説明

密閉構造式チャック付き湿分吸収包材

【課題】包材内への水分透過を抑制すると共に内容物の雰囲気を乾燥した状態に保つことのできる密閉性の高い密閉構造式チャック付き湿分吸収包材を提供する。
【解決手段】密閉構造式チャック付き湿分吸収包材10は、水分不透過性の外層20とポリオレフィンを含有する内層30とを有する2枚の積層フィルム40によって構成され、開口部52を有する袋状本体50と、開口部52を封止するプラスチックのチャック部60とを備え、チャック部60はチャック70、71とそれらの間に形成された貫通孔75、76とを有する。内層30は、ゼオライトを含有しかつ密度が0.880〜0.930g/mlであるポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層32とゼオライトを含まずかつ密度が0.910〜0.960g/mlであるポリオレフィンを有する一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層34、34とを有する。一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層34、34は吸湿性プラスチック層32を挟むように吸湿性プラスチック層32の両側に積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉構造式チャック付き湿分吸収包材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品の包材において、生鮮食品の酸化を防止したり生鮮食品の鮮度を維持したりするために、生鮮食品を収容した包材の内部に、窒素等の不活性ガスや酸素を充填する形態の包材が使われている。
そのような包材は、例えば、特許文献1に記載の包装袋がある。特許文献1に記載の包装袋は、酸素吸収機能を有する袋基体の開口部に再密封及び再開封可能な一般的なチャック部を備えており、種々の飲食品、例えば、ハム・ソーセージ、ハンバーグ、カレー、シチュー、お粥、中華料理の具、液体調味料などをボイル又はレトルト熱処理し、殺菌又は滅菌処理した包装製品を製造する包装袋として有用なものであるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−022558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのような袋基体の開口部に一般的なチャック部を形成したチャック付の包材において、袋基体の内部を減圧にした場合、チャック部より徐々に大気が漏れ込み、袋基体の内部の減圧状態が保たれない。
また、一般的なチャックを形成したチャック付の包材において、袋基体の内部が乾燥するように、包材の内部にシリカゲルなどの乾燥剤を別途入れることが一般に行われる。この場合、内容物を収納する者は、乾燥剤の挿入を忘れないよう、確実に、内容物と乾燥剤とを包材の内部に入れなければならない。
さらに、乾燥剤を入れた状態で包材の内部を減圧すると、包材の内部の内面が密着するので、乾燥剤は、乾燥剤の近傍の雰囲気を乾燥させることができるが、包材の内部の全体を均一に乾燥させにくい。
本発明の目的は、包材内への水分透過を抑制すると共に内容物の雰囲気を乾燥した状態に保つことのできる密閉性の高い密閉構造式チャック付き湿分吸収包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材は、水分不透過性の外層とポリオレフィンの内層とを有する積層フィルムによって構成され、開口部を有する袋状本体と、前記開口部の近傍における前記内層に、前記開口部を横切る横断方向に伸びるように形成され前記開口部を封止するプラスチックのチャック部とを備える。前記内層は、ゼオライトを含有しポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層と、前記吸湿性プラスチック層に積層された一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層とを有する。前記チャック部は、前記横断方向に伸びるように前記内層に積層された一対のプラスチックフィルム部と、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルム部に形成されたチャックとを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開口部をチャックで密閉状態にすることにより、シール部及び一対のロック部は、一対のプラスチックフィルム部の間に形成され、袋状本体内の空間部分を密閉状態に保ち、また、袋状本体内への水分透過を外層により抑制することができる。
