説明

寝具カバー

【課題】布団や毛布を出し入れするのが楽で、構成や製作が面倒ではなく、よってコストを抑えられ、布団や毛布が一方の辺部へ片寄ったりずれたりするのを防ぐために、紐で結ぶ作業が無用になる寝具カバーを提供する
【解決手段】寝具カバー本体5の四角形の1本の対角線上に開口7を形成し、その開口7の縁部にスライドファスナー9を設け、寝具カバー本体5を織糸11が斜めになった布によって構成する。対角線上に開口7を形成することで開口7を大きくでき、布団1を出し入れする作業が楽になる。のみならず、織糸11が斜めになった布の働きで、斜め方向の伸びが小さくなり、斜め方向に存在する布団1の角部から、寝具カバー本体5の隅部が外れにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布団や毛布などを覆う寝具カバーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の布団カバーは、四角形の布を一対縫い合わせた袋状をしており、四角形の辺部に、布団を出し入れするための開口が形成される。この開口の縁に、開口の開閉をおこなうための手段、例えばスライドファスナーや紐などが設けられる。
【0003】
また、布団カバーの内部で、布団が一方の辺部へ片寄ったりずれたりするのを防ぐために、布団カバーの内部の四隅には紐の一端が固定され、これに対応して、布団の四角には他の紐の両端が固定されてリング状をなし、両者の紐が結ばれうる構成になっている。
しかし、布団カバーの辺部に設けられる開口は、布団の大きさよりやや小さくなり、狭く、布団を出し入れする作業は、楽ではない。また、布団カバーの内部で、前記両者の紐を結ぶ作業は、面倒である。
【0004】
これらの作業を楽に、また無用にするために、下記の特許文献1では、図3に示すように、布団カバー21の四角形の2本の対角線によって、布団カバーの片側面を4分割し、よって袋状の布団カバー21を完全に開放できる構成になっている。これにより中心から四方へ放射状に延びる4本の分割線23上に、4つのスライドファスナー25が設けられ、布団カバー21の開閉がおこなわれる。4つのスライドファスナー25は、開閉の始端部が布団カバーの中心に集められ、無用に開閉が生じないように、この中心の部分を一枚の菱形布27で覆い、この菱形布は面ファスナー29などで布団カバーの中心部分に着脱できる構成となっている。
【0005】
このような構成により、布団を出し入れする作業は楽になり、布団カバー21の内部で、前記両者の紐を結ぶ作業をおこなうものとしても、容易である。
また、下記の特許文献2では、布団カバーの四角形の1本の対角線上に開口部を形成するものが、開示される。これにより、開口は、布団の大きさより大きくなり、布団を出し入れする作業は楽になる。
【特許文献1】特開2002−306299
【特許文献2】特開平11−225864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1は、布団カバーを4分割する必要があり、4つのスライドファスナーや着脱可能な菱形布を必要とし、構成や製作が面倒であり、コストが高くなる。 また、特許文献2は、布団を出し入れする作業は楽になるものの、布団が一方の辺部へ片寄ったりずれたりするのを防ぐためには、やはり、布団カバーの四隅を紐で結ぶ作業が必要であり、この作業は同じように面倒である。
以上の課題は布団カバーについて説明したが、毛布を覆うための毛布カバーでも同様の課題が生じる。
【0007】
この発明は、以上の問題点を解決するために、布団や毛布を出し入れするのが楽で、構成や製作が面倒ではなく、よってコストを抑えられ、布団や毛布が一方の辺部へ片寄ったりずれたりするのを防ぐための紐で結ぶ作業が無用になる寝具カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明は、四角形の布製で袋状の寝具カバー本体と、この寝具カバー本体の前記四角形の1本の対角線上に形成される開口の縁部と、この開口を開閉するために前記縁部に設けられたスライドファスナーと、前記寝具カバー本体を構成し織糸が斜めになった布と、を有することを特徴とする寝具カバーである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1本の対角線上に開口を形成することで開口を大きくでき、布団や毛布を出し入れする作業が楽になるのみならず、この開口を開閉するために開口の縁部にスライドファスナーを設けるとともに、寝具カバー本体を織糸が斜めになった布によって構成することで、布団や毛布が寝具カバーの一方の辺部へ片寄ったりずれたりするのを防ぐことができる。
