説明

密閉構造及び冷熱衝撃装置

【課題】高温槽及び低温槽を有する冷熱衝撃装置において、低温空間側を閉鎖する扉を軽量化するとともに、冷気の漏れを良好に防止できる構成を提供する。
【解決手段】低温槽3の開口部を複数の領域に仕切るように設けられる仕切板8と、前記開口部の複数に仕切られた領域7u、7bのうち1つ(上側領域7u)を開閉可能に設けられた低温槽扉10と、この低温槽扉10から突設されるとともに前記仕切板8側に密着可能な第1パッキン21と、前記仕切板8から突設されるとともに前記低温槽扉10側に密着可能な第2パッキン22と、可撓性のフィルム体19と、を備える。そして、前記低温槽扉10の閉鎖状態では、前記フィルム体19が弾性変形しながら前記第1パッキン21及び前記第2パッキン22に接触するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高温槽及び低温槽を備えて、試験等のために試料に熱衝撃を付与する冷熱衝撃装置に好適な密閉構造の構成に関する。また、そのような密閉構造を備えた冷熱衝撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の密閉構造及び冷熱衝撃装置に関し、特許文献1は、断熱壁で囲われた低温空間及び高温空間を備えるとともに、試料容器が両空間の間を移動装置によって移動可能に構成された冷熱衝撃試験装置を開示する。低温空間と高温空間は上下方向に並べて配設されるとともに、それぞれが外部に向けて形成する開口(開放部)は、開閉可能な断熱扉によって閉鎖可能に構成されている。なお、特許文献1に明確な記載はないが、断熱扉又は断熱壁にはパッキンが設けられて、断熱扉を閉鎖したときに低温又は高温の空気が漏れないように構成されているのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−323423号公報(図3、低温空間1、高温空間2、試料容器5、断熱扉34、断熱壁35)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような冷熱衝撃装置において、温度差等の種々の事情から開口の縁部が変形することがあり、これがパッキンの許容限界を越えると、パッキンの密着が失われて空気漏れの原因になってしまう。本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、開口の縁部等が変形しても空気の漏れを良好に防止できる密閉構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、以下のような構成の密閉構造が提供される。容器の開口部を開閉可能に設けられた扉体と、この扉体から突設されるとともに前記開口部の縁部に密着可能な第1パッキンと、前記開口部の縁部から突設されるとともに前記扉体側に密着可能な第2パッキンと、可撓性のフィルム体と、を備える。前記扉体の閉鎖状態では、前記フィルム体が弾性変形しながら前記第1パッキン及び前記第2パッキンに接触するように構成した。
【0007】
この構成により、容器の開口部の縁部等が変形する等して、第1パッキン及び第2パッキンと開口部の縁部又は扉体との間に隙間が生じても、弾性変形しているフィルム体が復元力によってこの隙間を塞ぐので、空気の漏れを良好に防止することができる。
【0008】
前記の密閉構造においては、以下のように構成することが好ましい。前記フィルム体の基部は前記開口部の縁部または前記扉体の内面側に固定されている。前記扉体の閉鎖状態では、前記フィルム体が2つの前記パッキンのうち一方のパッキンと接触する部分と前記基部との間に、他方のパッキンが接触する。
【0009】
この構成により、扉体の閉鎖状態においてフィルム体がS字カーブを描くように弾性変形するので、フィルム体が第1パッキン及び第2パッキンの双方に隙間なく良好に密着する。従って、2つのパッキンと仕切板又は扉体との間の隙間を効果的に塞ぎ、空気の漏れを防止することができる。
【0010】
前記の密閉構造においては、前記フィルム体は押さえ体を介して前記開口部の縁部に取り付けられており、この押さえ体を開口部の縁部から離間させ又は取り外すことで前記フィルム体を交換可能に構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成により、長期間の使用によりフィルム体にヘタリが生じても、簡単に新しいフィルム体に交換でき、メンテナンス作業を簡素化できる。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、高温槽及び低温槽を備え、前記高温槽又は前記低温槽の少なくとも何れか一方に前記密閉構造を備える冷熱衝撃装置が提供される。
【0013】
この構成により、高温槽又は低温槽からの空気漏れをフィルム体によって良好に防止することができる。