さらに、内層の吸湿性プラスチック層が袋状本体内の空間部分の湿気を吸収するので、袋状本体内の空間部分の雰囲気を均一に乾燥状態にすると共に、袋状本体内の空間部分の圧力を減圧する。袋状本体内の圧力が減圧されると、袋状本体を構成する積層フィルムが内容物に密着する。このとき、一対のプラスチックフィルム部のうち、シール部及び一対のロック部よりも開口部とは反対側の袋側部分の一対のプラスチックフィルム部は、互いに接近する様に、撓むので、一対のロック部のうち、シール部より袋側部分の側のロック部を構成する雌鈎爪と雄鈎爪とは、シール部側に撓ませる力を受ける。したがって、撓ませる力は、押しつけリブが雌鈎爪に形成されている溝状の締めつけ壁に圧接する圧接力を増加させるように作用し、シール部の気密性をより向上させる。
【0007】
よって、本発明によれば、包材内への水分透過を抑制すると共に内容物の雰囲気を乾燥した状態に保つことのできる密閉性の高い密閉構造式チャック付き湿分吸収包材を提供することができる。
【0008】
本発明の密閉構造式チャック付き湿分吸収包材は、環境中の水分や湿気の存在が好ましくない材料の包装、保存に適している。密閉構造式チャック付き湿分吸収包材は、例えば、水分や湿気によって変質しやすい材料、即ち加水分解反応、溶解、固着などを起こしやすい医薬品、化粧品、乾燥食品、化学物質などや、Li電池関連の電極や材料、また、錆びなどを発生しやすい金属製機械、装置、動作不良を起こしやすい精密機器や電子部品などの保管や輸送時の包材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材の一部断面図である。
【図2】図1に示した密封構造式チャック付き湿分吸収包材の部分拡大図である。
【図3】図1に示した密封構造式チャック付き湿分吸収包材の湿分を吸収した状態を示す一部断面図である。
【図4】本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材の別のチャックの部分拡大図である。
【図5】本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材のさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図6】本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材のさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図7】本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材のさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図8】本発明に係る密封構造式チャック付き湿分吸収包材のさらに別のチャックの部分拡大図である。
【図9】密閉構造式チャック付き湿分吸収包材の重量の経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【図10】密閉構造式チャック付き湿分吸収包材に、25℃、RH60%の空気を内容物として充填し、その内容物の湿気を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2を参照するに、密閉構造式チャック付き湿分吸収包材10は、水分不透過性の外層20とポリオレフィンの内層30とを有する2枚の積層フィルム40によって構成され、開口部52を有する袋状本体50と、開口部52の近傍における内層30に、開口部52を横切る横断方向Xに伸びるように形成され開口部52を封止するプラスチックのチャック部60とを備える。チャック部60は、2つのチャック70、71を備える。密閉構造式チャック付き湿分吸収包材10は、2枚の積層フィルム40の周囲を溶着などの公知の方法により密閉状態の接合部54を形成し、袋側部分Pを備える。本実施の形態では、チャック70は、開口部52において袋側部分Pの側に、チャック71は、開口部52において袋側部分Pとは反対側に備える。
【0011】
(袋状本体)
袋状本体50は、一対の積層フィルム40で構成され、各積層フィルム40は、水分不透過性の外層20とポリオレフィンの内層30とを有する。
【0012】
(外層)
外層20は、積層フィルム40の表面層を構成する。外層20は、蒸着フィルム又はアルミ箔で構成されることが好ましい。図1及び図2に示す密閉構造式チャック付き湿分吸収包材10は、プラスチック層22及びアルミ箔層24を備えた外層20を有する。
