説明

寸法測定装置、寸法測定方法及び寸法測定装置用のプログラム

【課題】 低倍率視野内のワークを高倍率視野内へ自動搬送してワークの寸法を高い精度で測定することができる寸法測定装置を提供する。
【解決手段】 XY方向に移動可能な可動ステージ12と、特徴量情報及び測定箇所情報を保持する測定設定データ記憶手段と、ワークWを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像手段と、特徴量情報に基づいて、低倍率画像におけるワークWの位置及び姿勢を特定するワーク検出手段と、特定された位置及び姿勢に基づいて、ワークWの測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、可動ステージ12を制御するステージ制御手段と、高倍率視野内に移動した測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像手段と、測定箇所情報に基づいて、高倍率画像から測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出手段と、抽出されたエッジに基づいて、測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出手段により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寸法測定装置、寸法測定方法及び寸法測定装置用のプログラムに係り、さらに詳しくは、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定する寸法測定装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、寸法測定装置は、ワークを撮影したワーク画像のエッジに基づいてワークの寸法を測定する装置であり、画像測定器と呼ばれることもある(例えば、特許文献1〜3)。通常、ワークは、X,Y及びZ軸方向に移動可能な可動ステージ上に載置される。可動ステージをZ軸方向に移動させることにより、ワーク画像のピント合わせが行われ、X,Y軸方向に移動させることにより、ワークの視野内への位置調整が行われる。
【0003】
ワーク画像は、可動ステージのZ軸方向の位置に関わらず、ワークに対して極めて正確な相似形であることから、画像上で距離や角度を判定することにより、ワーク上における実際の寸法を検知することができる。この様な寸法測定装置を用いてワークの寸法を測定する場合、撮影倍率を高くすれば、測定精度を上げることができる。しかし、撮影倍率を高くすると、視野が狭くなってステージ上の撮影領域が小さくなることから、ワークを撮影領域内に配置しづらいという問題があった。そこで、高倍率撮影と低倍率撮影とを切り替え可能とし、低倍率撮影されたワーク画像の画面表示を閲覧しながら、ワークの姿勢調整や高倍率視野内への位置調整を行うことが考えられる。しかしながら、従来の寸法測定装置では、撮影倍率の切り替えやワークの姿勢調整、位置調整を手動で行わなければならず、寸法測定のための操作手順が煩雑であるとともに、寸法測定に長い時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−300124号公報
【特許文献2】特開2009−300125号公報
【特許文献3】特開2010−19667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低倍率視野内のワークを高倍率視野内へ自動搬送してワークの寸法を高い精度で測定することができる寸法測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
特に、低倍率視野内であれば、可動ステージ上の任意の位置に任意の姿勢でワークを配置しても、所望の寸法を高い精度で測定することができる寸法測定装置を提供することを目的とする。また、寸法測定のための操作手順を簡素化しつつ、測定精度を向上させることができるとともに、寸法測定に要する時間を短縮することができる寸法測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、寸法測定のための操作手順を簡素化しつつ、ワークの寸法を高い精度で測定することができるとともに、寸法測定に要する時間を短縮することができる寸法測定方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上述した様な寸法測定装置として端末装置を機能させる寸法測定装置用のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明による寸法測定装置は、低倍率視野が形成されるとともに、上記低倍率視野よりも狭い高倍率視野が上記低倍率視野内に形成され、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定する寸法測定装置であって、XY方向に移動可能な可動ステージと、撮影画像からワークを検出するための特徴量情報、及び、測定対象として指定された測定対象箇所を示す測定箇所情報を保持する測定設定データ記憶手段と、上記低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像手段と、上記特徴量情報に基づいて、上記低倍率画像における上記ワークの位置及び姿勢を特定するワーク検出手段と、特定された位置及び姿勢に基づいて、上記ワークの上記測定対象箇所が上記高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを制御するステージ制御手段と、上記高倍率視野内に移動した上記測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像手段と、上記測定箇所情報に基づいて、上記高倍率画像から上記測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出手段と、抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出手段とを備えて構成される。
【0010】
