説明

寝室照明システム

【課題】 本発明は、同室で睡眠を取る場合に照明コントロールによって心地良く目覚めることが出来、且つ起床のタイミングをずらすことが出来る寝室照明システムを提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】 並設された複数の寝床1のそれぞれのヘッドボード2に設けられた目覚め準備用照明群3と、隣設される寝床1の間に設けられ、ヘッドボード2に設けられた他の寝床1からの目覚め準備用照明群3からの光を遮蔽するナイトテーブル5と、該ナイトテーブル5の両側面に設けられ、完全な覚醒を促すと共に目覚めた際に生体リズムをリセットする目覚め用照明群6と、目覚め準備用照明群3と目覚め用照明群6とを制御する制御部4とを有して構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の寝床が並設された場合にそれぞれの就寝時間が異なっても快適な目覚めが出来る寝室照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明のコントロールによって目覚めることは睡眠のリズムと起床のリズムを合わせることが出来るため、心地良い目覚めを提供する上で重要である。照明コントロールによって目覚めるシステムは、特開平07−318670号公報(特許文献1)や実開平06−078895号公報(特許文献2)により提案されている。
【0003】
ところで、夫婦同室で睡眠をとる際には起床のタイミングが異なる可能性が高い。しかし、従来の照明コントロールでは二人が同時に目覚めてしまうことが課題であった。
【0004】
【特許文献1】特開平07−318670号公報
【特許文献2】実開平06−078895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数人が生活する住宅環境においては、寝室も複数人で利用をすることが多くあるが特許文献2の技術においては、同室に居る個々別々の起床時間での快適な目覚めを誘導することが出来ないという問題がある。
【0006】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、同室で睡眠を取る場合に照明コントロールによって心地良く目覚めることが出来、且つ起床のタイミングをずらすことが出来る寝室照明システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明に係る寝室照明システムの第1の構成は、並設された複数の寝床のそれぞれのヘッドボードに設けた目覚め準備用照明群と、隣設される前記寝床の間に設けられ、前記ヘッドボードに設けられた他の寝床からの目覚め準備用照明群からの光を遮蔽するナイトテーブルと、前記ナイトテーブルの両側面に設けられ、完全な覚醒を促すと共に目覚めた際に生体リズムをリセットする目覚め用照明群と、前記目覚め準備用照明群と前記目覚め用照明群とを制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る寝室照明システムの第2の構成は、前記第1の構成において、前記寝床において睡眠中の人の体温を測定する体温測定手段と、前記体温測定手段により測定された体温に基づいて睡眠曲線を作成する睡眠曲線作成手段とを有し、前記制御手段は、前記睡眠曲線作成手段により作成された睡眠曲線においてレム睡眠からノンレム睡眠に移行する時点で前記目覚め準備用照明群をONとすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る寝室照明システムの第3の構成は、前記第1の構成において、前記制御手段により覚醒のタイミングに合わせて制御され、体温の上昇を促す体温上昇手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る寝室照明システムの第4の構成は、前記第2の構成において、前記体温測定手段は、前記寝床に敷いた体温測定シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る寝室照明システムの第1の構成によれば、隣設された他の寝床のヘッドボードに設けられた目覚め準備用照明群からの光をナイトテーブルにより遮蔽することが出来、起床時間が異なる他の目覚め準備用照明群の影響を受けることがなく、安眠妨害を受けることが無い。
【0012】
