージスキャナにおいて、配線ライン・電源ラインの引き回しの設計および製造が容易とすることができるとともに、単位面積あたりの画素数を増加させることができる。また、配線電源層は可撓性の板状部材を主体として積層されるため、配線電源層を備えても密着型イメージスキャナの可撓性を保つことができる。
【0019】
また、本態様において、前記配線電源層は、前記感光層よりも下層側に積層されてよい。配線電源層を感光層よりも下層側に積層することで(つまり、最下層側に積層することで)、配線電源層の上面側にのみフィルム上配線を行えばよいため、配線・電源ラインの引き回しの設計および製造をさらに容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】スキャナ1における画素単位の縦断面図である。
【図2】スキャナ1の使用態様を示す概要図である。
【図3】スキャナ1および外部回路2の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】層別に部品展開したスキャナ1の外観斜視図である。
【図5】層別に部品展開したスキャナ1における画素単位の縦断面図である。
【図6】集光層10の平面図である。
【図7】発光層20の平面図である。
【図8】感光層30の平面図である。
【図9】信号処理層40の平面図である。
【図10】配線電源層50の平面図である。
【図11】スキャナ100における画素単位の縦断面図である。
【図12】層別に部品展開したスキャナ100における画素単位の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具現化した実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置構成や製造方法などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0022】
本発明の第1実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。第1実施形態では、集光レンズ12を最上層側(つまり、対象物との対向側)に配置した密着型イメージスキャナ(以下、スキャナ)1を例示して説明する。
【0023】
本実施形態に係るスキャナ1の物理的構造について、図1を参照して説明する。図1は、スキャナ1の縦断面図であって、スキャナ1に配設される一画素を部分的に拡大して示している。以下では、図1における上側をスキャナ1の上側、図1における下側をスキャナ1の下側として説明する。
【0024】
図1に示すように、スキャナ1は、機能別に構成された複数の薄型基板が上下方向に積層されてなり、全体として薄板状の外観を有する。本実施形態のスキャナ1では、集光層10、発光層20、感光層30、信号処理層40、配線電源層50の順に、上側から下側に向けて5つが積層されている。具体的には、各層10、20、30、40、50は100μm厚程度とし、これらが積層されたスキャナ1は500μm厚程度である。
【0025】
スキャナ1は、読み取り単位を構成する複数の画素が平面視でマトリクス状に配設された2次元のエリアセンサーとして構成されている。本実施形態のスキャナ1では、画素サイズが250μm程度に設定されており、解像度が100dpi(dot per inch)であるものとする。
【0026】
集光層10は、集光層10の上側に存在する対象物(例えば、原稿)からの反射光を集光する機能を有する層である。集光層10には、フィルム基板11に、集光レンズ12と、コンタクト部13とが、画素ごとに設けられている。フィルム基板11は、集光レンズ12を形成可能な厚みおよび透光性を有し、且つ、可撓性および絶縁性を有する薄型基板(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)であればよい。本実施形態のフィルム基板11は、100μm厚の無色透明なアクリル板とする(後述のフィルム基板21も同様)。
【0027】
集光レンズ12は、フィルム基板11の下面に、上側から入射される光を下側に集光するための凹凸パターンが形成された、公知のフレネルレンズである。集光レンズ12の屈折率は、後述の有機フォトダイオード(Organic Photodiode:以下有機PDと記す)33に集光されるように調整されている。集光レンズ12は、後述の有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro−Luminescence:以下有機ELと記す)23の上方に設けられ、より好適には平面視で有機EL23の全体を含んでいる。本実施形態の集光レンズ12は、各画素の中央位置に200μm幅の略正方形状で形成されている。
【0028】
コンタクト部13は、フィルム基板11の下面に形成された、数μm厚程度の薄板円盤状の導体である。コンタクト部13を形成する材料は、樹脂上に形成可能な導体(例えば、銅やアルミ)であればよく、本実施形態では銅メッキとする(後述のコンタクト部27、36も同様)。コンタクト部13は、集光レンズ12を透過する光を遮らないように、平面視で集光レンズ12の形成範囲よりも外側に設けられている。コンタクト部13は、後述するように、有機EL23に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。本実施形態では、コンタクト部13の形成幅は25μmである(後述のコンタクト部27、36も同様)。
【0029】
発光層20は、集光層10の上側に位置する対象物にスキャン光を照射する機能を有する層である。発光層20には、フィルム基板21に、スルーホール22と、有機EL23と、光透過部24と、ランド部25と、接着シート26と、コンタクト部27とが、画素ごとに設けられている。フィルム基板21は、反射光を透過可能な透光性を有し、且つ、可撓性および絶縁性を有する薄型基板(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)であればよいが、本実施形態では100μm厚の無色透明なアクリル板としている。
【0030】
有機EL23は、フィルム基板21の上面に設けられ、上方に向けてスキャン光を照射する面光源である。有機EL23は、数100nm〜数μm厚程度の薄膜状をなす公知の有機ELであって、平面視で略正方形状に発光セグメントが形成されたセグメント構造を有する。また、有機EL23は、発光素子を上下で挟む陰極および陽極が透明電極(ITO)で構成された、非発光時に透明となる透明有機ELである。有機EL23の発光セグメントの内側に形成される透明部位が、透光性の窓部23Aである。本実施形態の有機EL23は、上側に配設される集光レンズ12の形成範囲とほぼ一致するように、各画素の中央位置に200μm幅の略正方形状で形成されている。また、有機EL23の輪郭に沿って略正方形状の発光セグメントが形成されるとともに、有機EL23の中心位置に150μm幅で略正方形の窓部23Aが形成されている。
【0031】
フィルム基板21のうちで窓部23Aを介して反射光が入射する領域が、反射光の受光面として機能する光透過部24である。光透過部24は、後述の有機PD33の上方に設けられ、より好適には平面視で有機PD33の全体を含んでいる。本実施形態では、有機EL23の中央位置に窓部23Aが150μm幅の略正方形状で形成されていることに対応して、光透過部24が各画素の中央位置に150μm幅の略正方形状で形成されている。
【0032】
スルーホール22は、フィルム基板21を貫通する小径の孔部であり、コンタクト部13のほぼ中央に対応する平面位置に形成されている。スルーホール22は、有機EL23に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。本実施形態では、スルーホール22の形成幅は10μmである(後述のスルーホール32、42も同様)。
【0033】
ランド部25は、フィルム基板21の上面に設けられて、スルーホール22の上端開口縁を被覆する数μm厚程度の薄板円環状の導体である。ランド部25を形成する材料は、樹脂上に形成可能な導体(例えば、銅やアルミ)であればよく、本実施形態では銅メッキとする(後述のランド部34、44も同様)。ランド部25は、後述の接着シート26および導電性ペースト60を挟んで、コンタクト部13と上下方向に対向しており、且つ、フィルム基板21上で有機EL23と電気的に接続されている。本実施形態では、ランド部25の形成幅は25μmである(後述のランド部34、44も同様)。
