説明

対照細胞を使用しない細胞生存率の測定方法

本発明は1つまたは複数の細胞死−安定タンパク質または酵素活性を検出することにより、培養細胞の生存率を測定する方法を提供する。本発明により提供される方法は、生存率を細胞培養物の細胞を含む画分および細胞を含まない画分における酵素活性の相対レベルに相関させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年11月9日に出願された米国特許出願第60/986,751号に対し優先権の恩典を主張し、その内容は全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は細胞生物学ならびに細胞培養および組織工学の分野に関する。より詳細には、本発明は、タンパク質または酵素活性を検出することにより培養細胞の生存率を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組織工学分野(Langer and Vacanti, Science, 260:920−926(1993)において概説されている)は、細胞の成長および維持を支持するためにマトリクスまたは足場の使用を軸として展開されている。例えば、マトリクス誘導自家軟骨細胞移植(MACI(登録商標)移植片)は、軟骨を修復するために使用される第二世代自家軟骨細胞移植(ACI)手順である。MACI(登録商標)移植片では、培養により拡張した軟骨細胞がコラーゲンベースの膜マトリクス上に播種され、これにより後の外科的移植が促進される。MACI(登録商標)移植片を使用して軟骨欠陥を、関節鏡により、または低侵襲手術により治療することができる。
【0004】
組織工学産物におけるマトリクスの使用は、工学産物の構成細胞の生存率を測定しようとする研究者に大きな課題を提示する。細胞生存率を測定する既存の方法は、生存細胞の2つの特徴の少なくとも1つ、すなわち無傷の細胞膜の存在および/またはそれらの代謝活性に頼っている。インビトロでは、細胞死の後、細胞膜完全性の損失が起こる。この現象は生体染色色素を使用し、顕微鏡下で容易に観察することができる。最も普通の生体染色色素アッセイ法では、トリパンブルー色素が細胞懸濁液に添加される。色素は無傷の膜を有する生存細胞から排除されるが、破壊された膜を有する死細胞または死にかけの細胞は染まる。また、細胞生存率は、細胞代謝活性の1つまたは複数のマーカーを測定することにより評価し得る。1つのそのようなアプローチは、生存細胞中には存在するが、死細胞では激減し、または存在しない主要な代謝産物(例えば、ATP、NADH)を定量するものである。相補的なアプローチは膜が損傷した細胞から放出される特異的な酵素活性をアッセイするものである。例えば、Cytox−Fluor細胞毒性アッセイ法(Promega, Madison, WI, Cat. No. G9260)は、内部でクエンチされた蛍光発生ペプチド基質ビス(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110を使用し、死細胞から放出されるトリペプチジルペプチダーゼなどのプロテアーゼを検出する。
【0005】
組織工学産物に適用する場合、ほとんどの既存の細胞生存率アッセイ法では、アッセイ前に細胞を単離する(回収する)必要がある。しかしながら、単離過程はしばしば複雑であり、時として過酷であり、決して100%有効ではない。その手順中に、生存細胞が損失し、または死亡すると、または死細胞が損失すると、測定アーチファクトが生じる可能性がある。例えば、トリパンブルー排除により評価される場合、回収細胞は常にほとんど100%の生存率を有し、それらの細胞が獲得された元の試料の真の生存率を反映することができない。最初に細胞を回収しない代謝活性に基づく生存率アッセイ法を使用しようという試みは、マトリクス干渉、非特異的結合、低い検出上限、不十分な範囲、または異なる培地型における精度の悪さのために同様に成功していない。さらに、既存の代謝活性に基づく細胞生存率アッセイ法は全て、試験試料の生存率を測定するために、既知の細胞数および生存率を有する陽性および/または陰性対照を必要とするという根本的な不利益を共有している。有効な比較をするために、対照および試験試料において使用される細胞は、同じドナーまたは株由来の同じ型の細胞でなければならず、また同じ代謝プロファイルを有しなければならない。このアプローチは、細胞が3次元マトリクス中に播種され、懸濁液中または2次元表面上で成長させた同じ細胞とはしばしば非常に異なる代謝プロファイルを獲得する組織工学産物には適用できない。さらに、多数のロットが毎日、生存率および品質管理のためにアッセイされる工業生産の実際では、余分な細胞を獲得し、適当な対照を調製することはしばしば実現不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移植される細胞の生存率は、組織工学産物を用いた治療の成功の主要な決定要因である。既存の生存率アッセイ法の欠点を鑑みて、組織工学産物中の細胞の生存率を測定する簡単で、迅速、かつ正確な方法が必要とされる。そのような方法は広範囲の細胞密度にわたって、多くの異なる細胞型、培地、およびマトリクスと共に機能しなければならない。さらに、そのような細胞生存率法は都合よく、対照細胞集団を必要とせずに機能する。
【0007】
本発明は、容易に、迅速に、かつ正確に、様々な条件下で、対照細胞を必要とせずに、細胞の生存率を測定する方法を提供する。本方法は、一部、培養した組織工学産物中の細胞の生存率が培養物の上清中に存在する培養細胞の1つまたは複数の酵素活性の割合を検出することにより決定することができるという知見に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
細胞死に続いて膜の完全性が損失すると、細胞膜により通常束縛されている細胞含有物が細胞培養上清中で検出可能になることが理論化されているが、本発明の目的のために、それに依存するものではない。本発明の方法は、細胞死−安定タンパク質または酵素、すなわち、生存細胞または死細胞中のどちらに存在しようと検出することができるタンパク質または酵素の検出に依存する。そのため、培養物の細胞生存率は、細胞を含まない条件培地(例えば、上清、または支持マトリクスまたは足場)および細胞を含む条件培地(例えば、膜が無傷な細胞および関連条件培地)中での細胞死−安定タンパク質または酵素の相対量を検出することにより決定することができる。細胞を含む条件培地中の細胞のみにおける細胞死−安定タンパク質または酵素の量は、膜が無傷な細胞の膜完全性を、例えば、部分または完全溶解により破壊し、細胞を含む部分(すなわち、破壊細胞および関連条件培地)中の総酵素活性を測定し、その後、関連条件培地により与えられた全ての酵素活性を減算することにより決定することができる。減算される値は、細胞を含まない条件培地をアッセイすることにより測定される。
【0009】
本発明の1つの態様は、細胞を含まない条件培地の部分(例えば、条件培地)における細胞死−安定タンパク質または酵素活性を検出し、細胞を含む培地の部分(例えば、細胞および条件培地)における細胞死−安定タンパク質または酵素活性を検出し、2つの部分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性のレベルを比較することにより、培養培地中で維持した細胞集団中の生存細胞の割合を測定するための方法を提供する。本方法によると、集団中の生存細胞の割合は、細胞を含む部分と細胞を含まない部分の間の細胞死−安定タンパク質または酵素活性の差に比例する。
【0010】
いくつかの実施形態では、アッセイする細胞は従来の二次元細胞培養基体、例えばガラスまたは組織培養プラスチック上で成長させてもよい。他の実施形態では、細胞は三次元足場またはマトリクス上または内で支持され、すなわち、細胞は組織工学産物の一部である。ある実施形態では、細胞はブタコラーゲン誘導マトリクス上で成長させる。
【0011】
ある実施形態では、本発明の方法はさらに、細胞集団および比例量の細胞を含まない条件培地の試料部分を提供する工程を含む。試料部分をその後、細胞を含む(すなわち、細胞+条件培地)および細胞を含まない(条件培地のみ)画分に分割し、本発明の方法に従い処理する。
【0012】
ある実施形態では、試料部分の細胞の膜完全性は、例えば、せん断、超音波処理、低気圧、高温、低温、化学もしくは酵素溶解、または膜デカップリング剤により破壊する。いくつかの実施形態では、膜完全性は、両親媒性分子の添加により破壊されてもよい。ある実施形態では、両親媒性物質はサポニンである。
【0013】
本発明の別の観点は、培養培地中で維持した1.5×10と6×10細胞/cmの間の細胞密度を有する組織工学産物のマトリクス中に存在する生存ヒト軟骨細胞の割合を測定するための方法を提供する。工程は、細胞および比例量の条件培地を含む組織工学産物の部分を提供する工程、組織工学産物の細胞を含まない条件培地の部分を提供する工程、サポニンおよびビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110をそれらの部分に添加する工程、および2つの部分において切断されたビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110由来の蛍光シグナルを検出する工程を含む。いくつかの実施形態では、Ala−Ala−Phe−AMC、または結合された脱離基を有する他の基質を、これらの方法においてビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110の代わりに使用することができる。組織工学産物中の生存細胞の割合は、細胞を含む部分と細胞を含まない部分との間の蛍光シグナル強度の差を両方の部分における蛍光シグナルの総量で割ったものに比例する。
【0014】
別の態様では、本発明は、培養細胞の試験集団に対する試験処理(例えば、薬理または生物化合物を用いた処理;または、例えば、オスモル濃度、pH、温度、もしくは気圧の様々な条件への暴露;または光、電気もしくは機械的処理;またはこれらの組み合わせ)の細胞毒性を決定する方法を提供する。本方法は、試験処理を試験集団に適用する工程、本発明の方法により試験集団中の生存細胞の割合を測定する工程、および試験集団の測定した生存率を培養細胞の未処理集団(「対照集団」)の生存率と比較する工程を含む。
【0015】
本発明の方法は、様々な細胞と共に様々な条件下で使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳類(例えば、ヒト、霊長類、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、または齧歯類)のものであってもよい。ある実施形態では、細胞はヒトのものである。任意の起源組織由来の細胞を本発明の方法で使用することができる。特定の実施形態では、細胞は軟骨細胞である。
