説明

寛骨臼カップを設置する器具

【課題】既知の寛骨臼カップ人工器官の設置器具の問題点を克服する。
【解決手段】本発明は、カップ(1)及び一時的挿入物(2)に係る。当該カップ及び一時的挿入物は夫々、それらの周辺(7a)に沿って互いへと適合されてきつく押されるよう構成される。一時的挿入物(2)は、一時的挿入物(2)の外側表面とカップ(1)の内側表面との間における自由空間と外側で連絡するスルーホール(10)を有する。スルーホール(10)において、インパクタのねじ山を付けられた端部が係合され得、設置される際にカップ(1)を操作する。シリンジは、係合され得、加圧下の液体が自由空間(9)へと注入され得るようにし、それによって、カップ(1)の内側表面を損傷する危険性なく、カップ(1)から一時的挿入物(2)を分離する。故に、カップは、カップ(1)の内側表面を損傷する危険性なく設置される際に安全に操作され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節の自然寛骨臼カップを置換するよう意図される人工寛骨臼カップを設置する器具に係る。
【背景技術】
【0002】
全股関節人工器官は、球体関節(ball−joint)を構成する2つの部分、即ち、股関節の自然寛骨臼カップを置換するよう意図されるメス部と、大腿骨頭を置換するよう意図されるオス部とを有する。
【0003】
該関節(joint)のオス部は一般的に、大腿骨の髄管へと進入するよう意図されるロッドを有し、その近位端部は、寛骨臼カップへと進入するよう意図される球形の頭部に対してネック部によって接続される。
【0004】
関節のメス部は、股関節の自然寛骨臼カップを置換しなければならず、一般的に寛骨臼カップと称される。該メス部は通常、凸状近位面と凹状遠位面とを有する半球形金属カップを有する。凸状近位面は、骨盤骨において準備された寛骨臼窩(acetabular cavity)に収容される。凹状遠位面は、ポリエチレン又はセラミック等の低い摩擦係数を有するプラスチック材料から作られる挿入物の半球形凸状近位面を受ける。該挿入物自体は、関節のオス部の球形頭部を受ける同軸半球形の遠位空洞(cavity)を有する。
【0005】
単一可動性人工器官は、既に与えられている。該人工器官において、ポリエチレン又はセラミックの挿入物は、金属カップの凹状遠位面において固定される。関節の回転動作は、人工器官のオス部の球形頭部と、挿入物の半球形遠位空洞との間において発生する。
【0006】
二重(dual)可動性人工器官はまた、既に提案されている。該人工器官において、ポリエチレン又はセラミックの挿入物自体は、金属カップの凹状遠位面において回転に対する何らかのキャパシティを有する。そのため、関節の回転動作は、一方では挿入物の凸状近位面と金属カップの凹状遠位面との間で発生し、他方では、挿入物の半球形の遠位空洞とオス関節部の球形頭部との間で発生する。
【0007】
あらゆる場合において、1つの問題は、骨における寛骨臼窩において金属カップを位置付け且つ固定することである。寛骨臼窩へのカップの適合及び固定の品質は実際に、人工器官の寿命、即ち、骨と金属カップとの間の接続の耐久性にとって必須である。
【0008】
したがって、寛骨臼窩においてカップを設置する際、インパクタを使用することが可能でなければならない。該インパクタは、骨における寛骨臼窩へとカップを動かすよう力を適用し、カップの向きを調整するよう回転トルクを適用し、また特には、セメントがカップの凸状近位面と骨における寛骨臼窩との間で固まるよう十分に長くカップを固定位置において保持するよう、使用される。続いて、寛骨臼窩へのカップの固定の品質を低下させることないよう、カップに対して力を加えることなくインパクタを引き出すことが可能でなければならない。
【0009】
しかしながら、特には、カップの凹状遠位面が完全に平坦でなければならない摺動表面を構成し、またこの目的に対して一般的に鏡面磨きを受ける、二重可動性人工器官の場合において、挿入物がカップにおいて自由にピボットできるよう、カップを寛骨臼窩へと設置する器具によるカップの凹状遠位面の劣化の全ての危険性を防止することは、必須である。例えば、半径方向に膨張及び収縮することができる器具、及び設置中にカップを保持するためのカップの凹状遠位面の複数の不連続の範囲上のベアリング(bearing)は、カップの凹状遠位面の永久的及び局所的な変形、又は不十分な保持力を必然的にもたらすため、この保持方法は、好ましくない。