【0034】
本実施形態では、有機EL23の陰極および陽極に接続される2つの層間ライン70を構成するために、画素ごとの発光層20に2つのスルーホール22が設けられている(図7参照)。各スルーホール22の上端周囲には、フィルム基板21上で有機EL23の陽極および陰極とそれぞれ電気的に接続された2つのランド部25が設けられている。各ランド部25の上方には、2つのコンタクト部13がそれぞれ対向配置されている。2つの層間ライン70の上端部は、上下に対向するランド部25およびコンタクト部13と接続されている。
【0035】
集光層10と発光層20との間には、高絶縁性の透明接着フィルムである接着シート26が設けられている。接着シート26は、絶縁性かつ透明性に優れた樹脂製接着シート(例えば、ポリエステル、シリコン、ポリイミドなど)であればよく、層間を適正に接着できる程度のシート厚(例えば、5μm〜30μm)を有していればよい(後述の接着シート35、45、54も同様)。詳細には、接着シート26は、コンタクト部13とランド部25との間に介在して、発光層20を集光層10の下側に接着させる。ただし、接着シート26には、スルーホール22を上方に連通させるとともにランド部25を露出させる孔部が形成されている。
【0036】
コンタクト部27は、コンタクト部13と同様の導体であり、フィルム基板21の下面に形成されている。コンタクト部27は、光透過部24を透過する光を遮らないように、平面視で光透過部24の形成範囲よりも外側に設けられている。コンタクト部27は、後述するように、有機PD33に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。
【0037】
感光層30は、対象物からの反射光を受光して、その光量に応じた電荷を蓄積する層である。感光層30には、フィルム基板31に、スルーホール32と、有機PD33と、ランド部34と、接着シート35と、コンタクト部36とが、画素ごとに設けられている。フィルム基板31は、可撓性および絶縁性を有する薄型基板(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)であれば、光透過性を有しているか否かを問わない。本実施形態のフィルム基板31は、100μm厚の無色透明なアクリル板とする(後述のフィルム基板41、51も同様)。
【0038】
有機PD33は、フィルム基板31の上面に設けられ、上側から入射する光量に応じて電荷を蓄積する感光部である。有機PD33は、数100nm〜数μm厚程度の薄膜状をなし、光吸収用組成物として有機材料を使用した公知の有機PDである。本実施形態の有機PD33は、上側に形成される窓部23A(つまり、光透過部24)の形成範囲とほぼ一致するように、各画素の中央位置に150μm幅の略正方形状で形成されている。
【0039】
スルーホール32は、スルーホール22と同様にフィルム基板31を貫通する孔部であり、コンタクト部27のほぼ中央に対応する平面位置と、スルーホール22とほぼ同一の平面位置とに形成されている。スルーホール32は、感光層30よりも上側に位置する電子部品(つまり、有機EL23)に接続される層間ライン70、および、有機PD33に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。
【0040】
ランド部34は、ランド部25と同様の導体であり、コンタクト部27の下方に位置するスルーホール32(つまり、有機PD33に接続される層間ライン70を形成するスルーホール32)の上端開口縁を被覆する。ランド部34は、後述の導電性ペースト60を挟んでコンタクト部27と上下方向に対向しており、且つ、フィルム基板31上で有機PD33と電気的に接続されている。
【0041】
本実施形態では、有機EL23の陰極および陽極と、有機PD33の陰極および陽極とにそれぞれ接続される4つの層間ライン70を構成するために、画素ごとの感光層30に4つのスルーホール32が設けられている(図8参照)。そのうち、2つのスルーホール32の上端周囲には、有機PD33の陽極および陰極とそれぞれ電気的に接続された2つのランド部34が設けられている。各ランド部34の上方には、2つのコンタクト部27がそれぞれ対向配置されている。4つの層間ライン70のうちで、2つの層間ライン70の上端部は、上下に対向するランド部34およびコンタクト部27と接続されている。
【0042】
発光層20と感光層30との間には、接着シート26と同様に接着シート35が設けられている。詳細には、接着シート35は、フィルム基板21、31の間に介在して、感光層30を発光層20の下側に接着させる。ただし、接着シート35には、有機PD33およびランド部34を露出させる開口部が形成されている。また、スルーホール22の下方に位置するスルーホール32(つまり、有機EL23または有機PD33に接続される層間ライン70を形成するスルーホール32)を、上方のスルーホール22と連通させる孔部が形成されている。
【0043】
コンタクト部36は、コンタクト部13と同様の導体であり、フィルム基板31の下面に形成されている。コンタクト部36は、後述するように、有機トランジスタ(Organic Thin Film Transistor:以下有機TFTと記す)43に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。本実施形態のコンタクト部36は、有機PD33のほぼ直下に形成されている。
【0044】
信号処理層40は、感光層30に蓄積された電荷を読み取って信号処理を行う層である。信号処理層40には、フィルム基板41に、スルーホール42と、有機TFT43と、ランド部44と、接着シート45とが、画素ごとに設けられている。
【0045】
有機TFT43は、フィルム基板41の上面に設けられ、有機PD33に蓄積された電荷を読み取って光電流を増幅して出力する光電変換素子である。有機TFT43は、数10nm〜数μm厚程度の薄膜状をなし、有機半導体を使用した公知の有機TFTである。本実施形態では、2つのTFT43A,43Bで構成された有機TFT43を例示する(図4、図9等参照)。
【0046】
スルーホール42は、スルーホール22と同様にフィルム基板41を貫通する孔部であり、コンタクト部36のほぼ中央に対応する位置と、スルーホール32とほぼ同一の平面位置とに形成されている。スルーホール42は、信号処理層40よりも上側に位置する電子部品(つまり、有機EL23および有機PD33)に接続される層間ライン70、および、有機TFT43に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。
【0047】
ランド部44は、ランド部25と同様の導体であり、コンタクト部36の下方に位置するスルーホール42(つまり、有機TFT43に接続される層間ライン70を形成するスルーホール42)の上端開口縁を被覆する。ランド部44は、後述の導電性ペースト60を挟んでコンタクト部36と上下方向に対向しており、且つ、フィルム基板41上で有機TFT43と電気的に接続されている。
【0048】
本実施形態では、有機EL23の陰極および陽極と、有機PD33の陰極および陽極と、TFT43Aのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極と、TFT43Bのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極と、にそれぞれ接続される10つの層間ライン70を構成するために、画素ごとの信号処理層40に10つのスルーホール42が設けられている(図9参照)。そのうち、6つのスルーホール32の上端周囲には、フィルム基板41上でTFT43A、43Bのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極とそれぞれ電気的に接続された6つのランド部44が設けられている。各ランド部44の上方には、6つのコンタクト部36がそれぞれ対向配置されている。10つの層間ライン70のうちで、6つの層間ライン70の上端部は、上下に対向するランド部44およびコンタクト部36と接続されている。