【0016】
本発明の方法は広範囲の密度の細胞と共に使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は1.5×10から6×10細胞/cmの間の密度で存在する。他の実施形態では、細胞は2.2×10から2.8×10細胞/cmの間、3.5×10から2.8×10細胞/cmの間、または5×10から1×10細胞/cmの間の密度で存在し得る。ある実施形態では、細胞は、少なくとも2.0×10、5.0×10、1.0×10、2.0×10、2.8×10、3×10、4×10、5×10、6×10、8×10、10×10細胞/cmの高い密度で、またはさらに高い密度で存在し得る。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、細胞死−安定酵素活性は、試料部分を、検出可能な脱離基に結合された細胞死−安定酵素活性の基質と接触させ、その後、脱離基を検出することにより測定する。この方法により、検出された脱離基の量は試料部分に存在する細胞死−安定酵素活性レベルに比例する。様々な実施形態では、脱離基は、発色性、発光性、または蛍光性としてもよい。特定の実施形態では、脱離基は蛍光性である。ある実施形態では、脱離基はローダミン−110である。他の実施形態では、脱離基はクマリン誘導体、例えば、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)である。
【0018】
酵素活性のための基質は酵素により処理可能な任意の分子とすることができる。ある実施形態では、基質はトリペプチドである。いくつかの実施形態では、基質はビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110である。他の実施形態では、基質はAla−Ala−Phe−AMCである。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の方法はさらに、脱離基のシグナルを調節する(例えば、増強/増加させる、または減衰/減少させる)作用物質を添加する工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、作用物質は、少なくとも5、10、15、20、40、60、または80%だけ;または1、2、3、5、10、50、または100倍を超えて、シグナルを調節し得る。ある実施形態では、脱離基のシグナルを調節する作用物質は、脱離基のシグナルを減衰させることにより作用する。特定の実施形態では、脱離基のシグナルを減衰させる作用物質はフェノールレッドである。いくつかの実施形態では、フェノールレッドは、10、20、40、60、70、100、150、200mg/L、またはそれ以上までの濃度で存在してもよい。
【0020】
本発明の様々な実施形態では、検出される細胞死−安定酵素活性は、例えば、同化または異化であってもよく、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、イソメラーゼ、またはリガーゼであってもよい。いくつかの実施形態では、細胞死−安定酵素活性は、タンパク分解性であってもよく、例えば1つまたは複数のトリペプチジルペプチダーゼ、キモトリプシン、またはキモトリプシン−様酵素、例えばカルパインであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞死−安定タンパク質または酵素活性は、壊死、プログラム細胞死、または両方のいずれかの後に安定な(好ましくは、いずれかの型の細胞死の後に安定な)タンパク質または酵素活性である。他の実施形態では、細胞死−安定タンパク質または酵素活性は壊死に対し安定なタンパク質または酵素活性である。さらに別の実施形態では、細胞死−安定タンパク質または酵素活性はプログラム細胞死−安定タンパク質または酵素活性である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は品質管理アッセイ法を含むことができる。そのような実施形態では、本発明の方法はさらに、細胞を含むもしくは細胞を含まない部分、またはその両方のいずれかにおいて汚染物質特異的酵素活性を検出する工程を含んでもよい。汚染物質特異的酵素活性の検出は培養汚染を示す。
【0023】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付図面は本発明のいくつかの実施形態を示し、記載と共に、さらに本発明の原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】細胞生存率アッセイ法を示す概略図である。
【図2A】試料の細胞および上清中に存在する酵素活性が細胞集団密度に対して直線性を有することを示す実験のグラフ図である。
【図2B】試料の上清中に存在する酵素活性が細胞集団密度に対して直線性を有することを示す実験のグラフ図である。
【図3】開示したアッセイ法が正確に生存率を予測することを示す実験のグラフ図である。
【図4】フェノールレッドの添加が開示したアッセイ法の正確さに影響を与えないことを示す実験のグラフ図である。
【図5】開示したアッセイ法の正確さが別のマトリクスの使用により影響を受けないことを示す実験のグラフ図である。
【図6】開示したアッセイ法の正確さが、マトリクスが存在しないことにより影響を受けないことを示す実験のグラフ図であるである。
【図7】開示したアッセイ法の正確さが非ヒト細胞の使用により影響を受けないことを示す実験のグラフ図であるである。
【図8】開示したアッセイ法がローダミン以外の脱離基を有する基質を使用することができることを示す実験のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
単数形「1つの(“a”、“an”)」および「その(“the”)」は、特に文脈で明確に示されない限り、複数形を含む。
【0026】
別記しない限り、「約」という用語は±10%を意味する。
【0027】
本明細書で使用される「表面積」、例えば平方面積、cmは、基体の巨視的表面積、すなわち、二次元平面上への表面のZ軸投影を示す。
【0028】
本明細書で使用される「密度」は、単位面積または体積あたりのある物質、例えば、細胞または他の物体の平均数を意味する。本出願においては最もしばしば、密度は細胞密度、すなわち単位表面積あたりの細胞数と関連する。この平均量は、播種した細胞数を、それらを成長させる表面の巨視的表面積で割ることにより概算される。この定義は、二次元表面、ならびに三次元構造または格子の両方を意図する。
【0029】
本出願で使用される「培地」という用語は、培養中の細胞の成長または維持を支持する全ての成分を示す。これは、従来の液体細胞培養液および前記培地が含み得る任意の追加の因子を含んでもよい。これらの因子としては、例えば、血清、抗生物質、成長因子、薬理作用のある物質、緩衝液、pH指示薬などが挙げられる。培地は一般に、明確に別記しない限り、その上またはその中で細胞が維持され、または成長させられるいかなるマトリクスまたはサポートをも示すことはない。したがって、組織工学産物中では、マトリクスは典型的には細胞を含む部分の一部である。
【0030】
したがって、「細胞を含まない細胞培養培地の部分」は、培地の液体部分を含むが、細胞を含むマトリクスは含まない。同様に、「細胞を含む細胞培養培地の部分」は、単離した細胞またはマトリクス結合細胞のいずれかを、培地と共に含む。
【0031】
「条件培地」は、細胞と接触され、例えば、1つまたは複数の代謝産物、栄養分、または因子、例えば、1つまたは複数の細胞死安定タンパク質または酵素活性の取り込みまたは放出により、培地の組成が変更された培地を意味する。別記しない限り、条件培地は一般に、損傷した膜完全性を有する細胞から細胞死−安定タンパク質または酵素活性を収集するために細胞集団と接触している培地を意味する。
【0032】
本出願で使用される「検出可能な脱離基」は、酵素反応の進行をモニタするために使用し得る酵素反応の生成物を示す。
【0033】
「プロテオーム」は細胞群において発現された全てのタンパク質の組を意味する。
【0034】
本明細書における「組換え体」は、非天然生物分子、例えば、核酸、それらの転写または翻訳産物、または上記のいずれかを含む細胞を示す。
【0035】
酵素の「固有活性」は、そのVmax、すなわち、酵素の基質を処理する能力のみが制限され、反応条件がそれ以外は酵素活性に対し最適化されている場合の生成物生成速度を意味する。
【0036】
本出願で使用される「膜が無傷な」は、標準実験室条件下で色素トリパンブルーを排除することができることを意味する。
【0037】
「スケーリング係数」は、特定のアッセイ条件に対して決定された数値定数を意味する。
【0038】
本出願における「相対測定値」は、参照値の関数として量を表すこと、例えば1つの値をもう1つの割合として表すことを示す。
【0039】
本出願における「絶対測定値」は、ある程度の量の実際の数値を意味し、すなわち相対測定値ではない。
【0040】
例示的な実施形態
本発明は、試料の2つの画分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性の相対測定値に基づいて生存率を計算するための方法を提供する。生体染色色素アッセイ法とは異なり、マトリクスから細胞を回収する必要がない。したがって、本発明の方法では従来の方法に伴う測定アーチファクト、例えば、過程中の細胞の損失、生存率の過小評価または過剰評価が排除され得る。
【0041】
細胞生存率の決定
本発明は、培地中で維持した集団中の生存細胞の割合を測定する方法を提供する。これは、細胞を含まない条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性の量を、細胞を含む条件培地の部分における細胞死−安定タンパク質または酵素の量と比較することにより実施される。一般に、本発明の方法は3つの工程を含む:
(1)試料を2つの部分、細胞を含む部分(“X”)および細胞を含まない部分(“Y”)に分割する、
(2)細胞を含む部分(または細胞を含む部分から得られた試料)の細胞を溶解させる、および
(3)各部分(“X”および “Y”)における細胞死−安定タンパク質または酵素の量を検出または測定する。当業者であればこれらの測定値を様々な方法で細胞集団中の生存細胞の割合に変換することができる。
【0042】
1つの実施例では、条件培地を最初に同等に2つの部分(すなわち、半分)、すなわち細胞を含む部分(“X”)および細胞を含まない部分(“Y”)に分割する。図1で示され、実施例1で記載されているように、細胞を含む部分(“X”)が試料の条件培地の半分を有し、残りの半分が細胞を含まない部分(“Y”)中にある場合、画分生存率は単純にそれらの活性の差をそれらの和で割ったものとなり、すなわち、下記となる。
【数1】