【0010】
EP 0 504 521 A1(特許文献1)は、カップの凹状遠位面へとクリップ留めする凸状近位面を有するインパクタを与える、ことを記載する。カップを寛骨臼窩へと固定した後、インパクタは、カップの凸状遠位摺動面の中心上で軸方向に位置して(bears)執刀医によって操作されるトリガを用いて動かされる摺動軸方向バーを用いて、カップから分離される。摺動バーのベアリング係合(bearing engagement)は、カップの摺動面を局所的に劣化させるが、これは好ましくない。
【0011】
FR 2 809 305 A1(特許文献2)は、頭部とカップの凹状遠位面との間に残される自由空間において真空を作り出すことによって、インパクタの端部における頭部上へとカップを保持する、ことを記載する。この目的に対して、インパクタのボディは、手動で作動されるピストンポンプを備えられる。該ピストンポンプは、頭部を通過するホールを介して自由空間から空気を吸引するよう使用される。Oリングは、自由空間へ空気が入ることを妨げる。衝撃力は、自由空間の周囲でカップの凹状遠位面部分に対して頭部によって加えられる。装置は、多くの部品の組立てを必要とし、複数のガス密封手段を有する複雑なものであり、該文献は、不均等なベアリング応力の結果であるカップの凹状遠位面の変形に関する問題について、言及及び解決していない。
【0012】
凹状遠位面状でのベアリング無しでカップを保持する多種の他の手段は、想定されている。第1のかかる手段は、カップをその円形リップ部及び外部表面の近接する部分によって保持する、ことを有する。しかしながら、これは、カップの周囲の保持範囲における骨を局所的に劣化させ、骨におけるカップのその後の保持を弱める。
【0013】
US 4,632,111 A(特許文献3)は、アンダーカットカップを固定するために使用されるよう適合される手段を記載する。インパクタは、ハンドル部の端部において取り付けられ、カップの凹状遠位面において係合する、半球形頭部を有する。環状フランジは、ハンドル部上を摺動するよう取り付けられ、また、ハンドル上へとねじ込まれる軸受け筒(bush)によって頭部に向かって押される。エラストマリングは、頭部とフランジとの間で軸方向に圧縮され、半径方向に膨張し、故にインパクタを固定するようカップの凹状遠位面の環状アンダーカット部に対して位置するようになる。軸受け筒は、フランジを引き出し、エラストマリングを待避させ、続いてインパクタを引き出すよう、ねじをはずされる。この装置は、比較的多数の部品の組立てを有して複雑であり、アンダーカットではないカップの固定に対しては適していない。更には、ねじ込み操作は、寛骨臼窩への固定の品質を劣化させる危険性を有する、カップ上の望ましくないトルクをもたらす。
【0014】
DE 196 28 193 A(特許文献4)は、周辺Oリングを有するインパクタ頭部、及びカップの下部を進入するホールにおいて係合するセンタリングほぞを記載する。この進入されたカップ構造は、二重可動性人工器官に対して適用可能ではない。
【0015】
故に、現時点で既知であるカップ設置器具は、カップ又は近接する骨を劣化させることなく骨において、カップの十分な保持にその自由方向性及び十分なベアリング係合を与えない。
【0016】
カップを寛骨臼窩において設置した後、執刀医は一般的に、試行挿入物(a trial insert)をカップへと適合させる必要がある。この挿入物は、人工器官の恒久的挿入物と実質的に同一の形状を有し、1回又は複数回、関節のオス部を受けるよう意図される。これによって執刀医は、関節のオス部の複数の寸法を試し、可動性のテストを実行することができる。目的は、執刀医が関節のオス部の最も適切な寸法を患者の形態(morphology)に応じて選択することができるようにすること、である。執刀医は続いて、関節の選択されたオス部の頭部が収容される恒久的挿入物を適合させるよう、試行挿入物を除去する。
