説明

密着型光学ラインセンサ装置及び有価紙面の鑑別方法

【課題】紫外光光源を用いて有価紙面などの蛍光成分を検出する密着型光学ラインセンサ装置において、有価紙面の精密な真偽判定機能を行う。
【解決手段】ロッドレンズアレイ23上に紫外光を遮断するUV遮断フィルタ膜30をコーティングもしくは蒸着する際に、紫外光を透過するスリット34を設けてそのスリット34から透過する紫外光をモニターして、UV遮断フィルタ膜30を通して検出される蛍光出力と対比させる。
【効果】有価紙面が長期間市場で使われ老朽化し、汚染されていても、直接有価紙面の基材部に照射され反射した紫外光の光量の変動に比例した蛍光出力が得られるので、有価紙面からの蛍光出力を正確に評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外光を媒体に照射して媒体に埋め込まれた蛍光物質の蛍光を検出する光学ラインセンサ装置に関し、特に有価証券、紙幣、クレジットカード等(有価紙面又は媒体という)の鑑別を目的とする密着型鑑別用途光学ラインセンサ装置及びそれを用いた有価紙面の鑑別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、ATMや紙幣処理機など紙幣を取り扱う機器において、より高速で高性能な真偽判定目的の鑑別システムが強く求められてきている。
これら紙幣や有価証券の鑑別方法として、光学ラインセンサ装置によるパターン識別が、従前より用いられてきている。
光学ラインセンサ装置には、縮小レンズとミラー及びCCDを組み合わせた縮小光学ラインセンサ装置と、セルフォックレンズなどの等倍光学系を用いた密着型光学ラインセンサ装置とがあり、縮小光学系はシステム単価が安く、解像度を容易に調整できること、焦点深度が深いなどの長所がある反面、センサの容積が大きくなることやホコリや異物によるトラブルが多い欠点がある。そこで、最近はメンテナンスの容易な密着型光学ラインセンサ装置が広く使われてきている。
【0003】
一方有価紙面には、紫外光照射によって蛍光を発するインク、繊維、スレッドなどが真偽判定の目印として有価紙面の所定の部位に埋め込まれてきている。
そこでATMや紙幣処理機など有価紙面を取り扱う機器においては、その機器に用いられる鑑別センサに、紫外光を光源とした密着型光学ラインセンサ装置を設置することが望まれるようになってきている。紫外光を対象物に照射し、印刷物のインク、紙、構成材料に含まれる蛍光物質を蛍光させて、その微弱な出力や波長を検出することにより、さらなる真偽判定能力が向上する期待があるからである。
【0004】
この紫外光密着型光学ラインセンサ装置は、搭載している紫外光光源部から紫外光を発光させて対象媒体に照射することで、対象媒体に含まれるインクなどの蛍光成分が紫外光に励起されて可視及び赤外光の蛍光を発し、これを受光部において光検出信号を集めて画像データとし、これをもとに真偽判別を実施するものである。
紫外光密着型光学ラインセンサ装置の光源として、冷陰極管、ハロゲンランプ、紫外光LED光源等が使用可能であるが、特に最近は可視光成分が少なく輝度が向上した窒化ガリウム系の紫外光LEDが好んで使用されている。
【0005】
紫外光密着型光学ラインセンサ装置の受光部を構成するラインセンサとしては、単結晶シリコンフォトダイオードアレイ、ラインCCD素子、センサ部を内蔵したセンサIC、アモルファスシリコン素子などが用いられる。
下記特許文献2では、紫外光源から出射される光のうち紫外成分(例えば300〜400nm程度)のみを透過させる光学フィルタを備えた蛍光センサが開示されている。
【0006】
下記特許文献3では、受光素子に、有価紙面の表面で反射された光のうち紫外成分を除去する紫外光カットフィルタが配置された蛍光センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-230618号公報
【特許文献2】特開2004-265208号公報
【特許文献3】特開2004-265104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
紫外光LED光源を用いたラインセンサにおいて、有価紙面に印刷されている番号や模様などのインクから紫外光照射により発光される蛍光出力は極めて微弱であり、前記の光源と受光部との組み合わせにおいてもセンサとしての十分な検出感度を確保できない場合がある。