【0049】
感光層30と信号処理層40との間には、接着シート26と同様に接着シート45が設けられている。詳細には、接着シート45は、フィルム基板31、41の間に介在して、信号処理層40を感光層30の下側に接着させる。ただし、接着シート45には、有機TFT43およびランド部44を露出させる開口部が形成されている。また、スルーホール32の下方に位置するスルーホール42(つまり、有機EL23、有機PD33および有機TFT43のいずれかに接続される層間ライン70を形成するスルーホール42)を、上方のスルーホール32と連通させる孔部が形成されている。
【0050】
配線電源層50は、各層20、30、40に配設された電子部品(つまり、有機EL23、有機PD33、有機TFT43)に接続される電源ラインおよび配線ラインが形成される層である。配線電源層50には、フィルム基板51に、配線52と、ライン接続部53と、接着シート54とが、画素ごとに設けられている。
【0051】
配線52は、数μm厚程度のアルミ箔で形成された配線であり、電源ラインおよび配線ラインを含む。ライン接続部53は、配線52上または配線52に隣接して設けられ、導電性ペースト60が形成される部位である。ライン接続部53は、配線電源層50よりも上側に位置する電子部品(つまり、有機EL23、有機PD33、有機TFT43)に接続される層間ライン70に対応する数量が設けられている。本実施形態では、有機EL23、有機PD33、有機TFT43のいずれかに接続される10つの層間ライン70に対応して、配線電源層50に10つのライン接続部53が設けられている(図10参照)。なお、導電性ペースト60は、高導電性および高粘性を有する公知の導電性ペーストであり、ライン接続部53に形成されると配線52と物理的に接触する。本実施形態の導電性ペースト60は、銀ナノ粒子(6wt%、エタノール溶媒、粒子径5nm)のペースト体である。
【0052】
信号処理層40と配線電源層50の間には、接着シート26と同様に接着シート54が設けられている。詳細には、接着シート54は、フィルム基板41、51の間に介在して、配線電源層50を信号処理層40の下側に接着させる。ただし、接着シート54にはライン接続部53を露出させる孔部が形成されている。
【0053】
コンタクト部13とライン接続部53との間には、スルーホール22、32、42を介して上下方向に延びる小径の連通孔が形成されており、この連通孔に導電性ペースト60が充填された状態で固化している。さらに、上下方向に対向するコンタクト部13およびランド部25で形成される数μm厚程度の間隙に、導電性ペースト60が充填された状態で固化している。つまり、有機EL23は、発光層20にフォイル上配線を形成することなく、ランド部25および層間ライン70を介して配線52と導通する。
【0054】
コンタクト部27とライン接続部53との間には、スルーホール32、42を介して上下方向に延びる小径の連通孔が形成されており、この連通孔に導電性ペースト60が充填された状態で固化している。さらに、上下方向に対向するコンタクト部27およびランド部34で形成される数μm厚程度の間隙に、導電性ペースト60が充填された状態で固化している。つまり、有機PD33は、感光層30にフォイル上配線を形成することなく、ランド部34および層間ライン70を介して配線52と導通する。
【0055】
コンタクト部36とライン接続部53との間には、スルーホール42を介して上下方向に延びる小径の連通孔が形成されており、この連通孔に導電性ペースト60が充填された状態で固化している。さらに、上下方向に対向するコンタクト部36およびランド部44で形成される数μm厚程度の間隙に、導電性ペースト60が充填された状態で固化している。つまり、有機TFT43は、信号処理層40にフォイル上配線を形成することなく、ランド部44および層間ライン70を介して配線52と導通する。
【0056】
上記構成を備えたスキャナ1では、フィルム基板11、21、31、41、51以外の構成部材は数μm以下の厚みである。よって、各層10、20、30、40、50の厚みは、フィルム基板11、21、31、41、51の厚み(100μm厚)にほぼ等しい。また、各層10、20、30、40、50間には接着シート26、35、45、54が介在されているが、各層10、20、30、40、50間の上下幅は、数μm〜10μm程度である。そのため、スキャナ1は、各層10、20、30、40、50が積層されても、全体の厚みは略500μm程度であるため、従来のスキャナと比して極めて薄型軽量である。
【0057】
さらに、スキャナ1の構成部材は、全て薄板状または薄膜状をなす可撓体であり、特に画素を構成する電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43)も、有機材料で構成された薄膜状の可撓体である。そのため、スキャナ1は全体としても薄板状の可撓体であり、且つ、スキャナ1が撓んでも素子構造は破壊されることなく保持される。よって、スキャナ1は撓んだ状態でも、対象物から適切に画像読取を実行可能である。
【0058】
なお、接着シート26、35、45、54は、各層10、20、30、40、50の間隙で導電性ペースト60の流出を防ぐ周壁としてそれぞれ機能する。よって、スルーホール22、32、42の間隙において、導電性ペースト60が流出して電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43)に付着するおそれが防止されている。
【0059】
次に、本実施形態に係るスキャナ1の電気的構造および動作態様について、図1〜図3を参照して説明する。
【0060】
図2に示すように、スキャナ1は、スキャナ1の読取動作を制御する外部回路2に、リード線によって接続される。外部回路2は、例えばUSBケーブルによって、ユーザが操作するPC9に接続されている。本実施形態では、ユーザがPC9を操作してスキャナ1に画像読取を指示し、スキャナ1によって読み取られた画像イメージがPC9に出力される場合を例示する。
【0061】
図3に示すように、スキャナ1は、発光回路3、受光回路4および信号処理回路5を有する。発光回路3は、有機EL23および有機EL23に層間接続された配線52で形成される回路であって、有機EL23に電圧を印加して発光させる。受光回路4は、有機PD33および有機PD33に層間接続された配線52で形成される回路であって、有機PD33に一定逆電圧(バイアス)を印加することで、受光量に対応して増加する電荷を蓄積させる。信号処理回路5は、有機TFT43および有機TFT43に層間接続された配線52で形成される回路であって、発光回路3および受光回路4を駆動し、有機PD33から読み出される電荷を電圧として読み出して増幅する。
【0062】
外部回路2は、制御回路6および電源回路7を有する。制御回路6は、スキャナ1の読取動作を制御する回路である。電源回路7は、スキャナ1に電源を供給する回路である。本実施形態では、スキャナ1の薄型軽量化を図るために外部回路2を装置外に設けているが、スキャナ1が外部回路2を一体に備えていてもよい。
【0063】
以下では、より具体的に、スキャナ1の読取動作について説明する。まず、ユーザは、スキャナ1を読取対象の原稿Tに対して密接させる。このとき、スキャナ1の上面(つまり、集光層10)が原稿Tの読取面に対向するように面接触させる。上記構成を有するスキャナ1は、全体として可撓性の薄型板状をなすため、原稿Tの読取面が湾曲している状態でも、その湾曲形状に合わせてスキャナ1を撓ませて面接触させることができる。
【0064】
ユーザは、スキャナ1を原稿Tの読取面に密接させた状態で、PC9を操作してスキャナ1に画像読取を指示すると、制御回路6は、信号処理回路5にスキャン信号を入力する。信号処理回路5は、スキャン信号が入力されると、発光回路3を駆動して有機EL23を発光させる。有機EL23は、先述のように平面視で集光レンズ12の形成範囲に含まれる。そのため、有機EL23の発光セグメントから上方に照射されたスキャン光は、有機EL23の上方に位置する集光レンズ12を透過して原稿Tに照射される。
