説明

密閉部品の漏れ検査装置およびその検査方法

【課題】密閉部品が実際に使用されるのと同じ環境で、密閉部品の漏れ検査ができ、密閉部品に生じている複数の漏れ箇所を特定でき、コストが低く、電磁波を用いて非破壊で検査可能な、密閉部品の漏れ検査装置を提供すること。
【解決手段】本発明の密閉部品の漏れ検査装置10は、密閉空間(23)を有する密閉部品(20)の該密閉空間(23)が、所定の漏れ物質に対して漏れを有するのかを検査する装置であって、密閉部品20の形成材料を透過し且つ漏れ物質に吸収される波長を有する電磁波Lを、密閉部品20に照射する照射部11と、密閉部品20を透過したか、または、該密閉部品20の表面から反射した電磁波Lを検出して電気信号に変換する検出部15と、この電気信号から漏れ物質の漏れ量を演算する演算部16と、上記漏れ量を用いて、密閉部品20の漏れの良否を判定する判定部17と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉部品の漏れ検査装置およびその検査方法に関し、特に電磁波を用いて密閉部品の漏れを検査する検査装置およびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉空間を有する密閉部品が広く用いられている。この種の密閉部品の密閉空間には、例えばセンサなどの電子部品が封入されている。このような密閉部品は、車などに搭載されて用いられており、車の使用状況に応じてさまざまな環境にさらされる。そのため、密閉部品が漏れを有していると、使用環境によっては、水などの漏れ物質が内部の密閉空間に侵入し、内部に封入されている電子部品が故障する原因となり得る。
【0003】
そこで、密閉部品の漏れを検査する検査装置またはその検査方法が提案されている。
例えば、JIS Z 2331附属書8には、密閉部品の漏れ検査方法として、図13および図14に示す装置を用いた浸せき法(ボンビング法)が開示されている。図13は、密閉部品にヘリウムガスを注入する装置400を示している。また、図14は、密閉容器から漏れ出したヘリウムガスを検出する装置500を示している。この検査方法では、図13に示すように、密閉空間101を有する密閉部品100をボンビングタンク401に入れ、排気装置403によりボンビングタンク401内を減圧することにより、密閉部品100を減圧下におく。そして、密閉部品100が漏れを有する場合には、密閉空間101も減圧される。次にヘリウムガスタンク402からボンビングタンク401にヘリウムガスを注入する。密閉部品100が漏れを有する場合には、その密閉空間101にヘリウムが侵入する。次ぎに、この密閉部品100を、図14に示す真空容器504に入れ、排気装置503により真空容器504内を減圧する。漏れのある密閉部品100の密閉空間101に侵入していたヘリウムガスは、密閉空間101から外側の真空容器504内に放出され、この漏れをヘリウム漏れ検出器501で測定することにより漏れの有無および漏れ量を測定する。
【0004】
また、密閉部品の漏れている部位を特定する方法として、JIS Z 2331附属書4に示される吸い込み法(スニッファー法)が開示されている。図15は、密閉容器から漏れ出したヘリウムガスを検出する装置600を示している。この方法では、上述したように密閉空間内にヘリウムガスが封入された密閉部品100を、図15に示すように、真空容器602に入れ、排気装置603により真空容器602内を減圧する。この減圧下において、密閉部品100の表面を、スニッファープローブ601を用いてなぞりながら、密閉部品100の漏れている部位の検出を行う。
【0005】
また、特許文献1には、密閉空間を有する密閉部品の製造時に、あらかじめ密閉空間内にヘリウムガスなどを封入しておき、図13に示すボンビング操作を不要とする密閉部品の漏れ検査装置が開示されている。
【0006】
しかし、上述した密閉部品の漏れ検査装置またはその検査方法では、漏れ物質として、ヘリウムガスなどの特定の物質を用いる必要があり、密閉部品が実際に使用される環境で密閉空間内に侵入する漏れ物質を用いて漏れ検査を行うことができない。また、上述した漏れ検査において、密閉空間に漏れ物質が侵入する時の圧力を、密閉部品が実際に使用される環境で密閉空間内に漏れ物質が圧入される圧力にすることが難しい場合がある。
【0007】
また、スニッファープローブを用いる方法は、1つの密閉部品における2か所以上の部位で漏れが生じている場合には、スニッファープローブが、漏れたヘリウムガスを吸引してしまうので、漏れている部位を正確に特定することが難しい。そこで、複数個所の漏れを測定できるように、漏れを判定する検出濃度のしきい値を高く設定した場合には、漏れ自体を正確に検出できないという問題点が生じる。また、これらの問題点を解決するために、スニッファープローブを、密閉部品に接近させて検査する方法もあるが、この方法では、スニッファープローブの機械的な走査が必要となるので、検査時間が長くなること、また複雑な形状を有する密閉部品の検査を行えないという新たな問題点が生じる。
また、多数の密閉部品を検査するために、値段の高いヘリウムガスを用いることは、密閉部品の製造コストを増加させる。
【0008】
さらに、密閉部品の漏れは、漏れ物質が、外部から内部に向かって侵入する場合と、内部から外部に向かって放出される場合とでは、一般に、漏れ物質の挙動が可逆ではないことが知られている。このため、外部から内部に向かって侵入させたヘリウムガスを、内部から外部に向かって放出させる従来の検査方法では、100%の漏れ量を検出できないという根本的な問題点がある。
【0009】
また、特許文献2から特許文献4には、電磁波を用いて非破壊で物質の内部を検査する検査装置およびその検査方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2002−134164号公報
【特許文献2】特開2006−170718号公報
【特許文献3】特開2006−17418号公報
【特許文献4】特開2006−105646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とし、密閉部品が実際に使用される環境で、密閉部品の外部から内部に向かって侵入するか、または、密閉部品の内部から外部に向かって放出される物質を漏れ物質として用いることができ、密閉部品が実際に使用される環境で、漏れ物質が、密閉部品の外部から内部に向かって侵入するか、または、密閉部品の内部から外部に向かって放出される圧力を用いることができ、密閉部品に生じている複数の漏れ箇所を特定でき、コストが低く、電磁波を用いて非破壊で検査可能な、密閉部品の漏れ検査装置およびその検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の密閉部品の漏れ検査装置は、密閉空間(23)を有する密閉部品(20)の該密閉空間(23)が、所定の物質に対して漏れを有するのかを検査する装置であって、上記密閉部品(20)の形成材料を透過し且つ上記物質に吸収される波長を有する電磁波(L)を、上記密閉部品(20)に照射する照射部(11)と、上記密閉部品(20)を透過したか、または、該密閉部品(20)の表面から反射した上記電磁波(L)を検出して電気信号に変換する検出部(15)と、上記電気信号から上記物質の漏れ量を演算する演算部(16)と、上記漏れ量を用いて、上記密閉部品(20)の漏れの良否を判定する判定部(17)と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