特に紫外光照射によって蛍光出力を検知する場合、有価物の真偽判定能力を向上させるとともに、長期間市場において使われ老朽化したり、皮脂や洗剤などで汚染した有価物を検知する機能が求められており、紫外光照射強度に対しての蛍光出力を判別する方法が有効となっている。
【0009】
しかし直接媒体に照射された紫外光の光量に比例して蛍光出力が変動するので、同時に照射する紫外光強度をモニターできないと蛍光出力を正確に測定できないという問題が発生する。
また、紫外光光源が長時間動作することで媒体の照射強度が低下することがあり、この強度をLEDへの通電量で補正したり、あるいは光源の性能寿命を検知することが必要となってくる。
【0010】
そこで本発明は、紫外光光源を用いて有価紙面などの蛍光成分を検出する密着型光学ラインセンサ装置において、UV遮断フィルタ膜を形成する際に紫外光を透過するスリットを設けてそのスリットから透過する紫外光をモニターして、UV遮断フィルタ膜を通して検出される蛍光出力と対比させることにより、有価紙面の精密な真偽判定機能を向上させることができる密着型光学ラインセンサ装置及びそれを用いた有価紙面の鑑別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、受光センサにより有価紙面の蛍光出力を精査したところ、紫外光を遮断するUV遮断フィルタ膜を形成する際に、そこに紫外光を透過するスリットを設けてそのスリットから透過する紫外光をモニターして、UV遮断フィルタ膜を通して検出される蛍光出力と対比させることにより、有価紙面の精密な真偽判定機能を向上させることができることを見出した。
【0012】
本発明の密着型光学ラインセンサ装置は、紫外光を媒体に照射して媒体に埋め込まれた蛍光物質の蛍光を検出する密着型光学ラインセンサ装置において、紫外光を照射する紫外光LED光源と、該紫外光LED光源から媒体に照射されて、媒体から所定の角度で反射された反射光もしくは媒体を透過した透過光を受光する受光素子と、前記紫外光LED光源から前記受光素子に至る光路に設けられたロッドレンズアレイとを有し、前記紫外光LED光源から前記受光素子に至る光路のいずれかに、前記紫外光LED光源から発せられる紫外光を遮断するフィルタ膜が設置され、前記フィルタ膜の一部において紫外光を透過する1又は複数のスリットが設けられている、ものである。
【0013】
この構成であれば、紫外光遮断材料であるフィルタ膜とスリットを組み合わせることでスリットから透過する紫外光量を基準とした、フィルタ膜を通過した蛍光量の割合が求められる。すなわち、スリットを透過した光量をリファレンスとすることができ、媒体に照射され反射もしくは透過した紫外光の光量の変動に比例した蛍光出力が得られるので、有価紙面の精密な真偽判定機能を向上させることができる。
また、媒体の老朽化、汚染等により媒体の反射強度若しくは透過強度が低下したり、又は紫外光LED光源の発光素子が経年変化等により媒体への照射強度が低下することがあるが、スリットを透過した紫外光の十分なモニター光量を直接求めることができるため、この低下した強度を判定することができる。よって、この判定値を用いて、媒体を回収の対象とすることができる。また発光素子への通電電流などを補正することができる。あるいは発光素子の性能寿命を推定することができる。
【0014】
また本発明ではスリット部を透過する有価紙面の基材そのものの反射もしくは透過した紫外線の出力とインクなどの蛍光出力が相乗する場合があり、この出力を分離するために前記スリットが少なくとも2カ所以上設けられていることが好ましい。スリットを透過した光量をから紫外光成分の出力を読み出して基準(リファレンス)とするため、複数の場所から採取した光量を用いることが好ましいからである。
【0015】
前記フィルタ膜は、例えばロッドレンズの端面に設けられていてもよい。ロッドレンズの端面に設けることにより、ロッドレンズと一体化でき、取り扱いが便利になる。
また本発明の有価紙面の鑑別方法は、本発明の密着型光学ラインセンサ装置を用いて、スリットを透過した紫外光光量に対する前記フィルタ膜を透過した媒体の蛍光量の光量比を検出する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、有価証券や紙幣など(以下「媒体S」という)の画像を検出する密着型光学ラインセンサ装置を示す断面図である。密着型光学ラインセンサ装置は、媒体Sをx方向に直線状に搬送するための紙幣搬送路11に対向配置された検出ユニット12,13を有している。紙幣搬送路11は、媒体Sを搬送方向xに沿わせた姿勢で直線状に真っ直ぐ搬送するものである。各検出ユニット12,13は同一の形状であり、対称に配置されている。以下、主に上側の検出ユニット12について、その構造を説明する。