【0014】
前記の冷熱衝撃装置においては、以下のように構成することが好ましい。前記低温槽は、当該低温槽の開口部を複数の領域に仕切るように当該開口部の縁部に設けられた仕切板を備える。前記扉体は、前記開口部の複数に仕切られた領域のうち1つを開閉可能とするように備える。前記第2パッキンは前記仕切板から突設されるように構成する。前記フィルム体は前記仕切板に設けられている。
【0015】
この構成により、低温槽を閉鎖する低温槽扉(扉体)を小さくでき、開閉作業を容易に行うことができる。また、仕切板が冷気の影響で湾曲し、第1パッキン及び第2パッキンと仕切板又は低温槽扉との間に隙間が生じても、弾性変形しているフィルム体が復元力によってこの隙間を塞ぐので、冷気の漏れを良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷熱衝撃装置の全体的な構成を示した斜視図。
【図2】図1のII−II断面矢視図。
【図3】図2の状態から低温槽扉を閉鎖した様子を示す断面図。
【図4】仕切板が湾曲した状態において低温槽扉を閉鎖した状態を示す断面図。
【図5】フィルム体を開口の四辺に取り付ける第1例を示す説明図。
【図6】フィルム体を開口の四辺に取り付ける第2例を示す説明図。
【図7】フィルム体を開口の四辺に取り付ける第3例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る冷熱衝撃装置の全体的な構成を示した斜視図、図2は図1のII−II断面矢視図である。図3は図2の状態から低温槽扉を閉鎖した様子を示す断面図である。図4は仕切板が湾曲した状態において低温槽扉を閉鎖した状態を示す断面図である。
【0018】
図1には冷熱衝撃装置1の全体構成が示され、この冷熱衝撃装置1は、内部に高温槽(高温空間)2及び低温槽(低温空間)3を形成した断熱箱構造の本体(容器)4を備えている。具体的には、本体4の内部空間が上下に区画されて、その上半部が高温槽2とされ、下半部が低温槽3とされている。
【0019】
冷熱衝撃装置1は図示しない加熱装置及び冷却装置を備え、高温槽2の内部では高温空気が、低温槽3の内部では低温空気が、それぞれ循環するように構成されている。本実施形態の冷熱衝撃装置1では、高温槽2内の温度を最高で200℃程度、低温槽3内の温度を最低で−80℃程度に保つことができる。
【0020】
本体4の内部には試料容器5が支持されており、この試料容器5は、図示しない適宜の移動機構によって、高温槽2と低温槽3との間を上下に移動可能に構成されている。この結果、試料容器5の内部に配置される電子部品等の試料が高温空気又は低温空気に晒され、試料に熱衝撃を与えることができるようになっている。試料容器5を昇降させる移動機構としては、公知のものを適宜採用することができる。
【0021】
本体4の前面には、前記高温槽2の開口部6及び低温槽3の開口部7が上下に並べて形成されている。それぞれの開口部6、7は矩形状に構成されている。また、低温槽3の開口部7の左右の縁には、細長い形状に構成した、厚み30ミリメートル程度の仕切板8の両端部が固定される。仕切板8は、低温槽3の開口部7を上下にほぼ2等分するように仕切って、矩形状の上側領域7uと下側領域7bとを形成するように配置される。
【0022】
そして、前記開口部7に支架された仕切板8より下側の領域7bを閉鎖するように、断熱構造を備えた低温槽カバー9が図略のネジによって固定される(なお、図1は、低温槽3の開口部7の様子を判り易く示すため、低温槽カバー9を取り外した状態を示している)。低温槽カバー9の内面の縁にはパッキン11が突設されるとともに、前記下側領域7bの縁にもパッキン12が突設される。これら2つのパッキン11、12により、下側領域7bからの冷気の漏れが防止される。
【0023】
また、仕切板8より上側の領域7uを開閉可能とするために、断熱構造を備えた低温槽扉(扉体)10が、蝶番13を介して本体4に枢支されている。低温槽扉10の内面の縁にはパッキン(第1パッキン)21が突設されるとともに、前記上側領域7uの縁にもパッキン(第2パッキン)22が突設される。これら2つのパッキン21、22は、上側領域7uからの冷気の漏れを防止するためのものである。
【0024】
以上のように、本実施形態では、低温槽3の開口部7を仕切板8によって上側領域7uと下側領域7bの2つに仕切り、上側領域7uを低温槽扉10によって、下側領域7bを低温槽カバー9によって、それぞれ閉鎖した構成になっている。この結果、いわゆる一枚扉の構成に比較して、低温槽扉10が軽量になり、その開閉も容易に行うことができる。
【0025】