これにより、密閉部品(20)が実際に使用される環境で、該密閉部品(20)の外部から内部に向かって侵入するか、または、密閉部品(20)の内部から外部に向かって放出される物質を漏れ物質として用いることができ、また密閉部品(20)が実際に使用される環境で、漏れ物質が、密閉部品の外部から内部に向かって侵入するか、または、密閉部品(20)の内部から外部に向かって放出される圧力を用いることができ、さらに密閉部品(20)に生じている複数の漏れ箇所を特定でき、さらにまたコストが低く、電磁波を用いた非破壊の密閉部品の漏れ検査が可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、上記密閉部品(20)が、上記密閉空間(23)に上記物質が封入されたものである密閉部品の漏れ検査装置に適用されることが好ましい。また、請求項1に記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、上記密閉部品(20)が、上記物質の圧入処理がなされたものである密閉部品の漏れ検査装置に適用されることが好ましい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、上記電磁波(L)が、テラヘルツ波であることを特徴とする。
【0016】
これにより、電磁波(L)の制御を、光学素子を用いて容易に行うことができると共に、密閉部品(20)内部に存在する漏れ物質の検査を安全に行える。
【0017】
請求項5に記載の発明は、上記密閉空間(23)内の上記物質を、加熱または冷却する加熱冷却部(19)を有していることを特徴とする。
【0018】
これにより、密閉空間(23)内の漏れ物質を相変化させられるので、例えば、液体を気体に相変化させることにより、密閉空間内に存在しているすべての漏れ物質を気体として検査できるため、漏れ物質の検出能力を向上できる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、上記密閉部品(20)に照射する上記電磁波(L)の照射方向を制御する照射方向制御部(12)を有していることを特徴とする。
【0020】
これにより、検出信号のS/N比を向上させて、漏れ物質の検出能力を向上できる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、上記密閉部品(20)に上記電磁波(L)を照射する照射範囲を調節する絞り部(13)を有していることを特徴とする。
【0022】
これにより、電磁波(L)を照射したい密閉部品(20)の部位のみに電磁波(L)を照射でき、且つ、不要な電磁波(L)が検出器に入射することを防止できるので、検出信号のS/N比を向上させて、漏れ物質の検出能力を向上できる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、上記密閉部品(20)を固定する部品固定部(18)を有しており、該部品固定部(18)は、上記密閉部品(20)を回転移動または平行移動をさせることを特徴とする。
【0024】
これにより、密閉部品(L)を固定して、電磁波(L)を照射したい密閉部品の部位のみに電磁波を照射することができる。また、密閉部品(20)を移動させて電磁波(L)による走査および照射を行い、密閉空間(23)内に存在する漏れ物質の位置に関する2次元情報を得ることができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、上記物質が、上記密閉部品(20)が実際に使用される状況で、該密閉部品(20)の外部から内部に向かってか、または、内部から外部に向かって漏れる物質と、同じであることを特徴とする。
【0026】
これにより、密閉部品(20)が実際に使用される状況で、密閉部品(20)に侵入するか、または、密閉部品(20)から放出される漏れ物質を用いて検査できるので、漏れ検査の精度を高められる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、密閉空間(23)を有する密閉部品(20)の該密閉空間(23)が、所定の物質に対して漏れを有するのかを検査する密閉部品の漏れ検査方法であって、上記密閉部品(20)の形成材料を透過し且つ上記物質に吸収される波長を有する電磁波(L)を、上記密閉部品(20)に照射し、上記密閉部品(20)を透過したか、または、該密閉部品(20)の表面から反射した上記電磁波(L)を検出して電気信号に変換し、上記電気信号から上記物質の漏れ量を演算し、上記漏れ量を用いて、上記密閉部品(20)の漏れの良否を判定することを特徴とする。
【0028】
これにより、請求項1と同様の効果が奏される。
【0029】
また、請求項10に記載の発明は、請求項11に記載の発明のように、上記密閉部品(20)が、上記密閉空間(23)に上記物質を封入したものである密閉部品の漏れ検査方法に適用されることが好ましい。また、請求項10に記載の発明は、請求項12に記載の発明のように、上記密閉部品(20)が、上記物質の圧入処理をしたものである密閉部品の漏れ検査方法に適用されることが好ましい。
【0030】
請求項13に記載の発明は、上記電磁波(L)が、テラヘルツ波であることを特徴とする。
【0031】
これにより、請求項4と同様の効果が奏される。
【0032】
請求項14に記載の発明は、上記密閉空間(23)内の上記物質を、加熱または冷却して、上記電磁波(L)を照射することを特徴とする。
【0033】
これにより、請求項5と同様の効果が奏される。
【0034】
請求項15に記載の発明は、上記電磁波(L)の照射範囲を調節した後に、該電磁波(L)を上記密閉部品に照射することを特徴とする。
【0035】
これにより、請求項7と同様の効果が奏される。
【0036】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態または実施態様に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明のネジ部品の検査装置をその好ましい一実施形態に基づいて、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1実施形態の密閉部品の漏れ検査装置10(以下、単に本装置10ともいう)の構成図である。本装置10は、密閉空間23を有する密閉部品20の該密閉空間(23)が、所定の漏れ物質に対して漏れを有するのかを検査する装置である。
上記漏れ物質としては、密閉部品20が実際に使用される状況において、密閉部品20の外部から内部に向かって侵入するか、または、内部から外部に向かって放出される物質を用いることが好ましい。
【0039】
本装置10は、図1に示すように、密閉部品20の形成材料を透過し且つ上記漏れ物質に吸収される波長を有する電磁波Lを、密閉部品20に照射する照射部11と、密閉部品20を透過した電磁波Lを検出して電気信号に変換する検出部15と、この電気信号から漏れ物質の漏れ量を演算する演算部16と、該漏れ量を用いて、密閉部品20の漏れの良否を判定する判定部17と、を備えている。