【0065】
原稿Tからの反射光は、集光レンズ12にて画素中心に向けて屈折されて、集光レンズ12の下方に位置する窓部23Aに入射する。先述のように、有機PD33は、平面視で光透過部24の形成範囲に含まれる。そのため、窓部23Aに入射した反射光は、さらに光透過部24を透過して、光透過部24の下方に位置する有機PD33上に集光される。受光回路4の駆動により、有機PD33で光量に応じた電荷が蓄積されて光イメージが結像される。
【0066】
信号処理回路5は、発光回路3の駆動制御に合わせて、受光回路4を駆動する。受光回路4の駆動により、有機PD33に蓄積された電荷が有機TFT43に読み出され、その電荷が電圧値として増幅される。各セルごとの電圧値は、信号処理回路5から制御回路6にデータ信号として出力される。制御回路6は、スキャナ1から出力されるデータ信号に基づいて画像イメージを生成し、その画像イメージをPC9に出力する。
【0067】
次に、本実施形態に係るスキャナ1の製造方法について、図4〜図10を参照して説明する。なお、図4はスキャナ1の9画素分について、図5はスキャナ1の1画素分について、図6〜図10はスキャナ1の4画素分について、それぞれ図示している。スキャナ1は、各層10、20、30、40をそれぞれ作製する作製工程と、スキャナ1の組付工程とによって製造される。スキャナ1の組付工程では、配線電源層50を作製して、各層10、20、30、40、50を積層する。各層10、20、30、40の作製工程は、スキャナ1の組付工程が行われる前にそれぞれ独立して行われる。
【0068】
[集光層10の作製工程]
図4〜図6に示すように、集光層10の作製工程では、まずフィルム基板11の下面に、集光レンズ12を画素ごとに形成する。集光レンズ12は、公知の熱プレス法やキャスティング法などで形成されればよいが、公知のナノインプリントリソグラフィを用いて形成することが好ましい。また、集光レンズ12をフィルム基板11に一体形成されるフレネルレンズとすることで、フィルム基板11の厚みを抑制することができる。なお、集光レンズ12に屈折率差を設けるため、フィルム基板11の材料系として、高屈折率金属酸化物(TiO、ZrO等)ナノ粒子ポリマー、低屈折率フッ素系樹脂ポリマー等を用いることが好適である。
【0069】
次に、フィルム基板11の下面において、平面視で各集光レンズ12の形成範囲の外側に、コンタクト部13を画素ごとに形成する。コンタクト部13は、公知のエッチング法、メッキ法、スクリーン印刷法などで形成されればよい(後述のコンタクト部27、36も同様)。コンタクト部13の形成幅は、少なくともスルーホール22の直径よりも大きい。好適には、スルーホール22の直径の2倍以上(例えば、20μm〜50μmの範囲内)であり、本実施形態では25μm幅としている。後述のコンタクト部27、36も、スルーホール32、42との関係において同様である。本実施形態では、後述のライン接続部53A、53B(図10参照)と対応する位置に、2つのコンタクト部13を形成する。
【0070】
[発光層20の作製工程]
図4、図5および図7に示すように、発光層20の作製工程では、まずフィルム基板21に、スルーホール22を画素ごとに形成する。スルーホール22は、導電性ペースト60を毛細管現象によって内部で上昇させる程度の小径(例えば、2〜20μm程度)であり、本実施形態では10μm径としている。スルーホール22が2〜20μmのような小径である場合は、マイクロドリルを使用して形成するのが好適である。後述のスルーホール32、42も同様である。スルーホール22は、公知のパンチングやマイクロドリルなどを用いて形成されればよい。本実施形態では、後述のライン接続部53A、53B(図10参照)と対応する位置に、2つのスルーホール22A、22Bを形成する。
【0071】
次に、フィルム基板21の下面における、平面視で窓部23A(つまり、光透過部24)の形成範囲の外側に、コンタクト部27を画素ごとに形成する。本実施形態では、後述のライン接続部53B、53C(図10参照)と対応する位置に、2つのコンタクト部27を形成する。
【0072】
次に、フィルム基板21の上面に、スルーホール22の上端開口縁を被覆するランド部25を画素ごとに形成する。ランド部25は、公知のエッチング法、めっき法、スクリーン印刷法などで形成されればよい。ランド部25の形成幅は、コンタクト部13の形成幅と同程度であることが好適であり、本実施形態では25μm幅としている(後述のランド部34、44も同様)。本実施形態では、スルーホール22A、22Bの上端開口縁に沿って、2つのランド部25A、25Bを形成する。
【0073】
次に、フィルム基板21の上面に、有機EL23を画素ごとに形成する。有機EL23は、公知のフォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法、インクジェット法などによって、少なくとも一部に窓部23Aを有するセグメント構造の有機EL23を形成すればよい。有機EL23の発光セグメントおよび窓部23Aは、透明電極(ITO)のパターニング、または、10nm以上の薄層絶縁膜形成によって作り分ければよい。なお、ランド部25A、25Bに、有機EL23の陽極および陰極をそれぞれ電気的に接続させる。
【0074】
最後に、接着シート26を、フィルム基板21の上面側を被覆するように形成する。ただし、有機EL23が露出するように(つまり、有機EL23が被覆されないように)、公知のエッチング法などで接着シート26に開口部を形成する。さらに、ランド部25の孔部周り(つまり、スルーホール22の上端開口縁)が露出するように、公知のマイクロドリルなどで接着シート26に孔部を形成する。
【0075】
[感光層30の作製工程]
図4、図5および図8に示すように、感光層30の作製工程では、まずフィルム基板31に、スルーホール32を画素ごとに形成する。本実施形態では、後述のライン接続部53A〜53D(図10参照)と対応する位置に、4つのスルーホール32A〜32Dを形成する。
【0076】
次に、フィルム基板31の下面に、上側に形成される有機PD33のほぼ直下に相当する位置(本実施形態では、画素のほぼ中央位置)に、コンタクト部36を画素ごとに形成する。本実施形態では、後述のライン接続部53E〜53H、53J、53K(図10参照)と対応する位置に、6つのコンタクト部36を形成する。
【0077】
次に、フィルム基板31の上面に、スルーホール32の上端開口縁を被覆するランド部34を画素ごとに形成する。本実施形態では、スルーホール32C、32Dの上端開口縁に沿って、2つのランド部34A、34Bを形成する。
【0078】
次に、フィルム基板31の上面に、有機PD33を画素ごとに形成する。有機PD33は、公知のフォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法、インクジェット法などによって形成すればよい。本実施形態では、公知の自己整合技術(例えば、特開2006−253632号公報等を参照)を用いて有機PD33を形成する。これによれば、有機PD33の高明暗電流比および高感度を実現するとともに、有機PD33を正確且つ容易に形成することができる。図示しないが、フィルム基板31の上面に、有機PD33に並列接続されるコンデンサを、公知の手法により形成する。なお、ランド部34A、34Bに、有機PD33の陽極および陰極をそれぞれ電気的に接続させる。
【0079】
最後に、接着シート35を、フィルム基板31の上面側を被覆するように形成する。ただし、有機PD33およびランド部34が露出するように(つまり、有機PD33およびランド部34が被覆されないように)、接着シート35に開口部を形成する。さらに、ランド部34が形成されていないスルーホール32(本実施形態では、スルーホール32A、32B)が上方に連通するように、接着シート26に孔部を形成する。
【0080】
[信号処理層40の作製工程]
図4、図5および図9に示すように、信号処理層40の作製工程では、まずフィルム基板41に、スルーホール42を画素ごとに形成する。本実施形態では、後述のライン接続部53A〜53H、53J、53K(図10参照)と対応する位置に、10つのスルーホール42A〜42H、42J、42Kを形成する。
【0081】
