説明

寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器

【課題】徘徊者の寝床及び車椅子からの起きあがりを素早く検知し、位置決めが容易で荷重を安定して検知し、介護ベッドの背上げ動作や人体の荷重による繰り返しの屈曲にも劣化しない耐久性を向上した徘徊者の寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器を提供する。
【解決手段】 寝床及び車椅子座面に配置され気体又は液体を密封した検知マットと、この検知マットに一端を接続した連通管と、この連通管の他端に接続し気体又は液体の圧力を計測する圧力計測器と、前記圧力計測器の計測値が設定値に達したときに通報信号を送出する通報信号送出器と、前記設定値は任意に調節可能とする感度調節器と、からなる寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報するようにしたものである。位置決めが容易で検知性能が向上し、繰り返し荷重や屈曲にも劣化しない耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徘徊者等の寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の徘徊者等の寝床からの離床を検知する徘徊通報器は、寝床の横の床面に接触スイッチ式検知マットを敷設して、徘徊者が検知マットを踏むとスイッチが入り、遠方の介護者に通報する方法(例えば、特許第3627044号、及び特願2001−362379号参照)や、又は車椅子からの立ち上がりを検知する徘徊通報器は、車椅子の座面にスイッチを敷設して、対象者が起きあがり荷重が減るとスイッチが入り、遠方の介護者に通報するものである。(例えば、特願2000−360333号参照)。
【0003】
また、図10により従来の検知マットについて説明する。図において、90は検知マットの外カバーで、内部に電極板A91と電極板B92及び、電極板A91と電極板B92の間に絶縁体93が配設されている。絶縁体93は部分的に空間部94が設けている。電極板A91と電極板B92は電線が配設されコネクタ95に接続されている。コネクタ95はコール及びブザー96に接続されている。人体等の荷重がかかると電極板A91と電極板B92が空間部94で接触してオン信号を送出する接触式スイッチである。
【0004】
【特許文献1】特許第3627044
【0005】
【特許文献2】特願2001−362379
【0006】
【特許文献3】特願2000−360333
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上の技術によれば、寝床の横床面に敷く検知マットの場合は、患者がベッドから降りて足を検知マットの上に置いた時に検知するので、発見が遅くなりベッドから転落する等の事故が起きる危険性があった。また、介護ベッドのマットレスの上に敷いて体重を検知する方法の場合は、検知マットの電極部が弾力性絶縁材を介した接触式のため、動作値の調節ができず、頭部や腰部等の検知マットに当たる部分で荷重が異なるため敷設位置の設定が難しい問題点があった。また、従来の検知マットは電極板が接触する構造のため、介護ベッドの背上げ動作や人体の荷重により検知マットが繰り返し屈曲することで接触部が劣化し、耐久性が短いという問題点があった。
【0008】
本発明は、徘徊者の寝床及び車椅子からの起きあがりを素早く検知し、位置決めが容易で荷重を安定して検知し、介護ベッドの背上げ動作や人体の荷重による繰り返しの屈曲にも劣化しない耐久性を向上した徘徊者の寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器を提供することの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、寝床及び車椅子座面に配置され気体又は液体を密封した検知マットと、この検知マットに一端を接続した連通管と、この連通管の他端に接続し気体又は液体の圧力を計測する圧力計測器と、前記圧力計測器の計測値が設定値に達したときに通報信号を送出する通報信号送出器と、前記設定値は任意に調節可能とする感度調節器と、を構成とし、検知マットの圧力を計測し設定値を任意に調節可能にしたことにより、性能を向上した寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器を実現したものである。
【0010】
本発明の検知マットは、寝床の敷布団やマットレスの下に敷設し、又は車椅子の座面の上に敷設するものであって、袋状、筒状、網状に形成されたものである。
本発明の気体又は液体は、気体として空気、窒素ガス、アルゴンガスであり、液体として水、粘調液、ゲル状物である。
【0011】
また、上記検知マットは上面と対面の一部を貼り合わせる構造や、該貼り合わせ部に穴を設けることで、さらに性能を向上することができる。
本発明の設定値を任意に調節可能にするとは、対象者の部分的な身体の荷重、検知マットにおける位置により変化する値に対応できるように感度を設定することである。
