説明

寒冷地用の植物栽培ハウス

【課題】
植物栽培ハウスにおいて、太陽熱をハウス内に有効的に集熱してハウス内の温度上昇を確保し、多量の化石燃料を使わず、通年に亘って農作物等の植物栽培が可能な植物栽培ハウスを提供する。
【解決手段】
屋根斜面の傾斜を急勾配にし、全体が長手方向に断面三角の屋根を有し側壁を垂直にした寒冷地用の植物栽培ハウスであって、該植物栽培ハウスの長手方向の屋根部分と側壁部分と二重の透明及び/又は半透明の枠形成フィルムで覆い、日中に大部分が日陰となる屋根部分には内部に太陽光を反射する反射フィルムを設け、前記断面三角の屋根の天井上部には長手方向に高温空気を吸い込む空気吸入ダクトを設け、この空気吸入ダクトに取り込まれた高温空気を送風して、前記植物栽培ハウス内の培土の地中に配管した暖房配管に該高温空気、或いは該高温空気によって暖房した水を供給してハウス内の培土を暖房する寒冷地用の植物栽培ハウスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を効率よく利用し、積雪時でも農作物等の植物を省エネルギーで栽培可能とする寒冷地用の植物栽培ハウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、積雪寒冷地帯の東北、北海道の冬期間は、露地では農作物等の植物栽培はほとんど不可能であり、透明なガラスやビニールフィルムでハウスを構築し、太陽光線の熱エネルギーを有効利用するビニールハウスを用いて農作物を栽培している。しかし、積雪寒冷地帯の11月から3月までの5ヶ月間の気象条件は、ほとんど従来のビニールハウスハウス(温室)栽培が太陽エネルギーだけでは不可能な気象条件である。
ところで、従来の単に一重のビニールフィルムで覆ったハウス(温室)では、外気温に影響され温度上昇が十分ではなく、夜間のハウス内温度確保が難しく、ビニールフィルムを二重にして温度上昇を図ったハウスも、特許文献1や本出願人による特許文献2に開示されている。
また、北海道の釧路や稚内などの寒冷地帯では、夏期間栽培に従来のハウスを活用してもイチゴ・メロン・トマトなどの収穫は難しかった。このため、夜間での低温障害を防ぐため化石燃料を用いてハウス(温室)の通年栽培を試みている。
また、積雪寒冷地帯の冬季でも植物が栽培可能なビニールハウス(温室)栽培も、本出願人によって特許文献3として提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−285662号公報
【特許文献2】特開2010−38459号公報
【特許文献3】特願2010−48420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、積雪時に従来のビニールハウスでのハウス内の温度上昇は十分ではなく、特に、積雪寒冷地帯の11月から3月までの5ヶ月間の気象条件はほとんど従来のビニールハウスではハウス栽培が不可能な気象条件であり、更に、夜間の保温状態も十分ではないという問題点があった。また、寒冷時での加熱手段も化石燃料を用いており、維持費が高く採算が難しいといった問題点があった。
本発明の課題は、植物栽培ハウスにおいて、太陽熱をハウス内に有効的に集熱してハウス内の温度上昇を確保し、温度上昇した天井部分の高温空気を効率的に利用して、多量の化石燃料をほとんど使わず、通年に亘って農作物等の植物栽培が可能な寒冷地用の植物栽培ハウスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、屋根斜面の傾斜を急勾配にし全体が長手方向に断面三角の屋根を有し側壁を垂直にした寒冷地用の植物栽培ハウスであって、該植物栽培ハウスの長手方向の屋根部分と側壁部分と二重の透明及び/又は半透明の枠形成フィルムで覆い、日中に大部分が日陰となる屋根部分には内部に太陽光を反射する反射フィルムを設け、前記断面三角の屋根の天井上部には長手方向に高温空気を吸込む空気吸入ダクトを設け、この空気吸入ダクトに取込まれた高温空気に送風して、前記植物栽培ハウス内の培土の地中に配管した暖房配管に該高温空気、或いは該高温空気によって暖房した水を供給してハウス内の培土を暖房することを特徴とする.
