説明

密着性、耐剥離性の優れたフッ素樹脂系被覆剤

【課題】フッ素系樹脂は被覆材として使用する場合、接着力が低くプライマーによる下地処理が必要であった。
【解決手段】フッ素系ポリマーにチタンを導入することにより接着性を改善し、4塩化チタンを反応せしめる際に副生する塩化水素は2重結合を複数有する化合物に吸着反応せしめ、揮発もしくは無害な塩化物として処理した有機チタン系被覆剤の開発に成功した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【発明の属する分野】
【0001】
この分野は、表面を被覆して、コンクリート、タイル、焼き物、瀬戸物、ガラス、繊維、建築物、装飾品、貴金属、貴重品などを外的環境要因である、汚染された外気、日光、風雨に晒され劣化、変退色から表面を保護し守るための表面保護材に関するものである。一般的な塗料は表面被覆して美化したり材質を保護するが、積極的に表面汚染を防止したり、太陽光の紫外線から物体を守ることは出来ないものも多かった。
【0002】
タイル張りのビルデングなどの外装材は無機系外装材としては優れているが、長年の風雨や外気に晒されると表面が風化され、劣化、変色、化学分解などがおきてくる。まして、塗料などの有機化合物の劣化速度はさらに速くなる。さらに貴金属、貴重品、文化財、宝飾物などは、経時変化による劣化、変退色などを防止為の工夫にある。
【背景技術】
【0003】
フッ素樹脂系塗料は表面光沢、耐候性などが優れていたが、合成樹脂、合成繊維、貴金属、装飾品などに対する接着性に問題があった。これまでの外装材としては無機系のタイル、コンクリート、酸化チタン系塗料、有機系としてはフッ素系、酸化チタン系、アクリル系塗料などが耐候性に優れていた。無機系としては酸化チタンを主体とする被覆財が主体であった。酸化チタンは加熱して焼付たり、塗料用エナメルなどに混合して、塗装するものであった。また酸化チタンな白色であるため、表面の白ものに限られた。
【0004】
従来のものは酸化チタン系が主体で、施工法は高温焼付けか、塗装によるものである。それら最大の欠点は白ものに限られ、色の表現は不可能であった、
この欠点を補うのは透明チタンによる被覆しかないのである。しかし透明チタン被覆材は耐久性に乏しかったり、化学的に不安定だったり、問題もあった。
【0005】
特にフッ素樹脂系の被服剤は密着性と接着直に問題が多く、下地処理をしないと十分な接着力は得られない。またガラスと樹脂の屈折率に差があるため、塗布層が現れ、透明性に欠け、塗布面が見苦しかった。さらに撥水性製が激しいため、ガラス面に塗布した場合空気中のごみや、チリが付着すると、こび着いてしまい雨に濡れても流れ落ち難くなってしまった。そこで、本願発明者はこれら、弊害を乗り越えて以下に記す発明に達した。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の欠陥をかいしようするために、フロン系樹脂チタン元素を導入して程よい親水性を与えると共に優れた接着力も与えることである。
また、従来の有機チタン化合物は複製する塩化水素は三級アミン塩として分離、除去するか、アミン塩として混在したままPH調整のみで製品としていた。本発明の技術は反応物の塩化水素を吸収反応せしめ、PHを調整する必要が無く、画期的な方法を編み出した。これによって、貯蔵、輸送が安定で腐食を起こさない、完成したのである。また、塩化水素を吸着した炭化水素化合物は揮発により除去することが出来る優れた方法を編み出したのである。
【0007】
フッソ系樹脂は耐候性があり、優れた耐久性を有し常温、短時間で作業が達成でき悪臭、汚染などの公害などを発現せず、人体の健康を損なわないこと、安全であることなどを念頭に置き、解決および改良を図るため、種々の検討を重ねた結果以下に述べる発明に至った。以下、具体的に検討した結果について詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の問題点を解決するため、次のような解決手段を発明するに至った。まず光触媒で有名な酸化チタンは白物に限られていたが本発明の被服物を無色透明にすることで、彩色を施すことは出来ず、彩色物の対象外であったが、チタン化合物を透明にすることによって、着色や彩色を施すことが出来るようになった。