この寸法測定装置では、可動ステージ上のワークを低倍率で撮影した低倍率画像によってワークの位置と姿勢を特定し、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように可動ステージを制御するので、低倍率視野内のワークを高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所を高倍率で撮影することができる。この様な構成により、低倍率視野内であれば、可動ステージ上の任意の位置に任意の姿勢でワークを配置しても、高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値が求められるので、所望の寸法を高い精度で測定することができる。また、低倍率視野内であればワークをどこにどの様な姿勢で配置しても高倍率で測定することができるので、寸法測定のための操作手順を簡素化しつつ、測定精度を向上させることができるとともに、寸法測定に要する時間を短縮することができる。
【0011】
第2の本発明による寸法測定装置は、上記構成に加え、上記高倍率撮像手段がマスターピースを高倍率で撮影したマスター画像に対し、測定対象箇所及び測定方法を指定し、上記測定箇所情報を生成する測定箇所情報生成手段と、上記低倍率撮像手段が上記マスターピースを低倍率で撮影したマスター画像に基づいて、照合用のパターン画像からなる上記特徴量情報を生成する特徴量情報生成手段とを備えて構成される。
【0012】
この様な構成によれば、マスターピースを高倍率で撮影したマスター画像に対して測定対象箇所や測定方法を指定するので、マスターピースと同じ形状のワークについて、測定したい箇所を高い精度で指定することができる。また、マスターピースを低倍率で撮影したマスター画像に基づいて照合用のパターン画像からなる特徴量情報を生成するので、ワークを低倍率で撮影した低倍率画像をパターン画像と照合することによって、マスターピースと同じ形状のワークについて、位置や姿勢を正確に特定することができる。
【0013】
第3の本発明による寸法測定装置は、上記構成に加え、上記ステージ制御手段が、上記高倍率視野内に収まりきらない2以上のワークが存在する場合に、これらのワークについて、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを順次に移動させるように構成される。
【0014】
この様な構成によれば、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように可動ステージを順次に移動させるので、高倍率視野内に収まりきらない複数のワークが存在する場合であっても、これらのワークを順繰りに高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値を得ることができる。
【0015】
第4の本発明による寸法測定装置は、上記構成に加え、上記ステージ制御手段が、同一のワークに対し上記高倍率視野内に収まりきらない2以上の測定対象箇所がある場合に、これらの測定対象箇所について、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを順次に移動させるように構成される。
【0016】
この様な構成によれば、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように可動ステージを順次に移動させるので、同一のワークに対して高倍率視野内に収まりきらない複数の測定対象箇所がある場合であっても、これらの測定対象箇所を順繰りに高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値を得ることができる。
【0017】
第5の本発明による寸法測定装置は、上記構成に加え、上記エッジ抽出手段が、上記測定箇所情報において低倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所について、上記低倍率画像に基づく当該測定対象箇所のエッジ抽出を行い、上記ステージ制御手段が、上記測定箇所情報において高倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所について、当該測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを移動させるように構成される。
【0018】
この様な構成によれば、高倍率視野内に収まりきらない測定対象箇所の寸法を低倍率で測定し、高倍率視野内に収まる測定対象箇所については、高倍率で測定して高精度の寸法値を得ることができる。
【0019】
第6の本発明による寸法測定方法は、低倍率視野が形成されるとともに、上記低倍率視野よりも狭い高倍率視野が上記低倍率視野内に形成され、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定する寸法測定方法であって、撮影画像からワークを検出するための特徴量情報、及び、測定対象として指定された測定対象箇所を示す測定箇所情報を記憶する測定設定データ記憶ステップと、上記低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像ステップと、上記特徴量情報に基づいて、上記低倍率画像における上記ワークの位置及び姿勢を特定するワーク検出ステップと、特定された位置及び姿勢に基づいて、上記ワークの上記測定対象箇所が上記高倍率視野内に収まるように、XY方向に移動可能な可動ステージを制御するステージ制御ステップと、上記高倍率視野内に移動した上記測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像ステップと、特定された位置及び姿勢、並びに、上記測定箇所情報に基づいて、上記高倍率画像から上記測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出ステップと、抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出ステップとを備えて構成される。
【0020】
第7の本発明による寸法測定装置用のプログラムは、低倍率視野が形成されるとともに、上記低倍率視野よりも狭い高倍率視野が上記低倍率視野内に形成され、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定するためのプログラムであって、撮影画像からワークを検出するための特徴量情報、及び、測定対象として指定された測定対象箇所を示す測定箇所情報を記憶する測定設定データ記憶手順と、上記低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像手順と、上記特徴量情報に基づいて、上記低倍率画像における上記ワークの位置及び姿勢を特定するワーク検出手順と、特定された位置及び姿勢に基づいて、上記ワークの上記測定対象箇所が上記高倍率視野内に収まるように、XY方向に移動可能な可動ステージを制御するステージ制御手順と、上記高倍率視野内に移動した上記測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像手順と、特定された位置及び姿勢、並びに、上記測定箇所情報に基づいて、上記高倍率画像から上記測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出手順と、抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出手順とからなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による寸法測定装置では、低倍率視野内であれば、可動ステージ上の任意の位置に任意の姿勢でワークを配置しても、高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値が求められるので、所望の寸法を高い精度で測定することができる。