本発明の寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器は、車椅子の座面又は寝床に配置する気体又は液体を密封した検知マットと、この検知マットに一端を接続した連通管と、この連通管の他端に接続し気体又は液体の圧力を計測する圧力計測器と、この圧力計測器の計測値が設定値に達したときに通報信号を送出する通報信号送出器と、前記設定値は任意に調節可能とする感度調節器と、を有することを特徴とする。
本発明の検知マットは袋状の検知マットであって、その上面と下面の一部を貼り合わせたことを特徴とする寝床及び車椅子からの起きあがりを検知し通報する徘徊通報器に含まれる。
前記の検知マットの貼り合わせ部に穴を設けることを特徴とするものも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、検知マットの内圧を計測し設定値に達したときに通報信号を送出し、該設定値は任意に調節可能にすることで、身体の荷重や検知マットの位置に左右されずに設定が可能となり、設置は容易で検知精度が向上する利点がある。また、検知マットは気体又は液体を密封しただけの簡単な構造で接触部がないため、介護ベッドの背上げ動作や人体の荷重による繰り返しの屈曲にも劣化しない耐久性を向上する利点がある。
【0013】
請求項2によれば、検知マットの上面と対面の一部を貼り合わせることで、検知マットの内圧の分布や伝搬が変化するので、身体の局所的な荷重の検知が向上する利点がある。
【0014】
請求項3によれば、検知マットの上面と対面の一部を貼り合わせて、該貼り合わせ部に穴を設けることで、通気を向上することができるので発汗等の蒸れを解消することができる。
体重の荷重変化の検知が確実で耐久性も向上する利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1、図2は本発明の一実施例の構成図である。図において、10は検知マットで、20は連通管、30は制御部で、制御部30は圧力測定部31,感度調節器32と感度調節ツマミ321、タイマー回路部33とタイマー調節ツマミ331,通報信号送出部34、外部通報接続口35で構成されている。検知マット10は袋状の密封容器でビニル樹脂等の柔軟性の材料で製作され内部には空気が密封される。連通管20の一方は検知マット10の端部の内空101に連通するように設けられ、連通管20の他方は制御部30の圧力測定部31に接続され、検知マット10の内部圧力は圧力測定部31に連通されている。圧力測定部31は検知マット10の内部圧力の変化を検知し、該圧力値を測定する。感度調節器32は、通報信号を送出するための値を設定するもので、圧力測定部31で測定した圧力値と感度調節器32で設定した値を比較して、設定値より以上、又は以下になると通報信号を送出する。感度調節器32は感度調節ツマミ321により任意の値に設定することができる。タイマー回路部33は、送出された通報信号の出力時間を制御するためのタイマーでありタイマー調節ツマミ331により任意に設定される。タイマー回路部33の設定時間を遅延して通報信号送出部34より外部通報接続口35を介してコール又はブザー40へ通報信号が送出される。制御部30は電源コンセント50により電源を供給される。
【実施例2】
【0017】
図3、図4、図5は、本発明の一実施例のベッドでの使用例を示す。ベッド70のベース板72の上にマットレス71を置き、マットレス71の上に対象者60が寝ている。マットレス71の下に検知マット10を置き、該検知マット10の内部圧力は、連通管20により制御部30の圧力測定部31に連通されている。制御部30の外部通報接続口35は、コール又はブザー40に接続されている。検知マット10は、対象者60の背部や腰部等の身体の荷重を受ける位置に置いている。対象者60が寝ているときは、身体の荷重を受けて検知マット10の圧力は上昇し圧力測定部31の圧力測定値31aが感度調節器32の設定値32a以上になる。圧力測定値31aが設定値32aを超えているときは通報信号を送出しない。図4に示すように、対象者60が起きあがると、検知マット10にかかる身体の荷重が減少し圧力測定値31aが設定値32aの値以下になり通報信号を送出し、タイマー回路部33の設定時間を経過して通報信号送出部34より外部通報接続口35を介してコール又はブザー40へ通報信号が送出される。これにより対象者が起きあがったことを介護者等に直ちに通報して見守りを行うことができる。
【実施例3】
【0018】
図6は、本発明の一実施例のベッドでの別な使用例を示す。ベッド70の上にマットレス71を置き、マットレス71の上に対象者60が寝ている。マットレス71の下の両脇に検知マット11を置き、他の接続は前記実施例2と同様である。検知マット11は、対象者の身体の荷重を受けない位置に置いている。対象者60が寝ているときは、身体の荷重を受けないため検知マット11の圧力は低く、圧力測定部31の圧力測定値31aは感度調節器32の設定値32a以下になる。本使用例では、圧力測定値31aが設定値32a以下のときは通報信号を送出しないように設定している。対象者60がベッド70から降りるためにベッド脇に移動又は腰掛けると、検知マット11にかかる荷重が上昇し圧力測定値31aが設定値32aの値以上になり通報信号を送出する。タイマー回路部33の設定時間を経過して通報信号送出部34より外部通報接続口35を介してコール又はブザー40へ通報信号が送出される。これにより対象者が起きあがったことを介護者等に直ちに通報して見守りを行うことができる。