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の寒冷地用の植物栽培ハウスにおいて、前記屋根斜面の傾斜の勾配を、57.5度から47.5度の範囲の急勾配としたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1に記載の寒冷地用の植物栽培ハウスにおいて、前記反射フィルムの外周部分は防寒素材のフィルムで覆うようにしたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の記載から選択される寒冷地用の植物栽培ハウスにおいて、前記側壁面の地上から所定の高さの内側全周には低位置反射フィルムを設けることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3の記載から選択される寒冷地用の植物栽培ハウスにおいて、前記側壁面の地上から所定の高さの畝の周囲には低位置反射フィルムを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のような構成であるので、本発明の寒冷地用の植物栽培ハウスは、屋根を急勾配にしてあるので、冬季の雪が自然落下しやすくして、太陽光線の確保量を増やすとともに、ハウス内天井付近の高温空気を狭い箇所に集めることができ、断面三角形の天井上部に集められた高温空気を、空気吸入ダクトによって植物栽培ハウスの下部の培土に埋めた暖房配管に供給し、培土を暖めて夜間でもある程度保温することで冬季でも植物が生育可能となり、多量の化石燃料をほとんど使わず、冬季でもハウス内では6℃以下にはならず、通年に亘って農作物等の植物栽培が可能となる。
また、太陽光線は冬期間といえどもハウス内に届いているので、その太陽熱をハウスの側壁を2重フィルムとし、殆ど日の当たらない側壁部分には内壁に反射フィルムを設けたので、外部の気象条件にあまり左右されずに、より多くの太陽熱を吸収し集熱することができる。
また、従来型ハウスの夜間等の暖房は、化石燃料が主であり栽培コストが高く、通年栽培が不適切であったが、本発明は外気温から防寒や太陽熱の有効利用で従来装置よりも基礎室温が高く栽培コストが低くなる。また、従来栽培不適地であった積雪寒冷地でも栽培が可能になるため地域生産性が高められ、地場生産物を消費者に供給出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1での西北側からの外観斜視図、
【図2】植物栽培ハウスの全体を説明する縦断面図、
【図3】図1の植物栽培ハウスの側面からの横断面図、
【図4】[表 1]は夜間積雪13cm積雪時の雪落下状況、[表2]は夜間積雪20cm積雪時の雪落下状況の表の図、
【図5】図1の矩形基礎枠体131の平面図、
【図6】図3の矩形基礎枠体の角部の拡大斜視図、
【図7】図3の矩形基礎枠体131の側面図、
【図8】天候が晴れの時の外気温度と、従来と実施例のビニールハウス内の室内温度とを比較した[グラフ1]の図、
【図9】天候が雪の時の外気温度と、従来と実施例のビニールハウス内の室内温度とを比較した[グラフ2]の図、
【図10】従来ハウスと実施例ハウスでの隅部や隅部での太陽光量(ルックス)測定値の[表3][表4][表5]の図、
【図11】植物栽培ハウス内での12月晴れの日の温度変化の[グラフ3]の図、
【図12】同上での12月雪の日の温度変化の[グラフ4]の図、
【図13】同上での12月晴れ一時雪の日の温度変化の[グラフ5]の図、
【図14】ハウス内の高温空気で貯水タンクの水を温めた温度上昇の[グラフ6]の図、
【図15】本発明の実施例2の植物栽培ハウスの側面からの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
効率良く太陽熱を吸収し蓄積する寒冷地用の植物栽培ハウスにより、通年に亘って農作物等の植物栽培が可能となる。
【実施例】
【0010】
[実施例1]
本発明の好適な植物栽培ハウスの実施例1を図面に沿って説明する。
