説明

密着性の促進

【課題】ニッケルめっきされたリードフレームへの成形物の密着性を促進させる。
【解決手段】ニッケルおよびニッケル合金層のエッチング方法を開示する。本発明のエッチング組成物は、無機酸と、複素環式窒素化合物とを含む。さらに、本発明のエッチング方法は、ニッケルまたはニッケル合金層のアノードエッチングを含むことができる。本発明の方法は、半導体パッケージングの製造において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路(IC)デバイスのニッケルめっきされたリードフレームへの成形物の密着性の促進に関する。特に、本発明は、成形物とニッケルめっきされたリードフレームとの間の密着性を向上させるための、半導体集積回路(IC)デバイスのニッケルめっきされたリードフレームに対する成形物の密着性の促進に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、リードフレームは、多くの個別のユニットの長いストリップにおいて製造される。これらの長いストリップは、1〜5本のリードフレームを収容するのに十分な幅であってよい。リードフレームは、製造中にリードフレームを配置するために搬送レールおよびガイドホールを取り付けることができる。リードフレームは、リード端部とリードフィンガーとを有する複数のリード、タイバー、およびダイパッドで構成されることができる。ダイパッドは、リードフレームの中央に設置され、これは半導体チップを実装することができる領域を提供する。ストリップがリードフレーム1つ分を超える幅である場合、そのストリップはマトリックスと呼ばれる。
【0003】
ほとんどのICデバイスは、リードフレーム周囲に組み立てられる。従来のリードフレームめっきプロセスでは、銀、パラジウム、ニッケル、または銅の清浄で非反応性の仕上げを有するリードフレームが製造される。パッケージング中にこのようなリードフレームのダイパッドのダウンセットが行われ、シリコンウエハまたは半導体チップなとのチップがダイパッドに取り付けられる。チップの接続領域、たとえば、ボンドパッドは、ワイヤーボンドによってリードフレームのリードフィンガーに接続される。次に、搬送レールなどの過剰のリードフレーム材料は切り落とすことができ、ダイパッド、チップ、リード、および関連する接続はプラスチック成形化合物中に封止される。
【0004】
半導体ICパッケージの故障の原因の1つは、リードフレームからのプラスチック成形化合物の剥離である。これは、プラスチック成形化合物の不適切な硬化および「ポップコーン破壊」(popcorn failure)などの種々の原因によって生じ得る。ポップコーン破壊は、半導体デバイスのパッケージング中に封止下で水などの液体が閉じ込められる場合、またはプラスチック成形中に液体の浸出または蒸気の凝縮が起こる場合に生じ得る。さらに、プラスチック成形化合物は、本来、飽和が起こるまで環境から液体を吸収することができる。このような液体は気化することがあり、たとえば、蒸気によって、封止下の圧力が上昇することがある。この圧力上昇によって壊滅的な金型の破壊が生じることがある。
【0005】
封止不良は、はんだリフロー温度、たとえば215℃〜240℃の範囲の温度での、チップとダイパッドの間などの異なるデバイス材料間の熱的な不整合によって生じる場合もある。このような不整合は、プラスチック成形化合物によって吸収された液体が加熱されることによって生じる圧力によって悪化することがある。これらの応力の複合作用によって、密着性が低下し、特にダイパッドの底面とプラスチック成形化合物との間で剥離が生じ、封止の亀裂または不良が生じうる。
【0006】
これらの問題を解決するために、ダイパッドとプラスチック成形化合物との間の密着性を改善するプラスチック成形化合物の選択および開発の努力がなされてきた。応力がより少なく、より強靱で、湿気の吸収がより少なく、より優れた密着性が得られる封止が提案されている。しかしながら、これらでは問題が解消されていない。さらに、一般に特殊な封止は、より高価であるので、それらの使用は、製造コストが増加する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,459,103号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
米国特許第5,459,103号明細書には、封止の密着性が強化されたリードフレームの形成方法が開示されている。この方法は、リードフレームを銅ストライクでめっきし、銅ストライクを酸化剤に選択的に曝露して酸化第二銅層を形成することを含む。このようなリードフレームにチップが取り付けられ、続いてプラスチック成形化合物中に封止される。銅リードフレームへの封止の密着性を強化する方法は存在するが、ニッケルまたはニッケル合金の成形化合物への密着性を改善し、「ポップコーン」効果を防止するために水分に対する感受性を低下させる必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、一つの方法は、1種以上の無機酸と1種以上の複素環式窒素化合物とを含む組成物を提供するステップと;該組成物をニッケルまたはニッケル合金層に適用してその層をエッチングするステップとを含む。
