説明

密閉型筐体

【課題】 密閉型筐体1において、溶接を行うことなく、容易に組み立て可能であり、かつ、高い密閉性を有する。
【解決手段】 筐体の20胴部を形成する、対向する二枚の第一壁部材21、及び、この第一壁部材21と直交し対向する二枚の第二壁部材22と、胴部の上面を覆う天井部10と、胴部20の底面を覆う底部30からなる密閉型筐体1であって、第一壁部材21が、板状部材の両端部長手方向に切込面23,24を有し、かつ、この切込面の長手方向に凸部25を有し、第二壁部材22が、板状部材の両端部長手方向に切込面26,27を有し、かつ、この切込面の長手方向に凹部28を有し、凸部25は、断面あり形状に形成し、かつ、凹部28は、断面あり溝形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接が不要で、簡単に組み立てることができる密閉型筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板金などの金属製の材料により、密閉性を必要とする筐体を製造する場合には、溶接によって、筐体の部材間を接合する必要があった。
しかし、溶接は、溶接部およびその周辺部に、欠陥を生じやすく、熟練を要する作業であり、溶接ひずみや材料の変質に伴う溶接割れが発生しやすいため、製造される筐体の品質に密閉性を維持することは難しい。また、溶接は、製造コストがかかる作業でもある。
なお、溶接が不要であって、簡単に金属製の部材を接続できる組み立て式箱体としては、次のようなものが提供されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−052463号公報(第1頁、第4図)
【特許文献2】実開平7−033131号公報(第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、提供されている組み立て式箱体は、密閉性を有しないため、箱体の内容物を密閉する必要がある場合には、これら組み立て式箱体を使用することができず、屋外などで使用することができない。
【0005】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、溶接を行うことなく、容易に組み立て可能であり、かつ、密閉性を有する筐体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の密閉型筐体は、筐体の胴部を形成する、対向する二枚の第一壁部材、及び、この第一壁部材と直交し対向する二枚の第二壁部材と、前記胴部の上面を覆う天井部と、前記胴部の底面を覆う底部からなる密閉型筐体であって、前記第一壁部材が、板状部材の両端部長手方向に切込面を有し、かつ、この切込面の長手方向に凸部を有し、前記第二壁部材が、板状部材の両端部長手方向に切込面を有し、かつ、この切込面の長手方向に凹部を有し、前記凸部は、断面あり形状に形成され、かつ、前記凹部は、断面あり溝形状に形成された構成としてある。
【0007】
このような構成からなる本発明の密閉型筐体によれば、第一壁部材の断面あり形状の凸部と第二壁部材の断面あり溝形状の凹部を嵌合させることができる。これにより、溶接することなく、胴部の壁部材を組み立てることができる。
【0008】
また、本発明の密閉型筐体の前記天井部は、天部と、この天部の周囲に設けられた天井側部から構成され、かつ、この天井側部の内周は、前記第一壁部材と前記第二壁部材より構成される前記胴部の外周と同一形状に形成された構成としてある。また、前記底部は、胴部に嵌合する底面部と前記胴部の縁部に当接する縁部から構成され、かつ、前記底面部の外周は、前記第一壁部材と前記第二壁部材より構成される前記胴部の内周と同一形状に形成された構成としてある。
【0009】
このような構成からなる本発明の密閉型筐体によれば、天井部を構成する天井部側面部材の内周が胴部の外周と同一に形成されているので、天井部側面部材の内側と胴部の外側が密着する。また、底部を構成する底面部の内周が胴部の外周と同一に形成されているので、胴部の内側と底面部の外側が密着する。
これにより、密閉型筐体を屋外に設置しても、雨水等が入りにくいため、筐体内部の密閉性が保たれる。
【0010】
また、本発明の密閉型筐体の前記第一壁部材と前記第二壁部材の結合部分に、密閉性を強化するねじを挿入するための穴を設けた構成としてある。さらに、本発明は、密閉型筐体の前記天部又は/及び前記底面部と、前記胴部分の接触部分に、密閉性を強化するねじを挿入するための穴を設けた構成としてある。
