説明

寝具補助具

【課題】シーツなどの寝具のずれやしわが生じることを有効に防止しつつ、ベッドメイキングをより容易に効率的になし得、さらにベッドメイキングの回数を大幅に削減することができる寝具補助具が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る寝具補助具は、長尺の帯状体又は紐状体と短尺の帯状体又は紐状体を備える寝具補助具であって、短尺の帯状体又は紐状体を、長尺の帯状体又は紐状体の長手方向にスライド可能なように連結し、長尺の帯状体又は紐状体に長さ調節機構を1つのみ設け、長尺の帯状体又は紐状体及び短尺の帯状体又は紐状体の各先端部に挟持具を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーツなどの寝具のずれやしわなどを防止する寝具補助具に係り、更に詳しくは、シーツなどの寝具にずれやしわが生じることを有効に防止しつつ、ベッドメイキングをより容易に効率的になし得、さらにベッドメイキングの回数を大幅に削減することができる寝具補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院や家庭などにおいて使用されるベッド、ふとんなどには、使用中にシーツなどの寝具がずれたりやしわが生じたりすることを防止するため、ふとんの裏面からシーツなどの寝具の端部を引っ張って留めることができる寝具補助具が用いられており、例えば、特許文献1や特許文献2のような寝具補助具が開発されている。
【0003】
また、簡易的な方法として、シーツなどの寝具の端部をふとんの裏面において結ぶことによって、ずれやしわを防止することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3062557号公報
【特許文献2】実開平1−81969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の寝具補助具は一本の帯状物であることから、特許文献1の図2や図4に示す通り、シーツなどの寝具をふとんの裏面においてふとんの横方向にしか引っ張って留めることができない。従って、引っ張って留める方向と異なる方向に発生するシーツなどのずれやしわを有効に防止することができないという課題があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の寝具補助具は、形状がT字状をしていることから、シーツなどの寝具をふとんの裏面において、ふとんの横方向からだけではなく縦方向からも引っ張って留めることができることから、シーツなどの寝具のずれやしわをより有効に防止することができるという長所を有している。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の寝具補助具は、T字状をなしている長尺の帯状体と短尺の帯状体がT字状に縫合されている構造になっていることから、当該寝具補助具をふとんの裏面に取り付けるためには、図4に示すようにして行わなければならず、ベッドメイキングに長時間を要するという課題があった。
【0008】
すなわち、まず、図4(a)に示すように、寝具補助具10の長尺紐状物20の端部に取り付けられている一方のクリップ50aを、ふとん9の裏面に回り込ませたシーツ11などの寝具に挟持させる。
次に、図4(b)に示すように、長尺紐状物20の端部に取り付けられている他方のクリップ50bを、シーツ11などの寝具に図4(a)で挟持した位置と対向する位置で、かつ、長尺紐状物20がふとん9の横方向に位置するように取り付ける。
次に、図4(c)に示すように、図4(a)で挟持したクリップ50a側に取り付けられているバックル40aを調整することによって、長尺紐状物20の左半分のたるみを取りつつ、短尺紐状物30がふとん9の横方向の中心部に位置するようにする。
次に、図4(d)に示すように、図4(b)で挟持したクリップ50b側に取り付けられているバックル40bを調整することによって、長尺紐状物20の右半分のたるみを取りつつ、短尺紐状物30がふとん9の横方向の中心部からずれないようにするとともに、シーツ11などの寝具をふとん9の裏面においてふとん9の横方向に引っ張って留める。
次に、図4(e)に示すように、短尺紐状物30の先端に取り付けられているクリップ50cを、シーツ11などの寝具に、短尺紐状物30がふとん9の縦方向に位置するように取り付ける。
最後に、図4(f)に示すように、短尺紐状物30の先端部に取り付けられているバックル40cを調節して、短尺紐状物30のたるみを取りつつ、シーツ11などの寝具をふとん9の裏面においてふとん9の縦方向に引っ張って留めることによって、寝具補助具10の取り付けを完了する。
【0009】
従って、特許文献2に記載の寝具補助具をふとんに取り付けるためには、上記の通り、図4(a)〜(d)の作業時において、長尺紐状物20の左半分と右半分のたるみを取るために、作業者がベッドの左右に移動したり、あるいは、体を伸ばしたりして長尺紐状物に取り付けられている両方のバックルの調節をしなければならず、ベッドメイキングに長時間を要するという課題があった。
【0010】
また、寝具補助具においては、シーツなどの寝具を留める際にあまり強く引っ張って留めると、体をベッドに横たえたときにシーツがわずかにたわんで体を受け止めることができなくなり、逆に張られたシーツによって体が押し返されるようになり、体が受ける圧力(体圧)が高くなるという現象が起こる。そして、特に被用者が寝たきりの患者である場合には、ベッドから受ける圧力(体圧)によって患者の体に褥瘡などを起こしてしまうことが知られている。
