説明

寝具またはインテリア用繊維製品

【課題】強度、耐摩耗性、ソフト性等の物理的特性および耐候性、耐薬品性等の化学的特性に優れるばかりか、実用に供されている間の難燃性能劣化が非常に小さい寝具またはインテリア用繊維製品を提供する。
【解決手段】トリアジン系化合物を1〜10重量%含有するポリアミド繊維を構成素材の少なくとも一部に使用した織編物であって、前記トリアジン系化合物の最大粒径が10μm以下、平均粒径が0.1〜5μmであり、前記ポリアミド繊維が単糸繊度1.0〜20dtex、強度4.5〜9.0cN/dtexのマルチフィラメントであることを特徴とする寝具またはインテリア用繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団、タオルケット、シーツ、カーテンおよびカーペット等の寝具またはインテリア用繊維製品に関するものであり、さらに詳しくは、強度、耐摩耗性、ソフト性等の物理的特性および耐候性、耐薬品性等の化学的特性に優れるばかりか、実用に供されている間の難燃性能劣化が非常に小さい寝具またはインテリア用繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維製品、例えば、シーツ、ベットカバー、カーテンやカーペットなどの生地やシート状の繊維材料は、綿、セルロース繊維、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等の天然繊維や合成繊維から構成され、火災の際に容易に引火し燃焼する。
【0003】
また、これらの寝具またはインテリア用繊維製品には、特に難燃性、耐摩耗性、ソフト性、耐候性等の特性が要求されている。
【0004】
従来、生地に難燃性を付与する方法としては、合成繊維より構成される織編物に、デカブロモジフェニルエーテルと他の難燃剤、例えば、三酸化アンチモンおよびアルミナ三水和物を含む水性分散液で処理することが知られている。しかしながら、このように難燃性を後加工により付与する従来の方法では、燃焼時に発生する有害なハロゲンガスが人体や環境に対して多大な負荷をもたらすといった問題を有していた。
【0005】
上記問題点の解決を目的とした従来技術としては、例えば、難燃剤としてメラミンポリホスフェートを含む難燃性被覆剤(例えば、特許文献1参照)が提案されており、ハロゲンを含まないという点で従来のものより優れた、繊維材料用の難燃被覆剤を提供するとされている。しかしながら、難燃性被覆剤を使用すると、洗濯により被覆剤が洗い流され経時的に難燃性能が劣化するという問題を有していた。
【0006】
また、ポリアミドフィラメントに難燃性を付与する従来技術としては、相対粘度2〜4のポリアミド樹脂98重量部および平均粒経が5μm未満のトリアジン系難燃剤2〜20重量部を配合したポリアミド樹脂組成物からなる難燃性ポリアミドフィラメント(例えば、特許文献2参照)が提案されており、当該技術によれば、メラミンシアヌレートを5〜8重量部添加することにより、最高強度4.4cN/dtexの難燃性に優れたボリアミドモノフィラメントを得ることが可能であり、このモノフィラメントは、内装材やカーペットとして好適に使用できるとされている。しかしながら、当該技術では、単糸繊度が太いモノフィラメントにおいては効果を発揮することが予想されるが、近年寝具またはインテリア用繊維製品の耐摩耗性向上や柔らかさの向上のために用いられる単糸繊度が細いマルチフィラメントの難燃化については教示がない。
【特許文献1】特開2000−355672号公報
【特許文献2】特開2002−173829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、強度、耐摩耗性、ソフト性等の物理的特性および耐候性、耐薬品性等の化学的特性に優れるばかりか、実用に供されている間の難燃性能劣化が非常に小さい寝具またはインテリア用繊維製品の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明によれば、トリアジン系化合物を1〜10重量%含有するポリアミド繊維を構成素材の少なくとも一部に使用した織編物であって、前記トリアジン系化合物の最大粒径が10μm以下、平均粒径が0.1〜5μmであり、前記ポリアミド繊維が単糸繊度1.0〜20dtex、強度4.5〜9.0cN/dtexのマルチフィラメントであることを特徴とする寝具またはインテリア用繊維製品が提供される。
【0009】
なお、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品においては、
前記トリアジン系化合物の最大粒径が5μm以下、平均粒径が0.1〜2.3μmであること、