【0017】
したがって、かかる操作に対して、上述された特許文献中に記載される装置を使用すると、執刀医は、使用可能である組み立てられるべき比較的多数の部品を有さなければならず、各部品は無菌にされている必要がある。各部品とは、寛骨臼カップ人工器官、試行挿入物、恒久的挿入物、複数の人工器官オス部、及びカップを設置中に保持する複雑な器具、である。特に、上述された文献は全て、試行挿入物が大腿頭部を受けることができる、インパクタ頭部の試行挿入物機能を記載しないか、あるいは与えない。
【0018】
患者が多種の寸法を有することを前提とすると、執刀医は、比較的多数の部品のストックを必然的に有さなければならず、このようにして関連される全体量が増大する。
【特許文献1】EP 0 504 521 A1
【特許文献2】FR 2 809 305 A1
【特許文献3】US 4,632,111 A
【特許文献4】DE 196 28 193 A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、既知の寛骨臼カップ人工器官の設置器具の問題点を回避することを目的とする。該問題は、カップを操作するインパクタ上でカップの機械的に強い保持力を合わせる新しい器具構造を提案すること、及びそれを寛骨臼窩において設置すること、によって避けられ、該器具によるカップの凹状遠位面の変形又は劣化は全く無い。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従った手段を有して、カップの凹状遠位摺動表面を劣化させることなく、並びに、カップの外部表面上の不要なもの又はカップの周囲で骨の周辺範囲の劣化がないよう、寛骨臼窩へとカップを詰め込む(impact)こと、それを適切且つ十分に方向付けること、及び、それを寛骨臼窩へと正確に適合させること、を可能にしなければならない。
【0021】
本発明に従った手段は、単一可動性人工器官及び二重可動性人工器官の区別無く、適用可能でなければならない。
【0022】
本発明の他の目的は、執刀医が人工器官を設置する際に組み立てなければならない無菌部品の数を低減させる、ことである。故に、器具のストックは低減され得、且つ執刀医の作業が促進され得る一方、手術に関連付けられるリスクは低減される。
【0023】
本発明の他の目的によれば、高品質のカップの骨への固定を保証するために、カップが固定されるところの骨に対する平行移動又は回転においてカップを動かす傾向がある機械的応力をカップに与えることなく、カップから器具を分離することが可能でなければならない。
【0024】
上述及び他の目的を達成するために、本発明は、一式の寛骨臼カップ人工器官設置手段を提案する。当該手段は、凸状近位面によって境界を定められるカップ、摺動表面を有する凹状遠位面、及び周辺リップを有し、更には、インパクタに対してカップを固定するアダプタを有する。該アダプタは:
・ アダプタをインパクタに対して取外し可能に固定する固定手段、
・ アダプタがカップに対して固定され次第、アダプタとカップとの間に自由空間を残す、カップ上の固定手段、
・ アダプタとカップとの間の自由空間が外側と連絡するところのアクセスホール、
を有し、
・ カップは、その凹状遠位面上に、摺動表面を周辺リップに向かって延在させる円筒形又は僅かに円錐形の環状保持表面を有し、
・ アダプタは、カップの環状保持表面と同一の形状である、円筒形又は僅かに円錐形の環状係合表面を有し、
・ その結果、アダプタは、カップの環状保持表面において半径方向にグリップされる環状係合表面を有して、流体密封に強制的に保持され得る。
【0025】
アダプタは、その周辺でカップにおいて流体気密に強制的に保持されるよう適合されるため、摺動表面から離れて、カップの凹状遠位面の環状保持表面上にのみ位置し(bears)、カップの摺動表面上での不整の生成を避ける。
【0026】