【0010】
すなわち、片寄りやずれは、寝具カバー本体の伸びが関係する。伸びが大きいと、布団や毛布の角部から、寝具カバー本体の内部の隅部が外れてしまい、片寄りやずれの大きな原因になる。本発明は、1本の対角線上にスライドファスナーを設けることで、スライドファスナーが固く伸びないことから、この対角線上の伸びはほぼ完全に抑止される。
【0011】
他の対角線上の伸びは、寝具カバー本体を構成する布の織糸が斜めになっていることで、織糸の方向の伸びは小さいことから、抑止される。このとき、対角線上の伸びを生じる布領域の長さは、前記1本の対角線上のスライドファスナーによって分断され、半分の長さになる。よって、さらに、伸びは小さくなり、抑止される。
【0012】
このようにして、布団や毛布の4つの角部から、寝具カバー本体の4つの隅部が外れにくくなり、片寄りやずれを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施形態を、図1に示す。
図中(A)に示すように、布団1を覆う寝具カバー3の寝具カバー本体5は、四角形の布製で、表裏2枚の四辺が縫い合わされ、袋状となっている。この寝具カバー本体5の表地は、その四角形の1本の対角線上で分割され、開口7が形成される。その開口7の縁部には、開口7を開閉するために、スライドファスナー9が設けられる。布団1は羽根布団で、寝具カバー本体5の布生地は、ガーゼ生地である。
【0014】
図中(B)に示すように、寝具カバー本体5を構成する布は、いわゆるバイアスカットされ、織糸11が45度斜めになっている。図中、矢印の方向へ布を引っ張った時の伸びの量を、矢印の長さで示す。
【0015】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)寝具カバー3の四角形の1本の対角線上に、開口7を形成することで、開口7を大きくでき、四角形の辺部に開口7を形成する場合に比べ、布団1を出し入れする作業が楽になる。
【0016】
(2)開口7を開閉するため、開口7の縁部にスライドファスナー9を設けるとともに、寝具カバー本体5を織糸11が斜めになった布によって構成することで、布団1が寝具カバー3の一方の辺部へ片寄ったりずれたりするのを防ぐことができる。
すなわち、布団1の寝具カバー3に対する片寄りやずれは、寝具カバー本体5の伸びが関係する。伸びが大きいと、布団1の角部から、寝具カバー本体5の隅部が外れてしまい、片寄りやずれの大きな原因になる。
【0017】
(i)そこで、この実施形態のように、1本の対角線上にスライドファスナー9を設ける。図示しないが周知のように、スライドファスナー9は、左右一対のファスナーテープの互いに向かい合う縁部に、多数の金属製あるいはプラスチック製のファスナーエレメントが配列され、これらのファスナーエレメントを嵌合させながらスライダーがスライドする。配列されるファスナーエレメントの間隔は変化してはいけないので、ファスナーテープは、伸びのない素材で形成される。このため、スライドファスナー9は全体として固く伸びない。よって、スライドファスナー9を設けたこの対角線上(右上斜め、左下斜めの方向)の伸びは、ほぼ完全に抑止される。
【0018】
(ii)他の対角線上の伸びは、寝具カバー本体5を構成する布が、いわゆるバイアスカット(図1(B))され、その織糸11が45度斜めになっていることで、織糸11の方向の伸びは小さいことから、抑止される。
すなわち、図1(B)に示すように、織糸11はそれ自体の伸び縮みは小さく、よって、斜め方向(右上斜め、右下斜め、左上斜め、左下斜めの方向)の伸びは小さい。これに対して、織糸11の方向に直角な方向(上下左右の方向)の伸びは大きい。織り目の菱形が十分に変形するためである。
【0019】
よって、織糸11が斜めになった布の働きで、斜め方向の伸びが小さくなり、斜め方向(右下斜め、左上斜めの方向)に存在する布団1の角部から、寝具カバー本体5の隅部が外れにくくなる。
さらに、このとき、対角線上の伸びを生じる布領域の長さは、スライドファスナー9によって分断され、半分の長さになる。例えば、左上斜め方向の伸びを生じる布領域12(図中に楕円状の二点差線で示す)の長さは、スライドファスナー9によって分断され、スライドファスナー9がない場合の半分の長さになる。よって、さらに、伸びは小さくなり、抑止される。
【0020】