ここで、本実施形態のような冷熱衝撃装置1に対しては、大きなサイズの試料を試験できるようにするため、あるいは空間内の温度分布を安定化させるために、低温槽3及び高温槽2を広く確保したいというニーズがある。しかしながら、例えば低温槽3を大きく確保すると、その開口部7も大きくなり、それを閉じる扉体も大型化してしまう。その結果、扉体が大重量化して開閉力が例えば30kgにも上ることがあり、扉の開閉作業が重労働になってしまう。この点、本実施形態では上記のように開口部7を仕切板8で仕切る構成とすることで、低温槽扉10の軽量化と開閉作業の容易化を実現できている。
【0026】
更に、前記高温槽2の開口部6を開閉可能とするために、断熱構造を備えた高温槽扉15が蝶番14を介して本体4に枢支される。前記開口部6の縁にもパッキン16が突設されており、高温槽扉15を閉鎖したときにパッキン16が当該高温槽扉15の内面に密着して、高温の空気が開口部6から漏れないようになっている。
【0027】
図1のII−II断面矢視図としての図2に示すように、上側領域7uの縁(四辺のうち一辺)に位置する前記仕切板8は、その前面を平坦な平面(鉛直面)に形成しており、当該前面に前記パッキン12、22を設置した構成になっている。また、図1及び図2に示すように、仕切板8の前面には露受け(押さえ体)17がネジ18によって固定されており、この露受け17は、前記低温槽扉10に露として付着して垂れてくる水滴を受けて溜めることができるようになっている。
【0028】
図2に示すように、前記仕切板8の前面には可撓性のフィルム体19が設置されている。このフィルム体19は厚さが約0.1ミリメートルのシート状に構成したポリエステル製のフィルムであって、仕切板8の長さと同じ程度の長さの長辺を有する長方形状に形成されている。そして、このフィルム体19の短手方向一端側(基端側、下端側)が、前記露受け17と前記仕切板8との間に挟まれて、前記ネジ18によって挟着されている。フィルム体19の基端側は、前記仕切板8の前面に長手方向全体にわたって隙間なく密着するように、前記露受け17によって押さえつけられた状態で固定されている。
【0029】
フィルム体19の基端側は、前記仕切板8の前面に接する状態で取り付けられ、鉛直方向に向けられている。そしてフィルム体19は、露受け17と仕切板8の間の挟着部から上方(フィルム体19の短手方向他端側であって、遊端側)に向かうに連れて前方側へ曲げられるように弾性変形し、その遊端側は、前記仕切板8の前面から前方へ突出している前記パッキン22に接触している。
【0030】
図2は低温槽扉10の開放状態であり、この状態から低温槽扉10を閉じると、図3に示すように、低温槽扉10のパッキン21が前記フィルム体19を仕切板8側へ押し、当該パッキン21はフィルム体19を挟むようにして仕切板8側に密着する。また、仕切板8側のパッキン22は、前記フィルム体19を挟むようにして低温槽扉10に密着する。即ち、図3の低温槽扉10の閉鎖状態では、前記フィルム体19がS字状に弾性変形しながら、仕切板8と低温槽扉10との間の2つのパッキン21、22の両方に接触するようになっている。
【0031】
なお、前記仕切板8は図1に示すように、低温槽3の開口部7の左右幅程度の長さを有するように相当に細長く形成される一方で、あまり前後方向の厚みを大きくすることはできない(仕切板8が低温槽3内部側へ張り出すと、低温槽3内の低温空気の循環が妨げられ、低温槽3を良好に冷却できない)。また、前記仕切板8は低温槽3の冷気に晒されることで、例えば仕切板8の長手方向中央部が前面側からみて数ミリメートル程度凹となるように湾曲し易い。そして、この湾曲の程度が前記パッキン21、22の許容限界を超えると、パッキン21、22が仕切板8側や低温槽扉10側に密着できなくなり、仕切板8や低温槽扉10との間に隙間が生じてしまう。
【0032】
しかしながら本実施形態では、低温槽扉10の閉鎖状態において図4のようにパッキン21と仕切板8の間に隙間が生じ、パッキン22と低温槽扉10との間に隙間が生じても、仕切板8に固定されたフィルム体19がS字状に湾曲しながら2つのパッキン21、22及び低温槽扉10の内面に密着することで上記隙間を塞ぐため、低温槽3の冷気が隙間から外部に漏れて大量の結露の原因となったり、低温槽3の温度が上昇したりすることが防止される。
【0033】
なお、図4の状態において、フィルム体19のパッキン22に接触する部分の近傍(遊端側)においては、冷気に晒されるので、その弾性は相当程度低下すると考えられる。しかしながら、フィルム体19の基部近傍は外気に触れている部分も多く、冷気に余り晒されないので、弾性はさほど失われず、フィルム体19自体の復元力によってパッキン21、22部分の隙間を良好に埋めることができる。
【0034】