前記トリアジン系化合物がメラミンシアヌレートであること、
前記ポリアミド繊維がさらに銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有すること、および
前記ポリアミド繊維がさらに有機または無機顔料を0.1〜1重量%含有すること、
前記ポリアミド繊維に油剤が繊維重量に対し1.0〜2.0重量%の割合で付着していることが、いずれも好ましい条件として挙げられ、これら寝具またはインテリア用繊維製品は、なかでも特に布団、タオルケット、シーツ、カーテンおよびカーペットとしての用途に適用した場合に最良の効果を発現する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度、耐摩耗性、ソフト性等の物理的特性および耐候性、耐薬品性等の化学的特性に優れるばかりか、実用に供されている間の難燃性能劣化が非常に小さい寝具またはインテリア用繊維製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品を構成する繊維としては、耐薬品性、耐磨耗性、ソフト性に優れ、高タフネスを有するポリアミド繊維であることが必須である。ポリアミド繊維を寝具またはインテリア用繊維製品の構成素材の少なくとも一部に用いることにより、アルカリ環境下や摩擦環境下においても劣化し難く、長期にわたって使用が可能な寝具またはインテリア用繊維製品を得ることができる。
【0013】
本発明におけるポリアミドとしては、アミノカルボン酸やそのラクタムから重縮合されるナイロン4、ナイロン6、ナイロン11や、ジカルボン酸とジアミドの重縮合で得られるポリナイロン4−6、ナイロン6−6、ナイロン6−10等の公知のポリアミド等を用いることができる。また、ポリアミド繊維には、本発明の効果を阻害しない範囲、好ましくは10重量%以下であれば、共重合化合物や異種ポリマ等を含有しても良いし、耐光剤、顔料、難燃剤、艶消剤、滑剤等の各種添加剤を用いても良い。
【0014】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品に用いるポリアミド繊維の単糸断面は、丸断面以外にも、異型断面であっても良く、異形断面形状としては扁平型、三角型、C型、Y型、団子型、中空型、あるいはそれらの組合せ等を例示することができるがこれに限られるものではない。
【0015】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品に用いるポリアミド繊維は、トリアジン系化合物を1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%、さらに好ましくは3〜5重量%含有することが、優れた難燃特性を発現するために必要である。ポリアミドマルチフィラメントに含まれるトリアジン系化合物の含有量が1重量%未満では、必要とされる難燃性が得られず、逆に10重量%を越える場合には、難燃性効果が飽和し、むしろ強度が低下したり、糸切れや毛羽が発生して製糸の収率が低下したりしてしまうため好ましくない。
【0016】
本発明で用いるトリアジン系化合物としては、メラミン類やシアヌル酸類、またメラミン類とシアヌル酸類の付加物等が挙げられる。シアヌル酸類としては、シアヌル酸やイソシアヌル酸は勿論のこと、エノール形、ケト形を問わずトリメチルシアヌレート、トリエチルシアヌレート、メチルシアヌレート、ジエチルシアヌレート、トリノルマルプロピルシアヌレートなどのシアヌル酸誘導体を用いることができる。また、シアヌル酸類は水和物であっても無水物であってもよい。メラミン類としては、メラミンは勿論のこと、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリルグアナミン、メラム、メレム、リン酸メラミン等を例示することができる。メラミン類とシアヌル酸類との付加物としては、メラミンとイソシアヌル酸の付加物であるメラミンシアヌレートを例示することができるが、前記メラミン類とシアヌル酸類の付加物、好ましくは等モル付加物であれば種類を限定されるものではない。また、例えばメラミン類とシアヌル酸類の水溶液を混合して両者の塩を形成させた後、濾過して得られるメラミン類とシアヌル酸類の塩には未反応のメラミン類やシアヌル酸類が含まれていても良い。
【0017】
これらトリアジン系化合物難燃剤のうちでも、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミン、メラミシアヌレートが好ましく用いられ、特にメラミンシアヌレートが難燃性発現および加工性の面から最も好ましく用いられる。