この式の分子は、膜が無傷の細胞中に存在する酵素活性(細胞を含む部分、すなわち、細胞および条件培地中の量から、条件培地のみに存在する量を差し引く)であり、一方、分母は試料中に存在する酵素活性の総量である。試料の細胞を含む部分および細胞を含まない部分中に存在する測定酵素活性が500および50である場合、画分生存率は下記となる。
【数2】

【0043】
当然、本発明の方法の第1の工程では、試料中の条件培地は、細胞を含む部分と細胞を含まない部分との間で同等に分割する必要はない。試料中の総条件培地の画分が2つの部分で同等に分割されなかった場合、画分生存率は下記で与えられる。
【数3】

ここで、
【数4】

第1の式では、cはアッセイした細胞を含む部分中の条件培地の体積に対して、アッセイした細胞を含まない部分中の条件培地の体積を調整するスケーリング係数である。このスケーリング係数は、総試料条件培地のうちの、部分Y、すなわち細胞を含まない試料部分中に存在するものの非ゼロの割合fの関数である。例示的な実施例では、組織工学産物の試料を下記のように分割する。
(1)細胞および25%の試料条件培地を含む部分X;および
(2)細胞を含まず、75%の試料条件培地を含む部分Y。ここでは、cは以下のとおりである。
【数5】

測定した酵素活性がXおよびYに対し400および30である場合、
【数6】

となる。
【0044】
前記の論考は、本発明により提供された方法を使用して生存率を計算するための詳細な手段を含んだ。これは単にアッセイ法のためのみに成長させた培地においても、またはより大きな集団の生存率を推定する目的のためにも適用される。例えば、組織工学産物のための「ロットリリース」アッセイ法では、産物の構成細胞の生存率は、産物の試料(すなわち、生検)、および上を覆う条件培地のいくらかを取ることにより決定される。その最も簡単な形態では、産物の上を覆う総条件培地のパーセンテージおよび生検を行った産物の総表面積または体積(そのため、細胞)のパーセンテージは同じである。例えば、生検が約2%の産物の細胞を含む場合、産物の上を覆う条件培地の約2%の体積もまた、試料中に存在しなければならない。サンプリングは、細胞および条件培地を一緒に、または続けて(どちらかの順で)取ることにより、または当業者により企図される、任意の数の工程を使用して2つの技術(例えば、細胞およびいくらかの条件培地を取り、その後、追加の条件培地を除去する)のいくつかの組み合わせにより実施してもよい。上の式は暗に、試料中の1:1の細胞パーセント対体積パーセント比を仮定する。
【0045】
当業者であれば、1:1の細胞対体積サンプリング比は変動させてもよいこと、または特定の細胞型、産生物、または培養条件は、変更された試料中の細胞および条件培地の比を使用でき、またはそれを必要とすらする可能性があることを認識するであろう。当業者には明らかなように、使用したサンプリング戦略に依存して、上記で示した計算に特別な改変を加えるべきである。例えば、試料中の条件培地体積パーセント対細胞パーセントの比は1から逸脱すると、試料の生存率は下記の式により与えることができる。
【数7】

式において、α=試料中の総細胞パーセント対総条件培地体積パーセントの比である。かくして、試料が2%の総細胞および4%の条件培地総体積を含み(すなわち、総細胞パーセントおよび条件培地パーセントの比が1未満である)、“X”および“Y”試料部分中の活性がそれぞれ1000および200である場合、
【数8】

である。
また、試料中での細胞パーセント対条件培地体積パーセントの比は1を超えてもよい。したがって、試料が5%の総細胞および1%の総条件培地を含み、“X”および“Y”試料部分中の活性がそれぞれ820および20である場合、
【数9】