また、低倍率視野内であればワークをどこにどの様な姿勢で配置しても高倍率で測定することができるので、寸法測定のための操作手順を簡素化しつつ、測定精度を向上させることができるとともに、寸法測定に要する時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明による寸法測定方法では、低倍率視野内であればワークをどこにどの様な姿勢で配置しても高倍率で測定することができるので、寸法測定のための操作手順を簡素化しつつ、ワークの寸法を高い精度で測定することができるとともに、寸法測定に要する時間を短縮することができる。
【0023】
また、本発明による寸法測定装置用のプログラムでは、上述した様な寸法測定装置として端末装置を機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態による寸法測定装置1の一構成例を示した斜視図である。
【図2】図1の測定ユニット10内の構成例を模式的に示した説明図であり、測定ユニット10を鉛直面により切断した場合の切断面が示されている。
【図3】図2のリング照明ユニット130の構成例を示した図である。
【図4】図1の寸法測定装置1の動作の一例を示したフローチャートである。
【図5】図1の寸法測定装置1における測定設定データの作成時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図6】図1の寸法測定装置1において形成される撮影視野の一例を示した図であり、低倍率視野の境界線A1、高倍率視野の境界線A2及び視野中心A3が示されている。
【図7】図1の寸法測定装置1における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、マスターピースを撮影したマスター画像M1,M2が示されている。
【図8】図1の寸法測定装置1における測定時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図9】図1の寸法測定装置1における測定時の動作の一例を示した図であり、ワークWを撮影したワーク画像W1,W2が示されている。
【図10】図1の寸法測定装置1における測定結果の表示時の動作の一例を示した図であり、測定結果が配置されたワーク画像W2が示されている。
【図11】図1の寸法測定装置1における測定時の動作の他の一例を示した図である。
【図12】図1の制御ユニット20の構成例を示したブロック図であり、制御ユニット20内の機能構成の一例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<寸法測定装置1>
図1は、本発明の実施の形態による寸法測定装置1の一構成例を示した斜視図である。この寸法測定装置1は、可動ステージ12上に配置されたワークを撮影し、その撮影画像を解析してワークの寸法を測定する画像測定器であり、測定ユニット10、制御ユニット20、キーボード31及びマウス32により構成される。ワークは、その形状や寸法が測定される測定対象物である。
【0026】
測定ユニット10は、ワークに照明光を照射し、当該ワークを透過した透過光又は当該ワークによって反射された反射光を受光して撮影画像を生成する光学系ユニットであり、ディスプレイ11、可動ステージ12、XY位置調整つまみ14a、Z位置調整つまみ14b、電源スイッチ15及び測定開始ボタン16が設けられている。
【0027】
ディスプレイ11は、撮影画像や測定結果、測定条件の設定画面を画面表示する表示装置である。可動ステージ12は、測定対象のワークを載置するための載置台であり、概ね水平で平坦な載置面内に照明光を透過させる検出エリア13が形成されている。検出エリア13は、透明ガラスからなる円形状の領域である。この可動ステージ12は、撮影軸と平行なZ軸方向と、撮影軸に垂直なXYの各軸方向とに移動させることができる。
【0028】
XY位置調整つまみ14aは、可動ステージ12をX軸方向及びY軸方向に移動させるための操作部である。Z位置調整つまみ14bは、可動ステージ12をZ軸方向に移動させるための操作部である。電源スイッチ15は、測定ユニット10及び制御ユニット20の電源をオン又はオフするための操作部であり、測定開始ボタン16は、寸法測定を開始させるための操作部である。
【0029】
制御ユニット20は、測定ユニット10のディスプレイ11や可動ステージ12を制御し、測定ユニット10により撮影されたワーク画像を解析してワークの寸法を算出するコントローラである。キーボード31及びマウス32は、制御ユニット20に接続されている。電源オン後、検出エリア13内にワークを適当に配置して測定開始ボタン16を操作すれば、ワークの寸法が自動的に測定される。
【0030】
<測定ユニット10>
図2は、図1の測定ユニット10内の構成例を模式的に示した説明図であり、測定ユニット10を鉛直面により切断した場合の切断面が示されている。この測定ユニット10は、ディスプレイ11、可動ステージ12、ステージ駆動ユニット110、透過照明ユニット120、リング照明ユニット130、同軸落射照明用光源141、受光レンズユニット150、撮像素子155及び158により構成される。
【0031】
ディスプレイ11や可動ステージ12は、筐体10a外に配置され、ステージ駆動ユニット110、透過照明ユニット120、リング照明ユニット130、同軸落射照明用光源141、受光レンズユニット150、撮像素子155及び158は、筐体10a内に収容されている。また、ステージ駆動ユニット110や透過照明ユニット120は、可動ステージ12の下側に配置され、リング照明ユニット130、同軸落射照明用光源141、受光レンズユニット150、撮像素子155及び158は、可動ステージ12の上側に配置されている。
【0032】