また、予め設定された起床時間に対応して、目覚めの準備段階として、制御手段によりレム睡眠からノンレム睡眠に移行する時点で目覚め準備用照明群をONとすると共に所定の時間−照度曲線に応じて該目覚め準備用照明群の照度を徐々に大きくし、起床時間前の所定のタイミングで目覚め用照明をONとして快適に目覚めることが出来る。
【0013】
ここで、レム睡眠とノンレム睡眠について説明する。入眠してから徐々に睡眠が深くなっていくと次に現れるのがレム(Rapid eye movement;REM)睡眠である。レム睡眠の特徴は脳波上はノンレム睡眠の段階に似ているが急速な眼球運動が見られ、このような睡眠期には夢を見ていることが多い。レム睡眠は様々な生理現象も睡眠の深さもノンレム睡眠とは質的に異なっている。このようなレム睡眠とノンレム睡眠とは1セットになって一晩の睡眠のなかで交互に繰り返して朝目覚めるまでに5〜6回現れる。健常成人ではレム−ノンレム睡眠の1セットの長さは約90分程度である。
【0014】
レム睡眠の特徴としては、(1)急速眼球運動が現れる。(2)脳波が入眠期から軽睡眠期に似たパターンを示す。(3)身体の姿勢を保つ筋肉(抗重力筋、姿勢筋)の緊張がほとんどなくなる。(4)感覚刺激を与えても目覚め難い。(5)脈拍、呼吸、血圧等の自律神経機能が不規則に変化する。(6)レム睡眠時期に眠りについている人を起こすと、80%以上の人が夢を見ている。
【0015】
一方、ノンレム睡眠の特徴としては、(1)入眠期の浅い睡眠段階ではゆっくりと揺れるような眼球運動がみられるが、その後、睡眠が深くなると眼球の動きは停止する。(2)脳波は活動が低下し、周波数が遅くなる。(3)身体の筋肉の緊張が保たれる。(4)脈拍、血圧、呼吸が安定する。(5)ノンレム睡眠時期に眠りについている人を起こすと、目覚めが悪く、夢を見ていることは少ない。
【0016】
次に目覚め準備用照明群について説明する。地球の1日が24時間であるのに対して、人間の本来持っている1日の単位は25時間である。この25時間で1日の周期を1時間早めて24時間で1日の周期に合わせるために生体リズムをリセットする必要があり、その体内時計のリセットボタンとして太陽の光を浴びることで体内時計を1時間早めることが出来ることが知られている。本発明に係る目覚め準備用照明群は、体内時計のリセットボタンとしての太陽光に代わるものである。自然の太陽光は日の出から徐々に照度が上昇して目覚めを促すため、これに対応して制御手段により目覚め準備用照明群の照度を徐々に上昇させた後、最後に目覚め用照明で高い照度で照明して目覚めを促すものである。
【0017】
また、本発明に係る寝室照明システムの第2の構成によれば、体温測定手段により測定された睡眠中の体温に基づいて睡眠曲線作成手段により睡眠曲線を作成することが出来る。一晩の睡眠のなかで交互に繰り返して現れるレム睡眠中の体温は上昇し、ノンレム睡眠中の体温は下降することから、睡眠中の体温曲線が睡眠曲線に一致する。
【0018】
そして、睡眠曲線作成手段により作成された睡眠曲線において、体温が上昇するレム睡眠から体温が下降するノンレム睡眠に移行する変節点が現れる時点で制御手段により目覚め準備用照明群をONとすることで快適な目覚めを促すことが出来る。
【0019】
また、本発明に係る寝室照明システムの第3の構成によれば、電気あんか等の体温上昇手段により覚醒のタイミングに合わせて体温の上昇を促すことで、睡眠中に下がっていた体温が上がり、快適な目覚めを促すことができる。
【0020】
また、本発明に係る寝室照明システムの第4の構成によれば、寝床に敷いた体温測定シートにより睡眠中の体温を測定することにより、寝相に関係なく、また意識することなく確実に体温を測定でき、安眠が保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図により本発明に係る寝室照明システムの一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る寝室照明システムの構成を示す配置図、図2(a)はヘッドボードに設けられた目覚め準備用照明群の一例を示す図、図2(b)はナイトテーブルに設けられた目覚め用照明の一例を示す図、図3は本発明に係る寝室照明システムの制御系の構成を示すブロック図、図4は睡眠曲線作成手段により作成された睡眠曲線の一例を示す図、図5は制御手段により目覚め準備用照明群と目覚め用照明群の照度を制御する様子を示す図である。
【0022】
図1及び図2において、1は一つの部屋内に並設された複数の寝床1であり、該寝床1のそれぞれの枕側に配置される各ヘッドボード2には、それぞれの寝床1に対応して目覚め準備用照明群3が設けられている。