図1の斜視図、図2の断面に示すように、本実施例のビニールハウスである植物栽培温室1は、寒冷地に敷設することを前提としており、冬季には屋根部に雪が積もることから、雪下ろし作業の必要のないように三角屋根11でかつ急勾配にしている。この屋根の勾配の値は、図4(a)の13cm積雪時の雪落下状況の[表1]、図4(b)の20cm積雪時の雪落下状況の[表2]での実験の結果に示すように、両ビニール屋根の開度を120度以下にすれば自然落下することが判明したが、あまり急勾配にすると、建設や保守に経費や労力を費やすので好ましくなく、更に、厳寒の夜間では、むしろ屋根に積雪が在った方がハウス内の温度低下が少ないことが判り、理想的は夜間には屋根に積雪が残っていた方がよく、太陽光が屋根に当たる午前9頃までには積雪が落下していた方が良いことも判った。
図4の[表1][表2]から判ることは、屋根開度95度では常時夜間でも雪が積もることがなく、夜間に積雪した雪が20cm時でも午前9時頃の積雪は、開度105度では100%雪は落下するが、午前9時になっても屋根開度120度なら積雪14cm、130度では積雪20cmも雪は残り、太陽光線量が妨げられることが判る。
本発明の断面三角型の三角屋根11の開度は、角度115度から95度の範囲に設定し、斜度にすれば57.5度から47.5度の範囲がよく、本実施例では開度105度、斜度52.5度程度にしている。
また、植物栽培ハウス1の全高さは南北向きの垂直部分の側壁12の高さは1.8mで、三角屋根11の頂部111までの全高は3.7mである。上述したこの三角屋根11の開度を狭くしたのは、後述するように、温室内の天井の上部空間X1に溜まる高温部分を集めるのにも最適な形状である。
【0011】
実施例1の植物栽培ハウス1の全体の概略は、全体が断面の屋根部が三角型で長手方向を東西(EW)に向けた細長いビニールハウスであって、全長が40mで幅が5mである。基本的には、図4に示すように、地表に全長が40mで幅が5mの基礎部13を設けるが、全体として矩形の基礎枠体131を施工して、図1、図2に示すように、これに外枠縦ポール14を等間隔に立てて、これに直線状の外枠横ポール15を掛け渡して骨組みを作り、更に、この骨組みに屋根部分の斜行ポール16を掛け渡し、枠形成フイルムである二重の内側フィルム3と外側フィルム2とを間隔を有する状態で覆い、日中に大部分が日陰となる北側屋根部分112には内部に太陽光を反射する反射フィルム4(反射鏡)を貼り付けてあり、垂直の南北に面した両側の側壁面も二重の内側フィルム3と外側フィルム2とを間隔を有する状態で覆っている。さらに屋根外側にはこれらのフィルムを覆って固定するように反射フィルム押さえ用横ポール17が設けられている。
【0012】
前記矩形の基礎枠体131は、図5の平面図に示すように全体が大きな矩形であって、図6の基礎枠体131の角部の拡大斜視図に示すように、矩形の基礎枠体131の適所にはアンカーボルト用の固定部材135が設けられ、アンカーボルト136等によって地表Gに固定する。更に、この矩形基礎枠体131は、図7の右側側面図に示すように多数の50cm程度のポール支持部材132がほぼ等間隔に垂直に設けられており、この対向する一対のポール支持部材132に三角屋根を形成する外枠斜行縦ポール16を順次挿入して外枠斜行縦ポール16の骨組みを完成させ、この外枠斜行縦ポール16に外枠横ポール15(図1参照)を差し渡して全体の骨組みを完成させる。また、外矩形基礎枠体131の外側縁に沿って、図5、図6に示すように、矩形基礎枠体131に設けられた留め具138にフィルム止め用ワイヤー137が張り巡らされており、前述した各種フィルム2,3,4,5を骨組みに覆った後にそれらフィルム2,3,4,5等の下部端を挟み込んで固定する。その完成した状態が図1の斜視図に示すような外観を呈する。
【0013】