【0010】
別の一態様において、一つの方法は、1種以上の無機酸と1種以上の複素環式窒素化合物とを含む組成物を提供するステップと;該組成物をニッケルまたはニッケル合金層に適用するステップと;アノード電流を該ニッケルまたはニッケル合金層に印加して該ニッケルまたはニッケル合金層をエッチングするステップとを含む。
【0011】
さらに別の一態様において、一つの方法は、1種以上の無機酸と1種以上の複素環式窒素化合物とを含む組成物を適用するステップであって、該複素環式窒素化合物がチアゾールおよびメルカプタンから選択されるステップと;該組成物をニッケルまたはニッケル合金に適用して該ニッケルまたはニッケル合金をエッチングするステップとを含む。
【0012】
さらに別の一態様において、一つの方法は、1種以上の無機酸と1種以上の複素環式窒素化合物とを含む組成物を提供するステップであって、該複素環式窒素化合物がチアゾールおよびメルカプタンから選択されるステップと;該組成物をニッケルまたはニッケル合金に適用するステップと;アノード電流を該ニッケルまたはニッケル合金に印加して、ニッケルまたはニッケル合金をエッチングするステップとを含む。
【0013】
本発明のエッチング方法によって、ニッケルおよびニッケル合金層は粗面化され、それによってこれらの層はアスペライツ(asperites)を有するようにテクスチャー加工される。このテクスチャー加工によってニッケルおよびニッケル合金は、テクスチャー加工されたニッケルまたはニッケル合金層上に堆積可能な、例えば別の金属などの別の材料、または有機ポリマー材料などの誘電材料との結合を形成できるようになる。したがって、本発明のエッチング方法は、半導体パッケージング用のリードフレームなどの電子デバイス用の部品を含む種々の物品の製造において、ニッケルおよびニッケル合金層のエッチングに使用することができる。
【0014】
半導体パッケージングは、そのパッケージングが極端な温度および湿度、ならびに高温と低温との間の多数のサイクルに耐えられることを保証することを目的として製造される。半導体を封止するために使用される誘電体は、半導体チップ、リードフレーム、およびダイ接着材料の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数を有する。その結果、パッケージングが高温と低温との間のサイクルにかけられると、金属と誘導体との間の界面で応力が発生する。時間が経過すると、これによってワイヤーボンドが破壊されることがある。さらに、金属−誘電体界面における応力によって、パッケージに水分が入り込むことがある。この水分は、パッケージおよび半導体チップの金属成分を腐食させることがある。パッケージが凍結温度にさらされると、水分が膨張して、誘導体成形化合物と金属との間で分離が生じることがある。逆に、パッケージが高温にさらされると、水分が蒸気に変化して、分離が生じたり、極端な場合には「ポップコーン」効果が発生したりすることがある。本発明によるニッケルおよびニッケル合金のエッチング方法は、誘電材料との密着性を提供することで、ニッケルまたはニッケル合金と誘電材料との間の界面における応力の影響を防止または軽減する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書全体で使用される場合、文脈上明確に他の意味を示すのでなければ、下記の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏温度、g=グラム、L=リットル、mL=ミリリットル、mm=ミリメートル、A=アンペア、dm=デシメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル、およびppm=百万部当たりの部数;用語「電気めっき」、「めっき」、および「堆積」は本明細書全体で互いに交換可能に使用され;用語用語「皮膜」および「層」は本明細書全体で互いに交換可能に使用される。すべての数値範囲は、端点の値を含み、そのような数値範囲が最終的に100%となると論理的に見なされる場合を除けば、あらゆる順序で組み合わせることができる。
【0016】
本発明のエッチング組成物は1種以上の無機酸を含む。このような酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、およびフッ化水素酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。典型的には無機酸は、50g/L〜500g/L、またはたとえば75g/l〜250g/Lの量で使用される。
【0017】
1種以上の無機酸は1種以上の複素環式窒素化合物と混合される。複素環式窒素化合物としては、チアゾールおよびメルカプタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような複素環式窒素化合物は、0.05g/L〜20g/L、またはたとえば0.1g/L〜15g/Lの量でエッチング組成物中に含まれる。
【0018】
メルカプタンとしては、メルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなメルカプタンは、文献から調製することもできるし、市販のものを入手することもできる。
【0019】
