説明

寝具用クッション

【課題】寝返りがし易く、かつ体圧分散性が良く、構造が簡単で安価な寝具用クッションの提供を目的とする。
【解決手段】ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させた軟質ポリウレタンフォームからなる枕等の用寝具用クッションにおいて、軟質ポリウレタンフォームを、反発弾性(JIS K 6400−3準拠)が50%以上、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)が20N以下のものとすることによって、高反発弾性かつ低硬度のクッションとし、寝返りをし易く、かつ体圧分散性を良好にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドまたは枕などに用いられる寝具用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッションをカバー材で覆ったベッドまたは枕などの寝具は、クッションとして低反発ポリウレタンフォームを用いるものがある。
低反発ポリウレタンフォームは、寝具用クッションに使用した場合、局部的な圧迫及び負荷が少なく体圧を分散することができ、疲労感の軽減、褥瘡防止に効果があることが知られている。なお、低反発ウレタンフォームのは規格により定められているわけではなく、一般的には反発弾性(JIS K 6400−3準拠)10%未満のものが低反発ポリウレタンフォームと称されている。
【0003】
しかし、低反発ポリウレタンフォームは体圧分散性については良いが、身体(頭部の場合を含む)の沈み込みが大きく、かつスローリカバリー性(復元が遅い)である。そのため、寝返り時に低反発ポリウレタンフォームがそれまでの圧縮状態から戻るのが遅れて身体と低反発ポリウレタンフォームとの間に隙間が発生し、低反発ポリウレタンフォームの復元反発力による寝返り補助作用が得られないことから、身体の負荷が大きい問題がある。特に、病気や高齢などにより体力が落ちている人にとっては、寝返り時の負担が大きかった。さらに、低反発ポリウレタンフォームは温度依存性が大のため、夏季と冬季で触感に違いがあり、使用者に違和感を感じさせる問題があり、しかも通気性が悪く、蒸れやすい問題もあった。
【0004】
また、枕やベッドマットのクッションを、低反発ポリウレタンフォームと高反発ポリウレタンフォームの積層、あるいは部分的な組み合わせの複合体で構成することが提案されている。
しかし、低反発ポリウレタンフォームと高反発ポリウレタンフォームとの複合体は、構造が複雑で高価になる問題がある。
【0005】
なお、寝具用クッションを高反発ポリウレタンフォームで構成すれば、高反発ポリウレタンフォームの迅速な復元作用で寝返りを補助して寝返りを容易にし、寝返り時の身体的負荷を軽減することができる。
しかしながら、従来の高反発ポリウレタンフォームは、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)が50N以上の高硬度であるため、寝具用クッションとして使用した場合には体圧分散性に劣り、疲労が取れにくい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3121739号公報
【特許文献2】実用新案登録第3126441号公報
【特許文献3】特開2009−106685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、寝返りがし易く、かつ体圧分散性が良く、構造が簡単で安価な寝具用クッションの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させた軟質ポリウレタンフォームからなる寝具用クッションにおいて、前記軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性(JIS K 6400−3準拠)が50%以上、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)が20N以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ポリオールが以下のA〜Dの4種類からなり、
A:水酸基価20〜40mgKOH/g、分子量4000〜9000、官能基数3、エチレンオキサイド含有量10〜25%のポリオール
B:水酸基価20〜115mgKOH/g、分子量1000〜4000、官能基数2、
エチレンオキサイド含有量5%以下のポリオール
C:水酸基価20〜60mgKOH/g、分子量2000〜5000、官能基数2、
エチレンオキサイド含有量25〜70%のポリオール
D:水酸基価40〜80mgKOH/g、分子量2000〜5000、官能基数3、
エチレンオキサイド含有量50〜90%のポリオール
A〜Dの配合量(重量部)が、
Aの配合量=40〜65、Dの配合量=5〜30
(A+D)/(A+B+C+D)×100=60〜80(重量%)
Bの配合量=10〜20、Cの配合量=10〜20
(B+C)/(A+B+C+D)×100=20〜40(重量%)