この測定ユニット10では、可動ステージ12の検出エリア13内に配置されたワークに照明光を照射し、その透過光又は反射光を受光して撮像素子155,158に結像させることにより、ワーク画像が取得される。このワーク画像を解析することにより、ワークの寸法が測定され、測定結果をディスプレイ11上に表示することができる。可動ステージ12上のワークは、異なる撮影倍率で撮影することができる。例えば、直径25mm程度の撮影エリアを撮影視野とする低倍率撮影と、直径6mm程度の撮影エリアを撮影視野とする高倍率撮影とを選択することができる。ワークを低倍率で撮影した低倍率画像と、高倍率で撮影した高倍率画像とは、電子的に切り替えてディスプレイ11上に表示することができる。
【0033】
ステージ駆動ユニット110は、制御ユニット20からの制御信号に基づいて、可動ステージ12を移動させる駆動ユニットであり、Z駆動部111及びXY駆動部112からなる。Z駆動部111は、可動ステージ12をZ軸方向に所定の範囲内で移動させて、ワークの撮影軸方向の位置を調整するためのZ位置調整手段である。XY駆動部112は、可動ステージ12をX軸方向及びY軸方向に所定の範囲内で移動させて、ワークの撮影エリア内の位置を調整するためのXY位置調整手段である。
【0034】
透過照明ユニット120は、可動ステージ12の検出エリア13内に配置されたワークに対し、照明光を下側から照射するための照明装置であり、透過照明用光源121、ミラー122及び光学レンズ123からなる。透過照明用光源121から出射された透過照明光は、ミラー122により反射され、光学レンズ123を介して出射される。この透過照明光は、可動ステージ12を透過し、その透過光の一部は、ワークにより遮断され、他の一部が受光レンズユニット150に入射する。透過照明は、ワークの外形や貫通孔の内径を測定するのに適している。
【0035】
リング照明ユニット130は、可動ステージ12上のワークに対し、照明光を上側から照射するための落射照明装置であり、受光レンズユニット150の受光部を取り囲むリング状の光源からなる。このリング照明ユニット130は、分割点灯が可能な照明装置であり、全周にわたって点灯させたり、一部のみを点灯させることができる。
【0036】
同軸落射照明用光源141は、可動ステージ12上のワークに対し、撮影軸と略同軸の出射光軸を有する照明光を上側から照射するための光源である。受光レンズユニット150内には、照明光の出射光軸と撮影軸とを分岐するためのハーフミラー142が配置されている。落射照明は、段差を有するワークの寸法を測定するのに適している。ワークの照明方法としては、透過照明、リング照明又は同軸落射照明を選択することができる。特に、測定したい箇所やワークごとに照明方法を自動的に切り替えて寸法測定を行うことができる。
【0037】
受光レンズユニット150は、受光レンズ151、ハーフミラー152、絞り板153,156、結像レンズ154及び157からなる光学系であり、透過照明光やワークによる反射光を受光して撮像素子155,158に結像させる。受光レンズ151は、可動ステージ12に対向させて配置され、低倍率撮影及び高倍率撮影に使用される共通の対物レンズである。この受光レンズ151は、ワークのZ軸方向の位置が変化しても、像の大きさを変化させない性質を有し、テレセントリックレンズと呼ばれる。
【0038】
絞り板153及び結像レンズ154は、低倍側結像レンズ部であり、受光レンズ151と同軸に配置されている。結像レンズ154は、撮像素子155に対向させて配置された光学レンズである。
【0039】
一方、絞り板156及び結像レンズ157は、高倍側結像レンズ部であり、ハーフミラー152によって高倍率撮影軸が低倍率撮影軸から分岐されている。結像レンズ157は、撮像素子158に対向させて配置された光学レンズである。
【0040】
撮像素子155は、受光レンズユニット150により形成される低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成するための低倍率用のイメージセンサである。撮像素子158は、受光レンズユニット150により形成される高倍率視野内のワークを高倍率で撮影し、高倍率画像を生成するための高倍率用のイメージセンサである。高倍率視野は、低倍率視野よりも狭い撮影視野であり、低倍率視野内に形成される。
【0041】
撮像素子155,158は、いずれもCCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)などの半導体素子からなる。
【0042】
この寸法測定装置1では、可動ステージ12の検出エリア13内であれば、ワークをどこにどの様な姿勢で配置しても、低倍率視野で捉えられ、低倍率画像を解析して可動ステージ12をX軸方向又はY軸方向に移動させることにより、高倍率視野内へ自動搬送される。
【0043】
図3は、図2のリング照明ユニット130の構成例を示した図である。このリング照明ユニット130は、円周上に配置された4つの発光ブロック131からなり、発光ブロック131を任意に選択して点灯させることができる。
【0044】
寸法測定時にいずれの発光ブロック131を点灯させるかは、測定箇所情報において指定することができる。特に、同一のワークWに対する複数の測定対象箇所を測定する場合に、これらの測定対象箇所ごとに点灯させる発光ブロック131を指定することができる。
【0045】
<寸法測定装置1の動作>
図4のステップS101〜S103は、図1の寸法測定装置1の動作の一例を示したフローチャートである。この寸法測定装置1では、その動作が3つのプロセス、すなわち、測定設定データの作成(ステップS101)、測定の実行(ステップS102)及び測定結果の表示(ステップS103)からなる。
【0046】
測定設定データは、測定の実行に必要な情報であり、特徴量を示す特徴量情報、測定対象箇所や測定種別を示す測定箇所情報、測定対象箇所ごとの設計値や公差を示す設計値情報からなる。特徴量情報は、ワーク画像を解析してワークの位置や姿勢を検出するための位置決め用の情報であり、所定のマスターデータに基づいて設定される。なお、特徴量情報、測定箇所情報が高倍率画像に基づいて設定されたものである場合には、その旨を示す識別情報が測定設定データとして保持される。
【0047】
測定設定データは、制御ユニット20において作成される。或いは、PC(パーソナルコンピュータ)などの情報処理端末において作成された測定設定データを制御ユニット20に転送して用いるような構成であっても良い。測定処理は、この様な測定設定データに基づいて実行される。そして、測定結果の表示処理は、測定によって得られた寸法値や良否判定の結果をディスプレイ11上に表示することにより行われる。
【0048】
<測定設定データの作成>