【0040】
また、本装置10は、図1に示すように、密閉空間23内の漏れ物質を、加熱または冷却する加熱冷却部19と、密閉部品20に照射する電磁波Lの照射方向を制御する照射方向制御部12と、密閉部品20に電磁波Lを照射する照射範囲を調節する絞り部13と、密閉部品を固定する部品固定部18とを有している。
【0041】
また、本装置10は、湿度および温度が一定の雰囲気の下で、密閉部品20の漏れ検査を行うことが、電磁波Lに対する外乱の影響を低減して、安定した測定を行う上で好ましい。
【0042】
本装置10は、電磁波Lとして、テラヘルツ波を用いる。テラヘルツ波は、電波と光の両方の性質を有し、樹脂などの密閉部品20を形成する材料に対する透過性を有すると共に、光学レンズなどの光学素子により屈折させることが可能なため、電磁波経路の制御が容易である。また、テラヘルツ波は、水などの漏れ物質に吸収されるため、密閉部品20内部の漏れ物質の測定を非破壊で行うことが可能である。さらに、テラヘルツ波は、X線とは異なり、人体に与える影響が少ないので、安全な電磁波といえる。
【0043】
図2に示す密閉部品20は、樹脂を主体として形成されており、この樹脂は、テラヘルツ波を透過する。本明細書でテラヘルツ波が物質を透過するとは、透過される物質にテラヘルツ波が全く吸収されない場合と、透過される物質にテラヘルツ波が吸収されるが、検出部15が検出可能な程度に電磁波を透過する場合とを意味する。
【0044】
一般的に、テラヘルツ波は、その波長が3μm〜3mmの範囲となる0.1THz〜10THzの電磁波をいう。本明細書では、テラヘルツ波は、樹脂を主体として形成される密閉部品20を透過可能であり、漏れ物質に吸収される波長であれば、ミリ波から赤外線の一部を含む範囲であってもよい。
特に、漏れ物質として水を用いる場合には、水への吸収係数が大きい1THz付近を含む周波数帯を用いることが好ましく、具体的には、テラヘルツ波の周波数として、0.03〜10THzを用いることが好ましい。
【0045】
本装置1は、例えば、図2(a)および図2(b)に示すような、密閉空間23を有する密閉部品20の漏れを検査することができる。密閉空間23には、センサである電子部品24が配置されている。この密閉部品20は、車に搭載される部品である。
【0046】
密閉部品20は、段差を有した円筒形状であり、部品上部21と部品下部22とから構成されている。部品上部21は、径が小さくなる段差部を有しており、この段差部の端部に位置する接合部25により、部品下部22と接合されている。
【0047】
部品上部21の内部には、密閉空間23が設けられている。この密閉空間23内には、電子部品24が収められており、この電子部品24は、部品下部22に固定されている。
部品上部21は、樹脂から構成されており、この樹脂は、テラヘルツ波が透過可能である。
【0048】
密閉部品20は、車に搭載されて使用されるので、車の使用状況に応じてさまざまな環境にさらされる。そのため、密閉部品20が漏れを有していると、使用環境によっては、雨水または海水などの漏れ物質が内部の密閉空間に侵入し、内部に配置されている電子部品が故障する原因となり得る。密閉部品20の漏れは、接合部25で生じる可能性が特に高い。
【0049】
次に、本装置10について以下に詳細に説明する。
【0050】
照射部11は、電磁波を密閉部品20に向けて照射する。照射部11は、電磁波を発信する電磁波発信器と、発信した電磁波を密閉部品20に向けて照射する共振用アンテナ部とから構成されている。この共振用アンテナ部としては、例えばホーンアンテナを用いることができる。また、本装置10では、電磁波発信器は、単波長の電磁波を発信する。
【0051】
検出部15は、密閉部品20を透過した電磁波を受信し、その受信した電磁波を検出する。そして、検出部15は、検出した電磁波を電気信号に変換し、その電気信号を演算部16に出力する。本装置10では、電気信号を電圧値として、演算部16に出力する。
【0052】
検出部15は、受信した電磁波を集光する受信用アンテナ部と、このアンテナ部で集光した電磁波を電気信号に変換するパワー素子などからなる電磁波ー電気信号変換器とから構成されている。この受信用アンテナ部としては、ホーンアンテナを用いることができる。また、検出部15を、多数の電磁波ー電気信号変換器を2次元状に配置した構成とすれば、照射部11による一度の電磁波の照射により、密閉部品20の密閉空間23内に存在する漏れ物質の位置についての2次元情報を得ることができる。この2次元情報は、画像化してもよい。
【0053】
また、本装置10では、照射部11および検出部15が、図示しない照射部駆動装置および検出部駆動装置を有しており、これらの装置が、連動して駆動することにより、照射部11および検出部15の位置を変更することができる。
【0054】
例えば、照射部11により密閉部品20に電磁波を照射し、検出部15により透過した電磁波Lを受信しながら、電磁波Lの進行方向と直交する2次元面上を、照射部11および検出部15それぞれを連動させながら移動させて、密閉部品20を走査することが可能である。その結果、密閉部品20の密閉空間23内に存在する漏れ物質の位置について、2次元情報を得ることができる。この2次元情報もまた画像化してもよい。
【0055】
演算部16は、検出部15から電気信号が入力されると、この電気信号から電磁波の透過量を求め、この透過量と、あらかじめ作成しておいた校正曲線とを用いて、漏れ物質の漏れ量を演算により求める。
【0056】
本装置1では、上記校正曲線を用いて、電磁波の透過量から漏れ物質の漏れ量を求めることにより、密閉部品20の寸法、透過厚さなどの変動要因を除去し、漏れ量の検出精度を高めている。
【0057】
また、本装置10では、検出部15により受信する電磁波のS/N比を高めるために、照射部11から密閉部品20への照射を、所定の回数行って、電磁波の透過量を、演算部16による平均化処理により求めることができる。この平均化処理を行うために、電磁波を照射する回数は、密閉部品20および密閉空間23の寸法または形状などによって適宜設定することが好ましい。
【0058】
判定部17は、演算部16が求めた漏れ物質の漏れ量と所定のしきい値とを比較して、密閉部品20の漏れの良否に対する判定処理を行う。判定部17は、密閉部品20が漏れを有さないか、または、漏れ量が上記しきい値以下の場合には、密閉部品20を良品と判定し、一方、漏れ量が上記しきい値よりも高い場合には、密閉部品20を不良品と判定する。
【0059】
また、検出部15が、密閉部品20の密閉空間23内に存在する漏れ物質の位置を2次元情報として出力する場合には、判定部17は、その判定処理と共に、漏れ物質の位置情報を、画像化して出力してもよい。
【0060】
判定部17および上述した演算部16のハードウェアは、例えば中央演算装置(CPU)、数値演算プロセッサ、ROMまたはRAMなどの半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体、入出力インターフェースなどから構成することができる。そして、演算部16が行う演算処理プログラムまたは判定部17が行う判定処理プログラムは、上記磁気記録媒体または光記録媒体に記録することができる。
【0061】