これら(i)(ii)のように伸びの大小が決まることから、寝具カバー3の周囲縁のある点を、その点と中心とをつなぐ線上で引っ張ったときの伸び量を、全周の点において示すと、図1中の一点差線13のようになる。
【0021】
この一点差線13から判るように、繰り返しになるが、スライドファスナー9を設けた対角線上の伸びは、すなわち、右上と左下の角はの伸びは、ほぼ完全に抑止される。他の対角線上の伸びは、すなわち、右下と左上の角の伸びは、織糸11の方向の伸びが小さいことから、抑止される。また、4辺の各中央部は、伸びが大きい。そのうち上下辺の中央部は、伸びを生じる布領域の長さ、すなわちスライドファスナー9からの布領域の長さが長いので、特に伸びが大きい。
【0022】
このように寝具カバー本体5の4つの角の伸びは抑止されるので、布団1の4つの角部から、寝具カバー本体5の内部の4つの隅部が外れにくくなり、片寄りやずれを防止できる。
【0023】
[比較例との比較]
本発明の実施形態である図1に対して、対角線上のスライドファスナー9は同じであるがバイアスカットではない比較例を図2に示す。
この図においても、寝具カバー3の周囲縁のある点を、その点と中心とをつなぐ線上で引っ張ったときの伸び量を、全周の点において示すと、図中の一点差線15のようになる。
【0024】
この一点差線15から判るように、スライドファスナー9を設けた対角線上の伸びは、すなわち、右上と左下の角はの伸びは、ほぼ完全に抑止される。他の対角線上の伸びは、すなわち、右下と左上の角の伸びは、織糸11の方向の伸びが大きいことから、大きくなる。4辺の各中央部は、織糸11の方向の伸びが小さいことから、小さい。そのうち左右辺の中央部は、伸びを生じる布領域の長さ、すなわちスライドファスナー9からの長さが短いので、より小さい。
【0025】
この比較例からわかるように、寝具カバー3の1本の対角線上にスライドファスナー9を設けただけでは、他の対角線の角の伸びが大きくなり、その角において、布団1の角部から、寝具カバー本体5の隅部が外れ易くなる。
これに対して、図1の実施形態では、バイアスカットであるために、他の対角線の角の伸びも抑止され、その角においても、布団1の角部から、寝具カバー本体5の隅部が外れにくくなる。さらに、このとき、他の対角線上の伸びを生じる布領域の長さは、スライドファスナー9によって分断され、半分の長さになる。よって、スライドファスナー9とバイアスカットの相乗効果により、さらに、伸びは小さくなり、抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態を示すもので、(A)は寝具カバーの平面図を示し、一点差線は寝具カバーの周囲のある点を、その点と中心とをつなぐ線上で引っ張ったときの伸び量を、全周の点において示す図、(B)は(A)布の織目を示す図である。
【図2】図1の実施形態の効果を示すためのバイアスカットではない比較例を示すもので、(A)は寝具カバーの平面図を示し、一点差線は寝具カバーの周囲のある点を、その点と中心とをつなぐ線上で引っ張ったときの伸び量を、全周の点において示す図、(B)は(A)布の織目を示す図である。
【図3】従来例の布団カバーの平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…布団、3…寝具カバー、5…寝具カバー本体、7…開口、9…スライドファスナー、11…織糸、12・・左上斜め方向の伸びを生じる布領域、13、15…一点差線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の布製で袋状の寝具カバー本体と、この寝具カバー本体の前記四角形の1本の対角線上に形成される開口の縁部と、この開口を開閉するために前記縁部に設けられたスライドファスナーと、前記寝具カバー本体を構成し織糸が斜めになった布と、を有することを特徴とする寝具カバー。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−268634(P2009−268634A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120453(P2008−120453)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【特許番号】特許第4177449号(P4177449)
【特許公報発行日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(508134348)
【Fターム(参考)】