【0017】
検出ユニット12は、長さ方向(図1における紙面に垂直なy方向)の寸法が厚さ方向(図1におけるz方向)の寸法及び幅方向(図1におけるx方向)の寸法に比してかなり長く、細長い形状をなしている。検出ユニット12は、下方向に開口部が設けられた細長い箱状の筐体16と、この筐体16にその開口部を閉塞させるように取り付けられた細長い板状の透光カバー17と、筐体16の中に収納されたユニット本体とで構成される。
【0018】
筐体16の材料は、紫外光の照射に対して耐久性があり、また紫外光が照射されても蛍光を発しない金属、樹脂などの物質であることが好ましい。例えば、金属であれば鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮などである。金属そのものであれば蛍光を発しないが、表面にコートされる防錆材によっては蛍光する場合があり、実際に紫外光を照射して蛍光の有無を確認して使用することが望ましい。樹脂においては、ポリカーボネート、ポリアセタール、ナイロン,ABS、飽和及び不飽和ポリエステルなどの汎用樹脂が採用可能である。樹脂においても同様に、添加される充填材や安定剤、顔料、UV吸収剤などから蛍光を発する場合があり、蛍光の有無を確認後採用することが好ましい。
【0019】
透光カバー17は、紫外光及び可視光が透過するガラス等の透明材料で形成されており、幅(x)方向の片端部若しくは両端部に、樹脂部36が取り付けられている。この樹脂部36は媒体Sが検出ユニットを通過する際に引っかかる障害とならないように設けられた傾斜面を有する。
ユニット本体内は、長さ(y)方向に伸びる細長い壁18aで仕切られている。この仕切り壁18aと筐体16の両外壁とで、幅(x)方向に並んだ2つの細長い部屋U,Vを区画している。x方向下流にある部屋Uは、紫外光LED光源の発光素子29と、媒体Sからの反射光を入射するロッドレンズアレイ23とを収納している。さらに、ロッドレンズアレイ23を設置する部屋Uの奥、すなわち透光カバー17に対して反対側に、センサ受光部24を設置する部屋Tが仕切られている。このセンサ受光部24も透光カバー17と同様に細長い形状をなしており、その長さ(y)方向を、ユニット本体の長さ(y)方向に一致させて取り付けられている。このセンサ受光部24は、その画像検出方向(−z方向)を、透光カバー17に向けている。
【0020】
センサ受光部24は、ロッドレンズアレイ23から出射される光を、部屋Uと部屋Tとの境界に設けられた開口25を介して取り込む。なお部屋Uと部屋Tとを仕切ることにより、ロッドレンズアレイ23を通した光以外の迷光がセンサ受光部24に入射されないようにしている。
センサ受光部24は、受光素子とドライバ部とを一体化させたセンサICチップを配列し、これを基板上にライン状に実装したものである。ドライバ部は受光素子を駆動するためのバイアス電流を作成し供給する回路部分である。また、センサ受光部24には信号処理部が接続され、受光素子の光検出信号を読み取り処理する。受光素子の種類は、限定されないが、例えばアモルファスシリコンpinフォトダイオード、シリコンpn若しくはpinフォトダイオードなどが用いられ、波長感度特性、高速動作、高解像度、及びダイナミックレンジの観点から選択される。
【0021】
ロッドレンズアレイ23は、長さ(y)方向に細長い形状であり、センサ受光部24に対面して配置されている。このロッドレンズアレイ23は、媒体Sの蛍光画像をセンサ受光部24の感光面上に等倍の正立像として結像させるためのレンズ素子である。ロッドレンズアレイ23は、幅(x)方向及び長さ(y)方向における位置をセンサ受光部24に全体的に重ね合わせた状態で、筐体16に取り付けられている。
【0022】
ロッドレンズアレイ23は、観測する画像の検出エリア(センサ受光部24をロッドレンズアレイ23の一方の焦点としたときのロッドレンズアレイ23の他方の焦点;観測ラインという)を、透光カバー17の外表面よりも所定距離外側に設定している(図1においてこの検出エリアをR1で示す)。この検出エリアR1から出てロッドレンズアレイ23の中心軸(光軸)を通る直線はz軸に平行であり、センサ受光部24の感光面に到達する。なお、検出エリアR1もユニット本体と同様、長さ(y)方向に細長く延びている。
【0023】
さらに図1に示すように、ロッドレンズアレイ23の、検出エリアR1に対向する端面には、ロッドレンズアレイ23を通した紫外光が、センサ受光部24へ入るのを防止するためのUV遮断フィルタ膜30が配置されている。