である。
特に、これらの実施例では、式の分母でのみ実施する必要のある補正はすでに上記で示してある。この修正式は、試料中に存在する条件培地の総体積が、アッセイされる“X”および“Y”部分に同等に分割されることを仮定する。条件培地が同等に分割されない場合、この同じ分母補正を、条件培地が試料の“X”および“Y”部分の間で同等に分割されていない状況に対しすでに提供されている式に適用することができる。
【0046】
本発明により提供される細胞生存率を決定するための方法は、対照細胞の必要性を排除する。対照細胞は、特定の培養培地、マトリクス、または細胞型に対して、酵素に基づくアッセイ法を較正するために使用される。これは、部分的には、既存のアッセイ法がタンパク質または酵素活性の絶対測定を実施するからである。タンパク質または酵素活性の絶対測定は、例えば、血清、サプリメント、ビタミン、フェノールレッド、またはマトリクス/基質の存在または不存在の影響を受ける可能性がある。さらに、タンパク質または酵素活性の絶対測定は、固有のドナー間、株間および細胞継代間の本来存在する変動により影響を受ける可能性がある。
【0047】
さらに、既存の方法はしばしば組織工学などの用途において使用される低い密度であっても飽和する。本発明により提供される方法は、高い細胞密度用途、例えば組織工学において生存率を測定するのに有用である。
【0048】
細胞死−安定タンパク質および酵素活性、アッセイ条件、および細胞破壊
細胞死−安定タンパク質または酵素活性は、様々な機構により生じる細胞死、例えばプログラム細胞死(エネルギーを必要とする過程)または壊死(エネルギーを必要としない過程)を経て、検出可能なレベルで持続するものである。様々な細胞死過程は異なるタンパク質に異なる程度まで影響するので、細胞死−安定タンパク質は、プログラム細胞死−安定、壊死安定、またはその両方であり得る。細胞死を概観するには、例えば、Guimaraes and Linden, Eur. J. Biochem., 271:1638−1650(2004)およびHengartner, Nature, 407:770−6(2000)を参照されたい。
【0049】
いくつかの実施形態では、細胞死−安定タンパク質または酵素活性の相対濃度は、細胞死過程を経験していない細胞に対し、細胞死過程を経験した細胞において影響を受けない、またはわずか5、10、15、20、40、60、もしくは80%以下、または1、2、もしくは3倍以下しか変化しない。ある実施形態では、細胞死−安定タンパク質または酵素活性の半減期は、約30、60、90または120分;約2、3、4、5、6、8、10、もしくは12時間;または約1、2、3、4日まで、またはそれ以上であってもよい。
【0050】
当業者であれば、本発明に適しうるタンパク質または酵素活性は様々な手段により識別することができることを認識するであろう。例えば、細胞死過程を経験していない細胞の遺伝子発現プロファイルに対する、細胞死過程を経験している細胞の遺伝子発現プロファイルの分析を使用して、そのタンパク質産物が細胞死−安定タンパク質または酵素活性である遺伝子を同定することができる。そのような遺伝子は、細胞死過程を経験しとぃない細胞に対し、細胞死過程を経験している細胞中で、5、10、15、20、40、60、もしくは80%以下、または1、2、もしくは3倍以下で、異なって発現する可能性がある。当業者であれば、このように同定された遺伝子はさらに、異なる細胞死過程下、タンパク質産物または酵素活性の安定性に対し評価されなければならないことを認識するであろう。
【0051】
細胞死−安定タンパク質または酵素活性は、細胞の周囲により、例えば細胞膜上または内、サイトゾル中、または膜結合細胞小器官内に閉じ込められるべきである。標的分子は、分泌タンパク質とするべきではなく、これは、そのようなタンパク質または酵素活性の起源、すなわち生存細胞または生存不能細胞のいずれからかは容易に決定することができないからである。細胞死−安定タンパク質または酵素活性は、細胞膜内に閉じ込められている場合、膜完全性が損失するとアッセイ可能になるはずである。
【0052】
細胞集団内での細胞の膜完全性は、当業者に公知の様々な手段により破壊され得る。そのような手段は、細胞死−安定タンパク質または酵素活性の全てまたは大部分を保存すべきである。例えば、細胞膜完全性は、せん断、超音波処理、真空、高温、低温(例えば、凍結)、化学もしくは酵素溶解、または膜デカップリング剤によって破壊され得る。化学溶解は、両親媒性分子、例えば、石鹸、洗浄剤、またはある種のグリコシド(例えば、サポニン)と共にインキュベートすることにより達成され得る。化学溶解剤の量は、所望の効果が達成されるように調節すればいよい。例えば、サポニンは0.01%から2%(W/V)の間、例えば0.05%から0.5%の間の最終濃度で使用することができる。
【0053】
細胞死−安定タンパク質または酵素活性は、細胞集団のプロテオームの天然成分、または非天然成分、例えば、発現された組換えタンパク質または酵素活性のいずれかとしてもよい。そのような組換え分子は、当技術分野において公知の常用法により導入させてもよく、安定発現または一過性発現させてもよく、すなわちゲノムに組み入れてもよく、またはプラスミドに基づいてもよい。例えば、Joseph Sambrook and David Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press; 3rd edition(2001)を参照されたい。
【0054】
細胞死−安定酵素活性に対し、1つを超える酵素が関与する可能性があることは理解されるであろう。例えば、一群の関連酵素が1つの基質を共有する可能性がある。いくつかの実施形態では、酵素活性は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20またはそれ以上異なる酵素により触媒される。
【0055】
検出方法
細胞死−安定タンパク質は、当技術分野において公知の従来の技術、例えば、ウエスタンブロット、ELISA、質量分析、クロマトグラフィー、または免疫化学により検出することができる。また、細胞死−安定タンパク質は、特徴的な細胞死−安定酵素活性により検出することができる。すなわち、タンパク質はその機能、例えば、それが触媒する反応により間接的に検出してもよい。膜完全性の破壊により、例えば、酵素が細胞から拡散すること、基質が細胞内に入ること、またはその両方によって、以前は細胞外環境中の分子へアクセス不可能であった酵素活性の検出が可能になる。
【0056】
当業者であれば、脱離基の放出を触媒することに関与する酵素を必ずしも知らなくても、基質および脱離基の組み合わせを、本発明の方法において使用するためにスクリーニングすることができることを認識するであろう。例えば、試験試料は既知の量の生存および生存不能細胞から作製し(例えば、実施例1を参照されたい)、本発明の方法により候補基質と共にインキュベートさせてもよい。脱離基をその後検出し、その強度を、生存および生存不能細胞の既知の比に対しプロットする。有用な基質は、生存および生存不能細胞の既知の比率と線形相関を有するものである。このように基質を試験することにより、細胞死−安定酵素活性の起源を知る必要はない。
【0057】
酵素基質/脱離基複合物は当技術分野において周知である。そのような化合物の有用な特性は、検出可能な脱離基の内部クエンチングである。すなわち、脱離基は、酵素基質に結合されている場合全く、または不十分にしか検出できないが、例えば、酵素基質の酵素処理後、基質から解離されると直ちに検出可能になる。本発明の方法において使用され得る脱離基のクラスとしては、発色、蛍光、および発光分子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
酵素活性を検出するための発色分子は当技術分野において周知である。テトラゾリウム塩およびホルマザンは酵素活性を検出するために使用された最初の基質のうちのいくつかであった(Altman, Prog. Histochem. Cytochem., 9:1−56(1976))。別の比色分析化合物は、例えば、米国特許第7,026,111号の第7列で見出されうる。
【0059】
発光分子、例えばルミノールおよびイソルミノールは酵素基質に結合させすることができ、本発明の方法において直接使用することができる(例えば、米国特許第4,748,116号を参照されたい)。また、ルシフェリンに結合させた基質を、ルシフェラーゼが発現される系で使用することができる(例えば、米国特許第7,148,030号を参照されたい)。
【0060】
本発明の方法は、蛍光脱離基、例えば、キサンテン色素、フルオレセイン、ローダミン、クマリン系分子、およびそれらの誘導体を使用してもよい。使用可能な蛍光分子は当技術分野において周知である(例えば、蛍光脱離基の例に対しては、米国特許第4,557,862号;同第4,640,893号;同第4,694,070号;同第4,801,534号;同第5,352,803号;同第6,130,101号;同第6,248,904号;同第6,342,611号;同第6,458,966号;同第6,750,357号;同第6,759,207号;RE 38,723、特に、その中の表IIおよび2002年5月6日に出願された米国特許出願第10/138,375号(米国特許公開第2003/0208037号として公開)および2003年7月18日に出願された同第10/621,311号(米国特許公開第2005/0014160号として公開)を参照されたい)。
【0061】
脱離基により生成されるシグナルは、任意の適当な手段、例えば、目視検査、分光光度計、ルミノメーター、または蛍光光度計により検出してもよい。2つ以上の区別可能な脱離基が試料中に存在する適用では、それらを同時にまたは連続して検出してもよい。
【0062】