図5のステップS201〜S205は、図1の寸法測定装置1における測定設定データの作成時の動作の一例を示したフローチャートである。この図には、制御ユニット20において測定設定データを作成する場合が示されている。
【0049】
測定設定データの作成処理は、以下に示す5つの処理手順からなる。まず、設計データの入力が行われる(ステップS201)。設計データの入力では、特徴量の設定や輪郭比較に用いるマスターデータが取得される。マスターデータは、マスターピースを撮影した撮影画像、或いは、CAD(Computer Aided Design)により作成されたCADデータやCAD画像からなる。ここでは、マスターデータとして、マスターピースを撮影して得られたマスター画像を用いた場合の例を説明する。
【0050】
次に、特徴量の設定が行われる(ステップS202)。特徴量の設定は、マスター画像に基づいて、特徴量情報や測定範囲を設定することにより行われる。次に、撮影倍率の設定が行われる(ステップS203)。撮影倍率の設定では、ステップS202で設定した特徴量に対し、低倍率の寸法測定又は高倍率の寸法測定のいずれかが指定され、その撮影倍率情報が特徴量に対応づけて保持される。複数の特徴量が設定されている場合には、特徴量ごとに、撮影倍率情報が対応づけられる。
【0051】
次に、測定対象箇所及び測定種別の指定が行われる(ステップS204)。具体的には、ディスプレイ11上に表示されたマスター画像に対し、測定対象とする位置、エッジ検出領域及び測定方法を指定することにより行われる。
【0052】
エッジ検出領域は、領域内の画像データについて、輝度変化を解析してエッジを抽出するための画像処理領域である。測定種別の指定では、何をどの様にして測定するのかという測定方法が選択される。測定対象箇所及び測定種別の指定が完了すれば、マスター画像に対する寸法測定が実行される。すなわち、マスター画像に対し、測定対象箇所のエッジ抽出を行い、指定された測定方法で測定対象箇所の寸法値が算出される。寸法値の測定結果は、例えば、マスター画像上に表示される。
【0053】
次に、設計値及び公差の設定が行われる(ステップS205)。設計値及び公差の設定では、表示された測定対象箇所ごとの寸法値が必要に応じて変更され、設計値として設定される。また、設計値に関連付けて公差が設定される。この様にして作成された測定設定データは、制御ユニット20内のメモリに書き込まれる。
【0054】
<撮影視野>
図6は、図1の寸法測定装置1において形成される撮影視野の一例を示した図であり、低倍率視野の境界線A1、高倍率視野の境界線A2及び視野中心A3が示されている。この境界線A1は、円形状からなり、可動ステージ12上の撮影エリアを表している。可動ステージ12が基準位置にあれば、低倍率撮影エリアは、検出エリア13と一致する。
【0055】
高倍率視野は、低倍率視野よりも狭く、低倍率視野と視野中心A3を略一致させて形成されている。この様な低倍率視野内であれば、可動ステージ12上の任意の位置に任意の姿勢でワークWを配置しても良い。
【0056】
<マスター画像>
図7は、図1の寸法測定装置1における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、マスターピースを撮影したマスター画像M1,M2が示されている。この図は、透過照明により撮影した場合が示され、図中の(a)には、低倍率で撮影したマスター画像M1が示され、(b)には、高倍率で撮影したマスター画像M2が示されている。
【0057】
マスターピースは、測定対象のワークWと同じ形状の基準物である。マスター画像M1は、ワークWを低倍率で撮影した低倍率画像内におけるワークWの位置や姿勢を特定するのに用いられる。例えば、マスター画像M1からマスターピースの輪郭線M11,M12を抽出することによって、ワークWの低倍率画像と照合させるためのパターン画像が作成される。
【0058】
マスター画像M2は、測定対象箇所や測定方法を指定するのに用いられる。例えば、マスター画像M2に対し、エッジ検出領域M21を指定することができる。なお、ワークWを高倍率で撮影した高倍率画像内におけるワークWの位置や姿勢を高い精度で特定するのにマスター画像M2を用いても良い。
【0059】
<測定処理>
図8のステップS301〜S315は、図1の寸法測定装置1における測定時の動作の一例を示したフローチャートである。ワークWが可動ステージ12上に配置され、測定開始ボタン16などの操作によって測定実行が指示されれば、まず、可動ステージ12上のワークWを低倍率で撮影することにより、低倍率画像が取得される(ステップS301)。
【0060】
次に、この低倍率画像を特徴量情報として予め登録されたパターン画像と照合することにより、ワークWの位置や姿勢などの配置状態が特定される(ステップS302)。このとき、低倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所があれば、当該測定対象箇所について、寸法測定が実行される(ステップS303)。
【0061】
具体的には、ワークWの配置状態と、予め登録された測定箇所情報に基づいて、測定対象箇所を特定してエッジ抽出が行われる(ステップS305)。そして、抽出した測定対象箇所のエッジに基づいて、測定対象箇所の寸法値が算出される(ステップS306)。
【0062】
さらに、算出した寸法値と設計値情報として予め登録された設計値との差分から誤差を求め、誤差を対応する公差と比較することにより(ステップS307)、測定対象箇所ごとの良否判定やワークWの良否判定が行われる(ステップS308)。
【0063】
次に、高倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所があれば、当該測定対象箇所について、寸法測定が実行される(ステップS304)。具体的には、ワークWの配置状態及び測定箇所情報に基づいて、ワークWの測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、可動ステージ12をX軸方向又はY軸方向へ移動させ(ステップS309)、高倍率視野内に移動した測定対象箇所を高倍率で撮影することにより、高倍率画像が取得される(ステップS310)。そして、ワークWの配置状態及び測定箇所情報に基づいて、測定対象箇所を特定してエッジ抽出を行い(ステップS311)、抽出した測定対象箇所のエッジに基づいて、測定対象箇所の寸法値が算出される(ステップS312)。
【0064】
さらに、算出した寸法値と設計値との差分から誤差を求め、誤差を対応する公差と比較することにより(ステップS313)、測定対象箇所ごとの良否判定やワークWの良否判定が行われる(ステップS314)。
【0065】
