説明

対戦用走行玩具

【課題】 簡単な動作で勝敗が決まる面白い対戦用走行玩具を提供する。
【解決手段】 対戦用走行玩具20は、玩具本体30と、玩具本体30に設けられる走行手段と、玩具本体30の上に取り付けられる人形体21と、を有する。玩具本体30の前部には、前下方に傾斜する傾斜部55と、傾斜部55の前部に設けられると共に前下方に向けて先細り、他の走行玩具と走行面の間に突入して他の走行玩具を転倒させるための突入部56とが設けられる。玩具本体30の下部には、他の走行玩具の突入部を側方から突入させる隙間部58が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対戦用走行玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の人形体を闘わせて優劣を競う玩具が知られている。このような対戦用玩具として、各種の技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、2個の人形体(玩具本体)を用いた玩具対戦システムが開示される。人形体の主要素である胴体部材は、人形体を移動させるための車輪と、相手を攻撃するための左腕および右腕と、前面に設けられる可動板と、可動板の動きに連動して飛び出す頭部と、を有する。左腕あるいは右腕による攻撃が可動板に当たると、頭部が飛び出すようになっており、使用者は、人形体を移動させながら相手の可動板を左腕や右腕で攻撃して、拳闘遊びを楽しむ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−79964号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、単純で面白い玩具が求められており、簡単な動作で勝敗が決まる対戦用玩具が望まれている。しかしながら、特許文献1に開示される玩具においては、勝敗が決まるまでに、玩具本体の移動、腕部による攻撃、頭部の飛び出しを含む多数の動作を必要とする。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な動作で勝敗が決まる面白い対戦用走行玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対戦用走行玩具は、走行手段が設けられた玩具本体を有する対戦用走行玩具であって、玩具本体の前部には、前方に向けて先細り形状を有する突入部が設けられ、玩具本体の下部には、側方に開放し、他の対戦用走行玩具の突入部が突入可能である隙間部が設けられる。
【0008】
本発明の対戦用走行玩具において、玩具本体から側方に突出する突出部を有し、突出部は、他の対戦用走行玩具とすれ違うときに他の対戦用走行玩具の突出部と当接することが好ましい。また、本発明の対戦用走行玩具において、突入部よりも前方に延びる棒部を有し、棒部は、他の対戦用走行玩具の突出部に当接可能であることが好ましい。また、本発明の対戦用走行玩具において、走行手段を駆動するための電池を有し、電池は、前記玩具本体の上下方向中心よりも高い位置に配置されることが好ましい。また、本発明の対戦用走行玩具において、走行手段を駆動するための電池を有し、電池は、玩具本体の左右方向中心に対し、左右いずれかの側にずらして配置されることが好ましい。また、本発明の対戦用走行玩具において、走行手段は、左右の車輪で構成され、車輪は、玩具本体の幅寸法内に収まるように配置されることが好ましい。また、本発明の対戦用走行玩具において、玩具本体の前部は、平面視で外側に湾曲して形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な動作で勝敗が決まる面白い対戦用走行玩具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる実施形態の対戦用走行玩具を用いた対戦システムの全体構成図である。
【図2】本発明にかかる実施形態の対戦用走行玩具の斜視図である。
【図3】対戦用走行玩具の側面図である。
【図4】対戦用走行玩具の背面図である。
【図5】対戦用走行玩具の平面図である。
【図6】対戦用走行玩具の底面図である。
【図7】突出部の形状を説明する図であり、(a)は図4のA矢視図、(b)〜(d)は変形例を示す図であり、(a)のB−B線断面に相当する図である。
【図8】対戦用走行玩具の作用説明図であり、(a)は衝突前の2個の走行玩具を示す図、(b)は突入部と隙間部を拡大して示す図、(c)は衝突後の2個の走行玩具を示す図である。
【図9】突出部の作用説明図であり、(a)は衝突前の2個の走行玩具を示す図、(b)は衝突後の2個の走行玩具を示す図である。