外層20を構成する蒸着フィルムは、例えば、アルミ蒸着PETフィルムなどのアルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着PETフィルム、アルミナ蒸着PETフィルムなどで構成されることが好ましい。
外層20は、例えば、アルミ箔層24を有する場合、アルミ箔の上にプラスチック層22を有する。プラスチック層22は、アルミ箔層24を保護すると共に、印刷などを簡便にするために用いることができる。
プラスチック層22は、熱可塑性樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンが用いられ、中でもポリエチレンテレフタレートが、耐熱性、印刷性能、強度等に優れているために好ましく用いられる。なお、外層20は、帯電防止処方であってもよい。
【0013】
外層20の厚さは、包装体の種類によっても異なり、特に限定されるものではないが、通常、10μmから100μmであり、10μmから30μm程度のものが好ましく用いられる。
【0014】
アルミ箔層24は、包装体内への外部からの水分の透湿を防止するための層であり、アルミ箔から構成される。アルミ箔の厚さは、通常7μmから15μm程度の厚さで十分であり、この厚さで包装体の外部からの水分の透湿を防止することができる。
【0015】
アルミ箔層24と内層30との間には、必要に応じてナイロン層が介在していてもよい。
【0016】
(内層)
内層30は、ゼオライトを含有しポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層32と、ゼオライトを含有せずポリオレフィンを有する一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層34、34とを有する。一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層34、34は、吸湿性プラスチック層32を挟むように吸湿性プラスチック層32の両側に積層されている。
内層30に用いられる吸湿性プラスチック層32やゼオライト非含有ポリオレフィン層34のポリオレフィンの密度は、0.880〜0.960g/mlの範囲にあるものから選ぶことができる。さらに、吸湿性プラスチック層32のポリオレフィンの密度を、ゼオライト非含有ポリオレフィン層34のポリオレフィンの密度より低くすることによって吸湿速度を向上することができる。
吸湿性プラスチック層32は、ポリエチレン又はエチレン系エラストマーにゼオライトを練り込んだものであることが好ましい。
吸湿性プラスチック層32やゼオライト非含有ポリオレフィン層34のポリオレフィンは、ポリエチレン、エチレン系エラストマー、ポリプロピレン又はプロピレン系エラストマーから選ばれる単体又は混合物が好ましい。吸湿性プラスチック層32やゼオライト非含有ポリオレフィン層34のポリオレフィンは、さらに好ましくは、ポリエチレン又はエチレン系エラストマーであり、ゼオライト非含有ポリオレフィン層34のポリエチレン又はエチレン系エラストマーの密度は0.880〜0.930g/mlであり、さらに好ましくは、0.910〜0.925g/mlである。また、前記一対のゼオライト非含有のポリエチレンの密度は、0.910g〜0.960g/mlであり、さらに好ましくは、0.915〜0.930g/mlである。ポリエチレンは、低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマーであることが好ましい。
【0017】
吸湿性プラスチック層32は、細孔径が3Å〜10Åのゼオライトを用いることが好ましく、さらに好ましくは、細孔径が3Å〜4Åのゼオライトを用いることである。吸湿性プラスチック層32は、水分子のみを吸着することが可能となるように、3Å〜4Åの細孔径を持つゼオライトを吸湿性プラスチック層32に用いることが好ましい。
例えば、細孔径が3Å〜4Åのゼオライトとしては、結晶構造がA型で、金属カチオンがアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属であるゼオライトが挙げられる。金属カチオンは、2種類以上であっても構わない。金属カチオンは、好ましくは、アルカリ金属、特に好ましくは、カリウムやナトリウムであるモレキュラーシーブが挙げられる。
【0018】
吸湿性プラスチック層32のゼオライトの含有量が50質量%を越えると製膜は可能であるが成形品としての可撓性がなくなり、一方、1質量%未満ではゼオライトの吸湿能力が十分に発揮されない。吸湿性プラスチック層32のゼオライト含有量は、除湿したい水分量によって適宜選択することが可能ではあるが、吸湿性能、加工性及び包装材料の物性などから鑑みると、吸湿性プラスチック層32のゼオライトの含有量は、1質量%〜50質量%であることが好ましい。ゼオライト含有量は、さらに好ましくは、10質量%〜40質量%である。