このような構成からなる本発明の密閉型筐体によれば、壁部材、天井部、底面部に、ねじ穴を設け、ねじにより部材同士を強固に固定し、筐体の密閉性をさらに高めることができる。
【0011】
また、本発明の密閉型筐体の一部に、この密閉筐体内部で発生する熱を放熱するためのフィンを取り付けた構成としてある。
このような構成からなる本発明の密閉型筐体によれば、フィンを取り付けることにより、外気と接する密閉型筐体の表面積が増える。これにより、内部に発熱性のある精密機器等を設置しても、筐体内部の温度上昇を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の密閉型筐体は、溶接を行うことなく、容易に組み立てることができ、高い密閉性を有する。そのため、この密閉型筐体を屋外に設置しても、筐体内部に雨水等が侵入するおそれがなく、防水性を必要とする物品を筐体内部に設置、保管等することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)は、本発明の密閉型筐体の概略全体斜視図であり、(b)は、天井部、胴部、底部の分解斜視図である。
本発明の密閉型筐体1は、屋外に設置しても雨水等が侵入しない金属などの材質で形成され、天井部10、胴部20、底部30から構成されている。
なお、密閉型筐体1の内部に物品を搬入するための扉41が、胴部20の側面部に設けられている。
【0014】
天井部10は、天部11とその外周を形成する天井側部12から形成されている。
また、胴部分20は、角筒状になっており、対向する二枚の第一壁部材と、この第一壁部材と直交し対向する二枚の第二壁部材から形成されている。
さらに、底部30は、胴部20に嵌合する底面部31と、胴部の下縁に当接する縁部32から構成されている。
【0015】
天井部10の天井側部12の内周形状は、胴部20の外周形状と同一であり、天井部10を胴部20に被せると、天上側面部12は、胴部20の外周側面部と密着する。また、底部30の底面部31の側面形状は、胴部20の内周形状と同一であり、底部30を胴部20の下方から挿入すると、底面部31は、胴部20の内周側面部と密着する。
【0016】
図2(a)は、胴部の中央横断面図であり、(b)は、第一壁部材の端部、(c)は、第二壁部材の端部の概略拡大図である。
第一壁部材21の端部は、(b)に示すように、直交する切込面23、24が長手方向に設けられ、さらに、一方の切込面24の中央部分には、壁部材の長手方向に一条の凸部25が設けられている。凸部の断面は、あり形状に形成されている。
また、第二壁部材22の端部は、(c)に示すように、直交する切込面26、27が設けられ、さらに切込面27の中央部分には一条の凹部28が設けられている。凹部の断面は、あり溝形状に形成されている。
【0017】
密閉型筐体1の各部材の材料としては、金属や合成樹脂等を使用できる。
金属や合成樹脂等の材料によって第一壁部材11および第二壁部材22を製造する場合には、鋳造によって材料を型枠に流し込むことで、切込面を形成することができる。
また、密閉型筐体1の内部に、精密機器等を設置して、筐体を使用する場合には、筐体内部の温度が上昇するため、筐体の外部へ放熱容易な熱伝導率の大きい金属を使用することが好ましい。
一般的に、合成樹脂は熱伝導率が小さいため、合成樹脂により密閉型筐体を製造する場合には、熱伝導率の大きい物質(例えば、金属粉)を合成樹脂に添加して、各部材を製造するのが好ましい。
【0018】
図3は、第一壁部材と第二壁部材を嵌合させたときの要部概略拡大図である。また、図4は、胴部20を組み立てる途中における概略斜視図である。
あり形状の凸部を有する第一壁部材21と、あり溝形状の凹部を有する第二壁部材22は、両部材を上下方向からスライドさせて、嵌め込むことができる。
一方の第一壁部材21の両端部に第二壁部材22のそれぞれの一端部を嵌め込み、最後に、図4に示すように、第一壁部材21の両端部を第二壁部材22の端部に嵌め込んで、胴部20を組み立てることができる。
なお、最後に第二壁部材22の両端部分を第一壁部材21の端部に嵌め込み、胴部20を組み立ててもよい。
これにより、いったん枠状に嵌め込んだ第一壁部材21と第二壁部材22は、再度、スライドさせて外さない限り、容易に分解されない。
【0019】
壁部材の断面をあり形状、あり溝形状に形成せずに、単純な凸形状、凹形状に形成した場合であっても、凸形状の断面を凹部形状の断面より若干大きく形成することにより、両壁部材に押圧力または衝撃を加えて両壁部材を嵌め込み、胴部を形成することができる。この場合、両壁部材は上下方向から嵌め込まなくても、横方向から嵌め込むことができる。