UV遮断フィルタ膜30は、紫外光をカットすることにより、紫外光が照射された媒体Sのインクなどからから発する蛍光成分(可視光)を精度よく検出する目的に用いられる。しかしながら媒体Sに紫外光を照射した場合、媒体Sの紙基材そのものに含まれる蛍光物質が、青色(400〜450nm)の可視光の蛍光を発光することがある。この青色の蛍光のため、媒体Sに印刷されている番号などの模様から発光される赤や緑の蛍光が埋もれてしまうため、蛍光の検出能力を向上させる目的でUV遮断フィルタ膜30の波長特性を調整する必要が出てくる。したがってUV遮断フィルタ膜30の波長遮断特性は、紫外光をカットするとともに、可視光領域(400nm〜700nm)のうち、波長410nm以下、好ましくは420nm以下、さらに好ましくは450nm以下の光をシャープに遮断するように選ぶと、媒体Sの紙基材の蛍光を低減することが出来好ましい。
【0024】
また、カットする傾斜は急峻なほど好ましい。例えば光透過率が50%に低下する波長と10%に低下する波長との差(波長幅)が100nm以下特に望ましくは50nm以下の範囲であることが、検出感度を安定させるために望ましい。
なお、このUV遮断フィルタ膜30の設置位置は、ロッドレンズアレイ23の検出エリアR1に対向する端面に限定されるものではない。例えばセンサ受光部24に対向する端面に取り付けても良い。またロッドレンズアレイ23から離れて、部屋Uと部屋Tとの境界壁に設けられた開口25を塞ぐようにして、該境界壁の何れかの側に取り付けられていても良い。
【0025】
またもっと一般的に、検出エリアR1とセンサ受光部24の感光面との間であれば、いずれの位置に配置しても良い。例えば、センサ受光部24の感光面を覆う形で取り付けても良い。要するに、検出エリアR1で反射しロッドレンズアレイ23を通した紫外光が、センサ受光部24へ入るのを防止することができればよい。
このUV遮断フィルタ膜30は、前述の波長遮断特性を有するものであれば材質・構造を問わない。例えば有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルム、ガラス表面に酸化チタンと酸化珪素など透過率や屈折率の異なる誘電体の薄膜若しくは金属酸化物を多層蒸着することで得られる干渉波フィルタ(バンドパスフィルタ)などが採用できる。
【0026】
なお、UV遮断フィルタ膜30は独立して構成しても良いが、レンズや保護ガラス板などの紫外光を透過する光学部材に直接蒸着して用いてもよい。また、同じくレンズやガラス板などの紫外光を透過する光学部材に、有機材料である紫外光遮断塗料を塗布して用いても良い。
また、部屋Uには、検出エリアR1に向けて斜めに紫外光を照射することのできる細長い形状の紫外光LED光源22が設けられている。この紫外光LED光源22は、ユニット本体の長さ(y)方向に沿って、センサ受光部24と平行な状態で筐体16に取り付けられている。
【0027】
この紫外光LED光源22は、紫外光を照射する半導体素子からなる発光素子29と、紫外光LED光源22の光を検出エリアR1に向けて出射させるための細長い形状のガラス等の透明材料からなる光ガイド27とを備えている。発光素子29と光ガイド27とは互いに離れて別々に取り付けられていてもよいが、発光素子29が光ガイド27の側面に接触するように配置され両者が一体化されていることが好ましい。
【0028】
この発光素子29は、波長300nm以上の紫外光の発光が可能なLED素子である。発光素子29が発光する紫外光は、波長が短くて発光強度が強いほど蛍光出力が大きく得られるが、例えば窒化ガリウム系では350nm〜380nmの波長にピークを持つ紫外光LEDが実用的で好ましい。
なお、紫外光LED光源22も微弱な可視光を含んで発光しているので、この可視光を取り除くため、紫外光LED光源22の発光下流、例えば紫外光LED光源22と光ガイド27の間などに可視光カットフィルタ(図示せず)を設けてもよい。この可視光カットフィルタを設けることとすれば、さらなるモニター精度の向上と性能の安定化が可能となる。この可視光カットフィルタの材質・構造は、例えばガラス表面に金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる多層膜干渉波フィルタである。
【0029】