【0019】
また、内層30は、吸湿性プラスチック層32にゼオライトを混合させることによって半透明フィルムとなるが、吸湿性プラスチック層32の吸湿に応じて内層30の屈折率が変わり、半透明のフィルムが吸湿するに従って透明に変わることから吸湿状態を判断することができる。この機能を利用することによって吸湿状態のインジケート機能を有するフィルムにすることができる。特に、シリカ蒸着PETフィルムをなどの透明性材料用いた場合、吸湿状態を外層20から判断することが可能である。透明となる部分に着色しておけば、インジケート機能がより明確になる。
【0020】
(チャック部)
チャック部60は、互いに同じ形状のチャック70、71を有する。チャック71は、横断方向Xと直角の方向Yにおいて、一対のプラスチックフィルム部72及び74のチャック70より開口部52側に形成されている。
チャック70、71は、横断方向Xに伸びるように内層30に積層された一対のプラスチックフィルム部72、74と、横断方向Xに伸びるようにプラスチックフィルム部72に形成された一対の雌鈎爪82、83と、横断方向Xに伸びるようにプラスチックフィルム部74に形成された一対の雄鈎爪84、85と、一対のシール部分86、87からなるシール部88とを有する。一対のシール部分86、87は、それぞれ、雌鈎爪82、83と雄鈎爪84、85とが互いに係合して一対のロック部90、91を形成した際に互いに気密状に係合して、シール部88となる。一対の雄鈎爪84、85は、それぞれ、一対の雌鈎爪82、83に係合可能に構成されている。シール部分86は、横断方向Xに伸びるように、雌鈎爪82と雌鈎爪83との間における一対のプラスチックフィルム部72に形成されている。シール部分87は、横断方向Xに伸びるように雄鈎爪84と雄鈎爪85との間におけるプラスチックフィルム部74に形成されている。
【0021】
プラスチックフィルム部72及び74は、それぞれ、チャック70とチャック71との間に形成された貫通孔75及び76を有する。貫通孔75及び76からは、それぞれ、プラスチックフィルム部72及び74の内層30が露出しているので、内層30は、2つのシール部88の間(換言するとチャック70とチャック71との間)の空間部分Qの湿気を吸湿することが可能になる。すなわち、チャック部60に形成された空間部分Qの湿気を吸湿することによって、チャック部60での吸湿もされるため、袋状本体50の袋側部分Pの吸湿効果をより効率的に持続することができる。
貫通孔75及び76の形状は、円筒側面形状として説明したが、多角形の筒状側面形状であってもよいし、円錐形状や多角形錐形状の側面であってもよい。また、貫通孔75及び76は、1列に並ぶように形成されているが、複数列であってもよい。複数列の場合、千鳥配列(列の伸びる方向において、一方の列の貫通孔と他方の列の貫通孔とが、隣接する貫通孔の間のピッチの半分だけずれている配列)や格子配列(列の伸びる方向において、一方の列の貫通孔と他方の列の貫通孔とが揃う配列)やこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
シール部分86、87は、それぞれ、雄鈎爪84、85と平行になるように、雄鈎爪84、85に形成された溝状の締めつけ壁92と、雌鈎爪82、83と平行になるように、プラスチックフィルム部72に形成され、締めつけ壁92に圧接する押しつけリブ93と、を有する。締めつけ壁92の断面は、雌鈎爪82、83が形成されているプラスチックフィルム部74から離れるに従って広くなる連続した溝を構成している。シール部88は、押しつけリブ93と締めつけ壁92とがラインコンタクト又は面コンタクトするように、押しつけリブ93が、締めつけ壁92に圧接するように構成されている。締めつけ壁92及び押しつけリブ93は、締めつけ壁92及び押しつけリブ93のうち一方の剛性が他方の剛性より高く、他方の弾力性が一方の弾力性よりあるように構成している。又は、締めつけ壁92及び押しつけリブ93は、締めつけ壁92及び押しつけリブ93のうち一方の剛性が他方の剛性より高くなるような、かつ、他方の弾力性が一方の弾性力よりあるような材質で構成してもよい。
【0023】
密閉構造式チャック付き湿分吸収包材10についてさらに詳細に説明する。