本発明の方法において有用な基質−脱離基複合物は、例えば、炭水化物、脂質、タンパク質、ペプチド、核酸、ホルモン、もしくはビタミン部分;または1つまたは複数のそのような基質の組み合わせである細胞死−安定酵素の基質に結合された脱離基を有する。これらの部分は、天然(例えば、生物化学的に精製された)または合成(例えば、化学的に合成された、または組換えにより作製された)であってもよい。さらに、これらの基質は、非天然成分(例えば、非天然アミノ酸、ブロッキングまたは保護基、など)を全く含まなくてもよく、いくらかまたは全て含んでもよい。酵素/基質対の広範なカタログが当技術分野において公知である(例えば、そのような酵素/基質対の例に対しては、米国特許第4,167,449号(特に表II)、同第5,871,946号(特に表I)、および同第7,026,111号(特に13〜18列)を参照されたい)。さらに、米国特許第6,680,178号において開示されているように基質ライブラリを作成し、スクリーニングして本発明の方法において使用するのに有用なペプチド基質を識別してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、Felber et al., Biol. Chem. 386:291−98(2005)において開示されているように、酵素活性の基質選択性をファージディスプレイ技術を用いてプロファイリングすることができる。
【0063】
本発明の方法において有用な他の分子としては、プロテアーゼ活性に対するアッセイ法において有用である蛍光色素ローダミンのペプチド部分への複合物(Leytus et al., Biochem. J. 209:299−307(1983))が挙げられる、例えば、Grant et al., J. of Biomol. Screen, 7:531−540(2002)およびHug et al., Biochemistry, 38:13906−11(1999)。これらの試薬は、例えば、2004年1月22日に出願された米国特許出願第10/762,836号(2005年7月28日に米国特許公開第2005/0164321号として公開)において開示されているように、マルチプレックスアッセイ法に組み込むことができる。
【0064】
細胞および生物の門全体にわたる恒常性を維持する際のプロテアーゼの中心的役割が、プロテアーゼ活性のマーカーとしての標識ペプチド基質の普及の1つの理由である(例えば、インサイチューおよび全細胞におけるプロテアーゼ活性を検出するための試薬および方法を提供する、米国特許第6,037,137号および同第6,984,718号を参照されたい)。
【0065】
固有酵素活性は、異なる酵素間で、および特定の酵素の異なる基質に対して、広く変動する。酵素活性に影響する外因子としては、培地条件(例えば、pH、温度、オスモル濃度、など)、酵素の発現レベルまたは翻訳後調節、および基質濃度が挙げられる。基質濃度は、実施者により適当に調節される必要がある。所与の酵素、および培地条件に対し、適した基質濃度は、例えば、0.01ng/mlから100mg/ml、または10μg/mlから10mg/mlの範囲であり得る。いくつかの状況では、0.001mMから10mMの間の基質濃度が適当であり得る。また、基質濃度は0.01mMから0.5mMの間とすることができる。同様に、検出可能なシグナルの発生を可能にするインキュベーション時間は、これらの同じパラメータによって広く変動するであろう。したがって、インキュベーション時間は、30秒以下から、1、2、3、5、10、20、30、45、60、75、もしくは90分まで;または、実に、2、4、6、10、もしくは12時間、またはそれ以上の範囲とされ得る。
【0066】
本発明の方法においてタンパク質分解活性を検出するために有用な1つの基質はビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110(Promega、Cat. No. G9260)である。本発明の方法において有用な別の基質はAla−Ala−Phe−AMC(Bachem Cat No. 1−1415.0050)である。Ala−Ala−Pheトリペプチドがリソソーム外トリペプチジルペプチダーゼII酵素(TPP II;Balow et al., J. Biol. Chem., 261:2409−2417(1986))およびリソソームトリペプチジルペプチダーゼI酵素(TPP I;Vines and Warburton, Biochim. Biophys. Acta., 1384:233−242(1998)およびSteinfeld et al., J. Histochem. Cytochem., 54:991−996(2006))に対する基質であることが理論化されているが、それらに依存しない。特に、Ala−Ala−Pheは、機能的にはトリペプチジルペプチダーゼと同様である細菌スブチリシンに対する共通かつ特異的な基質である(Stambolieva et al., Arch. Biochem. Biophys., 294:703−6(1992))。TPP Iの別の基質は、例えば、大きな基質ライブラリをスクリーニングしたTian et al., J. Biol. Chem., 281:6559−72(2006)および組織学的用途に有用な基質(誘発脱離基を有する)を開示した米国特許第6,824,998号において見出される可能性がある。
【0067】
Ala−Ala−Pheはキモトリプシン酵素に対する基質であることも公知である。キモトリプシンおよび関連酵素、例えばカルパインに対する他の基質、ならびのそのような酵素の構造/機能相関は、当技術分野において公知である。これらについては、例えば、Sharma et al., Biol. Chem. (2008;8月8日電子出版;PubMed Id(PMID)No.18690777)、Croall and Ersfeld Genome Biol. 8:218(2007);Czapinska and Otlewski Euro. J. Biochem 260:571−95(1999);Perona and Craik J. Biol. Chem. 272:29987−90(1997)においてさらに論じられている。
【0068】
細胞培地、およびマトリクス
本発明は、広範囲にわたる宿主生物、例えば、ヒトを含む哺乳類、および広範囲にわたる起源組織に由来する培養細胞の生存率を測定するために使用し得る方法を提供する。アッセイする細胞は様々な発達段階の組織に由来し得る。細胞は成体、胎仔、または胚起源に由来し得る。細胞は、3つの始原胚葉(すなわち、外胚葉、中胚葉、内胚葉)のいずれかを起源とする器官由来の全能性または多能性幹細胞であり得る。例えば、細胞は皮膚、心臓、骨格筋、平滑筋、腎臓、肝臓、肺、骨、膵臓、中枢神経組織、末梢神経組織、循環組織、リンパ組織、腸、脾臓、甲状腺、結合組織(例えば、軟骨細胞)、または生殖腺に由来し得る。細胞は、拡張されていない初代細胞、培養により拡張された初代細胞、または株化細胞系であってもよい。さらに、細胞は様々な培地中、例えば、血清有りまたは無しで(例えば、化学的に定義された培地)、かつ、フェノールレッド有りまたは無しで成長させてもよい。
【0069】
本発明は、広範囲の細胞密度にわたり、細胞の生存率を測定する方法を提供する。例えば、細胞は、2.2×10から2.8×10細胞/cmの間、3.5×10から2.8×10の間、または5×10から1×10細胞/cmの間の密度で存在し得る。細胞はまた、少なくとも2.0×10、5.0×10、1.0×10、2.0×10、2.8×10、3×10、4×10、5×10、6×10、8×10、10×10細胞/cmまたはそれ以上の高い密度で存在し得る。本発明により提供される方法は、約3×10細胞/cmまでの細胞密度で実施されている。方法は10細胞/cmまで、またはそれ以上の細胞密度で機能するように企図されている。本開示全体で言及した細胞密度は全て「平均」という用語により修飾されていることを理解すべきである。当業者は、細胞密度の局所変動が起こり、これは本発明により提供された方法において企図されていることを明らかに認識するであろう。
【0070】
細胞は培地中でインキュベートされ、細胞死−安定タンパク質または酵素活性の蓄積を可能にする、すなわち、条件培地を産生する。本発明により提供される方法は、細胞が培地と接触している時間量にわたって生存率を測定し、すなわち、条件培地は一般にアッセイ直前に新たな培地と交換することができない。細胞は特定の用途、例えば、細胞型、細胞密度、培地の型、または細胞死−安定タンパク質もしくは酵素活性の半減期に依存して、様々な時間の間インキュベートさせることができる。細胞は、アッセイ前に約1、5、10、30、60、90、120、150、180、210、もしくは240分;または、約3、4、5、6、8、10、12、18、もしくは24時間;または約1、2、3、4、5日、またはそれ以上の間インキュベートさせてもよい。
【0071】
本発明の方法は、様々な基体またはマトリクス上で成長させた生存細胞の割合を測定するのに有用である。細胞は従来の二次元細胞培養基体、例えば、ガラスまたは表面処理したプラスチック上で成長させてもよい。また、細胞は、例えば細胞が組織工学産物の一部である場合、足場またはマトリクスにより支持することができる。適した足場としては、金属、プラスチック、ガラス、ケイ素、セラミック、および/またはリン酸カルシウムからなる構造が挙げられる。他の適した足場材料としては、吸収性ポリエステル(例えば、グリコリドまたはラクチドのポリマー、それらの誘導体またはコポリマ)、炭水化物(例えば、ヒアルロニン、キチン、デンプン、またはアルギナート)、およびタンパク質(例えば、コラーゲン(例えば、ブタコラーゲン誘導マトリクス)またはゼラチン)、またはこれらのマトリクスのいずれかの組み合わせが挙げられる。組織工学において使用されるマトリクスのさらなる議論は、例えば、Langer and Vacanti(1993);Ikada, J.R. Soc. Interface, 3:589−601(2006);および米国特許第6,689,608号および同第6,800,296号において見出され得る。