を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の寝具用クッションを構成する軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性(JIS K 6400−3準拠)が50%以上と高反発性であるため、寝返り時の復元が速やかであり、復元時の反発力で寝返りを補助し、寝返りをし易くする。さらに、本発明の寝具用クッションを構成する軟質ポリウレタンフォームは、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)が20N以下と低硬度であるため、体圧分散性が良く、低反発ポリウレタンフォームと高反発ポリウレタンフォームと組み合わせる必要がないため、寝具用クッションの構造が簡単で安価なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1と比較例4の−10℃〜30℃における25%圧縮荷重について、20℃の値に対する比率を示す図である。
【図2】実施例1と比較例3、4の荷重−たわみ曲線である。
【図3】実施例1と比較例3の体圧分散テストの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における実施形態について説明する。本発明の寝具用クッションは、ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させた軟質ポリウレタンフォームからなり、軟質ポリウレタンフォームが、反発弾性(JIS K 6400−3準拠)50%以上、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)20N以下である。
【0013】
本発明において使用されるポリオールとしては、次に示す水酸基価(OHV)、分子量(MW)、官能基数、エチレンオキサイド含有量(EO含有量)を有するA〜Dの4種類のポリオールが用いられる。なお本発明におけるポリオールの分子量は重量平均分子量である。
A:水酸基価20〜40mgKOH/g、分子量4000〜9000、官能基数3、エチレンオキサイド含有量10〜25%のポリオール
B:水酸基価20〜115mgKOH/g、分子量1000〜4000、官能基数2、エチレンオキサイド含有量5%以下のポリオール
C:水酸基価20〜60mgKOH/g、分子量2000〜5000、官能基数2、エチレンオキサイド含有量25〜70%のポリオール
D:水酸基価40〜80mgKOH/g、分子量2000〜5000、官能基数3、エチレンオキサイド含有量50〜90%のポリオール
また、前記ポリオールA〜Dの配合量(重量部)は、全ポリオールの合計量100重量部中、以下の量からなる。次の式においてAはポリオールAの配合量、BはポリオールBの配合量、CはポリオールCの配合量、DはポリオールDの配合量をそれぞれ示す。
Aの配合量=40〜65、Dの配合量=5〜30(重量%)
(A+D)/(A+B+C+D)×100=60〜80
Bの配合量=10〜20、Cの配合量=10〜20(重量%)
(B+C)/(A+B+C+D)×100=20〜40
なお、(A+D)はポリオールAとDの合計量であり、(B+C)はポリオールBとCの合計量であり、(A+B+C+D)は、ポリオールの全体量である。
【0014】
官能基数3のポリオールAは40重量部未満の場合、フォームセルが荒れて、フォーム形状をなさなくなり、一方、65重量部を超える場合、高硬度になりフォームのソフト感が無くなってしまう。
官能基数3のポリオールDは、5重量部未満の場合、高硬度になりフォームのソフト感が無くなり、一方、30重量部を超える場合、フォームセルが荒れて、フォーム形状をなさなくなる。
官能基数2のポリオールBは、10重量部未満の場合、シュリンクしてフォームにならず、一方、20重量部を超える場合、硬度がアップし、歪が悪くなってしまう。
官能基数2のポリオールCは、10重量部未満の場合、硬度がアップし、歪が悪くなり、一方、20重量部を超える場合、シュリンクしてフォームにならない。
さらに、官能基数3のポリオールの量(A+D)が前記範囲未満である(すなわち官能基数2のポリオールの量(B+C)が前記範囲を超える)とダウンしてフォームの体をなさなかったり、歪の悪いフォームになってしまい、逆に官能基数3のポリオールの量(A+D)が前記範囲を超える(すなわち官能基数2のポリオールの量(B+C)が前記範囲未満)と高硬度になってソフト感がなくなってしまう。なお、前記ポリオールA〜Dは、何れもポリエーテルポリオールが好ましい。
【0015】
前記4種類のポリオールA〜Dを前記の量で組み合わせることにより、ポリウレタンフォームを反発弾性(JIS K 6400−3準拠)50%以上、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)20N以下にすることができる。なお、反発弾性(JIS K 6400−3準拠)のより好ましい範囲は50〜70%であり、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)のより好ましい範囲は5〜20Nである。
【0016】
本発明において使用されるイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、ポリウレタンフォーム用のものが使用可能であり、1種類の単独でも2種類以上の併用であってもよい。前記イソシアネートとしては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系のイソシアネート化合物、及びこれらの変性物を挙げることができる。
【0017】