以上に示すように、本実施形態の冷熱衝撃装置1は、高温槽2及び低温槽3と、この低温槽3の開口部7を複数の領域7u、7bに仕切るように設けられる仕切板8と、前記開口部7の複数に仕切られた領域のうち1つ(上側領域7u)を開閉可能に設けられた低温槽扉10と、この低温槽扉10から突設されるとともに前記仕切板8側に密着可能な第1パッキン21と、前記仕切板8から突設されるとともに前記低温槽扉10側に密着可能な第2パッキン22と、可撓性のフィルム体19と、を備える。そして図3や図4に示すように、低温槽扉10の閉鎖状態では、前記フィルム体19が弾性変形しながら2つのパッキン21、22に接触するように構成している。
【0035】
従って、低温槽3を閉鎖する低温槽扉10をコンパクト化且つ軽量化でき、開閉作業を容易に行うことができる。また、仕切板8が冷気の影響で湾曲し、図4のようにパッキン21、22と仕切板8又は低温槽扉10との間に隙間が生じても、弾性変形しているフィルム体19が復元力によってこの隙間を塞ぐので、冷気の漏れを良好に防止することができる。
【0036】
また、フィルム体19の基部は前記仕切板8に固定されるとともに、前記低温槽扉10の開放状態(図2)において、フィルム体19の遊端側(上端側)が前記第2パッキン22に接触している。そして、前記低温槽扉10の閉鎖状態では、図3や図4に示すように、前記フィルム体19の前記第2パッキン22との接触部分と前記基部との間に、前記第1パッキン21が接触するようになっている。従って、低温槽扉10の閉鎖状態においてフィルム体19が確実にS字カーブを描くように弾性変形するので、フィルム体19が2つのパッキン21、22に隙間なく良好に密着し、パッキン21、22と仕切板8又は低温槽扉10との間の隙間を効果的に塞ぐことができる。また、フィルム体19の基部付近が冷気にあまり晒されない構造になるので、フィルム体19自体の弾性を効果的に発揮させ、上記隙間を良好に塞ぐことができる。
【0037】
また、前記フィルム体19の基部は、前記低温槽扉10から垂れる露を下側で受ける露受け17と前記仕切板8との間で挟着されている。従って、フィルム体19の固定のための特別な部材が必要なくなり、部品点数を低減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、前記フィルム体19としてポリエステルフィルムが採用されているので、過酷な低温環境下においても脆化することなく、良好な気密性をもって低温槽扉10や仕切板8及びパッキン21、22に接触でき、隙間からの冷気の漏れを確実に防止できる。
【0039】
なお、前記フィルム体19は0.1ミリメートル程度の厚さに構成されているので、低温槽扉10の開閉もスムーズで、かつ隙間からの冷気の漏れを確実に防止できる。なお、フィルム体19が薄すぎると、フィルム体19の弾力が低下するので、図4のように生じた隙間を確実に塞ぐことができず、好ましくない。また、フィルム体19が厚すぎると、フィルム体19体の弾力が強すぎてしまい、低温槽扉10を閉じるときに大きな力が必要になるので、開閉作業の容易さと言う観点から好ましくない。
【0040】
また、前記フィルム体19は露受け17を介して前記仕切板8に取り付けられており、前記ネジ18を外して露受け17を取り外すことで、或いは単にネジ18を緩めて露受け17を仕切板8から離間させることで、前記フィルム体19を交換できるように構成されている。従って、長期間の使用により前記フィルム体19にヘタリが生じた場合でも簡単に新しいフィルム体19に交換できるので、メンテナンス作業を簡素化できる。
【0041】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0042】
冷熱衝撃装置1は高温槽2と低温槽3とを上下に並べて配設した構成としているが、これに限らず、例えば横方向に配設しても良い。
【0043】
仕切板8を複数設けて、低温槽3の開口部7を3つ以上の領域に区画するように構成しても良い。あるいは仕切板8を省略する一方で所謂一枚扉の構成とし、開口部7の縁部に前記フィルム体19を固定するようにしても良い。
【0044】
上記の実施形態では、低温槽扉10の閉鎖時に第1パッキン21の内側に第2パッキン22が配置される構成になっているが、内外を逆にして、第2パッキン22の内側に第1パッキン21が位置するように構成しても良い。また、上記の実施形態では扉開放時にフィルム体19が第2パッキン22に接触しているが(図2)、これに限定されず、扉開放時にフィルム体19が何れのパッキン21、22にも接触しない構成としても良い。
【0045】
フィルム体19はポリエステルフィルムに限定されず、他の可撓性を有する薄板状の部材を適宜採用できる。また、フィルム体19の厚みを変更しても良い。しかしながら、上記のとおり、0.1ミリメートル程度のポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0046】