更には、自由空間がアダプタとカップとの間に残されるため、アダプタは、その環状係合表面によって流体気密にカップにおいて強制的に保持される。また、アダプタがアクセスホールを有するため、アダプタは続いて、有利には加圧下の液体である加圧下の流体を該アクセスホールを介して、アダプタとカップとの間のアダプタの自由空間へと注入することによって、カップからその後引き出され得る。加圧下の流体は、カップからアダプタを取り出す対称性の軸方向の合成力を生み出し、流体圧力であるために定期的に分配される機械的応力を、カップの摺動面に対して適用する。これはまた、カップの摺動表面の局所的変形を避け、カップに対する静止摩擦応力、振動応力、又は回転応力の適用を防ぐ。
【0027】
カップにおけるアダプタの強制的不動化は、アダプタの強い締結、及びインパクタ上へのカップの強い締結を確実にするよう十分であり得る。
【0028】
更には、いずれの場合でも、カップへのアダプタの進入が制限されるよう、カップの周辺リップ上で軸方向に支えるよう意図されるアダプタ上の突き合わせ手段(abutment means)を与えること、が望まれ得る。インパクタは続いて、アダプタに対してより高い詰込み力(impacting force)を与え得る。該力は、一方ではカップにおいて係合されるアダプタの環状表面によって、他方では、カップの周辺リップ上に位置する(bearing)突き合わせ手段によって、カップに対して伝えられる。
【0029】
アダプタに対するカップの強化された締結は、有利には、少なくとも1つの環状溝を有するカップの環状保持表面、並びに、環状溝において係合されるよう適合される少なくとも1つの対応する環状リブを有するアダプタの環状係合表面によって、得られ得る。溝及びリブの深さは、締結を強化するがその後のカップからのアダプタの分離は脅かさないよう、比較的小さくされ得る。
【0030】
カップは、望ましくは、実質的に半球形である摺動表面を有する。該表面は、有利には鏡面磨きをされ、短い円筒形又は僅かに円錐形である環状保持表面によって延在される。続いてアダプタは、カップの摺動表面ではない環状保持表面上に位置することができ、半球形摺動表面に対して与えられる機械的応力を低減する。
【0031】
アダプタは、いずれの手段によってもインパクタに対して締結され得る。しかしながら、アダプタをインパクタに対して固定する手段は、アダプタにおいてねじ固定ホールを有してインパクタの対応するねじ部においてねじ込むようにする、ことが望まれ得る。固定ホールは、アクセスホールではない場合はブラインドホールでなければならない。
【0032】
本発明に従ったアダプタは、インパクタとカップとの間において接続手段として使用される。
【0033】
しかしながら、アダプタは、大腿部人工器官の頭部の係合を可能にするよう寸法決定される半球形空洞を遠位面上に有するアダプタを与えることによって、第2の機能、即ち一時的試行挿入機能を有し得る。半球形空洞は、特に二重可動性人工器官の場合において、アダプタの凸状近位面と同心であり得る。特定の試行挿入物をアダプタから分離する必要がもはや無いため、これは、人工器官を設置するよう執刀医によって組み立てられるべき部品の数を明らかに低減する。
【0034】
カップとアダプタとの間の自由空間に対するアクセスホールは、シリンジの端部の流体気密の係合に対して有利に適合及び寸法決定される。このようにして、加圧下の流体は、執刀医には一般的に使用され得る器具である単純なシリンジを用いて、更なる器具を必要とすることなく注入される。
【0035】
アダプタのアクセスホールは、望ましくは、ねじ山を付けられ得、インパクタの対応するねじ部がアダプタへとねじ込まれるようにし得ることによって、アダプタ固定ホール機能を同時に実行する。
【0036】
アダプタのアクセスホールは続いて、大腿部人工器官の頭部の係合を可能にするよう寸法決定された半球形空洞の下部において有利に位置決めされ得る。
【0037】
既知の人工器官においてと同様に、試行挿入物型のアダプタは、ポリエチレンを有して作られ得る。他方では、恒久的挿入物は、ポリエチレン又はセラミックを有して作られ得る。
【0038】
更には、アダプタにおけるねじ固定ホールへとねじ込むようねじ部を有するインパクタは、与えられる。
【0039】