メルカプトトリアゾールは下記の一般式を有する:
【0020】
【化1】

【0021】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、RおよびRは独立に、置換または非置換の(C〜C18)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである。置換基としては、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、スルホ、スルファミル、置換スルファミル、スルホニルフェニル、スルホニル−アルキル、フルオロスルホニル、スルホンアミドフェニル、スルホンアミド−アルキル、カルボキシ、カルボキシレート、ウレイド、カルバミル、カルバミル−フェニル、カルバミルアルキル、カルボニルアルキル、およびカルボニルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなメルカプトトリアゾールとしては、5−エチル−3−メルカプト−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−ペンチル−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジフェニル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−フェニル−5−ウンデシル−1,2,4−トリアゾール、4,5−ジエチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−エチル−3−メルカプト−5−ペンチル−1,2,4−トリアゾール、4−エチル−3−メルカプト−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−p−アミノフェニル−4−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−p−アセトアミドフェニル−4−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−p−カプロンアミドフェニル−4−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、および4−エチル−5−p−ラウロアミドフェニル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
メルカプトテトラゾールは下記の一般式を有する:
【0023】
【化2】

【0024】
式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである。置換基としては、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、置換アミノ、スルホ、スルファミル、置換スルファミル、スルホニルフェニル、スルホニル−アルキル、フルオロスルホニル、スルホアミドフェニル、スルホンアミド−アルキル、カルボキシ、カルボキシレート、ウレイドカルバミル、カルバミル−フェニル、カルバミルアルキル、カルボニルアルキル、およびカルボニルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなメルカプトテトラゾールとしては、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(2−ジエチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、1−(3−メトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(3−ウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−((3−N−カルボキシメチル)−ウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−((3−N−エチルオキサルアミド)フェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−アセトアミドフェニル)−5−メルカプト−テトラゾール、および1−(4−カルボキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
チアゾールは下記の式を有する:
【0026】
【化3】

【0027】
式中、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なって、水素、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、置換または非置換のフェニル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、R−CONH−であり、Rは、水素、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、置換または非置換のフェニルであり、R、R、およびRは、チアゾール環に縮合する単素環または複素環の一部となることができる。置換基としては、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、置換アミノ、スルホ、スルファミル、置換スルファミル、スルホニルフェニル、スルホニル−アルキル、フルオロスルホニル、スルホアミドフェニル、スルホンアミド−アルキル、カルボキシ、カルボキシレート、ウレイドカルバミル、カルバミル−フェニル、カルバミルアルキル、カルボニルアルキル、およびカルボニルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このようなチアゾールとしては、置換および非置換のアミノチアゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