なお、図7での矩形基礎枠体131は結合金具133、ボルト134によって現地で大きな矩形に組み立て可能となっている。この矩形基礎枠体131の使用により、従来、外枠縦ポール14の下端を地表Gに直接刺してしたが、ポール支持部材132に外枠縦ポール14を順次挿入するだけの簡単な作業で外枠縦ポール14の骨組みができ、かつ、整然と全体の外枠縦ポール14を設置することができ、また、コンクリート上でも硬い岩盤上でも容易にビニールハウスを施工することができ、フィルム2,3,4,5の固定もフィルム止め用ワイヤー137に挟むだけで、簡単な作業で済む等の幾多の利点がある。
【0014】
ここで、太陽光が照射される南(S)側は二重フィルムは、外周面側には、枠形成フィルムであり防寒素材外側フィルムである透明の外側シート2を張り巡らすが、この透明シートとしては厚さ0.1mm(MKVドリーム(株):ダンビーノ(商標))のものを使用した。透明シートは太陽光線を取り込む性能が高いものが良く、透明、或いは、ほぼ透明(透明率90%以上)に近いものがよい。
また、内周面側には枠形成フィルムであり遠赤外線を抑える半透明シートの内側シート3を張り巡らすが、この半透明としては0.075mm(MKVドリーム(株):ダンビーノ(商標))のものを使用した。この内側フィルム3の半透明シートの透明性は直進光線(550mm)透過率75%で全光線(550mm)透過率90%程度であるが、保温性に関する遠赤外線(5〜25μ)透過率は15%(一般農度25%)であり保温性を有するものである。この二重のシートの間には、間隔3〜10cm(平均5cm)程度の空気層が存在すようにしてあり、少なくとも密着しないようにしなければならない。
【0015】
このことを、図8の[グラフ1]及び図9の[グラフ2]で説明する。[グラフ1]は、天候が晴れの時の外気温度と、従来の1重フィルムのビニールハウス内地上1mでの室内温度と、本発明の二重フィルムに北側面反射フィルムを配置した本実施例のビニールハウス内地上1mでの室内温度とを比較したグラフである。この実験結果から判ることは、外気が最高5度程度であっても室内は35度にもなり、従来のビニールハウス内の最高24度よりも遙かに高温である。
また、[グラフ2]は、天候が雪の時の外気温度と、同様に、外気温度と、従来の1重フィルムのビニールハウス内地上1mでの室内温度と、本発明の本実施例のビニールハウス内地上1mでの室内温度とを比較したグラフであり、この実験結果から判ることは、外気が最高4度程度であっても室内は16度にもなり、従来のビニールハウス内の最高3度よりも遙かに高温である。
また、前記植物栽培ハウス1の北側の太陽光線が照射されない部分の外側には防寒素材の外側フィルム21(2)で覆い、その内側の内側フィルム3の内周面には、更に熱反射の鏡部(反射板)として、内側フィルム3の内壁に反射フィルム4を貼り付けてある。
この反射フィルム4としては本実施例では0.03mmの(日立エーアイシー(株):ポリシャインNF(商標))のものを使用した。この反射フィルム4、及び後述する低位置反射フィルム41の上端部には、別途保護フィルム用横ポール18を補強のため設けてある。
【0016】
また、両側の側壁面Sの地上Gから30cmから100cmの高さの内側全周31の低位置にも低位置反射フィルム41を巡らし反射鏡を形成している。これは、植物栽培ハウス1の外側に冬場積雪した雪が日陰を作って植物の生育を妨げるからで、この内側全周31の低位置にもアルミ箔で覆うことによって、隅まで光が照射されて、驚くほど、この部分での植物の生育が順調となる。
なお、30cmから100cmの高さにしたのは、30cm以下であると基礎枠体131の影等が影響し、100cmにするのは、植物栽培ハウス1の周りの積雪が通常この範囲であるからであり、必要に応じて150cm程度にしてもよい。勿論、積雪でなくても、雑草や建造物が有る場所では、それに応じて低位置反射フィルム41の高さを決めればよい。
また、この低位置反射フィルム41は植物の生育には非常に効果があることが判ったが、ハウス1内側の各畝に沿って畝、地上の高位置に設けた高設畝等の両側の所定高の周囲に低位置反射フィルム41を設けると各畝の植物の生育が驚く程よい。