【0018】
本発明の難燃性ポリアミドマルチフィラメントに添加するトリアジン系化合物は、その平均粒径が0.1〜5μmであり、さらに好ましくは0.1〜4μm、最も好ましくは0.1〜2.3μmである。粒径が0.1μm未満のトリアジン系化合物をポリアミドポリマに添加しても、ポリアミド繊維中では二次凝集によって0.1μm以上、かえって5μmを越える凝集粒子となるため、寝具またはインテリア用繊維製品として必要な物性の難燃性ポリアミド繊維を収率よく製造することが難しい。
【0019】
トリアジン系化合物の最大粒径としては10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。本発明の寝具またはインテリア用繊維製品に用いるようなマルチフィラメントにトリアジン系化合物を使用する場合に、トリアジン系化合物の最大粒径が10μmを越えると、溶融ポリマ中で他のトリアジン系化合物と凝集する確率が高くなり、製糸性が著しく低下したり、また、繊維中におけるトリアジン系化合物の分散状態が悪くなり、寝具またはインテリア用繊維製品に好適な高強度繊維を得ることが困難となる。繊維中におけるトリアジン系化合物の分散状態を確認する手法としては、ミクロトームで5〜10μmに切断した糸サンプルをニコン(株)製“ECLIPSE E600W POL”偏光顕微鏡を用いて、400〜500倍で撮影した写真によって確認できる。
【0020】
上記粒径を有するトリアジン系化合物は、トリアジン系化合物をボールミル等の手段で粉砕した後、乾式分級するなどの方法で得ることができる。
【0021】
また、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品にソフト性を持たせるために、ポリアミド繊維は単糸繊度が1.0〜20dtexのマルチフィラメントであることが必要である。
【0022】
本発明で特筆すべき技術的特徴は、最大粒径が前記範囲内にあるトリアジン系化合物を用いることで、単糸繊度が本発明の範囲を満足するマルチフィラメントであっても製糸性良く高強度なポリアミド繊維を得ることが可能となること、およびトリアジン系化合物を含有し、且つ単糸繊度が本発明の範囲を満足するポリアミド繊維において、単糸繊度が太い繊維と比較して繊維表面積が大きくなるため、寝具またはインテリア用繊維製品燃焼時に難燃剤であるトリアジン系化合物と炎との接触面積が増加し優れた難燃効果を発現することにある。このため、本発明のポリアミド繊維の単糸繊度は1.0〜20dtex、好ましくは1.0〜10dtex、さらに好ましくは1.0〜5.0dtexであることが必要である。単糸繊度が1.0dtex未満の場合には、トリアジン系化合物の大きさと比較して単糸太さが細くなり、繊維製造工程で毛羽や糸切れが発生する可能性がある。また、単糸繊度が20dtexを超える場合には、得られる寝具またはインテリア用繊維製品の風合いが堅くなる可能性がある。
【0023】
また、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品に用いるポリアミド繊維に添加するトリアジン系化合物とともに、各種の難燃剤を併用することによって、さらに難燃性を向上させることができる。併用する好ましい難燃剤としては、次亜リン酸アルカリ金属又は次亜リン酸土類金属塩、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸バリウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸アルミニウム、および水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウム等が挙げられ、これらの添加量としては、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0024】
さらに、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品の耐候劣化および耐熱強力劣化を防ぐためには、ボリアミド繊維が銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有することが好ましい。銅金属量10ppm未満の場合には、銅化合物による耐候・耐熱性向上効果が低く、銅金属量が500ppmを超える場合には、銅化合物が異物となり製糸性が悪化する危険性を有している。含有する銅金属量としては20〜300ppmが好ましく、30〜250ppmがより好ましい。銅化合物として、沃化銅、塩化銅、臭化銅等を例示することができるがこれに限られるものではなく、従来知られた無機および有機銅塩や銅金属単体を用いることができる。