雌鈎爪82、83又は雄鈎爪84、85の内側に形成されている締めつけ壁92は、雌鈎爪82、83又は雄鈎爪84、85の内側の押しつけリブ93と密着して袋状本体内を気密に保持することができるように、原則として根本において狭く、先が広くなっている逆三角形(直線でも曲線であっても良いテーパー形状)の連続した溝を形成していることが好ましい。他方の鈎爪は十分な剛性を備え、外力に対して変形を起こさない構造であることが好ましい。この鈎爪の内側には押しつけリブを設けることが好ましいが、この押しつけリブは一方の鈎爪の内側に設けられた締めつけ壁との間において、雌鈎爪及び雄鈎爪の結合により、ラインコンタクトあるいは面コンタクトの完全なシール部88を形成するように形成されている。
【0024】
このコンタクトは、単に密閉性を目的とするだけであれば、プラスチックチャックのロック部の結合により、締めつけ壁の壁面に対し押しつけリブの先端部が圧着する程度に密接なコンタクトができれば良い。また、コンタクトは、ラインコンタクトであっても面コンタクトであっても密閉できればその形式は問わない。もし強度の圧力又は密封度の高い包材の必要がある場合には、ロック部の材質の剛性も高いものが必要になるが、シール部88の圧着の圧力を強くすることが好ましい。
【0025】
シール部88は、締めつけ壁面の断面(溝)が逆三角形の直線状であっても、又はゆるいカーブを描いた曲線であっても良い。また、締めつけ壁面に接触する押しつけリブの先端部は、ラインコンタクトあるいは面コンタクトできれば良いので、例えば断面が半円状、楕円形状、三角形状、矩形状、梯形状あるいは多角形状等、形状はいかなるものであっても良い。製造の容易性からは半円形状、楕円形状、矩形状等が好ましい。
【0026】
プラスチックフィルム部72は、雌鈎爪82、83及び雄鈎爪84、85の内側に押しつけリブ93を設けている。プラスチックフィルム部74には、雌鈎爪82、83と係合する雄鈎爪84、85を設けている。雄鈎爪84、85は、雄鈎爪84、85の鈎の反対側(内側)を根本が狭く、先端が広い溝状の締めつけ壁92を構成している。締めつけ壁92の面は、押しつけリブ93と圧接してシール可能であれば平面であっても曲面であってもよい。締めつけ壁92の面を、僅かの曲率を有する曲面にすると、締めつけ壁の製造は容易になる。
【0027】
なお、押しつけリブ93、締めつけ壁92の組み合わせにおいて、成形上、形状の精密性を高くすることが容易でない場合がある。そのような場合は、一方の剛性を高く、他方が弾力性を有するようにすれば、シールの密閉性を高めることができる。しかし、ロック部の雌鈎爪、雄鈎爪はロックのために柔軟性を付与することは問題があり、鈎爪と押しつけリブ又は締めつけ壁92の材質を変えて製造することも困難である場合には、例えば高剛性を付与する側の根本部分を厚く、弾力性を付与する側の根本部分を凹み95を設けるなどにより薄く成形することが好ましい。
【0028】
以上の密閉構造式チャック付き湿分吸収包材10は、これの袋部に内容物を入れ、開口部52をチャック70、71で密閉状態にすることにより、シール部88及び一対のロック部90、91は、一対のプラスチックフィルム部72、74の間に形成され、袋状本体50内を密閉状態に保ち、また、袋状本体50内への水分透過を外層20により抑制することにより、袋状本体50内の雰囲気を維持した状態に保つことができる。
【0029】
さらに、開口部52がチャック70、71で密閉状態にされた状態で、内層30の吸湿性プラスチック層32が袋状本体50内の湿気を吸収するので、袋状本体50内の雰囲気が乾燥状態になると共に、袋状本体50内の圧力は減圧される。袋状本体50内の圧力が減圧されると、袋状本体50を構成する2枚の積層フィルム40が内容物に密着する。このとき、図3に示すように、チャック70よりも袋側部分Pの側の一対のプラスチックフィルム部72、74(図3においてA、Bの範囲)は、互いに接近する様に(図3において矢印Fの方向に)、撓む。このため、2つのチャック70、71のうち袋側部分Pのチャック70において、一対のロック部90、91のうち、シール部88より袋側部分Pの側のロック部91を構成する雌鈎爪83と雄鈎爪85とは、シール部88側に撓ませる力を受ける。したがって、撓ませる力は、押しつけリブ93が雌鈎爪83と雄鈎爪85とに形成されている溝状の締めつけ壁92に圧接する圧接力を増加させるように作用し、シール部88の気密性をより向上させる。
【0030】
さらに、図3のA、Bの範囲が互いに近づくように撓むと、チャック70とチャック71との間の範囲のプラスチックフィルム部72、74は互いに離れる方向に撓もうとする。しかし、チャック70とチャック71との間の範囲のプラスチックフィルム部72、74のチャック71側の端部は、チャック71によってプラスチックフィルム部72とプラスチックフィルム部74とが互いに離れないように保持している。そのため、シール部88より袋側部分Pとは反対側のロック部91を構成する雌鈎爪83と雄鈎爪85とは互いに気密性を維持した状態を維持する。