望ましくはインパクタは、ねじ部の底部において、半球形部分を更に有する。該半球形部分は、アダプタの対応する半球形空洞において収容されるよう、適合及び寸法決定される。これによって、インパクタとアダプタとの間において機械的応力のより一定の分配が与えられる。該応力は、比較的高く、カップを寛骨臼窩へと詰め込む際に発生する。
【0040】
本発明によれば、カップの環状保持表面において流体気密であるよう前に強制的に不動化された環状係合表面を有する一時的試行挿入型アダプタは、執刀医に対して有利に供給され得る。この組立体は、有利には、密封された保護エンベロープにおいて無菌にパッケージされる。
【0041】
製造工場において実行され得るアダプタ及びカップの組立て時において、有利に使用され得るのは、以下の一連の段階、
a) アダプタをその寸法を低減するよう冷却する段階、
b) カップにおいてアダプタを位置付ける段階、
c) アダプタの環状係合表面がカップの環状保持表面において流体気密であるよう強制的に不動にされるよう、アダプタがカップにおいて配置され次第膨張するよう室温に戻ることを可能にする段階、
である。
【0042】
好ましくは、アダプタ及びカップが共に締結され次第、ガンマ線を用いてアダプタ及びカップを殺菌する段階が、更に与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
カップを設置した後、加圧下の流体、有利には、加圧下の液体がアクセスホールを通じてアダプタとカップとの間の自由空間内に注入されるステップによって、アダプタをカップから分離し得る。
【0044】
本発明の他の目的、特徴、及び有利点は、添付の図面を参照して、特定の実施例に関する以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】固着及び一時的試行挿入物型アダプタが強制的に係合される寛骨臼カップ人工器官を有する本発明の一実施例に従った組立体の斜視図である。
【図2】密封保護エンベロープへと挿入される、図1中の組立体の側面図である。
【図3】図1中の組立体の前面図である。
【図4】図3中の線A−Aに沿ってとられた直径断面における側面図である。
【図5】図4中の挿入カップ組立体の一時的挿入において係合されるインパクタを示す断面における側面図である。
【図6】本発明に従った挿入カップ組立体における一時的挿入物のパッセージにおいて係合されるシリンジを示す断面における側面図である。
【0046】
図1乃至図4中に示される実施例では、寛骨臼カップ人工器官設置器具は、固着(impaction)及び一時的試行挿入物として適合されるカップ1及びアダプタ2を有する。
【0047】
カップ1は、骨盤骨における寛骨臼窩へと固定されるよう意図される恒久的なカップを構成する。
【0048】
他方では、アダプタ2は、カップ1とインパクタとの間の中間部分の機能を少なくとも有する。インパクタは、カップ1を寛骨臼窩において設置する際にカップ1を操作するよう使用される。アダプタ2は、続いて恒久的挿入物と置換されるよう意図される。
【0049】
カップ1は、比較的薄い壁を有する半球形であり、図4においてより明らかに見られる通り一般的に半球形を有する凸状近位面3、任意で固定フィン4、及び凹状遠位面5を有する。該遠位面5は、周辺リップ6まで延在する円筒形又は僅かに円錐形の環状保持表面5bによって延在される半球形摺動表面5aを有する。
【0050】
カップ1の半球形表面5aは、完全に平坦且つ一定であり、摺動表面を構成するよう、望ましくは鏡面磨きをされる。該表面において、カップ1が寛骨臼窩において適合された後にカップ1へと続いてもたらされる半球形の恒久的挿入物は、完全にピボットし得る。
【0051】
アダプタ2は、凸状近位面7及び半球形空洞8を有する遠位面11によって境界を定められる、全般的に円形を有する。
【0052】
アダプタ2の凸状近位面7は、円筒形又は僅かに円錐形の環状係合表面7a、及びカップ1の半球形摺動表面5aを有する半球形から奥まって設置される中央ドーム7bを有する。この結果、図4中に示される強制的に適合された位置において、一時的挿入物2とカップ1との間に自由空間9が残る。
【0053】