次に、フィルム基板41の上面に、スルーホール42の上端開口縁を被覆するランド部44を画素ごとに形成する。本実施形態では、スルーホール42E〜42H、42J、42Kの上端開口縁に沿って、6つのランド部44A〜44Fを形成する。
【0082】
次に、フィルム基板41の上面に、有機TFT43を画素ごとに形成する。有機TFT43は、公知のフォトリソグラフィ法などによって形成すればよい。本実施形態では、公知の自己整合技術(例えば、特開2005−158774号公報等を参照)を用いて、透明酸化物半導体である有機TFT43を形成する。これによれば、素子特性の高い有機TFT43を正確且つ容易に形成することができる。なお、有機TFT43を、2つのTFT(第1TFT43Aおよび第2TFT43B)で構成する。ランド部44A、44B、44Eに、第1TFT43Aのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極をそれぞれ電気的に接続させる。ランド部44C、44D、44Fに、第2TFT43Bのソース電極、ドレイン電極、ゲート電極をそれぞれ電気的に接続させる。
【0083】
最後に、接着シート45を、フィルム基板41の上面側を被覆するように形成する。ただし、有機TFT43およびランド部44が露出するように(つまり、有機TFT43およびランド部44が被覆されないように)、接着シート45に開口部を形成する。さらに、ランド部44が形成されていないスルーホール42(本実施形態では、スルーホール42A〜42D)が上方に連通するように、接着シート45に孔部を形成する。
【0084】
[スキャナ1の組付工程]
図4、図5および図10に示すように、スキャナ1の組付工程では、まず配線電源層50を作製する。初めに、フィルム基板51の上面に、配線52を形成する。配線52は、公知のフォトリソグラフィ法やエッチング法などによって形成すればよい。より好適には、超微細配線パターンを形成可能な手法(例えば、特開2006−222295号公報等を参照)で配線52を形成するのが望ましい。
【0085】
本実施形態では、フィルム基板51上に形成される配線52として、画素ごとのセルがそれぞれ接続される一対のスキャンライン(ロウ配線52C、52D)および一対のデータライン(カラム配線52E、52F)を、マトリクス状に形成する。データラインと平行をなす電源ライン(Vss)52AおよびGNDライン(Vdd)52Bを、隣り合う画素の間に形成する。データライン(カラム配線52E、52F)は、各カラムのトランジスタ(TFT43A,43B)をアクティブにするための配線である。スキャンライン(ロウ配線52C、52D)は、各ロウのトランジスタ(TFT43A,43B)をセレクトするための配線である。かかる構成のもと、スキャナ1の読取動作時には、所謂2次元スイッチを駆動するロウ・カラム方式の読取制御が行われるが、詳細は後述する。
【0086】
さらに、フィルム基板51上における層間ライン70が形成される位置(つまり、ライン接続部53A〜53H、53J、53K)を、次のような接続関係とする。すなわち、電源ライン52A上に、ライン接続部53Bを形成する。GNDライン52B上に、ライン接続部53Dを形成する。ロウ配線52Cに、ライン接続部53Jを配線接続する。ロウ配線52D上に、ライン接続部53Kを形成する。カラム配線52Eに、ライン接続部53Eを配線接続する。カラム配線52Fに、ライン接続部53Gを配線接続する。ライン接続部53Cとライン接続部53Hとを配線接続する。なお、図10において、フィルム基板51上で配線52同士が交差する部位は、絶縁被膜が施されている。
【0087】
次に、フィルム基板51の上面に、公知のインクジェット技術などによって、ライン接続部53上に導電性ペースト60を吐着して形成する。導電性ペースト60は、スルーホール22等の内部を毛細管現象によって上昇するのに必要な密度を有する導電性ペーストであればよい。より好適には、導電性ペースト60は、低温加熱(例えば、140℃以下)によって硬化し、且つ、接着力が高いものが望ましく、本実施形態では銀ナノ粒子(6wt%、エタノール溶媒、粒子径5nm)のペースト体としている。
【0088】
ライン接続部53に対する導電性ペースト60の吐着量は、そのライン接続部53に形成される層間ライン70によって異なる。例えば、コンタクト部13(つまり、集光層10)まで延びる層間ライン70が形成されるライン接続部53には、3つのスルーホール22、32、42を充填するのに必要な量の導電性ペースト60を吐着する。また、コンタクト部36(つまり、感光層30)まで延びる層間ライン70が形成されるライン接続部53には、1つのスルーホール42を充填するのに必要な量の導電性ペースト60を吐着する。
【0089】
次に、接着シート54を、フィルム基板51の上面側を被覆するように形成する。ただし、ライン接続部53上に形成された導電性ペースト60が露出するように(つまり、導電性ペースト60が被覆されないように)、接着シート54に孔部を形成する。
【0090】
次に、上記のように作製された配線電源層50を最下層として、上記作製工程で形成された信号処理層40、感光層30、発光層20、集光層10を下から順に積み上げて積層する。このとき、各コンタクト部13、27、36および各スルーホール22、32、42が、それぞれ対応するライン接続部53の平面位置と略一致するように、各層10、20、30、40、50を積層させる。これにより、コンタクト部13からスルーホール22、32、42を経由してライン接続部53に至る小径の連通孔が形成される。同様に、コンタクト部27からスルーホール32、42を経由してライン接続部53に至る小径の連通孔が形成され、コンタクト部36からスルーホール42を経由してライン接続部53に至る小径の連通孔が形成される(図1参照)。
【0091】
各層10、20、30、40、50が積層されると、ライン接続部53に形成されている導電性ペースト60が、毛細管現象によってスルーホール42の内周壁に沿って上昇する。スルーホール42の上端開口縁にランド部44が形成されている場合、導電性ペースト60はスルーホール42の上端開口から進出してコンタクト部36に接触する。コンタクト部36に接触した導電性ペースト60は、コンタクト部36の表面に沿って平面方向に広がり、コンタクト部36とランド部44との間隙に進入する。かかる状態で導電性ペースト60が固化すると、有機TFT43を配線52に接続させる層間ライン70が形成される。
【0092】
スルーホール42が上方のスルーホール32と連通している場合、導電性ペースト60はスルーホール42を経由してスルーホール32に進入し、さらにスルーホール32の内周壁に沿って上昇する。スルーホール32の上端開口縁にランド部34が形成されている場合、導電性ペースト60はコンタクト部27に接触することによって、コンタクト部27とランド部34との間隙に進入する。かかる状態で導電性ペースト60が固化すると、有機PD33を配線52に接続させる層間ライン70が形成される。
【0093】
スルーホール32が上方のスルーホール22と連通している場合、導電性ペースト60はさらにスルーホール22の内周壁に沿って上昇する。そして、導電性ペースト60は、スルーホール22の上端開口から進出してコンタクト部13に接触して、コンタクト部13とランド部25との間隙に充填される。かかる状態で導電性ペースト60が固化すると、有機EL23を配線52に接続させる層間ライン70が形成される。
【0094】
最後に、各層10、20、30、40、50を積層した状態で加熱圧着する。これにより、各層間に配置された接着シート26、35、45、54を加熱溶解して、各層10、20、30、40、50が接着される。また、導電性ペースト60が加熱固化して、上記のように層間ライン70が形成される。この加熱圧着は、接着シート26、35、45、54を加熱溶着する温度で行えばよいが、より好適には画素を構成する電子部品を熱劣化させない温度であることが望ましい。本実施形態では、有機EL23、有機PD33、有機TFT43の全てを熱劣化させないという条件(140℃以下)を満たす80℃で加熱圧着を行うものとする。そのため、接着シート26、35、45、54は80℃で加熱溶着する材料で形成されるとともに、導電性ペースト60も80℃で加熱固化する材料で形成されている。