ステップS309からステップS314までの処理手順は、高倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所のうち、高倍率視野内に収まりきらない測定対象箇所が他にあれば繰り返される(ステップS315)。
【0066】
<ワーク画像>
図9は、図1の寸法測定装置1における測定時の動作の一例を示した図であり、ワークWを撮影したワーク画像W1,W2が示されている。図中の(a)には、低倍率で撮影したワーク画像W1が示され、(b)には、高倍率で撮影したワーク画像W2が示されている。
【0067】
ワーク画像W1を特徴量情報として登録されたパターン画像と照合することにより、当該ワーク画像W1内におけるワークWの位置及び姿勢が特定される。この様な配置状態の検出結果に基づいて可動ステージ12を制御することにより、ワークWが高倍率視野内へ自動搬送され、測定対象箇所の高倍率画像としてワーク画像W2が取得される。
【0068】
図10は、図1の寸法測定装置1における測定結果の表示時の動作の一例を示した図であり、測定結果が配置されたワーク画像W2が示されている。ワーク画像W2から測定対象箇所のエッジを抽出することにより、当該測定対象箇所の寸法値が算出される。
【0069】
寸法値などの測定結果は、ワーク画像W2と共にディスプレイ11上に表示させることができる。この例では、寸法値「1.789mm」や寸法線が測定対象箇所に対応づけてワーク画像W2上に配置されている。
【0070】
図11は、図1の寸法測定装置1における測定時の動作の他の一例を示した図であり、低倍測定及び高倍測定が順次に実行される様子が示されている。図中の(a)には、低倍率撮影したワーク画像W1が示され、(b)には、低倍測定された寸法値を付加したワーク画像W1が示され、(c)には、高倍測定された寸法値を付加したワーク画像W2が示されている。
【0071】
測定対象のワークWに高倍率視野内に収まりきらない測定対象箇所がある場合、その様な測定対象箇所は、測定方法として低倍率の寸法測定を指定する必要がある。低倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所については、低倍率のワーク画像W1を解析することにより、寸法値が求められる。
【0072】
一方、高倍率視野内に収まる測定対象箇所については、高倍率のワーク画像W2を解析することによって、寸法値を高い精度で求めることができる。
【0073】
<制御ユニット20>
図12は、図1の制御ユニット20の構成例を示したブロック図であり、制御ユニット20内の機能構成の一例が示されている。この制御ユニット20は、撮影制御部201、測定箇所情報生成部202、特徴量情報生成部203、測定設定データ記憶部204、ワーク検出部205、ステージ制御部206、エッジ抽出部207、寸法値算出部208、良否判定部209及び測定結果表示部210により構成される。
【0074】
撮影制御部201は、測定ユニット10、キーボード31及びマウス32からの操作入力に基づいて、測定ユニット10の撮像素子155,158や照明ユニット120,130,141を制御するための撮影制御信号を生成し、測定ユニット10へ出力する。
【0075】
特徴量情報生成部203は、撮影画像からワークWを検出するための特徴量情報を生成し、測定設定データとして測定設定データ記憶部204内に格納する。この特徴量情報は、照合用のパターン画像からなり、所定のマスターピースを低倍率で撮影したマスター画像に基づいて生成される。
【0076】
測定箇所情報生成部202は、操作入力に基づいて、測定対象箇所及び測定方法からなる測定箇所情報を生成し、測定設定データとして測定設定データ記憶部204内に格納する。この測定箇所情報は、マスターピースを高倍率で撮影したマスター画像に対し、測定対象箇所や測定種別、照明方法を指定することによって生成される。
【0077】
測定設定データ記憶部204には、測定設定データとして、特徴量情報、測定箇所情報及び設計値情報が保持される。特徴量情報は、ワーク画像内のワークWについて、その位置や姿勢などの配置状態を検出するのに用いられる照合用の特徴情報であり、パターンマッチング用のパターン画像、幾何形状相関サーチ用の幾何形状情報、ワークWの特徴点を示す特徴点情報からなる。設計値情報は、測定対象箇所ごとに設定された設計値や設計値に関連付けられた公差からなる。
【0078】
ワーク検出部205は、特徴量情報に基づいて、低倍率のワーク画像W1におけるワークWの位置及び姿勢を特定する。具体的には、ワーク画像W1を照合用のパターン画像と比較することにより、ワークWの位置や姿勢が判定される。
【0079】
ステージ制御部206は、ワーク検出部205により特定された位置及び姿勢と、測定箇所情報に基づいて、ワークWの測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、可動ステージ12を制御するためのステージ制御信号を生成し、測定ユニット10へ出力する。具体的には、測定箇所情報において高倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所について、当該測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、可動ステージ12を移動させる。
【0080】
ステージ制御部206では、高倍率視野内に収まりきらない複数のワークWが存在する場合に、これらのワークWについて、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、可動ステージ12を順次に移動させる。また、同一のワークWに対し高倍率視野内に収まりきらない複数の測定対象箇所がある場合には、これらの測定対象箇所について、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、可動ステージ12を順次に移動させる。高倍率のワーク画像W2は、測定対象箇所が高倍率視野内に移動した時点で自動取得される。
【0081】
エッジ抽出部207は、ワーク検出部205により配置状態が特定されたワークWについて、その配置状態と測定箇所情報とから測定対象箇所を特定し、ワーク画像から測定対象箇所のエッジを抽出する。その際、測定箇所情報において低倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所については、低倍率のワーク画像W1から測定対象箇所のエッジ抽出を行い、高倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所については、高倍率のワーク画像W2から測定対象箇所のエッジ抽出を行う。エッジ抽出は、測定箇所情報で指定されたエッジ検出領域内の画像データについて、隣接する画素間における輝度値の変化を解析することによって行われる。