すなわち、透明、チタン化合物の溶液に可溶性着色物を溶解して着色し被覆材とするのである。
【0009】
従来、フッソ系樹脂は密着性が悪く、耐剥離強度が悪かったが、チタン原子を分子内に導入、結合せしめることによって、耐剥離強度を高くし、撥水性製を低くして、水に対する濡れ特性を著しく向上したのが本願発明の最大の業績である。
チタンの原料は4塩化チタンで、反応せしめるものは不飽和炭化水素、リンや窒素を含む炭化水素、アミノ酸などを含むフッソ系炭化水素誘導体である。また、それらの混合物を反応せしめても良いが、最適な組み合わせでより良い性能が発揮できる。
【0010】
4塩化チタンとフッソ系炭化水素を反応させるには反応により副生する塩化水素を除去する必要がある、それを可能にしたものが、添加物の不飽和炭化水素である。これが本願発明の最大のポイントである。この不飽和炭化水素を添加することによって、発生其の塩化水素を吸収し塩素化炭化水素となり、そのまま溶剤となるので、乾燥して塗膜に残留することは無いのが塗膜として優れたものになる。したがって、塗布層の防食効果が向上し、塗布基材の変質を防ぎ効果は甚大なものがある。
【0011】
チタン元素に複数の不飽和基を有する炭化水素分子を結合せしめることにより、遊離塩酸を除去し、撥水性の高い有機チタン誘導体を得ることが出来る。チタン化合物は濡れ特性に優れているのが特徴であるが、撥水性を付与したチタン誘導体も別な用途で珍重される。
また、結合せしめるチタンを増減することによって、水に対する親和性を調節出来、フッソ系ポリマーにチタン基を含む誘導体を導入することにより水に対して親和性が良くなり、撥水性が改善される。溶液の安定性を保つためには、少量の水を加えると、析出してもエマルジョンを形成し溶液の安定性がよくなる。
【0012】
本剤は今までのフッソ系ポリマーには見られない親水性でかつ剥離強度の優れた、安定性に富む画期的な、被覆材の開発に成功したのである。この被覆材は透明性、表面光沢があり、表面硬度が高く、化学的に安定で、かつ経時変化することがなく、温湿度変化、日光などによる変質が無く、貯蔵、運搬に際して極めて安定である。安定性、安全性、貯蔵性は極めて良好である。
【0013】
有機チタン化合物の水溶液は徐々に加水分解して、酸化チタンを析出して白濁し更には、底部に沈殿してしまう。加水分解を防止し、酸化チタンの析出を防止するには高度な反応技術が必要である。まず、チタンと反応せしめる、対象物と化学量論的に等価で、完全に反応が終結せしめる必要がある。また反応終結後の溶液安定剤が必要である。とくに、中性からアルカリ性サイドで不安定になるので、高等技術それらの難問を解決した。
【0014】
繊維製品に蛍光染料、蛍光増白剤を混合して表面加工した繊維製品は夜間などで光に照射されたとき認識され易いので安全性の向上に貢献できる。また、真珠や宝飾品の被覆剤に用いた場合は透明性、光沢性が優れていることから、さらに蛍光色が加味され、更に綺麗な装飾品が出来上がる。
ガラスや鏡などの被覆剤とした場合は、ガラスの屈折率に近いため、塗布した場合、透明性に優れ、チタンの触媒効果と相まって汚れ難く、雨や水などにより汚れが流れ落ちる。また光沢性が優れていることから自動車の被覆剤、デスプレーの表面コーテング剤、スクリーンなどの保護膜として極めて有効である。
【発明の実施形態】
【0015】
本発明の実施に当たり、4塩化チタンは塩素の含有量が多いので、反応で生成した塩酸を中和するのがポイントとなる、反応によって出来た塩酸をトリエチルアミンなどのアルカリ物質で中和して除去する方法もあるが、この方法は生成した塩酸塩が腐食の原因となるので出来ることなら、かような方法は避けたい。
【0016】
また、生成した塩酸塩が製造物に塩の形で取り込まれると、後ほど製品になった物質は腐食や、塩害のような害を及ぼす。その生成した塩化水素を2重結合や3重結合を有する化合物に反応せしめ、塩素付加物として塩化水素を除去し、塩化水素酸塩を生成させずに有機チタン誘導体を製造出来るのである。更に組み合わせによって、アルカリ性にし、塩素化合物を揮発せしめることにより、塩化物を系外に除去して、塩素フリーのチタン誘導体を得ることが出来るのが大きな特徴である。
【0017】