【0095】
これにより、本実施形態のスキャナ1(図7〜図10参照)では、有機EL23の陰極は、配線電源層50上で接続されるライン接続部53A、53Fを介して、第1TFT43Aのドレイン電極に結線される。有機EL23の陽極は、ライン接続部53Bが形成された電源ライン52Aに結線される。有機PD33の陰極は、配線電源層50上で接続されるライン接続部53C、53Hを介して、第2TFT43Bのドレイン電極に結線される。有機PD33の陽極は、ライン接続部53Dが形成されたGNDライン52Bに結線される。第1TFT43Aのソース電極は、ライン接続部53Eが接続されたカラム配線52Eに結線され、第2TFT43Bのソース電極は、ライン接続部53Gが接続されたカラム配線52Fに結線される。第1TFT43Aのゲート電極は、ライン接続部53Jが接続されたロウ配線52Cに結線され、第2TFT43Bのソース電極は、ライン接続部53Kが接続されたロウ配線52Dに結線される。
【0096】
その結果、発光層20の回路構成(図3に示す発光回路3)では、第1TFT43Aのドレイン電極から有機EL23の陰極に入り、有機EL23の陽極が電源ライン52Aに繋がる。感光層30の回路構成(図3に示す受光回路4)では、第1TFT43Aのドレイン電極から有機PD33の陰極に入り、有機PD33の陽極がGNDライン52Bに繋がる。信号処理層40の回路構成(図3に示す信号処理回路5)は、ロウ配線52Cから第1TFT43Aのゲート電極に入り、第1TFT43Aのソース電極を経てカラム配線52Eに繋がる。ロウ配線52Dから第2TFT43Bのゲート電極に入り、第2TFT43Bのソース電極を経てカラム配線52Fに繋がる。
【0097】
このような配線パターンによって、各電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43)と配線52とが、層間ライン70によって画素ごとに層間接続され、発光回路3、受光回路4、信号処理回路5(図3参照)が画素ごとに形成される。データライン(カラム配線52E、52F)で所定時間アクティブになったカラムのトランジスタ(TFT43A、43B)のうち、スキャンライン(ロウ配線52C、52D)でセレクトされたロウに相当するトランジスタのみ、所定時間ゲート電圧がONになってドレイン電流が流れる。そのため、スキャナ1の読み取り動作時には、スキャンライン(ロウ配線52C、52D)とデータライン(カラム配線52E、52F)とに選択的にデータ入力が行われることで、2次元的に配置された有機EL22が発光され、且つ、2次元的に配置された有機PD33から光起電力分布が得られる。
【0098】
より詳細には、ロウ配線52Cおよびカラム配線52Eにスキャン信号が入力されると、第1TFT43Aのゲート電極に電圧が印加される。この電圧印加によってゲート電極が開き、第1TFT43Aのソース電極からドレイン電極へ電流が流れて、有機EL23が発光する。これにあわせて、ロウ配線52Dおよびカラム配線52Fにスキャン信号が入力されると、第2TFT43Bのゲート電極に電圧が印加される。この電圧印加によってゲート電極が開き、有機PD33が原稿から受光した反射光の光量に応じて、第2TFT43Bのソース電極からドレイン電極に電流が流れる。このときの光起電力がデータ信号として外部回路2(図3参照)に出力され、外部回路2にて原稿からの反射光強度が特定されることで画像イメージが生成される。
【0099】
このように、本実施形態のスキャナ1では、光源部(有機EL23)と感光部(有機PD33)とを各画素ごとに備えて、有機EL23の発光制御と有機PD33の受光制御とが各画素ごとに実行される。そのため、従来のスキャナ装置のように、光源部の発光制御と感光部の受光制御とを別々に制御する必要がなく、画像読み取り動作を迅速かつ正確に行うことが可能である。
【0100】
以上説明したように、本実施形態のスキャナ1は、各画素に画像読取に必要な電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43)を一体に備え、全体として薄型軽量且つ可撓性であるという構造的特徴を備える。ここで、本実施形態に係るスキャナ1の構造的特徴およびその作用について、代表的なものを例示する。
【0101】
本実施形態に係るスキャナ1は、画素ごとに有機EL23および光透過部24が設けられた発光層20と、画素ごとに有機PD33が設けられた感光層30と、画素ごとに有機TFT43が設けられた信号処理層40とが、上下方向に積層されている。つまり、読み取り単位を構成する画素のそれぞれが、有機EL23、光透過部24、有機PD33および有機TFT43を一体に備えている。これにより、光源と感光素子とを独立して配置するためのスペースを設ける必要がなく、且つ、センサユニットを移動させる駆動機構を設ける必要がないため、スキャナ1の大幅な薄型軽量化が実現される。また、画素ごとに有機EL23、有機PD33および有機TFT43が上下方向に並んで配設されるため、画素面積を抑制しつつ画像読取に必要な構成を各画素に一体に備えることができるとともに、光透過部24によって原稿Tからの反射光を画素内に適切に取り込むことができる。さらに、発光層20、感光層30および信号処理層40は、それぞれ可撓性のフィルム基板21、31、41をそれぞれ主体として上下方向に積層されているため、スキャナ1も全体として可撓性を有する薄型板状をなす。これにより、スキャナ1を原稿Tの読取面に沿って撓ませることで、湾曲形状をなす原稿Tから画像や文書などが正確に読み取られる。
【0102】
有機EL23は、光透過部24の外縁の一部または全部に沿って配設されたEL光源である。光源として有機EL23を採用したことで、より薄型の面光源で画像等の読み取りに十分な照度が確保される。また、発光層20のフィルム基板21は透明基板であって、有機EL23は平面視で矩形状をなす発光セグメントの内側に透光性の窓部23Aを有し、光透過部24はフィルム基板21のうちで窓部23Aを介して光が入射する部位である。よって、有機EL23において発光セグメントの内側に透光性の窓部23Aを設けるだけで、フィルム基板21のうちで窓部23Aを介して光が入射する部位が光透過部24として機能するので、発光層20に光透過部24を容易に形成可能である。
【0103】
有機EL23は、光透過部24の外縁に沿って発光する。詳細には、光透過部24の外縁全周に沿って発光セグメントが配設されているため、光透過部24の外縁全周に沿って発光セグメントが発光する。これにより、従来のスキャナのように画素から離間した光源が発光される場合と比較して、有機EL23からの光が原稿Tに照射されるまでの光路と、原稿Tからの反射光が光透過部に入射されるまでの光路とが短くなる。
【0104】
原稿Tからの反射光は、原稿Tの直下に位置する窓部23Aおよび光透過部24に入射するため、その反射光のうちで有機EL23によって窓部23Aおよび光透過部24への入射が妨げられる割合が低減される。そのため、画素面積を抑制しつつ、画素面積の大部分を発光面および受光面として機能するとともに、光透過部24の形成面積を最大限に受光面積として機能する。したがって、スキャナ1のさらなる薄型軽量化と読取精度の向上とが実現される。
【0105】
スキャナ1は、画素ごとに集光レンズ12が設けられた集光層10をさらに備えている。集光レンズ12は原稿Tからの反射光を集光して有機PD33に照射するため、スキャナ1の読取精度がさらに向上する。集光層10は可撓性のフィルム基板11を主体として積層されるため、集光層10を備えてもスキャナ1の可撓性が保たれる。また、集光層10は発光層20と感光層30との間に積層されているので、集光層10を発光層20よりも上側に設けた場合と比較して、原稿Tからの反射光以外のノイズ光が集光される割合が低減される。また、集光レンズ12はフレネルレンズであるため、原稿Tからの反射光を十分に集光可能な薄型レンズを、集光層10に形成することができる。
【0106】