フィルム体19は露受け17と仕切板8との間で単に挟み込まれて固定される構成になっているが、フィルム体19に孔を形成して、この孔に前記ネジ18を通すようにしても良い。
【0047】
フィルム体19を固定する構成としては、露受け17を用いる構成に限定されず、フィルム体19を固定するための押さえ体を露受け17とは別に設けても良い。ただし、押さえ体は、前記フィルム体19の長手方向全体にわたって隙間なく仕切板8に密着させるように構成することが好ましい。
【0048】
フィルム体19の基端を仕切板8にではなく、低温槽扉10の内面側に固定する構成にしても良い。またフィルム体19は、前述のように密閉対象としての開口(上側領域7u)の下縁(下辺)のみに取り付けられる場合に限定されず、例えば上辺に取り付けたり、向かい合う二辺に取り付けたり、隣り合う二辺に取り付けたり、開口縁全周にわたって取り付けることができる。矩形の開口7uの四辺全周にわたってフィルム体を固定する場合の例が図5〜図7に示され、図5は四辺それぞれに別体のフィルム体19を取り付けた例、図6は四辺一体型の矩形枠体状のフィルム体19を取り付ける例、図7は図6のフィルム体19のコーナー部の内側に45°の斜めの切込みを形成した例である。図6や図7の場合、フィルム体19が屈曲したときにコーナー部がよじれ、図7の場合では切込み部が開いて空気漏れする恐れがあるが、図5の場合はコーナー部がよじれにくく、よじれてもフィルム体19同士が重なっているため空気が漏れにくい利点がある。
【0049】
上記のフィルム体19を備える密閉構造は、冷熱衝撃装置1の低温槽3側でなく、高温槽2側に設けることもできる。この場合、前記フィルム体19の素材は耐熱性を有するものである必要があり、例えば、ポリイミド、テフロン(登録商標)、カーボンフィルム、ガラスクロス等を素材とすることが考えられる。
【0050】
また、上記の空気漏れ防止のための密閉構造は、冷熱衝撃試験装置のみならず、他の種類の試験装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 冷熱衝撃装置
2 高温槽
3 低温槽
4 本体(容器)
7 低温槽の開口部
7u 上側領域(開口部の複数に仕切られた領域のうち1つ)
8 仕切板
10 低温槽扉(扉体)
17 露受け(押さえ体)
19 フィルム体
21 第1パッキン
22 第2パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温槽及び低温槽を具備してなる冷熱衝撃装置であって、
前記低温槽は、
容器の開口部を開閉可能に設けられた扉体と、この扉体から突設されるとともに前記開口部の縁部に密着可能な第1パッキンと、前記開口部の縁部から突設されるとともに前記扉体側に密着可能な第2パッキンと、前記開口部の縁部または前記扉体の内面側に固定された基部を有する可撓性のフィルム体とを備えるとともに、前記扉体の閉鎖状態では、前記フィルム体が2つの前記パッキンのうち一方のパッキンと接触する部分と前記基部との間に、他方のパッキンが接触する密閉構造を有し、
前記低温槽の開口部が複数の領域に仕切られ、
前記低温槽の扉体は、前記低温槽の開口部の複数に仕切られた領域のうち1つを開閉可能とするように備えられていることを特徴とする冷熱衝撃装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷熱衝撃装置であって、
前記低温槽は、当該低温槽の開口部を複数の領域に仕切るように当該開口部の縁部に設けられた仕切板を備え、
前記第2パッキンは前記仕切板から突設されるように構成され、
前記フィルム体は前記仕切板に設けられていることを特徴とする冷熱衝撃装置。
【請求項3】
容器の開口部を開閉可能に設けられた扉体と、
この扉体から突設されるとともに前記開口部の縁部に密着可能な第1パッキンと、
前記開口部の縁部から突設されるとともに前記扉体側に密着可能な第2パッキンと、
可撓性のフィルム体と、
を備えるとともに、
前記フィルム体の基部は前記扉体の内面側に固定されており、
前記扉体の閉鎖状態では、前記フィルム体が2つの前記パッキンのうち一方のパッキンと接触する部分と前記基部との間に、他方のパッキンが接触することを特徴とする密閉構
造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−276620(P2010−276620A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205482(P2010−205482)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願2005−332956(P2005−332956)の分割
【原出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】