これにより、いったん壁部材を組み立てた後は、再度、押圧力または衝撃を加えなければ、壁部材は分解されない。
【0020】
図5は、筐体を構成する各部材にねじ穴を設けた場合の密閉型筐体の全体概略図を示したものである。また、図6は、ねじ穴の断面図を示したものであり、(a)は、第一壁部材と第二壁部材を、(b)は、天井部と胴部を、(c)は、胴部と底部を示している。
図5に示すように、ねじ穴は、天井部10と胴部20の接触面を通して(例えば、天井部ねじ穴42と胴部上面ねじ穴43)、また、第一壁部材21と第二壁部材22の結合面を通して(例えば、第一壁部材21と第二壁部材22に設けた胴部側面ねじ穴44a、44b)、さらに、底部30と胴部20の接触面を通して(例えば、底部ねじ穴46と胴部下面ねじ穴45)設けることができる。
各部材をねじ50によって螺合することにより、部材同士の密着性をさらに高め、筐体の密閉性を上昇させることができる。
【0021】
第一壁部材21と第二壁部材22との間にねじ穴を設ける場合には、図6(a)に示すように、両部材を結合させたときに、第二壁部材22の長手方向から第一壁部材21の短手方向へ向って設けるのが好ましい。このように、ねじ穴を設けることにより、凸部25と凹部28を破壊することなく、ねじ穴を設けることができる。
天井部10と胴部20、または、胴部20と底部30との間にねじ穴を設ける場合には、(b)、(c)に示すように、天井部10を通して胴部20に、または、底部30を通して胴部20にねじ穴を設けることができる。
【0022】
図7は、防水性パッキンを各部材に配置した場合を示したものであり、(a)は、第一壁部材と第二壁部材の場合を、(b)は、天部と胴部の場合を、(c)は、胴部と底部の場合を示している。
なお、防水パッキンは、弾力性を有する材料、例えば、ゴム、ウレタン樹脂などを使用することができる。
【0023】
第一壁部材21と第二壁部材22との間に防水性パッキン47を設ける場合には、図7(a)に示すように、ねじ穴を設けた第一壁部材21と第二壁部材22の接触面の内側に設けるのが好ましい。また、天井部10と胴部20、または、胴部20と底部30との間に防水性パッキン47を設ける場合には、(b)、(c)に示すように、ねじ穴の内側に防水性パッキンを設けるのが好ましい。防水性パッキンをねじ穴の内側に取り付けることにより、ねじ穴からの雨水等の侵入を防止することができる。なお、防水性パッキンは、ねじ穴の内側のみならず、外側に設けてもよい。
防水性パッキンを設け、さらに、部材間をねじ止めすることにより、筐体の密閉性がさらに向上する。
【0024】
次に、本発明にかかる密閉型筐体の他の実施形態について説明する。
図8は、本発明の他の実施形態にかかる密閉型筐体を示す斜視図であり、(a)は、概略全体斜視図であり、(b)は、天井部、胴部、底部の分解斜視図である。
同図に示す本実施形態にかかる密閉型筐体は、筐体を構成する部材に放熱手段としてフィンを取り付けたものである。
したがって、その他の構成部分は、上記実施形態と同様となっており、同様の構成部分については、図中で上記実施形態と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0025】
密閉型筐体1は、高い密閉性を有し、屋外に設置して雨水等の侵入を防ぐことができる。このため、密閉型筐体1の内部に精密機器等を設置して、密閉型筐体1を使用するのに適している。しかし、内部に精密機械等を設置すると、筐体内部の温度が上昇し、精密機器等に悪影響を及ぼすおそれがあるため、筐体内部の温度上昇を防ぐ手段が必要になる。
そこで、図8に示すような密閉型筐体1の外部にフィン29を取り付けることにより、外気と密閉型筐体1の接する表面積を増やし、筐体内部の温度上昇を防ぐことができる。
【0026】
フィン29は、胴部20のみならず天井部10にも取り付けることができる。
なお、密閉型筐体1の内部に設置する精密機械等49は、フィン29が外側に取り付けられた壁部材の内側に接触するように取り付けるのが好ましい。このようにすれば、精密機械等49が発生する熱を直接的に筐体に伝えることができ、筐体外側に取り付けられた板状部材から、熱を外気中へ放出させることができる。
【0027】
本発明の密閉型筐体は、溶接を行うことなく、容易に組み立てることができ、高い密閉性を有する。そのため、この密閉型筐体を屋外に設置しても、筐体内部に雨水等が侵入するおそれがなく、防水性を必要とする部品を筐体内部に保管することができる。また、溶接が不要であるため、組み立てに高い技術力を必要とせず、均一な品質の密閉型筐体を提供することができる。さらに、組み立てるときに溶接しないため、解体も容易である。したがって、本発明の密閉型筐体を廃棄処分する際も、容易に分解して廃棄することができる。