反応の結果生成する塩化水素アクセプターとして2重結合を複数有する化合物はヂシクロペンタヂデン、シクロオクタジエン、イソプレンなどが良く、発生した塩化水素を2重結合に付加して塩素誘導体にかえてしまう。この生成した塩化物は揮発して被服物に残留しないので後で問題を起こすことは無い。また2重結合が多数なくても、3重結合を有するアセチレン誘導体を塩化水素アクセプターに用いてもよい。アセチレン誘導体は反応性が高く、塩化水素アクセプターとしては優れている。
【0018】
用いるフッソ系樹脂はフッ化ビニリデンと酢酸ビニルなどの共重合体が良く、重合開始剤は過酸化水素がよい。過酸化水素を重合の開始剤に用いると末端が水酸基となり、チタンが結合し易くなる。もちろんトリフッ化ビニルなども、共重合させることも可能である。もちろん、市販のフッソ系重合物を用いてもなんら不都合なことは無い
以下、実施例をもって具体的に説明する。
【0019】
[実施例]は以下に、実施例を示すことによりさらに本発明を説明する。また、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
48gのフッカビニデン、10gの酢酸ビニルを350gの酢酸エチルと250gのエチルセルソルブの混合液に溶かし更に純度34.5%の過酸化水素7gを加え攪拌しながら初め45〜50℃の温度で重合を開始して、徐々に温度を上げ最後に70〜80℃で8時間、窒素ガスを軽く吹き込みながら重合する。概重合液に11gの純度50%の4塩化チタンと9gのジシクロペンタジエンを加えて反応したものを被覆材として、ガラスや鏡に塗布したものは、親水性が程よく良好な汚れ防止の効果が認められた。
【実施例2】
【0020】
市販のダイキン工業(株)製フッソ系ポリマー液100g(GK−570,60%溶液)を850gの酢酸エチルに溶かし21gの50%4塩化チタンと45gの1,4ブチンギオールを加えて反応させて得られたポリマー液を金属ステンレス板に塗布し、150℃で2時間焼き付けたものは表面光沢、表面硬度が抜群で優れた被覆物が得られた。
【実施例3】
【0021】
市販のフッソ系樹脂溶液ボンフロン#5100(旭硝子コートアンドレジン)100gを750gのn−11のノルマル炭化水素に溶かし、さらに21gの4塩化チタンと45gのジシクロペンタジエンを加えて攪拌、反応により得られた反応物をそのまま被覆材として、赤色系蛍光染料ナフタレングリーンVを0.5g溶かし、真珠に表面に塗布して得られたものは素晴らしい蛍光色の真珠となった。
【実施例4】
【0022】
実施例1で得られたポリマーに蛍光増白剤ブランコホールACFを0.4g溶かして黄ばんだ絹織物の繊維を処理したら黄ばみがとれて、素晴らしい光沢の繊維に再生できた。
【実施例5】
【0023】
実施例1得られたポリマーを電解研磨により再生した銀製装飾品を処理したものは、長期にわたって光沢を維持することが出来た。
【実施例6】
【0024】
実施例1得られたポリマーをタイル張り外壁に塗布したら、綺麗な外観を呈し、長期に亘り汚れを防止出来た。
【実施例7】
【0025】
実施例1得られたポリマーはステンドグラス系工芸品を作る際の加工工程で材料の離型性が良いために、作業能率に改善がもられ、変色や錆から装飾品を守ることができた、さらに金属に対して良好な防錆効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂にチタンを反応せしめる際に複数の二重結合有する炭化水素もしくは三十結合を有する炭化水素を共存せしめて、チタン元素を結合せしめることを特徴とする、密着性、耐剥離性、耐候性等の優れたフッ素系樹脂被覆剤。
【請求項2】
請求項1におけるフッ素系樹脂に着色剤を含むことを特徴とする密着性、耐剥離性、耐候性等の優れた着色用フッ素系樹脂被覆剤。
【請求項3】
請求項1におけるフッ素系樹脂に蛍光染料、蛍光増白剤を含むことを特徴とする密着性、耐剥離性、耐候性等の優れた着色用フッ素系樹脂被覆剤。

【公開番号】特開2008−291197(P2008−291197A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164335(P2007−164335)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(391065884)株式会社サンケン (5)
【Fターム(参考)】