【0025】
また、ポリアミド繊維は銅化合物に加えて他の耐熱剤を含有してもよい。耐熱剤としてはアミン化合物、メルカプト化合物、リン系化合物、ヒンダードフェノール化合物、ハロゲン化合物、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属等があげられるが、これに限られるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせたものでも良い。アミン系化合物としては、N, N' −ジフェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミン、ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン等を例示することができ、メルカプト化合物としては2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトチアゾールが例示でき、リン系化合物としてはステアリルフォスフェート、亜リン酸またはその塩等の有機・無機リン酸等を例示できるがこれらに限られるものではなく、銅化合物と前記耐熱剤は別々に添加しても良いし、錯体を形成させて添加しても良い。銅化合物とともに加える耐熱剤としてはメルカプト化合物が好ましく、特に2−メルカプトベンゾイミダゾールを組み合わせることが好ましい。その時のメルカプト化合物添加量としては300〜3000ppmであることが、熱酸化劣化防止性および製糸性の観点から好ましい。
【0026】
ポリアミド繊維の硫酸相対粘度は3〜4.5の範囲であることが好ましい。硫酸相対粘度が4.5を超える高重合度のポリカプラミド繊維を生産性良く安価に得ることは現在の技術では難しい。また、硫酸相対粘度が3未満の場合には所望の強度の繊維が得難いばかりか、長時間の保管時に物性の低下が大きくなる可能性を有している。
【0027】
上記した本発明の条件を満足していれば、ポリアミド繊維の伸度や沸水収縮率等の諸物性にとくに決まりは無い。
【0028】
また、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品に用いるポリアミド繊維は、さらに有機または無機顔料を0.1〜1重量%含有することが好ましく、より好ましい範囲は0.2〜0.8重量%である。ポリアミド繊維を原着化することにより、染色の必要が無く、低コストで染色廃液が発生しない等の利点が得られ、環境に与える負荷の小さい寝具またはインテリア用繊維製品を得ることが可能となる。添加する顔料の種類に特に限定はなく、カーボンブラック等の公知の無機および有機顔料を添加することが可能である。また、顔料を添加したポリアミド繊維を用いた寝具またはインテリア用繊維製品は、耐候性が向上するという利点も有している。顔料添加量が0.1重量%未満の場合には、求める色調を有する繊維を得られない可能性がある。また、添加量が1重量%を超える場合には、顔料が異物となって繊維製造工程で製糸性良く得ることができない可能性がある。
【0029】
ポリアミド繊維に付与する油剤は、繊維重量に対して1.0〜2.0重量%の割合であることが好ましく、より好ましい範囲は1.2〜1.8重量%である。油剤の付着量が1.0重量%未満の場合、難燃剤の添加量が増加するに伴い、繊維表面に凹凸が現れるため、安定して製糸することが困難である。また、油剤の付着量が2.0重量%を越えても構わないが、かえってコスト高となり、実用的でない。使用する油剤は、水系油剤、非水系油剤のどちらでも構わないが、非水系油剤を使用することが好ましい。更に、好ましい油剤組成は、例えば、平滑剤成分としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤成分として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤成分として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
次に、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品に用いるポリアミド繊維の製造方法の一例を説明するが、ポリアミド繊維の製造方法はこれに限られるものではない。
【0031】