典型的には、メルカプトテトラゾールが本発明のエッチング組成物中に使用される。より典型的には、Rが置換または非置換のアミノ置換基を含むメルカプトテトラゾールが本発明のエッチング組成物に含まれる。
【0029】
ニッケルまたはニッケル合金含有物品を本発明のエッチング組成物中に浸漬することができ、本発明の組成物をニッケルまたはニッケル合金層上に噴霧することもできる。典型的には、ニッケルまたはニッケル合金層は、本発明のエッチング組成物で少なくとも1秒、またはたとえば3秒〜20秒、またはたとえば5〜10秒処理することにより、ニッケルまたはニッケル合金層がテクスチャー加工される。本発明のエッチング方法によってニッケルまたはニッケル合金層上に形成されたアスペライツ(asperites)は、テクスチャー加工されたニッケルまたはニッケル合金層と、テクスチャー加工されたニッケルまたはニッケル合金層の上に堆積された別の金属または誘電材料との間の密着を促進する。
【0030】
エッチングは18℃〜40℃の温度で行われる。典型的にはエッチングは20℃〜30℃の温度で行われる。
【0031】
場合により、本発明のエッチング組成物を併用してアノードエッチングを行うことができる。アノードエッチングが行われる場合、ニッケルまたはニッケル合金層を含有する物品を本発明のエッチング組成物中に浸漬する。エッチング組成物の無機酸は、完全な電気回路を形成するための導電剤として機能する。エッチング組成物中には、白金/チタンまたはステンレス鋼の電極などの補助電極または対電極も浸漬される。動的水素電極などの参照電極もエッチング組成物中に浸漬される。ニッケルまたはニッケル合金層を有する物品、補助電極、および参照電極は、すべて独立に、例えば、絶縁導体または絶縁線によってポテンシオスタットなどの電圧源に接続される。ポテンシオスタットは、アノード電圧をニッケルまたはニッケル合金層に印加し、カソード電圧を補助電極に印加するために使用される。エッチング時間は、ニッケルまたはニッケル合金層が本発明のエッチング組成物のみを使用してエッチングされる場合に前述した時間と同じである。
【0032】
アノードエッチングは0.01A/dm〜30A/dm、またはたとえば1A/dm〜25A/dmのカソード電流密度で行われる。典型的にはアノードエッチングは10A/dm〜20A/dmのカソード電流密度で行われる。
【0033】
本発明のニッケルおよびニッケル合金のエッチング方法は、半導体デバイスのリードフレームの製造などの密着促進が望ましいあらゆる産業において、ニッケルまたはニッケル合金層をテクスチャー加工し、ニッケルおよびニッケル合金層と、別の金属または誘電体との間の密着を促進するために、使用することができる。本発明の方法は、ニッケルまたはニッケル合金の間の密着性を向上させ、ニッケルまたはニッケル合金と別の金属層または誘電体との間の界面に形成される応力を防止または軽減する。界面の応力を軽減することにより、半導体パッケージに水分が入るのを防止または軽減し、それによってそれらの界面における構成要素の分離を防止し、「ポップコーン」効果を防止する。
【0034】
リードフレームの製造方法においては、最初にリードフレームが洗浄される。これは、電解洗浄剤、アルカリ洗浄剤、または超音波洗浄器、あるいはこれらの組み合わせを使用することによって行うことができる。リードフレームが刻印される場合は、刻印装置によってリードフレーム上に油が付着することがある。リードフレームがエッチングされる場合は、エッチング後に過剰のフォトレジストがリードフレーム上に残留することがある。このような油または過剰のフォトレジストは洗浄中に除去される。
【0035】
電解洗浄は、少なくとも2つの方法で行うことができる。第1の方法では、リードフレームは流体浴中に通すことができ、リードフレームを浴中に浸漬された陽極および陰極に曝露する。リードフレームに付着することがある油やフォトレジストなどの汚れおよび製造残留物は陰極に移動する。あるいは、複数の陰極を浴中に浸漬することができ、正電荷をリードフレームに与えることができる。この場合も、リードフレームに付着する汚れおよび残留物が陰極に移動する。この浴は、アルカリ洗浄剤、すなわち、金属洗浄用の7を超えるpHを有する化合物の水溶液、たとえばPeptizoid(商標)143SP/UDYPREPを含むことができる。洗浄後、リードフレームの表面は、より完全で迅速なめっきが行われるように化学的に活性化される。これは、リードフレームを酸浴中に曝露することによって行うことができる。
【0036】