【0031】
密封構造式チャック付き湿吸包材のチャックは、上記のチャックに限定されず、例えば、以下のように種々変更してもよい。
【0032】
図4に示すように、チャック70aは、雄鈎爪84、85の根元が薄くなっている。また、雌鈎爪82、83の先端が雄鈎爪84、85の根元の近傍まで伸びている。このような構成にすることにより、チャック70aをコンパクトにまとめることができるので、薄手のフィルムや小容量の包材に利用可能である。
【0033】
図5に示すように、チャック70bは、シール部を二重に設けたもので、雄鈎爪84、85の内側に1つの独立壁89を設け、これに二つの押しつけリブ93a及び93bを設けてシール部としたものである。このためプラスチックチャックの幅は広くなるがシールが二重に行えるため密閉度を高くすることができる。チャック70bは、厚手のフィルムを用いた包材又は大容量の包材用として有用である。
【0034】
図6に示すように、チャック70cは、雄鈎爪84、85の内側に押しつけリブ93cを設け、雌鈎爪82、83の内側に締めつけ壁93d、93eを設け、さらに材質として成形が容易で弾力性のあるプラスチックチャックである利点を利用して、締めつけ壁93d、93eの外側壁を押しつけリブとして雄鈎爪84、85の内側壁面との間にシールラインを形成させることもできる。
【0035】
図7に示すように、チャック70dは、さらに強度の圧力あるいは大容量のために、雌、雄の鈎爪が内圧によっては簡単に剥離しないようにロック押え94a、94bを設けても良い。この場合、内圧だけを問題とするなら、ロック押え94a、94bは包材の内側だけに設けるだけでも良い。
【0036】
図8に示すように、チャック70eは、チャック70のような押しつけリブと締め付け壁とを備えなくても良い。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を挙げて、密封構造式チャック付き湿分吸収包材の外層20及び内層30について具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)
親水性ゼオライト60kgと密度が0.919g/ml、MFR(190℃、2.16kg)が8の低密度ポリエチレン(LDPE)140kgとを混錬し、ダイス径4mmφ×4穴のダイスを用いて押出し、ゼオライトを30%含有するLDPEのペレットを得た。その後、本ペレットと密度が0.926g/ml、MFR(190℃、2.16kg)が0.9の低密度ポリエチレン(LDPE)を用い、共押出し2種3層積層フィルムとして20μm LDPE/60μmゼオライト層/30μm LDPEとなるように製膜した。また、20μm LDPE側にコロナ処理を実施した。さらに、水分不透過性の最外層として12μmのPET、その次に7μmのAl箔を、内層として先に調製した110μmの共押出し層をドライラミネートし、乾燥させた。その後、このAlドライラミネート積層フィルムと密閉構造式チャック(ハイパック株式会社製、ダブルエクシール(登録商標))をヒートシール後、段階的に袋の4方をヒートシールして、40cm×50cmの密閉構造式チャック付き湿分吸収包材を形成した。
【0039】
(実施例2)
水分不透過性の最外層に12μmのPET、その次に7μmのAl箔、さらにその次に15μmのナイロン(ユニチカ株式会社製、エンブレムONMB)を配置した以外は実施例1と同様にして密閉構造式チャック付き湿分吸収包材を形成した。
【0040】
(実施例3)
水分不透過性の最外層として12μmのPET、及び7μmのAl箔の代わりに12μmのシリカ蒸着PETを配置した以外は実施例1と同様にして密閉構造式チャック付き湿分吸収包材を形成した。
【0041】
(比較例1)
ゼオライトを混合しない以外は実施例1と同様にした密閉構造式チャック付き包材を形成した。
【0042】
(評価)
実施例1から3の密閉構造式チャック付き湿分吸収包材及び比較例の密閉構造式チャック付き包材について、以下の吸水評価1、2を実施した。
(吸水評価1)
実施例1から3の密閉構造式チャック付き湿分吸収包材及び比較例の密閉構造式チャック付き包材を、1cm×1cmの大きさに切り取り試験片を作成し、それらの試験片の重量を測定した。それらの試験片を、25℃、RH100%の恒温恒湿Boxに入れ、それらの試験片の重量の経時変化を測定し、吸水性能(%)を算出した。実施例1から3の試験片はいずれも添加したゼオライトの吸水性能に近い吸水性能を有することを認めることができたが、比較例の試験片の吸水性能はほとんど認められなかった。図9に、測定した重量の経時変化の結果を示した。図9中、ゼオライト添加量に対する吸水性能とは、添加したゼオライトの吸水性能と同等に吸水した場合を100%とした。