ポリアミドチップと難燃剤、銅化合物および原着用顔料等との混合は、該ポリアミドの重縮合完了直後から該ポリアミド繊維が紡糸口金から紡出されるまでの任意の段階で混合すれば良い。例えば、重縮合完了直後の溶融ポリアミドに難燃剤等を添加・混練してチップ化した後固相重合し、次いでエクストル−ダー式紡糸機で溶融紡糸・延伸する方法、あるいは乾燥したポリアミドチップに、難燃剤等を混練して溶融紡糸・延伸する方法、あるいは、溶融混練により難燃剤等を高濃度含有させたマスタ−チップを製造し、該マスタ−チップとポリアミドチップを計量混合しながら溶融紡糸・延伸する方法等がある。マスターチップ化した際には紡糸時に2軸エクストルーダー型押し出し機やスタティックミキサー等を用いることが、難燃剤等を微分散させるためには好ましい。
【0032】
口金より紡出した糸条は、冷風等の冷却装置にて冷却固化したのち油剤を付与され、300〜2000m/分で回転する引き取りローラに捲回して一旦巻き取った後、もしくは連続して2段以上の多段で熱延伸を施し、巻取り機にて巻取る。糸条に油剤を付与する方法としては、一般に引取ローラ前に付与するが、難燃剤の添加量が多い場合には、延伸工程において追油することが好ましい。また、熱延伸温度はポリアミド繊維のガラス転移点−10℃〜100℃で行い、延伸倍率は、2.5〜7倍の範囲でそれぞれ行い、上記したポリアミドマルチフィラメント繊維の物性となるよう製造する。かくして、寝具またはインテリア用繊維製品に用いるポリアミド繊維が得られる。
【0033】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品の製造方法の一例を示すが、製造方法はこれに限られるものではない。
【0034】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品が織物である場合、本発明のポリアミド繊維をタテ糸および/またはヨコ糸に用いることにより得ることができる。織物を仕立てる方法は、公知の方法で行うことができる。一般的には、まずタテ糸用の糸をクリールに並べて整経を行いビームに巻き、続いてタテ糸を織機のオサに通し、ヨコ糸を打ち込んで織物を仕立てる。織機はシャトル織機、エアジェットルーム織機、ウォータジェットルーム織機などの種類があるが、いずれでも良い。また、ヨコ糸の打ち込み方により、平織り、ツイル、サテンなどのいくつかの織り組織があるが、目的によって選ぶことができる。
【0035】
また、本発明の寝具またはインテリア用繊維製品が編物である場合、該ポリアミド繊維を用いて布帛としても良いし、該ポリアミド繊維を少なくとも一部に用いても良い。編物の種類には、丸編み、タテ編みなどいくつかの種類があるがいずれでも良く公知の方法で編成することができる。一般的にタテ編みの場合、まずタテ編み用の糸をクリールに並べて整経を行いビームに巻きタテ編みの準備を行う。続いて、ビームを編機上のフロントおよび/またはバックに仕掛けて編成を行う。編成される組織の一例としては、トリコット、ラッセル、レースなどが挙げられる。
【0036】
また、このようにして得られた織物、編物はそのまま用いても良いし、精錬、染色、熱セットを施しても良い。染色は通常のポリアミド繊維の染色に使用する酸性染料を用いることができ、90℃以上の湯浴中にて60〜90分間程度処理することにより行われる。
【0037】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品は、強度、耐摩耗性、ソフト性等の物理的特性および耐候性、耐薬品性等の化学的特性に優れるばかりか、実用に供されている間の難燃性能劣化が非常に小さいため、布団やタオルケット、シーツ、カーテンやカーペット等として好適に用いることができる。一般に寝具またはインテリア繊維製品とは消防法等により防炎製品として認定の対象と定められているものをいう。
【0038】
かくして本発明の寝具またはインテリア用繊維製品を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明の態様を更に詳しく説明する。明細書本文および実施例に用いた特性の定義および測定法は次の通りである。
【0040】
(1)繊度
JIS L1013(1999)8.3の方法で正量繊度を測定した。
【0041】
(2)強度・伸度
JIS L1013(1999)8.5の方法で測定した。
【0042】
(3)硫酸相対粘度
ポリマ試料を98%硫酸に1重量%の濃度で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、次式に従い求めた。
硫酸相対粘度(ηr)=(試料溶液の滴下秒数)/(硫酸溶液滴下秒数)
各サンプルにつき2回の測定をおこない、その平均値を採用した。
【0043】
(4)製糸性
ポリアミド繊維糸条を得るときの1糸条1t当たりの製糸糸切れについて、次の基準をもって製糸性を評価した。
○:糸切れ3回未満、×:糸切れ3回以上。
【0044】