環状係合表面7aは、環状保持表面5bの形状に対応する形状、及び、カップ1の環状保持表面5bにおいて強制的に保持される直径を有する。そのため、アダプタ2及びカップ1は、互いに対する相対運動なく、高い機械的応力に耐え得るサブ組立体を構成することができる。該高い機械的応力は、カップが寛骨臼窩において設置される際に、カップに対して与えられなければならない力より大きい。
【0054】
図5及び図6中、環状係合表面7a及び環状保持表面5bは、平坦である。
【0055】
あるいは、図4の実施例において、カップ1の環状保持表面5bは、少なくとも1つの環状溝5cを有し、アダプタ2の環状係合表面7aは、環状溝5cにおいて係合されるよう適合された少なくとも1つの対応する環状リブ7cを有する。
【0056】
アダプタ2の半球形空洞8は、大腿関節のオス部の球体関節頭部を受けるよう寸法決定される。それ故にアダプタ2は、一時的試行挿入物を構成し得る。
【0057】
アクセスホール10は、アダプタ2の下部にあり、該ホールを介してアダプタ2とカップ1との間の自由空間9は外側と連絡する。
【0058】
アダプタ2の遠位面11は、円形の周辺リブ12によって側面に位置される。該リブは、図4中に示される強制的に適合される位置においてカップ1の周辺リップ6上に位置する突き合わせ手段を構成する。この結果、周辺リブ12は、カップ1へのアダプタ2の更なる進入を妨げる。図中示される実施例では、アクセスホール10はまた、インパクタを取外し可能に固定する手段を構成する。この目的に対して、アクセスホールは雌ねじ10aを有する。
【0059】
これより図5を参照する。該図は、カップ1,一時的試行挿入型のアダプタ2、アダプタ2の半球形空洞8、及びねじアクセスホール10を再度示す。
【0060】
この図はまた、ハンドル13a、ステム13b、及びアクセスホール10へとねじ込まれるねじ端部13cを有するインパクタ13を示す。インパクタ13は望ましくは、ねじ部13cの端部において、半球形部分13dを有する。該半球形部分は、アダプタ2の対応する半球形空洞8において収容されるよう適合及び寸法決定される。故に、インパクタ13は、寛骨臼窩への挿入及び位置付け中に、カップ1を操作するよう使用される。
【0061】
図6は、カップ1からアダプタ2を分離する段階を示す。この実施例において、シリンジ14は、生理血清等である適切な液体を有して、並びにアダプタ2のアクセスホール10において流体気密に係合される端部14aを有して与えられる。シリンジ14は続いて、加圧下の液体を自由空間9へと注入するよう使用され、カップ1からアダプタ2を分離させる。
【0062】
あるいは、補助的なシリンジの使用を避けるよう、インパクタ13は、管状ハンドルを有し得る。故に図5は、軸方向のパッセージ13eを有するインパクタ13を示す。分離段階中、液体は、軸方向パッセージ13eへ、続いて自由空間9へと液体をもたらすピストンロッド13fへともたらされ得る。
【0063】
図中示される実施例では、アダプタ2は、半球形空洞8を有し、一時的試行挿入物の機能を実行する。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、アダプタ2は、かかる半球形空洞を有さず、インパクタ13を用いて寛骨臼窩においてカップ1を位置付けるようアダプタとしての役割のみを果たす。
【0064】
同様に、図示される実施例では、アクセスホール10は、アダプタ2に対してインパクタ13を固定する手段として同時に働く。あるいは、ホールは、インパクタ13を固定するようアダプタ2の中心部分において与えられ得る。一方で、流体を注入するアクセスホール10は、動かされ得る。インパクタを固定するホールは、この場合、ブラインドホールでなければならない。
【0065】
本発明に従った器具の使用は、以下において説明される。
【0066】
工場では、アダプタ2は、以下の段階を有する手順によってカップ1へと組み立てられ得る。
a) アダプタ2は、その寸法を僅かに低減するよう十分に低い温度まで冷却される。該寸法は、最初はアダプタ2の環状係合表面7aの直径が同一温度においてカップ1の環状保持表面5bの直径より僅かに大きいようにされる。アダプタ2の温度を低下することは、それ自体は室温のままにとどまるカップ1の入口との係合を促進するよう、アダプタの外径を低減させる。