【0023】
目覚め準備用照明群3は、寝床1の周辺を照らすように配置され、寝床1全体を水平面照度が0[lx(ルクス)]〜300[lx(ルクス)]程度の範囲で制御される比較的照度の低い照明が採用され、図3に示す制御手段となる制御部4に設けられたタイマー4aと連動して時間に応じて該目覚め準備用照明群3の光束を変化させることが出来るように構成されている。
【0024】
複数の寝床1のうち、隣設される各寝床1の間には、各ヘッドボード2に設けられた他の寝床1からの目覚め準備用照明群3からの光を遮蔽するナイトテーブル5が設けられている。ナイトテーブル5の両側面には、隣設された、それぞれの寝床1に対応して、完全な覚醒を促すと共に目覚めた際に生体リズムをリセットする目覚め用照明群6が設けられている。
【0025】
目覚め用照明群6は、それぞれの寝床1で睡眠中の人の顔面を照らすように設置され、枕元の水平面照度が3000[lx(ルクス)]以下の比較的照度の高い照明が採用され、図3に示す制御手段となる制御部4に設けられたタイマー4aと連動して時間に応じて該目覚め用照明群6の光束を変化させることが出来るように構成されている。
【0026】
尚、ナイトテーブル5の他にパーティション等により仕切って各ヘッドボード2に設けられた他の寝床1からの目覚め準備用照明群3からの光を遮蔽することでも良く、該パーティションの側面に隣設されたそれぞれの寝床1に対応して目覚め用照明群6を設けても良い。
【0027】
上記目覚め準備用照明群3と目覚め用照明群6とは制御手段となる制御部4により図5に示す所定の時間−照度曲線12a,12bに従って制御される。
【0028】
寝床1には、該寝床1において睡眠中の人の体温を測定する体温測定手段となる体温測定シート7が敷設されており、該体温測定シート7により測定された体温に基づいて、図3に示す睡眠曲線作成手段となる睡眠曲線作成部8によりその寝床1において睡眠中の各人の睡眠曲線を作成する。
【0029】
寝床1において睡眠中の人の体温は体温測定シート7により測定され、その測定データが記憶手段となる記憶部9に随時記憶される。そして、記憶部9に記憶された測定データを横軸を時間、縦軸を体温として、図4に示す体温曲線を作成し、それを睡眠曲線として採用することが出来る。一晩の睡眠のなかで交互に繰り返して現れるレム睡眠中の体温は上昇し、ノンレム睡眠中の体温は下降することから、睡眠中の体温曲線が睡眠曲線10に一致するものである。
【0030】
11は変節点検出手段となる変節点検出部であり、睡眠曲線作成部8により作成された図4に示す睡眠曲線10においてレム睡眠カーブ10aからノンレム睡眠カーブ10bに移行する変節点10cが現れる時刻tを検出する。
【0031】
制御部4は、睡眠曲線作成部8により作成された図4に示す睡眠曲線10において、変節点検出部11により検出されたレム睡眠カーブ10aからノンレム睡眠カーブ10bに移行する変節点10cが現れる時刻tに基づいて目覚め準備用照明群3をONとする制御を行う。図4において、睡眠曲線10´は睡眠曲線10の変節点10cが現れる時刻tに基づいて目覚め準備用照明群3をONとしたことで、覚醒深度が全体的に上昇したことを示す。
【0032】
また各寝床1には、体温上昇手段となる電気あんか13が設けられており、制御部4により起床の1時間前から目覚め準備用照明群3のONと同時に電気あんか13をONとする制御が行なわれる。これにより、電気あんか13は覚醒のタイミングに合わせて制御され、体温の上昇を促すことで、睡眠中に下がっていた体温が上がり、快適な目覚めを促すことができる。
【0033】
図5に示すように、目覚め準備用照明群3がONされると、制御部4は該目覚め準備用照明群3の照度を徐々に上昇させる。記憶部9には予め自然な太陽光の日の出から目覚めまでの照度の時間変化を表す照度曲線データが格納されており、この照度曲線データに基づいて、目覚め準備用照明群3の時間−照度制御が行われる。図5中、12aは目覚め準備用照明群3による照度曲線を示す。
【0034】
睡眠曲線10の変節点10cが現れる時刻tから所定時間が経過した時刻tでヘッドボード2に設けた目覚め準備用照明群3を最大照度Lとし、時刻tから所定時間が経過した時刻tでナイトテーブル5に設けた目覚め用照明群6をONとする。図5中、12bは目覚め用照明群6による照度曲線を示す。目覚め用照明群6の照度はLで示す。
【0035】
上記構成によれば、隣設された他の寝床1のヘッドボード2に設けられた目覚め準備用照明群3からの光をナイトテーブル5により遮蔽することが出来、起床時間が異なる他の目覚め準備用照明群3の影響を受けることがなく、安眠妨害を受けることが無い。