芳香族系イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソジアネート(TMXDI)、トリジンイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族系イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。脂環族系イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(HXDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。変性イソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。なお、環境規制の点からは、MDI系及びその変性体のイソシアネートがより好ましい。
【0018】
前記イソシアネートの配合量は、イソシアネートインデックスが70〜100となる量が好ましい。イソシアネートインデックスが70未満の場合、歪(耐熱・湿熱)が悪化し、一方100を超えるとフォームが高硬度になりソフト感が得られない。なお、イソシアネートインデックスは、ポリウレタンフォーム原料中の活性水素基(例えば、ポリオールの水酸基、発泡剤として用いられる水などの活性水素基)の合計に対するイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で示す値であり、ポリウレタフォームの分野で使用されている指標である。
【0019】
本発明において使用される触媒としては、ポリオールとイソシアネートのウレタン化反応を促進するものであり、ポリウレタンフォーム用として用いられるアミン系触媒、金属触媒を挙げることができる。アミン系触媒としては、具体的には、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン等が用いられる。金属触媒としては、スタスオクトエートやジブチルチンジラウレート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等を挙げることができる。触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜0.7重量部程度である。
【0020】
本発明において使用される発泡剤としては、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等を挙げることができ、これらの中から1種類でもよく、又2種類以上でもよい。前記炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。又、前記ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも発泡剤として水が特に好適である。前記発泡剤の配合量は、ポリオールを100重量部に対して2.0〜3.0重量部程度が好ましい。
【0021】
本発明において使用される整泡剤としては、ポリウレタンフォームに用いられるものであればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。前記整泡剤の配合量は、ポリオールを100重量部に対して0.4〜1.5重量部程度が好ましい。
【0022】
前記ポリウレタンフォーム原料には、その他の添加剤が適宜配合される。適宜配合される添加剤としては、難燃剤、着色剤、充填剤等を挙げることができる。
【0023】
前記ポリウレタンフォームは、前記ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤及び適宜の添加剤を含むポリウレタンフォーム原料を攪拌混合して反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、何れの成形方法でもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタンフォーム原料をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法であり、一方、モールド発泡は、混合したフォーム原料をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。なお、前記ポリウレタンフォームは、寝具の種類に応じた形状、寸法等とされる。例えば、ベッド用クッションの場合には所定厚みの板状体等とされ、また枕用クッションの場合には、所定の枕形状とされる。さらに、枕用クッションの場合には、上下あるいは横方向等に貫通孔を形成して通気性を高めてもよい。
【実施例】
【0024】
以下のポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤及びイソシアネートを表1及び表2に示す量で調製したポリウレタンフォーム原料を混合撹拌し、寸法500×350×80mmのキャビティを有する型に1100g充填し、発泡させることによりポリウレタンフォームを作成し、実施例及び比較例の寝具用クッションを得た。
【0025】
ポリオールA:官能基数3、分子量7000、水酸基価24mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量15%、品名;EP−901、三井化学(株)製
ポリオールB:官能基数2、分子量2000、水酸基価56mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量0%、品名;D−2000、三井化学(株)製
ポリオールC:官能基数2、分子量4000、水酸基価28mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量50%、品名;ポリオールNo.33、三洋化成工業(株)製