【0082】
寸法値算出部208は、エッジ抽出部207により抽出されたエッジに基づいて、測定対象箇所の寸法値を算出し、良否判定部209へ出力する。具体的には、エッジ抽出により得られる複数のエッジ点について、最小2乗法などの統計的手法を用いてこれらのエッジ点に直線や円弧などの幾何学図形をフィッティングさせれば、ワークWの輪郭線を特定することができる。測定対象箇所として、例えば、ワークWの輪郭における平行な2つの直線部を指定すれば、これらの直線間の距離が寸法値として算出される。また、直線部と特徴点とを指定すれば、直線及び特徴点間の距離が寸法値として算出される。また、傾きの異なる2つの直線部を指定すれば、これらの直線間の角度が寸法値として算出される。また、円の一部(円弧)又は全部を測定対象箇所として指定すれば、円の直径や半径、中心座標が寸法値として算出される。
【0083】
良否判定部209は、寸法値算出部208により算出された寸法値と対応する設計値との差分を対応する公差と比較することにより、測定対象箇所ごとの寸法値の良否判定と、ワークWの良否判定を行う。寸法値の良否判定は、寸法値と設計値との差分(誤差)が公差範囲内であるか否かを判別することにより行われる。また、ワークWの良否判定は、測定対象箇所ごとの寸法値の良否判定の結果に基づいて行われる。
【0084】
測定結果表示部210は、寸法値や寸法値の良否判定の結果をワーク画像W2上に表示するための画面データを生成し、測定ユニット10へ出力する。寸法値などの測定結果は、寸法測定のために取得したワーク画像W2のうちのいずれかを任意に指定して表示させることができる。
【0085】
本実施の形態によれば、低倍率視野内であれば、可動ステージ12上の任意の位置に任意の姿勢でワークWを配置しても、高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値が求められるので、所望の寸法を高い精度で測定することができる。また、低倍率視野内であればワークWをどこにどの様な姿勢で配置しても高倍率で測定することができるので、寸法測定のための操作手順を簡素化しつつ、測定精度を向上させることができるとともに、寸法測定に要する時間を短縮することができる。
【0086】
また、マスターピースを高倍率で撮影したマスター画像M2に対して測定対象箇所や測定方法を指定するので、マスターピースと同じ形状のワークWについて、測定したい箇所を高い精度で指定することができる。また、マスターピースを低倍率で撮影したマスター画像M1に基づいて照合用のパターン画像からなる特徴量情報を生成するので、ワークWを低倍率で撮影した低倍率画像をパターン画像と照合することによって、マスターピースと同じ形状のワークWについて、位置や姿勢を正確に特定することができる。
【0087】
さらに、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように可動ステージ12を順次に移動させるので、高倍率視野内に収まりきらない複数のワークWが存在する場合であっても、これらのワークWを順繰りに高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値を得ることができる。また、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように可動ステージ12を順次に移動させるので、同一のワークWに対して高倍率視野内に収まりきらない複数の測定対象箇所がある場合であっても、これらの測定対象箇所を順繰りに高倍率視野内へ自動搬送して測定対象箇所の寸法値を得ることができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、マスターピースを低倍率で撮影したマスター画像M1から照合用のパターン画像を作成し、このパターン画像とワーク画像W1とを比較することによってワークWの位置及び姿勢が特定される場合の例について説明したが、本発明はこの様な構成に限定されるものではない。例えば、マスターピースを高倍率で撮影したマスター画像M2から照合用のパターン画像を作成し、このパターン画像と高倍率のワーク画像W2とを比較することによって、ワークWの位置決めを高い精度で行うようなものであっても良い。つまり、エッジ抽出の精度を向上させるために、マスター画像M2から得られるパターン画像を用いて、ワーク画像W2におけるワークWの位置及び姿勢を再度特定するような構成であっても良い。
【0089】
また、本実施の形態では、低倍率撮影と高倍率撮影とが電子的に切り替えられる場合の例について説明したが、本発明は撮影倍率の切り替え方法をこれに限定するものではない。例えば、可動ステージ12側の受光レンズ(対物レンズ)を機械的に切り替えるいわゆるレボルバ式のものも本発明には含まれる。すなわち、絞り板、結像レンズ及び撮像素子からなる1組の結像ユニットに対し、低倍率撮影用の受光レンズと高倍率撮影用の受光レンズとからなる対物レンズユニットを回転させることにより、低倍率撮影及び高倍率撮影を切り替えるような構成であっても良い。
【符号の説明】
【0090】
1 寸法測定装置
10 測定ユニット
10a 筐体
110 ステージ駆動ユニット
111 Z駆動部
112 XY駆動部
120 透過照明ユニット
121 透過照明用光源
122 ミラー
123 光学レンズ
130 リング照明ユニット
141 同軸落射照明用光源
142 ハーフミラー
150 受光レンズユニット
151 受光レンズ
152 ハーフミラー
153,156 絞り板
154,157 結像レンズ
155 低倍率撮影用の撮像素子
158 高倍率撮影用の撮像素子
11 ディスプレイ
12 可動ステージ
13 検出エリア
14a XY位置調整つまみ
14b Z位置調整つまみ
15 電源スイッチ
16 測定開始ボタン
20 制御ユニット
201 撮影制御部
202 測定箇所情報生成部
203 特徴量情報生成部
204 測定設定データ記憶部
205 ワーク検出部
206 ステージ制御部
207 エッジ抽出部
208 寸法値算出部
209 良否判定部
210 測定結果表示部
31 キーボード
32 マウス
A1 低倍率視野の境界線
A2 高倍率視野の境界線
A3 視野中心
M1,M2 マスター画像
M11,M12 輪郭線
M21 エッジ検出領域
W ワーク