【実施例4】
【0019】
図7は、本発明の一実施例の車椅子での使用例を示す。車椅子80の座面シート81の上に検知マット12を置き、その上にクッション82を置いている。他の接続は前記実施例2と同様である。対象者が車椅子80に座ると身体の荷重を受けて検知マット12の圧力は上昇し圧力測定部31の圧力測定値31aが感度調節器32の設定値32a以上になる。圧力測定値31aが設定値32aを超えているときは通報信号を送出しない。対象者60が起きあがると、検知マット12にかかる荷重が減少し圧力測定値31aが設定値32aの値以下になり通報信号を送出する。タイマー回路部33の設定時間を経過して通報信号送出部34より外部通報接続口35を介してコール又はブザー40へ通報信号が送出される。これにより対象者が起きあがったことを介護者等に直ちに通報して見守りを行うことができる。
【実施例5】
【0020】
図8、図9は、本発明の一実施例の検知マットの構造を示す。検知マット10、11,12は、軟質の樹脂やゴムの材料を使用し、袋状の密封容器になっている。部分的に上面と対面を貼り合わせた貼り付け部102を設けて袋が広がらないようにして内部圧力の分散を防止するようにしている。また、貼り付け部に穴103を設けることで、空気の流れを作り発汗等による寝具の蒸れを防止している。
【0021】
以上の実施の形態によれば、対象者が起きあがると検知マットにかかる荷重が変化するので素早く検知し通報することができる。また、空気を封入した検知マットの封入量の加減と感度調節器の調節で任意に感度調節ができるので、対象者の体重や検知場所に応じて容易にセットができ、軟質性の検知マットで内部圧力を検知する方式なので、従来の接触スイッチ式の検知マットに比較して人体の荷重や介護ベッドの背上げ動作等による繰り返しの屈曲に対して劣化がなく耐久性が格段に向上する。
[他の実施形態]
【0022】
図1の実施形態では、検知マットをビニル樹脂製等の柔軟性の材質としたが、ゴムや密封処理した布地でも良くその材質は問わない。また、検知マットの内部への封入物は空気だけでなく、他の気体や液体で良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。(実施例1)
【図2】本発明の一実施例の構造を示す断面図である。(実施例1)
【図3】介護ベッドでの使用例を示す説明図である。(実施例2)
【図4】介護ベッドでの使用例を示す説明図である。(実施例2)
【図5】介護ベッドでの使用例を示す説明図である。(実施例2)
【図6】介護ベッドでの使用例を示す説明図である。(実施例3)
【図7】車椅子での使用例を示す説明図である。(実施例4)
【図8】本発明の一実施例の構造を示す断面図である。(実施例5)
【図9】本発明の一実施例の構造を示す断面図である。(実施例5)
【図10】従来技術を示す検知マットの構造図である。
【符号の説明】
【0024】
10、11,12 検知マット
101 検知マットの内空
102 検知マットの貼り合わせ部
103 検知マットの穴
20 連通管
30 制御部
31 制御部に内蔵した圧力測定部
32 制御部に内蔵した感度調節器
321 感度調節ツマミ
33 制御部に内蔵したタイマー回路部
331 タイマー調節ツマミ
34 制御部に内蔵した通報信号送出部
35 外部通報接続口
40 コール又はブザー
50 電源
60 対象者
70 ベッド
71 マットレス
72 ベース板
80 車いす
81 座面シート
82 クッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の座面又は寝床に配置する気体又は液体を密封した検知マットと、この検知マットに一端を接続した連通管と、この連通管の他端に接続し気体又は液体の圧力を計測する圧力計測器と、この圧力計測器の計測値が設定値に達したときに通報信号を送出する通報信号送出器と、前記設定値は任意に調節可能とする感度調節器と、を有することを特徴とする寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器。
【請求項2】
前記検知マットが袋状の検知マットであって、その上面と下面の一部を貼り合わせたことを特徴とする請求項1に記載の寝床及び車椅子からの起きあがりを検知し通報する徘徊通報器。
【請求項3】
前記検知マットの貼り合わせ部に穴を設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の寝床及び車椅子からの起き上がりを検知し通報する徘徊通報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−330960(P2006−330960A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151877(P2005−151877)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(502131442)株式会社徳永装器研究所 (9)
【Fターム(参考)】