【0072】
アッセイ法バリエーション
出願人は、フェノールレッドがさらに、本発明の方法によりアッセイ可能な細胞密度の範囲を拡張することができることを見出した。これは、脱離基のシグナルを減衰させることにより達成される。すなわち、フェノールレッドが例えば、ローダミン−110(R110)のシグナルを低減させ、アッセイ法はより高い細胞密度で飽和する。脱プロトン化されたフェノールレッドがこの効果を発揮するのは、その吸収スペクトルがローダミン110の励起および発光スペクトルの両方とかなりオーバーラップするからであることが理論化されているが、これに依存するわけではない。
【0073】
R110に対するフェノールレッドの他に、他の脱離基と共に使用するように適合された他の減衰作用物質の使用もまた企図される。特定の脱離基の励起およびまたは発光スペクトルに対して適当な減衰作用物質は、吸収スペクトルにおいて所望の程度のオーバーラップを有するであろう。吸収、励起、および発光スペクトルは当技術分野において公知であり、または経験的に、例えば蛍光光度法により容易に決定されうる。
【0074】
さらに、本発明により提供される方法はモジュール式であり、マルチプレキシングに適している。すなわち、追加の過程、工程、および/または作用物質により、さらにアッセイ法の実用性を拡張できる。例えば、本発明により提供される方法はさらに、1つを超える細胞死−安定タンパク質または酵素活性の検出を含んでもよい。これは、例えば、直交基質および/または脱離基を使用して、試料部分において2つ以上の細胞死−安定酵素活性に対し複数の酵素特異的基質を適用することにより達成される。そのような「検出混合物」は、1つまたは複数の検出可能な脱離基に結合された、細胞死−安定酵素活性に対する単一または複数の種の基質を含む。これらのマルチプレキシング法は、2つの広範なクラス、すなわち単一種の脱離基および複数の種の脱離基に分割することができる。
【0075】
単一種の脱離基が複数の種の酵素基質と結合される検出混合物は、統合シグナルを発生させる。すなわち、得られたシグナルは検出された酵素活性の和である。例えば、各基質は、別個の酵素活性により処理させることができる。複数の酵素活性をアッセイし、それらを合計することにより、統合シグナルは試料全体の代謝状態のより正確な表示となる。統合シグナルはまた、インキュベーション時間がより短いことが望まれる場合に有用であり得る。
【0076】
本発明の方法において複数の脱離基種を使用すると、生存率の独立した測定が提供される。複数の種の脱離基に結合させた1つの酵素活性に対する単一種の基質を含む検出混合物は生存率の平行測定を提供する。異なるシグナルは、例えば、異なる波長または強度で機械または検出器依存感度を有する可能性がある検出機器を使用する研究者に、さらなる柔軟性を提供する。
【0077】
各々が異なる種の脱離基に結合される、複数の基質種の使用により、生存率の完全に独立した測定が提供される。基質は、例えば、低、中、高の相対活性を有する酵素に属し得る。相対活性は低から高まで、少なくとも10、20、40、もしくは80%だけ、または少なくとも1、2、5、10、50、100、500、または1000倍だけ、またはそれ以上、変動する可能性がある。生存率の複数の独立した測定を実施することにより、研究者が少なくとも1つの基質種で、線形検出範囲を保つ可能性がより高くなりうる。
【0078】
複数の脱離基を使用するさらなる応用は、品質管理アッセイ法である。特に、本発明の方法は、さらに、各々が同じ種の脱離基に結合される1つまたは複数の汚染物質特異的基質を添加し、1つまたは複数の汚染物質特異的酵素活性を検出する工程を含み得る。汚染物質特異的基質種は、共通の細胞培養汚染物質、例えば、真菌、細菌、古細菌および原生生物に特異的な酵素に対する基質であり、培養させた細胞のプロテオームを含まない。したがって、汚染物質特異的脱離基の検出は、培養された細胞集団の汚染を示す。当然、汚染物質特異的酵素活性に対する脱離基は、培養細胞の生存率を測定するために使用される脱離基とは区別可能である。
【0079】
本発明の方法はまた、処理の細胞毒性を測定するために適合させることができる。処理は、環境または生理学的処理、例えば、熱、気圧、機械、または光刺激であってもよい。処理はまた化学処理、例えば、オスモル濃度、pH、薬理作用のある物質もしくは生物剤、または上記のいずれかの組み合わせとしてもよい。本発明の方法は、さらに、処理を試験細胞集団に適用する工程、本発明方法により試験細胞集団の生存率を測定する工程、およびその生存率を、処理に暴露されていない同じ細胞の対照培養物と比較する工程を含んでもよい。ある実施形態では、細胞毒性は1−(集団の画分生存率)として計算してもよい。これらの実施形態では、対照集団は必要ない。
【実施例】
【0080】
実施例1:組織工学産物の細胞生存率の測定
細胞生存率アッセイ法の簡単な概略図を図1に示す。ここで、「読み取り値#1」は、細胞および条件培地を含む集団の部分中に存在する細胞死−安定または酵素活性の量であり、一方、「読み取り値#2」は、培養集団の細胞を含まない条件培地の部分中に存在する酵素活性の細胞死−安定タンパク質の量である。
【0081】
ヒト関節軟骨細胞を、単層培養において第2または第3継代まで拡張させた。MACI(登録商標)移植片において使用される培養条件を再現するために、軟骨細胞を、ACI−MAIX(登録商標)膜マトリクス穴(直径6mm)の粗い側の白色の不透明96ウエルプレート上に、約25,000〜600,000細胞/穴の密度で三連で播種した。Matricel ACI−MAIX(登録商標)膜マトリクスは、滑らかな側および粗い側を有するブタコラーゲンに基づく膜マトリクスである。この播種密度は8.75×10から2.1×10細胞/cmに相当し、これはACI−MAIX(登録商標)膜マトリクス(20cm)あたり1.75×10から42×10細胞に対応する。アッセイ法をフルサイズのMACI(登録商標)移植片試料に適用する場合、2つの小さな穴(典型的には直径6mm)および比例量の条件培地が各試料から取られる。共に20cm膜の約2.8%を示す直径6mmの2つの穴に対しては、比例量の条件培地は20cm膜上に存在する条件培地の総体積の約2.8%である。フルスケールおよび縮小の場合の両方において、ブランクの膜マトリクス穴および培地を対照として処理した。
【0082】
細胞播種3時間後、条件培地の半分は死(生存不能)細胞により放出された全てのプロテアーゼの総量の半分を含むが、これを空のウエルに移動した。
【0083】
次に、ビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110基質(ビス−アラニル−アラニル−フェニルアラニル−ローダミン110;Promega Cat. No. G9260)をサポニン(10% w/v水溶液、Sigma, St. Louis, MO, Cat. No. S4521)およびフェノールレッド(任意;0.5%フェノールレッド、Sigma Cat. No. P0290をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で希釈することにより調製した0.1%溶液)と共に含むマスターミックスを試料に添加した。細胞および条件培地を含む部分中の生存細胞に浸透するようにサポニンを使用し、細胞内プロテアーゼを基質にアクセス可能にした。マスターミックス中の様々な成分の最終濃度は典型的には下記の通りである。
ビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110基質、0.83mM
サポニン、1.67%
フェノールレッド0.167mg/mL(任意)
【0084】
インキュベーション(45〜90分)後、Molecular Devices SpectraMax M5 Microplate Readerと共にSoftMax Pro Softwareを用いて485nm励起−520nm発光でプレートの読み取りを行った。データをその後、Microsoft EXCELで処理した。
【0085】
代表的な実験結果を図2に示す。細胞播種密度の関数としての、蛍光レポーターシグナル強度散布図(読み取り値#1、上清を有する生存細胞、図2A;および読み取り値#2、上清のみ、図2B)を示す。データ点は3回繰り返しの平均である。ビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110基質とのインキュベーション時間は45、60、または90分のいずれかとした。シグナルと細胞密度との間の関係は直線であり、試験した全てのインキュベーション時間に対しほとんど変化しなかった。60分のインキュベーション工程をその後の測定で使用した。
【0086】
実施例2:アッセイ法の正確さおよび精度
アッセイ法の正確さは、培養物の測定生存率を既知の生存細胞パーセンテージと比較することにより評価した。培養物は、既知の量の生存細胞および死細胞の混合物から構成され、予め混合され、示した密度で播種し、その後、実施例1のように処理した。測定した生存率を、試験混合物中の生存細胞パーセントの関数としてプロットした(図3)。プロットしたデータ点は2回繰り返しの平均である。典型的には、測定した生存率と実際の生存率との間の差は15%未満である。0.175×10細胞/cm未満の細胞播種密度では、より長いインキュベーション時間(少なくとも90分)により、より正確なアッセイ法が確実なものとなる。
【0087】
アッセイ法の株間の正確さを測定するために、3つの異なる株由来の生存細胞および死細胞の1:1比を7.0×10細胞/cm密度で播種した。著しい固有変動が異なる細胞株由来の絶対シグナルレベルに存在する可能性があるが(表1、第1のデータ列;%CV=41.49)、測定した生存率の変動は実質的により低い(表1、第2のデータ列;%CV=7.62)。
【表1】