また、本装置1は、図1に示すように、照射部11と密閉部品20との間、および、密閉部品20と検出部15との間、それぞれに、照射方向制御部12を有しており、照射部11が照射した電磁波Lの照射方向を、例えば平行化、集光化、拡大化することにより、制御する。照射方向制御部12としては、例えば光学レンズを用いることができる。そして、用いる光学レンズの形状を適宜選択することにより、電磁波Lを平行化、集光化、拡大化することが可能である。
【0062】
さらに、照射方向制御部12の働きについて以下に説明する。
電磁波Lを照射方向制御部12により集光化して、密閉部品20に照射することにより、電磁波Lの照射エネルギー密度を増加させ、検出信号のS/N比を高められる。また、漏れ物質の位置情報について、測定分解能を高められる。
【0063】
また、電磁波Lを照射方向制御部12により拡大化して、密閉部品20に照射することにより、測定したい密閉部品20の部分全面に電磁波を照射して、透過量の局部的な変動を除去し、平均化した透過量の測定を行うことにより、密閉部品20などが持つ誤差要因を低減できる。
【0064】
さらに、電磁波Lを照射方向制御部12により平行化して、密閉部品20に照射することにより、密閉部品20の表面における電磁波Lの散乱を減少させ、検出部15に入射する電磁波を多くして、検出信号のS/N比を高められる。
【0065】
本装置1では、一対の照射方向制御部12として、一対の光学レンズを用いている。図1に示す例では、照射部11から照射された電磁波Lは、一方の照射方向制御部12により平行化され、平行化された電磁波Lは、密閉部品20に照射され、密閉部品20を透過した電磁波Lの一部は、他方の照射方向制御部12により集光されて、検出部15に受信される。
【0066】
また、本装置1は、図1に示すように、照射方向制御部12と密閉部品20との間に、絞り部13を有しており、照射部11が照射した電磁波Lの照射範囲を調節することができる。
【0067】
絞り部13は、電磁波Lが密閉部品20を照射する範囲、または、密閉部品20を照射する電磁波Lの量を調節することができる。また、絞り部13は、電磁波Lを吸収する材料から形成されていることが、反射または散乱などにより、密閉部品20を透過した電磁波以外の電磁波が検出部15に受信されることを防止する上で好ましい。
【0068】
照射部11から照射された電磁波Lは、密閉部品20を透過する部分以外にも、密閉部品20の表面で反射・散乱する部分もある。また、密閉部品20の密閉空間23の形状によっては、この密閉空間23により反射または散乱される電磁波の部分もある。さらに、密閉空間23内に電子部品などが配置されている場合には、この電子部品などにより反射または散乱される電磁波の部分がある。
【0069】
そこで、本装置10では、照射部11から照射されて、密閉部品20を透過した電磁波Lの部分以外の電磁波が、検出部15に受信されることを防止するために、絞り部13を設けて、バックグランウンドノイズを低減して、検出信号のS/N比を高めている。
絞り部13の開口部13aの形状および寸法は、必要に応じて適宜調節することが好ましい。
【0070】
絞り部13は、例えば、図3(a)に示すように、縦長の矩形形状の開口部13aを有するように構成することができる。密閉部品20に照射される電磁波Lは、この絞り部13の開口部13aを通過する部分のみである。このように、絞り部13によって、電磁波Lが密閉部品20を照射する範囲および電磁波Lの量が調節される。
【0071】
図3(a)に示す例では、平面視が矩形形状の照射方向制御部12を用いているので、絞り部13も、この照射方向制御部12と対応させて外形形状が矩形形状のものを用いている。このように、絞り部13は、照射方向制御部12と協働して用いることが、照射部11が照射した電磁波Lの照射範囲を調節する上で効果的である。
【0072】
また、図3(b)には、密閉部品20の中心部のみに電磁波Lを照射する場合の例を示している。絞り部13は、その中央部に円形状の開口部13aを有している。密閉部品20に照射される電磁波Lは、この開口部13aを通過する部分のみである。また、図3(b)に示す例では、平面視が円形状の照射方向制御部12を用いているので、絞り部13も、この照射方向制御部12と対応させて外形形状が円形状のものを用いている。
また、開口部13aの寸法をさらに小さくして、密閉部品20に照射する電磁波Lの範囲を狭くすることにより、漏れ物質の測定分解能を高めることができる。
【0073】
また、本装置10は、図1に示すように、密閉部品20を加熱または冷却することにより、密閉空間23内の漏れ物質を加熱または冷却する加熱冷却部19を有している。加熱冷却部19は、密閉部品20の全体を加熱または冷却できると共に、局所的にも加熱または冷却できることが好ましい。
漏れ物質を加熱する方法としては、熱風を送ったり、赤外線を放射するなど公知の方法を用いることができる。また、漏れ物質を冷却する方法としては、冷風を送るなどの公知の方法を用いることができる。
【0074】
本装置1は、この加熱冷却部19を用いることにより、密閉空間23内の漏れ物質を、気体から液体へ、液体から気体へ、または、液体から固体へ相変化させることができる。
例えば、電磁波Lを集光化などにより、密閉部品20に照射する電磁波Lの範囲を小さくスポット化している場合には、電磁波Lが照射されない部分に漏れ物質として液体の水が存在していても、電磁波Lが照射されないと、水の存在が検出されないので、密閉部品20の漏れが検出できない。しかし、加熱冷却部19により、密閉部品20内の漏れ物質を加熱することにより、すべての水を水蒸気に相変化させた状態で電磁波Lを照射すれば、密閉空間23内に存在する水の存在を確実に検出することができる。このようにして、本装置10では、漏れの検出性能の向上と、漏れの見逃し防止を図っている。
【0075】
また、例えば、同様に漏れ物質が水である場合に、加熱冷却部19により、密閉部品20内の漏れ物質を冷却することにより、水を氷に相変化させた状態で、密閉部品20の接合部25に電磁波Lを走査および照射すれば、水が浸入した経路に沿って、侵入した水が氷となって存在するので、漏れの発生経路を特定することも可能である。
【0076】
また、本装置10は、図1に示すように、密閉部品20を固定する部品固定部18を有しており、該部品固定部18は、密閉部品18を回転移動または平行移動をさせることができる。部品固定部18は、密閉部品20を2次元方向と共に、3次元方向にも平行移動させられることが好ましい。また、部品固定部18は、密閉部品20を固定した状態で、平行移動と回転移動とを組み合わせた移動を行えることが好ましい。
【0077】
照射部11および検出部15の位置を固定した状態で、部品固定部18を用いて、密閉部品20を2次元方向に移動することにより、密閉部品20を走査した電磁波の照射を行うことができる。その結果、密閉部品20の密閉空間23内に存在する漏れ物質の位置についての2次元情報を得ることができる。この2次元情報は、画像化してもよい。
【0078】