【0036】
また、予め設定された起床時間に対応して、目覚めの準備段階として、制御部4によりレム睡眠からノンレム睡眠に移行する時点で目覚め準備用照明群3をONとすると共に所定の時間−照度曲線に応じて該目覚め準備用照明群3の照度を徐々に大きくし、起床時間前の所定のタイミングで目覚め用照明群6をONとして快適に目覚めることが出来る。
【0037】
また、体温測定シート7により測定された睡眠中の体温に基づいて睡眠曲線作成部8により睡眠曲線10を作成することが出来る。
【0038】
そして、睡眠曲線作成部8により作成された睡眠曲線10において、体温が上昇するレム睡眠から体温が下降するノンレム睡眠に移行する変節点10cが現れる時刻tで制御部4により目覚め準備用照明群3をONとすることで快適な目覚めを促すことが出来る。
【0039】
また、寝床1に敷いた体温測定シート7により睡眠中の体温を測定することにより、寝相に関係なく、また意識することなく確実に体温を測定でき、安眠が保たれる。尚、体温測定手段としては、リストバンドなどに体温計を取り付けたものや、人体より離れて皮膚温を測定できる非接触温度計を採用することも出来る。
【0040】
これにより、同室で複数人が睡眠を取る場合に照明コントロールによって心地良く目覚めることが出来、且つ起床のタイミングをずらすことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の活用例として、複数の寝床が並設された場合にそれぞれの就寝時間が異なっても快適な目覚めが出来る寝室照明システムに適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る寝室照明システムの構成を示す配置図である。
【図2】(a)はヘッドボードに設けられた目覚め準備用照明群の一例を示す図、(b)はナイトテーブルに設けられた目覚め用照明の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る寝室照明システムの制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】睡眠曲線作成手段により作成された睡眠曲線の一例を示す図である。
【図5】制御手段により目覚め準備用照明群と目覚め用照明群の照度を制御する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1…寝床
2…ヘッドボード
3…目覚め準備用照明群
4…制御部
4a…タイマー
5…ナイトテーブル
6…目覚め用照明群
7…体温測定シート
8…睡眠曲線作成部
9…記憶部
10…睡眠曲線
10a…レム睡眠カーブ
10b…ノンレム睡眠カーブ
10c…変節点
11…変節点検出部
12a,12b…照度曲線
13…電気あんか

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の寝床のそれぞれのヘッドボードに設けた目覚め準備用照明群と、
隣設される前記寝床の間に設けられ、前記ヘッドボードに設けられた他の寝床からの目覚め準備用照明群からの光を遮蔽するナイトテーブルと、
前記ナイトテーブルの両側面に設けられ、完全な覚醒を促すと共に目覚めた際に生体リズムをリセットする目覚め用照明群と、
前記目覚め準備用照明群と前記目覚め用照明群とを制御する制御手段と、
を有することを特徴とする寝室照明システム。
【請求項2】
前記寝床において睡眠中の人の体温を測定する体温測定手段と、
前記体温測定手段により測定された体温に基づいて睡眠曲線を作成する睡眠曲線作成手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記睡眠曲線作成手段により作成された睡眠曲線においてレム睡眠からノンレム睡眠に移行する時点で前記目覚め準備用照明群をONとすることを特徴とする請求項1に記載の寝室照明システム。
【請求項3】
前記制御手段により覚醒のタイミングに合わせて制御され、体温の上昇を促す体温上昇手段を有することを特徴とする請求項1に記載の寝室照明システム。
【請求項4】
前記体温測定手段は、前記寝床に敷いた体温測定シートであることを特徴とする請求項2に記載の寝室照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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