リードフレームを活性化した後、ニッケルまたはニッケル合金層をリードフレーム上に堆積する。従来の電気化学的または無電解のニッケルまたはニッケル合金めっき浴を使用して、ニッケルまたはニッケル合金層を堆積することができる。ニッケル合金としては、ニッケル/金、ニッケル/パラジウム、およびニッケル/パラジウム/金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。典型的には、リードフレームは、銅、ニッケル、ニッケル合金、銀、金、パラジウム、およびアルミニウムなどの金属でできている。リードフレームがニッケルまたはニッケル合金で構成される場合、ニッケルまたはニッケル合金の皮膜は不要であるため、活性化ステップが不要となり、活性化せずにエッチングステップが行われる。しかし、典型的には、エッチング前に洗浄が行われる。リードフレームがニッケルおよびニッケル合金以外の金属でできている場合は、従来のめっき方法を使用してリードフレームにニッケルまたはニッケル合金がめっきされる。次に本発明のエッチング組成物を使用したエッチングが行われる。あるいは、エッチングは、本発明のエッチング組成物とアノードエッチングとを使用して同時に行うこともできる。
【0037】
ニッケルまたはニッケル合金層をエッチングした後、半導体ダイをダイ取付パッドに取り付け、ワイヤーボンドを完成し、その組立体を誘電体カプセル中に封止する。封止は、リードフレームを金型キャビティ内に配置し、加熱して溶融させた誘電性化合物、または成形化合物を加圧下で金型キャビティ内に注入することによって行われる。次に、成形化合物を硬化させ、金型を取り外すと、リードフレームおよびダイを少なくとも部分的に取り囲む硬化成形化合物が残る。成形化合物がリードフレームに接触しているあらゆる位置で分離が起こりうる。成形化合物は、ポリマーまたは他のエポキシ材料、例えば、Ortho Cresol Novolac Epoxy(商標)(OCN)、ビフェニルエポキシ、およびジシクロペンタジエンエポキシ(DCPD)であってよい。
【0038】
あるいは、封止の前に、1つ以上の追加の金属層を、ニッケルまたはニッケル合金層の上に選択的に堆積することもできる。半導体ICデバイスのパッケージングにおいて、リードフレームのリード端部およびリードフィンガーは、銀、パラジウム、または金などの貴金属のスポットめっきまたはストライクめっきを行うことができる。このように、貴金属ストライクは、リードフレームのニッケルまたはニッケル合金層上に選択的にめっきすることができる。このストライクは、(1)リードフレームの機械的なマスキング、(2)フォトレジスト型マスキング、または(3)リングめっきによって選択的にめっきすることができる。このような選択的めっき方法は当該技術分野において周知である。
【0039】
パラジウムや銀などの貴金属は、少なくとも2つの方法によってニッケルまたはニッケル合金リードフレームにめっきすることができる。第1の方法では、リードフレームをエッチングする前に、リードフィンガーのニッケルまたはニッケル合金のリード端部に選択的に貴金属をめっきすることができる。第2の方法では、フォトレジストをリードフレームに適用することができる。次いでパラジウムまたは銀がめっきされる領域を画定するパターンにより、フォトレジストがリードフレームに適用される。次にフォトレジストを化学線に露光して現像する。フォトレジストを現像した後、未露光のフォトレジストを洗い流し、続いてリードフレームをエッチングすることができる。次に露光したフォトレジストを溶解してリードフレームを残し、このリードフレームは選択的にエッチングされ、パラジウムまたは銀でめっきされる。次にリードフレームは成形化合物で封止される。あるいは、金などの別の金属層をパラジウムまたは銀上に堆積してもよい。従来の無電解方法の電気化学を使用して、パラジウムまたは銀の上に金を堆積することができる。次にリードフレームは成形化合物で封止される。
【0040】
本発明のエッチング方法は、テクスチャー加工されたニッケルまたはニッケル合金層を提供し、これによって封止中のニッケルおよびニッケル合金層と成形化合物との間の密着性が向上する。したがって、熱膨張や半導体パッケージ中への水分の侵入により生じる分離が減少する。
【0041】
半導体パッケージングにおけるリードフレームの製造に関して本発明の方法を説明しているが、本発明のニッケルおよびニッケル合金のエッチング方法は、ニッケルおよびニッケル合金のエッチングが望ましい他の物品の製造においても用いることができる。他の物品としては、コネクタ、オプトエレクトロニクス部品、およびプリント回路基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は本発明の実施形態をさらに説明することを意図しており、本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【0043】
実施例1
5つの真鍮リードフレームを、Peptizoid(商標)143P/UDYREPの水溶液中で電解洗浄する。これらのリードフレームを、流体浴中に通し、そこでリードフレームを、水溶液中に浸漬された白金/チタンの陽極および陰極に曝露する。この水溶液のpHは7である。
【0044】