従って、寝具補助具においては、シーツがわずかにたわんで体を受け止めることができるように、適度な張力で引っ張って留める機能が備わっている必要がある。
しかしながら、特許文献2に記載の寝具補助具は、その張力の調整をするためにも、上記の通り作業者がベッドの左右に移動するなどをしなければならず、この点からもベッドメイキングに長時間を要するという課題があった。
【0011】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、シーツなどの寝具のずれやしわが生じることを有効に防止しつつ、ベッドメイキングをより容易に効率的になし得、さらにベッドメイキングの回数を大幅に削減することができる寝具補助具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る寝具補助具は、長尺の帯状体又は紐状体と短尺の帯状体又は紐状体を備える寝具補助具であって、短尺の帯状体又は紐状体を、長尺の帯状体又は紐状体の長手方向にスライド可能なように連結し、長尺の帯状体又は紐状体に長さ調節機構を1つのみ設け、長尺の帯状体又は紐状体及び短尺の帯状体又は紐状体の各先端部に挟持具を設けた構成にしてある。
【0013】
本発明の請求項2に係る寝具補助具は、挟持具の挟持部にゴム体を設けた構成にしてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る寝具補助具によれば、長尺の帯状体又は紐状体と短尺の帯状体又は紐状体を備える寝具補助具であって、短尺の帯状体又は紐状体を、長尺の帯状体又は紐状体の長手方向にスライド可能なように連結し、長尺の帯状体又は紐状体に長さ調節機構を1つのみ設け、長尺の帯状体又は紐状体及び短尺の帯状体又は紐状体の各先端部に挟持具を設けた構成にしているので、シーツなどの寝具のずれやしわが生じることを防止しつつ、ベッドメイキングの際に作業者がベッドの左右に移動したり、あるいは、体を伸ばしたりして、長尺紐状物に取り付けられているバックルの調節をすることがなくなり、ベッドメイキングをより容易に効率的に行うことができ、さらにベッドメイキングの回数を大幅に削減することができる。
【0015】
本発明の請求項2に係る寝具補助具によれば、挟持具の挟持部にゴム体を設けた構成にしているので、シーツなどの寝具を強力に挟持することができ、より効果的にシーツなどの寝具のずれやしわが生じることを防止することができる。
【0016】
また、本発明の請求項1および請求項2に係る寝具補助具によれば、寝たきりなど患者がベッドに寝ている状態であっても、ベッドメイキングを容易に効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の寝具補助具を示す斜視図である。
【図2】本発明の寝具補助具の使用手順を示す模式図である。
【図3】本発明の寝具補助具をベッドに取り付けた状態を示す模式図である。
【図4】従来の寝具補助具の使用手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明の寝具補助具を示す斜視図である。
【0019】
本実施形態の寝具補助具1は、長尺の帯状体2と短尺の帯状体3と、長尺の帯状体2に1つのみ設けられた長さ調節機構4と長尺の帯状体2と短尺の帯状体3の各先端に設けられた挟持具5とから構成されている。
短尺の帯状体3の一端には環状部6が形成されており、この環状部6に長尺の帯状体2が挿通され、短尺の帯状体3が長尺の帯状体2の長手方向にスライド可能なように構成されている。
挟持具5の挟持部7にはゴム体8が設けられている。
【0020】
なお、本実施形態においては、長尺の帯状体2と短尺の帯状体3を約4cmの伸縮自在の帯状体にしているが、材質や形状はこれに限定されるものではなく、シーツなどの寝具をベッドの裏面で引っ張って留めることができれば、紐状体でもよいし、伸縮しない材質のものを用いてもよい。
【0021】
また、本実施形態においては、短尺の帯状体3の一端に環状部6を形成し、この環状部6に長尺の帯状体2を挿通しているが、短尺の帯状体3が長尺の帯状体2の長手方向にスライド可能なようになっていれば、この形態に限定されるものではない。
【0022】
また、本実施形態においては、長尺の帯状体2と短尺の帯状体3をそれぞれ一本ずつ用いてT字状に構成しているが、長尺の帯状体2と短尺の帯状体3の本数および寝具補助具の形態はこれに限定されるものではなく、Π字状など各種の形態とすることもできる。
【0023】
また、本実施形態においては、挟持具5の挟持部7にゴム体8を設けているが、シーツなどの寝具を引っ張って留めることができるものであれば、これに限定されるものではなく、スポンジ体やマジックテープ(登録商標)などの各種の材料を用いることができ、ゴム体8を用いる場合でもその形状を種々の形状にすることができる。さらに、シーツなどの寝具を引っ張って留めることができれば、必要に応じて、ゴム体8を設けないこともできる。
【0024】
さらに、本実施形態においては、短尺の帯状体3には長さ調節機構4を設けていないが、必要に応じて、長さ調節機構4を設けることもできる。
【0025】
次に、上記のように構成された寝具補助具1を使用する際の動作を説明する。
図2は本発明の寝具補助具の使用手順を示す模式図であり、図3は本発明の寝具補助具をベッドに取り付けた状態を示す模式図である。
【0026】
まず、ふとん9をベッド10から持ち上げ、シーツ11などの寝具をずれやしわが生じないようにふとん9に取り付ける。
【0027】