【図10】前壁の丸みの作用を説明する図である。
【図11】(a)は対戦用走行玩具の変更例の構成を説明する図、(b)は棒部の作用を説明する図である。
【図12】対戦用走行玩具の他の変更例の構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、前後・左右は、対戦用走行玩具の進行方向に対する前後・左右とする。
【0012】
本発明にかかる対戦用走行玩具を含む対戦システム10は、台11と、台11の走行面12を走行する複数(ここでは2個)の対戦用走行玩具20,20Aと、を有する。走行玩具20,20Aは、たとえば、無線操縦されるいわゆるラジコンである。
【0013】
対戦システム10では、複数の使用者がそれぞれの送信機13,13Aを操作して走行玩具20,20Aを移動させ、相手の走行玩具20,20Aに接触させたり衝突させたりする。たとえば、所定時間内に走行玩具20,20Aを転倒させることで、勝敗を決める(相手の走行玩具を転倒させた者が勝者)という設定である。なお、相手の走行玩具20,20Aを台12から落としたり、相手の人形体21,21Aを落としたりすることで、勝敗や優劣を決めることもできる。
【0014】
走行玩具20の構成を図2〜図6に基づいて詳細に説明にする。なお、走行玩具20Aについては、走行玩具20と基本構成が同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
図2に示すように、走行玩具20は、玩具本体30と、玩具本体30の上に交換可能に取り付けられるキャラクタを模した人形体21と、を有する。玩具本体30は、箱状のシャーシ40と、シャーシ40を上から覆うボディ50と、ボディ50から側方に突出する左右の突出部31と、送信機13(図1参照)からの無線信号を受信するアンテナ22と、を有する。玩具本体30は、たとえば、直進(矢印(1)で示す方向)および信地旋回(矢印(2)で示す方向)が可能であり、所望の位置に移動可能である。
【0016】
図3に示すように、シャーシ40の下部には、走行手段(ここでは、左右1対の車輪41)が設けられる。車輪41は、シャーシ40の後部寄りに設けられ、電動モータ等の駆動手段(図示省略)により駆動される。また、車輪41の前側には、走行面12に対してシャーシ40の前部を支持する支持部(たとえば、走行面を摺動する摺動部材や一般的な従動輪など)42が設けられる。なお、走行手段は、車輪に格別に限定されるものではなく、走行面12に対して走行玩具20を移動できる手段であれば、構成は任意である。
【0017】
また、シャーシ40には、駆動手段に電力を供給する電池(たとえば乾電池)43および電池ボックス(図示省略)が設けられる。電池43および電池ボックスは、玩具本体30の上下方向中心C1よりも高い位置に配置されることが好ましい。すなわち、走行玩具20の構成品の中でも比較的質量の大きい電池43を高い位置に配置することで、走行玩具20の重心位置が高くなるため、走行玩具20が不安定になり、転倒し易くなる。
【0018】
なお、シャーシ40の一部分(たとえば、上部や下部など)を取り外し可能に構成し、この部分を蓋体として用いることにより、電池43を交換したりシャーシ40内に各種の構成部品を組み込んだりすることができる。
【0019】
ボディ50は、シャーシ40に着脱自在に取り付けられる。ボディ50は、下方に開放した略箱状を呈し、シャーシ40の上面を覆う上壁51と、シャーシ40の側面を覆う側壁52と、シャーシ40の前面を覆う前壁53と、シャーシ40の背面を覆う後壁54と、を有する。上壁51からは、支持体32が上方に延びる。支持体32の先端部32aには、人形体21の所定箇所(ここでは人形体21の腰部付近)が着脱自在に取り付けられる。
【0020】
前壁53は、前下方に傾斜する傾斜部55を有する。傾斜部55の前下部には、他の走行玩具20A(図1参照)の下部を側方からえぐるように突入する突入部56が設けられる。突入部56は、前下方に向けて先細り、その尖鋭な先端56aは、走行面12に近接する。他の走行玩具20A(図1参照)の下に突入し易くするため、突入部56および傾斜部55に、側面視で内側に湾曲する丸みR1を設けることが好ましい。また、先端56aの走行面12からの高さ位置P1は、側壁52の下縁57の高さ位置P2(あるいはシャーシの下面44の高さ位置P3)よりも低く設定することが好ましい。
【0021】
図4に示すように、玩具本体30の下部には、側方に開放する隙間部58が形成される。隙間部58は、走行玩具20と走行面12の間に形成される空間であって、側壁の下縁57からシャーシの下面44にかけて形成される。この隙間部58には、他の走行玩具の突入部56A(図1参照)が突入可能である。