リードフレームを洗浄した後、それらを脱イオン水で洗浄し、希硫酸溶液を使用して活性化させる。これらのリードフレームを再び脱イオン水で洗浄し、続いて、下記表に示すニッケル電気めっき配合物を使用して5μmのニッケル金属層をめっきする。
【0045】
【表1】

【0046】
電気化学めっきは、60℃において電流密度2A/dmで行う。次に、ニッケルで被覆されたリードフレームを脱イオン水で洗浄し、各リードフレームを、10重量%の硫酸、10重量%の塩酸、および5g/lの1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾールを含むエッチング組成物中に浸漬する。
【0047】
白金/チタンの対電極および水素参照電極を、ニッケルで被覆されたリードフレームが入れられた各エッチング組成物中に浸漬する。リードフレーム、対電極、および参照電極をポテンシオスタットに接続する。ポテンシオスタットは、アノード電圧をリードフレームに印加し、カソード電圧を白金/チタン補助電極に印加する。エッチングは30℃において5秒間行う。電流密度は10A/dmである。
【0048】
リードフレームをエッチングした後、それらをエッチング組成物から取り出し、脱イオン水で洗浄する。ニッケルめっきされたリードフレームを、次に硫酸希薄溶液で活性化させる。パラジウム層を選択的にめっきするために、エッチングされたニッケル層にパターニングされたマスクを適用する。この電気化学的パラジウム組成物を下記表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
エッチングされたニッケル層上に2μmのパラジウム層が選択的に堆積されるまで、電気めっきを電流密度10A/dm、50℃で行う。次にリードフレームを脱イオン水で洗浄する。
【0051】
パターニングされたマスクをこのリードフレームに適用し、リードフレームに自己触媒無電解金浴を噴霧して、パラジウム層上に1μmの金層を堆積する。この自己触媒無電解金浴を下記表に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
金めっきされたリードフレームを次に脱イオン水で洗浄し、風乾する。リードフレームを風乾した後、ビフェニルエポキシで封止する。リードフレームを従来の金型キャビティ内に配置し、加熱したビフェニルエポキシを加圧下で金型内に注入する。ビフェニルエポキシを硬化させ、金型を取り外すと、リードフレームを取り囲んだ硬化ビフェニルエポキシが残る。リードフレームからのビフェニルエポキシの分離または亀裂の形跡は見られないと予想される。「ポップコーン」効果も起こらないと予想される。
【0054】
実施例2
5つの真鍮リードフレームを、Peptizoid(商標)143P/UDYREPの水溶液中で電解洗浄する。これらのリードフレームを、流体浴中に通し、そこでリードフレームを、水溶液中に浸漬された白金/チタンの陽極および陰極に曝露する。この水溶液のpHは7である。
【0055】
次にリードフレームを脱イオン水で洗浄し、希塩酸溶液を使用して活性化させる。これらのリードフレームを再び脱イオン水で洗浄し、続いて実施例1の表1に示すニッケル浴を使用して5μmのニッケル層を電気めっきする。
【0056】
次に、ニッケルめっきされた各リードフレームを10重量%の硫酸、10重量%の塩酸、および10g/Lの1−(2−ジエチルアミノエチル)−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾールのエッチング組成物を使用して5秒間エッチングする。
【0057】
エッチングされたリードフレームを次に脱イオン水で洗浄し、風乾する。リードフレームを風乾した後、それらをDCPDエポキシで封止する。リードフレームを従来の金型キャビティ内に配置し、加熱したDCPDエポキシを加圧下で金型内に注入する。DCPDエポキシを硬化させ、金型を取り外すと、リードフレームを取り囲んだ硬化エポキシが残る。リードフレームからのエポキシの分離または亀裂の形跡は見られないと予想される。「ポップコーン」効果も起こらないと予想される。
【0058】
実施例3
5つの銅リードフレームを、Peptizoid(商標)143P/UDYREPの水溶液中で電解洗浄する。これらのリードフレームを、流体浴中に通し、そこでリードフレームを、水溶液中に浸漬された白金/チタンの陽極および陰極に曝露する。この水溶液のpHは7である。
【0059】
リードフレームを洗浄した後、それらを脱イオン水で洗浄し、希硫酸溶液を使用して活性化させる。これらのリードフレームを再び脱イオン水で洗浄し、続いて、下記表に示すニッケル合金電気めっき配合物を使用して5μmのニッケル/リン合金層をめっきする。
【0060】
【表4】

【0061】
電気化学めっきは、50℃において電流密度10A/dmで行う。次に、ニッケル/リンで被覆されたリードフレームを脱イオン水で洗浄し、各リードフレームを、10重量%の硫酸、10重量%の塩酸、および1g/lの3−メルカプト−5−メチル−4−フェニル−1,2,4−トリアゾールを含むエッチング組成物中に浸漬する。エッチングは10秒間行う。
【0062】
リードフレームをエッチングした後、それらをエッチング組成物から取り出し、脱イオン水で洗浄する。ニッケル/リンがめっきされたリードフレームを、次に希硫酸溶液で活性化させる。パラジウム層を選択的にめっきするために、エッチングされたニッケル層にパターニングされたマスクを適用する。この電気化学的パラジウム組成物を実施例1の表2に示す。