【0017】
このハウスの隅部や角部での植物の生育に関係する太陽光量が増えたことを、図10の各箇所でのルックスを測定した各気象条件での[表3][表4][表5]で説明する。
[表3]は、天候が晴れ、外気温−3度の時に、従来ハウスと本発明の実施例ハウスでの中央部との角部や畝の下部等の隅部での太陽光線量であるルックスを測定したものである。この図10の[表3]から判ることは、午前9時時点で従来ハウスでは中央部が58900ルックスで隅部が13200ルックスであるが、本実施例ハウスでは中央部が52100ルックスで余り変わりないが、隅部では31500ルックスもある。同様に、午前11時では従来ハウスの隅部では15400ルックスであるが、本実施例ハウスの隅部では43200ルックスもある。同様に、午後13時では、従来ハウスの隅部では14100ルックスであるが、本実施例ハウスの隅部では49600ルックスと35500ルックスも多いことが判る。
また、図10の[表4]での雪時々曇り外気温が−7度でのハウス内の太陽光線量の表であり、これから判ることは、午前9時時点で従来ハウスでは中央部が6100ルックスで隅部が4000ルックスであるが、本実施例のハウス内では中央部7900ルックスで従来例よりも多く、隅部でも6700ルックスで、従来ハウスの隅部の4000ルックスよりも2700と倍近くも多い。同様に、午前11時では従来ハウスの隅部では11500ルックスであるが、本実施例ハウスの隅部では38200ルックスもあり、同様に、午後13時では従来ハウスの隅部の5300ルックス対して本実施例ハウスの隅部では7600ルックスもあることが判る。
更に、図10の[表5]での晴れ後曇り外気温が−7度でのハウス内の太陽光線量の表であり、これから判ることは、午前9時の時点で従来ハウスでは中央部が56800ルックスで隅部が12400ルックスであるが、本実施例ハウスでは中央部53800ルックスと余り変わらず、隅部では33200ルックスで従来ハウスの隅部よりも20800ルックスの差があり、2.7倍近くも多い。同様に、午前11時では従来ハウスの隅部では10700ルックスであるが本実施例の隅部では24500ルックスもあり、同様に、午後13時では従来ハウスの隅部の5300ルックス対して隅部では9900ルックスもあることが判る。
更に、南北に面した両側の側壁面Sの枠形成フィルム2,3と地表Gとの中間部分には、開閉可能な保護フィルム5を配備する。この保護フィルム5は巻き上げ可能な構成で、手動、或いは巻き上げ機で、昼間は保護フィルム5を巻き上げて、必要に応じて空気を入れ換えたりできるようにしてある。
【0018】
ところで、植物栽培ハウス1の内側での温度は、図11の[グラフ3]、図12の[グラフ4]、図13の[グラフ5]に示すようなものである。
[グラフ3]は、北海道赤平での2010年12月の晴れの日の7時から19時までの外気と、植物栽培ハウス1内での地表からの高さ1.5mと、植物栽培ハウス1内での天井頂点近傍の地表からの高さ3.0mでの温度変化である。
[グラフ4]は、同様に、北海道赤平での2010年12月の雪(曇り)の日の7時から19時までの外気と、植物栽培ハウス1内での地表からの高さ1.5mと、植物栽培ハウス1内での天井頂点近傍の地表からの高さ3.0mでの温度変化である。
[グラフ5]は、同様に、北海道赤平での2010年12月の晴れ一時雪の日の7時から19時までの外気と、植物栽培ハウス1内での地表からの高さ1.5mと、植物栽培ハウス1内での天井頂点近傍の地表からの高さ3.0mでの温度変化である。
これら[グラフ3]〜[グラフ5]からは、植物栽培ハウス1の三角屋根11の内側の温室内の地表3mの天井の上部空間X1に高温部分に集約されて溜まっていることが判るが、この高温部分の空気を温室内の培土B地中に供給することが、本発明の特徴の1つである。
【0019】