スキャナ1は、有機EL23、有機PD33および有機TFT43に接続される配線52が設けられた配線電源層50をさらに備えている。各画素では、光透過部24、有機PD33および有機TFT43が、配線電源層50に設けられた配線52にそれぞれ層間接続されるとともに、配線電源層50のみで配線52の引き回しが行われる。これにより、発光層20、感光層30および信号処理層40でのフィルム上配線が不要となるため、各層20、30、40に配設される電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43)の実装密度が向上する。そして、スキャナ1において、配線ライン・電源ラインの引き回しの設計および製造が容易とすることができるとともに、単位面積あたりの画素数を増加させることができる。また、配線電源層50を感光層30よりも下側に積層することで(つまり、最下層側に積層することで)、配線電源層50の上面側にのみフィルム上配線を行えばよいため、配線ライン・電源ラインの引き回しの設計および製造をさらに容易とすることができる。
【0107】
本発明の第2実施形態について、図11および図12を参照して説明する。第2実施形態では、有機EL23を最上層側(つまり、対象物との対向側)に配置した密着型イメージスキャナ(以下、スキャナ)100を例示して説明する。以下では、第1実施形態のスキャナ1と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同一構成には同一符号を付して説明する。
【0108】
本実施形態に係るスキャナ100について、図11および図12を参照して説明する。図11および図12は、スキャナ100の縦断面図であって、スキャナ100に配設される一画素を部分的に拡大して示している。以下では、図11および図12における上側をスキャナ100の上側、図11および図12における下側をスキャナ100の下側として説明する。
【0109】
図11および図12に示すように、スキャナ100は、第1実施形態のスキャナ1と同様に、機能別に構成された複数の薄型基板が上下方向に積層されてなり、全体として薄板状の外観を有する。本実施形態のスキャナ100では、カバー層80、発光層20、集光層10、感光層30、信号処理層40、配線電源層50の順に、上側から下側に向けて6つが積層されている。具体的には、各層80、20、10、30、40、50は100μm厚程度とし、これらが積層されたスキャナ100は600μm厚程度である。
【0110】
カバー層80は、スキャナ100の最上層に設けられて、下側に設けられる有機EL23を保護する層である。本実施形態では、発光層20がカバー層80の下側に設けられる。そのため、フィルム基板81の下面に、有機EL23に接続される層間ライン70を形成するためのコンタクト部82が設けられている。なお、本実施形態のフィルム基板81も、絶縁性および可撓性を有する透明樹脂製で100μm厚の薄型基板とする。
【0111】
発光層20は、コンタクト部27が設けられていない点が、第1実施形態と異なる。また、接着シート26は、コンタクト部82とランド部25との間に介在して、発光層20とをカバー層80の下側に接着させる。ランド部25は、コンタクト部82と上下方向に対向している。有機EL23は、集光レンズ12の上方に設けられ、より好適には平面視で窓部23A(つまり、光透過部24)に集光レンズ12の全体を含んでいる。本実施形態の有機EL23は、各画素の中央位置に200μm幅の略正方形状で形成され、その中心位置に窓部23Aが150μm幅の略正方形状で形成されている。
【0112】
集光層10は、コンタクト部13が設けられていない点と、遮光マスク14、スルーホール15、接着シート16、コンタクト部17が設けられている点が、第1実施形態と異なる。また、スルーホール15は、上側のスルーホール22と下側のスルーホール22とを連通させる。接着シート16は、フィルム基板21、11間に介在して、集光層10を発光層20の下側に接着させる。本実施形態では、感光層30が集光層10の下側に設けられるため、フィルム基板11の下面に、有機PD33に接続される層間ライン70を形成するためのコンタクト部17が設けられている。集光レンズ12は、有機PD33の上方に設けられ、より好適には平面視で有機PD33の全体を含んでいる。本実施形態の集光レンズ12は、窓部23A(つまり、光透過部24)の形成範囲とほぼ一致するように、各画素の中央位置に150μm幅の略正方形状で形成されている。
【0113】
フィルム基板11の上面には、平面視で有機PD33の外縁を被覆するように、遮光マスク14が設けられている。遮光マスク14は、下側に位置する有機PD33への光入射を妨げる公知のブラックマトリクスである。遮光マスク14は、有機EL23の下方且つ有機PD33の上方に設けられ、より好適には平面視で有機EL23の全体を含んでいる。本実施形態の遮光マスク14は、有機EL23の形成範囲とほぼ一致するように、各画素の中央位置に200μm幅の略正方形状で形成されるとともに、その中心位置に光透過部24とほぼ一致する150μm幅略正方形状の開口部を有している。
【0114】
感光層30、信号処理層40、配線電源層50は、第1実施形態と同様である。ただし、ランド部34は、コンタクト部17と上下方向に対向している。接着シート35は、フィルム基板11、31間に介在して、感光層30を集光層10の下側に接着させる。そして、コンタクト部82からスルーホール22、15、32、42を介してライン接続部53に至る層間ライン70によって、有機EL23が配線52と導通する。コンタクト部17からスルーホール32、42を介してライン接続部53に至る層間ライン70によって、有機PD33が配線52と導通する。有機TFT43は、第1実施形態と同様に配線52と導通する。
【0115】
上記構成を備えたスキャナ100では、第1実施形態のスキャナ1と同様に、各層80、20、10、30、40、50が積層されても、全体の厚みは略600μm程度であるため、従来のスキャナと比して極めて薄型軽量である。また、スキャナ100は全体としても薄板状の可撓体であり、且つ、スキャナ100が撓んでも素子構造は破壊されることなく保持される。よって、スキャナ100は撓んだ状態でも、対象物から適切に画像読取を実行可能である。
【0116】
スキャナ100の電気的構造および動作態様も、第1実施形態のスキャナ1と同様である。ただし、有機EL23の発光セグメントから上方に照射されたスキャン光は、有機EL23の上方に位置するカバー層80を透過して原稿Tに照射される。原稿Tからの反射光は、カバー層80を透過して窓部23Aに入射し、さらに下側の集光層10に照射される。先述のように、平面視で集光レンズ12の外縁には遮光マスク14が形成されているため、光透過部24の直下に位置する集光レンズ12に入射した反射光は、集光レンズ12にて画素中心に向けて屈折されて有機PD33上に集光される。一方、集光レンズ12に入射しない反射光(不要光)、および、有機EL23から直接下側の集光層10に照射されるスキャン光(裏光)は、遮光マスク14によって遮断される。
【0117】
スキャナ100の製造方法も、第1実施形態のスキャナ1と同様である。ただし、各層10、20、30、40、50の層形成工程と同様に、カバー層80の層形成工程も独立して行う。カバー層80の層形成工程では、フィルム基板81にコンタクト部82を形成する。フィルム基板81は、反射光を透過可能な透光性を有し、且つ、可撓性および絶縁性を有する薄型基板(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)であればよい。
【0118】
集光層10の層形成工程では、フィルム基板11の下面に集光レンズ12を形成したのちに、フィルム基板11の上面に遮光マスク14を形成する。遮光マスク14は、公知の印刷技術を用いて、フィルム基板11上にブラックマトリクスを形成すればよい。遮光マスク14は、光透過性が1/1000以下となる条件を満たすことが好適である。また、遮光マスク14は、遮光性の観点から金属材料で形成するのが好ましく、ナノ粒子による金属配線、低次酸化チタンペースト、顔料樹脂等が例示される。
【0119】
以上説明したように、本実施形態のスキャナ100は、各画素に画像読取に必要な電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43)を一体に備え、全体として薄型軽量且つ可撓性であるという構造的特徴を備える。ここで、本実施形態に係るスキャナ100の構造的特徴およびその作用について、第1実施形態のスキャナ1と異なる点のみを例示する。