【0043】
(吸水評価2)
実施例1から3の密閉構造式チャック付き湿分吸収包材及び比較例の密閉構造式チャック付き包材の4方ヒートシールのうち、密閉構造式のチャックの外側に位置するヒートシールの箇所を切り取り、チャックを開けた後に測定範囲が0〜100%Rhの温湿度データロガーを包材の袋状本体の中に入れ、減圧した。その後、内容物として25℃、RH60%の空気を所定量充填後、密閉構造式のチャックにて密閉し、25℃において所定時間経過ごとの内容物(空気)の湿気をデータロガーで測定し、袋状本体内における内容物(空気)の湿度を記録した。袋状本体内における実施例1から3の内容物(空気)の湿度は減少したと認めることができたが、袋状本体内における比較例の内容物(空気)の湿度の減少はほとんど認められなかった。図10に、経時結果を示した。
【符号の説明】
【0044】
10 密閉構造式チャック付き湿分吸収包材
20 外層
22 プラスチック層
24 アルミ箔層
30 内層
32 吸湿性プラスチック層
34 ゼオライト非含有ポリオレフィン層
40 積層フィルム
50 袋状本体
52 開口部
60 チャック部
70、70a、70b、70c、70d、70e、71 チャック
72、74 プラスチックフィルム部
75、76 プラスチックフィルム部の貫通孔
82、83 雌鈎爪
84、85 雄鈎爪
86、87 シール部分
88 シール部
89 独立壁
90、91 ロック部
92 締めつけ壁
93、93a、93b、93c 押しつけリブ
93d、93e 締めつけ壁
94a、94b ロック押え
95 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分不透過性の外層とポリオレフィンの内層とを有する積層フィルムによって構成され、開口部を有する袋状本体と、
前記開口部の近傍における前記内層に、前記開口部を横切る横断方向に伸びるように形成され前記開口部を封止するプラスチックのチャック部とを備え、
前記内層は、ゼオライトを含有しポリオレフィンを有する吸湿性プラスチック層と、前記吸湿性プラスチック層に積層され、ゼオライトを含有せずポリオレフィンを有する一対のゼオライト非含有ポリオレフィン層とを有し、
前記チャック部は、前記横断方向に伸びるように前記内層に積層された一対のプラスチックフィルム部と、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルム部に形成されたチャックとを有する、密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項2】
前記チャック部は、さらに、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルム部の前記チャックより前記開口部側に形成された別のチャックを有し、
前記一対のプラスチックフィルム部のそれぞれは、前記チャックと前記別のチャックとの間に形成された貫通孔を有する、請求項1に記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項3】
前記吸湿性プラスチック層及び前記ゼオライト非含有ポリオレフィン層のポリオレフィンの密度が、0.880〜0.960g/mlである、請求項1又は2に記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項4】
前記吸湿性プラスチック層のポリオレフィンの密度が、前記ゼオライト非含有ポリオレフィン層のポリオレフィンの密度よりも低い、請求項1から3のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項5】
前記チャックは、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルム部の一方に形成された一対の雌鈎爪と、前記横断方向に伸びるように前記一対のプラスチックフィルム部の他方に形成された一対の雄鈎爪であって前記一対の雌鈎爪にそれぞれ係合可能な一対の雄鈎爪と、を有する、請求項1から4に記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項6】
前記チャックは、さらに、それぞれが各雌鈎爪と各雄鈎爪とが互いに係合して一対のロック部を形成した際に、互いに気密状に係合する一対のシール部分を有するシール部を有し、
前記一対のシール部分の一方は、前記横断方向に伸びるように、前記一対の雌鈎爪の間における前記一対のプラスチックフィルム部の一方に形成され、