ユニット本体内のx方向上流側の部屋Vには何も取り付けられていないが、これは、下側の検出ユニット13が、媒体Sを透過する透過光を検出する仕様になっていないからである。必要ならば、下側の検出ユニット13における透過LED光源21と同じ物が取り付けられていても良い。
つぎに、図1の下側の検出ユニット13に設けられている透過LED光源21について簡単に説明すると、下側の検出ユニット13の部屋Vには、媒体Sに可視光及び/又は赤外光を照射するための透過LED光源21が設置されている。透過LED光源21には、複数の発光素子(図示せず)が内蔵されている。各発光素子は、例えば赤緑青(RGB)あるいはシアン・マゼンタ・イエローといった3原色に相当する可視光の所望の波長領域の光を照射可能な3つの発光素子と、波長800nm以上の発光が可能な赤外発光素子とを含むものである。
【0030】
各発光素子は、異なる波長領域の光を照射可能とされている。このため各発光素子は、電極端子(図示せず)を備え、電圧を印加する電極端子を選択することにより各発光素子を同時に、若しくは時間的に切り替えて発光できる回路構成となっている。
図1の下方の検出ユニット13は、上方の検出ユニット12とは、紙幣搬送路11を挟んで長さ(y)方向に沿う軸を中心に180度反転させた姿勢で対向配置されている。すなわち検出ユニット13は、細長い箱状の筐体16の上方向に開口部が設けられ、この筐体16にその開口部を閉塞させるように透光カバー17が取り付けられている。検出ユニット13と検出ユニット12とは透光カバー17,17の主面同士を紙幣搬送路11に平行状態で1.5〜3mmのギャップを介して互いに対向させていることになる。
【0031】
検出ユニット13の筐体16の中の素子配置は、前述した透過LED光源21、上方の検出ユニット12と同じ構成の紫外光LED光源22、ロッドレンズアレイ23、センサ受光部24が備えられている。透過LED光源21は、上方の検出ユニット12のセンサ受光部24に相対して配置されており、透過LED光源21から照射され、媒体Sを透過した光は、ロッドレンズアレイ23を通過してセンサ受光部24に入射される。
【0032】
この構成により、図1における上側の検出ユニット12のセンサ受光部24が検出エリアR1における透過画像を検出可能となる。
さらには、図1における図示下側の検出ユニット13のセンサ受光部24は、紫外光LED光源22から照射された検出エリアR2の反射画像を検出可能となる。
なお、上側の検出ユニット12の紫外光LED光源22と下側の検出ユニット13の透過LED光源21とは、透過画像と反射画像が同時にセンサ受光部24に入ることがないように、時間的なスイッチングにより発光制御されている。
【0033】
以上の構成により、センサ受光部24は、紫外光LED光源22から照射され、図1における検出エリアR1で反射された反射画像の正立像を、ロッドレンズアレイ23を介して検出できる。また筺体表面上の透光カバー17を通じて照射された媒体Sの透過画像もロッドレンズアレイ23を介してセンサ受光部24の表面に、等倍の正立像として結像され検出できる。
【0034】
本発明の実施形態では、UV遮断フィルタ膜30において、紫外光を透過するスリット34が設けられている。このUV遮断フィルタ膜30に設けられたスリット34の形状例を、図2、図3を用いて説明する。
図2はロッドレンズアレイ23の斜視図である。ロッドレンズアレイ23の、検出エリアR1の反対側の端面には、UV遮断フィルタ膜30が設けられている、このUV遮断フィルタ膜30を長さ(y)方向に分断する形で、紫外光を透過するための1又は複数のスリット34が形成されている。図2ではスリット34の数は“4”となっているが、この数に限定されるものではない。
【0035】
スリット34の長さ(y)方向に沿った幅を“w”で表示している。スリット34が複数ある場合、全スリットの幅wの合計を大文字で“W”と表記する。
図3はロッドレンズアレイ23の端面を拡大して示す部分拡大図である。ロッドレンズアレイ23は、厚さ(z)方向に平行な複数のロッド状のレンズ(その端面を“23a”で示す)を、長さ(y)方向に束ねて整列させた構造となっている。
【0036】
この端面において、スリット34に相当する部分を何らかの部材でマスクしてUV遮断フィルタ膜30を蒸着又は塗布し、後にマスクを剥がせば、紫外光を透過させるスリット34を有するUV遮断フィルタ膜30を形成することができる。
全スリット34の幅Wは、紫外光透過光量を確保するために2mm以上好ましくは5mm以上であれば良い。スリット34の個数は、前述したように限定されないが、できれば2以上設けることが、媒体Sから反射された紫外光量を精度良くモニターするために好ましい。