【0063】
エッチングされたニッケル/リン層上に2μmのパラジウム層が選択的に堆積されるまで、電気めっきを電流密度10A/dmにおいて50℃で行う。次にリードフレームを脱イオン水で洗浄する。
【0064】
パターニングされたマスクをこのリードフレームに適用し、リードフレームに自己触媒無電解金浴を噴霧して、パラジウム層上に1μmの金層を堆積する。この自己触媒無電解金浴を実施例1の表3に示す。
【0065】
金めっきされたリードフレームを次に脱イオン水で洗浄し、風乾する。リードフレームを風乾した後、それらをOCNエポキシで封止する。リードフレームを従来の金型キャビティ内に配置し、加熱したビフェニルエポキシを加圧下で金型内に注入する。OCNエポキシを硬化させ、金型を取り外すと、リードフレームを取り囲んだ硬化エポキシが残る。リードフレームからのOCNエポキシの分離または亀裂の形跡は見られないと予想される。「ポップコーン」効果も起こらないと予想される。
【0066】
実施例4
リードフレームが銅であり、エッチング組成物が、5重量%の硫酸、5重量%の塩酸、および10g/Lのアミノチアゾールを含むこと以外、実施例1と同様にリードフレームエッチング、金属化、および封止を繰り返す。
【0067】
リードフレームからのビフェニルエポキシの分離または亀裂の形跡は見られないと予想される。「ポップコーン」効果も起こらないと予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種以上の無機酸と、1種以上の複素環式窒素化合物とを含む組成物を提供するステップと;
b)前記組成物をニッケルまたはニッケル合金層に適用して前記層をエッチングするステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ニッケルまたはニッケル合金をアノードエッチングするステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記複素環式窒素化合物がチアゾールおよびメルカプタンから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記メルカプタンがメルカプトトリアゾールおよびメルカプトテトラゾールから選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記メルカプトトリアゾールが下記式:
【化1】

(式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、RおよびRは独立に、置換または非置換の(C〜C18)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである)
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記メルカプトテトラゾールが下記式:
【化2】

(式中、Mは、水素、NH、ナトリウム、またはカリウムであり、Rは、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、あるいは置換または非置換の(C〜C10)アリールである)
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記チアゾールが下記式:
【化3】

(式中、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なって、水素、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、置換または非置換のフェニル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、R−CONH−であり、Rは、水素、置換または非置換の(C〜C20)アルキル、置換または非置換のフェニルであり、R、R、およびRは、チアゾール環に縮合する単素環または複素環の一部となることができる)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
エッチングされたニッケルまたはエッチングされたニッケル合金層の上に1種以上の貴金属を堆積するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記1種以上の貴金属が、前記エッチングされたニッケルまたはエッチングされたニッケル合金層の上に選択的に堆積される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
エッチングされたニッケルまたはエッチングされたニッケル合金層が誘電体で封止される、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2009−147336(P2009−147336A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−314058(P2008−314058)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】