説明

密閉容器用ココア飲料組成物

【課題】ココア末の沈澱がなく、加温してもココア飲料成分が凝集しない密閉容器用ココア飲料の提供。
【解決手段】結晶セルロース複合体とキサンタンガムを含有することを特徴とする、密閉容器用ココア飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶セルロース複合体とキサンタンガムを含有する加温される密閉容器入りココア飲料に関する。さらに詳しくは結晶セルロース複合体とキサンタンガムを加える事により、沈澱がなく加温時に凝集しない密閉容器用ココア飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ココア飲料を飲用しようとする場合、市販されている各種粉末ココアをお湯や暖めた牛乳などで溶き必要に応じて砂糖など甘味料を加えて作ったココアを飲用するか、飲料メーカー等が販売する密閉容器入りココア飲料を購入して飲用する。
密閉容器入りココア飲料は、スーパーマーケット、コンビニエンスストアや自動販売機などで販売されているが、ココア飲料に使用されるココア末は沈降しやすいため、製造後長期間保存される密閉容器入りココア飲料では、容器の底にココア末の沈澱が生じると言う問題があり、ココア末粒子の懸濁安定性改善の目的で安定剤を用いるのが一般的である。ココア飲料の安定剤としては結晶セルロース複合体が広く利用されている(例えば、特許文献1〜5参照)。更に結晶セルロース複合体は、粘度が低く食感への影響がほとんどないという点も好んで用いられる理由である。
【0003】
しかしながら、結晶セルロース複合体を含有した密閉容器入りココア飲料を加温した場合、ココア飲料成分が凝集してしまう問題が明らかになった。
この問題点は、従来から用いられてきた金属製の缶やブリックパックなど紙包装容器では、内容物が見えないこともあり、加温時のココア飲料成分が凝集するという問題点は顕在化していなかったが、近年、お茶やミネラルウォーターなどの容器として多く用いられている透明容器のPETボトルに充填した商品をコンビニエンスストアの加温器や自動販売機などで加温して提供しようとすると、この凝集状態が好ましくない感じを消費者に与えてしまうため商品価値を低下させてしまうところにある。
【特許文献1】特開平6−125711号公報
【特許文献2】特開平6−169737号公報
【特許文献3】特許第2981299号公報
【特許文献4】特許第3506936号公報
【特許文献5】特許第3522115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、結晶セルロース複合体とキサンタンガムを配合することにより、ココア末の沈澱がなく、加温してもココア成分が凝集しない密閉容器用ココア飲料を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、ある範囲の割合の結晶セルロース複合体とキサンタンガムを配合することで、糊状感のない良好な飲み心地で、ココア末の沈澱がなく加熱してもココア飲料成分が凝集しないことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(1)結晶セルロース複合体とキサンタンガムを含有する密閉容器用ココア飲料組成物、
(2)結晶セルロース複合体が0.02〜5.0質量%、キサンタンガムが0.01〜0.5質量%を含有することを特徴とする密閉容器用ココア飲料である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、結晶セルロース複合体とキサンタンガムを密閉容器入りココア飲料に配合することにより、ココア末の沈澱がなく、加温してもココア飲料成分が凝集しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明でいうココア飲料とは、飲料中に主成分としてココアを0.2〜3質量%含有し、砂糖、液糖、異性化糖、果糖、麦芽糖などの甘味剤、粉乳、牛乳、濃縮乳、還元乳などの乳成分、食塩など呈味成分を嗜好により配合できる。風味向上の目的で、ミルクフレーバーやチョコレートフレーバーのような香料を配合することも可能である。更に、乳化安定性向上のために、ショ糖脂肪酸エステルやグリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤や、カラギーナンやカルボキシメチルセルロースナトリウム塩等の増粘安定剤を配合しても良い。
【0008】
ココアとしては、粉末状のココアを用いるが、脂肪を50質量%以上含むものでも50質量%未満のものでもよく、脂肪含有量の異なるココアを組み合わせて使うことも出来る。
ココア飲料の調製は、ココアや水その他配合成分を混合し、均質後殺菌する通常の調整方法が適用できる。殺菌方法は、レトルト殺菌やUHT殺菌など必要に応じた方法をとることが出来る。
本発明でいう密閉容器とは、ココア飲料を適当量に個別充填し、流通、販売する目的で用いられる容器で、材質により金属缶、ガラスびん、紙容器、PETボトル等を挙げることが出来る。必要に応じて多層構造を採るものもある。
【0009】