【0088】
実施例3:アッセイ法の精度に対するマトリクス、試薬、および分析者変動の寄与
異なる分析者および異なるマトリクスまたは試薬ロットの、測定した生存率の精度に対する影響を評価するために、単一の親培養物由来の細胞を、膜の穴上に7.5×10細胞/cmの密度で播種し、実施例1で記載したように処理した。3つの変数、すなわちマトリクスロッド、アッセイロット、および分析者を分析した。各変数を2つの群で試験した。各処理群は3つの統計学的繰り返しを有した。結果を表2に示す。
これらの結果は、このアッセイ法がこれらの技術上の変数における変化に対し比較的鈍感であることを示唆する。
【表2】

【0089】
実施例4:フェノールレッドの効果
このアッセイ法の開発中、アッセイ混合物にフェノールレッドを添加すると、添加量依存様式でシグナル強度を減衰させ、アッセイ法の線形範囲をより高い細胞密度まで拡張させることができることが見出された。細胞を様々な密度で播種し、フェノールレッド有りまたは無しで実施例1のように処理し、3回繰り返しの平均生存率を図4に示す。フェノールレッドの添加はアッセイ法の正確さには影響せず、添加量依存様式でシグナルアウトプットを抑制することにより、シグナルレベルが飽和に近づかないように機能するにすぎない。フェノールレッドの量は必要に応じて調節することができる。フェノールレッドは0.5×10細胞/cm膜マトリクスより低い播種密度は典型的に必要ない。
【0090】
実施例5:フェノールレッド添加のタイミング
フェノールレッドのアッセイ混合物への添加のタイミングは柔軟性があることが見出された。これを証明するために、単一株由来の細胞を超音波処理し、細胞内プロテアーゼを全て放出させ、1.0×10細胞/ウエルの密度で100μl/ウエルの体積の96のウエルプレートに播種した。基質およびフェノールレッドを表3による量および時間で添加した。結果を1処理あたり3回の繰り返しの平均シグナル強度として表4に示す。これらの結果から、アッセイ中様々な時点で添加した様々な濃度のフェノールレッドが、シグナルの減衰において同様に有効であることが証明される。
【0091】
フェノールレッドの使用により、高い細胞播種密度(典型的には1.4×10細胞/cmを超える)、または血清を含む、もしくは血清を含まない、およびフェノールレッドを含むもしくはフェノールレッドを含まない様々な培地を用いる場合に生存率を測定するための新規アッセイ法のダイナミックレンジが拡張された。
【表3】