本装置10では、密閉部品20の漏れを検査する際には、密閉部品20の実際の使用条件と同じ条件にて、漏れ物質を、該密閉部品20の内部に侵入させるか、該密閉部品20の外部に放出させることが、密閉部品20の漏れを精度よく検査する上で好ましい。すなわち、密閉部品20の検査に用いる漏れ物質は、密閉部品20が実際に使用される状況で、該密閉部品20の外部から内部に向かってか、または、内部から外部に向かって漏れる物質と、同じであることが好ましい。また、密閉部品20が実際に使用される状況と同じ圧力で、漏れ物質を、密閉部品20の外部から内部に向かって侵入させるか、または、内部から外部に向かって放出させることが好ましい。
また、密閉部品20の漏れを検査する際には、密閉部品20に要求される耐圧条件にて、漏れ物質を、該密閉部品20の内部に侵入させてもよい。
【0079】
本装置1の検査対象である密閉部品20は、上述したとおり、車に搭載されて使用されるものであり、密閉部品20に漏れが有ると、密閉部品20の実際の使用時に、雨水または海水などが、密閉部品20の外部から内部に向かって浸入する可能性がある。
【0080】
本装置10は、例えば、JIS Z 2331付属書8の浸漬法を用いて、密閉部品20の外部から内部に向かって水または海水を侵入させることができる。密閉部品20の密閉空間23に水を侵入させる加圧装置の例を図4に示す。
図4は、加圧装置40を示している。密閉空間23に水Wを侵入させる際には、まず、密閉部品20を、内部に水Wを満たした圧力容器42に入れ、この圧力容器42を密閉した状態で、圧力発生装置41により内部を加圧して、漏れを有する密閉部品20に水Wを侵入させることができる。この加圧する圧力値としては、上述したように、密閉部品20が実際に使用される状況と同じ圧力、または、密閉部品20に要求される耐圧を用いることができる。
【0081】
次に、上述した演算部16で用いる校正曲線について、以下に詳述する。
校正曲線は、演算部16において、検出部15から入力された電磁波の透過量を示す電圧値から、漏れ物質の漏れ量を求める際に用いられる。本装置10では、漏れ物質に応じた校正曲線を用いる。また、同じ漏れ物質であっても、漏れを検査する際の漏れ物質の状態に対応させて、各相における校正曲線を用いる。これは、電磁波の吸収係数が、漏れ物質によって異なるためであり、また、電磁波の吸収係数が、漏れ物質の相によっても異なるからである。
【0082】
本装置10では、漏れ検査を行う前に、密閉部品20の密閉空間23に存在する漏れ物質の状態に対応させた校正曲線をあらかじめ作成する。以下に、校正曲線の作成方法を説明する。
【0083】
校正曲線は、密閉空間23内に、既知の量の漏れ物質を封入し、照射部11から密閉部品20に電磁波を照射して、その時の電磁波の透過量を電圧値として測定する。そして、密閉空間23に封入する漏れ物質の量をふらして、複数の水準における電磁波の透過量を測定し、横軸に漏れ量として、密閉空間23内に封入した漏れ物質の量をとり、縦軸に電磁波の透過量として、検出部15からの出力された電圧値をとり、測定した各データをプロットして、各プロット間を結ぶことにより得られる。この際に、密閉空間23内に漏れ物質を封入しない状態、つまり、漏れ物質の量がゼロであり、漏れが無い状態も測定しておくことが好ましい。
そして、密閉部品20の漏れを検査する際には、電磁波の密閉部品20への照射方法を、校正曲線を作成する際に密閉部品20に電磁波を照射した方法と同様に行う。
【0084】
図5に、校正曲線の一例を示す。電磁波の透過率は、漏れ量が増加して密閉空間23内に存在する漏れ物質が増加するに従って、減少する。また、図5には、判定部17が、判定処理の基準とする判定しきい値を示している。漏れ量が、このしきい値以下であれば、密閉部品20は良品であり、漏れ量が、このしきい値よりも大きければ、密閉部品20は不良品と判定される。図5に示す例では、横軸の漏れ量の単位として、cmを用いている。
【0085】
次に、密閉部品20において、漏れ物質として液体である水を用いる場合の校正曲線を作成する手順について、具体的に、図6(a)を参照しながら説明する。
まず、密閉空間23内に所定量の水W1を封入し、部品上部21と部品下部22とを、接合部25により接合する。そして、密閉部品20を部品固定部18に固定し、部品固定部18を用いて、部品上部21を下方にした状態にして、封入した水W1が電子部品24と重ならないようにする。なお、密閉空間23内には、空気が入っている。
次に、電磁波Lが照射される範囲に、密閉空間23内に封入されたすべての水W1が含まれるように、照射部11、検出部15、一対の照射方向制御部12および絞り部13を設定する。
次に、照射部11から電磁波Lを密閉部品20に照射して、密閉部品20を透過した電磁波Lの透過量を測定する。
次に、密閉空間23内に封入する水W1の量を、複数の水準に変更しながら、上述した手順を繰り返して測定する。
然る後、測定したデータから、校正曲線を作成する。
【0086】
次に、密閉部品20において、漏れ物質として液体としての水を用いる場合の校正曲線を作成する手順について、水が少量の場合の例を、図7(a)を参照しながら説明する。密閉空間23内に存在する水が少量の場合には、例えば数滴の水の場合には、この水滴が電子部品24に隠れた位置に付着していると、電磁波Lの照射によっても、水滴がうまく測定されないおそれがある。このような場合には後述するように、加熱冷却部19を用いて漏れ検査を行うので、この漏れ検査に対応した校正曲線の作成をあらかじめ行う。
【0087】
密閉空間23内に封入される水W2が少量の場合には、まず、密閉空間23内に存在する水W2を確実に測定するために、加熱冷却部19を用いて、密閉空間23内の水W2を加熱して、すべて水蒸気にする。その後、電磁波Lが照射される密閉部品20の部分を、加熱冷却部19を用いて冷却して、水蒸気を液体に相変化させる。図7(a)に示す例では、部品上部21の先端側の部分を、加熱冷却部19により冷却する。そして、水蒸気は、図7(a)に示すように、温度が低い部品上部21の内壁に水滴状に付着する。
後は、図6(a)を用いて説明したのと同様にして、電磁波を密閉部品20に照射する。また、密閉空間23内に封入する水W2の量は、水を封入しない場合も含めて、複数の水準の測定をして、校正曲線を得る。
【0088】
そして、実際に密閉部品20の漏れを検査する際には、電磁波の密閉部品20への照射方法を、上述した校正曲線を作成する際と同様にして行う。つまり、加熱冷却部19を用いて、密閉空間23内部の水を一度水蒸気にした後に冷却して、水滴にした状態で、密閉部品20に電磁波を照射して検査する。
【0089】
このように、本装置10では、加熱冷却部19を用いて密閉部品20を加熱すれば、密閉空間23内の電子部品24に隠れた位置に凝集した水を水蒸気として密閉空間23内に充満させるので、液体の状態ではうまく測定できない場合でも、漏れの検査が可能となる。
【0090】
次に、密閉部品20において、漏れ物質として気体としての水を用いる場合の校正曲線を作成する手順について、図8を参照しながら説明する。
まず、加熱冷却部19を用いて、密閉空間23内の水を加熱して、すべての水を水蒸気W3にする。次に、密閉空間23内の水が水蒸気W3である状態を維持するように、加熱冷却部19により密閉空間23の温度を維持した状態で、図6(a)を用いて説明したのと同様にして、電磁波を密閉部品20に照射する。また、密閉空間23内に封入する水の量は、水を封入しない場合も含めて、複数の水準の測定を行い校正曲線を得る。ここで、密閉部品20は、図8に示すように、部品上部21を上側にしておいてよい。
【0091】