b) 続いてアダプタ2は、周辺リブ12が周辺リップ6で終端となるよう、カップ1において位置付けられる。
c) カップにおいて配置され次第、アダプタ2は、それを拡大するよう室温まで戻ることを可能にされる。そのため、アダプタ2は、環状係合表面7aによってカップ1において流体気密であるよう強制的に適合及び強制的に保持される。
【0067】
アダプタ−カップ組立体は続いて、密封された保護エンベロープ15(図2参照)においてガンマ線によって殺菌される。この瞬間から先、アダプタ−カップ組立体は、密封保護エンベロープ15において殺菌状態にてパッケージされる。
【0068】
使用の場所、即ち手術室において、執刀医は、密封保護エンベロープ15を取り除き、無菌のインパクタ13をアクセスホール10へとねじ込み得る。執刀医は続いて、インパクタ13及び強制的に適合されたアダプタ2を操作し得、カップ1に対して位置付け及び方向付けに必要である全ての機械的応力を与える。
【0069】
執刀医は続いて、インパクタ13のねじを外して取り除く。
【0070】
執刀医は続いて、一時的試行挿入物としての役割を果たす、一時的挿入物型の球体関節頭部を、アダプタ2の半球形空洞8へと適合し得る。
【0071】
人工器官のオス部が選択され次第、執刀医は、図6中に示されるシリンジ14を用いて、あるいは、図5中に示すピストンロッド13f及び軸方向パッセージ13eを有するインパクタ13へと、加圧下の液体又は他の流体をもたらすことによって、一時的挿入物2をカップ1から取り外し得る。
【0072】
執刀医は続いて、寛骨臼窩において適所にあるカップ1へと恒久的挿入物を適合させる。
【0073】
上述された全ての操作は、カップ1の半球形摺動表面8の変形の危険性を有さず、またカップ1上の所望されない力を有さず、実行される。
【0074】
本発明は、明記されてきた実施例に制限されず、また、添付の請求項の範囲内での変形及びその一般化を包含するものである。
【符号の説明】
【0075】
1 カップ
2 アダプタ
3 凹状近位面
4 固定フィン
5 凹状遠位面
5a 半球形摺動表面
5b 環状保持表面
5c 環状溝
6 周辺リップ
7 凸状近位面
7a 環状係合表面
7b 中央ドーム
7c 環状リブ
8 半球形空洞
9 自由空間
10 アクセスホール
10a 雌ねじ
11 遠位面
12 周辺リブ
13 インパクタ
13a ハンドル
13b ステム
13c ねじ端部
13d 半球形部分
13e パッセージ
13f ピストンロッド
14 シリンジ
14a 端部
15 保護エンベロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛骨臼カップ人工器官の設置手段のセットを組み立てる方法であって、
前記セットは、
ップと、
インパクタと、
前記カップを前記インパクタに締結するアダプタとを含み、
前記カップは、その外側表面である凸状近位面と、その内側表面である凹状遠位面と、周辺リップとによって境界を定められ、
前記カップは、前記アダプタを前記カップに取り外し可能に固定し、前記アダプタが前記カップに固定されるや否や、前記アダプタと前記カップの前記内側表面との間に自由空間を残す、第一固定手段を含み
前記アダプタは、前記アダプタを前記インパクタに取り外し可能に固定する第二固定手段を含み
前記アダプタは、アクセスホールを含み、前記自由空間は、流体を圧力下で前記アクセスホールを通じて前記自由空間内に注入し得るよう、前記アクセスホールを通じて外側と連絡し、
前記カップ上の前記第一固定手段は、前記凹状遠位面を前記周辺リップに向かって延在させる円筒形又は円錐形の環状保持表面を含み
前記アダプタ上の前記第二固定手段は、円筒形又は円錐形の環状係合表面を含み
前記環状保持表面及び前記環状係合表面は、同一の形状を有し
当該方法は、
a) 前記アダプタの寸法を低減するよう前記アダプタを冷却するステップと、
b) 前記アダプタを前記カップ内に位置付けるステップと、
c) 前記アダプタが前記カップ内に配置されるや否や、前記アダプタの前記環状係合表面が前記カップの前記環状保持表面内に流体密な方法で強制的に固定されるよう、前記アダプタが室温に戻り、膨張することを可能にするステップとを含む、