【0037】
このようなUV遮断フィルタ膜30とともに紫外光を透過するスリット34が設けられたロッドレンズアレイ23を用いて、スリット34を透過した紫外光を含む光をセンサ受光部24で検出すれば、前述した信号処理部33において、受光素子の各画素ごとにその光量を記録することができる。
信号処理部33において、これらの光量のデータを処理することにより、スリット34を透過した光量の平均値、最大値、最低値等を算出することが出来、この数値を元に紫外光LEDの出力レベルをフィードバックすることで紫外光LEDの投入電流を調整して一定の照射強度を保つことが可能となる。また、UV遮断フィルタ膜30を透過した紫外光を含まない出力も同様に平均値、最大値、最低値等を算出することで媒体S上のインクやスレッドなどの蛍光物質の蛍光出力を精度良く測定することが可能となる。
また、蛍光量を精度良く測定できることによって鑑別精度が向上することに加えて、老朽化したり、洗剤などで汚染した媒体Sを選別し回収することが可能となる。さらに一定の照射強度を確保するのに必要な電流値を判定することにより、発光素子29性能寿命を検知することができ、ユーザに交換時期を知らせることもできる。
【0038】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、紫外光LED光源から媒体に照射されて媒体から所定の角度で反射された反射光を受光する構成の他に、光源21に紫外光LEDを装着し、紫外光LED光源から媒体Sに照射され媒体Sを透過した透過紫外光を、ロッドレンズアレイを通してセンサ受光部で受光する構成を採用してもよい。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
ロッドレンズアレイとして、日本板硝子製セルフォックレンズSLA12Bを採用した。ロッドレンズアレイの端面に幅10mmのアルミ箔を両端及び中央部の3カ所に固定して、その上から酸化チタンと酸化珪素の多層膜からなる410nm以下の波長をカットするバンドパスフィルタを製膜した。その後アルミ箔を剥がした。
【0040】
これにより3カ所のみ紫外光を透過するスリットを持つロッドレンズアレイを作成した。このロッドレンズアレイを解像度200dpi(dots per inch)の受光素子が配列されたセンサ受光部とともに、筐体に組み込んだ。
さらに日亜化学製紫外光LED素子(ピーク波長:365nm)を15個直線状に配列した紫外光LED光源を作製し、各素子に20mAの単一パルス状のバイアス電流を調整して一定の紫外光を発光させ、20ユーロ紙幣に照射して蛍光パターンを観察した。
【0041】
紫外光LED光源により検出された蛍光光量のグラフを、図4に示す。横軸は受光素子の画素の位置を表し、縦軸はセンサ受光部で検出した蛍光光量(相対目盛)を表す。
同図に示すとおり、スリットを通過した紫外光の光量(図4にaで示す)を記録し、UV遮断フィルタ膜30を通過した蛍光出力の最大値(bで示す)と最小値(cで示す)とを記録することができる。UV遮断フィルタ膜30を通過した蛍光出力(b,c)のうち、bは旗部や数字など蛍光が出る部分の蛍光出力であり、cは媒体Sの基材部(地の部分)の蛍光出力である。これらの値を用いることで例えば、スリットを透過した光量(a−c)を基準とした、UV遮断フィルタ膜30を透過した蛍光部の光量(b−c)の比を判定することができ、媒体Sの真偽判定および老朽化して蛍光部が摩耗した媒体Sの判別が可能となる。またさらに洗剤などで汚染された場合は基材部cの出力が洗剤の蛍光により出力が大幅に増加していることで汚染された媒体Sとして判別することが可能である。
【0042】
図4の縦軸の値を用いれば、a−c=727,b−c=75,光量比[(b−c)/(a−c)]=0.103となり、得られた数値をパラメーター管理することで真偽判定および老朽化や汚染された媒体Sの鑑別が可能となる。
<実施例2>
ユーロ紙幣の紙基材の蛍光の影響を抑えるために、ロッドレンズアレイに装着するUV遮断フィルタ膜の特性を450nm以下カットの特性のものに変更して実施例1と同様に蛍光出力を測定した。この結果を図5に示す。スリットを透過した光量(a−c)を基準とした、UV遮断フィルタ膜を透過した光量(b−c)の比、すなわち光量比[(b−c)/(a−c)]が0.103から0.135に増大している。これにより、コントラストが増大し、検出能力が向上していることが判明した。
【0043】
<実施例3>