上述した説明は、漏れ物質として、気体としての水を用いる場合について説明したが、常温で気体である漏れ物質を用いる場合には、加熱冷却部19を用いないことを除いては、上述したのと同様にして、校正曲線を作成することができる。
【0092】
次に、本装置10において、電磁波Lを密閉部品20に照射した時に、電磁波Lが漏れ物質を透過する様子を、上述した図6および図7を用いて、以下に説明する。
【0093】
図6(a)には、絞り部13の開口部13aを通過する電磁波が、密閉空間23内を透過した透過量を密閉空間23の長手方向に沿って示してある。ここで、密閉空間23の長手方向は、電磁波の進行方向と直交する方向である。
密閉空間23内に水を封入していない場合には、図6(c)に示すように、密閉空間23の長手方向において、電磁波の透過量は一定である。一方、密閉空間23内に水を封入した場合には、図6(b)に示すように、水が存在する部分では、電磁波が水に吸収されて、水が存在しない部分と比べて、透過量が減少している。
【0094】
このように、本装置1では、部品固定部18を用いて、密閉空間23内の水が、電子部品24に隠れた場所に位置しないように、密閉部品20の向きを調節して、漏れ検査を行うことができる。
【0095】
図6(a)に示す例では、絞り部13の開口部13a全体から電磁波Lが密閉部品20に照射されているので、検出部15が受信する電磁波Lは、水W1を透過した部分と、水W1を透過しない部分とを併せた量となる。
一方、照射方向制御部12または絞り部13により、電磁波Lが密閉部品20を照射する範囲をスポット状に小さくして、密閉部品20を走査および照射すれば、密閉空間23内に存在する水W1の位置について、2次元情報を得ることができる。
【0096】
図7(a)には、絞り部13の開口部13aを通過する電磁波が、密閉空間23内を透過した透過量を密閉空間23の長手方向に沿って示してある。密閉空間23内に水を封入していない場合には、図7(c)に示すように、密閉空間23の長手方向において、電磁波の透過量は一定である。一方、密閉空間23内に水滴W2を封入した場合には、図7(b)に示すように、電磁波が水滴W2に吸収されて透過量が減少している。密閉空間23の内壁には、水滴W2が、密閉空間23の長手方向全体に亘って付着しているので、密閉空間23の長手方向において、電磁波Lの透過量は一定となっている。
【0097】
このように、本装置10では、漏れ物質である水が少量の場合には、加熱冷却部19および部品固定部18を用いて、電磁波Lが照射される密閉空間23の部分に水を位置させて、密閉部品20の漏れ検査を行うことができる。
【0098】
本装置1では、上述した校正曲線を、電磁波の透過量を用いて作成している。一方、密閉部品20の形成材料によっては、電磁波の吸収率が高い場合もあるので、このような場合には、密閉空間23内に封入する漏れ物質の量を変えても、電磁波の透過量に差がでにくい場合もある。しかし、密閉部品20の形成材料の電磁波の透過率が微小であっても、漏れ媒質の電磁波の吸収係数が大きく、漏れ有りと漏れ無しとの間で、または、漏れ量が大と漏れ量が小との間で、電磁波の透過量の差が大きければ、漏れの検出が可能である。
【0099】
上述した本装置10によれば、密閉部品20が実際に使用される環境で、該密閉部品20の外部から内部に向かって侵入するか、または、密閉部品20の内部から外部に向かって放出される物質を漏れ物質として用いて、電磁波による非破壊の密閉部品の漏れ検査が可能であり、その検査精度が高い。また密閉部品20が実際に使用される環境で、漏れ物質が、密閉部品の外部から内部に向かって侵入するか、または、密閉部品の内部から外部に向かって放出される圧力を用いることができるので、検査精度が更に高められる。
【0100】
また、電磁波Lを集光化して、密閉部品20を走査および照射して検査することにより、密閉部品に生じている複数の漏れ箇所を特定できる。
【0101】
また、漏れ物質として、水などを用いることにより、検査コストを低減できる。
【0102】
さらに、本装置10によれば、密閉部品20が、2重構造を有しており、内側の密閉空間のみに、漏れ物質が封入されている場合にも、この密閉部品20の漏れ検査を行うことができる。
【0103】
次に、本発明の第2実施形態の密閉部品の漏れ検査装置を、図9を参照しながら以下に説明する。第2実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図9において、図1〜図8と同じ構成要素に同じ符号を付してある。
【0104】
第2実施形態の漏れ検査装置10(以下、単に本装置10ともいう)は、図9に示すように、密閉部品20の形成材料を透過し且つ漏れ物質に吸収される波長を有する電磁波Lを、密閉部品20に照射する照射部11と、密閉部品20の表面から反射した電磁波Lを検出して電気信号に変換する検出部15とを有している。
【0105】
図9に示す例では、照射部11は、照射部駆動装置により駆動されて斜め下方を向いており、電磁波Lを密閉部品20に照射している。一方、検出部15は、検出部駆動装置により駆動されて斜め下方を向いており、密閉部品20の表面から反射した電磁波Lを受信している。照射部11および検出部15は、密閉部品20の垂直線Cに対して同じ角度の傾きを有するように照射方向または受信方向が設定されている。
【0106】
また、本装置10では、照射部11から照射された電磁波Lが、一方の照射方向制御部12により、密閉部品20の表面上に集光されている。そして、密閉部品20の表面から反射された電磁波Lは、他方の照射方向制御部12によって、検出部15に集光されている。
【0107】
本装置10では、電磁波Lが密閉部品20を透過しないので、検出部15で受信する電磁波Lのエネルギー密度が高いため、検出信号のS/N比を高められる。特に、照射する電磁波Lを集光化して、密閉部品20に照射することが、測定分解能を向上し、検出信号のS/N比をさらに高める上で好ましい。
【0108】
本装置10は、例えば、密閉部品20の表面における漏れ発生箇所を特定する場合に用いることができる。集光化した電磁波Lを、照射部駆動装置および検出部駆動装置、または、部品固定部18を用いて、密閉部品20に走査および照射することにより、密閉部品20の表面に存在する漏れ物質の位置情報を得ることができる。
【0109】
ここで、電磁波Lは、密閉部品20の表面で反射する部分と、表面から透過して、表面近傍の内部から反射する部分とがある。そのため、密閉部品20から反射した電磁波Lは、密閉部品20の表面に存在する漏れ物質を検出すると共に、該表面近傍の内部に存在する漏れ物質を検出することができる。
【0110】
密閉部品20の漏れ発生箇所としては、特に、接合部25で生じる場合が多い。しかし、接合部25に対して斜めの方向から電磁波Lを照射すると、電磁波Lが透過しにくいので、密閉部品20の接合部25を透過して出てくる電磁波Lを測定するよりも、密閉部品20の表面で反射した電磁波Lを測定することの方が、検出部15で測定する電磁波Lの強度が大きいため、漏れ物質の測定を行いやすい。
【0111】
本装置10の演算部16で用いる校正曲線の作成方法について、以下に説明する。