ポリオールD:官能基数3、分子量3400、水酸基価50mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量80%、品名;FA−103、三洋化成工業(株)製
ポリオールE:官能基数3、分子量5000、水酸基価36mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量18%、品名;FA−703、三洋化成工業(株)製
ポリオールF:官能基数3、分子量5000、水酸基価28mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量13%、グラフトポリオール、品名;FA−728R、三洋化成工業(株)製
ポリオールG:官能基数3、分子量670、水酸基価250mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量0%、品名;G−700、(株)アデカ製
ポリオールH:官能基数3、分子量1700、水酸基価100mgKOH/g、エチレンオキサイド含有量90%、セルオープナー、品名;MF−19T、三井化学(株)製
【0026】
触媒:トリエチレンジアミン33%、ジプロピレングリコール67%、品名;DABCO33LV、エアープロダクツジャパン製
整泡剤A:シリコーン系整泡剤、品名;SZ1346E、東レ・ダウコーニング社製
整泡剤B:シリコーン系整泡剤、品名;SF2969、東レ・ダウコーニング社製
発泡剤:水
イソシアネートA:MDI、NCO%=29.9%、品名;S−6564、huntsman社製
イソシアネートB:MDI、NCO%=44.6%、品名;TM−8020、BASF社製
【0027】
このようにして得られた各実施例及び比較例の寝具用クッションに対して、密度(kg/m、JIS K 7222:1999準拠)、25%圧縮荷重(N、JIS K 6400−2 D法準拠)、反発弾性(%、JIS K 6400−3準拠)、通気性(L/min、ASTM D 3574準拠)、50℃、95%RH、50%圧縮の湿熱歪(%、JIS K 6400準拠)を測定し、また発泡後のポリウレタンフォームの形状を目視で判断した。測定結果及び判断結果を表1及び表2の下部に示す。なお、発泡後のポリウレタンフォームの形状については、シュリンク(収縮)及びボイド(中空部)が全く無い良好な外観の場合に◎、シュリンク(収縮)又はボイド(中空部)が僅かに存在する場合に○、シュリンクやボイドが顕著に見られる場合、あるいは発泡途中でダウンした場合には、成形不良と判断してその内容を記載した。また、シュリンクやボイドが著しかったもの、あるいはダウンしたものは、密度、25%圧縮荷重、反発弾性及び通気性について正確に測定できないため、測定を行わなかった。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
実施例1〜6の寝具用クッションは、25%圧縮荷重が11〜20Nと低硬度であり、かつ反発弾性が50〜65%と高反発であった。さらに実施例1〜6の寝具用クッションは通気性が良好で湿熱歪が小さく、フォーム形状(成形状態)が良好であった。
一方、比較例1の寝具用クッションは、ポリオールがポリオールAのみからなり、25%圧縮荷重が51Nと高硬度、かつ反発弾性が65%と高反発であり、通気性が劣っていた。比較例2の寝具用クッションは、ポリオールがポリオールAとポリオールBのみからなり、25%圧縮荷重が35Nと中程度の硬度、かつ反発弾性が53%と高反発であり、通気性及び湿熱歪が劣っていた。比較例3の寝具用クッションは、ポリオールがポリオールEとポリオールFのみからなり、25%圧縮荷重が60Nと高硬度、かつ反発弾性が60%と高反発であり、通気性が劣っていた。比較例4の寝具用クッションは、ポリオールにE〜Hを使用したものであり、25%圧縮荷重が10Nと低硬度、かつ反発弾性が5%と低反発であり、通気性が劣っていた。
【0031】
比較例5は、ポリオールA〜Dを使用し、ポリオールAを本発明の範囲よりも少にすると共にポリオールDを本発明の範囲よりも多くしたものであり、ボイドが著しく、良好に発泡できなかった。比較例6の寝具用クッションは、ポリオールA〜Dを使用し、ポリオールAを本発明の範囲よりも多くすると共にポリオールDを本発明の範囲よりも少なくしたものであり、25%圧縮荷重が30Nと中程度の硬度、かつ反発弾性が52%と高反発であり、通気性が劣っていた。比較例7の寝具用クッションは、ポリオールとしてポリオールA、B、Dの3種類使用したものであり、25%圧縮荷重が31Nと中程度の硬度、かつ反発弾性が43%と中程度の反発であり、通気性及び湿熱歪が劣っていた。比較例8は、ポリオールとしてポリオールA、C、Dの3種類使用したものであり、シュリンクし、良好に発泡できなかった。比較例9は、ポリオールA〜Dを使用し、ポリオールAを本発明の範囲よりも少にすると共にポリオールBを本発明の範囲よりも多くしたものであり、発泡途中でダウンし、良好に発泡できなかった。比較例10は、ポリオールA〜Dを使用し、ポリオールAを本発明の範囲よりも少にすると共に、ポリオールCを本発明の範囲よりも多くしたものであり、25%圧縮荷重が18Nと低硬度、かつ反発弾性が38%と中程度の反発であり、通気性及び湿熱歪が劣っていた。比較例11は、ポリオールとしてポリオールEとポリオールFを使用したものであり、比較例3のインデックスを下げたものであるが、25%圧縮荷重が50Nと高硬度のままであり、かつ反発弾性が51%と高反発であり、通気性及び湿熱歪が劣っていた。
【0032】
