説明

密装填用治具

【課題】 流動性爆薬を機械装填する際、発破孔に流動性爆薬を容易に確実に密装填することができる密装填用治具を提供すること。
【解決手段】 装填パイプ1の先端に、放射状に広がるスリット3を有する密装填用治具2を取り付けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発破孔に流動性爆薬を装填する際に用いられる密装填用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に記載されているスラリー爆薬組成物や非特許文献1に記載されているバルクエマルション爆薬など、装填機およびそれに装着されたホースあるいはパイプ(以下、「装填パイプ」という)を介して流動性を持つ流動性爆薬を発破孔に直接装填する方法が開発されている。
【0003】
その装填方法は、例えば特許文献2に記載されたように、発破孔の最底部(以下、「孔底」という)に紙やプラスチックフィルムなどで包装したカートリッジ爆薬に雷管を挿入した流動性爆薬を起爆する親ダイを配置し、次に親ダイに密着させて流動性爆薬を装填していくか、または、まずは孔底から流動性爆薬を装填し、その後に流動性爆薬に密着させて親ダイを配置する方法が主流となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−146789号公報
【特許文献2】特開2005−326107号公報
【非特許文献1】田口琢也他、バルク装填エマルション爆薬、社団法人火薬学会1999年度年会講演要旨集、社団法人火薬学会、1999年5月13日、通巻第50号、p.165−166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、何ら工夫もされていない通常のパイプ形状をした装填パイプを使用し、流動性爆薬を発破孔に排出していく場合、作業者は発破孔に装填されていく流動性爆薬を視覚で確認することはできず、更に流動性爆薬が、その排出力でパイプを押し出そうとする力(以下、「押出力」という)も小さいため、触覚でも確認することは難しく、作業者は装填パイプを流動性爆薬の排出に合わせて引き出し、発破孔内を流動性爆薬で密装填することは困難であった。具体的には、装填パイプの引き出しが早いと発破孔内に空間部が生じて、発破による十分な起砕結果を得ることができなかった。
【0006】
また、装填パイプの引き出しが遅いと、装填パイプ先端が流動性爆薬に埋もれてしまい、パイプを引き出した時に、パイプ周辺の流動性爆薬も一部引き出して、やはり発破孔内に空間部を生じさせたり、パイプ先端に付着した流動性爆薬が切羽に落ちたり、作業者に付着したりして、保安上、衛生上良くなかった。
【0007】
本発明は、流動性爆薬を機械装填する際、発破孔に流動性爆薬を容易に確実に密装填することができる密装填用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、流動性爆薬を装填していくと先端部分が放射線状に広がるスリットを有する密装填用治具を用いることにより課題解決が可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の通りである。
【0010】
(1)流動性爆薬を機械装填する際、岩盤に削孔された発破孔に流動性爆薬を密に装填するために使用する密装填用治具であって、装填パイプ又は装填ホースの先端に着脱容易な円筒状をしており、その先端部分が放射状に広がるスリットを有することを特徴とする密装填用治具。
【0011】
(2)前記スリットの長さが前記装填パイプ又は装填ホースの外径の1倍から3倍であり、前記密装填用治具の先端部分の外周を均等に6分割から16分割されていることを特徴とする密装填用治具。
【発明の効果】
【0012】
本発明の密装填用治具を使用することによって、発破孔に流動性爆薬を容易に確実に密装填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
図1に本発明の密装填用治具の一例を示す。流動性爆薬を機械装填する際、岩盤に削孔された発破孔に流動性爆薬を密に装填するために使用する本発明の密装填用治具2は、装填パイプ1の先端に取り付けられ、着脱可能な円筒状となっている。発破孔内は荒れており、密装填用治具2が摩耗して交換が必要となった場合などには、取り外して新しい密装填用治具2に付け替えることができるようになっている。
【0015】
密装填用治具2の取り付けは、粘着テープで固定するか、或いは一時的に接着する方法があるが、粘着テープを用いる方が交換が容易で好ましい。更に、耐摩耗性を有する粘着テープを用いる方が使用時に外れ難いので、より好ましい。
【0016】
本発明の密装填用治具2の先端部分には、図1に示すように放射状に広がるスリット3を有し、発破孔に流動性爆薬が排出されていく際、流動性爆薬が発破孔壁と装填パイプ1との隙間を発破孔の入口(以下、「孔口」という)に向かって移動しようとして生じる力を、放射状に広がった密装填用治具2の先端部が受け、装填パイプ1が発破孔から出て行こうとする力を増幅させる効果を備えている。即ち、流動性爆薬の押出力を密装填用治具2の先端部が受けることにより、装填パイプ1が移動し易くなるのである。本発明の密装填用治具2が放射状に広がった状態の一例を図1(b)に示す。図中4は放射状に広がった密装填用治具2を示す。
【0017】
本発明の密装填用治具2の材質には、流動性爆薬によって放射状に広がり、装填パイプ1を発破孔から押し出そうとする力を受け止め、発破孔への挿入時に抵抗がなく、耐久性、特に耐摩耗性が求められる。例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどを使用することが好ましい。
【0018】