校正曲線は、密閉部品20の表面上に、例えば密閉部品20の段差部分に、液体または固体の漏れ物質を少量、例えば1cm、置いて、そこに電磁波Lを照射して、電磁波Lの反射量を測定する。そして、漏れ物質の量を複数の水準に変更して、上述した手順を繰り返すことにより、校正曲線を作成できる。
【0112】
上述した本装置10の漏れ検査装置によれば、電磁波Lが透過しにくい密閉部品20の漏れ発生箇所の測定を行うことができる。また、反射する電磁波Lの反射量が多いので、検出信号のS/N比が高い。
また、漏れが発生する可能性が高い密閉部品20の接合部25の漏れ検査に適している。
【0113】
以下、本発明の密閉部品の漏れ検査方法の例を、上述した第1実施形態の装置10を用いた好ましい第1実施態様に基づいて、図10を参照しながら説明する。
【0114】
まず、密閉部品20の外側から内側に向かって漏れ物質が侵入する場合の漏れ検査方法について、以下に説明する。本実施態様では、密閉部品20の外側から内側に向かって漏れ物質を侵入させる前処理を行った後、電磁波を密閉部品20に照射して密閉部品20の漏れの有無を検査する。
【0115】
図10は、本実施態様の漏れ検査方法の手順の一例を示すフローチャートである。
本実施態様は、密閉空間23を有する密閉部品20の該密閉空間23が、所定の物質に対して漏れを有するのかを検査する密閉部品の漏れ検査方法であって、密閉部品20の形成材料を透過し且つ漏れ物質に吸収される波長を有する電磁波Lを、密閉部品20に照射し、密閉部品20を透過した電磁波Lを検出して電気信号に変換し、該電気信号から漏れ物質の漏れ量を演算し、該漏れ量を用いて、密閉部品20の漏れの良否を判定する。
また、本実施態様は、電磁波Lとして、テラヘルツ波を照射する。
【0116】
以下に、本実施態様について、さらに説明する。
まず、ステップS10において、密閉部品20に漏れ物質を加圧して封入する。漏れ物質は、密閉部品20が実際に使用される環境で、該密閉部品20の外部から内部に向かって侵入する物質である水を用いる。水を圧入処理する圧力としては、密閉部品20が実際に使用される環境で、漏れ物質が、密閉部品の外部から内部に向かって侵入する圧力、または、密閉部品20の耐圧を用いる。密閉部品20に水を圧入する装置としては、例えば図4に示す装置を用いることができる。
【0117】
次に、ステップS11において、密閉部品20の外面に付着した漏れ物質である水を乾燥させる。乾燥しても、漏れ物質が密閉部品20の外面から除去できないような物質である場合には、密閉部品20の外面を洗浄して、漏れ物質を除去する。
【0118】
次に、ステップS12において、照射部11が、密閉部品20の形成材料である樹脂を透過し、且つ、漏れ物質である水に吸収される波長を有する電磁波Lであるテラヘルツ波を、密閉部品20に照射する。
【0119】
次に、ステップS13において、検出部15が、密閉部品20を透過した電磁波Lを検出して電気信号である電圧値に変換し、この電圧値を演算部16に出力する。
【0120】
次に、ステップS14において、演算部16が、電圧値から漏れ物質の漏れ量を演算して求める。演算部16は、例えば図5に示す校正曲線を用いて、漏れ量を求める。演算部16は、検出部15から電磁波Lの透過量を電圧値として入力されるので、この電圧値に対応する横軸の値を漏れ量として求める。もし、検査した密閉部品20に漏れが無ければ、漏れ量はゼロとなる。
【0121】
然る後、ステップS15において、判定部17は、漏れ量を用いて、所定のしきい値と比較して、密閉部品20の漏れの良否を判定処理し、密閉部品20が良品であるか、または、不良品であるのかを判断する。
【0122】
なお、密閉部品20の製造時に、密閉空間23内に漏れ物質を封入している場合には、S10およびS11は省略してもよい。
【0123】
次に、密閉部品20の内側から外側に向かって漏れ物質が放出される場合である漏れ検査方法の第2実施態様について、以下に説明する。
【0124】
図11は、本実施態様の漏れ検査方法の手順の一例を示すフローチャートである。
まず、上述したS10からS14と同様にして、ステップS20からステップS24において、密閉空間23に漏れ物質としての水を圧入した密閉部品20に電磁波Lの照射1を行って、密閉部品20を透過した電磁波Lの透過量Aを演算部16により求める。
【0125】
次に、ステップS25において、密閉部品20の減圧処理を行う。密閉部品20を、例えば、図15に示す真空容器601に入れて、排気装置603により真空容器602内を減圧する。もし、密閉部品20が漏れを有していれば、この減圧下において、密閉空間23内の水が、密閉部品20の内側から外側に向かって放出されるので、密閉空間23内の水の量が減少する。その後、密閉部品20の外面を乾燥または洗浄してもよい。
【0126】
次に、ステップS26からステップS28において、上述したS22からS24と同様にして、減圧処理後の密閉部品20に電磁波Lの照射2を行って、密閉部品20を透過した電磁波Lの透過量Bを演算部16により求める。
【0127】
次に、ステップS29において、演算部16が、電磁波Lの透過量Aから透過量Bを減算処理して、密閉部品20の減圧処理前後の透過量の差を求める。
【0128】
次に、ステップS30において、演算部16が、この透過量の差から、密閉部品20の内側から外側に向かって放出された漏れ物質の漏れ量を求める。
【0129】
ここで、校正曲線として、例えば、図12に示すものを用いることができる。図12に示す校正曲線は、その縦軸が、透過量の差であり、横軸は、この透過量の差に対応する漏れ量である。図12に示す校正曲線は、例えば図5に示す校正曲線を用いて作成することができる。具体的には、図5の縦軸の2つの異なる透過量の値と、それぞれに対応する横軸の漏れ量を読み取り、透過量の差と漏れ量の差とからなる1組のデータを得る。同様の手順を繰り返して、透過量の差と漏れ量の差とからなる複数の組のデータを得た後、これらのデータを、グラフにプロットして、各プロット間を結べば、図12に示すような校正曲線が得られる。
【0130】
然る後、ステップ31において、判定部17が、透過量の差から密閉部品20の漏れの良否を判定する。判定部17は、図12に示すように、密閉部品20が漏れを有さないか、または、漏れ量が所定のしきい値以下の場合には、密閉部品20を良品と判定し、漏れ量が上記しきい値よりも高い場合には、密閉部品20を不良品と判定する。
【0131】
なお、本実施態様では、S20において、密閉部品20に漏れ物質の水を封入する際に、加圧装置を用いずに、大気圧で漏れ物質を封入していてもよい。大気圧で漏れ物質を封入していても、密閉部品20をS25において減圧処理するので、密閉部品20が漏れを有していれば、密閉空間23内の漏れ物質は、密閉部品20の内側から外側に向かって放出される。
【0132】
また、上述した実施態様において、密閉空間内の漏れ物質を、必要に応じて、加熱または冷却した後、電磁波Lを密閉部品20に照射してもよい。また、電磁波Lの照射範囲を適宜調節した後に、該電磁波Lを密閉部品20に照射することが好ましい。
【0133】
本発明の密閉部品の漏れ検査装置およびその検査方法は、上述した実施形態または実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