【表4】

【0092】
実施例6:別のマトリクス上で成長させた細胞
異なるマトリクス材料の本方法に対する影響を証明するために、細胞を高多孔度ゼラチンスポンジであるGelfoam(Upjohn Pharmacia, Kalamazoo, MI)上に、7.1×10から2.3×10細胞/cmまでの範囲の密度で播種した。細胞を実施例1のように処理した。結果を図5において3回繰り返しの平均生存率として示す。細胞の生存率は、播種直前のトリパンブルー排除により決定して91%であった。これらのデータにより、本アッセイ法は、様々な異なるマトリクス上に播種された細胞を分析するのに適していることが示される。
【0093】
実施例7:2D培地(組織培養プラスチック)上で成長させた細胞
より伝統的な組織培養環境(すなわち、無機平板基体上での成長)における本アッセイ法の有効性を証明するために、細胞を直接プラスチックの6ウエル組織培養プレートに、マトリクス無しで、2.2×10から2.8×10細胞/cmまでの範囲の密度で播種した。細胞を実施例1のように処理した。結果を図6において2回繰り返しの平均生存率として示す。細胞の生存率は、播種直前のトリパンブルー排除により決定して96%であった。これらの結果により、本アッセイ法は、様々なマトリクス上で成長させた細胞に加えて、従来の細胞培養基体上で成長させた細胞においてもよく機能することが示される。
【0094】
実施例8:非ヒト細胞
非ヒト細胞に対する本アッセイ法の有効性を証明するために、2匹のドナー由来のウサギ軟骨細胞をACI−MAIX(登録商標)膜マトリクス穴(直径6mm)上に、0.175から1.4×10細胞/cmまでの範囲の密度で播種した。細胞を実施例1のように処理した。結果を図7において2回繰り返しの平均生存率として示す。株1および2の生存率は、播種直前のトリパンブルー排除により決定してそれぞれ、88.0%および84.9%であった。これらの結果により、本アッセイ法は、非ヒト起源由来の細胞を用いてうまく機能することが示される。
【0095】
実施例9:別の基質
ビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110以外の基質を使用した本方法の有効性を証明するために、別の基質、(Ala−Ala−Phe)−AMC(Bachem Cat No. 1−1415.0050, Torrance, CA)を、ヒト軟骨細胞の3つの株を使用して、8.75×10から1.4×10細胞/cmまでの範囲の密度で播種することにより試験した。ビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110の代わりに(Ala−Ala−Phe)−AMCを使用し、試料プレートを励起360nm−発光440nmで読み取る以外は実施例1のように細胞を処理した。播種直前のトリパンブルー排除により決定した株A、B、およびCに対する生存率は、それぞれ、98.6%、98.6%および99.2%であった。結果を図8において2回繰り返しの平均生存率として示す。結果により、別の(Ala−Ala−Phe)−AMC基質が有効であったことが示される(図8)。
【0096】
本明細書で引用した全ての特許、出願、または他の参考文献は、全ての目的のために、ならびに列挙された提案のために、参照によりその全体が組み入れられることを理解すべきである。参照により組み入れられた文書と本出願との間に一致しない点がある場合、本出願が優先される。
【0097】
本明細書および本明細書で開示した本発明の実施例を考慮すれば、本発明の他の実施形態は当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示にすぎず、本発明の真の範囲および精神は添付の特許請求の範囲により示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)細胞集団の細胞を含まない細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性を検出する工程、
(b)前記細胞集団の細胞を含む細胞培養培地の部分の細胞および条件培地における細胞死−安定タンパク質または酵素活性を検出する工程、および
(c)細胞を含む前記細胞培養培地の前記細胞および条件培地部分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性のレベルを、細胞を含まない前記細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性のレベルと比較する工程
を含み、
前記細胞集団における生存細胞の割合が、細胞および条件培地を含む前記細胞培養培地の部分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性のレベルと、細胞を含まない前記細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定タンパク質または酵素活性のレベルとの間の差に正比例する、細胞培養培地中で維持した細胞集団における生存細胞の割合を測定する方法。
【請求項2】
(a)組織工学産物の細胞を含まない細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性を検出する工程、
(b)前記組織工学産物の細胞を含む細胞培養培地の部分の細胞および条件培地における細胞死−安定酵素活性を検出する工程、および
(c)前記組織工学産物の細胞および条件培地を含む前記細胞培養培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルを、前記組織工学産物の細胞を含まない前記細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルと比較する工程
を含み、
前記組織工学産物における生存細胞の割合が、前記組織工学産物の細胞および条件培地を含む前記細胞培養培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルと、前記組織工学産物の細胞を含まない前記細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルとの間の差に正比例する、細胞培養培地中で維持した組織工学産物における生存細胞の割合を測定する方法。
【請求項3】
(a)細胞および比例量の細胞培養条件培地を含む組織工学産物の試料部分を提供する工程、
(b)工程(a)で提供された前記試料部分由来の前記組織工学産物の細胞を含まない細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性を検出する工程、
(c)工程(a)で提供された前記組織工学産物の前記試料部分における細胞の膜完全性を破壊する工程、
(d)工程(a)で提供された前記組織工学産物の前記試料部分の細胞および条件培地における細胞死−安定酵素活性を検出する工程、および
(e)工程(b)および(d)において検出した細胞死−安定酵素活性のレベルを比較する工程
を含み、
前記組織工学産物における生存細胞の割合が(d)および(b)において検出された細胞死−安定酵素活性のレベル間の差に正比例する、細胞培養培地中で維持した組織工学産物における生存細胞の割合を測定する方法。
【請求項4】
前記組織工学産物の膜完全性がせん断、超音波処理、低気圧、高温、低温、化学もしくは酵素溶解、または膜デカップリング剤により破壊される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記組織工学産物の膜完全性が両親媒性物質の添加により破壊される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記両親媒性物質がサポニンである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
(a)細胞および比例量の細胞培養条件培地を含む組織工学産物の部分を提供する工程、
(b)前記組織工学産物の細胞を含まない、工程a)で提供された、前記細胞培養条件培地の部分を提供する工程、
(c)サポニン、およびビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110を工程a)およびb)で提供された試料に添加する工程、および
(d)工程a)およびb)で提供された前記試料中の切断されたビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110に対応する蛍光を検出する工程
を含み、
前記細胞が1.5×10から6×10細胞/cmの間の密度で、マトリクス中で維持されたヒト軟骨細胞であり、前記組織工学産物における生存細胞の割合が(d)において検出された蛍光の差を、その和で割った値に比例する、細胞培養培地中で維持した組織工学産物における生存細胞の割合を測定する方法。
【請求項8】
(a)組織工学産物に処理を適用する工程、
(b)前記組織工学産物の細胞を含まない細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性を検出する工程、
(c)前記組織工学産物の細胞を含む細胞培養培地の部分の細胞および条件培地における細胞死−安定酵素活性を検出する工程、および
(d)前記組織工学産物の細胞を含む前記細胞培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルを、前記組織工学産物の細胞を含まない前記細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルと比較する工程
を含み、
前記処理の細胞毒性が、未処理組織工学産物に対する処理済み組織工学産物における生存生物の割合の差に比例し、前記組織工学産物における生存細胞の割合が、前記組織工学産物の細胞を含む前記細胞培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルと前記組織工学産物の細胞を含まない前記細胞培養条件培地の部分における細胞死−安定酵素活性のレベルとの間の差に正比例する、細胞培養培地中で維持した組織工学産物における細胞への処理の細胞毒性を測定する方法。
【請求項9】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項1、2、3、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記細胞がヒト細胞である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が軟骨細胞である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記細胞がマトリクス上で成長させられる、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記細胞はが1.5×10から6×10細胞/cmの間の密度で存在する、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が高密度で存在する、1、2、3、7、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が2×10から6×10細胞/cmの間で存在する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記細胞死−安定酵素活性が、
(a)検出可能な脱離基に結合された細胞死−安定酵素活性の基質と試料とを接触させる工程、および
(b)前記脱離基を検出する工程
を含む工程により測定され、
検出された脱離基の量が細胞死−安定酵素活性のレベルに比例する、請求項1、2、3、7、または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記脱離基が発色性、発光性、または蛍光性である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記脱離基が蛍光性である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記脱離基がローダミン−110である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記基質がビス−(Ala−Ala−Phe)−ローダミン−110である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記脱離基がクマリン誘導体である、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記脱離基がAMCである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記基質がAla−Ala−Phe−AMCである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記検出可能な脱離基のシグナルを調節する作用物質を添加する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項25】
前記脱離基のシグナルを調節する作用物質が前記脱離基のシグナルを減衰させる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記脱離基のシグナルを減衰させる作用物質がフェノールレッドである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記フェノールレッドが500mg/μLまでの濃度で存在する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記細胞死−安定酵素活性がタンパク質分解性である、請求項1、2、3、7または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記細胞死−安定酵素活性が1つまたは複数のトリペプチジルペプチダーゼを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記細胞死−安定酵素活性が壊死およびプログラム細胞死−安定酵素活性である、請求項1、2、3、7または8のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記細胞死−安定酵素活性がプログラム細胞死−安定酵素活性である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記細胞死−安定酵素活性が壊死安定酵素活性である、請求項30記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−503579(P2011−503579A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533240(P2010−533240)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/082612
【国際公開番号】WO2009/061905
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【Fターム(参考)】