W1,W2 ワーク画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低倍率視野が形成されるとともに、上記低倍率視野よりも狭い高倍率視野が上記低倍率視野内に形成され、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定する寸法測定装置において、
XY方向に移動可能な可動ステージと、
撮影画像からワークを検出するための特徴量情報、及び、測定対象として指定された測定対象箇所を示す測定箇所情報を保持する測定設定データ記憶手段と、
上記低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像手段と、
上記特徴量情報に基づいて、上記低倍率画像における上記ワークの位置及び姿勢を特定するワーク検出手段と、
特定された位置及び姿勢に基づいて、上記ワークの上記測定対象箇所が上記高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを制御するステージ制御手段と、
上記高倍率視野内に移動した上記測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像手段と、
上記測定箇所情報に基づいて、上記高倍率画像から上記測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出手段とを備えたことを特徴とする寸法測定装置。
【請求項2】
上記高倍率撮像手段がマスターピースを高倍率で撮影したマスター画像に対し、測定対象箇所及び測定方法を指定し、上記測定箇所情報を生成する測定箇所情報生成手段と、
上記低倍率撮像手段が上記マスターピースを低倍率で撮影したマスター画像に基づいて、照合用のパターン画像からなる上記特徴量情報を生成する特徴量情報生成手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の寸法測定装置。
【請求項3】
上記ステージ制御手段は、上記高倍率視野内に収まりきらない2以上のワークが存在する場合に、これらのワークについて、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを順次に移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の寸法測定装置。
【請求項4】
上記ステージ制御手段は、同一のワークに対し上記高倍率視野内に収まりきらない2以上の測定対象箇所がある場合に、これらの測定対象箇所について、測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを順次に移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の寸法測定装置。
【請求項5】
上記エッジ抽出手段は、上記測定箇所情報において低倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所について、上記低倍率画像に基づく当該測定対象箇所のエッジ抽出を行い、
上記ステージ制御手段は、上記測定箇所情報において高倍率の寸法測定が指定された測定対象箇所について、当該測定対象箇所が高倍率視野内に収まるように、上記可動ステージを移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の寸法測定装置。
【請求項6】
低倍率視野が形成されるとともに、上記低倍率視野よりも狭い高倍率視野が上記低倍率視野内に形成され、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定する寸法測定方法において、
撮影画像からワークを検出するための特徴量情報、及び、測定対象として指定された測定対象箇所を示す測定箇所情報を記憶する測定設定データ記憶ステップと、
上記低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像ステップと、
上記特徴量情報に基づいて、上記低倍率画像における上記ワークの位置及び姿勢を特定するワーク検出ステップと、
特定された位置及び姿勢に基づいて、上記ワークの上記測定対象箇所が上記高倍率視野内に収まるように、XY方向に移動可能な可動ステージを制御するステージ制御ステップと、
上記高倍率視野内に移動した上記測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像ステップと、
特定された位置及び姿勢、並びに、上記測定箇所情報に基づいて、上記高倍率画像から上記測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出ステップと、
抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出ステップとを備えたことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項7】
低倍率視野が形成されるとともに、上記低倍率視野よりも狭い高倍率視野が上記低倍率視野内に形成され、ステージ上のワークを異なる撮影倍率で撮影してワークの寸法を測定するための寸法測定装置用のプログラムにおいて、
撮影画像からワークを検出するための特徴量情報、及び、測定対象として指定された測定対象箇所を示す測定箇所情報を記憶する測定設定データ記憶手順と、
上記低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率撮像手順と、
上記特徴量情報に基づいて、上記低倍率画像における上記ワークの位置及び姿勢を特定するワーク検出手順と、
特定された位置及び姿勢に基づいて、上記ワークの上記測定対象箇所が上記高倍率視野内に収まるように、XY方向に移動可能な可動ステージを制御するステージ制御手順と、
上記高倍率視野内に移動した上記測定対象箇所を高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率撮像手順と、
特定された位置及び姿勢、並びに、上記測定箇所情報に基づいて、上記高倍率画像から上記測定対象箇所のエッジを抽出するエッジ抽出手順と、
抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を求める寸法値算出手順とからなることを特徴とする寸法測定装置用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−159409(P2012−159409A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19767(P2011−19767)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】