本発明のココア飲料は加温された状態であることが好ましい。ここでいう加温とは、ココア飲料を暖かく飲む目的で行われ、35℃以上の品温にすることをいうが、容器の破損や飲用時のヤケド防止など安全面から80℃程度が現実的な上限と考えられる。コンビニでの加温器や自動販売機では60℃前後程度に加温されて販売されている。
本発明のココア飲料における結晶セルロース複合体およびキサンタンガムの含有量は、結晶セルロース複合体においては、固形分換算で0.05〜5.0質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜3.0質量%、さらに好ましくは0.15〜2.0質量%である。また、キサンタンガムにおいては、0.01〜0.5質量%が好ましい。より好ましくは0.02〜0.2質量%、さらに好ましくは0.03〜0.1質量%である。なお、ここでいう、キサンタンガム含有量には、結晶セルロース複合体に配合されているキサンタンガムの含有量は含まれない。結晶セルロース複合体の含有量が0.05質量%未満では、ココア末が沈澱してしまい懸濁安定なココア飲料を提供できない。結晶セルロース複合体の含有量が5.0質量%を越えるとココア飲料の粘度が高くなり、飲み心地が悪くなってしまう。キサンタンガムの含有量が0.01質量%未満では、加温した時のココア成分の凝集を抑えることが出来ない。キサンタンガムの含有量が0.5質量%を越えると粘度が高くなり飲み心地が悪くなってしまう。
【0010】
本発明で用いられる結晶セルロース複合体とは、例えば、木材パルプなど天然セルロースを加水分解して得られる結晶セルロースと水溶性ガム、または結晶セルロースと水溶性ガム及び澱粉分解物を水の存在下で磨砕練合し乾燥したものをいい、市販品として「セオラス」<登録商標>RC−591、RC−N81、RC−N30、SC−N43、CL−611、SC−900(旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
本発明で用いられるキサンタンガムとは、キサントモナス・キャンペストリスと呼ばれる微生物をブドウ等又は澱粉培地で純水培養した時にその菌体外に産出される天然多糖類であり、食品添加物として一般的に用いられている。その構造はグルコース、マンノース及びグルクロン酸(カリウム、ナトリウム、カルシウムの混合塩)から構成されている。側鎖は二個のマンノースとグルクロン酸よりなる。例としては、三栄源エフエフアイ(株)製「ビストップD−3000」「サンエースNXG−S」、大日本住友製薬(株)製「エコーガム」「エコーガム630」等を挙げることができる。
【実施例】
【0011】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
ココア末(バンホーテンココア、脂肪含量22−24%)10g、牛乳230g、砂糖50g、結晶セルロース製剤(「セオラス」SC−900)5g、キサンタンガム(エコーガム630)0.2g、食塩0.5g、グリセリン脂肪酸エステル1g、ショ糖脂肪酸エステル0.3gを撹拌する75℃温水703gに混合溶解させ、一段目圧力15MPa、二段目圧力5MPaで均質化した後、UHT殺菌機を用いて140℃で60秒間殺菌し、350mlPETボトルに充填してココア飲料Aを得た。比較例としてココア飲料Aのキサンタンガムをカラギーナン(カラギニンCSK−1、三栄源エフエフアイ(株))に置き換えてココア飲料B、ココア飲料Aのキサンタンガムを除きその分水を加えてココア飲料C、ココア飲料Aの結晶セルロース製剤を除き、キサンタンガムを2.0gとし温水を707.2gに置き換えてココア飲料Dを得た。これらを電気定温器に入れ、60℃の雰囲気下に7日間静置してココア飲料の状態評価を以下の通り行った。PETボトルを側面から観察して、凝集がなく良好(○)、わずかに凝集がありやや不良(△)、凝集があり不良(×)の3段階評価を実施した。また、PETボトルの底面を観察して、ココア末の沈澱がなく良好(○)、わずかに沈澱がありやや不良(△)底面全体に沈澱があり不良(×)の3段階評価を実施した。結果を表1に示す。ココア飲料Aは糊状感がなく口当たりが良かった。
【0012】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によれば、ココア末の沈澱がなく、加温してもココア成分が凝集しない密閉容器用ココア飲料を供給できる。特にPETボトルなど内容物が見える透明容器を用いる場合に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶セルロース複合体とキサンタンガムを含有する密閉容器用ココア飲料組成物。
【請求項2】
結晶セルロース複合体が0.02〜5.0質量%、キサンタンガムが0.01〜0.5質量%を含有する請求項1記載の密閉容器用ココア飲料組成物。

【公開番号】特開2008−11760(P2008−11760A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185413(P2006−185413)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】