本発明の密装填用治具2は、それが有するスリット3の長さLが、装填パイプ1の外径の1倍から3倍で、密装填用治具2の先端部分の外周を均等に6分割から16分割されている。スリット3の長さLが短すぎると、流動性爆薬が発破孔に排出されていく際に装填パイプ1が発破孔から出て行こうとする力を十分に増幅させることはできず、スリット3の長さLが長すぎると、装填パイプ1を発破孔に挿入する際に密装填用治具2の先端が発破孔壁に当たってスリット3が広がり、抵抗が大きくなって、装填パイプ1を挿入しづらくなる。密装填用治具2の先端の分割数は、少なすぎると広がり難くなり、多すぎると流動性爆薬が先端に付着して、発破孔から装填パイプ1を抜いた時に、切羽に落ちたり、作業者に付着したりして、保安上、衛生上良くない。密装填用治具2の分割数は6分割〜16分割が好ましく、より好ましくは8分割〜12分割である。
【0019】
本発明の密装填用治具2の厚みは、0.5mm〜2mmが好ましい。厚すぎると、放射状に広がり難く、発破孔への挿入時に抵抗になり易い。また、薄すぎると、流動性爆薬の押出力を十分に受けることができない。
【0020】
本発明の密装填用治具2の内径は、親ダイの外径よりも小さくても良いし、大きくても良い。親ダイを密装填用治具2の中に配置して、装填パイプ1を発破孔に挿入し、流動性爆薬を排出させることによって孔底に親ダイを配置する場合は、密装填用治具2の内径は親ダイよりも大きい方が良い。親ダイを孔口に配置し、装填パイプ1で親ダイを孔底、或いは発破孔の途中に押し込む場合は、密装填用治具2の内径は親ダイよりも小さい方が好ましい。
【0021】
尚、装填パイプ1の代わりに充填ホースを適用することが出来る。
【実施例】
【0022】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0023】
[実施例1〜4]
爆薬装填装置に接続した内径18mm、外径22mm、長さ2mのポリカーボネート製の装填パイプ1の先端に、スリット3の長さLが装填パイプ1の外径の1倍(実施例1、2)、3倍(実施例3、4)、密装填用治具2の先端部外周の分割数6(実施例1、3)、分割数12(実施例2、4)のナイロン6製の密装填用治具2をビニールテープで接続した。この装填パイプ1を発破孔を模擬した一端が閉塞された内径50mm、長さ2mのアクリルパイプに完全に挿入した後、爆薬装填装置を運転させてスラリー爆薬を排出させたところ、いずれも直ちに装填パイプ1が自然に排出され始め、長さ1.5mまで排出させていったが、装填パイプ1は作業者が装填パイプ1を引き出す必要もなく、最後まで自然に排出された。排出後、密装填用治具2及び装填パイプ1を観察したところ、スラリー爆薬によって埋もれた部分はなかった。また、いずれも密装填用治具2への爆薬の付着はわずかであった。
【0024】
更に、実際の発破孔に装填パイプ1を挿入したところ、いずれの装填パイプ1もスムーズに挿入することができた。
【0025】
以上の結果を以下の表1にまとめて示す。
【0026】
[比較例1]
密装填用治具2を装着していない実施例1に用いたものと同じポリカーボネート製パイプを使用し、実施例1と同じ試験を実施した。スラリー爆薬を排出し始めても、装填パイプ1は排出されず、装填パイプ1が長さ35cmスラリー爆薬に埋もれた時点で、自然に排出され始め、最後まで、その状態が続いた。装填パイプ1をアクリルパイプから引き出したところ、装填パイプ1が埋もれた部分のスラリー爆薬も一緒に引き出され、アクリルパイプ内のスラリー爆薬装填部に空間部が生じた。
【0027】
[参考比較例2]
上記各実施例と同様に、爆薬装填装置に接続した内径18mm、外径22mm、長さ2mのポリカーボネート製の装填パイプ1の先端に、スリット3の長さLが装填パイプ1の外径の4倍で分割数12のナイロン6製の密装填用治具2をビニールテープで接続した。この装填パイプ1を実際の発破孔に挿入したところ、引っかかりがありスムーズに挿入することができなかった。
【0028】
[参考比較例3]
上記各実施例と同様に、爆薬装填装置に接続した内径18mm、外径22mm、長さ2mのポリカーボネート製の装填パイプ1の先端に、スリット3の長さLが装填パイプ1の外径の1倍で分割数20のナイロン6製の密装填用治具2をビニールテープで接続した。この装填パイプ1を発破孔を模擬した一端が閉塞された内径50mm、長さ2mのアクリルパイプに完全に挿入した後、爆薬装填装置を運転させてスラリー爆薬を排出させたところ、直ちに装填パイプ1が自然に排出され始め、長さ1.5mまで排出させていったが、装填パイプ1は作業者が該装填パイプ1を引き出す必要もなく、最後まで自然に排出された。しかし、排出後、密装填用治具2を観察したところ爆薬の付着が多かった。
【0029】
以上の結果を以下の表1にまとめて示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の密装填用治具は、流動性爆薬を機械装填する際、発破孔に流動性爆薬を容易に確実に密装填する作業に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明の密装填用治具の一例を示す図、(b)は本発明の密装填用治具が放射状に広がった状態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1…装填パイプ
2…密装填用治具
3…スリット
4…放射状に広がった密装填用治具
L…スリットの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性爆薬を機械装填する際、岩盤に削孔された発破孔に流動性爆薬を密に装填するために使用する密装填用治具であって、装填パイプ又は装填ホースの先端に着脱容易な円筒状をしており、その先端部分が放射状に広がるスリットを有することを特徴とする密装填用治具。
【請求項2】
前記スリットの長さが前記装填パイプ又は装填ホースの外径の1倍から3倍であり、前記密装填用治具の先端部分の外周を均等に6分割から16分割されていることを特徴とする請求項1に記載の密装填用治具。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101829(P2008−101829A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284046(P2006−284046)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)