【0022】
左右の側壁52は、下方に行くに従って左右方向に拡がる形態であることが好ましい。たとえば、側壁52に、内側に湾曲する丸みR2を設け、左右の側壁52の下部の幅寸法W1を上部の幅寸法W2より大きく設定する。これにより、下縁57がやや外向きに形成されるので、他の走行玩具の突入部56A(図1参照)が隙間部58に入り易くなる。
【0023】
図5に示すように、電池43は、玩具本体30の左右方向中心C2に対し、左右いずれかの側(ここでは、矢印(3)で示す左側)にずらして配置してもよい。このように、質量の大きい電池43の重心を左右方向中心C2に対して偏心させると、電池43を配置した側に走行玩具20が転倒し易くなる。これにより、電池43を配置した側とは反対側の側部を、衝突に弱い弱点とすることができる。
【0024】
前壁53の下縁59は、平面視で外側に湾曲するように形成されることが好ましい。たとえば、下縁59を平面視で先方に向けて先細るように略V字状に形成する。そして、突入部56の先端56aに丸みR3を設け、先端56aの左右両側の縁部にも丸みR4を設ける。なお、丸みR3,R4の大きさは、任意に設定可能である。なお、前壁53と同様に、後壁54の下縁61に丸みR5,R6を設けてもよい。
【0025】
図6に示すように、左右の車輪41は、玩具本体30の幅寸法内に収まるように配置されることが好ましい。ここでは、左右の車輪41の幅寸法W3をボディ50の幅寸法W4(より好ましくは、シャーシ40の幅寸法W5)よりも小さく設定する。このように車輪41の幅を狭く設定することで、走行玩具20は、左右方向の転倒角度が小さくなり転倒し易くなる。
【0026】
次に、突出部31の構成を図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、突出部31は、略円盤状であり、他の走行玩具とすれ違うときに他の走行玩具の突出部31A(図1参照)と当接する。この突出部31は、矢印(4)で示す下半部側のみの形態(略半円盤状)に形成してもよい。このように半円盤状に変更可能である点については、以下に述べる突出部31の変形例についても適用可能である。
【0027】
図7(b)に示すように、突出部31は、平面状の側面31aと、テーパ状の外周面31bとを組み合わせた円錐台状でもよい。また、図7(c)に示すように、突出部31は、外側に湾曲した凸曲面(たとえば球面)31cとテーパ状の外周面31dを組み合わせた形状でもよい。さらに、図7(d)に示すように、突出部31は、側面全体を凸曲面(たとえば球面)31eで形成した形状でもよい。なお、突出部31の形状は、これらの形状に限定されるものではなく、凹曲面状や多面体状など、走行玩具20に求められる仕様に応じて任意に変更可能である。また、突出部31の外周面や側面にローレット状の溝や筋等を設けてもよい。
【0028】
以上、説明した走行玩具20,20Aの作用を図8〜図10に基づいて説明する。図8(a)に示すように、走行玩具20の側部に向けて、他の走行玩具20Aが走行すると、図8(b)に示すように、他の走行玩具20Aの突入部56Aが隙間部58に側方から突入する。図8(c)に示すように、他の走行玩具20Aがさらに前進すると、突入部56Aが走行玩具20と走行面12の間をえぐるように突入する。すると、走行玩具20が傾斜部55Aに乗り上がって傾く。結果、矢印(5)に示す向きに、走行玩具20が転倒する。
【0029】
また、図9(a)に示すように、走行玩具20と他の走行玩具20Aがすれ違うと、図9(b)に示すように、突出部31と突出部31Aが衝突する。この衝突により、たとえば、突出部31が突出部31Aに跳ね返されたり乗り上げたりすると、走行玩具20は、自立安定性を失い、矢印(6)に示す向きに転倒する。
【0030】
このように作用する走行玩具20,20Aによれば、使用者は、突入部56,56Aあるいは突出部31,31Aを使って攻撃し、相手の走行玩具20,20Aを転倒させることができる。このように、勝敗が決まるまでの動作は、走行玩具20,20Aを走行させて相手の走行玩具20,20Aを転倒させる動作のみである。したがって、本実施形態によれば、簡単な動作で勝敗が決まる面白い玩具を提供することができる。
【0031】
また、図10に示すように、本実施形態では、前壁の下縁59を外側に湾曲するように形成した。これに対し、前壁の下縁を湾曲させずに直線状に形成することも可能である。しかし、前壁の下縁を直線状に形成すると、直線部や角部によって走行玩具の転倒が妨げられる。すなわち、走行玩具が転がりにくくなる。この点、本実施形態では、下縁59に丸みR3,R4を設けたので、走行玩具20が転倒時に走行面12を転がり易い。結果、走行玩具20をより容易に転倒させることができる。