この構成を主に図3に沿って説明すると、植物栽培ハウス1の断面三角の屋根の天井上部には長手方向に空気吸入ダクト6を設け、この空気吸入ダクト6には多数の吸入口61が上部空間X1の位置に設けられ、この吸込口61から天井部分に溜まった高温空気を取り込むようにしており、この取り込んだ高温空気はこの空気吸入ダクト6は連結ダクト部分62を介して吸い込まれるが、この連結ダクト部分62は地表Gに設けられた送風ファン63に連結され、送風ファン63からの高温空気は送風管64によって貯水タンク7の貯留水の底部71に供給され、送風管64の開口65から貯水タンク7の底部71から高温空気が水内に解放され、泡となって貯水タンク7の周囲の水を効率よく温める。
この貯水タンク7での貯水の温度上昇効果を図14の[グラフ6]で説明する。
図14の[グラフ6]は、天候が晴れの場合で、本実施例での50坪のハウス内の高温空気で貯水タンク7の300リットルの水を温めた場合と、単に貯水するただけで温めない場合を比較したものである。この[グラフ6]から判ることは、午前9頃では水温は15度程度であるが、本実施例のハウス内の高温空気で貯水タンク7は徐々に上昇し午後15時には20.5度まで上昇するが、単に貯水するただけでは、ほとんど上昇せず15.3度で、非常に効果があることが判る。
このように、貯水タンク7で暖められた水は、水温の高い水面84の近傍の温水を水面近傍に配置された配管81の吸水口82から、吸水しポンプ83によって吸水し、温室内の植物Pが生育する培土B地中に配管された暖房配管9に供給される。
【0020】
供給された暖房配管9の暖房空気は温室内の植物Pを栽培する培土Bを地中から暖め、暖め終わった暖房配管9の空気は、外部暖房配管91によって培土B外に露出して、さらに、貯水タンク7の貯留水の底部71近傍に開口する還流開口92から貯水タンク7に還流している。この結果、温室内の培土Bの温度が上昇し、培土そのものを優先的に暖めているので夜間でも急激に培土の温度が低下することがない。
また、図2、図3に示すように、植物栽培ハウス1内での屋根頂部111の最頂部に天井空気通路113を設け、必要に応じて空気を流通させるダンパ114を適所に設け、南西の垂直壁面115にもダンパ116を設け、これらのダンパ114、116は手動、或いはリモコンで開閉を制御して換気の量を制御する。
なお、寒冷が異常に続く場合の非常用として、予備ボイラ66が連結ダクト部分62の適所に設けてあり、十分に暖房できない場合に強制的にハウス1内の空気を加温して送風ファン63に供給するようにしている。
もっとも、ハウス内は太陽光線だけで日中の温度は15℃以上が維持され、夜間でもハウス内の温度は6℃以下にはならず、本実施例の植物栽培ハウス1を使用して、通年で予備ボイラを一度も使用しないで、秋期には完熟のトマトが収穫でき、冬季には完熟イチゴが収穫できた。
【0021】
[実施例2]
次に、実施例2を説明するが、実施例1との違いは、空気吸入ダクト6で集めた高温空気を水で温めるのに使用するのではなく、図15に示すように、直接、高温空気を暖房配管9に供給して培土Bを暖めるようにし、培土Bを暖めた空気は解放配管93の開口931から植物栽培ハウス1内に還流させている。他の構成は実施例1と同じなので説明は省略する。
作用は、実施例1では、高温空気の熱量を水に熱交換して使用しているので、急激には冷却しないが、貯水タンク7等の設備が必要となる。しかし、実施例2では熱蓄積が実施例1に比べて劣るが、余り熱を蓄積する必要がなければ実施例2は低コストで設置できる。
【0022】
以上のように、本発明の実施例1、2の寒冷地用の植物栽培ハウスによれば、屋根を急勾配にしてあるので、冬季の雪が自然落下するとともにハウス内天井付近の高温空気を狭い箇所に集めることができ、断面三角形の天井上部に集められた高温空気を、空気吸入ダクトによって植物栽培ハウスの下部の培土に埋めた暖房配管に供給し、培土を暖めて夜間でもある程度保温することで冬季でも植物が生育可能となり、多量の化石燃料をほとんど使わず、通年に亘って農作物等の植物栽培が可能となる。