実施例2と同様な条件でさらに、紫外光LED光源のLED素子上部に400nm以上の可視光をカットするバンドパスフィルタ膜を装着して特性を評価したところ、図6に示すグラフが得られた。
このグラフによれば、光量比[(b−c)/(a−c)]が0.151となり、検出能力の改善と検出性能の安定化に有効な方策であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】有価証券や紙幣などの媒体Sの画像を検出する密着型光学ラインセンサ装置を示す断面図である。
【図2】ロッドレンズアレイ23の斜視図である。
【図3】ロッドレンズアレイ23の、センサ受光部24の端面を拡大して示す部分拡大図である。
【図4】UV遮断フィルタ膜の両端及び中央に紫外光を透過するスリットを持つロッドレンズアレイを筐体に組み込み、ユーロ紙幣に紫外光を照射して蛍光パターンを観察した蛍光光量のグラフである。
【図5】ユーロ紙幣の紙基材の蛍光の影響を抑えるためにUV遮断フィルタ膜の特性を450nm以下カットの特性のものに変更して蛍光出力を測定したグラフである。
【図6】紫外光LED光源そのものから発せられる可視光成分の影響を無くす目的でLED素子上部に400nm以上の可視光をカットするバンドパスフィルタを装着して蛍光出力を測定したグラフである。
【符号の説明】
【0045】
12,13 検出ユニット
22 紫外光LED光源
23 ロッドレンズアレイ
24 センサ受光部
28 可視光カットフィルタ層
30 UVカットフィルタ膜
33 信号処理部
34 スリット
S 有価証券、紙幣などの媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を媒体に照射して媒体に埋め込まれた蛍光物質の蛍光を検出する密着型光学ラインセンサ装置において、
紫外光を照射する紫外光LED光源と、
該紫外光LED光源から媒体に照射されて、媒体から所定の角度で反射された反射光もしくは媒体を透過した透過光を受光する受光素子と、
前記紫外光LED光源から前記受光素子に至る光路に設けられたロッドレンズアレイとを有し、
前記紫外光LED光源から前記受光素子に至る光路のいずれかに、前記紫外光LED光源から発せられる紫外光を遮断するフィルタ膜が設置され、
前記フィルタ膜の一部において紫外光を透過する1又は複数のスリットが設けられている、密着型光学ラインセンサ装置。
【請求項2】
前記スリットが少なくとも2カ所以上設けられている請求項1記載の密着型光学ラインセンサ装置。
【請求項3】
前記フィルタ膜が、波長420nm以下の可視光及び紫外光を遮断する特性を持つ請求項1記載の密着型光学ラインセンサ装置。
【請求項4】
前記フィルタ膜が、波長450nm以下の可視光及び紫外光を遮断する特性を持つ請求項3記載の密着型光学ラインセンサ装置。
【請求項5】
前記紫外光LED光源上に波長400nm以上の可視光をカットするバンドパスフィルタが装着されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の密着型光学ラインセンサ装置。
【請求項6】
前記フィルタ膜は、前記ロッドレンズの端面に設けられている、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の密着型光学ラインセンサ装置。
【請求項7】
紫外光を媒体に照射して有価紙面に埋め込まれた蛍光物質の蛍光を検出することにより有価紙面を鑑別する方法であって、
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の密着型光学ラインセンサ装置を用いて、前記紫外光LED光源から該紫外光を媒体に照射し、
媒体から所定の角度で反射された反射光もしくは媒体を透過した透過光を、前記紫外光LED光源から前記受光素子に至る光路に設けられた前記ロッドレンズアレイを通して受光し、
前記スリットを透過した紫外光光量に対する前記フィルタ膜を透過した媒体の蛍光量の光量比を検出する、有価紙面の鑑別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83528(P2013−83528A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223083(P2011−223083)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(510192019)株式会社ヴィーネックス (5)
【Fターム(参考)】