【0032】
本実施形態の走行玩具によると、転倒しやすい形状になっており、走行玩具同士がぶつかった際にバランスが不安定となるため、操作者自身も実際に自分の走行玩具または対戦相手の走行玩具が転倒するまで、転倒するかしないかわからないという緊迫感をもって対戦に臨むことができ、より興趣性の高い対戦用走行玩具を提供することができる。
【0033】
続いて、本実施形態の変更例を図11に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、走行玩具70は、突入部56よりも所定長さLだけ前方に延びる棒部23を有する。棒部23は、相手の突出部31Aに当接可能である。図11(b)に示すように、棒部23の先端を突出部31Aに当てることで、相手の走行玩具20Aを矢印(7)の向きに転倒させることができる。この変更例によれば、使用者は、突入部56および突出部31による攻撃に加え、棒部23によっても相手の走行玩具20Aを攻撃することができる。
【0034】
次に、本実施形態の他の変更例を図12に基づいて説明する。
図12に示すように、走行玩具80は、ボディ50の上部に取り付け部33を設け、この取り付け部33に複数種の部品を着脱自在に取り付け可能としたものである。たとえば、使用者は、対戦内容に応じて、凸曲面状の部品34を取り付けたり、あるいは、部品34を外して棒部23(図11参照)を取り付けたりすることができる。これにより、使用者は、突入部56および突出部31による攻撃に加え、部品34や棒部23等の交換部品を使って、様々な対戦を楽しむことができる。
【0035】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
12 走行面
20,20A 対戦用走行玩具
23 棒部
30 玩具本体
31,31A 突出部
41 車輪(走行手段)
43 電池
56,56A 突入部
58 隙間部
70,80 対戦用走行玩具
C1 上下方向中心
C2 左右方向中心
W4 幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段が設けられた玩具本体を有する対戦用走行玩具であって、
前記玩具本体の前部には、前方に向けて先細り形状を有する突入部が設けられ、
前記玩具本体の下部には、側方に開放し、他の対戦用走行玩具の突入部が突入可能である隙間部が設けられることを特徴とする対戦用走行玩具。
【請求項2】
請求項1において、
前記玩具本体から側方に突出する突出部を有し、
前記突出部は、他の対戦用走行玩具とすれ違うときに他の対戦用走行玩具の突出部と当接する対戦用走行玩具。
【請求項3】
請求項2において、
前記突入部よりも前方に延びる棒部を有し、
前記棒部は、他の対戦用走行玩具の突出部に当接可能である対戦用走行玩具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記走行手段を駆動するための電池を有し、
前記電池は、前記玩具本体の上下方向中心よりも高い位置に配置される対戦用走行玩具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記走行手段を駆動するための電池を有し、
前記電池は、前記玩具本体の左右方向中心に対し、左右いずれかの側にずらして配置される対戦用走行玩具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、
前記走行手段は、左右の車輪で構成され、
前記車輪は、前記玩具本体の幅寸法内に収まるように配置される対戦用走行玩具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記玩具本体の前部は、平面視で外側に湾曲して形成される対戦用走行玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−66514(P2013−66514A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205238(P2011−205238)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【特許番号】特許第5044716号(P5044716)
【特許公報発行日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【Fターム(参考)】