また、太陽光線は冬期間といえどもハウス内に届いているので、その太陽熱をハウスの側壁を2重フィルムとし、殆ど日の当たらない屋根部分には内壁に反射フィルムを設けたので、外部の気象条件にあまり左右されずに、効率良くハウス内を暖房することができる。
更に、従来型ハウスの夜間等の暖房は化石燃料が主であり栽培コストが高かったが、太陽熱の有効利用で従来装置よりも基礎室温が高くなり、栽培コストが低くなる。また、従来栽培不適地であった積雪寒冷地でも栽培が可能になるため地域生産性が高められ、地場生産物を消費者に供給が出来る。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
G・・地表、S・・側壁面、B・・培土、P・・植物、X1・・上部空間、
1・・植物栽培ハウス、11・・三角屋根、
111・・屋根頂部、112・・北側屋根部分、113・・天井空気通路、
114,・116・ダンパ、115・・垂直壁面、
12・・側壁、
13・・基礎部、131・・基礎枠体、
132・・ポール支持部材、133・・結合金具、134・・ボルト、
135・・アンカーボルト用の固定部材、136・・アンカーボルト、
137・・フィルム止め用ワイヤー、138・・留め具、
14・・外枠縦ポール、15・・外枠横ポール、16・・外枠斜行縦ポール、
17・・反射フィルム押さえ用横ポール、18・・保護フィルム用横ポール、
2・・外側フィルム(枠形成フィルム)、
21・・防寒素材の外側フィルム(枠形成フィルム)、
3・・内側フィルム(枠形成フィルム)、
4・・反射フィルム(反射鏡)、41・・低位置反射フィルム、
5・・保護フィルム、
6・・空気吸入ダクト、61・・吸入口、62・・連結ダクト部分、
63・・送風ファン、64・・送風管、65・・開口、66・・予備ボイラ、
7・・貯水タンク、71・・底部、
81・・配管、82・・吸水口、83ポンプ、84・・水面、
9・・暖房配管、91・・外部暖房配管、92・・還流開口,
93・・解放配管,931・・開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根斜面の傾斜を急勾配にし、全体が長手方向に断面三角の屋根を有し側壁を垂直にした寒冷地用の植物栽培ハウスであって、
該植物栽培ハウスの長手方向の屋根部分と側壁部分と二重の透明及び/又は半透明の枠形成フィルムで覆い、
日中に大部分が日陰となる屋根部分には内部に太陽光を反射する反射フィルムを設け、
前記断面三角の屋根の天井上部には長手方向に高温空気を吸い込む空気吸入ダクトを設け、この空気吸入ダクトに取り込まれた高温空気を送風して、前記植物栽培ハウス内の培土の地中に配管した暖房配管に該高温空気、或いは該高温空気によって暖房した水を供給してハウス内の培土を暖房することを特徴とする寒冷地用の植物栽培ハウス。
【請求項2】
前記屋根斜面の傾斜の勾配を、57.5度から47.5度の範囲で急勾配としたことを特徴とする請求項1に記載の寒冷地用の植物栽培ハウス。
【請求項3】
前記反射フィルムの外周部分は防寒素材のフィルムで覆うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の寒冷地用の植物栽培ハウス。
【請求項4】
前記側壁面の地上から所定の高さの内側全周には低位置反射フィルムを設けることを特徴とする請求項1乃至請求項3の記載から選択される寒冷地用の植物栽培ハウス。
【請求項5】
前記側壁面の地上から所定の高さの畝および高設畝の周囲には低位置反射フィルムを設けることを特徴とする請求項1乃至請求項3の記載の寒冷地用の植物栽培ハウス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−179031(P2012−179031A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45768(P2011−45768)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(500097692)株式会社コスモバイオス (7)
【Fターム(参考)】