【0120】
本実施形態のスキャナ100によれば、画素ごとに遮光マスク14が設けられた集光層10を備える。遮光マスク14は、原稿Tからの反射光以外のノイズ光を有機PD33に照射される前に遮断するため、スキャナ100の読取精度がさらに向上する。また、集光層10は発光層20よりも下側に積層されているので、集光層10を発光層20よりも上側に設けた場合と比較して、遮光マスク14によって原稿Tからの反射光以外のノイズ光が遮断される割合が向上する。また、遮光マスク14は、有機EL23と略同一の形状および大きさの開口部を有するブラックマトリクスであるため、原稿Tからの反射光以外のノイズ光を効率的に且つ簡易な構成で遮断することができる。
【0121】
ところで、上記実施形態において、有機EL23が本発明の「発光部」に相当し、有機PD33が本発明の「感光部」に相当し、有機TFT43が本発明の「駆動部」に相当し、遮光マスク14が本発明の「集光部」に相当する。また、第2実施形態の集光層10が、本発明の「遮光層」に相当する。
【0122】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0123】
例えば、上記実施形態では、集光レンズ12を最上層側に設けたスキャナ1と、有機EL23を最上層側に設けたスキャナ100とを例示したが、各画素を構成する電子部品の上下関係(つまり、各層の上下関係)は適宜変更すればよい。例えば、集光レンズ12の下側に遮光マスク14を設けてもよいし、配線電源層50を感光層30と信号処理層40との間に設けてもよいし、画素の外部に光源を設ける場合には発光層20を設けなくてもよい。また、遮光マスク14を集光層10に設けるのに代えて、遮光マスク14が設けられた遮光層を、発光層20と感光層30との間に配置してもよい。
【0124】
上記実施形態では、接着シート26等を用いて各層を接着しているが、これに限定されない。例えば、導電性ペースト60が高接着性を有している場合は、層間ライン70が形成されると導電性ペースト60によって各層が固着されるため、接着シート26等を用いずにスキャナ1を製造できる。この場合、スルーホール22、32等の間隙から導電性ペースト60が漏出するおそれがある。そのため、接着シート26等を用いない場合は、各スルーホール32等の上端開口縁に撥ペースト処理を施こすことが好適である。具体的には、導電性ペースト60が疎水性材料で構成されている場合は、各スルーホール32等の上端開口縁に撥水加工を施す。導電性ペースト60が疎油性材料で構成されている場合は、各スルーホール32等の上端開口縁に撥油加工を施す。
【0125】
もちろん、スキャナ1、100を構成する画素、各画素を構成する電子部品(有機EL23、有機PD33、有機TFT43など)、各画素の発光部位と光透過部24(つまり、有機EL23の発光マトリクスと窓部23A)、層間ライン70の形成パターン(つまり、コンタクト部、ランド部、スルーホールなど)、配線52の形成パターンなども、数量、材料、位置、形状、大きさなどを適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 密着型イメージスキャナ
10 集光層
11 フィルム基板
12 集光レンズ
13 コンタクト部
14 遮光マスク
20 発光層
21 フィルム基板
22(22A、22B) スルーホール
23 有機EL
23A 窓部
24 光透過部
25 ランド部
26 接着シート
30 感光層
31 フィルム基板
32(32A〜32D) スルーホール
33 有機PD
34 ランド部
35 接着シート
36 コンタクト部
40 信号処理層
41 フィルム基板
42(42A〜42K) スルーホール
43(43A、43B) 有機TFT
44 ランド部
45 接着シート
50 配線電源層
51 フィルム基板
52 配線
52A 電源ライン
52B GNDライン
52C ロウ配線
52D ロウ配線
52E カラム配線
52F カラム配線
53(53A〜53K) ライン接続部
54 接着シート
60 導電性ペースト
70 層間ライン
80 カバー層
100 密着型イメージスキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上層側の対象物に向けて光を照射する発光部と、前記対象物から反射される光を下層側に透過させる光透過部とが、画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた発光層と、
前記光透過部を透過して入射する光量に応じて電荷を蓄積する感光部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた、前記発光層よりも下層側に積層される感光層と、
前記感光部に蓄積された電荷を読み出す駆動部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた、前記感光層よりも下層側に積層される信号処理層と
を備えたことを特徴とする密着型イメージスキャナ。
【請求項2】
前記発光部は、前記光透過部の外縁の一部または全部に沿って発光するEL光源であることを特徴とする請求項1に記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項3】
前記発光層の板状部材は、透明基板であって、
前記発光部は、平面視で矩形状をなす発光セグメントの内側に透光性の窓部を有し、
前記光透過部は、前記透明基板のうちで前記窓部を介して光が入射する部位であることを特徴とする請求項1または2に記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項4】
前記対象物から反射される光を集光して前記感光部に照射する集光部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた集光層を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項5】
前記集光層は、前記発光層と前記感光層との間に積層されることを特徴とする請求項4に記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項6】
前記集光部は、フレネルレンズであることを特徴とする請求項4または5に記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項7】
前記感光部に対する前記対象物から反射される光の照射を妨げる遮光部が、前記画素ごとに可撓性の板状部材に設けられた遮光層を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項8】
前記遮光層は、前記発光層よりも下層側に積層されることを特徴とする請求項7に記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項9】
前記遮光部は、前記発光部と略同一の形状および大きさの開口部を有するブラックマトリクスであることを特徴とする請求項7または8に記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項10】
前記発光部、前記感光部および前記駆動部にそれぞれ接続される配線が可撓性の板状部材に設けられた配線電源層を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の密着型イメージスキャナ。
【請求項11】
前記配線電源層は、前記感光層よりも下層側に積層されることを特徴とする請求項10に記載の密着型イメージスキャナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−211473(P2011−211473A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77014(P2010−77014)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(305060567)国立大学法人富山大学 (194)
【Fターム(参考)】