【0028】
以上、本発明の密閉型筐体について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかる密閉型筐体は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、各部材に設けるねじ穴の数は、図5に示す場合に限られず、さらに設けてもよいし、少なくしてもよい。また、フィン29の数も、図8に示す場合に限られず、多く設けてもよいし、少なくてもよい。さらに、フィン29を設ける側壁部も、図8に示す第二側壁部材に設ける場合に限られず、第一側壁部に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1(a)】本発明の密閉型筐体の全体斜視図である。
【図1(b)】本発明の密閉筐体の天井部、胴部、底部の分解斜視図である。
【図2】(a)は、胴部のA−A線断面図、(b)は、第一壁部材の端部の拡大図、(c)は、第二壁部材の端部の拡大図である。
【図3】第一壁部材と第二壁部材を嵌合させたときの斜視図である。
【図4】胴部を組み立てる場合の一例であって、第一壁部材をスライドさせて胴部を組み立てるときの概略斜視図である。
【図5】ねじ穴を密閉型筐体に設けた場合の一例であって、天井部、胴部、底部の概略図である。
【図6】ねじ穴を密閉筐体に設けたときの部分断面図であり、(a)は、胴部の断面図、(b)は、天井部と胴部の断面図、(c)は、胴部と底部の断面図である。
【図7】防水性パッキンを密閉筐体に設けたときの部分断面図であり、(a)は、胴部の断面図、(b)は、天井部と胴部の断面図、(c)は、胴部と底部の断面図である。
【図8(a)】本発明の他の実施形態にかかる密閉型筐体を示す斜視図である。
【図8(b)】本発明の他の実施形態にかかる密閉筐体の天井部、胴部、底部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 密閉型筐体
10 天井部
11 天部
12 天井側部
20 胴部
21 第一壁部材
22 第二壁部材
23 切込面
24a、24b 切込面
25 凸部
26 切込面
27a、27b 切込面
28 凹部
29 フィン
30 底部
31 底面部
32 底上げ部材
41 扉
42〜46 ねじ穴
47 パッキン
49 精密機器等(発熱体)
50 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の胴部を形成する、対向する二枚の第一壁部材、及び、この第一壁部材と直交し対向する二枚の第二壁部材と、前記胴部の上面を覆う天井部と、前記胴部の底面を覆う底部からなる密閉型筐体であって、
前記第一壁部材が、板状部材の両端部長手方向に切込面を有し、かつ、この切込面の長手方向に凸部を有し、
前記第二壁部材が、板状部材の両端部長手方向に切込面を有し、かつ、この切込面の長手方向に凹部を有し、
前記凸部は、断面あり形状に形成され、かつ、前記凹部は、断面あり溝形状に形成されたことを特徴とする密閉型筐体。
【請求項2】
前記天井部は、天部と、この天部の周囲に設けられた天井側部から構成され、かつ、この天井側部の内周は、前記第一壁部材と前記第二壁部材より構成される前記胴部の外周と同一形状に形成された請求項1記載の密閉型筐体。
【請求項3】
前記底部は、胴部に嵌合する底面部と前記胴部の縁部に当接する縁部から構成され、かつ、この底上げ部材の外周は、前記第一壁部材と前記第二壁部材より構成される前記胴部の内周と同一形状に形成された請求項1又は2記載の密閉型筐体。
【請求項4】
前記第一壁部材と前記第二壁部材の結合部分に、密閉性を強化するねじを挿入するための穴を設けた請求項1、2または3記載の密閉型筐体。
【請求項5】
前記天部又は/及び前記底面部と前記胴部分の接触部分に、密閉性を強化するねじを挿入するための穴を設けた請求項1〜4記載の密閉型筐体。
【請求項6】
請求項1〜5記載の密閉型筐体の一部に、この密閉筐体内部で発生する熱を放熱するためのフィンを取り付けた密閉型筐体。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【公開番号】特開2006−26296(P2006−26296A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213266(P2004−213266)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】