方法。
【請求項2】
前記アダプタ及び前記カップが一体に固定されるや否や、ガンマ線を用いて前記アダプタ及び前記カップを殺菌するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アダプタは、前記カップへの前記アダプタの進入を制限するよう、前記カップの前記周辺リップを軸方向に圧迫するよう構成される突き合わせ手段を含むことを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項4】
前記カップの前記凹状遠位面は、短い円筒形又は円錐形の環状保持表面によって拡張された、実質的に半球形であることを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項5】
前記カップの前記環状保持表面は、少なくとも1つの環状溝を含み、前記アダプタの前記環状係合表面は、前記環状溝内に係入されるよう構成される少なくとも1つの対応する環状リブを含むことを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項6】
前記アダプタを前記インパクタ固定するための前記第一固定手段は、前記インパクタの対応するねじ部にねじ込まれるための、前記アダプタにおけるねじ固定ホールを含むことを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項7】
前記カップの内側表面と前記アダプタとの間の前記自由空間への前記アクセスホールは、シリンジの端部の流体密封係合するよう適合及び寸法決定されることを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項8】
前記アダプタの前記アクセスホールは、前記インパクタの対応するねじ部が前記アダプタ内にねじ込まれることを可能にすることによって、アダプタ固定ホールの機能を充足するようねじ山付けられることを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項9】
前記インパクタは、軸方向パッセージを備える管状ハンドルを含み、液体と該液体を前記自由空間内に送り込むピストンロッドとを前記軸方向パッセージ内に導入し得ることを特徴とする請求項7記載の方法
【請求項10】
前記アダプタは、一時的な試行挿入物であり、前記アダプタの遠位面に、大腿部人工器官の頭部の係合を可能にするよう寸法決定される半球形の空洞を含むことを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項11】
前記アダプタの前記アクセスホールは、前記半球形の空洞の下部に配置されることを特徴とする請求項9記載の方法
【請求項12】
前記アダプタは、ポリエチレンから成ることを特徴とする請求項9記載の方法
【請求項13】
前記セットは、前記アダプタにおけるねじ固定ホール内にねじ込むためのねじ部を有するインパクタを更に含むことを特徴とする請求項1記載の方法
【請求項14】
前記インパクタは、前記ねじ部の底部に、前記アダプタの対応する半球形の空洞内に収容されるよう適合及び寸法決定される半球形部分を更に含むことを特徴とする請求項12記載の方法
【請求項15】
前記アダプタとカップとの組立体は、密封された保護エンベロープ内に無菌状態でパッケージされることを特徴とする請求項14記載の方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−120870(P2012−120870A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35576(P2012−35576)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【分割の表示】特願2007−536222(P2007−536222)の分割
【原出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(507116754)
【Fターム(参考)】