(5)限界酸素指数(LOI)
JIS L1091(2002)繊維製品の燃焼性試験方法E法(酸素指数法試験)によって測定した。LOIが25以上であれば必要とされる難燃性を満足する。
【0045】
(6)原料トリアジン系化合物の最大粒径および平均粒径
トリアジン系化合物粉末をイオンコーター(Eiko Engineering社製 “IB−3”)を用いて金蒸着した。作製サンプルをSEM(トプコン株式会社製 “ABT−55”)を用いて観察し、粒子100個の最大直径を測定し、その平均を平均粒径、最も大きい粒子の最大直径を最大粒径とした。
【0046】
(7)繊維中におけるトリアジン系化合物の最大粒径および平均粒径
ミクロトームで5〜10μmに切断した糸サンプルをニコン(株)製“ECLIPSE E600W POL”偏光顕微鏡を用いて、400〜500倍で撮影した写真によって繊維中におけるトリアジン系化合物の分散状態を観察し、その繊維断面に確認できるトリアジン系化合物の最大粒径、平均粒径を測定した。
【0047】
(8)耐候性強度保持率
スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーター(“Super Xenon Weather Meter”)を用い、試験条件を温度63℃、水噴霧有り、ブラックパネル法として耐候性試験を100時間実施し、試験前の原糸の強度(100%)に対する試験後の原糸の強度の割合(%)を求めた。
【0048】
(9)耐候性試験後のLOI測定
スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーター(“Super Xenon Weather Meter”)を用い、試験条件を温度63℃、水噴霧有り、ブラックパネル法として耐候性試験を1500時間実施し、織物または編物を前記限界酸素指数測定法にて測定した。
【0049】
(10)ソフト性
検査者(30人)の触感によって織編物のソフト性を次の基準で相対評価した。
○:ソフト感がよい、×:ソフト感がない。
【0050】
(11)洗濯サイクル後のLOI測定
市販の洗剤を用いて洗濯機中で20回の洗濯サイクルをした後、織物または編物を前記限界酸素指数測定法にて測定した。
【0051】
[実施例1]
硫酸相対粘度3.8のナイロンポリマと、平均粒径0.7μmで最大粒径2.3μmのメラミンシアヌレート粉末を10重量%添加したナイロン6マスターポリマとを、計量器で連続的計量しながら、1:1の比率で285℃の2軸エクストルーダー式押出機に連続的に供給し連続的に溶融した。それぞれのポリマには沃化銅を100ppm添加した。
【0052】
溶融ポリマを285℃の配管を通じて8段のスタティックミキサーで混練し、ギヤポンプにて総繊度が60dtexとなるように計量した後、285℃の紡糸パックに導き、パック内では20ミクロンカットのフィルターを通過させ、孔径0.5mm、孔長1.1mmの丸型単孔が12個開けられた口金より押し出した。
【0053】
紡出糸条を口金下に設けた長さ20cm、雰囲気温度310℃の加熱筒を通過させた後、ユニフロー型チムニーを用いて30℃の冷風を40m/分の速度で吹き付け固化させた後、油剤ローラにて下記の油剤を付与した。
【0054】
イソC24アルコール/チオジプロピオン酸エステル(40重量%)、C11〜15アルコールAOA/チオジプロピオン酸エステル(30重量%)、トリメチロールプロパンAOAジステアレート(10重量%)、C8アルコールAOA(10重量%)硬化ヒマシ油(7重量%)、ステアリルアミンEO15(3重量%)を鉱物油で20%に希釈した非水系油剤。
【0055】
油剤を付与した糸条を475m/分の表面速度を有する第1ローラ(非加熱)で巻き取った後、連続して延伸工程に供した。
【0056】
第1ローラを通過した糸条を、速度500m/分の第2ローラ(55℃)、速度1375m/分の第3ローラ(90℃)、速度1800m/分の第4ローラ(155℃)、速度2000m/分の第5ローラ(195℃)、速度1950m/分の第6ローラ(130℃)に連続して供すことにより延伸を行った後、交絡処理装置により3kg/cmの高圧空気を噴射して、ナイロン6マルチフィラメントを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントの特性を表1に示した。
【0057】
得られたナイロン6マルチフィラメント600本について整経を行いビームに巻き、続いてビームポリアミド繊維をフロントおよびバックに用いて30ゲージでハーフトリコットを編成した。編成したハーフトリコットに190℃緊張下で熱セットを施した。得られた編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0058】