例えば、本発明の上記実施形態で測定対象とした密閉部品20は、車に搭載される部品であったが、本装置10の測定対象となる密閉部品は、電磁波が透過可能な材料から形成されており、漏れ物質が電磁波を吸収可能であれば、密閉部品20の形成材料または漏れ物質は、他のものであってもよい。
【0134】
また、上述した第2実施態様では、密閉部品20のみを減圧処理していたが、本装置10全体を、減圧室内に配置して、室内の圧力を減圧しながら、密閉部品20に電磁波Lを照射して、密閉部品20の漏れを検査してもよい。
【0135】
上述した一の実施形態また実施態様における要件は、適宜、実施形態間または実施態様で相互に置換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の漏れ検査装置を示す図である。
【図2】図2(a)は、図1の密閉部品の斜視図であり、図2(b)は、図2(a)の断面図である。
【図3】図3(a)および(b)は、絞り部の他の形態を示す図である。
【図4】図4は、密閉容器に水を加圧注入する加圧装置を示す図である。
【図5】図5は、校正曲線の一例である。
【図6】図6は、密閉空間内の水を測定する様子を示す図である。
【図7】図7は、密閉容器内の少量の水を測定する様子を示す図である。
【図8】図8は、密閉容器内の水蒸気を測定する様子を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態の漏れ検査装置を示す図である。
【図10】図10は、本発明の第1実施態様の漏れ検査方法を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第2実施態様の漏れ検査方法を示すフローチャートである。
【図12】図12は、校正曲線の他の例である。
【図13】図13は、従来例による漏れ検査装置を示す図であり、密閉部品にヘリウムガスを注入する装置を示している。
【図14】図14は、従来例による漏れ検査装置を示す図であり、密閉容器から漏れ出したヘリウムガスを検出する装置を示している。
【図15】図15は、従来例による、密閉容器から漏れ出したヘリウムガスを検出する他の装置である。
【符号の説明】
【0137】
10 密閉部品の漏れ検査装置
11 照射部
12 照射方向制御部
13 絞り部
15 検出部
16 演算部
17 判定部
18 部品固定部
19 加熱冷却部
20 密閉部品
21 部品上部
22 部品下部
23 密閉空間
24 電子部品
25 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間(23)を有する密閉部品(20)の該密閉空間(23)が、所定の物質に対して漏れを有するのかを検査する密閉部品の漏れ検査装置であって、
前記密閉部品(20)の形成材料を透過し且つ前記物質に吸収される波長を有する電磁波(L)を、前記密閉部品(20)に照射する照射部(11)と、
前記密閉部品(20)を透過したか、または、該密閉部品(20)の表面から反射した前記電磁波(L)を検出して電気信号に変換する検出部(15)と、
前記電気信号から前記物質の漏れ量を演算する演算部(16)と、
前記漏れ量を用いて、前記密閉部品(20)の漏れの良否を判定する判定部(17)と、
を備えていることを特徴とする密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項2】
前記密閉部品(20)は、前記密閉空間(23)に前記物質が封入されたものであることを特徴とする請求項1に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項3】
前記密閉部品(20)は、前記物質の圧入処理がなされたものであることを特徴とする請求項1に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項4】
前記電磁波(L)が、テラヘルツ波であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項5】
前記密閉空間(23)内の前記物質を、加熱または冷却する加熱冷却部(19)を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項6】
前記密閉部品(20)に照射する前記電磁波(L)の照射方向を制御する照射方向制御部(12)を有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項7】
前記密閉部品(20)に前記電磁波(L)を照射する照射範囲を調節する絞り部(13)を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項8】
前記密閉部品(20)を固定する部品固定部(18)を有しており、該部品固定部(18)は、前記密閉部品(20)を回転移動または平行移動をさせることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項9】
前記物質は、前記密閉部品(20)が実際に使用される状況で、該密閉部品(20)の外部から内部に向かってか、または、内部から外部に向かって漏れる物質と、同じであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査装置。
【請求項10】
密閉空間(23)を有する密閉部品(20)の該密閉空間(23)が、所定の物質に対して漏れを有するのかを検査する密閉部品の漏れ検査方法であって、
前記密閉部品(20)の形成材料を透過し且つ前記物質に吸収される波長を有する電磁波(L)を、前記密閉部品(20)に照射し、
前記密閉部品(20)を透過したか、または、該密閉部品(20)の表面から反射した前記電磁波(L)を検出して電気信号に変換し、
前記電気信号から前記物質の漏れ量を演算し、
前記漏れ量を用いて、前記密閉部品(20)の漏れの良否を判定する、
ことを特徴とする密閉部品の漏れ検査方法。
【請求項11】
前記密閉部品(20)は、前記密閉空間(23)に前記物質を封入したものであることを特徴とする請求項10に記載の密閉部品の漏れ検査方法。
【請求項12】
前記密閉部品(20)は、前記物質の圧入処理をしたものであることを特徴とする請求項10に記載の密閉部品の漏れ検査方法。
【請求項13】
前記電磁波(L)が、テラヘルツ波であることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査方法。
【請求項14】
前記密閉空間(23)内の前記物質を、加熱または冷却して、前記電磁波(L)を照射することを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査方法。
【請求項15】
前記電磁波(L)の照射範囲を調節した後に、該電磁波(L)を前記密閉部品(20)に照射することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の密閉部品の漏れ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−304358(P2008−304358A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152647(P2007−152647)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】