前記一対のシール部分の他方は、前記横断方向に伸びるように前記一対の雄鈎爪の間における前記一対のプラスチックフィルム部の他方に形成された、請求項5に記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項7】
前記一対のシール部分の一方が、各ロック部の雌鈎爪及び雄鈎爪のうち一方の鈎爪と平行になるように、前記一対のプラスチックフィルム部のうち前記一方の鈎爪が形成されているプラスチックフィルム部に形成された溝状の締めつけ壁を有し、
前記一対のシール部分の他方が、他方の鈎爪と平行になるように、前記他方の鈎爪に形成された、前記締めつけ壁に圧接する押しつけリブを有する、請求項1から6のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項8】
前記締めつけ壁の断面が、前記一方の鈎爪が形成されているプラスチックフィルム部から離れるに従って広くなる連続した溝である、請求項7に記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項9】
前記一対のシール部分のそれぞれが、前記押しつけリブが前記締めつけ壁に圧接するように、前記押しつけリブと前記締めつけ壁とがラインコンタクト又は面コンタクトする接触面を有する、請求項7又は8に記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項10】
前記締めつけ壁及び前記押しつけリブが、前記締めつけ壁及び前記押しつけリブのうち一方の剛性が他方の剛性より高く、他方の弾力性が一方の弾力性よりあるような断面形状で形成された、請求項7から9のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項11】
前記締めつけ壁及び前記押しつけリブが、前記締めつけ壁及び前記押しつけリブのうち一方の剛性が他方の剛性より高くなるような、かつ、他方の弾力性が一方の弾力性よりあるような材質で構成した、請求項7から10のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項12】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、エチレン系エラストマー、ポリプロピレン又はプロピレン系エラストマーから選ばれる単体又は混合物の組み合わせである請求項1から11のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項13】
前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマーである請求項1から12のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項14】
前記外層が、蒸着フィルム又はアルミ箔から選ばれる、請求項1から13のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項15】
前記外層は、アルミ箔と、前記アルミ箔の上に積層されたプラスチック層とを有する、請求項1から13のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項16】
前記吸湿性プラスチック層が、ポリオレフィンにゼオライトを練り込んだものである、請求項1から14のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項17】
前記吸湿性プラスチック層のゼオライトの細孔径が3Å〜10Åである、請求項1から16のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項18】
前記吸湿性プラスチック層のゼオライトの含有量が1質量%〜50質量%である、請求項1から17のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。
【請求項19】
前記内層が、前記吸湿性プラスチック層の吸湿に応じて前記内層の屈折率が変わるインジケート機能を有する、請求項1から18のいずれかに記載の密封構造式チャック付き湿分吸収包材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−23230(P2013−23230A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156815(P2011−156815)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(507131159)ハイパック株式会社 (9)
【出願人】(390016090)ユニオン昭和株式会社 (9)
【Fターム(参考)】