次に、図2(a)に示すように、ふとん9の裏面のシーツ11の一端に長尺の帯状体2の一方の挟持具5aを取り付ける。
【0028】
次に、図2(b)に示すように、長尺の帯状体2の他方の挟持具5bを、図2(b)で挟持した位置と対向する位置で、かつ、長尺の帯状体2がふとん9の横方向に位置するように取り付ける。
【0029】
次に、図2(c)に示すように、長尺の帯状体2の長さ調節機構4を調節することによって、シーツ11をふとん9の裏面においてふとん9の横方向に引っ張って留める。
【0030】
最後に、図2(d)に示すように、短尺の帯状体3の環状部6を長尺の帯状体2上でスライドさせることによって、短尺の帯状体3をふとん9の横方向の中心部に位置するように移動させ、短尺の帯状体3の挟持具5cを用いて、シーツ11をふとん9の裏面においてふとん9の縦方向に引っ張って留める。
【0031】
以上に示すように、長さ調節機構が長尺の帯状体に1つのみ設けられていることから、一連の作業において、従来の寝具補助具のように作業者がベッドの左右に移動したり、あるいは、体を伸ばしたりして長尺紐状物または短尺紐状物の各先端部に設けられていた各バックルをそれぞれ調節する必要がなく、寝具補助具をすばやく、簡単にふとんの裏面に取り付けることができる。
従って、シーツなどの寝具のずれやしわを有効に防止しつつ、ベッドメイキングをより容易に効率的に行うことができる。
【0032】
なお、図2においては、先に長尺の帯状体2をシーツ11に取り付け、その後に短尺の帯状体3をスライドさせてふとん9の横方向の中心部に位置するように調整してシーツ11に取り付けたが、取り付けの手順はこれに限定されるものではなく、先に短尺の帯状体3をふとん9の横方向の中心部に位置するようにシーツ11に取り付け、その後に長尺の帯状体2をシーツ11に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
そして、上記のようにして本発明の寝具補助具を用いたところ、ベッドメイキングの回数を大幅に削減することができた。
具体的には、1日3回のギャッチアップ(食事などのために介護用ベッドなどの背もたれをあげる行為)を行った際、従来の寝具補助具を使用したり、シーツを結んだりせずにシーツを単純にふとんの裏面に折り返してベッドメイキングをしたベッドでは、7〜8回のギャッチアップ毎にベッドメイキングをやり直さなければならなかったのに対し、本発明の寝具補助具を使用した場合には、少なくとも1週間の間はベッドメイキングをする必要がなくなり、ベッドメイキングの回数を大幅に削減することができた。
【0034】
また、本発明の寝具補助具を使用した場合の被用者が受ける体圧値について、以下の方法によって測定を行った。
具体的には、まず、1)本発明の寝具補助具を使用してベッドメイキングをしたベッド、2)シーツの端部をふとんの裏面において結ぶことによってベッドメイキングをしたベッド、3)寝具補助具を使用したり、シーツを結んだりせずにシーツを単純にふとんの裏面に折り返してベッドメイキングをしたベッド、の3種類のベッドを用意した。
次に、成人男性20人と成人女性20人の計40人に、上記3種類のベッドにそれぞれ仰向けの状態で寝てもらい、その時に左右の肩甲骨にかかる体圧値(データ数80個=40人×2箇所)を、簡易式体圧・ズレ同時測定器(株式会社モンテン製、商品名:プレディア、品番:MEA)を用いて測定し、その平均体圧値を比較した。
【0035】
その結果、1)のベッドにおいては平均体圧値が16.96mmHgであり、2)のベッドにおいては平均体圧値が17.69mmHgであり、3)のベッドにおいては平均体圧値が16.86mmHgであった。
一般的に、体圧値が32mmHg以下になると毛細血管圧よりも体にかかる圧力が低くなることから褥瘡予防に有効なものとなることが知られているが、上記の通り、本発明の寝具補助具を使用したベッドにおいては平均体圧値が16.96mmHgと、基準となる32mmHg以下となることから、シーツが適度な張力で引っ張って留めることができることがわかり、患者が褥瘡などを起こすことがないことを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の寝具補助具は、病院や家庭などにおいて使用されるベッド、ふとんなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 寝具補助具
2 長尺の帯状体
3 短尺の帯状体
4 長さ調節機構
5 挟持具
6 環状部
7 挟持部
8 ゴム体
9 ふとん
10 ベッド
11 シーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の帯状体又は紐状体と短尺の帯状体又は紐状体を備える寝具補助具であって、前記短尺の帯状体又は紐状体を、前記長尺の帯状体又は紐状体の長手方向にスライド可能なように連結し、前記長尺の帯状体又は紐状体に長さ調節機構を1つのみ設け、前記長尺の帯状体又は紐状体及び前記短尺の帯状体又は紐状体の各先端部に挟持具を設けたことを特徴とする寝具補助具。
【請求項2】
前記挟持具の挟持部にゴム体を設けたことを特徴とする請求項1に記載の寝具補助具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−92376(P2011−92376A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248577(P2009−248577)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(509300212)
【Fターム(参考)】