[実施例2]
ナイロン6ポリマとナイロン6マスターポリマを8:2の比率で混合して紡糸工程に供したこと、および油剤ローラにて油剤を1.1重量%付与したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0059】
[実施例3]
ナイロン6ポリマとカーボンブラックを0.5重量%添加したナイロン6マスターポリマを2:8の比率で混合して紡糸工程に供したこと、および油剤ローラにて油剤を1.7量%付与したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0060】
[実施例4]
マスターチップ作製時に平均粒径2.0μmで最大粒径4.5μmのメラミンシアヌレート粉末を用いたこと、ギヤポンプにて総繊度を128dtexとなるように計量したこと、および孔数が8個の口金を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0061】
[実施例5]
ナイロン6ポリマとナイロン6マスターポリマを8:2の比率で混合して紡糸工程に供したこと、マスターチップ作製時に平均粒径1.2μmで最大粒径3.1μmのメラミンシアヌレート粉末を用いたこと、油剤ローラにて油剤を1.2重量%付与したこと、および孔数が20個の口金を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0062】
得られたナイロン6マルチフィラメント600本について整経を行いビームを巻き、続いてビームに巻いた糸を糊付け、乾燥してタテ糸の準備を行った。さらにタテ糸をウォータージェットルーム織機のオサに通し、得られたポリアミド繊維をヨコ糸に打ち込んで平織物を仕立てた。得られた織物の特性を評価し、結果を表2に示した。
【0063】
[実施例6]
実施例1で得られたハーフトリコットを通常の方法にて精錬した後、0.3%owfのブルー酸性染料(“Xylene Fast Blue P”)を用いて90℃湯浴中で60分間染色し、170℃で仕上げセットして染色加工を施したハーフトリコットを得た。
得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表2に示した。
【0064】
[実施例7]
巾0.1mm、長さ0.4mmのスリットが3ヶ放射状に配置されたY型単孔が12個開けられた口金を用いたこと、および油剤ローラにて油剤を1.5重量%付与したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0065】
[比較例1]
マスターチップを用いずに、1軸エクストルーダー式押出し機を用いたこと、および油剤ローラにて油剤を0.7重量%付与したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られた織物にポリビニル酢酸分散液(50%濃度)600g/l、デカブロモジフェニルエーテル80g/l、三酸化アンチモン40g/l、アルミナ三水和物80g/lを塗布量100g/mで塗布し、150℃で乾燥した。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0066】
[比較例2]
硫酸相対粘度3.8のナイロンポリマと、平均粒径0.7μmで最大粒径2.3μmのメラミンシアヌレート粉末を20重量%添加したナイロン6マスターポリマを1:3の比率で混合して紡糸工程に供したこと、油剤ローラにて油剤を2.1重量%付与したこと以外は、および各ローラ速度を、第1ローラ660m/分、第2ローラ695m/分、第3ローラ1470m/分、第4ローラ1850m/分、第5ローラ2250m/分、第6ローラ2150m/分に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0067】
[比較例3]
ナイロン6ポリマとナイロン6マスターポリマを9.5:0.5の比率で混合して紡糸工程に供したこと、および油剤ローラにて油剤を0.7重量%付与したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0068】
[比較例4]
マスターチップ作製時に平均粒径5.5μmで最大粒径11.9μmのメラミンシアヌレート粉末を用いたこと、および各ローラ速度を、第1ローラ660m/分、第2ローラ695m/分、第3ローラ1470m/分、第4ローラ1850m/分、第5ローラ2250m/分、第6ローラ2150m/分に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。得られたナイロン6マルチフィラメントおよび編物の特性を評価し、結果を表1に示した。