また、実施例1〜6及び比較例1〜4、比較例6、7、10、11の寝具用クッションを寸法500×350×80mmの枕形状に作成し、寝具用クッションに頭を載置して使用感を判断した。その結果、全ての実施例は、頭を動かさない通常時における支持性及び適度な感触があり、また寝返りにより頭の向きを変えた際に、頭が上がる側ではクッション(ポリウレタンフォーム)が速やかに復元して反発弾性力により頭の回転を助け、一方、頭によって押される側ではクッション(ポリウレタンフォーム)が低硬度のため、容易に変形し、抵抗が少なかった。それに対して、ポリウレタンフォームの25%圧縮荷重が高く、硬い比較例1〜3、6、7、11は、枕の沈み込み感が少なく、頭の支持性に劣っていた。また、25%圧縮荷重及び反発弾性の何れも低い従来の低硬度・低反発タイプの比較例4及び25%圧縮荷重が低く、反発弾性が実施例よりも低い比較例10については、頭の向きを変えた際に、頭が上がる側でクッション(ポリウレタンフォーム)の復元が遅く、クッションの復元反発力による助けが得られなかった。
【0033】
また、実施例1と低硬度・低反発タイプの比較例4の寝具用クッションについて温度依存性を調べるため、−10℃〜30℃の範囲で25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)を測定し、20℃に対する25%圧縮荷重の比率を計算した。測定結果は図1に示す通りであり、実施例1では−10℃〜30℃の範囲で25%圧縮荷重が殆ど変化がなかったのに対し、比較例4では、−10℃の25%圧縮荷重が20℃の25%圧縮荷重に対して約320%となった。このことから、実施例1では温度依存性が低く、冬季でも硬くならずに使用感が損なわれることがないのに対し、比較例4では温度依存性が高く、冬季では硬くなって使用感(蝕感)が損なわれることがわかる。
【0034】
また、実施例1と高硬度・高反発タイプの比較例3及び低硬度・低反発タイプの比較例4の寝具用クッションについて、使用時に頭部等と接触する部分における沈み込みによる頭部等の支持性を調べるため、荷重−たわみ試験(JIS K 6400−2 B法準拠)を行った。図2は測定結果を示す荷重−たわみ曲線であり、圧縮初期の圧縮荷重が、実施例1では小さいのに対して、比較例3及び比較例4では大きかった。このことから、実施例1では、使用時に頭部等と接触する部分が十分に沈み込んで頭部等に対する高い支持性が得られるのに対し、比較例3及び比較例4では、使用時に頭部等と接触する部分で抵抗があり、頭部等に対する支持性が実施例1よりも低いことがわかる。
【0035】
また、実施例1と高硬度・高反発タイプの比較例3について、体圧分散性を調べるため、サイズ400×400×40mmにしたサンプルを布製の袋体に収納したものを、ボンネル上に敷いて頭部の体圧分散テストを行った。体圧分散テストは、「ビジュアルマット」(ニッタ株式会社製)装置を用い、頭部を実際に載置した際の圧力分布を調べた。
【0036】
テストの結果は、図3に示すように、高硬度・高反発タイプの比較例3については高い圧力を示す赤色の部分が多いのに対し、実施例1では高い圧力を示す赤色の部分が少なく、頭部の体圧が良好に分散されているのがわかる。
【0037】
このように、本発明によれば、寝返りがし易く、かつ体圧分散性が良く、構造が簡単で安価な寝具用クッションを得ることができる。なお、本発明の寝具用クッションは枕用に限られず、ベッド用であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、触媒、発泡剤及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を発泡させた軟質ポリウレタンフォームからなる寝具用クッションにおいて、
前記軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性(JIS K 6400−3準拠)が50%以上、25%圧縮荷重(JIS K 6400−2 D法準拠)が20N以下であることを特徴とする寝具用クッション。
【請求項2】
前記ポリオールが以下のA〜Dの4種類からなり、
A:水酸基価20〜40mgKOH/g、分子量4000〜9000、官能基数3、
エチレンオキサイド含有量10〜25%のポリオール
B:水酸基価20〜115mgKOH/g、分子量1000〜4000、官能基数2、
エチレンオキサイド含有量5%以下のポリオール
C:水酸基価20〜60mgKOH/g、分子量2000〜5000、官能基数2、
エチレンオキサイド含有量25〜70%のポリオール
D:水酸基価40〜80mgKOH/g、分子量2000〜5000、官能基数3、
エチレンオキサイド含有量50〜90%のポリオール
A〜Dの配合量(重量部)が、
Aの配合量=40〜65、Dの配合量=5〜30
(A+D)/(A+B+C+D)×100=60〜80(重量%)
Bの配合量=10〜20、Cの配合量=10〜20
(B+C)/(A+B+C+D)×100=20〜40(重量%)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の寝具用クッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95866(P2013−95866A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240794(P2011−240794)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】