【0069】
[比較例5]
ギヤポンプにて総繊度を300dtexとなるように計量したこと、孔数が10個の口金を用いたこと、および油剤ローラにて油剤を1.3重量%付与したしたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0070】
【表1】

【0071】
表1の結果から明らかなように、本発明の条件を満足する実施例1〜7の織編物は、後加工を施さなくても製織/編後の難燃性に優れた寝具またはインテリア用繊維製品であり、その難燃性能は劣化試験に供した後においても殆ど変化しない。
【0072】
しかしながら、比較例1に示すような、後加工によって難燃性を付与した織編物は、難燃加工直後のLOIは高く難燃性に優れた寝具またはインテリア用繊維製品となるものの、耐候性試験後や洗濯後に難燃性低下が激しいものであった。
【0073】
比較例2のように、トリアジン系化合物含有量が本発明の規定を超える場合には、ポリアミドマルチフィラメントの採取は可能であったものの、ポリアミドマルチフィラメント製造工程において毛羽の発生が多発し、安定的に繊維を採取することはできなかった。
【0074】
比較例3のように、トリアジン系化合物の含有量が本発明の規定に満たない場合には、必要とされる難燃性が得られなかった。
【0075】
比較例4のように、トリアジン系化合物の平均粒径、最大粒径が本発明の規定を超える場合には、ポリアミドフィラメント繊維の採取は可能であったものの、ポリアミド繊維製造工程において毛羽の発生が多発し、安定的に製織編工程を通過することが困難であった。
【0076】
比較例5のように、単糸繊度が本発明の規定を上回る場合には、ポリアミドマルチフィラメントの採取は可能であったものの、織編物にしたときのソフト性が著しく悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の寝具またはインテリア用繊維製品は、強度、耐摩耗性、ソフト性等の物理的特性および耐候性、耐薬品性等の化学的特性に優れるばかりか、実用に供されている間の難燃性能劣化が非常に小さいという特性を有していることから、寝具またはインテリア用繊維製品として有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアジン系化合物を1〜10重量%含有するポリアミド繊維を構成素材の少なくとも一部に使用した織編物であって、前記トリアジン系化合物の最大粒径が10μm以下、平均粒径が0.1〜5μmであり、前記ポリアミド繊維が単糸繊度1.0〜20dtex、強度4.5〜9.0cN/dtexのマルチフィラメントであることを特徴とする寝具またはインテリア用繊維製品。
【請求項2】
前記トリアジン系化合物の最大粒径が5μm以下、平均粒径が0.1〜2.3μmであることを特徴とする請求項1に記載の寝具またはインテリア用繊維製品。
【請求項3】
前記トリアジン系化合物がメラミンシアヌレートであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の寝具またはインテリア用繊維製品。
【請求項4】
前記ポリアミド繊維がさらに銅化合物を銅金属量として10〜500ppm含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の寝具またはインテリア用繊維製品。
【請求項5】
前記ポリアミド繊維がさらに有機または無機顔料を0.1〜1重量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の寝具またはインテリア用繊維製品。
【請求項6】
前記ポリアミド繊維に油剤が繊維重量に対し1.0〜2.0重量%の割合で付着していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の寝具またはインテリア用繊維製品。
【請求項7】
前記繊維製品が、布団、タオルケット、シーツ、カーテンおよびカーペットから選ばれる少なくとも一種に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の寝具またはインテリア用繊維製品。

【公開番号】特開2007−195660(P2007−195660A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16092(P2006−16092)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】